特許第6688803号(P6688803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6688803スポンジ形成性シリコーンゴム組成物およびシリコーンゴムスポンジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6688803
(24)【登録日】2020年4月8日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】スポンジ形成性シリコーンゴム組成物およびシリコーンゴムスポンジ
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/28 20060101AFI20200421BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20200421BHJP
   C08L 83/07 20060101ALN20200421BHJP
   C08L 83/05 20060101ALN20200421BHJP
【FI】
   C08J9/28 102
   C08J9/28CFH
   G03G15/20 505
   !C08L83/07
   !C08L83/05
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-542192(P2017-542192)
(86)(22)【出願日】2016年2月2日
(65)【公表番号】特表2018-510931(P2018-510931A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】JP2016000535
(87)【国際公開番号】WO2016132690
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2019年1月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-27387(P2015-27387)
(32)【優先日】2015年2月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】入江 正和
【審査官】 石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−058687(JP,A)
【文献】 特開2008−214625(JP,A)
【文献】 特開2010−150350(JP,A)
【文献】 特開2011−201951(JP,A)
【文献】 特開2014−051550(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/013847(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/085357(WO,A1)
【文献】 特開2003−082232(JP,A)
【文献】 特開2006−225422(JP,A)
【文献】 特開2013−241532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
G03G 15/20
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するポリオルガノシロキサン 100質量部、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン{(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.4〜20モルとなる量}、
(C)水 20〜500質量部、
(D)増粘剤{(C)成分100質量部に対して0.01〜15質量部}、
(E)乳化剤 0.1〜15質量部、
(F)アルカリ金属のハロゲン含有イオン伝導体 0.00001〜2.0質量部、および
(G)ヒドロシリル化反応触媒{(A)成分と(B)成分の合計量に対して、(G)成分中の触媒金属が質量単位で0.01〜500ppmの範囲内となる量}
から少なくともなり、
(D)成分が、無機系増粘剤、セルロース繊維、水溶性ポリマー、吸水性ポリマー、前記無機系増粘剤と前記水溶性ポリマーとからなる親水性複合物、および前記無機系増粘剤と前記吸水性ポリマーとからなる親水性複合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の増粘剤であり、
(F)成分が、MBF、MClO、MPF、MAsF、MSbF、MSOCF、MN(SOCF)、MSO、MC(SOCF)、およびMB(C)からなる群より選ばれる少なくとも1種のイオン伝導体(式中、Mはリチウムまたはナトリウムである。)である、
スポンジ形成性シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(D)成分の無機系増粘剤がスメクタイトクレーである、請求項に記載のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
さらに、(H)ヒドロシリル化反応抑制剤を、(A)成分100質量部に対して0.001〜5質量部含有する、請求項1または2に記載のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
さらに、(I)補強性シリカ微粉末を、(A)成分100質量部に対して30質量部以下含有する、請求項1乃至のいずれか1項に記載のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか1項に記載のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物をヒドロシリル化反応により架橋した後、得られたシリコーンゴムから水を除去するか、または該組成物をヒドロシリル化反応により架橋させながら水を除去してなるシリコーンゴムスポンジ。
