(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(1)それぞれがマーキング手段を収容しうる複数のユニットと、複数のロックとを有しており、それぞれのロックがそれぞれのユニットからのマーキング手段の取り出しを阻止しうる収容器、
(2)棒材に付されたコードを読み取るためのコードリーダー、
及び
(3)上記コードリーダーで読み取られたコードに対応するマーキング手段の、ロック状態の解除を、上記収容器に指示する制御部
を備えており、
上記それぞれのユニットが、このユニットにおける上記マーキング手段の収容の有無を検知するセンサーを有しており、
上記ユニットに上記マーキング手段が収容されていない状態から上記マーキング手段が収容されている状態へ移行したときに、上記ユニットがロック状態となるマーキング手段選定装置。
【背景技術】
【0002】
丸棒鋼の製造方法として、圧延による方法が広く知られている。この製造方法では、まず精錬、造塊、分塊圧延等の工程を経て、鋼片が得られる。この鋼片は、加熱炉によって加熱される。次に、この鋼片に熱間圧延が施される。通常は、タンデムに並べられた粗列圧延機、中間列圧延機及び仕上列圧延機による多段圧延が施される。この熱間圧延によって鋼片は徐々に細径化し且つ長尺化して、丸棒鋼や線材が得られる。
【0003】
鋼片には、材質、加工履歴等に関する情報を含むバーコードラベルが添付される。鋼片に対してなされる、さらなる工程において、このラベルが剥がれる場合がある。ラベルが剥がれるおそれがある工程に供される前に、作業者がこのバーコードを読み取る。作業者はさらに、鋼片の端面に、ペンキ等で識別マークを画く。この識別マークとバーコードに含まれる情報とが関連づけされることで、その後の鋼片が管理されうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
識別マークを画く作業には、ヒューマンエラーが生じるおそれがある。エラーが生じると、その後の鋼片が正確には管理され得ない。出荷される条鋼に、異材が混入するおそれがある。同様の問題は、様々な棒や線の製造工場でも生じうる。
【0005】
本発明の目的は、棒材への正しい識別マークの付与に寄与しうる装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るマーキング手段選定装置は、
(1)それぞれがマーキング手段を収容しうる複数のユニットと、複数のロックとを有しており、それぞれのロックがそれぞれのユニットからのマーキング手段の取り出しを阻止しうる収容器、
(2)棒材に付されたコードを読み取るためのコードリーダー、
及び
(3)上記コードリーダーで読み取られたコードに対応するマーキング手段の、ロックの解除を、収容器に指示する制御部
を備える。
【0007】
好ましくは、それぞれのユニットは、マーキング手段の収容を検知するセンサーを有する。このセンサーにてマーキング手段の収容が検知されたときに、このユニットにロックがかかる。
【0008】
好ましくは、マーキング手段選定装置は、棒材の移動を阻止しうるストッパーをさらに備える。センサーによって収容部の全てのユニットにマーキング手段が収容されていることが検知されたときに、制御部は、ストッパーによる棒材の移動の阻止を解除する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るマーキング手段選定装置では、コードに対応するマーキング手段のみが収容器から取り出されうる。従って、間違った識別マークが棒材に付されることが防止される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0012】
図1に示されたマーキング手段選定装置2は、収容器4、制御部6、バーコードリーダー8及び架台10を有している。制御部6は、CPU及びメモリを有している。架台10は、ストッパー12を有している。この架台10には、複数の鋼片14が載せられている。1つの鋼片14には、バーコードラベル16が貼られている。鋼片14の前端は、ストッパー12に当接している。収容器4、バーコードリーダー8及び架台10のそれぞれは、ケーブル又は無線通信手段により、制御部6に接続されている。
【0013】
図2は、
