特許第6688500号(P6688500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688500
(24)【登録日】2020年4月8日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】導電性ペースト及び太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20200421BHJP
   H01L 31/0224 20060101ALI20200421BHJP
   H01L 31/068 20120101ALI20200421BHJP
   C03C 8/18 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   H01B1/22 A
   H01L31/04 264
   H01L31/06 300
   C03C8/18
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-128676(P2016-128676)
(22)【出願日】2016年6月29日
(65)【公開番号】特開2018-6064(P2018-6064A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】今野 聖也
【審査官】 土谷 慎吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−207312(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/178419(WO,A1)
【文献】 特表2014−533432(JP,A)
【文献】 特表2014−504026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
C03C 8/18
H01L 31/02
H01L 31/0216−31/0224
H01L 31/0236
H01L 31/0248−31/0256
H01L 31/0352−31/036
H01L 31/0392−31/078
H01L 31/18
H01L 51/42−51/48
H02S 10/00−10/40
H02S 30/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池のパッシベーション膜上に形成される電極を形成するための導電性ペーストであって、
(A)導電性粒子、
(B)有機ビヒクル、及び
(C)Biを10〜30mol%SiOを5〜30mol%及びZnOを10〜30mol%含むガラスフリットを含み、
導電性粒子100重量部に対してガラスフリットを0.3〜2重量部含む、導電性ペースト。
【請求項2】
(A)導電性粒子の平均粒子径(D50)が、0.4〜3.0μmである、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
(B)有機ビヒクルが、エチルセルロース、ロジンエステル、アクリル及び有機溶剤から選択される少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
(C)ガラスフリットが、Bを20〜40mol%、及びAlを1〜10mol%、さらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項5】
チタンレジネート、酸化チタン、酸化コバルト、酸化セリウム、窒化ケイ素、銅マンガン錫、アルミノケイ酸塩及びケイ酸アルミニウムから選択される少なくとも1つの添加物をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項6】
導電性ペーストが、裏面TAB電極形成用の導電性ペーストである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項7】
(A)導電性粒子が銀粒子である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス等の電極形成に用いられる導電性ペーストに関する。特に、本発明は、太陽電池の電極形成用の導電性ペーストに関する。また、本発明は、その電極形成用の導電性ペーストを用いて製造される太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶シリコン又は多結晶シリコンを平板状に加工した結晶系シリコンを基板に用いた結晶系シリコン太陽電池等の半導体デバイスは、デバイスの外部との電気的接触のために、シリコン基板表面に、電極形成用の導電性ペーストを用いて電極が形成されることが一般的である。そのようにして電極が形成される半導体デバイスの中で、結晶系シリコン太陽電池は、近年、その生産量が大幅に増加している。これらの太陽電池は、結晶系シリコン基板の一方の表面に、不純物拡散層、反射防止膜及び光入射側電極を有し、他方の表面に裏面電極を有する。光入射側電極及び裏面電極によって、結晶系シリコン太陽電池により発電した電力を外部に取り出すことができる。
【0003】
従来の結晶系シリコン太陽電池の電極形成には、導電性粉末、ガラスフリット、有機バインダ、溶剤及びその他の添加物を含む導電性ペーストが用いられている。導電性粉末としては、主に銀粒子(銀粉末)が用いられている。
【0004】
導電性ペーストに含まれるガラスフリットとして、例えば、特許文献1には、シリコン太陽電池(単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池を含む)に用いる電極形成用のビスマス系ガラスが記載されている。特許文献1には、そのガラスのファイアースルー性が良好であることが記載されている。
【0005】
特許文献2には、半導体基板と、前記半導体基板の互いに対向する一対の主面のうち、受光面として機能する一方主面に配設された受光面側電極と、他方主面に配設された裏面側電極とを備えた太陽電池セルの、前記受光面側電極の形成に用いられるAg電極ペーストが記載されている。
【0006】
特許文献3には、(a)(1)Al、Cu、Au、Ag、Pd及びPt;(2)Al、Cu、Au、Ag、Pd及びPtの合金;および(3)それらの混合物から選択される導電性金属粒子と、(b)Pbフリーであるガラスフリットと、(c)有機媒体とを含み、成分(a)及び(b)が成分(c)中に分散されており、前記導電性金属粒子の平均直径が0.5〜10.0μmの範囲内であることを特徴とする厚膜導電性組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−7212号公報
【特許文献2】特許第5278707号公報
【特許文献3】特開2006−313744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図1に、一般的な結晶系シリコン太陽電池の断面模式図の一例を示す。図1に示すように、結晶系シリコン太陽電池では、一般に、結晶系シリコン基板1(例えばp型結晶系シリコン基板1)の光入射側である表面(光入射側表面)に、不純物拡散層4(例えばn型不純物を拡散したn型不純物拡散層)を形成する。不純物拡散層4の上には、反射防止膜2を形成する。さらに、スクリーン印刷法などによって導電性ペーストを用いて光入射側電極20(表面電極)の電極パターンを反射防止膜2上に印刷し、導電性ペーストを乾燥及び焼成することによって光入射側電極20が形成される。この焼成の際、導電性ペーストが反射防止膜2をファイアースルーすることによって、光入射側電極20は、不純物拡散層4に接触するように形成することができる。なお、ファイアースルーとは、絶縁膜である反射防止膜2を導電性ペーストに含まれるガラスフリット等でエッチングし、光入射側電極20と不純物拡散層4とを導通させることである。p型結晶系シリコン基板1の裏面(光入射側表面とは反対側の表面)からは光を入射させなくてもよいため、一般に、ほぼ全面に裏面電極15(裏面全面電極15b)を形成する。p型結晶系シリコン基板1と不純物拡散層4との界面にはpn接合が形成されている。結晶系シリコン太陽電池に入射した入射光の大部分は、反射防止膜2及び不純物拡散層4を透過して、p型結晶系シリコン基板1に入射し、この過程で光が吸収され、電子−正孔対が発生する。これらの電子−正孔対は、pn接合による電界によって、電子は光入射側電極20へ、正孔は裏面電極15へと分離される。電子及び正孔(キャリア)は、これらの電極を介して、電流として外部に取り出される。
【0009】
