(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基準関数が、前記試料とは異なる標準試料を測定して得られた自己相関関数、又は、前記試料を用いて測定して得られた自己相関関数である請求項1又は2記載の試料分析装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記の問題点を解決すべくなされたものであり、例えば粒子が架橋した状態の試料や夾雑物が含まれている試料等であっても、正確に試料を分析できるようにすることを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る試料分析装置は、試料に検査光を照射して得られた検出信号から自己相関関数を演算し、当該自己相関関数から前記試料を分析する試料分析装置であって、基準の自己相関関数である基準関数に対する前記試料から得られた比較対象の自己相関関数である比較対象関数のずれ量が所定範囲内か否かを判定する自己相関関数判定部と、前記自己相関関数判定部により前記ずれ量が所定範囲内と判定された比較対象関数を用いて前記試料を分析する試料分析部とを備えることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、基準関数に対する比較対象関数のずれ量が所定範囲内と判定された比較対象関数を用いて試料を分析するので、特異的な自己相関関数や夾雑物に起因する自己相関関数等の不適切な自己相関関数を排除して、正確に試料を分析することができる。
【0009】
自己相関関数判定部の具体的な判定方法としては、前記自己相関関数判定部が、所定の時間範囲に亘って前記基準関数に対する前記比較対象関数のずれ量が所定範囲内か否かを判定することが望ましい。
このように基準関数及び比較対象関数を所定の時間範囲(区間又は幅)に亘って比較することで、より適切な自己相関関数を用いて試料を分析することができる。
【0010】
前記基準関数が、前記試料とは異なる標準試料を測定して得られた自己相関関数、又は、前記試料を用いて測定して得られた自己相関関数であることが望ましい。
【0011】
ここで、標準試料を測定して得られた自己相関関数としては、標準試料を事前に測定して得られた自己相関関数の他、過去に測定された標準試料の自己相関関数であって、メモリに記憶された(例えばデータベース化された)自己相関関数であっても良い。このように標準試料の自己相関関数を用いることで、測定対象の試料の特定ができる。また、データベースを有するものであれば、当該データベースに含まれる各種標準試料の自己相関関数を用いて、測定対象の試料をより正確に特定することができる。さらに、過去に測定された標準試料の自己相関関数を基準関数として用いれば、測定対象の試料の経時変化や実測定時の状態などを分析することができる。
【0012】
試料を用いて測定して得られた自己相関関数としては、試料を事前に測定して得られた自己相関関数の他、過去に測定された前記試料と同一の試料の自己相関関数であって、メモリに記憶された(例えばデータベース化された)自己相関関数であっても良い。このように試料の自己相関関数を用いることで、試料に合わせた基準関数を用意することができ、より適切な自己相関関数(ずれ量が所定範囲内の比較対象関数)を得ることができ、正確に試料を分析することができる。さらに、過去に測定された試料の自己相関関数を基準関数として用いれば、測定対象の試料の経時変化や実測定時の状態などを分析することができる。その上、基準関数とされた試料の自己相関関数を分析に用いても良く、これにより、無駄なく自己相関関数を用いることができ、測定の効率を向上させることができる。
【0013】
前記試料の複数点に検査光を照射して前記試料を分析するものであり、前記自己相関関数判定部が、前記複数点それぞれに対応した前記基準関数を用いて各点での前記比較対象関数を判定することが望ましい。
このように複数点それぞれに対応した基準関数を用いて判定しているので、各点において適切な自己相関関数(ずれ量が所定範囲内の比較対象関数)を得ることができ、正確に試料を分析することができる。
