特許第6688574号(P6688574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6688574ホットメルト接着性樹脂フィルムおよびその製造方法
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  • 特許6688574-ホットメルト接着性樹脂フィルムおよびその製造方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688574
(24)【登録日】2020年4月8日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】ホットメルト接着性樹脂フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/35 20180101AFI20200421BHJP
   C09J 123/26 20060101ALI20200421BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20200421BHJP
   C09J 125/04 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   C09J7/35
   C09J123/26
   C09J163/00
   C09J125/04
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-156366(P2015-156366)
(22)【出願日】2015年8月6日
(65)【公開番号】特開2017-36354(P2017-36354A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】武井 邦浩
(72)【発明者】
【氏名】丸山 悠以子
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 宏和
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−138418(JP,A)
【文献】 特開2013−091702(JP,A)
【文献】 特開2014−218633(JP,A)
【文献】 特開2004−095543(JP,A)
【文献】 特開2010−126709(JP,A)
【文献】 特開平08−190902(JP,A)
【文献】 特開平10−076618(JP,A)
【文献】 特開平04−197633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接着剤層、第1中間層、耐熱性を有する基材層、第2中間層、第2接着剤層をこの順に積層してなり、
前記第1接着剤層および前記第2接着剤層が酸変性ポリオレフィン樹脂を含み、
前記第1中間層が前記基材層および前記第1接着層に対する接着性を有する層であり、
前記第2中間層が前記基材層および前記第2接着層に対する接着性を有する層であり、
前記第1接着剤層および前記第2接着剤層が、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を80質量部〜99.9質量部と、オレフィン化合物とエポキシ基含有ビニルモノマーとを含むモノマーを共重合させて得られる主鎖、および、前記主鎖に結合した側鎖を有し、かつ、融点が80℃〜120℃であるエポキシ基含有ポリオレフィン樹脂(B)を0.1質量部〜20質量部を含有することを特徴とするホットメルト接着性樹脂フィルム。
【請求項2】
第1接着剤層、第1中間層、耐熱性を有する基材層、第2中間層、第2接着剤層をこの順に積層してなり、
前記第1接着剤層および前記第2接着剤層が酸変性ポリオレフィン樹脂を含み、
前記第1中間層が前記基材層および前記第1接着層に対する接着性を有する層であり、
前記第2中間層が前記基材層および前記第2接着層に対する接着性を有する層であり、
前記第1接着剤層および前記第2接着剤層が、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を90質量部〜99.9質量部と、常温で固体であるフェノールノボラック型エポキシ樹脂(C)を0.1質量部〜10質量部とを含有することを特徴とするホットメルト接着性樹脂フィルム。
【請求項3】
第1接着剤層、第1中間層、耐熱性を有する基材層、第2中間層、第2接着剤層をこの順に積層してなり、
前記第1接着剤層および前記第2接着剤層が酸変性ポリオレフィン樹脂を含み、
前記第1中間層が前記基材層および前記第1接着層に対する接着性を有する層であり、
前記第2中間層が前記基材層および前記第2接着層に対する接着性を有する層であり、
前記第1接着剤層および前記第2接着剤層が、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を80質量部〜99.9質量部と、数平均分子量が5万〜25万のオキサゾリン基含有スチレン系樹脂(D)を0.1〜10質量部とを含有することを特徴とするホットメルト接着性樹脂フィルム。
【請求項4】
前記第1中間層および前記第2中間層が、ポリプロピレン、メタロセン系ポリエチレンおよびメタロセン系ポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記基材層の形成材料が、環状オレフィンポリマーを含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のホットメルト接着性樹脂フィルム。
【請求項5】
前記第1中間層および前記第2中間層が、メチルペンテンポリマー、ポリブテン系エラストマーおよびポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記基材層が、メチルペンテンポリマーからなることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のホットメルト接着性樹脂フィルム。
【請求項6】
前記基材層は無機フィラーを含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のホットメルト接着性樹脂フィルム。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載のホットメルト接着性樹脂フィルムの製造方法であって、
第1接着剤層、第1中間層、耐熱性を有する基材層、第2中間層、第2接着剤層をこの順に積層するように共押出法により製造することを特徴とするホットメルト接着性樹脂フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の被着体、特に金属に対して優れた接着性を有するホットメルト接着性樹脂フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被着体に接着する接着フィルムとしては、特許文献1に記載されているような、耐熱性樹脂フィルムからなる基材の両面に熱硬化性のエポキシ系接着剤層が形成されてなる3層構造からなる積層フィルムが知られているが、金属の接着性および耐久性に関して、十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−28738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の接着フィルムは、特に金属との接着を行った時、接着性が十分ではなく、また、過酷な耐久条件の後でも接着性を十分に保てるものではなかった。また、従来の基材を有さない接着フィルムでは、積層体とした時に、積層体を平面に保つ強度が十分ではなく、積層体に歪みが生じるといった課題があった。