図2に、一般的な結晶系シリコン太陽電池の光入射側表面の模式図の一例を示す。図2に示すように、結晶系シリコン太陽電池の光入射側表面には、光入射側電極20として、バスバー電極(光入射側バスバー電極20a)及びフィンガー電極20bが配置されている。図1及び図2に示す例では、結晶系シリコン太陽電池に入射した入射光によって発生した電子−正孔対のうち電子はフィンガー電極20bに集められ、さらに光入射側バスバー電極20aに集められる。光入射側バスバー電極20aには、はんだにより周囲を覆われたインターコネクト用の金属リボンがはんだ付けされ、この金属リボンにより電流は外部に取り出される。
【0010】
図3に、一般的な結晶系シリコン太陽電池の裏面の模式図の一例を示す。図3に示すように、裏面電極15として、裏面TAB電極15a(「裏面バスバー電極15a」ともいう。)が配置されており、裏面TAB電極15aが配置される部分を除く裏面のほぼ全面に、裏面全面電極15bが配置されている。図1及び図3に示す例では、結晶系シリコン太陽電池に入射した入射光によって発生した電子−正孔対のうち正孔は、アルミニウムを主材料とする裏面電極15に集められ、さらに銀を主材料とする裏面TAB電極15aに集められる。裏面電極15が、結晶系シリコンに対してp型不純物となるアルミニウムを主材料とする導電性ペーストを原料として形成されることによって、導電性ペーストを焼成する際に結晶系シリコン太陽電池の裏面に、裏面電界(BSF:Back Surface Field)層を形成することができる。しかしながら、アルミニウムに対しては、はんだ付けが困難である。そのため、裏面にインターコネクト用の金属リボンをはんだ付けするためのエリアを確保するために、銀を主材料とするバスバー電極(裏面TAB電極15a)が形成される。裏面TAB電極15aと裏面全面電極15bとは重なる部分が存在するため、両者の間には電気的接触が保たれている。銀を主材料とする裏面TAB電極15aには、はんだにより周囲を覆われたインターコネクト用の金属リボンがはんだ付けされ、この金属リボンにより電流は外部に取り出される。
【0011】
図4に、裏面パッシベーション型太陽電池(Passivated Emitter and Rear Cell、「PERCセル」ともいう。)の断面模式図の一例を示す。図4に示す裏面パッシベーション型太陽電池は、裏面に裏面パッシベーション膜14を有し、裏面パッシベーション膜14に配置された点状の開口部により、結晶系シリコン基板1と裏面全面電極15bとが電気的接触を有する。なお、結晶系シリコン基板1と裏面電極15bとが接する部分には、図1に示す一般的な結晶系シリコン太陽電池の裏面電界(BSF:Back Surface Field)層に相当する、不純物拡散部18(p型不純物拡散部)が配置される。図4に示す裏面パッシベーション型太陽電池の場合、裏面のほぼ全面が裏面パッシベーション膜14に覆われているため、裏面の表面欠陥密度を低減することができる。そのため、図1に示す太陽電池と比較して、図4に示す裏面パッシベーション型太陽電池は、裏面の表面欠陥に起因するキャリアの再結合を防止することができるので、より高い変換効率を得ることができる。
【0012】
図4に示す裏面パッシベーション型太陽電池は、図1に示す一般的な結晶系シリコン太陽電池と同様に、光入射側表面には光入射側バスバー電極20a及びフィンガー電極20b、裏面には裏面TAB電極15a及び裏面全面電極15bが配置される。
【0013】
図5に、裏面パッシベーション型太陽電池の、光入射側バスバー電極20a及び裏面TAB電極15a付近の断面模式図の一例を示す。図5に示す太陽電池では、裏面TAB電極15aと、結晶系シリコン基板1との間には、裏面パッシベーション膜14が配置される。仮に、裏面TAB電極15aが裏面パッシベーション膜14をファイアースルーしてしまうと、裏面TAB電極15aがファイアースルーした部分の結晶系シリコン基板1の表面(界面)に、多数の表面欠陥が生じてしまう。この結果、裏面の表面欠陥に起因するキャリアの再結合が多くなるので、太陽電池の性能は低下することとなる。したがって、裏面TAB電極15aを形成するための導電性ペーストには、焼成中に、裏面パッシベーション膜14を完全にファイアースルーしないことが求められる。したがって、裏面TAB電極15aを形成するための導電性ペーストには、裏面パッシベーション膜14に対するファイアースルー性(反応性)が低いことが求められる。すなわち、裏面パッシベーション型太陽電池の裏面TAB電極15aを形成するための導電性ペーストには、少なくとも、パッシベーション膜に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼさないことが必要である。
【0014】
なお、裏面TAB電極15aには、インターコネクト用(太陽電池セル間の電気的接続用)の金属リボンがはんだ付けされる。したがって、裏面パッシベーション型太陽電池の裏面TAB電極15aは、裏面パッシベーション膜14に対する接着強度が十分に高いことも必要である。
【0015】
また、太陽電池セル間の断線を避けるため、裏面TAB電極15aと、裏面TAB電極15aにはんだ付けされたインターコネクト用の金属リボンとのはんだ付け接着強度は十分に高いことが必要である。
【0016】
なお、光入射側バスバー電極20aを形成するための導電性ペーストにおいても、上述の裏面TAB電極15aを形成するための導電性ペーストに求められる性能と同様の性能が求められる場合がある。光入射側表面に形成される反射防止膜2は、光入射側表面のパッシベーション膜としての機能も有するためである。
【0017】
本発明は、上述のような、太陽電池の裏面TAB電極及び光入射側バスバー電極に対する要求を満たすためになされた発明である。すなわち、本発明は、結晶系シリコン太陽電池において、パッシベーション膜に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼさずに、パッシベーション膜に対して高い接着強度を有するバスバー電極を形成するための、導電性ペーストを提供することを目的とする。
【0018】
具体的には、本発明は、裏面パッシベーション型太陽電池において、裏面に配置されたパッシベーション膜に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼさずに、パッシベーション膜に対して高い接着強度を有する裏面TAB電極を形成するための、導電性ペーストを提供することを目的とする。
【0019】
また、本発明は、結晶系シリコン太陽電池において、光入射側表面に配置された反射防止膜(パッシベーション膜)に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼさずに、反射防止膜に対して高い接着強度を有する光入射側バスバー電極を形成するための、導電性ペーストを提供することを目的とする。
【0020】
また、本発明は、パッシベーション膜に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼさずに、パッシベーション膜に対して高い接着強度を有するバスバー電極を有する結晶系シリコン太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、所定のガラスフリットを含む導電性ペーストを用いて、結晶系シリコン太陽電池のバスバー電極を形成することにより、パッシベーション膜に対して悪影響を及ぼさずに、パッシベーション膜に対して高い接着強度を有するバスバー電極を形成することができることを見出し、本発明に至った。上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0022】
本発明は、下記の構成1〜6であることを特徴とする導電性ペースト、及び下記の構成7であることを特徴とする太陽電池である。
【0023】
(構成1)
本発明の構成1は、太陽電池のパッシベーション膜上に形成される電極を形成するための導電性ペーストであって、
(A)導電性粒子、
(B)有機ビヒクル、及び
(C)Biを10〜30mol%及びSiOを5〜30mol%含むガラスフリットを含み、
導電性粒子100重量部に対してガラスフリットを0.3〜2重量部含む、導電性ペーストである。
【0024】
本発明の構成1によれば、結晶系シリコン太陽電池において、パッシベーション膜に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼさずに、パッシベーション膜に対して高い接着強度を有するバスバー電極を形成するための、導電性ペーストを得ることができる。すなわち、本発明の構成1の導電性ペーストは、裏面パッシベーション型太陽電池の裏面TAB電極を形成するための導電性ペースト、及び結晶系シリコン太陽電池の光入射側バスバー電極を形成するための導電性ペーストとして、好適に用いることができる。
