(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、軽量化、高性能化に伴い半導体の実装形態がワイヤーボンド型からフリップチップ型へと変化してきている。
フリップチップ型の半導体装置は、バンプ電極を介して基板上の電極部と半導体素子とが接続された構造を持っている。この構造の半導体装置は、温度サイクル等の熱付加が加わった際に、エポキシ樹脂等の有機材料製の基板と、半導体素子と、の熱膨張係数の差によってバンプ電極に応力がかかり、バンプ電極にクラック等の不良が発生することが問題となっている。この不良発生を抑制するために、アンダーフィル材と呼ばれる液状の半導体封止材を用いて、半導体素子と基板との間のギャップを封止し、両者を互いに固定することによって、耐サーマルサイクル性を向上させることが広く行われている。
【0003】
アンダーフィル材の供給方法としては、半導体素子と、基板上の電極部と、を接続させた後、半導体素子の外周に沿ってアンダーフィル材を塗布(ディスペンス)し、毛細管現象を利用して、両者の間隙にアンダーフィル材を注入するキャピラリーフローが一般的である。アンダーフィル材の注入後、該アンダーフィル材を加熱硬化させることで両者の接続部位を補強する。
【0004】
アンダーフィル材は、注入性、接着性、硬化性、保存安定性等に優れることが求められる。また、アンダーフィル材で封止した部位が、耐湿性、耐サーマルサイクル性等に優れることが求められる。
【0005】
上記の要求を満足するため、アンダーフィル材としては、エポキシ樹脂を主剤とするものが広く用いられている。
アンダーフィル材によって封止した部位の耐湿性および耐サーマルサイクル性、特に耐サーマルサイクル性を向上させるためには、無機物質からなる充填材(以下、「無機充填材」という。)をアンダーフィル材に添加することにより、エポキシ樹脂等の有機材料製の基板と、半導体素子と、の熱膨張係数差のコントロールを行うことや、バンプ電極を補強することが有効であることが知られている(特許文献1参照)。
この目的で添加される無機充填材としては、電気絶縁性が高いこと、および、熱膨張係数が低いことから、シリカフィラーが好ましく用いられている。
【0006】
一方、高密度・高機能実装を実現するために、通常の平面的な配置の二次元実装から、部品を積み重ねて実装を行った三次元実装に移行してきている。三次元実装としては、ベアチップを積層した三次元パッケージ(例えば、スタック型CSP)を用いたものや、半導体チップを独立単体の仮パッケージとした後にこれを複数重ね合わせて三次元化を図ったパッケージ積層三次元モジュールを用いたもの等が挙げられる。さらには、電子部品(半導体チップ、受動部品など)を実装した配線基板を多段化することにより、高密度・高機能実装を実現する技術もある。
【0007】
従来の二次元実装ではチップが露出していたので、チップからの発熱の放熱は問題とならなかったが、複数のチップが積層された構造の三次元実装では、放熱されにくくなるため熱設計が大きな問題となる。熱設計を容易にするためには、アンダーフィル材の熱伝導率は高い方が好ましい。
無機充填材として、広く用いられるシリカフィラーは、熱伝導率は決して高くない。そのため、三次元実装に用いるアンダーフィル材には、シリカフィラーよりも熱伝導率が高い無機充填材を使用することが好ましい。シリカフィラーよりも熱伝導率が高い無機充填材としては、アルミナフィラーや、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミ、ダイヤモンドなどのフィラーが挙げられる。これらの中でも、アルミナフィラーが、低コストであること、真球度を高くしやすいこと、耐湿性に優れることから好ましい。
【0008】
また、α線の影響を受け易いデバイスにおける誤動作を防止するため、アンダーフィル材に含まれる無機充填材中のウラン、トリウム、その壊変物質から放出されるα線を低減することが必要である(特許文献2〜4)。アルミナフィラーは、上記で例示したシリカフィラーよりも熱伝導率が高い無機充填材の中では、α線の放出量は少ないが、α線の放出量をさらに低減することが求められる。
【0009】
特許文献2〜4では、原料として用いる水酸化アルミニウム粉末中、若しくは、水酸化アルミニウム粉末から製造されるアルミナフィラー中のウラン、トリウムの合計量が10ppb未満とされている。
しかしながら、特許文献2〜4により得られる従来のアルミナフィラーは、レーザー回析散乱法による平均粒子径D50が2μm以上と大きいため、三次元実装に用いるアンダーフィル材に添加した際に、該アンダーフィル材の充填性が低いため、充填時にボイドが発生しやすかった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、以下に示す(A)〜(C)成分を必須成分として含有する。
(A)液状エポキシ樹脂
(A)成分の液状エポキシ樹脂は、本発明のエポキシ樹脂組成物の主剤をなす成分である。
本発明において、液状エポキシ樹脂とは常温で液状のエポキシ樹脂を意味する。
