特許第6688290号(P6688290)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6688290複数箇所にて供給される希釈ガス流をもつ温度制御されたガス供給管
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688290
(24)【登録日】2020年4月7日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】複数箇所にて供給される希釈ガス流をもつ温度制御されたガス供給管
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/448 20060101AFI20200421BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20200421BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   C23C16/448
   H01L21/31 B
   C23C16/52
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-518109(P2017-518109)
(86)(22)【出願日】2015年10月1日
(65)【公表番号】特表2017-537220(P2017-537220A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(86)【国際出願番号】EP2015072669
(87)【国際公開番号】WO2016062514
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2018年9月27日
(31)【優先権主張番号】102014115497.5
(32)【優先日】2014年10月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502010251
【氏名又は名称】アイクストロン、エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(72)【発明者】
【氏名】ゲルスドルフ、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ダウエルスベルグ、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】パガダラ・ゴピ、バスカール
(72)【発明者】
【氏名】ロング、ミヒャエル
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−349439(JP,A)
【文献】 特開2008−240153(JP,A)
【文献】 特表2005−520687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/448
C23C 16/52
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の有機物層を基板(20)上に堆積させるために、第1の気化器(1’,11’)を具備する第1のプロセスガスソース(1,11)を有し、前記第1の気化器(1’,11’)において固体又は液体の開始物質が第1のソース温度制御装置(2,12)により発生した第1のソース温度(T1、T1’)の熱を供給されることによってガス状開始物質に気化可能であり、
前記ガス状開始物質を前記第1の気化器(1’,11’)から第1の輸送管(5,15)に搬送するための搬送ガス流を供給するために前記第1の気化器(1’,11’)に第1の搬送ガス供給管(4,14)が開口しており、前記第1の輸送管(5,15)が第1の管温度制御装置(7,17)により第1の管温度(T2,T2’)に温度制御可能であり、かつ、
前記第1の輸送管(5,15)に希釈ガス流を供給するために前記第1の輸送管(5,15)に第1の希釈ガス供給管(8,18)が開口しており、前記第1の希釈ガス供給管(8,18)が前記第1の管温度制御装置(7,17)の上流側に配置されており、さらに、
ガス入口温度制御装置(32)を用いてガス入口温度(T5)に温度制御可能であり前記第1の輸送管(5,15)と連通接続されているガス入口部材(31)を有し、
希釈ガス流を前記ガス入口部材(31)に供給するために別の希釈ガス供給管(34)が前記ガス入口温度制御装置(32)の上流側にて前記ガス入口部材(31)に開口しており、それにより前記ガス状開始物質を、サセプタ(35)を有するプロセスチャンバ(30)に供給可能であり、