【0025】
(構成2)
本発明の構成2は、(A)導電性粒子の平均粒子径(D50)が、0.4〜3.0μmである、構成1の導電性ペーストである。
【0026】
本発明の構成2によれば、本発明の導電性ペースト中に含まれる(A)導電性粒子の平均粒子径(D50)が、0.4〜3.0μmであることにより、導電性ペーストの焼成中、パッシベーション膜に対する導電性ペーストの反応性を抑制することができ、得られる電極に対する金属リボンのはんだ付け接着強度を高くすることができる。
【0027】
(構成3)
本発明の構成3は、(B)有機ビヒクルが、エチルセルロース、ロジンエステル、アクリル及び有機溶剤から選択される少なくとも1つを含む、構成1又は2の導電性ペーストである。
【0028】
本発明の構成3によれば、本発明の導電性ペーストの(B)有機ビヒクルが、エチルセルロース、ロジンエステル、アクリル及び有機溶剤から選択される少なくとも1つを含むことにより、導電性ペーストのスクリーン印刷を好適に行うことができ、印刷されるパターンの形状を適切な形状とすることができる。
【0029】
(構成4)
本発明の構成4は、(C)ガラスフリットが、Bを20〜40mol%、ZnOを10〜30mol%、及びAlを1〜10mol%、さらに含む、構成1〜3のいずれかの導電性ペーストである。
【0030】
本発明の構成4によれば、本発明の導電性ペーストに含まれる(C)ガラスフリットが、所定の成分をさらに含むことにより、導電性ペーストの焼成中、パッシベーション膜に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼさずに、パッシベーション膜に対して高い接着強度を有するバスバー電極を形成することを、より確実にできる。
【0031】
(構成5)
本発明の構成5は、チタンレジネート、酸化チタン、酸化コバルト、酸化セリウム、窒化ケイ素、銅マンガン錫、アルミノケイ酸塩及びケイ酸アルミニウムから選択される少なくとも1つの添加物をさらに含む、構成1〜4のいずれかの導電性ペーストである。
【0032】
本発明の構成5によれば、本発明の導電性ペーストが、チタンレジネート、酸化チタン、酸化コバルト、酸化セリウム、窒化ケイ素、銅マンガン錫、アルミノケイ酸塩及びケイ酸アルミニウムから選択される少なくとも1つの添加物を含むことにより、はんだリボンのパッシベーション膜に対する接着強度を向上させることができる。さらに窒化ケイ素を含むことにより、焼成時の、導電性ペーストのパッシベーション膜に対する反応性を制御することができる。この結果、太陽電池特性に影響を与えるようなパッシベーション膜に対する悪影響を防止することができる。
【0033】
(構成6)
本発明の構成6は、導電性ペーストが、裏面TAB電極形成用の導電性ペーストである、構成1〜5のいずれかに記載の導電性ペーストである。
【0034】
本発明の導電性ペーストを用いるならば、パッシベーション膜に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼさず、パッシベーション膜に対して接着性の高い電極を形成することができる。そのため、本発明の導電性ペーストは、裏面パッシベーション型太陽電池の裏面TAB電極を形成するために、好適に用いることができる。
【0035】
(構成7)
本発明の構成7は、構成1〜6のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて電極が形成された太陽電池である。
【0036】
本発明の構成7によれば、パッシベーション膜に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼさずに、パッシベーション膜に対して高い接着強度を有するバスバー電極を有する太陽電池、特に結晶系シリコン太陽電池を得ることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、結晶系シリコン太陽電池において、パッシベーション膜に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼさずに、パッシベーション膜に対して高い接着強度を有するバスバー電極を形成するための、導電性ペーストを提供することができる。
【0038】
具体的には、本発明によれば、裏面パッシベーション型太陽電池において、裏面に配置されたパッシベーション膜に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼさずに、パッシベーション膜に対して高い接着強度を有する裏面TAB電極を形成するための、導電性ペーストを提供することができる。
【0039】
また、本発明によれば、結晶系シリコン太陽電池において、光入射側表面に配置された反射防止膜(パッシベーション膜)に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼさずに、反射防止膜に対して高い接着強度を有する光入射側バスバー電極を形成するための、導電性ペーストを提供することができる。
【0040】
また、本発明によれば、パッシベーション膜に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼさずに、パッシベーション膜に対して高い接着強度を有するバスバー電極を有する結晶系シリコン太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】一般的な結晶系シリコン太陽電池の、光入射側電極(フィンガー電極)が存在する近傍の断面模式図の一例である。
図2】結晶系シリコン太陽電池の光入射側表面の模式図の一例である。
図3】結晶系シリコン太陽電池の裏面の模式図の一例である。
図4】裏面パッシベーション型太陽電池の光入射側電極(光入射側フィンガー電極)が存在する近傍の断面模式図の一例である。
図5】裏面パッシベーション型太陽電池の光入射側バスバー電極及び裏面TAB電極が存在する近傍の断面模式図の一例である。
図6】パッシベーション膜に対する反応性を有する導電性ペーストを用いて裏面TAB電極を作製した試料の、フォトルミネッセンスイメージング法(PL法)にて測定したフォトルミネッセンスの発光強度のイメージである。
図7】パッシベーション膜に対する反応性を有しない導電性ペーストを用いて裏面TAB電極を作製した試料の、フォトルミネッセンスイメージング法(PL法)にて測定したフォトルミネッセンスの発光強度のイメージである。
図8図6に示す試料の裏面TAB電極近傍の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察したSEM写真である。
図9図7に示す試料の裏面TAB電極近傍の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察したSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書では、「結晶系シリコン」は単結晶及び多結晶シリコンを包含する。また、「結晶系シリコン基板」は、電気素子又は電子素子等の半導体デバイスの形成のために、結晶系シリコンを平板状など、素子形成に適した形状に成形した材料のことをいう。結晶系シリコンの製造方法は、どのような方法を用いても良い。例えば、単結晶シリコンの場合にはチョクラルスキー法、多結晶シリコンの場合にはキャスティング法を用いることができる。また、その他の製造方法、例えばリボン引き上げ法により作製された多結晶シリコンリボン、ガラス等の異種基板上に形成された多結晶シリコンなども結晶系シリコン基板として用いることができる。また、「結晶系シリコン太陽電池」とは、結晶系シリコン基板を用いて作製された太陽電池のことをいう。
【0043】
本明細書において、ガラスフリットとは、複数種類の酸化物、例えば金属酸化物を主材料とするものであり、一般的にガラス状の粒子の形態で用いるものである。
【0044】
本発明は、太陽電池のパッシベーション膜上に形成される電極を形成するための導電性ペーストである。本発明の導電性ペーストは、(A)導電性粒子、(B)有機ビヒクル、及び(C)Bi及びSiOを有するガラスフリットを含む。本発明の導電性ペーストに含まれるガラスフリット中、Biの含有量は10〜30mol%、SiOの含有量は5〜30mol%である。また、本発明の導電性ペーストは、導電性粒子100重量部に対してガラスフリットを0.3〜2重量部含む。本発明の導電性ペーストを用いることにより、結晶系シリコン太陽電池において、パッシベーション膜に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼさずに、パッシベーション膜に対して高い接着強度を有するバスバー電極を形成することができる。