図1の装置2の収容器4が示された平面図である。収容器4は、基台18、モニター20、操作盤22及び多数のユニット26を有している。本実施形態では、ユニット26の数は24である。これらのユニット26は、縦横に並んでいる。これらのユニット26の、列の数は6であり、行の数は4である。
【0014】
図3及び4には、ユニット26が示されている。このユニット26は、チャンバー28、2つのフレーム30、容器32、電磁ロック34、近接センサー36、蓋部38及びヒンジ40を有している。それぞれのフレーム30は、隣接するユニット26と共用されている。
【0015】
チャンバー28は、2つのフレーム30に挟まれている。このチャンバー28に、容器32が収容されている。
図3及び4において二点鎖線で示されているのは、マーキング手段としてのスタンプ42である。このスタンプ42は、容器32に収容されうる。電磁ロック34は、左側のフレーム30に取り付けられている。近接センサー36は、右側のフレーム30に取り付けられている。
【0016】
蓋部38は、メインプレート44、一対のブッシュ46、当てプレート48、ロックプレート50及び取っ手52を有している。それぞれのブッシュ46は、シリンダ54とロッド56とを有している。ロッド56はシリンダ54に挿入されており、シリンダ54に対して軸方向にスライド自在である。このスライドにより、ブッシュ46は伸長し、又は収縮する。シリンダ54は、メインプレート44に固定されている。ロッド56は、当てプレート48に固定されている。当てプレート48は、ブッシュ46を介してメインプレート44に取り付けられている。ロックプレート50は、ボルト58及びナット60により、メインプレート44に固定されている。当てプレート48は、側板62を有している。
【0017】
ヒンジ40は、第一羽64、第二羽66及び軸68を有している。第一羽64は、ネジ70(
図3参照)によって右側のフレーム30に固定されている。第二羽66は、ネジ72によってメインプレート44に固定されている。第二羽66は、軸68において、第一羽64に対して回動自在である。
【0018】
図3及び4に示された状態では、蓋部38が閉じられている。
図4に示されるように、当てプレート48はスタンプ42の上端に当接している。この当接により当てプレート48は上方へと押され、ブッシュ46が収縮している。この収縮に伴い、当てプレート48の側板62が近接センサー36に近接している。
【0019】
ロックプレート50は、電磁ロック34によって係止されている。従って、作業者が取っ手52を引いても、蓋部38は開かない。スタンプ42の上にはメインプレート44等が位置しているので、作業者はスタンプ42を取り出すことができない。換言すれば、電磁ロック34は、スタンプ42の取り出しを阻止している。
【0020】
図5には、蓋部38が開いた状態のユニット26が示されている。
図5では、容器32の上方が解放されている。従って作業者は、容器32からスタンプ42を取り出すことができる。
【0021】
図4に示された状態から
図5に示された状態への移行では、まず電磁ロック34によるロックが解除される。次に、作業者が取っ手52を引く。すると蓋部38は、ヒンジ40の第二羽66と共に、軸68を中心として回動する。回動の方向は、
図4における時計回りである。第二羽66が第一羽64に当接すると、回動が停止し、
図5に示された状態が達成される。
【0022】
図5に示された状態から
図4に示された状態への移行では、作業者が取っ手52を持ち、蓋部38を回動させる。蓋部38は、ヒンジ40の第二羽66と共に、軸68を中心として回動する。回動の方向は、
図5における反時計回りである。メインプレート44が左側のフレーム30に当接すると、回動が停止し、
図4に示された状態が達成される。回動により、当てプレート48がスタンプ42に押され、ブッシュ46が収縮する。この収縮により、当てプレート48は
図4における上方へと移動する。この移動により、近接センサー36は当てプレート48の側板62の近接を感知する。
【0023】
前述の通り、収容器4は、24のユニット26を有している。各ユニット26に、1つのスタンプ42が収容されている。従って、スタンプ42の総数は、24である。
図6には、これらのスタンプ42によって画かれる24の識別マークが示されている。これらの識別マークの印影の種類数は、4である。それぞれの印影の、色の数は6である。互いの識別マークは、印影と色とで区別されうる。識別マークが、印影のみで区別されてもよい。識別マークが、色のみで区別されてもよい。