【請求項6】
画像形成装置の定着部材用シリコーンゴムスポンジである、請求項に記載のシリコーンゴムスポンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポンジ形成性シリコーンゴム組成物、および該組成物をヒドロシリル化反応により架橋してなるシリコーンゴムスポンジに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムスポンジは耐熱性、耐候性に優れ、軽量であり、熱伝導率も低いことから、パッキング、ガスケット、Oリング等の各種シール材;複写機、プリンター等の画像形成装置のローラまたはベルト;ボンネット緩衝パッド、エンジン防振材等の自動車用部品に使用されている。
【0003】
このようなシリコーンゴムスポンジを形成するシリコーンゴム組成物としては、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するポリジオルガノシロキサン、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン、スメクタイトクレーを含有する水、乳化剤、および白金系触媒からなるシリコーンゴム用エマルション組成物(特許文献1参照);一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を含有する液状ポリオルガノシロキサン、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有する液状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、界面活性剤、付加反応触媒、補強性シリカ微粉末、および水からなるシリコーンゴムスポンジ形成性組成物(特許文献2参照);および分子鎖両末端がアルケニル基で封鎖され、分子鎖側鎖にアルケニル基を有さないポリジオルガノシロキサン、分子鎖側鎖にアルケニル基を2個以上有するポリジオルガノシロキサン、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン、水と無機系増粘剤からなる混合物、乳化剤、ヒドロシリル化反応触媒、および硬化遅延剤からなるスポンジ形成性液状シリコーンゴム組成物(特許文献3参照)が提案されている。そして、このようなシリコーンゴム組成物を均一な乳化状態で硬化した後、得られるシリコーンゴムから水を除去することによりシリコーンゴムスポンジを形成することができる。
【0004】
しかし、このようにして得られるシリコーンゴムスポンジは、スポンジ気泡の細かさや均一性が十分でなかったり、水を除去するための2次加硫後、不均一な収縮により、歪が大きくなるという課題がある。
【0005】
一方、シリコーンゴムに帯電性防止性能を付与するため、リチウム塩を配合することが知られている(特許文献4、5参照)。
【0006】
しかし、リチウム塩は、ゴム物性や圧縮永久歪を低下させないで、その帯電性防止性能を付与するためのものであり、シリコーンゴムの圧縮永久歪を改良するためのものではなかった。特に、シリコーンゴムスポンジを2次加硫した後、その収縮による歪を小さくすることは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−346248号公報
【特許文献2】特開2005−062534号公報
【特許文献3】特開2008−214625号公報
【特許文献4】特開2006−265340号公報
【特許文献5】特開2011−201951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、均一かつ微細な気泡を有し、2次加硫後、収縮による歪が小さいシリコーンゴムスポンジを形成するスポンジ形成性シリコーンゴム組成物、およびこのようなシリコーンゴムスポンジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物は、
(A)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するポリオルガノシロキサン 100質量部、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン{(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.4〜20モルとなる量}、
(C)水 20〜500質量部、
(D)増粘剤{(C)成分100質量部に対して0.01〜15質量部}、
(E)乳化剤 0.1〜15質量部、
(F)アルカリ金属のハロゲン含有イオン伝導体 0.00001〜2.0質量部、および
(G)ヒドロシリル化反応触媒(本組成物のヒドロシリル化反応を促進する量)
から少なくともなる。
【0010】
本発明のシリコーンゴムスポンジは、上記組成物をヒドロシリル化反応により架橋した後、得られたシリコーンゴムから水を除去するか、または該組成物をヒドロシリル化反応により架橋させながら水を除去してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物は、均一かつ微細な気泡を有し、2次加硫後、収縮による歪が小さいシリコーンゴムスポンジを形成するという特徴がある。また、本発明のシリコーンゴムスポンジは、均一かつ微細な気泡を有し、2次加硫後、収縮による歪が小さいという特徴がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
はじめに、本発明のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物について詳細に説明する。
【0013】