前記サセプタが、サセプタ温度制御装置(37)によりサセプタ温度(T6)に温度制御可能であることによって前記サセプタ(35)上に載置された前記基板(20)上に前記ガス状開始物質を用いて層が成長し、かつ、制御装置が、前記第1のソース温度制御装置(2,12)を前記第1のソース温度(T1,T1’)に、前記第1の管温度制御装置(7,17)を第1の管温度(T2,T2’)に、前記ガス入口温度制御装置(32)をガス入口温度(T5)に、そして前記サセプタ温度制御装置(37)をサセプタ温度(T6)に温度制御する装置において、
前記制御装置が、層の堆積中に、前記第1のソース温度(T1、T1’)が前記第1の管温度(T2,T2’)より高く、前記第1の管温度(T2,T2’)が前記ガス入口温度(T5)より高く、かつ、前記ガス入口温度(T5)が前記サセプタ温度(T6)より高くなるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
1又は複数の有機物層を少なくとも1つの基板(20)上に堆積させるために、第1の気化器(1’,11’)を具備する第1のプロセスガスソース(1,11)を有し、前記第1の気化器(1’,11’)において固体又は液体の開始物質が第1のソース温度制御装置(2,12)により発生した第1のソース温度(T1、T1’)の熱を供給されることによってガス状開始物質に気化され、
前記第1の気化器(1’,11’)に第1の搬送ガス供給管(4,14)が開口しており、その中に第1の搬送ガス流が供給され、それにより前記ガス状開始物質が前記第1の気化器(1’,11’)から第1の輸送管(5,15)に搬送され、前記第1の輸送管(5,15)が第1の管温度制御装置(7,17)により第1の管温度(T2,T2’)に温度制御され、かつ、
前記第1の輸送管(5,15)に第1の希釈ガス供給管(8,18)が開口しており、それにより前記第1の輸送管(5,15)に希釈ガス流が供給され、前記第1の希釈ガス供給管(8,18)が前記第1の管温度制御装置(7,17)の上流側に配置されており、さらに、
ガス入口温度制御装置(32)を用いてガス入口温度(T5)に温度制御され前記第1の輸送管(5,15)と連通接続されているガス入口部材(31)を有し、
希釈ガス流を前記ガス入口部材(31)に供給するために別の希釈ガス供給管(34)が前記ガス入口温度制御装置(32)の上流側にて前記ガス入口部材(31)に開口しており、それにより前記ガス状開始物質が、サセプタ(35)を有するプロセスチャンバ(30)に供給され、
前記サセプタが、サセプタ温度制御装置(37)によりサセプタ温度(T6)に温度制御され、前記サセプタ(35)上に載置された少なくとも1つの前記基板(20)上に前記ガス状開始物質を用いて層が成長させられる方法において、
層の堆積中に、前記第1のソース温度(T1、T1’)が前記第1の管温度(T2,T2’)より高く、前記第1の管温度(T2,T2’)が前記ガス入口温度(T5)より高く、かつ、前記ガス入口温度(T5)が前記サセプタ温度(T6)より高いことを特徴とする方法。
【請求項3】
第2の気化器(11’)を具備する第2のプロセスガスソース(11)を有し、前記第2の気化器(11’)において固体又は液体の第2の開始物質が第2のソース温度制御装置(12)により発生した第2のソース温度(T1’)の熱を供給されることによってガス状開始物質に気化可能であり、
記ガス状開始物質を前記第2の気化器(11’)から第2の輸送管(15)に搬送するための第2の搬送ガス流を供給するために前第2の記気化器(11’)に第2の搬送ガス供給管(14)が開口しており、前記第2の輸送管(15)第2の管温度制御装置(17)により第2の管温度(T2’)に温度制御可能であり、かつ、
前記第2の輸送管(15)に第2の希釈ガス流を供給するために、前記第2の輸送管(15)に第2の希釈ガス供給管(18)が開口しており、前記第2の希釈ガス供給管(18)が前記第2の管温度制御装置(17)の上流側に配置されており、さらに、
前記第1の輸送管(5)及び前記第2の輸送管(15)が混合器(21)に開口しており、それは混合器温度制御装置(22)により混合器温度(T3)に温度制御され、
前記混合器温度制御装置(22)の上流側にて第3の希釈ガス供給管(24)が前記混合器(21)に開口しており、それにより希釈ガス流が前記混合器(21)に供給されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