一方、基材を有する接着性フィルムを用いて接着を行っても、積層体の層間で剥離が起こってしまい、接着剤として十分な強度を保てないという課題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、金属を初めとして、ガラス、プラスチック等の各種、平面状もしくはフィルム状の被着体に対して、各層間で剥離が起こらず、優れた接着力を有し、過酷な耐久評価においても強い耐久性を有するホットメルト接着性樹脂フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、金属を初めとして、ガラス、プラスチック等の各種の平面状もしくはフィルム状の被着体に対して、従来よりも過酷な評価においても高い耐久性を発現する接着樹脂フィルムに関して精査検討を行い、本発明の積層構成を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明者等は、基材層に耐熱性基材を設け、積層体としての強度を確保し、中間層に基材との密着性および表層との密着性の高い樹脂層を設け、表層には酸変性ポリオレフィンを含み、表層の酸変性ポリオレフィンが被着体との接着性を確保する構成を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、第1接着剤層、第1中間層、耐熱性を有する基材層、第2中間層、第2接着剤層をこの順に積層してなり、前記第1接着剤層および前記第2接着剤層が酸変性ポリオレフィン樹脂を含み、前記第1中間層が前記基材層および前記第1接着層に対する接着性を有する層であり、前記第2中間層が前記基材層および前記第2接着層に対する接着性を有する層であり、前記第1接着剤層および前記第2接着剤層が、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を80質量部〜99.9質量部と、オレフィン化合物とエポキシ基含有ビニルモノマーとを含むモノマーを共重合させて得られる主鎖、および、前記主鎖に結合した側鎖を有し、かつ、融点が80℃〜120℃であるエポキシ基含有ポリオレフィン樹脂(B)を0.1質量部〜20質量部を含有することを特徴とするホットメルト接着性樹脂フィルムを提供する。
【0008】
第1接着剤層、第1中間層、耐熱性を有する基材層、第2中間層、第2接着剤層をこの順に積層してなり、前記第1接着剤層および前記第2接着剤層が酸変性ポリオレフィン樹脂を含み、前記第1中間層が前記基材層および前記第1接着層に対する接着性を有する層であり、前記第2中間層が前記基材層および前記第2接着層に対する接着性を有する層であり、前記第1接着剤層および前記第2接着剤層、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を90質量部〜99.9質量部と、常温で固体であるフェノールノボラック型エポキシ樹脂(C)を0.1質量部〜10質量部とを含有することが好ましい。
【0009】
第1接着剤層、第1中間層、耐熱性を有する基材層、第2中間層、第2接着剤層をこの順に積層してなり、前記第1接着剤層および前記第2接着剤層が酸変性ポリオレフィン樹脂を含み、前記第1中間層が前記基材層および前記第1接着層に対する接着性を有する層であり、前記第2中間層が前記基材層および前記第2接着層に対する接着性を有する層であり、前記第1接着剤層および前記第2接着剤層が、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を80質量部〜99.9質量部と、数平均分子量が5万〜25万のオキサゾリン基含有スチレン系樹脂(D)を0.1〜10質量部とを含有することが好ましい。
【0010】
前記第1中間層および前記第2中間層が、ポリプロピレン、メタロセン系ポリエチレンおよびメタロセン系ポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記基材層の形成材料が、環状オレフィンポリマーを含有することが好ましい。
【0011】
前記第1中間層および前記第2中間層が、メチルペンテンポリマー、ポリブテン系エラストマーおよびポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記基材層が、メチルペンテンポリマーからなることが好ましい。
【0012】
前記基材層は無機フィラーを含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明は、本発明のホットメルト接着性樹脂フィルムの製造方法であって、第1接着剤層、第1中間層、耐熱性を有する基材層、第2中間層、第2接着剤層をこの順に積層するように共押出法により製造するホットメルト接着性樹脂フィルムの製造方法を提供する
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、金属を初めとして、ガラス、プラスチック等の各種の被着体に対して、優れた接着力および耐久性を有するホットメルト接着性樹脂フィルムを提供することができる。特に、金属との接着に優れたホットメルト接着性樹脂フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態であるホットメルト接着性樹脂フィルムの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のホットメルト接着性樹脂フィルムおよびその製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより具体的に説明するものであるが、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0019】
[ホットメルト接着性樹脂フィルム]
図1は、本発明の一実施形態であるホットメルト接着性樹脂フィルムの概略構成を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態のホットメルト接着性樹脂フィルム10は、耐熱性を有する基材層11と、基材層11の一方の面11aに積層する第1中間層12と、基材層11の他方の面11bに積層する第2中間層13と、第1中間層12の基材層11とは反対側の面(以下、「一方の面」と言う。)12aに積層する第1接着剤層14と、第2中間層13の基材層11とは反対側の面(以下、「一方の面」と言う。)13aに積層する第2接着剤層15と、を備えてなる。すなわち、ホットメルト接着性樹脂フィルム10は、図1に示すように、第1接着剤層14/第1中間層12/基材層11/第2中間層13/第2接着剤層15がこの順に積層されてなる5層構成からなる。
【0020】
基材層11を構成する樹脂としては、十分な耐熱性を有する樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂;環状オレフィンポリマー(COP)、メチルペンテンポリマー(TPX)等のポリオレフィンポリマー等からなる合成樹脂フィルムが挙げられる。
これらの中でも、線膨張係数が低いものが好ましい。
線膨張係数の低い樹脂を用いることにより、積層体に熱がかかり、または冷却されたときに積層体の収縮が小さくなり、金属を含んだ積層体のひずみが小さくなる。
基材層11に用いる樹脂としては、PEN、COPまたはTPXが好ましく、COPまたはTPXがより好ましい。
【0021】
また、基材層11に添加物として粒子状もしくは繊維状のフィラーを入れることができる。フィラーは耐熱性の高いフィラーであればよく、有機フィラー、無機フィラーが挙げられる。フィラーを入れることにより、ホットメルト接着性樹脂フィルム10の収縮力をさらに抑えることができ、ホットメルト接着性樹脂フィルム10自体の強度を上げることもできる。本発明においては、基材層の耐熱性、収縮性の観点から無機フィラーで添加することが好ましい。
無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の塩化物、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ等の酸化物、タルク、スメクタイト、マイカ、カオリナイト等の鉱物、炭素繊維や炭素粒子等の炭素化合物、ガラスからなる微粒子が挙げられる。また、形状としては球状、棒状、板状等が挙げられるが、板状の化合物が好ましい。
【0022】
基材層11の厚みは、25μm〜250μmであることが好ましく、40μm〜200μmであることがより好ましく、70μm〜190μmであることがさらに好ましい。