このとき、試料分析部は、各点においてずれ量が所定範囲内と判定された比較対象関数をアンサンブル平均することによって、試料を分析することが考えられる。
【0014】
具体的な測定工程としては、前記試料から前記基準関数を求めるプレ測定と、当該プレ測定の後に前記試料から前記比較対象関数を求める本測定とを行うことが望ましい。
なお、本測定は、プレ測定を行った照射位置と同一位置に検査光を照射する。また、本測定においては、同一の照射位置において複数の比較対象関数を求める。そして、自己相関関数判定部は、それら複数の比較対象関数と基準関数とを比較する。試料分析部は、前記複数の比較対象関数のうち、ずれ量が所定範囲内の比較対象関数の平均値を取る。そして、試料分析部は、平均した自己相関関数を用いて試料の分析を行う。
【0015】
本発明の効果を顕著にするものとしては、前記試料がゲルであり、前記試料分析部が、前記ゲルの格子間距離又は前記ゲルの硬さを分析するものであることが望ましい。
【0016】
前記試料を収容する測定セルと、前記測定セルに対する前記検査光の照射位置を変更する照射位置変更機構とを備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように構成した本発明によれば、基準関数に対する比較対象関数のずれ量が所定範囲内と判定された比較対象関数を用いて試料を分析するので、特異的な自己相関関数や夾雑物に起因する自己相関関数等の不適切な自己相関関数を排除して、正確に試料を分析することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明に係る試料分析装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態の試料分析装置100は、動的光散乱法(光子相関法)を用いて試料の分析を行うものである。なお、この試料分析装置100により測定される試料としては、測定位置を変えて複数点の測定を行う必要を有する試料であり、具体的には非エルゴード性を有する試料(非エルゴード性試料(時間平均とアンサンブル平均とが異なる試料))である。本実施形態の試料分析装置100は、ゲルの格子間距離(網目サイズ)などの構造及び硬さなどの物性を分析するものである。
【0021】
具体的に試料分析装置100は、
図1に示すように、試料を収容する測定セル2と、測定セル2に対して検査光L1を照射する光照射部3と、測定セル2からの散乱光L2を検出する光検出部4と、光検出部4から出力される光強度信号(検出信号)に演算処理を施して試料の分析を行う情報処理装置5とを備えている。
【0022】
測定セル2は、透光性を有する材料から形成されている。測定セル2は、バッチ式の測定セルであっても良いし、外部配管に接続される導入ポート及び導出ポートを有するフロー式の測定セルであっても良い。
【0023】
光照射部3は、レーザ31及び当該レーザ31からのレーザ光を集光等する光学系32等を備えている。また、光検出部4は、試料からの散乱光の干渉光を集光等する光学系41及び当該光学系41により集光された干渉光を電気的な検出信号に変換する光検出器42等を備えている。
【0024】
また、本実施形態では、測定セル2に収容された試料の複数点に検査光L1を照射できるように構成されている。具体的には、測定セル2に対する検査光L1の照射位置を変更する照射位置変更機構6を備えている。照射位置変更機構6としては、光照射部3及び光検出部4を固定して、測定セル2を移動させる構成が考えられる。この場合、検査光L1の光路を横切る方向に沿って測定セル2を多段階に移動させる構成とする。なお、照射位置変更機構6の具体例としては、測定セル2を少なくとも二次元的にスライド移動可能に保持する直動機構と、当該直動機構に保持された測定セル2を移動させるモータやエアシリンダ等のアクチュエータとを備えている。
【0025】
そして、照射位置変更機構6は、
図2に示すように、測定セル2の矩形状をなす光入射面において、例えば対角線上のN点に検査光L1が照射されるように測定セル2を上下方向及び左右方向に移動させる。なお、複数の照射位置は、対角線上に限られず、マトリックス状の複数点であっても良いし、上下方向又は左右方向の直線上の複数点であっても良い。