第2の気化器(11’)を具備する第2のプロセスガスソース(11)を有し、前記第2の気化器(11’)において固体又は液体の第2の開始物質が第2のソース温度制御装置(12)により発生した第2のソース温度(T1’)の熱を供給されることによってガス状開始物質に気化され、
前記第2の気化器(11’)に第2の搬送ガス供給管(14)が開口しており、その中に第2の搬送ガス流が供給され、それにより前記ガス状開始物質が前記第2の気化器(11’)から第2の輸送管(15)に搬送され、前記第2の輸送管(15)第2の管温度制御装置(17)により第2の管温度(T2’)に温度制御され、かつ
前記第2の輸送管(15)に第2の希釈ガス供給管(18)が開口しており、それを通して第2の希釈ガス流が前記第2の輸送管(15)に供給され、前記第2の希釈ガス供給管(18)が前記第2の管温度制御装置(17)の上流側に配置されており、
前記第1の輸送管(5)及び前記第2の輸送管(15)が混合器(21)に開口しており、それは混合器温度制御装置(22)により混合器温度(T3)に温度制御され、
前記混合器温度制御装置(22)の上流側にて第3の希釈ガス供給管(24)が混合器(21)に開口し、それにより希釈ガス流が前記混合器(21)に供給されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記混合器温度(T3)が前記第1及び前記第2の管温度(T2,T2’)よりも低くかつ前記ガス入口温度(T5)よりも高いことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記混合器温度(T3)が前記第1及び前記第2の管温度(T2,T2’)よりも低く
かつ前記ガス入口温度(T5)よりも高いことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ガス状開始物質を前記混合器(21)から前記ガス入口部材(31)に搬送するために前記混合器(21)の下流側でかつ前記ガス入口部材(31)の上流側に配置された第3の輸送管(25)を有し、前記第3の輸送管(25)は第3の管温度制御装置(27)により第3の管温度(T4)に温度制御され、
希釈ガス流を前記第3の輸送管(25)に供給するために前記第3の管温度制御装置(27)の上流側にて第4の希釈ガス供給管(28)が前記第3の輸送管(25)に開口していることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記混合器(21)の下流側でかつ前記ガス入口部材(31)の上流側に配置された第3の輸送管(25)を有し、それを通して前記ガス状開始物質が前記混合器(21)から前記ガス入口部材(31)に搬送され、前記第3の輸送管(25)は第3の管温度制御装置(27)により第3の管温度(T4)に温度制御され、
前記第3の管温度制御装置(27)の上流側にて第4の希釈ガス供給管(28)が前記第3の輸送管(25)に開口しており、それにより希釈ガスが前記第3の輸送管(25)に供給されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記混合器温度(T3)が前記第3の管温度(T4)よりも高くかつ前記第3の管温度(T4)が前記ガス入口温度(T5)よりも高いことを特徴とする請求項3、5又は7に記載の装置。
【請求項10】
前記混合器温度(T3)が前記第3の管温度(T4)よりも高くかつ前記第3の管温度(T4)が前記ガス入口温度(T5)よりも高いことを特徴とする請求項4、6又は8に記載の方法。
【請求項11】
前記気化器(1’,11’)と前記ガス入口部材(31)の間で複数の希釈ガス流を、前記ガス状開始物質の流れ方向において別々の互いに離れた複数の箇所にて、少なくとも前記第1の管温度(T2,T2’)及び前記ガス入口温度(T5)にそれぞれ加熱される部分の上流側に供給することにより、搬送ガス流における前記ガス状開始物質の分圧が、流れ方向の下流側に向かって段階的に低下させられ、その場合、各箇所においてガス流の温度が前記ガス状開始物質の凝縮温度よりも高くなるように、前記加熱される部分が加熱されることを特徴とする請求項2、4、6、8又は10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に1又は複数の、特に有機物層を堆積するための装置及び方法に関し、気化器を具備するプロセスガスソースを有し、その気化器において、固体又は液体の開始物質が、ソース温度制御装置により生成されたソース温度の熱を供給されてガス状開始物質に気化可能であり、その場合、ガス状開始物質を気化器から第1の輸送管に輸送するための搬送ガス流を供給するべく搬送ガス供給管が気化器に開口しており、その場合、第1の輸送管は、管温度制御装置により管温度に温度制御可能であり、かつ、希釈ガス流を第1の輸送管に供給するべく第1の希釈ガス供給管が第1の輸送管に開口しており、その場合、第1の希釈ガス供給管は、管温度制御装置の上流側に配置されており、かつ、ガス入口温度制御装置を用いてガス入口温度に制御可能なガス入口部材を有し、それは第1の輸送管と連通接続されている。