また、基材層11の厚みは、ホットメルト接着性樹脂フィルム10全体の厚み(すなわち、基材層11、第1中間層12、第2中間層13、第1接着剤層14および第2接着剤層15の厚みの合計)の20%〜70%程度が好ましい。
【0023】
第1中間層12は、基材層11および第1接着剤層14に対する接着性を有する層である。また、第2中間層13は、基材層11および第2接着剤層15に対する接着性を有する層である。
第1中間層12および第2中間層13に求められる接着性とは、基材層11と、第1接着剤層14および第2接着剤層15との積層体としての強度を保つための強度のことを指しており、接着性が高いと層間剥離が起き難くなる。
第1中間層12および第2中間層13を構成する材料は、第1中間層12および第2中間層13が上述の接着性を有するものであれば特に限定されないが、基材層11を構成する材料に応じて適宜選択される。
【0024】
基材層11を構成する材料が環状オレフィンポリマー(COP)である場合、第1中間層12および第2中間層13を構成する材料は、酸変性ポリプロピレン、メタロセン系ポリエチレンおよびメタロセン系ポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、第1中間層12および第2中間層13を構成する材料としては、ポリプロピレン、メタロセン系ポリエチレンおよびメタロセン系ポリプロピレンからなる群から選択される1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、層間剥離を起こさないようにするために、2種以上を組み合わせることが好ましく、3種以上を含むことがより好ましい。
例えば、第1中間層12および第2中間層13を構成する材料が、酸変性ポリプロピレン、メタロセン系ポリエチレンおよびメタロセン系ポリプロピレンの3成分からなる場合、これら3成分の合計を100質量部としたとき、メタロセン系ポリエチレンの配合量が30質量部〜50質量部、メタロセン系ポリプロピレンの配合量が30質量部〜40質量部であることが好ましく、酸変性ポリプロピレンの配合量が20質量部、メタロセン系ポリエチレンの配合量が50質量部、メタロセン系ポリプロピレンの配合量が30質量部であることが特に好ましい。
【0025】
酸変性ポリプロピレンとしては、例えば、三井化学社製のアドマーNB508、NF518、LB548、QB510、QB550、LB548、NF518、NF528、LF128、LF308、NF308、NF518、NF528、QF500、QF551、NF528、NF548、QF500,QF551、SF731、QF551、QF570、SF715、SF731、SE800、NF518、NF528、HE040、NE065、HE040、NE065、NE090、XE070、QE060、NR106、NS101等が挙げられる。
【0026】
メタロセン系ポリエチレンとしては、例えば、日本ポリエチレン社製のハーモレックスNF324A、NF375B、NF366A、NF384A、NF444A、NF464A、NC564A、NF325A、NF464A、NF444N、NH645A、NH745A、NH845N、NJ744N、プライムポリマー社のエボリューSP0510、SP1020、SP1520、SP1210、SP2020、SP2320等が挙げられる。
【0027】
メタロセン系ポリプロピレンしては、例えば、日本ポリプロ社製のウィンテックWFX6、WFW5T、WFX4M、WXK1233、WFX4TA、WFW4M、WMG3B、WMH02、WMX03、WSX02、WMG03、WMG03UX等が挙げられる。
【0028】
基材層11を構成する樹脂がメチルペンテンポリマー(TPX)である場合、第1中間層12および第2中間層13が、メチルペンテンポリマー、ポリブテン系エラストマーおよびポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種からなることが好ましい。すなわち、第1中間層12および第2中間層13を構成する樹脂が、メチルペンテンポリマー、ポリブテン系エラストマーおよびポリプロピレンからなる群から選択される1種を単独で用いたものでもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、層間剥離を起こさないようにするために、3種以上を組み合わせることが好ましい。なお、メチルペンテンポリマーとしては、酸変性メチルペンテンポリマーを用いてもよい。
例えば、第1中間層12および第2中間層13を構成する樹脂が、メチルペンテンポリマー、酸変性メチルペンテンポリマー、ポリブテン系エラストマーおよびポリプロピレンの4成分からなる場合、これら4成分の合計を100質量部としたとき、メチルペンテンポリマーの配合量が10質量部〜70質量部であることが好ましく、20質量部〜50質量部であることがより好ましく、酸変性メチルペンテンポリマーの配合量が0質量部〜50質量部であることが好ましく、0質量部〜30質量部であることがより好ましく、ポリブテン系エラストマーの配合量が5質量部〜40質量部であることが好ましく、10質量部〜30質量部であることがより好ましく、ポリプロピレンの配合量が5質量部〜40質量部であることが好ましく、10質量部〜30質量部であることがより好ましい。
【0029】
メチルペンテンポリマーとしては、例えば、三井化学社製のRT18、MX002、MX004、DX820、DX231、DX310等が挙げられる。
【0030】
ポリブテン系エラストマーとしては、例えば、三井化学社製のBL2491、PB5640M等が挙げられる。
【0031】
ポリプロピレンとしては、マレイン酸変性ポリプロピレン、ランダムポリプロピレンが好適に用いられる。
【0032】
第1中間層12および第2中間層13の厚みは、0.1μm〜5μmであることが好ましく、0.5μm〜4μmであることがより好ましい。
また、第1中間層12および第2中間層13の合計厚みは、ホットメルト接着性樹脂フィルム10全体の厚み(すなわち、基材層11、第1中間層12、第2中間層13、第1接着剤層14および第2接着剤層15の厚みの合計)の5%〜40%程度が好ましい。
【0033】
第1中間層12を構成する樹脂と、第2中間層13を構成する樹脂は、第1中間層12および第2中間層13が上述の接着性を満たす範囲内において、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0034】
第1接着剤層14および第2接着剤層15は、酸変性ポリオレフィン樹脂とエポキシ基含有樹脂とを有する組成物、または、酸変性ポリオレフィン樹脂とオキサゾリン基含有樹脂とを有する組成物からなる。詳細には、第1接着剤層および第2接着剤層は、酸変性ポリオレフィン樹脂とエポキシ基含有ポリオレフィン系樹脂とを有する組成物(第1の接着性樹脂組成物)、酸変性ポリオレフィン樹脂とフェノールノボラック型エポキシ樹脂とを有する組成物(第2の接着性樹脂組成物)、または、酸変性ポリオレフィン樹脂とオキサゾリン基含有スチレン系樹脂とを有する組成物(第3の接着性樹脂組成物)からなる。
本実施形態のホットメルト接着性樹脂フィルム10を用いて接着する被着体であるプラスチックは、特に限定されないが、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系の被着体との接着に優れる。
本実施形態のホットメルト接着性樹脂フィルム10を用いて接着する被着体である金属板は、特に限定されないが、一般に知られている金属板、金属平面板もしくは金属箔を用いることができる。例えば、鉄、銅、アルミニウム、鉛、亜鉛、チタン、クロムであってもよく、合金であるステンレス等であってもよく、金属によるめっきや金属を含む塗料による塗布加工により表面加工処理された金属もしくは非金属であってもよい。特に好ましくは、鉄、アルミニウム、チタン、ステンレス、表面加工処理された金属からなる金属平面板もしくは金属箔であり、強固な接着強度を実現することができる。
【0035】
[第1の接着性樹脂組成物]
第1の接着性樹脂組成物は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の90質量部〜99.9質量部と、オレフィン化合物とエポキシ基含有ビニルモノマーとを共重合させて得られる主鎖、および、その主鎖に結合した側鎖を有し、かつ、融点が80℃〜120℃であるエポキシ基含有ポリオレフィン系樹脂(B)の0.1質量部〜10質量部とを含有するものである。