(A)成分のポリオルガノシロキサンは本組成物の主剤であり、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有する。(A)成分中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等の炭素数2〜8のアルケニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。このアルケニル基の結合位置は限定されず、分子鎖末端のケイ素原子および/または分子鎖中のケイ素原子に結合していてもよく、好ましくは、分子鎖末端のケイ素原子である。また、(A)成分中のアルケニル基以外のケイ素原子結合有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の炭素数1〜8のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の炭素数5〜8のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数6〜12のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜12のアラルキル基;およびこれらの一価炭化水素基中の水素原子の一部または全部をフッ素、塩素等のハロゲン原子で置換した一価炭化水素基が例示され、好ましくは、メチル基、フェニル基である。
【0014】
(A)成分の分子構造は限定されず、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、樹脂状が例示され、好ましくは、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状である。(A)成分としては、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状であり、その分子構造が部分的に、分岐鎖状、環状を有してもよいポリオルガノシロキサンであることが好ましい。
【0015】
このような(A)成分としては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、および分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体が例示される。(A)成分は上記の分子構造を有するポリオルガノシロキサンを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0016】
また、(A)成分の粘度は限定されないが、25℃における粘度が50mPa・s以上、または100mPa・s以上であり、一方、100,000mPa・s以下であることが好ましい。これは、(A)成分の粘度が上記下限以上であり、上記上限以下であると、得られるシリコーンゴム組成物の乳化物が安定で、均一な気泡を有するシリコーンゴムスポンジが得られやすいからである。なお、このポリオルガノシロキサンの25℃における粘度は、例えば、JIS K7117−1に準拠したB型粘度計によって測定することができる。
【0017】
(B)成分のポリオルガノシロキサンは本組成物の架橋剤であり、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有する。(B)成分中のケイ素原子結合水素原子は分子鎖末端のケイ素原子および/または分子鎖中のケイ素原子に結合していてもよい。(B)成分の分子構造は限定されず、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、樹脂状が例示され、好ましくは、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状である。(B)成分としては、直鎖状のポリオルガノシロキサンであることが好ましい。
【0018】
このような(B)成分としては、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、H(CH)SiO1/2単位およびSiO4/2単位からなるオルガノポリシロキサン、ならびにH(CH)SiO1/2単位、(CH)SiO1/2単位およびSiO4/2単位からなるオルガノポリシロキサンが例示される。
【0019】
また、(B)成分の粘度は限定されないが、25℃における動粘度が1mm/s以上、1,000mm/s以下であることが好ましい。なお、このポリオルガノシロキサンの25℃における動粘度は、JIS Z8803に準拠したウベローデ型粘度計によって測定することができる。
【0020】
(B)成分の含有量は、(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.4〜20モルの範囲内となる量であり、好ましくは、その下限が1.0モルとなる量、1.5モルとなる量、または1.8モルとなる量であり、一方、その上限が10モルとなる量、または5.0モルとなる量である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲内であると、得られるシリコーンゴムスポンジの圧縮永久歪が改善されるからである。
【0021】
(C)成分の水は、本組成物を架橋した後、シリコーンゴムから除去されることで、該シリコーンゴムを多孔質状とするための成分である。(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して20〜500質量部の範囲内であり、好ましくは、その下限が30質量部、40質量部、または50質量部であり、一方、その上限が400質量部、300質量部、または200質量部である。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られるシリコーンゴムスポンジが多孔質状で均一な気泡を有するようになりやすいからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、シリコーンゴムスポンジを得られやすいからである。