その場合、別の希釈ガス供給管が、希釈ガス流をガス入口部材に供給するべくガス入口温度制御装置の上流側にてガス入口部材に開口しており、それと共にガス状開始物質をプロセスチャンバに供給可能であり、プロセスチャンバはサセプタと制御装置とを有し、サセプタは、サセプタ温度制御装置を用いてサセプタ温度に温度制御可能であることによりサセプタ上に載置された基板の上にガス状開始物質を用いて層を成長させることができ、かつ、制御装置は、ソース温度制御装置がソース温度に、管温度制御装置が管温度に、ガス入口温度制御装置がガス入口温度に、そしてサセプタ温度制御装置がサセプタ温度に温度制御するように構成されている。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から金属を堆積させるための装置が公知であり、それによればソース内で金属カルボニルが気化温度に加熱される。
搬送ガスを用いて金属カルボニルが、加熱されたガス供給管を通ってプロセスチャンバのガス入口部材に供給され、その中に希釈ガスが付加的に供給される。
ソース温度より高い温度に加熱された基板上に、金属カルボニルが熱分解により堆積することとなる。
【0003】
特許文献2は、凝縮コーティングのための装置及び方法を開示する。貯蔵容器中に収容された液体開始物質が、加熱により気化させられる。その蒸気は、ソースよりも高温のガス供給管を通ってガス入口部材に到達し、そこから開始物質はプロセスチャンバへ流れ、その中には基板があり、その上で開始物質が凝縮されることとなる。
【0004】
特許文献3は、液体開始物質の気化のための方法及び装置を開示する。これはポンプにより貯蔵容器から搬送され、その後加熱されて気化される。
【0005】
特許文献4は、固体開始物質の気化のための装置を開示する。有機開始物質が、多孔性容器中の加熱可能なプロセスガスソースに収容されている。多孔性容器を通して搬送ガス流が通過させられる。容器が加熱されることにより、固体開始物質が気化させられる。そのようにして得られたガス状開始物質は、反応炉のプロセスチャンバに導入される。プロセスチャンバはサセプタを有し、その上に基板が載置され、基板の上にガス状開始物質が凝縮する。
【0006】
特許文献5は、基板にコーティングするための方法及びそれに対応する装置を開示する。プロセスガスソースは、それらの各々が粉状開始物質をそれぞれ収容した容器を有する。加熱により、粉状開始物質はガス状開始物質に変化させられ、搬送ガスによりプロセスチャンバに運ばれる。
【0007】
特許文献6は、凝縮コーティング方法を開示しており、それによればプロセスガスソースが設けられ、それは加熱によりガス状開始物質を供給し、搬送ガスにより反応炉のガス入口部材へ運ばれる。これは、希釈ガス供給管が開口する輸送管を用いて行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0241381号公報
【特許文献2】国際公開第 01 / 61071号
【特許文献3】欧州特許出願公開第0 849 375号公報
【特許文献4】国際公開第2012/175128号
【特許文献5】独国特許出願公開第10 212 923 号公報
【特許文献6】国際公開第01/61071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
汎用的な方法又は汎用的な装置においては、ガス状開始物質がプロセスガスソースを用いて与えられ、その凝縮温度は、室温よりもかなり高い。これは、気化器からガス入口部材までの輸送管全体が加熱されなければならなくなることのみではない。開始物質の凝縮がガス入口部材で起きないようにガス入口部材もまた加熱されなければならない。ガス入口部材はプロセスチャンバの天井を構成する。それは多数のガス出口孔を具備するガス出口面を有し、それらを通して搬送ガスにより搬送されたプロセスガスがプロセスチャンバに流入する。1又は複数の基板が載置されるサセプタの上面側は、出口面の下方のほんの短い距離に配置されている。基板の上面側に、気化した有機材料から層が堆積されることとなる。これは凝縮により行われる。従って、基板の上面は、比較的低温でなければならない。このために、基板が載置されるサセプタは、積極的に冷却される。ガス出口面は、熱放射によるだけでなく熱伝導によっても基板上面に熱を与える。この熱は、温度勾配を維持することにより、基板表面からサセプタの冷却装置へ放散されなければならない。これは、外部パワーを適用することによってのみ可能である。