以下、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を「(A)成分」、エポキシ基含有ポリオレフィン系樹脂(B)を「(B)成分」と言うことがある。
【0036】
(酸変性ポリオレフィン樹脂(A))
第1の接着性樹脂組成物において、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とは、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂であって、ポリオレフィン系樹脂中に、カルボキシル基や無水カルボン酸基等の酸官能基を有するものである。
(A)成分は、不飽和カルボン酸またはその誘導体によるポリオレフィン系樹脂の変性や、酸官能基含有モノマーとオレフィン類との共重合等により得られる。これらの中でも、(A)成分としては、ポリオレフィン系樹脂を酸変性して得られたものが好ましい。
酸変性方法としては、有機過酸化物や脂肪族アゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下、ポリオレフィン樹脂と酸官能基含有モノマーとを溶融混練するグラフト変性が挙げられる。
【0037】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンまたはα−オレフィンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレンまたはα−オレフィンとのブロック共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体;以下、「ホモPP」と言うことがある。)、プロピレン−エチレンのブロック共重合体(以下、「ブロックPP」と言うことがある。)、プロピレン−エチレンのランダム共重合体(以下、「ランダムPP」と言うことがある。)等のポリプロピレン系樹脂が好ましく、特にランダムPPが好ましい。
共重合する場合の前記オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、α−オレフィン等のオレフィン系モノマーが挙げられる。
【0038】
酸官能基含有モノマーは、エチレン性二重結合と、カルボキシ基またはカルボン酸無水物基とを同一分子内に持つ化合物であって、各種の不飽和モノカルボン酸、ジカルボン酸、またはジカルボン酸の酸無水物が挙げられる。
カルボキシ基を有する酸官能基含有モノマー(カルボキシ基含有モノマー)としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、テトラヒドロフタル酸、エンド−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸(エンディック酸)等のα,β−不飽和カルボン酸モノマーが挙げられる。
カルボン酸無水物基を有する酸官能基含有モノマー(カルボン酸無水物基含有モノマー)としては、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水エンディック酸等の不飽和ジカルボン酸無水物モノマーが挙げられる。
これらの酸官能基含有モノマーは、(A)成分において1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
これらの中でも、酸官能基含有モノマーとしては、後述する(B)成分との反応性が高いことから酸無水物基を有する酸官能基含有モノマーが好ましく、カルボン酸無水物基含有モノマーがより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
酸変性に用いた酸官能基含有モノマーの一部が未反応である場合は、未反応の酸官能基含有モノマーによる接着力の低下を防ぐため、予め未反応の酸官能基含有モノマーを除去したものを(A)成分として用いることが好ましい。
【0040】
(A)成分において、ポリオレフィン系樹脂またはオレフィン類由来の成分は、(A)成分の全量100質量部に対して、50質量部以上であることが好ましい。
【0041】
(A)成分の融点は、(A)成分と後述する(B)成分とを溶融混練する際の温度を考慮して、100℃〜180℃であることが好ましい。上記範囲の融点を有する(A)成分を用いることにより、常法および一般的な装置を用いた場合にも、(A)成分と後述する(B)成分とを、(A)成分の融点よりも十分に高い温度で溶融混練することができる。また、溶融混練を用いて(A)成分と後述する(B)成分とを反応させる場合、(A)成分に比して(B)成分の融点が低いことが好ましいが、上記範囲の融点を有する(A)成分を用いることにより、(B)成分の選択の自由度を高めることができる。
【0042】
また、上述のように(A)成分の融点は、後述する(B)成分の融点よりも高いことが好ましいが、(A)成分の融点は(B)成分の融点よりも10℃以上高いことがより好ましく、20℃以上高いことがさらに好ましく、30℃以上高いことが特に好ましい。(A)成分の融点が(B)成分よりも十分に高いことにより、溶融混練を行った際に(B)成分が先に溶融し、樹脂の形状を保持した状態の(A)成分中に浸透して均一に反応する結果、良好な耐久性を得ることができる。
【0043】
これらの中でも(A)成分としては、接着性および適度な融点の観点から、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましい。
【0044】
(エポキシ基含有ポリオレフィン系樹脂(B))
第1の接着性樹脂組成物において、エポキシ基含有ポリオレフィン系樹脂(B)は、オレフィン化合物とエポキシ基含有ビニルモノマーとを含むモノマーを共重合させて得られる主鎖、および、前記主鎖に結合した側鎖を有し、かつ、融点が80℃〜120℃であるものである。
【0045】
・主鎖
(B)成分の主鎖は、オレフィン化合物と、エポキシ基含有ビニルモノマーと、必要に応じて用いられるその他の任意のモノマーとを共重合させて得られる。
前記オレフィン化合物としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、α−オレフィン等のオレフィン系モノマーが挙げられる。
前記エポキシ基含有ビニルモノマーとしては、グリシジルメタクリレート(GMA)、グリシジルアクリレート等のグリシジルエステル類、アリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類、エポキシブテン等のエポキシアルケン類等が挙げられる。
オレフィン化合物、エポキシ基含有ビニルモノマーとしては、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
(B)成分の主鎖は、オレフィン化合物およびエポキシ基含有ビニルモノマー以外に、その他のモノマーの1種以上を含有していてもよい。その他のモノマーとしては、オレフィン化合物およびエポキシ基含有ビニルモノマーと共重合可能なものであれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルエステルモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、スチレンモノマー等が挙げられる。
(B)成分の主鎖となる共重合体において、各モノマー(化合物)の構成割合は特に限定されないが、(B)成分の主鎖を構成する全モノマーに対して、10質量%〜30質量%、より好ましくは10質量%〜20質量%のエポキシ基含有ビニルモノマーを共重合させて得られる共重合体が好ましい。上記範囲内のエポキシ基含有ビニルモノマーを用いることにより、好適に被接着体との接着性を向上させることができる。
【0047】
これらの中でも、(B)成分の主鎖としては、オレフィン化合物およびエポキシ基含有ビニルモノマーを共重合させて得られる共重合体が好ましく、エチレンとグリシジルメタクリレートとの共重合体が特に好ましい。
【0048】
・側鎖