本発明における液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の平均分子量が約400以下のもの;p−グリシジルオキシフェニルジメチルトリスビスフェノールAジグリシジルエーテルのような分岐状多官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂の平均分子量が約570以下のもの;ビニル(3,4−シクロヘキセン)ジオキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルカルボン酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、アジピン酸ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)5,1−スピロ(3,4−エポキシシクロヘキシル)−m−ジオキサンのような脂環式エポキシ樹脂;3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジグリシジルオキシビフェニルのようなビフェニル型エポキシ樹脂;ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、3−メチルヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、ヘキサヒドロテレフタル酸ジグリシジルのようなグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、テトラグリシジルビス(アミノメチル)シクロヘキサンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ならびに1,3−ジグリシジル−5−メチル−5−エチルヒダントインのようなヒダントイン型エポキシ樹脂;ナフタレン環含有エポキシ樹脂が例示される。また、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンのようなシリコーン骨格をもつエポキシ樹脂も使用することができる。さらに、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグルシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルのようなジエポキシド化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルのようなトリエポキシド化合物等も例示される。
中でも好ましくは、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂、液状アミノフェノール型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂である。さらに好ましくは液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、p−アミノフェノール型液状エポキシ樹脂、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、ナフタレン型エポキシ樹脂である。
(A)成分としての液状エポキシ樹脂は、単独でも、2種以上併用してもよい。
また、常温で固体のエポキシ樹脂であっても、液状のエポキシ樹脂と併用することにより、混合物として液状を示す場合は用いることができる。
【0024】
(B)硬化剤
(B)成分の硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤であれば、特に限定されず、公知のものを使用することができ、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、および、フェノール系硬化剤のいずれも使用できる。
【0025】
アミン系硬化剤の具体例としては、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ポリアミン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンなどのピペラジン型のポリアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、ビス(メチルチオ)トルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエートなどの芳香族ポリアミン類が挙げられる。また、市販品として、T−12(商品名、三洋化成工業製)(アミン当量116)が挙げられる。
【0026】
酸無水物系硬化剤の具体例としては、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物等のアルキル化テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルハイミック酸無水物、アルケニル基で置換されたコハク酸無水物、メチルナジック酸無水物、グルタル酸無水物等が例示される。
【0027】
フェノール系硬化剤の具体例としては、フェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を指し、例えば、フェノールノボラック樹脂およびそのアルキル化物またはアリル化物、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル(フェニレン、ビフェニレン骨格を含む)樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂等が挙げられる。
【0028】