【0010】
本発明は、サセプタ冷却の冷却パワーを低減することができる手段を提供する課題に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項に記載された本発明により実現され、各請求項は、この課題の別々の解決手段を構成している。
【0012】
第1の希釈ガス供給管が、管温度制御装置の上流側に配置されている。さらに、別の希釈ガス供給管が、ガス入口温度制御装置の上流側でガス入口部材に開口している。希釈ガス供給管を通して、不活性ガス流が、プロセスガスソースとガス入口部材の間の管接続部分に導入される。希釈ガスは、搬送ガスをも構成するガス、例えばアルゴン、窒素又は水素であることが好適である。従って、気化器からガス入口部材までの輸送経路上にてガス状開始物質の少なくとも2段階の希釈が行われる。連続的又は段階的な希釈は、気化器からガス入口部材までのガス輸送管の管温度を、段階的に、もし適切であるなら連続的に低下させることができることが必須要件となる。従って、ソース温度は管温度よりも高く、そして管温度はガス入口温度よりも高く、そしてガス入口温度はサセプタ温度よりも高くなるように構成されている。
【0013】
本発明による装置は、制御装置を有し、それによってソース温度制御装置がソース温度に、管温度制御装置が管温度に、ガス入口温度制御装置がガス入口温度に、そしてサセプタ温度制御装置がサセプタ温度に制御される。この装置設計又は方法制御の結果、ガス入口部材のガス出口面とガス出口面に対向する基板上面との間の温度差が、従来技術におけるよりも低減される。その結果、ガス入口部材からサセプタへ伝導する熱がより少なくなる。サセプタの冷却パワーが低減される。これはまた、基板内の鉛直方向の温度勾配が従来技術におけるよりも低減される結果となる。
【0014】
本発明の更なる改良は、2個又はそれ以上のプロセスガスソースを設けた構成にある。2個又はそれ以上のプロセスガスソースの各々が気化器を有し、その中で固体又は液体の開始物質が加熱されてガス状開始物質に気化される。このために、気化器に熱が供給される。各気化器が、気化熱を発生するためにソース温度制御装置を有する。各ソースは、ソース温度に維持される。2つのソース温度は互いに異ならせることができる。同様に、開始物質も互いに異ならせることができる。
【0015】
2個又はそれ以上の気化器は、それぞれ輸送管を介して混合器と接続されている。各輸送管は、管温度に温度制御可能な管温度制御装置を有する。各輸送管において、管温度制御装置の上流側にて希釈ガス流が供給される。
【0016】
これらのガス混合物は、混合器に供給される。混合器は、混合器を混合器温度に温度制御可能な混合器温度制御装置を有する。混合器温度は、各管温度よりも低い。しかしながら、混合器温度は、ガス入口温度よりも高い。
【0017】
本発明の更なる改良においては、混合器が、さらに別の、特に第3の輸送管を介してガス入口部材と連通接続された構成を有する。この第3の輸送管もまた、管温度に、特に第3の管温度に温度制御可能な管温度制御装置を有する。第3の管温度制御装置の上流側において、別の希釈ガス供給管が第3の輸送管に開口しており、それを通して希釈ガス流が輸送管に供給される。第3の管温度は、混合器温度とガス入口温度の間にある。
【0018】
本発明による装置における本発明による方法制御の結果、連続的又は段階的に希釈されたプロセスガス流の温度が、気化器からガス入口部材のガス出口面まで連続的又は段階的に低下させられる。これは、ガス流におけるガス状開始物質の分圧が、希釈の結果、段階的又は連続的に低下させられることによって可能となる。しかしながら、気化器とガス入口部材のガス出口孔の間のガス供給管システムにおけるいずれの箇所においても、ガス流の温度は、ガス状開始物質の凝縮箇所よりも高くなっている。
本発明の実施形態の例は、以下に示す添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明による装置の概略図である。
図2図2は、気化器1からサセプタ35までのガス供給管システムの内部の温度分布を概略的に示す。