【0045】
本明細書において、パッシベーション膜とは、図4及び図5に示されるような裏面パッシベーション型太陽電池の裏面パッシベーション膜14であることができる。なお、図1に示されるような一般的な太陽電池及び裏面パッシベーション型太陽電池等の結晶系シリコン太陽電池の光入射側表面に形成される反射防止膜2は、光入射側表面のパッシベーション機能を有する。したがって、本明細書において、「パッシベーション膜」とは、裏面パッシベーション型太陽電池の裏面パッシベーション膜14及び結晶系シリコン太陽電池の反射防止膜2を意味する。
【0046】
パッシベーション膜は、単層又は複数層からなる膜であることができる。パッシベーション膜が単層の場合には、シリコン基板の表面のパッシベーションを効果的に行うことができる点から、窒化シリコン(SiN)を材料とする薄膜(SiN膜)であることが好ましい。また、パッシベーション膜が複数層の場合には、窒化シリコンを材料とする膜及び酸化シリコンを材料とする膜の積層膜(SiN/SiO膜)であることが好ましい。なお、SiN/SiO膜がパッシベーション膜の場合には、シリコン基板の表面のパッシベーションをより効果的に行うことができる点から、シリコン基板1にSiO膜が接するようにSiN/SiO膜を形成することが好ましい。なお、SiO膜は、シリコン基板の自然酸化膜であることができる。
【0047】
本発明の導電性ペーストにより、好適に形成することのできる太陽電池の電極は、結晶系シリコン太陽電池のパッシベーション膜上に形成されるバスバー電極である。本明細書で、バスバー電極は、光入射側表面に形成される光入射側バスバー電極20a、及び裏面に形成される裏面TAB電極15a(裏面バスバー電極)を含む。光入射側バスバー電極20aは、太陽電池により発電された電流を集めるためのフィンガー電極20bと、インターコネクト用の金属リボンとを、電気的に接続するという機能を有する。同様に、裏面TAB電極15aは、太陽電池により発電された電流を集めるための裏面全面電極15bと、インターコネクト用の金属リボンとを、電気的に接続するという機能を有する。したがって、バスバー電極(光入射側バスバー電極20a及び裏面TAB電極15a)は、結晶系シリコン基板1に接触する必要がない。むしろ、バスバー電極が結晶系シリコン基板1に接してしまうと、バスバー電極が接する部分の結晶系シリコン基板1の表面(界面)の表面欠陥密度が増加してしまい、太陽電池性能が低下してしまう。本発明の導電性ペーストを用いるならば、パッシベーション膜に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼさない。すなわち、本発明の導電性ペーストは、裏面パッシベーション膜14に対するファイアースルー性(反応性)が低いため、裏面パッシベーション膜14を完全にファイアースルーしない。そのため、本発明の導電性ペーストを用いてバスバー電極を形成した場合には、結晶系シリコン基板1に接する部分のパッシベーション膜は、そのままの状態を保つことができ、キャリアの再結合の原因となる表面欠陥密度の増加を防止することができる。
【0048】
なお、図1図2及び図4に示すように、結晶系シリコン太陽電池の光入射側表面には、光入射側電極20として、フィンガー電極20bが配置されている。図2に示す例では、結晶系シリコン太陽電池に入射した入射光によって発生した電子−正孔対のうち電子は、n型不純物拡散層4を経て、フィンガー電極20bに集められる。したがって、フィンガー電極20bと、n型不純物拡散層4との間の接触抵抗は、低いことが求められる。さらに、フィンガー電極20bは、所定の導電性ペーストを、窒化チタン等を材料とする反射防止膜2の上に印刷し、焼成の際に導電性ペーストが反射防止膜2をファイアースルーすることによって形成される。したがって、フィンガー電極20bを形成するための導電性ペーストは、本発明の導電性ペーストとは異なり、反射防止膜2をファイアースルーする性能を有することが必要となる。
【0049】
なお、本明細書において、結晶系シリコン太陽電池から電流を外部に取り出すための電極である光入射側電極20及び裏面電極15を合わせて、単に「電極」という場合がある。
【0050】
本発明の導電性ペーストについて、具体的に説明する。
【0051】
本発明の導電性ペーストは、(A)導電性粒子、(B)有機ビヒクル、及び(C)Bi及びSiOを有するガラスフリットを含む。
【0052】
本発明の導電性ペーストに含まれる導電性粒子の主要成分としては、銀粒子(Ag粒子)を用いることができる。なお、本発明の導電性ペーストには、太陽電池電極の性能が損なわれない範囲で、銀以外の他の金属、例えば金、銅、ニッケル、亜鉛及びスズ等を含むことができる。しかし、低い電気抵抗及び高い信頼性を得る点から、導電性粒子は銀からなる銀粒子であることが好ましい。なお、多数の銀粒子(Ag粒子)を銀粉末(Ag粉末)という場合がある。他の粒子についても同様である。
【0053】
導電性粒子の粒子寸法は、0.4〜3.0μmであることが好ましく、0.5〜2.5μmであることがより好ましい。導電性粒子の粒子寸法が所定の範囲であることにより、導電性ペーストの焼成中、パッシベーション膜に対する導電性ペーストの反応性を抑制することができ、得られる電極に対する金属リボンのはんだ付け接着強度を高くすることができる。導電性粒子の粒子形状としては、例えば、球状及びリン片状等のものを用いることができる。
【0054】
一般的に、微小粒子の寸法は一定の分布を有するので、すべての粒子が上記の粒子寸法である必要はなく、全粒子の積算値50%の粒子寸法(メジアン径、D50)が上記の粒子寸法の範囲であることが好ましい。本明細書では、メジアン径(D50)のことを、平均粒子径(D50)という。本明細書に記載されている導電性粒子以外の粒子の寸法についても同様である。なお、平均粒子径(D50)は、マイクロトラック法(レーザー回折散乱法)にて粒度分布測定を行い、粒度分布測定の結果から平均粒子径(D50)の値を得ることにより求めることができる。本発明の導電性ペーストでは、導電性粒子の平均粒子径(D50)が0.4〜3.0μmであることが好ましく、0.5〜2.5μmであることがより好ましい。
【0055】
また、導電性粒子の大きさを、BET値(BET比表面積)として表すことができる。導電性粒子のBET値は、好ましくは0.1〜5m/g、より好ましくは0.2〜2m/gである。
【0056】
次に、本発明の導電性ペーストに含まれるガラスフリットについて説明する。本発明の導電性ペーストに含まれるガラスフリットは、Bi及びSiOを含む。
【0057】
本明細書において、ガラスフリットとは、複数種類の酸化物、例えば複数種類の金属酸化物を主材料とするものであり、一般的にガラス状の粒子の形態のものをいう。
【0058】
本発明の導電性ペーストに含まれるガラスフリット中のBiの含有量は、10〜30mol%、好ましくは15〜27mol%、より好ましくは18〜25mol%である。
【0059】
また、本発明の導電性ペーストに含まれるガラスフリット中のSiOの含有量は、5〜30mol%、好ましくは10〜27mol%、より好ましくは15〜25mol%である。
【0060】
ガラスフリット中のBi及びSiOの含有量が所定の範囲であることにより、導電性ペーストの焼成の際に、導電性ペーストの焼成中、パッシベーション膜に対する導電性ペーストの反応性を抑制することができ、得られる電極のパッシベーション膜に対する接着強度を高くすることができる。
【0061】
本発明の導電性ペーストは、ガラスフリットが、B、ZnO、及びAlをさらに含むことが好ましい。
【0062】
本発明の導電性ペーストに含まれるガラスフリット中のBの含有量は、好ましくは20〜40mol%、より好ましくは21〜37mol%である。
【0063】
本発明の導電性ペーストに含まれるガラスフリット中のZnOの含有量は、好ましくは10〜30mol%、より好ましくは15〜28mol%である。
【0064】
本発明の導電性ペーストに含まれるガラスフリット中のAlの含有量は、好ましくは1〜10mol%、より好ましくは2〜8mol%である。
【0065】
ガラスフリット中のB、ZnO、及びAlの含有量が所定の範囲であることにより、導電性ペーストの焼成の際に、パッシベーション膜に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼさずに、パッシベーション膜に対して高い接着強度を有するバスバー電極を形成することを、より確実にできる。