これらの中でも、アミン系硬化剤が、耐湿性および耐サーマルサイクル性に優れることから好ましく、中でも、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン等の芳香族アミン硬化剤が、耐熱性、機械的特性、密着性、電気的特性、耐湿性の観点から好ましい。また、常温で液状を呈する点も、本発明のエポキシ樹脂組成物におけるエポキシ樹脂の硬化剤として好ましい。
【0029】
(B)成分の硬化剤は、単独でも、2種以上併用してもよい。
【0030】
本発明の樹脂組成物において、(B)成分の硬化剤の配合割合は特に限定されないが、芳香族アミン硬化剤の場合、(A)成分の液状エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、0.5〜1.5当量であることが好ましく、0.7〜1.3当量であることがより好ましい。
【0031】
(C)アルミナフィラー
(C)成分のアルミナフィラーは、本発明のエポキシ樹脂組成物をアンダーフィル材として使用した際に、封止した部位の耐湿性および耐サーマルサイクル性、特に耐サーマルサイクル性を向上させる目的で添加される。アルミナフィラーの添加により耐サーマルサイクル性が向上するのは、線膨張係数を下げることにより、サーマルサイクルによる、エポキシ樹脂組成物の硬化物の膨張・収縮を抑制できるからである。
(C)成分としてアルミナフィラーを使用するのは、上述したように、シリカフィラーに比べて、熱伝導率が高いため、三次元実装に用いるアンダーフィル材として使用する際に、熱設計が容易になるからである。また、上記で例示したシリカフィラーよりも熱伝導率が高い他の無機充填材に対し、低コストであり、真球度を高くしやすく、耐湿性に優れるからである。
【0032】
また、α線の影響を受け易いデバイスにおける誤動作を防止するため、アンダーフィル材に含まれる無機充填材中のウラン、トリウム、その壊変物質から放出されるα線を低減することが必要である(特許文献2〜4)。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、(C)成分のアルミナフィラーは、平均粒径が0.1〜4.9μmである。その理由は、三次元実装用のアンダーフィル材として使用した際に、充填性に優れ、かつ、ボイドの発生が抑制されるためである。(C)成分のアルミナフィラーの平均粒径が0.1μm未満だと、エポキシ樹脂組成物の粘度が非常に高くなるため、三次元実装用のアンダーフィル材として使用した際に、充填性、作業性が悪化する。
一方、(C)成分のアルミナフィラーの平均粒径が4.9μm超だと、三次元実装用のアンダーフィル材として使用した際に、大きな粒子がギャップ間で詰まることにより充填不良が発生するおそれがある。また充填できたとしても充填時にボイドを巻き込むため、不適切である。
(C)成分のアルミナフィラーの平均粒径は0.1〜3.0μmであることがより好ましく、0.1〜1.7μmであることがさらに好ましい。
【0034】
(C)成分のアルミナフィラーの形状は特に限定されず、粒状、粉末状、りん片等のいずれの形態であってもよい。なお、アルミナフィラーの形状が粒状以外の場合、アルミナフィラーの平均粒径とはアルミナフィラーの平均最大径を意味する。
但し、(C)成分のアルミナフィラーの真円度が0.9以上であることが、エポキシ樹脂組成物中でのアルミナフィラーの分散性、および、三次元実装用のアンダーフィル材として使用する際の注入性が向上するとともに、アルミナフィラーをより最密充填状態に近づけるという観点から好ましい。本明細書における「真円度」は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した二次元像における「粒子の最大径に対する最小径の比」と定義する。すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した二次元像における最大径に対する最小径の比が0.9以上であることを指す。
【0035】
上述したように、アルミナフィラーは、シリカフィラーに比べて、熱伝導率が高いため、三次元実装に用いるアンダーフィル材として使用する際に、熱設計が容易になる。
しかしながら、アルミナフィラーは、その製造原料であるボーキサイトが不可避不純物としてウランを含有し、製造されたアルミナフィラーも不可避不純物としてウランするため、三次元実装に用いるアンダーフィル材として使用した場合に、ウランから放出されるα線により、デバイスが誤動作するおそれがある。
本発明の樹脂組成物では、(C)成分のアルミナフィラーのウラン含有量が0.1〜9ppbであるため、樹脂組成物の硬化物からのα線量が、デバイスを誤作動させない程度まで低減される。具体的には、樹脂組成物の硬化物からのα線量が0.0020count/cm
2・h以下に低減される。
本発明の樹脂組成物において、(C)成分のアルミナフィラーのウラン含有量が0.1〜4.9ppb以下であることが好ましい。
【0036】
特許文献2〜4に記載の方法によれば、水酸化アルミニウム粉末から、ウラン、トリウムの合計量が10ppb未満のアルミナフィラーを製造できるが、このアルミナフィラーは、レーザー回析散乱法による平均粒子径D50が2μm以上であり、平均粒径が0.1〜4.9μmのアルミナフィラーを製造することができなかった。