図3図3は、装置の制御ユニットを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に概略的にのみ示す装置は反応炉10を有し、それは外部に対して気密性をもって閉じられたハウジングである。そのハウジングは、ポンプに接続された排出口36により排気される。反応炉10の内部には金属製のサセプタ35があり、その中に冷却チャネル7が配置されており、それにより、冷却ブロックとして構成されたサセプタ35の上面が、−50〜10℃のサセプタ温度Tに温度制御される。サセプタ35の上面は、プロセスチャンバ30の床を構成しており、その上に1又は複数の基板20が配置される。プロセスチャンバ30の天井は、ガス入口部材31のガス出口面から構成されている。ガス入口部材31のガス出口面は、篩い状にガス出口面全体に均一分散した多数のガス出口孔33を有し、それらからプロセスガスがプロセスチャンバ30に流入することができる。ガス入口部材31は、シャワーヘッド状に構成することができる。
【0021】
プロセスガスはガス状開始物質を含み、それは、その凝縮箇所におけるよりも高い温度Tでプロセスチャンバ30に供給される。基板20の上面の温度がガス状開始物質の凝縮温度よりも低いことにより、ガス状開始物質が基板20の上面に層として凝縮する。
【0022】
ガス入口部材31の内部には、温度制御装置32が設けられている。実施例では加熱装置として構成されているこの温度制御装置32を用いて、ガス状開始物質が温度T(ガス入口温度)に温度制御される。
【0023】
この装置は、少なくとも1つのソース1を有し、その中に固体又は液体の開始物質3が準備され保持されている。開始物質3は、ソース温度Tに維持されており、その温度はガス入口温度Tよりも高い。開始物質3は、多孔体として、粉体等として収容することができる。しかしながら、開始物質は、多孔体上のコーティングとすることもできる。加熱装置を有するソース温度制御装置2が設けられている。その加熱装置により、開始物質を収容する気化器1’に連続的に熱が供給されることにより、開始物質3がガス状とされる。しかしながら、固体開始物質に替えて液体開始物質も用いることができる。
【0024】
搬送ガス供給管4が気化器1’に開口している。マスフローコントローラ41を用いて搬送ガス流が気化器1’に供給される。それは、アルゴン、窒素、水素又は他の不活性ガスである。ガス状に変化した開始物質3は、ガス出口6を通って気化器1’から搬送される。ガス出口6は輸送管5と接続されており、それによりガス状の開始物質はガス出口6から輸送管5に供給されることができる。ガス出口6の直ぐ下流側において、希釈ガス供給管8が、ガス出口に接続されている輸送管5に開口している。希釈ガス供給管8を通って希釈ガスがガス輸送管に供給される。搬送ガス供給管に供給されるガスのマスフローと、希釈ガス供給管8に供給されるガスのマスフローは、マスフローコントローラ41、42により調整される。ガス状開始物質を搬送する搬送ガス流は、このようにして供給箇所9において希釈ガス流と混合され、その場合、希釈ガスは、搬送ガス流をも形成する同じガスである。
【0025】
供給箇所9に接続された輸送管5は、加熱装置7により加熱される。この管温度制御装置7は、加熱スリーブとして形成されている。それは、輸送管5を管温度Tに加熱し、その温度はソース温度Tよりも低い。
【0026】
実施例においては、第2の気化器11’を有する第2のプロセスガスソース11が設けられ、それは同様に加熱装置12を設けられており、それにより液体又は固体の開始物質13が第2のソース温度T’に温度制御される。ここでも、気化器11’に供給管14が開口しており、それを通して、マスフローコントローラ43により制御された搬送ガス流が気化器11’に供給される。搬送ガスは、気化した開始物質をガス出口16を通して気化器11’から運び出す。
【0027】
供給箇所19において、ガス流に希釈ガスが供給される。これは、希釈ガス供給管18により行われ、それを通して、マスフローコントローラ44により制御された希釈ガスのマスフローが供給される。
【0028】
供給箇所19の下流側には、加熱スリーブを巻かれた輸送管が延在し、管加熱ユニットを構成しており、それにより輸送管15が管温度T’に維持される。管温度T’は、ソース温度T’よりも低い。開始物質13は、異なる有機物である。
【0029】
輸送管5及び輸送管15は混合器21に開口し、その中には、輸送管5、15から混合器21に流入したガス混合物を互いに混合させるためにガス偏向要素23が配置されている。
【0030】