【0024】
以下、この装置2が用いられたスタンプ42選定方法が説明される。この方法のスタート時点では、全ての(この実施形態では24個の)スタンプ42が、収容器4に収容されている。さらに、全てのユニット26において蓋部38が閉じており、ロックがかかっている。
【0025】
この方法では、まず架台10に鋼片14の束が積まれる。次に、この束に貼られたバーコードラベル16が、バーコードリーダー8で読み込まれる。バーコードの情報は、バーコードリーダー8から制御部6に送られる。この情報には、この鋼片14の材質、サイズ、履歴等の情報が含まれている。これらの情報は、制御部6に保存される。
【0026】
制御部6は、この鋼片14に付すべき識別マークを決定する。制御部6は、この識別マークをモニター20及びバーコードリーダー8に表示させる。制御部6は、選ばれた識別マークの情報と、保存されたバーコード情報とを、関連づける。関連づけられた情報は、制御部6に保存される。これらの情報は、その後の工程での、鋼片14の管理に用いられる。
【0027】
次に、この識別マークを付すためのスタンプ42が収容されているユニット26のロックを、制御部6が解除する。制御部6は、他のユニット26のロックを解除しない。ロックが解除されるユニット26の数は、1である。作業者は、解除されたユニット26の取っ手52を持ち、蓋部38を開ける。ユニット26は、
図5に示された状態となる。作業者は、このユニット26からスタンプ42を取り出し、鋼片14の端面に識別マークを付す。ロックが解除されるユニット26の数が1なので、作業者が間違ったスタンプ42を用いて識別マークを付してしまうことはない。
【0028】
作業者は、用いたスタンプ42をユニット26に戻す。作業者はさらに、このユニット26の蓋部38を閉じる。ユニット26は、
図4に示された状態となる。蓋部38を閉じるとき、スタンプ42の上端が当てプレート48を押し、ブッシュ46が収縮する。そして、当てプレート48が上昇する。近接センサー36は、当てプレート48の側板62が近接したことを検知する。この検知により、電磁ロック34がロックプレート50を係止する。換言すれば、蓋部38にロックがかかる。
【0029】
もし作業者が、スタンプ42を収容しない状態で蓋部38を閉じると、当てプレート48は上昇しない。従って、近接センサー36は側板62を検知しない。この場合は、蓋部38にロックはかからない。さらに、後に詳説される鋼片14の移動もなされない。この装置2では、作業者によるスタンプ42の収容忘れが生じない。従って、収容されなかったスタンプ42が別の鋼片14に用いられてしまうことが防止される。
【0030】
スタンプ42が収容された後、作業者は、操作盤22を操作する。具体的には、「スタンプ完了」と表示されたボタンを押す。この操作によりストッパー12が下降し、鋼片14が次工程へと進行する。架台10には、新たな鋼片14の束が、載せられる。
【0031】
この装置2では、収容器4の全てのユニット26に関し、近接センサー36が設置されている。従って収容器4は、全てのスタンプ42が収容されているか否かを検知しうる。いずれかのスタンプ42が収容器4に収容されていない場合には、ストッパー12は下降しない。換言すれば、いずれかのスタンプ42が収容器4に収容されていない場合には、制御部6は、ストッパー12により、鋼片14の移動を阻止する。収容部4の全てのユニット26にスタンプ42が収容されていることが検知されたときに、制御部6がストッパー12による鋼片14の移動の阻止を解除する
【0032】
本実施形態では、マーキング手段としてスタンプ42が用いられているが、他のマーキング手段が用いられてもよい。他のマーキング手段として、刻印、スプレー及び刷毛が例示される。
【0033】
本実施形態では、鋼片14にバーコードが付されている。バーコード以外の符号コードにより、鋼片14が識別されてもよい。バーコード以外の符号コードとして、二次元コードが挙げられる。バーコード又は二次元コードに色彩情報が付与されたコードが用いられてもよい。バーコード以外の符号コードにより鋼片14が識別される場合は、当該符号コードの読み取りに適したリーダーが用いられる。
【0034】
コードリーダーが、制御部6を兼ねてもよい。収容器4が、制御部6を兼ねてもよい。