平均粒径が0.1〜4.9μm、かつ、ウラン含有量が0.1〜9ppbのアルミナフィラーは、例えば、特開2002−285003号公報、特開2003−119019号公報、VMC法(Vapourized Metal Combution Method)により製造できる。VMC法とは、酸素を含む雰囲気内においてバーナーにより化学炎を形成し、この化学炎中に目的とする酸化物微粒子(ここでは、アルミナフィラー、以下、同様)の一部を形成する金属(ここでは、Al、以下同様)粉末を粉塵雲が形成される程度の量投入し、爆燃を起こさせて酸化物微粒子を合成する方法である。
VMC法の作用について説明すれば以下のようになる。まず容器中に反応ガスである酸素を含有するガスを充満させ、この反応ガス中化学炎を形成する。次いでこの化学炎に金属粉末を投入し高濃度(500g/m
3以上)の粉塵雲を形成する。すると、化学炎により金属粉末表面に熱エネルギが与えられ、金属粉末の表面温度が上昇し、金属粉末表面から金属の蒸気が周囲に広がる。この金属蒸気粉末が酸素ガスと反応して発火し火炎を生じる。この火炎により生じた熱は、さらに金属粉末の気化を促進し、生じた金属蒸気と反応ガスが混合され、連鎖的に発火伝播する。このとき金属粉末自体も破壊して飛散し、火炎伝播を促す。燃焼後に生成ガスが自然冷却されることにより、酸化物微粒子の雲ができる。得られた酸化物微粒子は、電気集塵器等により帯電させて捕獲することができる。
VMC法は粉塵爆発の原理を利用するものであり、瞬時に大量の酸化物微粒子が得られ、その微粒子は、略真球の形状をなす。投入する粉末の粒子径、投入量、火炎温度等を調整することにより、微粒子の粒径を調整することが可能であり、平均粒径が0.1〜4.9μmのアルミナフィラーを合成可能である。
【0037】
本発明の樹脂組成物において、(C)成分のアルミナフィラーの含有量は、樹脂組成物の全成分の合計質量100質量部に対し、45〜90質量部であることが好ましい。
(C)成分のアルミナフィラーの含有量が45質量部未満だと、樹脂組成物の線膨張係数が大きくなり、三次元実装に用いるアンダーフィル材として使用した場合に、封止した部位の耐サーマルサイクル性が低下する。
一方、(C)成分のアルミナフィラーの含有量が90質量部超だと、樹脂組成物の粘度が増加し、三次元実装に用いるアンダーフィル材として使用した場合に、フリップチップパッケージ用液状封止材として使用した場合に、半導体素子と基板とのギャップへの注入性が低下する。
(C)成分のアルミナフィラーの含有量は、樹脂組成物の全成分の合計質量100質量部に対し、50〜80質量部であることがより好ましく、55〜75質量部であることがさらに好ましい。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記(A)〜(C)成分以外に、以下に述べる成分を必要に応じて含有してもよい。
(D)カップリング剤
本発明のエポキシ樹脂組成物は、三次元実装に用いるアンダーフィル材として使用した際の密着性を向上させるために、(D)成分としてカップリング剤を含有してもよい。
(D)成分のカップリング剤としては、エポキシ系、アミノ系、ビニル系、メタクリル系、アクリル系、メルカプト系等の各種シランカップリング剤を用いることができる。これらの中でも、エポキシ系シランカップリング剤が、エポキシ樹脂組成物を三次元実装に用いるアンダーフィル材として使用した際の密着性および機械的強度を向上させる効果に優れることから好ましい。
【0039】
エポキシ系シランカップリング剤の具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(商品名:KBM−303、信越化学株式会社製)、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(商品名:KBM−402、信越化学株式会社製)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学株式会社製)、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、(商品名:KBE−402、信越化学株式会社製)、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE−403、信越化学株式会社製)等が挙げられる。
【0040】
(D)成分としてシランカップリング剤を含有させる場合、(A)成分の液状エポキシ樹脂、および、(B)成分の硬化剤の合計質量に対する質量百分率で0.1〜3.0質量%であることが好ましく、0.3〜2.0質量%であることがより好ましく、0.5〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
【0041】
(E)硬化促進剤
本発明の液状封止材は、(E)成分として硬化促進剤を含有してもよい。(B)成分の硬化剤として、酸無水物系硬化剤やフェノール系硬化剤を使用する場合は、(E)成分として硬化促進剤を含有することが好ましい。
(E)成分としての硬化促進剤は、エポキシ樹脂の硬化促進剤であれば、特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、イミダゾール系硬化促進剤(マイクロカプセル型、エポキシアダクト型を含む)、第三級アミン系硬化促進剤、リン化合物系硬化促進剤等が挙げられる。
これらの中でもイミダゾール系硬化促進剤が、半導体樹脂封止材の他の成分との相溶性、および、半導体樹脂封止材の硬化速度という点で優れることから好ましい。
【0042】