混合器21の内部には、混合器温度制御装置22が設けられている。ここでは加熱装置であり、それを用いて、混合器21及び特にガス偏向要素23が混合器温度Tに維持される。混合器温度Tは、管温度T、T’よりも低い。ガス状開始物質がガス偏向要素23上に凝縮することを回避するために、混合器21に流入した搬送ガスとガス状開始物質からなるガス混合物はさらに希釈される。このために、ガス偏向要素23の上流側に、そして特に加熱装置22の上流側にて、別の希釈ガス供給管24が混合器21の混合室に開口する。希釈ガス供給管24を通って混合室に供給される希釈ガス流は、マスフローコントローラ45により制御される。
【0031】
混合器21で混合された混合物は、ガス出口26を通って混合器21から運び出される。そこには、別の供給箇所29があり、そこで別の希釈ガス供給管28がガス流に開口している。希釈ガス供給管28を通って、マスフローコントローラ46により制御される別の希釈ガス流が、ガス流に流入する。供給箇所29は、ガス出口26の直ぐ下流側にある。
【0032】
供給箇所29の下流側に延在する輸送管25は、加熱スリーブ27により管温度Tに加熱されており、それは混合器温度Tよりも低く、ガス入口部材31の内部の温度Tよりも高い。
【0033】
輸送管25は、加熱装置32があるガス入口部材31に開口している。加熱装置32の上流側において、希釈ガス供給管34がガス入口部材31に開口しており、それを通って、マスフローコントローラ47により制御される別の希釈ガス流がガス入口部材31に供給される。従って、ガス入口部材31に供給されたガス流は、加熱装置32の上流側でさらに希釈される。
【0034】
ソース1、11又は気化器1’、11’とガス入口部材31の間のガス供給管におけるガス状開始物質の段階的希釈は、流れ方向においてガス供給管システムの内部における1又は複数のガス状開始物質の分圧の段階的低下を生じさせる。このことは、図2に示すように、上述したガス供給管システム中の温度プロフィールを可能とする。それによれば、ソース1、11又は気化器1’、11’とサセプタ35の間の温度が段階的に低下するが、図2の温度プロフィールは定性的にのみ示されたものである。温度TとTの間の温度差は、それ以外の温度ステップよりも大きくすることができる。
【0035】
図3は、制御部を示す。この制御部は、制御装置38を有し、それを用いて温度T、T、T’、T’、T、T、T及びTを制御することができる。これは、レギュレータと制御要素を用いて行われ、それは、加熱機能を具備する加熱装置2、7、12、17、22、27、32を設けている。温度T、T、T’、T’、T、T、T及びTは、サーモカップルにより計測され、制御装置38が調整するために利用される。制御装置は、冷却機能をもつ冷却装置7を設けている。さらに、制御装置は、マスフローコントローラ41−47を制御することができ、それらにより搬送ガス流又は希釈ガス流が調整される。
【0036】
以上の説明は、本願に包括的に含まれる本発明を説明するためのものであり、以下の特徴の組合せを用いて従来技術をそれぞれ別個に進展させるものである。すなわち:
【0037】
第1の希釈ガス供給管8、18が管温度制御装置7、17の上流側に配置され、かつ、別の希釈ガス供給管34がガス入口部材31に希釈ガス流を供給するためにガス入口温度制御装置32の上流側にてガス入口部材31に開口することを特徴とする装置。
【0038】
ソース温度制御装置2、12がソース温度T、T’に、管温度制御装置7、17が管温度T、T’に、ガス入口温度制御装置32がガス入口温度Tに、そしてサセプタ温度制御装置7がサセプタ温度Tに温度制御可能であるように構成された制御装置を特徴とする装置。
【0039】
第1の希釈ガス供給管8、18が管温度制御装置7、17の上流側に配置され、かつ、ガス入口温度制御装置32の上流側にてガス入口部材31に開口する別の希釈ガス供給管34を通してガス入口部材31に希釈ガス流が供給されることを特徴とする方法。
【0040】
第1のソース温度T、T’が管温度T、T’よりも高く、管温度T、T’がガス入口温度Tよりも高く、かつ、ガス入口温度Tがサセプタ温度Tよりも高いことを特徴とする装置。
【0041】
第2の気化器11’を具備するプロセスガスソースを有し、その場合、第2の気化器11’において固体又は液体の第2の開始物質が第2のソース温度制御装置12により生じた第2のソース温度T1’の熱を与えられることにより第2のガス状開始物質に気化可能であり、その場合、第2のガス状開始物質を第2の気化器11’から第2の輸送管15に搬送するための第2の搬送ガス流を供給するために第2の気化器11’に第2の搬送ガス供給管14が開口し、その場合、第2の輸送管15が第2の管温度制御装置17により第2の管温度T2’に温度制御されかつ第2の輸送管15に第2の希釈ガス供給管18が開口し、それを通して第2の希釈ガス流が第2の輸送管15に供給され、その場合、第1の輸送管5及び第2の輸送管15が混合器21に開口し、それは混合器温度制御装置22により混合器温度T3に温度制御され、その場合、混合器温度制御装置22の上流側にて希