【0066】
本発明の導電性ペーストのガラスフリットは、上述の酸化物以外に、TiO等、他の酸化物を含むことができる。本発明の導電性ペーストのガラスフリットは、例えばTiOを2〜8mol%程度、さらに含むことが好ましい。また、本発明の効果を損なわない含有量の範囲で、本発明の導電性ペーストは、他の酸化物成分を含むことができる。
【0067】
本発明の導電性ペーストのガラスフリットは、所定の含有量のBi、SiO
、ZnO及びAlを含むことが好ましい。また、これらの酸化物に加え、所定量のTiOをさらに含むことが好ましい。このような成分からなるガラスフリットを含む導電性ペーストを用いることにより、導電性ペーストの焼成の際に、パッシベーション膜に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼさずに、パッシベーション膜に対して高い接着強度を有するバスバー電極を形成することを、さらに確実にできる。
【0068】
本発明の導電性ペーストは、導電性粒子100重量部に対して、上述のガラスフリットを0.3〜2重量部、好ましくは0.5〜1.5重量部含む。導電性粒子に対するガラスフリットの含有量が所定の範囲であることにより、結晶系シリコン太陽電池において、パッシベーション膜に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼさずに、パッシベーション膜に対して高い接着強度を有するバスバー電極を形成することができる。
【0069】
ガラスフリットの粒子の形状は特に限定されず、例えば球状、不定形等のものを用いることができる。また、粒子寸法も特に限定されないが、作業性の点等から、粒子の平均粒子径(D50)は0.1〜10μmの範囲が好ましく、0.5〜5μmの範囲がさらに好ましい。
【0070】
ガラスフリットの粒子は、必要な複数の酸化物をそれぞれ所定量含む1種類の粒子を用いることができる。また、単一の酸化物からなる粒子を、必要な複数の酸化物ごとに異なった粒子として用いることもできる。また、必要な複数の酸化物の組成が異なる複数種類の粒子を組み合わせて用いることもできる。
【0071】
本発明の導電性ペーストの焼成の際のガラスフリットの軟化性能を適正なものとするために、ガラスフリットの軟化点は、300〜700℃であることが好ましく、400〜600℃であることがより好ましく、500〜580℃であることがさらに好ましい。
【0072】
本発明の導電性ペーストに含まれるガラスフリットは、X線光電子分光法(XPS法)を用いて測定したときの酸素の結合エネルギーにおいて、526eV〜536eVの信号強度の合計値に対する、529eV〜531eV未満をピークとする信号強度の割合が、39%以下であることが好ましい。このようガラスフリットを用いることにより、導電性ペーストを焼成する際の反応性を、所定の効果を奏するように制御することができる。
【0073】
本発明の導電性ペーストは、有機ビヒクルを含む。有機ビヒクルとしては、有機バインダ及び溶剤を含むことができる。有機バインダ及び溶剤は、導電性ペーストの粘度調整等の役割を担うものであり、いずれも特に限定されない。有機バインダを溶剤に溶解させて使用することもできる。
【0074】
有機バインダとしては、セルロース系樹脂(例えばエチルセルロース、ニトロセルロース等)、(メタ)アクリル系樹脂(例えばポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等)から選択して用いることができる。本発明の導電性ペーストに含まれる有機ビヒクルが、エチルセルロース、ロジンエステル、アクリル及び有機溶剤から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。有機バインダの添加量は、導電性粒子100重量部に対し、通常0.2〜30重量部であり、好ましくは0.4〜5重量部である。
【0075】
溶剤としては、アルコール類(例えばターピネオール、α−ターピネオール、β−ターピネオール等)、エステル類(例えばヒドロキシ基含有エステル類、2,2,4―トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチラート、ブチルカルビトールアセテート等)から1種又は2種以上を選択して使用することができる。溶剤の添加量は、導電性粒子100重量部に対し、通常0.5〜30重量部であり、好ましくは5〜25重量部である。
【0076】
さらに、本発明の導電性ペーストには、添加剤として、可塑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、安定剤及び密着促進剤などから選択したものを、必要に応じてさらに配合することができる。これらのうち、可塑剤としては、フタル酸エステル類、グリコール酸エステル類、リン酸エステル類、セバチン酸エステル類、アジピン酸エステル類及びクエン酸エステル類などから選択したものを用いることができる。
【0077】
本発明の導電性ペーストは、得られる太陽電池の太陽電池特性に対して悪影響を与えない範囲で、上述したもの以外の添加物を含むことができる。例えば、本発明の導電性ペーストは、チタンレジネート、酸化チタン、酸化コバルト、酸化セリウム、窒化ケイ素、銅マンガン錫、アルミノケイ酸塩及びケイ酸アルミニウムから選択される少なくとも1つの添加物をさらに含むことができる。これらの添加物を含むことにより、はんだリボンのパッシベーション膜に対する接着強度を向上させることができる。これらの添加物は、粒子の形態(添加物粒子)であることができる。導電性粒子100重量部に対する添加物の添加量は、好ましくは0.01〜5重量部であり、より好ましくは0.05〜2重量部である。より高い接着強度を得るために、添加物は、銅マンガン錫、又はアルミノケイ酸塩及びケイ酸アルミニウムであることが好ましい。
【0078】
次に、本発明の導電性ペーストの製造方法について説明する。本発明の導電性ペーストは、有機バインダ及び溶剤に対して、導電性粒子(銀粒子)、ガラスフリット及び必要に応じてその他の添加粒子を添加し、混合し、分散することにより製造することができる。
【0079】
混合は、例えばプラネタリーミキサーで行うことができる。また、分散は、三本ロールミルによって行うことができる。混合及び分散は、これらの方法に限定されるものではなく、公知の様々な方法を使用することができる。
【0080】
次に、本発明の太陽電池について説明する。本発明は、上述の導電性ペーストを用いて電極が形成された太陽電池である。
【0081】
図1に、光入射側及び裏面側の両表面に電極(光入射側電極20及び裏面電極15)を有する一般的な結晶系シリコン太陽電池の、光入射側電極20付近の断面模式図を示す。図1に示す結晶系シリコン太陽電池は、光入射側に形成された光入射側電極20、反射防止膜2、n型不純物拡散層(n型シリコン層)4、p型結晶系シリコン基板1及び裏面電極15を有する。また、図2に、一般的な結晶系シリコン太陽電池の光入射側表面の模式図の一例を示す。図3に、一般的な結晶系シリコン太陽電池の裏面の模式図の一例を示す。図1に示す一般的な結晶系シリコン太陽電池では、光入射側表面の光入射側バスバー電極20aの形成に、本発明の導電性ペーストを用いることにより、パッシベーション膜(反射防止膜2)に対して悪影響を及ぼさない光入射側バスバー電極20aを得ることができる。
【0082】
図1に示す一般的な結晶系シリコン太陽電池は、図3に示す構造の裏面電極15を有することができる。すなわち、図3に示すように、裏面電極15は、一般にアルミニウムを含む裏面全面電極15bと、裏面全面電極15bに対して電気的に接続する裏面TAB電極15aとを含む。
【0083】
なお、図1に示す一般的な結晶系シリコン太陽電池の場合、裏面パッシベーション膜14は存在しないので、裏面TAB電極15aを本発明の導電性ペーストを用いて形成したとしても、本発明の導電性ペーストの、「パッシベーション膜に対して悪影響を及ぼさないように電極を形成する」との効果を奏することはできない。しかしながら、本発明の導電性ペーストを用いるならば、金属リボンとのはんだ付け接着強度が十分に高い裏面TAB電極15aを形成することができるので、図1に示す一般的な太陽電池の場合でも、裏面TAB電極15aの形成に、本発明の導電性ペーストを用いることが可能である。
【0084】