イミダゾール系硬化促進剤の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられる。
また、マイクロカプセル型イミダゾールやエポキシアダクト型イミダゾールと呼ばれるカプセル化イミダゾールも用いることができる。すなわち、イミダゾール化合物を尿素やイソシアネート化合物でアダクトし、さらにその表面をイソシアネート化合物でブロックすることによりカプセル化したイミダゾール系潜在性硬化剤や、イミダゾール化合物をエポキシ化合物でアダクトし、さらにその表面をイソシアネート化合物でブロックすることによりカプセル化したイミダゾール系潜在性硬化剤も用いることができる。具体的には、例えば、ノバキュアHX3941HP、ノバキュアHXA3042HP、ノバキュアHXA3922HP、ノバキュアHXA3792、ノバキュアHX3748、ノバキュアHX3721、ノバキュアHX3722、ノバキュアHX3088、ノバキュアHX3741、ノバキュアHX3742、ノバキュアHX3613(いずれも旭化成ケミカルズ社製、商品名)等、アミキュアPN−40J(味の素ファインテクノ株式会社製、商品名)、フジキュアFXR−1121富士化成工業株式会社製、商品名)を挙げることができる。
【0043】
(その他の配合剤)
本発明の液状封止材は、上記(A)〜(E)成分以外の成分を必要に応じてさらに含有してもよい。このような成分の具体例としてはエラストマー、硬化促進剤、金属錯体、レベリング剤、着色剤、イオントラップ剤、消泡剤、難燃剤などを配合することができる。各配合剤の種類、配合量は常法通りである。
【0044】
(エポキシ樹脂組成物の調製)
本発明の液状封止材は、上記(A)〜(C)成分、および、含有させる場合はさらに(D)成分、(E)成分、ならびに、さらに必要に応じて配合するその他の配合剤を混合し、攪拌して調製される。
混合攪拌は、ロールミルを用いて行うことができるが、勿論、これに限定されない。(A)成分のエポキシ樹脂が固形の場合には、加熱などにより液状化ないし流動化し混合することが好ましい。
各成分を同時に混合しても、一部成分を先に混合し、残り成分を後から混合するなど、適宜変更しても差支えない。
【0045】
次に本発明のエポキシ樹脂組成物の特性について述べる。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、常温(25℃)での粘度が200Pa・s以下であることが好ましく、三次元実装に用いるアンダーフィル材として使用した際に注入性が良好である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、常温(25℃)での粘度が150Pa・s以下であることがより好ましい。
【0047】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、加熱硬化物のガラス転移温度(Tg)が50℃以上であることが好ましく、三次元実装に用いるアンダーフィル材として使用した場合に、アンダーフィル材で封止した部位が耐サーマルサイクル性に優れている。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、加熱硬化物のガラス転移温度(Tg)が、80℃以上であることがより好ましい。
【0048】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、加熱硬化物の熱伝導率が0.3W/(m・K)以上であることが好ましく、三次元実装のアンダーフィル材として使用する際に、熱設計が容易である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、加熱硬化物の熱伝導率が0.5W/(m・K)以上であることがより好ましく、0.7W/(m・K)以上であることがさらに好ましい。
【0049】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化物におけるα線量が0.0020count/cm
2・h以下であることが好ましく、三次元実装のアンダーフィル材として使用した際に、α線の影響を受け易いデバイスにおける誤動作を防止できる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化物におけるα線量が0.0015count/cm
2・h以下であることがより好ましく、0.0010count/cm
2・h以下であることがさらに好ましい。
【0050】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、三次元実装に用いるアンダーフィル材として使用した場合に、キャピラリーフローによる注入性が良好である。具体的には、後述する実施例に記載の手順でギャップへの注入性を評価した際に、20μmギャップへの注入時間が800秒以下であることが好ましく、750秒以下であることがより好ましく、650秒以下であることがさらに好ましい。
また、ギャップの注入時にボイドが発生することがない。
【0051】
次に本発明のエポキシ樹脂組成物の使用方法を、アンダーフィル材としての使用を挙げて説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物をアンダーフィル材として使用する場合、以下の手順で基板と半導体素子との間のギャップに本発明のエポキシ樹脂組成物を充填する。