(B)成分は、前記主鎖に結合した側鎖を有することにより、オレフィン系共重合体の強度、接着性、合成等の特性を改善することができる。側鎖は特に限定されるものではなく、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンを含有する重合体);(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル等のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの1種以上を重合させて得られる(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、(B)成分の側鎖としては、スチレンを含有する重合体が好ましく、例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体が挙げられる。これらの中でも、ポリスチレンが特に好ましい。
【0049】
上記のような主鎖および側鎖を有する(B)成分は、例えば、常法により得られた主鎖共重合体と、側鎖を構成するモノマーと、有機過酸化物や脂肪族アゾ化合物等のラジカル重合開始剤とを用いたグラフト重合により得ることができる。
(B)成分の融点は80℃〜120℃であって、90℃〜110℃であることが好ましい。このような融点を有する(B)成分は、主鎖および側鎖を構成するモノマー種を適宜選択することにより得ることができる。
上記範囲の融点を有する(B)成分を用いることにより、常法および一般的な装置を用いた場合にも、当該(B)成分の融点よりも十分に高い温度で、前記(A)成分と(B)成分とを溶融混練することが可能となり、優れた耐久性を有する接着剤や接着層を得ることができる。また、溶融混練を用いて前記(A)成分と(B)成分とを反応させる場合、(A)成分に比して(B)成分の融点が低いことが好ましいが、上記範囲の融点を有する(B)成分を用いることにより、(A)成分の選択の自由度を高めることができる。
【0050】
このような(B)成分としては、日油株式会社製のモディパーA1100、A4100、A4400(いずれも商品名)等の市販品を用いることもできる。
【0051】
第1の接着性樹脂組成物において、(A)成分80質量部〜99.9質量部に対して、(B)成分は0.1質量部〜20質量部で含有される。より具体的には、第1の接着性樹脂組成物の固形分中、(A)成分の割合は、90質量部〜99質量部であることが好ましく、(B)成分の割合は1質量部〜10質量部であることが好ましい。
【0052】
第1の接着性樹脂組成物には、所望により混和性のある添加剤、付加的な樹脂、可塑剤、安定剤、着色剤等を適宜含有することができる。
【0053】
第1の接着性樹脂組成物は、(A)成分の酸官能基と、(B)成分のエポキシ基との双方が、被着体に対する接着性官能基として機能することにより、金属、ガラス、プラスチック等の各種の被着体に対して、優れた接着性を奏することが可能となると考えられる。
また、(A)成分の酸官能基の一部と、(B)成分のエポキシ基の一部とが反応し、(A)成分と(B)成分の分散構造を補強することにより、優れた接着性と共に良好な耐久性が得られるものと考えられる。
【0054】
[第2の接着性樹脂組成物]
第2の接着性樹脂組成物は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の95質量部〜99.9質量部と、常温で固体であるフェノールノボラック型エポキシ樹脂(C)の0.1質量部〜5質量部と、を含有するものである。
以下、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を「(A)成分」、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(C)を「(C)成分」と言うことがある。
【0055】
(酸変性ポリオレフィン樹脂(A))
第2の接着性樹脂組成物において、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とは、上述の第1の接着性樹脂組成物における酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と同一である。
【0056】
(フェノールノボラック型エポキシ樹脂(C))
第2の接着性樹脂組成物において、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(C)は、常温で固体であるフェノールノボラック型エポキシ樹脂である。常温において固体である(C)成分を用いることで、溶融混練によって前記(A)成分と(C)成分とを重合させる場合にも、(A)成分の溶融温度に合わせて溶融混練を行うことができ、かつ、その際に(C)成分の特性が損なわれ難くなる。
【0057】
第2の接着性樹脂組成物において、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(C)とは、フェノールとホルムアルデヒドとを酸縮合して得られるフェノールノボラック樹脂を基本構造とし、その構造の一部にエポキシ基が導入された高分子化合物である。フェノールノボラック型エポキシ樹脂における1分子あたりのエポキシ基導入量は特に限定されないが、エピクロルヒドリン等のエポキシ基原料とフェノールノボラック樹脂とを反応させることにより、フェノールノボラック樹脂中に多数存在するフェノール性水酸基に多数のエポキシ基が導入されるため、通常は多官能エポキシ樹脂となる。
【0058】
これらの中でも、(C)成分としては、基本骨格としてフェノールノボラック構造を有し、かつ、ビスフェノールA構造を併せて有する樹脂が好ましい。なお、(C)成分中のビスフェノールA構造は、ビスフェノールAから誘導され得る構造であればよく、ビスフェノールAの両端水酸基がエポキシ基含有基等の基で置換されていてもよい。
(C)成分の一例としては、下記一般式(1)で表される樹脂が挙げられる。
【0059】
【化1】
[式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、nは0〜10の整数であり、Rはエポキシ基を有する基である。]
【0060】
上記一般式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基である。nが2以上の整数の場合、R、Rはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
上記一般式(1)で表される樹脂中は、下記(i)〜(iii)の少なくともいずれか1つを満たすことが好ましい。
(i)RおよびRの両方がメチル基、(ii)RおよびRの両方がメチル基、(iii)RおよびRの両方がメチル基
例えば、上記(i)を満たすことにより、上記一般式(1)においてRおよびRが結合する炭素原子と、当該炭素原子が結合する2つのヒドロキシフェニル基とがビスフェノールAから誘導される構造を構成することとなる。
【0061】
上記一般式(1)中、Rはエポキシ基を有する基である。エポキシ基を有する基としては、エポキシ基、エポキシ基とアルキレン基との組み合わせ等が挙げられ、なかでもグリシジル基が好ましい。
【0062】
(C)成分のエポキシ当量は、100〜300であることが好ましく、200〜300であることがより好ましい。エポキシ当量(g/eq)は、エポキシ基1個あたりのエポキシ樹脂の分子量であって、この値が小さいほど樹脂中のエポキシ基が多いことを意味する。エポキシ当量の比較的小さい(C)成分を用いることにより、(C)成分の添加量を比較的少量とした場合にも、(C)成分と被着体との接着性が良好となり、かつ、(C)成分と前記(A)成分とが十分に架橋する。
【0063】
このような(C)成分としては、三菱化学社製のjER154、jER157S70、jER−157S65;DIC社製のEPICLON N−730A、EPICLON N−740、EPICLON N−770、EPICLON N−775(以上、いずれも商品名)等の市販品を用いることもできる。
【0064】