【0026】
その他、測定セル2を固定して、光照射部3及び光検出部4を移動させる構成としても良い。また、測定セル2と光照射部3及び光検出部4とを互いに相対移動させる構成としても良い。
【0027】
情報処理装置5は、ゲルの構造や物性を解析するものであり、自己相関関数演算部51、基準関数設定部52、自己相関関数判定部53及び試料分析部54等の機能を奏するものである。なお、情報処理装置5は、CPU、内部メモリ、入出力インターフェース、キーボード等の入力部、ディスプレイ等の表示部等を有する専用乃至汎用のコンピュータであり、前記内部メモリに本発明の試料分析プログラムがインストールされることによって前記各部51〜54等としての機能を奏する。
【0028】
自己相関関数演算部51は、光検出部4(光検出器42)からの出力される検出信号を取得する。そして、自己相関関数演算部51は、取得した検出信号をフーリエ変換してパワースペクトルを求めて、当該パワースペクトルを逆フーリエ変換して前記検出信号の自己相関関数を求める。また、自己相関関数演算部51は、照射位置変更機構6により変更された各照射位置において自己相関関数を求める。
【0029】
基準関数設定部52は、試料分析に用いる自己相関関数を取捨選択するための基準となる自己相関関数(以下、基準関数という。)を設定するものである。また、基準関数設定部52は、照射位置変更機構6により変更された各照射位置において基準関数を設定する。さらに、基準関数設定部52は、各照射位置において自己相関関数判定部53により求められた自己相関関数を用いて基準関数を設定する。具体的に設定方法については、後述する。
【0030】
自己相関関数判定部53は、基準関数設定部52により設定された基準関数と、自己相関関数演算部51により演算された基準関数以外の自己相関関数(以下、比較対象関数という。)とを比較し、基準関数に対する比較対象関数のずれ量が所定範囲内か否かを判定するものである。本実施形態では自己相関関数判定部53は、各照射位置において基準関数と比較対象関数とを比較する。
【0031】
具体的な比較方法としては、所定の遅れ時間範囲において基準関数と比較対象関数とを比較する。
ここで、所定の遅れ時間範囲は、自己相関関数のグラフの横軸である遅れ時間(相関時間)τ(μs)又は遅れ時間の対数(log[τ(μs)])の所定範囲である。なお、横軸である遅れ時間τの単位はμsの他、任意の単位を用いることができる。
本実施形態では、各照射位置における遅れ時間τ又はその対数の最小値(横軸最小点)から遅れ時間τ又はその対数の最大値(横軸最大点)までの全範囲において基準関数と比較対象関数とを比較する。なお、所定の遅れ時間範囲は、遅れ時間τ又はその対数の最小値(横軸最小点)から遅れ時間τ又はその対数の最大値(横軸最大点)の全範囲における一部の範囲であっても良い。
【0032】
また、具体的な判定方法としては、各遅れ時間τにおいて、基準関数に対する比較対象関数のずれ量が所定の閾値以内か否かを判定する。
ここで、各遅れ時間τに用いる所定の閾値としては、例えば基準関数の±X%の値である。
本実施形態の所定の閾値は、所定の遅れ時間τ
0における基準関数の値の±X%を、各遅れ時間τにおける判定の代表値として用いることができる。なお、各遅れ時間τにおける基準関数の値の±X%を、各遅れ時間τにおける所定の閾値としても良いが、この場合、所定の閾値は遅れ時間τ毎に異なることになる。
【0033】
図3に示すように、所定の遅れ時間τにおける基準関数のX%を基準関数に加算した自己相関関数を上限閾値とし、前記所定の遅れ時間τにおける基準関数のX%を基準関数から差し引いた自己相関関数を下限閾値としたときに、前記ずれ量が所定の閾値以内の場合には、上限閾値及び下限閾値の間の領域内に比較対象関数が含まれることになる。この場合、上限閾値及び下限閾値の間の領域は、横軸において一定幅を有することになる。なお、この上限閾値及び下限閾値の間の領域は、横軸において変化する幅を有するものであっても良い。