【0022】
(C)成分の水は限定されないが、水道水、井戸水、イオン交換水、蒸留水等を用いることができる。特に、(A)成分への分散が安定するという点から、(C)成分はイオン交換水であることが好ましい。
【0023】
(D)成分の増粘剤は、(C)成分の水を増粘させ、(C)成分の(A)成分中への分散を容易にし、(A)成分中の(C)成分の分散状態を安定にし、得られるシリコーンゴムを均一な多孔質状とするための成分である。このような(D)成分としては、無機系増粘剤、セルロース繊維、水溶性ポリマー、吸水性ポリマー、前記無機系増粘剤と前記水溶性ポリマーとからなる親水性複合物、および前記無機系増粘剤と前記吸水性ポリマーとからなる親水性複合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0024】
(D)成分の無機系増粘剤は、天然または合成の無機系増粘剤であり、ベントナイト(モンモリロナイト)、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、バイデライト、およびノントロナイト等の粘土鉱物を主成分とするベントナイト等の天然または合成のスメクタイトクレーが例示される。このようなスメクタイトクレーは、例えば、水熱合成品であるスメクトン(クニミネ工業株式会社の登録商標)、ルーセンタイト(コープケミカル株式会社の登録商標)、天然精製品であるクニピア(クニミネ工業株式会社の登録商標:)、ベンゲル(株式会社ホージュンの登録商標)、ベントン(エレメンティス株式会社の登録商標)、ビーガム(バンダービルト社の登録商標)として入手可能である。水に分散させたときの粘度の上昇が大きく、(E)乳化剤の含有量を少なくすることができることから、この無機系増粘剤は、ベントナイト(モンモリロナイト)、ヘクトライト、またはサポナイトであることが好ましい。これらのスメクタイトクレーのpHはシリコーンゴムスポンジの耐熱性を維持する点からpH5.0〜9.0の範囲内であることが好ましい。また、このようなスメクタイトクレーとポリアクリル酸等の水溶性ポリマーまたは吸水性ポリマーとからなる親水性複合物を用いてもよい。
【0025】
(D)成分のセルロース繊維は、天然または合成のセルロース繊維を化学処理や物理処理によりナノファイバー化したものである。このようなセルロース繊維は、分散性、増粘性等の観点から、好ましくは、その数平均繊維径が2〜150nmの範囲内、2〜100nmの範囲内、または、2〜10nmの範囲内である。これは、数平均繊維径が上記範囲内であると、水に分散させた際に沈降しにくく、流動性を保持して増粘できるからである。
【0026】
(D)成分のセルロース繊維は、第一工業製薬株式会社製のセルロースナノファイバーの水分散液(商品名:Rheocrysta C−2SP)として入手可能である。
【0027】
(D)成分の水溶性ポリマーとしては、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カルボキシレートのナトリウム塩、カルボキシセルロースのナトリウム塩、メチルセルロース、セルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロース、変性デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリレートあるいはポリアクリレートのナトリウム塩が例示される。
【0028】
また、(D)成分の吸水性ポリマーとしては、ポリアクリル酸塩架橋体、ポリオキシアルキレン系吸水性樹脂が例示される。
【0029】
(D)成分の含有量は、(C)成分の水100質量部に対して0.01〜15質量部の範囲内であり、好ましくは、その下限が0.05質量部、または0.1質量部であり、一方、その上限は10質量部、または5質量部である。これは、(D)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、(C)成分の水を十分に増粘できるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、シリコーンゴム組成物の乳化を安定させることができるからである。
【0030】
(E)成分の乳化剤は、水をシリコーンゴム組成物中に均一に乳化させ、得られるシリコーンゴムを均一な多孔質状とするための成分である。このような(E)成分としては、アニオン系、カチオン系、両性イオン系、およびノニオン系の乳化剤が例示され、具体的には、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等のノニオン系界面活性剤;ポリシロキサン・ポリオキシエチレングラフト共重合体等のポリオルガノシロキサンからなるノニオン系界面活性剤;脂肪族アミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等のカチオン系界面活性剤;高級脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリエチレングリコール硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤;カルボキシベタイン型またはグリシン型の両性イオン系界面活性剤が例示される。特に、本組成物のヒドロシリル化反応による架橋に影響が少ないことからノニオン系の乳化剤であることが好ましい。
【0031】
これらの乳化剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。乳化剤のHLB値(なお、乳化剤を2種以上併用するときは、その重量平均HLB値)は、好ましくは、1以上、10以下、1.5以上、6未満、または、3.5以上、6未満である。
【0032】