第2の接着性樹脂組成物において、(A)成分95質量部〜99.9質量部に対して、(C)成分は0.1質量部〜5質量部で含有されることが好ましく、(A)成分97質量部〜99質量部に対して、(C)成分は1質量部〜3質量部で含有されることがより好ましい。
【0065】
第2の接着性樹脂組成物は、所望により混和性のある添加剤、付加的な樹脂、可塑剤、安定剤、着色剤等を適宜含有することができる。
【0066】
第2の接着性樹脂組成物は、(A)成分の酸官能基と、(C)成分のエポキシ基との双方が、被着体(特に被着体が有する水酸基等の官能基)に対する接着性官能基として機能することにより、金属、ガラス、プラスチック等の各種の被着体に対して、優れた接着性を奏することが可能となると考えられる。
また、(A)成分の酸官能基の一部と、(C)成分のエポキシ基の一部とが反応し、(A)成分と(B)成分の架橋構造ができ、この架橋構造により樹脂の強度が補強され、優れた接着性と共に良好な耐久性が得られるものと考えられる。
【0067】
[第3の接着性樹脂組成物]
第3の接着性樹脂組成物は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の90質量部〜99.9質量部と、数平均分子量が5万〜25万のオキサゾリン基含有スチレン系樹脂(D)の0.1質量部〜20質量部と、を含有するものである。
以下、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を「(A)成分」、オキサゾリン基含有スチレン系樹脂(D)を「(D)成分」ということがある。
【0068】
(酸変性ポリオレフィン樹脂(A))
第3の接着性樹脂組成物において、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とは、上述の第1の接着性樹脂組成物における酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と同一である。
【0069】
(オキサゾリン基含有スチレン系樹脂(D))
第3の接着性樹脂組成物において、オキサゾリン基含有スチレン系樹脂(D)は、数平均分子量が3万〜25万のオキサゾリン基含有スチレン系樹脂である。(D)成分がオキサゾリン基を有することにより、(D)成分のオキサゾリン基と前記(A)成分の酸官能基(例えば、カルボキシ基、カルボン酸基、等)とが反応して架橋構造が形成される。例えば、(A)成分の酸官能基がカルボキシ基の場合であれば、下記式(2)で示すような架橋反応が起こり、アミドエステル結合が形成される。その結果として、主たる樹脂となる(A)成分を(D)成分が補強することとなり、(A)成分の架橋がより強まり、優れた接着性と共に良好な耐久性が得られるものと考えられる。
【0070】
【化2】
【0071】
これらの中でも、(D)成分としては、スチレン系モノマーと、オキサゾリン基含有モノマーとを共重合して得られる樹脂が好ましい。
スチレン系モノマーとしては、スチレンおよびその誘導体を用いることができる。具体的には、スチレン、α‐メチルスチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン等のアルキルスチレン;クロロスチレン、フルオロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン等のハロゲン化スチレン等が挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
【0072】
オキサゾリン基含有モノマーは、オキサゾリン基を含有し、かつスチレン系モノマーと共重合が可能なモノマーであればその骨格は特に限定されないが、オキサゾリン基とビニル基とを有するモノマーを好適に用いることができる。
オキサゾリン基含有ビニルモノマーとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、4,4−ジメチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4,4−ジメチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4−アクリロイル−オキシメチル−2,4−ジメチル−2−オキサゾリン、4−メタクリロイルオキシメチル−2,4−ジメチル−2−オキサゾリン、4−メタクリロイルオキシメチル−2−フェニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−(4−ビニルフェニル)−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン、4−エチル−4−ヒドロキシメチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4−エチル−4−カルボエトキシメチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等が挙げられる。これらの中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが好ましい。
【0073】
スチレン系モノマー、オキサゾリン基含有モノマーとしては、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(D)成分は、スチレン系モノマーおよびオキサゾリン基含有モノマー以外に、その他のモノマーの1種以上を含有していてもよい。その他のモノマーは、これらモノマーと共重合可能なものであれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルエステルモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー等が挙げられる。
(D)成分において、各モノマーの構成割合は特に限定されないが、(D)成分を構成する全モノマーに対して、5質量%〜50質量%、より好ましくは10質量%〜30質量%のオキサゾリン基含有モノマーを共重合させて得られる樹脂が好ましい。上記範囲内のオキサゾリン基含有モノマーを用いることにより、前記(A)成分と(D)成分とを十分に架橋させ、良好な耐久性を得ることができる。
【0074】
(D)成分の数平均分子量は、5万〜25万であって、6万〜10万が好ましく、6万〜8万がさらに好ましい。数平均分子量が上記範囲内の(D)成分を用いることにより、(A)成分と(D)成分との相溶性が向上し、(A)成分と(D)成分とを十分に架橋冴えることが可能となる。
【0075】
このような(D)成分としては、日本触媒社製のエポクロスRPS−1005(商品名)等の市販品を用いることができる。
【0076】
第3の接着性樹脂組成物において、(A)成分80質量部〜99.9質量部に対して、(D)成分は0.1質量部〜20質量部で含有される。なかでも、(A)成分95質量部〜99質量部に対して、(D)成分が1質量部〜10質量部含有されることが好ましい。
【0077】
第3の接着性樹脂組成物は、(A)成分の酸官能基と、(D)成分のオキサゾリン基とが、加熱によって容易に反応するため、他にこれらの官能基と反応し得る硬化剤を配合する必要はないが、所望により混和性のある添加剤、付加的な樹脂、可塑剤、安定剤、着色剤等を適宜含有することができる。
【0078】
第3の接着性樹脂組成物は、(A)成分の酸官能基が、被着体に対する接着性官能基として機能することにより、金属、ガラス、プラスチック等の各種の被着体に対して、優れた接着性を奏することが可能となると考えられる。また、(A)成分の酸官能基の一部と、(D)成分のオキサゾリン基の一部とが互いに反応し、主たる樹脂となる(A)成分を補強することにより(A)成分の架橋がより強固となり、優れた接着性と共に良好な耐久性が得られるものと考えられる。なお、オキサゾリン基は被着体にカルボキシル基を有する場合には、接着性官能基としても機能する。
【0079】
第1接着剤層14および第2接着剤層15のそれぞれの厚みは、5μm〜50μmであることが好ましく、10μm〜30μmであることがより好ましい。
また、第1接着剤層14および第2接着剤層15の合計の厚みは、ホットメルト接着性樹脂フィルム10全体の厚み(すなわち、基材層11、第1中間層12、第2中間層13、第1接着剤層14および第2接着剤層15の厚みの合計)の5%〜60%程度が好ましい。