【0034】
なお、
図3から明らかなように、自己相関関数判定部53は、基準関数のX%を当該基準関数に加算した自己相関関数を上限基準関数として設定し、比較対象関数が上限基準関数よりも小さいか否かを判定し、基準関数のX%を当該基準関数から差し引いた自己相関関数を下限基準関数として設定し、比較対象関数が下限基準関数よりも大きいか否かを判定するようにしても良い。その他、比較対象関数が基準関数よりも大きい場合(「基準関数」−「比較対象関数」<0)の閾値(X
1%)と、比較対象関数が基準関数よりも小さい場合「基準関数」−「比較対象関数」>0)の閾値(X
2%)とが互いに異なるようにしても良い。
【0035】
基準関数に対する比較対象関数のずれ量が所定の閾値以内か否かを判定するその他の方法としては、基準関数の波形形状と比較対象関数の波形形状との相関係数(ずれ量に相当)を求める。このとき、所定の遅れ時間τにおける基準関数の値と比較対象関数の値との相関係数を求める。そして、この相関係数が例えば0.8以上の所定範囲内か否かを判定する。ゲルの場合、その内部構造が不均一のため、ゲルの網状構造は同じでも、その濃度に濃い・薄いがある。単純にオフセットしているような自己相関関数は、ゲルの網状構造は同じであり、その濃度が異なるものである。このため、ゲルの構造を分析する場合は、前記相関係数で判断することによって、上述した比較対象関数と上限閾値及び/又は下限閾値との比較をする場合に比べて、分析に使用できる自己相関関数の数が増えて、分析精度を向上させることができるとともに、分析時間を短縮することができる。
【0036】
試料分析部54は、各照射位置において基準関数とのずれ量が所定範囲内と判断された比較対象関数を取得する。本実施形態では、試料分析部54は、各照射位置において複数の比較対象関数を取得するように構成されており、各照射位置において複数の比較対象関数の平均値(以下、局所平均自己相関関数という。)を演算する。また、試料分析部54は、複数の照射位置それぞれで演算された局所平均自己相関関数を用いて、以下の式により、アンサンブル平均自己相関関数g
en(1)(τ)を演算する。
【0038】
ここで、g
t(2)(τ)は、各照射位置において得られた局所平均自己相関関数である。
<I>
tは、各照射位置において得られた局所平均自己相関関数のカウントレート[kCPS]である。なお、カウントレートは、光子相関法で、光検出部で検出される1秒間当たりの格子パルス数であり、検出した散乱光強度に比例する。局所平均自己相関関数のカウントレートとは、平均された複数の比較対象関数のカウントレートである。
記号<>
enは、アンサンブル平均に用いたm(≦Nの自然数)個のデータの平均値を示す。
【0039】
そして、試料分析部54は、アンサンブル平均相関関数を用いて、試料であるゲルの格子間隔(網目サイズ)や緩和率Γ(μsec
−1)等を演算する。例えば、試料分析部54は、格子間隔の平均値、モード値又は標準偏差、或いは、緩和率Γの平均値、モード値又は標準偏差等を演算する。なお、緩和率Γは、拡散定数Dと散乱ベクトルqとからΓ=Dq
2で求まる。
【0040】
具体的に試料分析部54は、以下の式により示されるアンサンブル平均相関関数g
en(1)(τ)の動的成分Δg
en(1)(τ)(
図4参照)を用いて、格子間隔の平均値、モード値又は標準偏差、或いは、緩和率Γの平均値、モード値又は標準偏差等を演算する。
【0042】
ここで、g
en(1)(∞)は、
図4に示すように、アンサンブル平均相関関数の収束値(最小値)である。
【0043】
また、試料分析部54は、アンサンブル平均相関関数の収束値g
en(1)(∞)から、ゲルの硬さを演算する。例えば、試料分析部54は、前記収束値g
en(1)(∞)と硬さとの関係式を予め持っておき、当該関係式に前記収束値g
en(1)(∞)を代入することによって、硬さを演算する。
【0044】
さらに、試料分析部54は、図示しない表示部(例えばディスプレイ)に前記演算結果を同一画面上に並べて表示又は切り替え表示する。前記演算結果の表示の態様としては、例えば、測定項目ごとにグラフ形式又は表形式で表示することが考えられる。その他、測定項目によっては、複数種類の測定項目を同一グラフ上に重ねて表示しても良い。