図4及び図5に、裏面パッシベーション型太陽電池の断面模式図の一例を示す。図4に示す裏面パッシベーション型太陽電池は、裏面に裏面パッシベーション膜14を有している。図5に、裏面パッシベーション型太陽電池の、光入射側バスバー電極20a及び裏面TAB電極15a付近の断面模式図の一例を示す。図5に示す裏面パッシベーション型太陽電池では、光入射側表面の光入射側バスバー電極20a、及び裏面に配置される裏面TAB電極15aは、本発明の導電性ペーストを用いることにより、パッシベーション膜(反射防止膜2及び裏面パッシベーション膜14)に対して悪影響を及ぼさないように形成されている。
【0085】
したがって、上述の本発明の導電性ペーストは、結晶系シリコン太陽電池のバスバー電極形成用の導電性ペーストとして、好適に用いることができる。また、本発明の導電性ペーストは、裏面パッシベーション型太陽電池の裏面TAB電極用の導電性ペーストとして、特に好適に用いることができる。
【0086】
図1に示す一般的な結晶系シリコン太陽電池及び図4に示す裏面パッシベーション型太陽電池のバスバー電極は、図2に示す光入射側バスバー電極20a及び図3に示すよう裏面TAB電極15aを含む。光入射側バスバー電極20a及び裏面TAB電極15aには、はんだにより周囲を覆われたインターコネクト用の金属リボンがはんだ付けされる。この金属リボンにより、太陽電池により発電された電流は、結晶系シリコン太陽電池セルの外部に取り出される。本発明の導電性ペーストを用いるならば、金属リボンとのはんだ付け接着強度が十分に高い光入射側バスバー電極20a及び裏面TAB電極15aを形成することができる。
【0087】
バスバー電極(光入射側バスバー電極20a及び裏面TAB電極15a)の幅は、インターコネクト用の金属リボンと同程度の幅であることができる。バスバー電極が低い電気抵抗であるためには、幅は広い方が好ましい。一方、光入射側表面に対する光の入射面積を大きくするために、光入射側バスバー電極20aの幅は狭い方が良い。そのため、バスバー電極幅は、0.5〜5mm、好ましくは0.8〜3mm、より好ましくは1〜2mmとすることができる。また、バスバー電極の本数は、結晶系シリコン太陽電池の大きさに応じて決めることができる。具体的には、バスバー電極の本数は、1本、2本、3本又は4本とすることができる。最適なバスバー電極の本数は、太陽電池動作のシミュレーションによって、結晶系シリコン太陽電池の変換効率を最大にするように決定することができる。なお、インターコネクト用の金属リボンによって、結晶系シリコン太陽電池を相互に直列に接続することから、光入射側バスバー電極20a及び裏面TAB電極15aの本数は、同一であることが好ましい。同様の理由により、光入射側バスバー電極20a及び裏面TAB電極15aの幅は、同一であることが好ましい。
【0088】
結晶系シリコン太陽電池に対する光の入射面積を大きくするために、光入射側表面において光入射側電極20の占める面積は、なるべく小さい方が良い。そのため、光入射側表面のフィンガー電極20bはなるべく細い幅であり、少ない本数であることが好ましい。一方、電気的損失(オーミックロス)を低減する点から、フィンガー電極20bの幅は広く、本数は多い方が好ましい。また、フィンガー電極20bと、結晶系シリコン基板1(不純物拡散層4)との間の接触抵抗を小さくする点からもフィンガー電極20bの幅は広い方が好ましい。以上のことから、フィンガー電極20bの幅は、30〜300μm、好ましくは50〜200μm、より好ましくは60〜150μmとすることができる。また、バスバー電極の本数は、結晶系シリコン太陽電池の大きさ、及びバスバー電極の幅に応じて決めることができる。最適なフィンガー電極20bの幅及び本数(フィンガー電極20bの間隔)は、太陽電池動作のシミュレーションによって、結晶系シリコン太陽電池の変換効率を最大にするように決定することができる。
【0089】
次に、本発明の結晶系シリコン太陽電池の製造方法について説明する。
【0090】
本発明の太陽電池の製造方法は、上述の導電性ペーストを、結晶系シリコン基板1の不純物拡散層4上、又は不純物拡散層4上の反射防止膜2上に印刷し、乾燥し、及び焼成することによってバスバー電極を形成する工程を含む。以下、本発明の太陽電池の製造方法について、さらに詳しく説明する。
【0091】
本発明の結晶系シリコン太陽電池の製造方法は、一の導電型(p型又はn型の導電型)の結晶系シリコン基板1を用意する工程を含む。結晶系シリコン基板1としては、p型結晶系シリコン基板、具体的にはp型単結晶シリコン基板を用いることができる。
【0092】
なお、高い変換効率を得るという観点から、結晶系シリコン基板1の光入射側の表面は、ピラミッド状のテクスチャ構造を有することが好ましい。
【0093】
次に、本発明の結晶系シリコン太陽電池の製造方法は、上述の工程で用意した結晶系シリコン基板1の一方の表面に、他の導電型の不純物拡散層4を形成する工程を含む。例えば結晶系シリコン基板1として、p型結晶系シリコン基板1を用いる場合には、不純物拡散層4として、例えばn型不純物であるP(リン)を拡散したn型不純物拡散層を形成することができる。なお、n型結晶系シリコン基板を用いて結晶系シリコン太陽電池の製造することも可能である。その場合、不純物拡散層として、p型不純物拡散層を形成する。
【0094】
不純物拡散層4を形成する際には、不純物拡散層4のシート抵抗が40〜150Ω/□、好ましくは45〜120Ω/□となるように形成することができる。
【0095】
また、本発明の結晶系シリコン太陽電池の製造方法において、不純物拡散層4を形成する深さは、0.3μm〜1.0μmとすることができる。なお、不純物拡散層4の深さとは、不純物拡散層4の表面からpn接合までの深さをいう。pn接合の深さは、不純物拡散層4の表面から、不純物拡散層4中の不純物濃度が基板の不純物濃度となるまでの深さとすることができる。
【0096】
次に、本発明の結晶系シリコン太陽電池の製造方法は、上述の工程で形成した不純物拡散層4の表面に反射防止膜2を形成する工程を含む。反射防止膜2としては、シリコン窒化膜(SiN膜)を形成することができる。シリコン窒化膜を反射防止膜2として用いる場合には、シリコン窒化膜の層が表面パッシベーション膜としての機能も有する。そのため、シリコン窒化膜を反射防止膜2として用いる場合には、高性能の結晶系シリコン太陽電池を得ることができる。また、反射防止膜2が窒化ケイ素膜であることにより、入射した光に対して反射防止機能を発揮することができる。シリコン窒化膜は、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法などにより、成膜することができる。
【0097】
なお、図4に示す裏面パッシベーション型太陽電池を製造する場合には、裏面にシリコン窒化膜等の裏面パッシベーション膜14を形成する。裏面パッシベーション膜14は、結晶系シリコン基板1と裏面全面電極15bとが電気的接触をするための点状の開口部を、所定のパターニングなどにより形成する。なお、裏面TAB電極15aが形成される部分には、点状の開口部を形成しないことが好ましい。
【0098】
本発明の結晶系シリコン太陽電池の製造方法では、導電性ペーストを、反射防止膜2の表面に印刷し、及び焼成することによって光入射側電極20を形成する工程を含む。また、本発明の結晶系シリコン太陽電池の製造方法は、結晶系シリコン基板1の他方の表面(裏面)に、導電性ペーストを印刷し、及び焼成することによって裏面電極15を形成する工程をさらに含む。
【0099】
具体的には、まず、所定の導電性ペーストを用いて印刷した光入射側電極20のパターンを、100〜150℃程度の温度で数分間(例えば0.5〜5分間)乾燥する。なおこのときに、光入射側電極20のパターンのうち、光入射側バスバー電極20aを本発明の導電性ペーストを用いて形成することが好ましい。本発明の導電性ペーストを用いて光入射側バスバー電極20aを形成する場合には、パッシベーション膜である反射防止膜2に対して悪影響を及ぼさないためである。光入射側フィンガー電極20bの形成のためには、公知の光入射側電極形成用の導電性ペーストを用いることができる。
【0100】
光入射側電極20のパターンの印刷・乾燥に続いて、裏面電極15の形成のため、裏面に対しても所定の裏面TAB電極15aを形成するための導電性ペースト、及び裏面全面電極15bを形成するための所定の導電性ペーストを印刷し、乾燥する。上述のように、本発明の導電性ペーストは、裏面パッシベーション型太陽電池の裏面TAB電極15aの形成のために、好ましく用いることができる。
【0101】
その後、印刷した導電性ペーストを乾燥したものを、管状炉などの焼成炉を用いて大気中で、所定の焼成条件で焼成する。焼成条件として、焼成雰囲気は大気中、焼成温度は、500〜1000℃、より好ましくは600〜1000℃、さらに好ましくは500〜900℃、特に好ましくは700〜900℃である。焼成は短時間で行うことが好ましく、焼成の際の温度プロファイル(温度−時間曲線)は、ピーク状であることが好ましい。例えば、前記温度をピーク温度として、焼成炉のイン−アウト時間を10〜60秒、好ましくは、20〜40秒で焼成することが好ましい。