(E)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲内であり、好ましくは、その下限は0.2質量部であり、一方、その上限は10質量部、5質量部、または3質量部である。これは、(E)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、(C)成分を(A)成分中に均一に分散させることができるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られるシリコーンゴムスポンジの機械的特性や電気的特性に影響を与えないからである。
【0033】
(F)成分のアルカリ金属のハロゲン含有イオン伝導体は、本組成物を架橋して得られるシリコーンゴムスポンジを2次加硫した後、収縮による歪を小さくするための成分である。このような(F)成分としては、リチウムまたはナトリウムのハロゲン含有イオン伝導体であることが好ましく、具体的には、MBF、MClO、MPF、MAsF、MSbF、MSOCF、MN(SOCF)、MSO、MC(SOCF)、MB(C)、およびこれらの2種以上の混合物が例示される。なお、式中、Mはリチウム(Li)またはナトリウム(Na)である。
【0034】
(F)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.00001〜1.0質量の範囲内であり、好ましくは、その下限が0.0001質量部であり、一方、その上限は0.5質量部である。これは、(F)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、2次加硫後の歪を小さくできるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、(A)成分中への(C)成分の分散性を悪化させず、均一かつ微細な気泡を有するシリコーンゴムスポンジを形成できるからである。
【0035】
(G)成分のヒドロシリル化反応触媒は本組成物をヒドロシリル化反応するための触媒であり、例えば、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との配位化合物、これらを熱可塑性樹脂中に分散させた粉末状白金系触媒などの白金系触媒;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等のパラジウム系触媒;およびクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等のロジウム系触媒が例示され、好ましくは、白金系触媒である。
【0036】
(G)成分の含有量は、本組成物のヒドロシリル化反応を促進する量であり、好ましくは、(A)成分と(B)成分の合計量に対して、(G)成分中の触媒金属が質量単位で0.01〜500ppmの範囲内となる量、または0.1〜100ppmの範囲内となる量である。
【0037】
本組成物には、本組成物の架橋速度や作業可使時間を調整する目的で、さらに(H)ヒドロシリル化反応抑制剤を含有してもよい。(H)成分としては、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−フェニル−1−ブチン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニル基含有低分子量シロキサン;メチル−トリス(1,1−ジメチル−2−ブチンオキシ)シラン、ビニル−トリス(1,1−ジメチル−2−ブチンオキシ)シラン等のアルキン含有シランが例示される。
【0038】
(H)成分の含有量は限定されず、本組成物の使用方法や成形方法に応じて適宜選択されるが、本組成物の架橋速度や作業可使時間を十分に調整できることから、好ましくは、(A)成分100質量部に対して0.001質量部〜5質量部の範囲内である。
【0039】
本組成物には、得られるシリコーンゴムスポンジの機械的強度を向上させる目的で、さらに(I)補強性シリカ微粉末を含有してもよい。(I)成分としては、ヒュームドシリカ、沈降シリカが例示される。また、これらのシリカ微粉末を、直鎖状ポリオルガノシロキサン、環状ポリオルガノシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、各種オルガノシラン等で表面処理してもよい。また、(I)成分は、好ましくは、BET吸着法によるその比表面積が50〜350m/g、または80〜250m/gである。
【0040】
(I)成分の含有量は、好ましくは、(A)成分100質量部に対して、30質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、または10質量部以下である。これは、(I)成分の含有量が上記範囲の上限以下であると、得られるシリコーンゴムスポンジの気泡の均一性や細かさを損なうことなく、機械的強度を向上できるからである。
【0041】
本組成物には、得られるシリコーンゴムスポンジに電気伝導性を付与させる目的で導電性充填剤を含有してもよい。この導電性充填剤としては、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラファイト等のカーボン系導電剤;金、銀、ニッケル等の金属粉;導電性酸化亜鉛、導電性酸化チタン、導電性酸化アルミニウム;各種フィラー表面に金属メッキ処理するなどのフィラー表面に導電被覆処理した導電性充填剤;およびこれらの2種以上の混合物が例示される。少量の添加で良好な導電性が得られることから、この導電性充填剤はカーボンブラックであることが好ましく、具体的には、アセチレンブラック、コンダクティブファーネスブラック(CF)、スーパーコンダクティブファーネスブラック(SCF)、エクストラコンダクティブファーネスブラック(XCF)、コンダクティブチャンネルブラック(CC)、および1500℃程度の高温で熱処理されたファーネスブラックまたはチャンネルブラックが例示される。この導電性充填剤の含有量は限定されないが、良好なスポンジを得ることができることから、好ましくは、(A)成分100質量部に対して100質量部以下、または70質量部以下である。