【0045】
次に、試料分析装置を用いた試料測定方法について
図2及び
図5を参照して説明する。
【0046】
試料を収容したバッチ式の測定セル2を試料分析装置100にセットする(ステップS1)。なお、測定セルがフロー式の場合には測定セル2に試料を導入する。
【0047】
<プレ測定>
複数の照射位置のうち、第1番目の照射位置における基準関数を取得するための測定を開始する(ステップS2)。自己相関関数演算部51は、第1番目の照射位置における自己相関関数を演算する。そして、自己相関関数演算部51は、その自己相関関数を基準関数設定部52に出力する(ステップS3)。
【0048】
基準関数設定部52は、ステップS3で得られた自己相関関数が基準関数とすべきか否かをユーザに選択させるために図示しない表示部(例えばディスプレイ)に表示する。ユーザは、この表示部に出力された自己相関関数を見て基準とすべきか否かを判断する(ステップS4)。ユーザは、その自己相関関数を基準とすべきと判断した場合、図示しない入力手段によって基準関数設定信号を入力する。この基準関数設定信号を受け付けた基準関数設定部52は、前記表示された自己相関関数を基準関数に設定する(ステップS5)。
【0049】
一方で、ユーザは、表示された自己相関関数が基準とすべきではないと判断した場合、前記入力手段によって不採用信号を入力する。基準関数設定部52が不採用信号を受け付けた場合、試料分析装置100は待機状態に戻り、例えば基準関数設定部52は試料の再調整を促す表示を前記表示部に表示する(ステップS6)。その他、第1番目の照射位置における自己相関関数の取得を諦めて、第2番目の照射位置における基準関数を取得するための測定を開始するようにしても良い。
【0050】
<本測定>
前記ステップS5において、基準関数設定部52が第1番目の照射位置における基準関数を設定した後、第1番目の照射位置における比較対象関数を取得するための測定を開始する(ステップS7)。自己相関関数演算部51は、第1番目の照射位置における自己相関関数を演算し、その自己相関関数を自己相関関数判定部53に出力する(ステップS8)。
【0051】
自己相関関数判定部53は、第1番目の照射位置において取得された自己相関関数(比較対象関数)と基準関数とを比較して、そのずれ量が所定範囲内か否かを判定する(ステップS9)。そして、自己相関関数判定部53は、前記ずれ量が所定範囲内の比較対象関数のみを試料分析部54に出力する(ステップS10)。この処理(S8〜S10)を繰り返し、第1番目の照射位置において、ずれ量が所定範囲内と判断された比較対象関数が所定数(例えば10個)取得された時に第1番目の照射位置における自己相関関数の取得を終了する(ステップS11)。
【0052】
なお、上記の処理(S8〜S10)を所定回数繰り返しても、ずれ量が所定範囲内と判断された比較対象関数が所定数(例えば10個)取得できない場合には、第1番目の照射位置における自己相関関数の取得を諦めて、第2番目の照射位置における自己相関関数の取得に移行しても良い。また、各照射位置において前記基準関数及び比較対象関数を取得するまで、当該照射位置には光照射部3からの検査光L1が連続的に照射されている。
【0053】
上記の通り、第1番目の照射位置においてプレ測定及び本測定が終了した後、試料分析装置は、第2番目の照射位置に測定セル2を移動させる。そして、前記ステップS2〜S3と同様にして、第2番目の照射位置においてプレ測定及び本測定を行う。その後、第N番目の照射位置まで同様のステップを繰り返す(ステップS12)。
【0054】
なお、各照射位置において設定された基準関数及び比較対象関数は、図示しない表示部に同一画面又は互いに異なる画面に表示可能とされている。また、各照射位置に設定された基準関数は、後述する比較対象関数とともに、局所平均相関関数の演算に加えても良い。
【0055】