【0080】
第1接着剤層14を構成する樹脂と、第2接着剤層15を構成する樹脂とは、第1接着剤層14および第2接着剤層15が上述の接着性を満たす範囲内において、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0081】
本実施形態のホットメルト接着性樹脂フィルム10は、第1接着剤層14、第1中間層12、耐熱性を有する基材層11、第2中間層13、第2接着剤層15をこの順で積層し、第1接着剤層14および第2接着剤層15は、酸変性ポリオレフィン樹脂とエポキシ基含有樹脂とを有する組成物、または、酸変性ポリオレフィン樹脂とオキサゾリン基含有樹脂とを有する組成物からなるため、金属を初めとして、ガラス、プラスチック等の各種の被着体に対して、優れた接着力および耐久性を有する。
【0082】
[ホットメルト接着性樹脂フィルムの製造方法]
本発明の一実施形態であるホットメルト接着性樹脂フィルムの製造方法としては、例えば、共押出法が挙げられる。
共押出法を用いてホットメルト接着性樹脂フィルムを製造する場合、基材層11を構成する樹脂、第1中間層12および第2中間層13を構成する樹脂、第1接着剤層14および第2接着剤層15を構成する樹脂をそれぞれ、異なる押出機から別々に押し出し、これらの樹脂を、金型の中で、第1接着剤層14/第1中間層12/基材層11/第2中間層13/第2接着剤層15の順となるように積層して複合フィルムを形成し、その複合フィルムを延伸して、所定の厚みのホットメルト接着性樹脂フィルム10を得る。
【0083】
第1中間層12および第2中間層13を構成する樹脂として、複数の材料を組み合わせて用いる場合、それらの材料を溶融混練する。
溶融混練の装置としては、一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、プラストミル、加熱ロールニーダー等を用いることができる。
溶融混練時の加熱温度は、第1中間層12および第2中間層13を構成する樹脂が十分に溶融し、かつ熱分解しない範囲内から選択することが好ましい。
なお、混練温度は、溶融混練装置から押し出された直後における、溶融状態の樹脂組成物に、熱電対を接触させる等の方法によって測定することが可能である。
【0084】
第1接着剤層14および第2接着剤層15を構成する樹脂として、第1の接着性樹脂組成物を用いる場合、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とエポキシ基含有ポリオレフィン系樹脂(B)とを溶融混練する。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、エポキシ基含有ポリオレフィン樹脂(B)としてはそれぞれ、上述した(A)成分、(B)成分と同様である。前記(A)成分と、前記(B)成分とを含有する第1の接着性樹脂組成物を、公知の装置を用いて溶融混練することにより、(A)成分と(B)成分とを反応させることができる。
【0085】
溶融混練の装置としては、一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、プラストミル、加熱ロールニーダー等を用いることができる。(A)成分および(B)成分の反応時における、(B)成分のエポキシ基の分解を抑制するため、水分等のエポキシ基と反応し得る揮発成分は、予め装置外へ除去しておき、かつ、反応中に揮発成分が発生する場合には脱気等により随時装置外へ排出することが望ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)が、酸官能基として、酸無水物基を有する場合、エポキシ基含有ポリオレフィン樹脂(B)のエポキシ基との反応性が高く、より穏和な条件下で反応が可能となるため好ましい。
【0086】
溶融混練時の加熱温度は、(A)成分および(B)成分が十分に溶融し、かつ熱分解しないという点で、240℃〜300℃の範囲内から選択することが好ましい。
なお、混練温度は、溶融混練装置から押し出された直後における、溶融状態の第1の接着性樹脂組成物に、熱電対を接触させる等の方法によって測定することが可能である。
【0087】
第1接着剤層14および第2接着剤層15を構成する樹脂として、第2の接着性樹脂組成物を用いる場合、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とフェノールノボラック型エポキシ樹脂(C)とを溶融混練する。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(C)としてはそれぞれ、上述した(A)成分、(C)成分と同様である。前記(A)成分と、前記(C)成分とを含有する第2の接着性樹脂組成物を、公知の装置を用いて溶融混練することにより、(A)成分と(C)成分とを反応させることができる。
【0088】
溶融混練の装置としては、一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、プラストミル、加熱ロールニーダー等を使用することができる。(A)成分および(C)成分の反応時における、(C)成分のエポキシ基の分解を抑制するため、水分等のエポキシ基と反応し得る揮発成分は、予め装置外へ除去しておき、かつ、反応中に揮発成分が発生する場合には脱気等により随時装置外へ排出することが望ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)が、酸官能基として酸無水物基を有する場合、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(C)のエポキシ基との反応性が高く、より穏和な条件下で反応が可能となるため好ましい。
【0089】
溶融混練時の加熱温度は、(A)成分および(C)成分が十分に溶融し、かつ熱分解しないという点で、240℃〜300℃の範囲内から選択することが好ましい。
なお、混練温度は、溶融混練装置から押し出された直後における、溶融状態の第2の接着性樹脂組成物に、熱電対を接触させる等の方法によって測定することが可能である。
【0090】
第1接着剤層14および第2接着剤層15を構成する樹脂として、第3の接着性樹脂組成物を用いる場合、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とオキサゾリン基含有スチレン系樹脂(D)とを溶融混練する。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、オキサゾリン基含有スチレン系樹脂(D)としてはそれぞれ、上述した(A)成分、(D)成分と同様である。前記(A)成分と、前記(D)成分とを含有する第3の接着性樹脂組成物を、公知の装置を用いて溶融混練することにより、(A)成分と(D)成分とを反応させることができる。
【0091】
溶融混練の装置としては、一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、プラストミル、加熱ロールニーダー等を使用することができる。(A)成分および(D)成分の反応時における、(D)成分のエポキシ基の分解を抑制するため、水分等のエポキシ基と反応し得る揮発成分は、予め装置外へ除去しておき、かつ、反応中に揮発成分が発生する場合には脱気等により随時装置外へ排出することが望ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)が、酸官能基として酸無水物基を有する場合、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(D)のオキサゾリン基との反応性が高く、より穏和な条件下で反応が可能となるため好ましい。
【0092】
溶融混練時の加熱温度は、(A)成分および(D)成分が十分に溶融し、かつ熱分解しないという点で、240℃〜300℃の範囲内から選択することが好ましい。
なお、混練温度は、溶融混練装置から押し出された直後における、溶融状態の第2の接着性樹脂組成物に、熱電対を接触させる等の方法によって測定することが可能である。
【実施例】