【0102】
焼成の際は、光入射側電極20及び裏面電極15を形成するための導電性ペーストを同時に焼成し、両電極を同時に形成することが好ましい。このように、所定の導電性ペーストを光入射側表面及び裏面に印刷し、同時に焼成することにより、電極形成のための焼成を1回のみにすることができるので、結晶系シリコン太陽電池を、より低コストで製造することができる。
【0103】
上述のようにして、本発明の結晶系シリコン太陽電池を製造することができる。
【0104】
本発明の結晶系シリコン太陽電池の製造方法では、光入射側電極20を形成するための結晶系シリコン基板1の光入射側表面に印刷した導電性ペースト、特にフィンガー電極20bを形成するための導電性ペーストを焼成する際に、フィンガー電極20bを形成するための導電性ペーストが、反射防止膜2をファイアースルーすることが好ましい。それにより、フィンガー電極20bが不純物拡散層4に対して、接するように形成することができる。この結果、フィンガー電極20bと、不純物拡散層4との間の接触抵抗を低減することができる。フィンガー電極20bを含む光入射側電極20を形成するための導電性ペーストは、公知である。
【0105】
上述のようにして得られた本発明の結晶系シリコン太陽電池を、インターコネクト用の金属リボンによって電気的に接続し、ガラス板、封止材及び保護シート等によりラミネートすることで、太陽電池モジュールを得ることができる。インターコネクト用の金属リボンとしては、はんだにより周囲を覆われた金属リボン(例えば、銅を材料とするリボン)を用いることができる。はんだとして、スズを主成分とするもの、具体的には鉛入りの有鉛はんだ及び鉛フリーはんだなど、市場で入手可能なはんだを用いることができる。
【0106】
本発明の結晶系シリコン太陽電池では、本発明の導電性ペーストを用いて所定のバスバー電極を形成することによって、高性能の結晶系シリコン太陽電池を提供することができる。
【実施例】
【0107】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0108】
実施例及び比較例では、単結晶シリコン太陽電池を模擬した測定用基板を用いて、インターコネクト用金属リボンのはんだ付け接着強度試験及びフォトルミネッセンスイメージング法(PL法)によるパッシベーション膜の劣化の程度を評価することにより、本発明の実施例及び比較例の導電性ペーストの性能を評価した。
【0109】
<導電性ペーストの材料及び調製割合>
実施例及び比較例の太陽電池製造に用いた導電性ペーストの組成は、下記のとおりである。
【0110】
(A)導電性粒子
導電性粒子として、銀粒子(100重量部)を用いた。実施例1〜15及び比較例1〜7に用いた銀粒子の形状は球状であり、平均粒子径(D50)は、表2〜4に示すものを用いた。平均粒子径(D50)は、マイクロトラック法(レーザー回折散乱法)にて粒度分布測定を行い、粒度分布測定の結果からメジアン径(D50)の値を得ることにより求めた。他の粒子の平均粒径(D50)についても同様である。なお、例えば、表2には、実施例1の銀粒子の平均粒子径(D50)が0.5〜2.5μmと記載されているが、これは、実施例1の銀粒子の平均粒子径(D50)の測定値(メジアン径、D50)が0.5〜2.5μmの範囲であったことを意味する。他の実施例及び比較例の銀粒子の平均粒子径(D50)についても同様である。
【0111】
(B)ガラスフリット
実施例及び比較例のそれぞれに、表1に示す配合のガラスフリットA〜Gを用いた。実施例1〜15及び比較例1〜7の導電性ペースト中の、導電性粒子100重量部に対するガラスフリットの添加量は、表2、表3及び表4に示すとおりである。なお、ガラスフリットの平均粒子径(D50)は2μmとした。
【0112】
(C)有機バインダ
エチルセルロース(1重量部)。エトキシ含有量48〜49.5重量%のものを用いた。
【0113】
(D)溶剤
ブチルカルビトールアセテート(11重量部)を用いた。
【0114】
次に、上述の所定の調製割合の材料を、プラネタリーミキサーで混合し、さらに三本ロールミルで分散し、ペースト化することによって導電性ペーストを調製した。
【0115】
<はんだ付け接着強度の測定>
本発明の導電性ペーストの評価の一つとして、調製した導電性ペーストを用いて太陽電池を模擬したはんだ付け接着強度測定用基板を試作し、はんだ付け接着強度を測定した。なお、はんだ付け接着強度試験では、パッシベーション膜を含む測定用基板と電極との間の接着強度、及び金属リボンと電極との間の接着強度の両方を測定していることになるが、電極に含まれる金属粒子は銀粒子なので、金属リボンと電極との間の接着強度は比較的高い。したがって、はんだ付け接着強度の測定により、パッシベーション膜を含む測定用基板と電極との間の接着強度を評価することができる。
【0116】
測定用基板の試作方法は次のとおりである。
【0117】
基板は、p型単結晶シリコン基板(基板厚み200μm)を用いた。
【0118】
まず、上記基板に酸化ケイ素層約20μmをドライ酸化で形成後、フッ化水素、純水及びフッ化アンモニウムを混合した溶液でエッチングし、基板表面のダメージを除去した。さらに、塩酸と過酸化水素を含む水溶液で重金属洗浄を行った。
【0119】
なお、裏面TAB電極15aの接着強度の測定において、光入射側表面のテクスチャ構造、n型不純物拡散層、反射防止膜2及び光入射側電極20の形成は不要である。したがって、実際の太陽電池製造の際に光入射側表面に形成されるはずの、これらの構成は形成しなかった。
【0120】
次に、基板の裏面の全面に、プラズマCVD法によってシランガス及びアンモニアガスを用いて、裏面パッシベーション膜14として窒化ケイ素膜を約60nmの厚みに形成した。具体的には、NH/SiH=0.5の混合ガス1Torr(133Pa)をグロー放電分解することにより、プラズマCVD法によって膜厚約60nmの窒化ケイ素膜(裏面パッシベーション膜14)を形成した。
【0121】
このようにして得られた太陽電池基板を、15mm×15mmの正方形に切断して使用した。
【0122】
裏面TAB電極15aを形成するための導電性ペーストの印刷は、スクリーン印刷法によって行った。表2、表3及び表4に示すガラスフリット及び銀粒子を含む実施例及び比較例の導電性ペーストを用い、上述の基板の裏面パッシベーション膜14上に、膜厚が約20μmになるように、長さ1.3mm、2mm幅の裏面TAB電極15aのパターンを印刷し、その後、150℃で約1分間乾燥した。
【0123】
なお、裏面TAB電極15aの接着強度の測定において、光入射側電極20は不要である。したがって、光入射側電極20は形成しなかった。
【0124】
上述のように導電性ペーストを表面に印刷した基板を、ハロゲンランプを加熱源とする近赤外焼成炉(日本ガイシ社製 太陽電池用高速焼成試験炉)を用いて、大気中で所定の条件により焼成した。焼成条件は、775℃のピーク温度とし、大気中、焼成炉のイン−アウト30秒で焼成した。以上のようにして、はんだ付け接着強度測定用基板を作製した。
【0125】
はんだ付けをした金属リボンの接着強度測定用の試料は以下のように作製し、測定した。上述の15mm角のはんだ付け接着強度測定用基板の裏面TAB電極15aに、インターコネクト用の金属リボンである銅リボン(幅1.5mm×全厚み0.16mm、共晶はんだ[スズ:鉛=64:36の重量比]を約40μmの膜厚で被覆)を、フラックスを用いてはんだ付けパッド上に250℃の温度で3秒間はんだ付けすることにより、接着強度測定用の試料を得た。その後、リボンの一端に設けたリング状部をデジタル引張りゲージ(エイアンドディー社製、デジタルフォースゲージAD−4932−50N)によって基板表面に対して90度方向に引っ張り、接着の破壊強度を測定することによってはんだ付け接着強度の測定を行った。なお、試料は10個作製し、測定値は10個の平均値として求めた。なお、金属リボンの接着強度が1N/mmより大きい場合には、使用に耐える良好な接着強度であるといえる。
【0126】
はんだ付け接着強度の測定結果を、表2、表3及び表4に示す。
【0127】
<導電性ペーストのパッシベーション膜に対する反応性の評価>