その後、試料分析部54は、各照射位置で取得された所定数の比較対象関数を、各照射位置毎に平均して局所平均相関関数を演算する(ステップS13)。そして、試料分析部54は、各照射位置での局所平均相関関数をアンサンブル平均することによってアンサンブル平均相関関数を演算する(ステップS14)。試料分析部54は、そのアンサンブル平均相関関数を用いて試料の構造及び物性を分析する(ステップS15)。
【0056】
このように構成した試料分析装置100によれば、以下のような効果を奏し得る。
すなわち、本実施形態の試料分析装置100は、基準関数に対する比較対象関数のずれ量が所定範囲内と判定された比較対象関数を用いて試料を分析するので、特異的な自己相関関数や夾雑物に起因する自己相関関数等の不適切な自己相関関数を排除して、正確に試料を分析することができる。
自己相関関数判定部53が、複数点それぞれに対応した基準関数を用いて各点での比較対象関数を判定するので、各点において適切な自己相関関数(ずれ量が所定範囲内の比較対象関数)を得ることができ、正確に試料を分析することができる。
基準関数設定部52が、比較対象関数が求められる試料と同一試料を用いて基準関数を設定するので、試料に合わせた基準関数を用意することができ、より適切な自己相関関数(ずれ量が所定範囲内の比較対象関数)を得ることができ、正確に試料を分析することができる。
また、本実施形態では各照射位置においてプレ測定及び本測定を連続して行っているので、プレ測定の照射位置及び本測定の照射位置を一致させることができるとともに、試料であるゲルに経時変化が生じない又はその変化が小さいうちに、その位置での測定を行うことができる。
【0057】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0058】
例えば、前記実施形態では、各照射位置においてプレ測定及び本測定を連続して行っているが、プレ測定において複数の照射位置の基準関数を設定し、その後、本測定において複数の照射位置の比較対象関数を取得するようにしても良い。
【0059】
また、前記実施形態では本測定において、各照射位置につき、1つの比較対象関数を取得した後に、その比較対象関数の判定を行うというステップを、適切な比較対象関数が所定数となるまで繰り返しているが、各照射位置につき、複数の比較対象関数を取得した後に、それら複数の比較対象関数を判定するようにしても良い。
【0060】
さらに、前記実施形態では本測定において、各照射位置において複数の適切な比較対象関数を取得しているが、1つの適切な比較対象関数を取得するものでも良い。この場合、各照射位置において1つの比較対象関数を取得し、その比較対象関数のずれ量が所定範囲外の場合には、次の照射位置での比較対象関数の取得に移行するようにすることが考えられる。また、複数の照射位置において共通の1つの基準関数を用いても良い。
【0061】
その上、前記実施形態では比較対象関数が求められる試料と同一試料を用いて基準関数を設定しているが、別の基準となる試料(例えば標準試料)を用いて設定しても良いし、過去に求められた基準関数を用いても良いし、シミュレーション等の演算により求められた基準関数を用いても良い。
【0062】
前記実施形態では、基準関数に対して上限基準関数及び下限基準関数を設定するものであったが、上限基準関数のみを設定して、比較対象関数が上限基準関数よりも小さいか否かを判定するものであっても良いし、下限基準関数のみを設定して、比較対象関数が下限基準関数よりも大きいか否かを判定するものであっても良い。
【0063】
前記実施形態の試料はゲルであったが、溶媒に粒状物質(例えば粒子、タンパク質、ナノファイバ)を分散させたもの、液相と気相の混合物でありバブルが分散したもの、一方の液体に他方の液体が粒子状で分散したもの(エマルジョン)であっても良い。
この場合、試料に異物又は異常サイズのバブルやエマルジョン等の夾雑物が含まれている場合には、それら夾雑物に起因する不適切な比較対象関数は基準関数との比較により排除することができる。
【0064】
その他、本発明は前記実施形態に限られること無く、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。