釈ガス供給管24が混合器21に開口し、それにより希釈ガス流が混合器21に供給されることを特徴とする装置。
【0042】
第2の気化器11’を具備するプロセスガスソースを有し、その場合、第2の気化器11’において固体又は液体の第2の開始物質が第2のソース温度制御装置12により生じた第2のソース温度T1’の熱を与えられることにより第2のガス状開始物質に気化され、その場合、第2の気化器11’に第2の搬送ガス供給管14が開口し、そこに第2の搬送ガス流が供給され、それにより第2のガス状開始物質が第2の気化器11’から第2の輸送管15に搬送され、その場合、第2の輸送管15が第2の管温度制御装置17により第2の管温度T2’に温度制御されかつ第2の輸送管15に第2の希釈ガス供給管18が開口し、それを通して第2の希釈ガス流が第2の輸送管15に供給され、その場合、第1の輸送管5及び第2の輸送管15が混合器21に開口し、それは混合器温度制御装置22により混合器温度T3に温度制御され、その場合、混合器温度制御装置22の上流側にて希釈ガス供給管24が混合器21に開口し、それにより希釈ガス流が混合器21に供給されることを特徴とする方法。
【0043】
混合器温度Tが第1及び第2の管温度T、T’より低くかつガス入口温度Tよりも高いことを特徴とする装置。
【0044】
混合器21からガス入口部材31にガス状開始物質を搬送するために混合器21の下流側かつガス入口部材31の上流側に配置された輸送管25を有し、それは管温度制御装置27により管温度Tに温度制御され、その場合、希釈ガス流を輸送管25に供給するために管温度制御装置27の上流側にて希釈ガス供給管28が輸送管25に開口することを特徴とする装置。
【0045】
混合器21からガス入口部材31にガス状開始物質を搬送するために混合器21の下流側かつガス入口部材31の上流側に配置された輸送管25を有し、それは管温度制御装置27により管温度Tに温度制御され、その場合、管温度制御装置27の上流側にて希釈ガス供給管28が輸送管25に開口し、それにより希釈ガス流が輸送管25に供給されることを特徴とする方法。
【0046】
混合器温度Tが管温度Tより高くかつ管温度Tがガス入口温度Tより高いことを特徴とする装置。
【0047】
気化器1’、11’とガス入口部材31の間で複数の希釈ガス流を、流れ方向において別々の互いに離れた箇所にて、加熱された管接続部分に供給することにより、搬送ガス流におけるガス状開始物質の分圧が段階的に低下させられ、その場合、管接続部分の各箇所においてガス流の温度がガス状開始物質の凝縮温度よりも高くなるように管接続部分が加熱されることを特徴とする方法。
【0048】
開示された全ての特徴(それ自体もまた互いの組合せにおいても)本発明の本質である。本願の開示には、関係する優先権書類(先願の複写)もまたその全体が、それらの書類の特徴を本願の請求の範囲に組み込む目的も含め、ここに包含される。従属項はその構成により特徴付けられ、従来技術に対する独立した進歩性ある改良であり、特にこれらの請求項に基づく分割出願を行うためである。
【符号の説明】
【0049】
1:プロセスガスソース、1’:気化器、2:加熱装置T、3:開始物質、4:供給管1、5:輸送管、6:ガス出口、7:加熱装置T、8:供給管、9:供給箇所、10:CVD反応炉、11:プロセスガスソース、11’:気化器、12:加熱装置、13:開始物質、14:供給管、15:輸送管、16:ガス出口、17:加熱装置T’、18:供給管、19:供給箇所、20:基板、21:混合器、22:加熱装置T、23:ガス偏向要素、24:供給管3、25:輸送管、26:ガス出口、27:温度制御装置/加熱装置T、28:供給管、29:供給箇所、30:プロセスチャンバ、31:ガス入口部材、32:加熱装置T、33:ガス出口孔、34:供給管5、35:サセプタ、36:排出口、37:冷却装置T、38:制御装置、41:マスフローコントローラ/供給管1、42:マスフローコントローラ/供給管2、43:マスフローコントローラ/供給管1、44:マスフローコントローラ/供給管2、45:マスフローコントローラ/供給管3、46:マスフローコントローラ/供給管4、47:マスフローコントローラ/供給管5、T:ソース温度、T:管温度、T:混合器温度、T:管温度、T:ガス入口温度、T:凝縮温度、T:ソース温度
図1
図2
図3