基板をたとえば70〜130℃に加熱しながら、半導体素子の一端に本発明のエポキシ樹脂組成物を塗布すると、毛細管現象によって、基板と半導体素子との間のギャップに本発明のエポキシ樹脂組成物が充填される。この際、本発明のエポキシ樹脂組成物の充填に要する時間を短くするため、基板を傾斜させたり、該ギャップ内外に圧力差を生じさせてもよい。
該ギャップに本発明のエポキシ樹脂組成物を充填させた後、該基板を所定温度で所定時間、具体的には、80〜200℃で0.2〜6時間加熱して、エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させることによって、該ギャップを封止する。
【0052】
本発明の半導体装置は、本発明のエポキシ樹脂組成物をアンダーフィル材として使用し、上記の手順で封止部位、すなわち、基板と半導体素子との間のギャップを封止したものである。ここで封止を行う半導体素子としては、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタおよびダイオードおよびコンデンサ等で特に限定されるものではない。
但し、上述した加熱硬化物の熱伝導率の高さにより、ベアチップを積層した三次元パッケージ(例えば、スタック型CSP)を用いたものや、半導体チップを独立単体の仮パッケージとした後にこれを複数重ね合わせて三次元化を図ったパッケージ積層三次元モジュールを用いたものといった、三次元実装構造を有する半導体装置であることが好ましい。
【0053】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、接着剤、ソルダーレジスト等の用途にも用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
(実施例1〜4、比較例1〜2)
下記表に示す配合割合となるように、ロールミルを用いて原料を混練して実施例1〜4、比較例1〜2のエポキシ樹脂組成物を調製した。なお、表中の各組成に関する数値は質量部を表している。
【0056】
(A)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂A1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、製品名YDF8170、新日鐵化学株式会社製、エポキシ当量158g/eq
【0057】
(B)硬化剤
硬化剤B1:アミン系硬化剤、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、製品名カヤハードA−A、日本化薬株式会社製
【0058】
(C)アルミナフィラー
アルミナフィラーC1:平均粒径0.7μm、ウラン含有量0.1ppb
アルミナフィラーC2:平均粒径0.7μm、ウラン含有量3ppb
アルミナフィラーC3:平均粒径0.7μm、ウラン含有量9ppb
アルミナフィラーC4:平均粒径0.7μm、ウラン含有量16ppb
アルミナフィラーC5:平均粒径4.9μm、ウラン含有量9ppb
アルミナフィラーC6:平均粒径5μm、ウラン含有量9ppb
【0059】
(D)カップリング剤
カップリング剤D1:エポキシ系シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、製品名KBM403(信越化学工業株式会社製)
【0060】
調製したエポキシ樹脂組成物を評価用試料として以下の評価を実施した。
【0061】
(粘度)
ブルックフィールド粘度計を用いて、液温25℃、50rpmで調製直後の評価用試料の粘度を測定した。
【0062】
(ガラス転移温度(Tg))
評価用試料を165℃で120min加熱硬化させ8mmφ×200mmの円柱状に成形した硬化物について、ブルカーASX製TMA4000SAを用いて、TMA法によりガラス転移温度を測定した。
【0063】
(熱伝導率)
下記手順で評価用試料の硬化物の熱伝導率を測定した。
評価用試料を165℃で120min加熱硬化させた樹脂硬化物を10mm×10mmにカットし、熱伝導率測定装置(LFA447ナノフラッシュ、NETZSCH社製)を用いて熱伝導率の測定を行った。
【0064】
(注入性)
2枚のガラス基板の間にアルミテープを用いて20μmのギャップを設けて、半導体素子の代わりにガラス板を固定した試験片を作製した。この試験片を110℃に設定したホットプレート上に置き、ガラス板の一端側に評価用試料を塗布し、注入距離が20mmに達するまでの時間を測定した。この手順を2回実施し、測定値の平均値を注入時間の測定値とした。
また、注入された評価用試料におけるボイドの有無を目視により確認した。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例1〜4は、いずれも常温(25℃)での粘度が200Pa・s以下であり、加熱硬化物のTgが200℃以下であり、熱伝導率が0.3W/(m・K)以上であり、α線量が0.020count/cm
2・h以下であり、20μmギャップへの注入時間が800秒以下であり、注入時にボイドが確認されなかった。(C)成分のアルミナフィラーのウラン含有量が9ppb超の比較例1は、硬化物におけるα線量が0.020count/cm
2・h超であった。(C)成分のアルミナフィラーの平均粒径が4.9μm超の比較例2は、20μmギャップへの注入時間が800秒超であり、注入時にボイドが確認された。