【0093】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0094】
[実施例1〜15、比較例1〜5]
(接着性樹脂フィルム)
表1、2中に示す素材(a)、(b)および(c)を表1、2に示す添加量で、250℃で2分間溶融混練後、共押出法により、第1接着剤層、第1中間層、基材層、第2中間層、第2接着剤層の5層を、この順に積層するように製膜し、所定の厚さのホットメルト接着性樹脂フィルムを得た。なお、比較例2および3では、中間層を設けることなく、第1接着剤層、基材層および第2接着剤層の3層を、この順に積層した。それぞれの層の膜厚を第1接着剤層20μm、第1中間層15μm、基材層75μm、第2中間層15μm、第2接着剤層20μmとした。
素材(a)は基材層を構成する素材、素材(b)は第1中間層および第2中間層を構成する素材、素材(c)は第1接着剤層および第2接着剤層を構成する素材である。
【0095】
表1中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
(基材層)
TPX:チルペンテンポリマーからなる層
COP:環状オレフィンポリマーからなる層
CPP:ポリプロピレン樹脂(PF380A、サンアロマー社製)からなる層
表2においては、無機フィラーを記載した割合で含むフィルムとして製膜した。
【0096】
(接着剤成分)
(A)無水マレイン酸変性ポリプロピレン(融点140℃)
(B)「モディパーA4100」(商品名、日油株式会社製)(エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体と、ポリスチレンとのグラフト重合体;主鎖中の全モノマーに対するグリシジルメタクリレートモノマーの割合=70質量%;融点97℃)
(C)「jER157S70」(商品名、三菱化学社製)(ビスフェノールA構造を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂;軟化点=70℃;エポキシ当量=210)
(D)「エポクロス RPS−1005」(商品名、日本触媒社製)(スチレンと2−イソプロペニル−2−オキサゾリンとを共重合させて得られた樹脂;数平均分子量=7万)
【0097】
(中間層)
(E)SEBS樹脂G1657M(商品名、クレイトン社製)
(F)メタロセン系ポリエチレン:ハーモレックスNF325N(商品名、日本ポリエチレン社製)
(G)メタロセン系ポリプロピレン:ウィンテックWFW4(商品名、日本ポリプロ社製)
(H)メチルペンテンポリマー:MX004(商品名、三井化学社製)
(I)ポリブテン系エラストマー:BL2491(商品名、三井化学社製)
(J)ポリプロピレン:アドマーQE060(商品名、三井化学社製)
【0098】
(金属と、第1接着剤層および第2接着剤層との接着性の評価・接着性の評価1)
厚さ5mm、縦横30mm×10mmのステンレス板に、実施例1〜12および比較例1〜5の接着性樹脂フィルムを10mm×10mmに切り出したものを積層し、その上に厚さ30μm、縦横30mm×10mmにカットしたアルミニウム箔の端部を載せて0.5MPaの圧力をかけながら、150℃で5秒間貼り合わせることで、接着面積100mmの積層体とした。
得られた積層体を、95℃のお湯に300時間漬け、浸漬後の積層体の端部を引張試験機のクランプで、300mm/minの速度で90℃方向に引っ張り、剥離状態を目視により観察した。結果を表1に示す。
下記の評価基準に基づいて、金属と接着層の剥離を観察した。
○:アルミニウム箔が破断するまで金属と積層体の接着面の剥離が生じなかった。
△:アルミニウム箔が破断する前に金属と積層体の接着面においてわずかに剥離が生じた。
×:アルミニウム箔が破断する前に金属と積層体の接着面において容易に剥離が生じ、剥がれが観察された。
【0099】
(接着性樹脂フィルムの層間の接着性の評価・接着性の評価2)
前記(金属と、第1接着剤層および第2接着剤層との接着性の評価)と同時に積層体の層間の状態を観察し、評価を行った。
○:アルミニウム箔が破断するまで積層体の層間の剥離が生じなかった。
△:アルミニウム箔が破断する前に積層体の層間に剥離が生じた。
×:アルミニウム箔が破断する前に積層体において容易に剥離が生じ、剥がれが観察された。
なお、接着性の評価において、接着性の評価1、接着性の評価2がいずれも「○」の場合は、アルミニウム箔が破断するまで金属と積層体の剥離、積層体の層間の剥離がいずれも生じなかったことを示す。接着性の評価1、接着性の評価2のいずれかに「○」があり、いずれかに「△」もしくは「×」がある場合には、いずれかの剥離が見られ、いずれかの層の間で剥離が見られたことを示す。また、接着性の評価1、接着性の評価2のいずれにも「×」がある場合にはいずれの層間においても激しい剥がれが見られたことを示す。
【0100】
(積層体の耐久性の評価)
厚さ30μm、縦30mm×横30mmのアルミニウム箔に、実施例1〜12および比較例1〜5の接着性樹脂フィルムを10mm×10mmに切り出したものを積層し、その上に厚さ300μm、縦30mm×横30mmにカットしたステンレス箔の端部を載せて0.5MPaの圧力をかけながら、150℃で5秒間貼り合わせることで、積層体とした。
得られた積層体を、120℃の乾燥した高温サーモ機の中に、1000時間投入した。投入後、積層体を取り出し、積層体の状態を観察し剥がれを目視により観察した。結果を表1に示す。
下記の評価基準に基づいて評価を行った。
◎:目に見える剥がれがなく、良好であった。
○:目に見えて目立った剥がれが見られなかった。
△:ところどころに剥がれが見られた。
×:全面に剥がれが見られた。
【0101】
(接着時の形状保持性)
厚さ30μm、縦30mm×横30mmのアルミニウム箔に、実施例1〜12および比較例1〜5の接着性樹脂フィルムを10mm×10mmに切り出したものを積層し、その上に厚さ300μm、縦30mm×横30mmにカットしたステンレス箔の端部を載せて0.5MPaの圧力をかけながら、150℃で5秒間貼り合わせることで、積層体とした。
積層直後の積層体の状態を観察し剥がれを目視により観察した。結果を表1に示す。
下記の評価基準に基づいて評価を行った。
◎:目に見える積層体のゆがみが見られなかった。
○:目に見えて大きなゆがみが見られなかった。
△:積層体のゆがみが見られた。
×:積層体の全面が大きくゆがんでいる、もしくは凹凸が激しかった。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
表1に示す結果から、本発明のホットメルト接着性樹脂フィルムを用いた積層体の評価において、本発明のホットメルト接着性樹脂フィルムは金属に対する優れた接着性を有することが確認できた。また、本発明のホットメルト接着性樹脂フィルムを用いた積層体は、金属と接着剤層との接着が良好であり、ホットメルト接着性樹脂フィルムの層間においても優れた接着性を有することが確認できた。過酷な耐久評価を経ても優れた耐久性を有することが確認でき、ホットメルト接着性樹脂フィルムは反り難く、積層体の製造においても有用なホットメルト接着性樹脂フィルムであることが分かった。
比較例1、3、5は、基材層に無延伸ポリプロピレンフィルムを含んでおり、ポリプロピレンであるために中間層もしくは表層との密着性は良好であるものの、無延伸ポリプロピレンが耐熱性の低い素材であるため、積層体の厚み及び形状の保持ができなかったのが分かった。
また、比較例2、4は、基材層に無延伸ポリプロピレンフィルムを含んでおり、無延伸ポリプロピレンが耐熱性の低い素材であるため、積層後の積層体にゆがみが見られ、もしくは厚みのムラがあり、形状の保持が出来ないこと分かった。
実施例11および実施例12のホットメルト接着性樹脂フィルムは、接着剤層に添加剤成分を含まないため、金属層との接着性が実施例1〜10に比べて劣っていた。
表2に示す結果から、基材層が無機フィラーを含むことにより、接着時の形状保持性が改善することが分かった。
【符号の説明】
【0105】
10・・・ホットメルト接着性樹脂フィルム、11・・・基材層、12・・・第1中間層、13・・・第2中間層、14・・・第1接着剤層、15・・・第2接着剤層。
図1