導電性ペーストのパッシベーション膜に対する反応性の評価を、フォトルミネッセンスイメージング法(「PL法」という。)により行った。PL法は、非破壊・非接触かつ、短時間で、導電性ペーストのパッシベーション膜に対する反応性を評価することが可能である。具体的には、PL法は、試料に対して禁制帯幅より大きいエネルギーの光を照射して発光させ、その発光の状況から、結晶中の欠陥及び表面・界面欠陥の様子を評価する方法である。試料が単結晶シリコン基板中の欠陥及び表面・界面欠陥を有する場合には、欠陥が、光を照射により発生した電子−正孔対の再結合中心として働き、これと対応してフォトルミネッセンスによるバンド端発光強度が低下する。つまり、印刷/焼成された電極によりパッシベーション膜が侵食され、パッシベーション膜と単結晶シリコン基板との界面(すなわち、単結晶シリコン基板の表面)に表面欠陥が形成された場合、表面欠陥が形成された部分(すなわち、試料に形成された電極の部分)のフォトルミネッセンスの発光強度が低下する。このフォトルミネッセンスの発光強度の強弱により、試作ペーストのパッシベーションとの反応性を評価することができる。
【0128】
PL法による評価のために、はんだ付け接着強度の測定の場合と同様に、測定用基板を試作した。すなわち、測定用基板は、単結晶シリコン基板の裏面に、厚さ約60nmの窒化ケイ素膜(裏面パッシベーション膜14)を形成し、15mm×15mmの正方形に切断したもの用いた。
【0129】
裏面TAB電極15aを形成するための導電性ペーストの印刷は、スクリーン印刷法によって行った。導電性ペーストは、表2、表3及び表4に示すガラスフリット及び銀粒子を含む実施例及び比較例の導電性ペーストを用いた。上述の基板の裏面パッシベーション膜14上に、膜厚が約20μmになるように、所定の導電性ペーストを用いて、2mm幅の裏面TAB電極15aのパターンを印刷し、その後、150℃で約1分間乾燥した。なお、裏面TAB電極15aの長さ方向の形状は、長さ15mmのものが15mm間隔で、6つ縦に直線状(点線状)に並ぶ形状とした。
【0130】
なお、裏面TAB電極15aのPL法の測定において、光入射側電極20は不要である。したがって、光入射側電極20は形成しなかった。
【0131】
上述のように導電性ペーストにより電極パターンを表面に印刷した基板を、ハロゲンランプを加熱源とする近赤外焼成炉(日本ガイシ社製 太陽電池用高速焼成試験炉)を用いて、大気中で所定の条件により焼成した。焼成条件は、775℃のピーク温度とし、大気中、焼成炉のイン−アウト30秒で焼成した。以上のようにして、PL法測定用基板を作製した。
【0132】
PL法による測定は、BT Imaging社製Photoluminescence Imaging System装置(型番LIS-R2)を用いて行った。試料に対して励起用の光源(波長650nm、出力3mW)から光を照射し、フォトルミネッセンスの発光強度のイメージを得た。
【0133】
図6及び図7にPL法にて測定したフォトルミネッセンスの発光強度のイメージを示す。図6に示す試料の作製には、光入射側電極を形成するために通常用いられる導電性ペースト(すなわち、パッシベーション膜をファイアースルーすることが可能な導電性ペースト)を用いた。図6から明らかなように、裏面TAB電極15aが形成された部分のイメージは暗くなっている。このことは、裏面TAB電極15aが形成された部分のフォトルミネッセンスの発光強度が低下したことを示している。したがって、図6に示す試料の場合には、裏面TAB電極15aを形成したことにより、パッシベーション膜によるパッシベーションの機能が損なわれ、単結晶シリコン基板の表面の表面欠陥密度が増大したものといえる。表2、表3及び表4では、このようなフォトルミネッセンスの発光強度の低下が観測された試料の「導電性ペーストのパッシベーション膜に対する反応性」の欄に「有り」と記載している。また、図7に示す試料の場合には、フォトルミネッセンスの発光強度の低下が観測されなかった。このように、フォトルミネッセンスの発光強度の低下が観測されなかった試料の「導電性ペーストのパッシベーション膜に対する反応性」の欄には「無」と記載している。「導電性ペーストのパッシベーション膜に対する反応性」が「有り」と判断された導電性ペーストを用いて裏面TAB電極15aを形成した場合には、パッシベーション膜に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼすといえる。
【0134】
なお、確認のため、図6及び図7に示す試料の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した。図8に、図6に示される試料の裏面TAB電極15aを形成した裏面のSEM写真を示す。また、図9に、図7に示される試料の裏面TAB電極15aを形成した裏面のSEM写真を示す。図8から明らかなように、「導電性ペーストのパッシベーション膜に対する反応性」が「有り」と判断された試料の場合には、裏面パッシベーション膜14がガラスフリット32により浸食された部分が存在し、裏面パッシベーション膜14の一部が消失している。一方、図9から明らかなように、「導電性ペーストのパッシベーション膜に対する反応性」が「無」と判断された試料の場合には、裏面パッシベーション膜14が浸食された部分はほとんどなく、裏面TAB電極15aの形成後も、裏面パッシベーション膜14がほぼそのままの形状を維持しており、裏面パッシベーション膜14はガラスフリット32により浸食されていない。以上のことから、上述のPL法による測定により、導電性ペーストのパッシベーション膜に対する反応性の有無を評価できることは明らかである。
【0135】
<実施例1〜15及び比較例1〜7>
表1に示す配合のガラスフリットA〜Gを、表2、表3及び表4に示す添加量になるように添加した導電性ペーストを、はんだ付け接着強度測定用基板及びフォトルミネッセンスイメージング法(PL法)測定用基板の作製のために用いて、上述のような方法で、実施例1〜15及び比較例1〜7のはんだ付け接着強度測定用基板及びPL法測定用基板を作製した。なお、実施例9〜15に用いた導電性ペーストには、表2、表3及び表4に示す添加物をさらに添加した。表2、表3及び表4に、これらのはんだ付け接着強度試験及びPL法の測定結果を示す。
【0136】
表2、表3及び表4に示す測定結果から明らかなように、本発明の実施例1〜15のはんだ付け接着強度(N/mm)は、すべて1N/mm以上であり、はんだ付け接着強度として、良好な接着強度といえる。すなわち、実施例1〜15の場合、形成された電極と、パッシベーション膜との間の接着強度は良好であるといえる。
【0137】
また、本発明の実施例1〜15の「導電性ペーストのパッシベーション膜に対する反応性」は、すべて「無」と判断された。したがって、本発明の実施例1〜15の導電性ペーストを用いて裏面TAB電極15aを形成した場合には、パッシベーション膜に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼさないといえる。
【0138】
これに対して、比較例1〜7のうち、比較例1、4及び7の金属リボンのはんだ付け接着強度(N/mm)は、1N/mm未満であった。したがって、比較例1、4及び7の金属リボンのはんだ付け接着強度(N/mm)は、はんだ付け接着強度として良好であるとはいえない。すなわち、比較例1、4及び7の場合、形成された電極と、パッシベーション膜との間の接着強度は良好であるとはいえない。
【0139】
また、比較例2、3、5及び6の「導電性ペーストのパッシベーション膜に対する反応性」は、すべて「有り」と判断された。したがって、比較例2、3、5及び6の導電性ペーストを用いて裏面TAB電極15aを形成した場合には、パッシベーション膜に対して太陽電池特性に影響を与えるような悪影響を及ぼすといえる。
【0140】
以上のことから、本発明の実施例1〜15の場合には、比較例1〜7と比較して、電極と、パッシベーション膜との間の接着強度、及び「導電性ペーストのパッシベーション膜に対する反応性」の両方において、良好な結果を得ることができることが明らかとなった。
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
【表3】
【0144】
【表4】
【0145】
1 結晶系シリコン基板(p型結晶系シリコン基板)
2 反射防止膜
4 不純物拡散層(n型不純物拡散層)
14 裏面パッシベーション膜
15 裏面電極
15a 裏面TAB電極(裏面バスバー電極)
15b 裏面電極(裏面全面電極)
16 不純物拡散層(p型不純物拡散層)
18 不純物拡散部(p型不純物拡散部)
20 光入射側電極(表面電極)
20a 光入射側バスバー電極
20b 光入射側フィンガー電極
32 銀
34 ガラスフリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9