【0042】
本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、ヒュームド酸化チタン等のシリカ以外の補強充填剤;石英粉末、珪藻土、アルミノ珪酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化セリウム、マイカ、クレイ、炭酸亜鉛等の非補強充填剤;これらの充填剤をオルガノシラン、ポリオルガノシロキサン等の有機ケイ素化合物で表面処理した充填剤;その他、防腐剤、防錆剤、顔料、耐熱剤、難燃剤、内部離型剤、可塑剤、受酸剤、無官能のシリコーンオイルを含有してもよい。
【0043】
本組成物は、(A)成分〜(G)成分、および必要に応じてその他任意の成分を混合することにより調製することができる。本組成物を調製するため、ホモミキサー、パドルミキサー、ホモディスパー、コロイドミル、真空混合攪拌ミキサー等の公知の混練手段を用いることができる。本組成物を調製する方法としては、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、および(F)成分をミキサーに投入し、所定時間攪拌混合し、使用直前に(G)成分を、例えば、スタティックミキサーやダイナミックミキサー等の混合装置を用いて混合する方法;(A)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、および(G)成分をミキサーに投入し、所定時間攪拌混合し、使用直前に(B)成分を、例えば、スタティックミキサーやダイナミックミキサー等の混合装置を用いて混合する方法;(A)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、および(F)成分をミキサーに投入し、所定時間攪拌混合し、使用直前に(B)成分と(G)成分を、例えば、スタティックミキサーやダイナミックミキサー等の混合装置を用いて混合する方法が例示される。
【0044】
また、本組成物を調製する際、その保存安定性の点から、
A液:(A)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、および(G)成分からなり、(B)成分を含まない組成物、
B液:(A)成分、(C)成分、(D)成分、および(E)成分からなり、(B)成分と(G)成分を含まない組成物、
C液:(B)成分からなり、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、および(G)成分を含まない組成物
からなる3液型スポンジ形成性シリコーンゴム組成物、または、
A‘液:(A)成分、(G)成分、および必要に応じて(E)成分からなり、(B)成分、(C)成分、および(D)成分を含まない組成物、
B‘液:(B)成分、および必要に応じて(E)成分からなり、(C)成分、(D)成分、および(G)成分を含まない組成物、
C‘液:(C)成分、(D)成分、および必要に応じて(F)成分からなり、(A)成分、(B)成分、および(G)成分を含まない組成物
からなる3液型スポンジ形成性シリコーンゴム組成物として保存し、成形に供する直前に3液を、例えば、スタティックミキサーやダイナミックミキサー等の混合装置を用いて混合することが好ましい。また、
A‘’液:(A)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、および(G)成分からなり、(B)成分を含まない組成物と
B‘’液:(B)成分からなり、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、および(G)成分を含まない組成物
からなる2液型スポンジ形成性シリコーンゴム組成物として保存し、成形に供する直前に2液を、例えば、スタティックミキサーやダイナミックミキサー等の混合装置を用いて混合することが好ましい。
【0045】
本組成物から種々の方法でシリコーンゴムスポンジを形成することができる。具体的には、本組成物を均一に乳化した後、成型用の金型のキャビティに注入し、加圧下で100℃未満、好ましくは50〜90℃の温度に保持して含水状態のシリコーンゴム成形体を成形し、金型から取り出して120〜250℃で2次加硫して含水状態のシリコーンゴム成形体から水を除去することにより、微細で均一な気泡を有するシリコーンゴムスポンジを得ることができる。また、本組成物をノズルからロッド状に吐出し、例えば80〜100℃の熱水中に導入して硬化させ、硬化物を熱風乾燥することにより紐状のシリコーンゴムスポンジを作製することもできる。また、本組成物を樹脂フィルム等の剥離性基材上にコーティングし、例えば50〜120℃に加熱して硬化させ、熱風乾燥して水を除去する、あるいは、加熱して水を除去しつつ硬化させた後、剥離性基材を除くことによりシリコーンゴムスポンジシートを形成することができる。あるいは、本組成物を合成繊維織物やガラスクロス上にコーティングし、例えば50〜120℃に加熱して硬化させ、熱風乾燥して水を除去する、あるいは、加熱して水を除去しつつ硬化させることによりシリコーンゴムスポンジコーティング布を形成することができる。
【0046】
次に、本発明のシリコーンゴムスポンジを詳細に説明する。
【0047】
本発明のシリコーンゴムスポンジは、上記のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物をヒドロシリル化反応により架橋した後、得られたシリコーンゴムから水を除去するか、または該組成物をヒドロシリル化反応により架橋させながら水を除去してなることを特徴とする。
【0048】
本発明のシリコーンゴムスポンジは、画像形成装置の定着部材の弾性材料としても有用である。定着ロールの場合、芯金にシリコーンゴムスポンジ層を有するものであるが、この場合、芯金の材質、寸法等はロールの種類に応じて適宜選定し得る。定着ベルトの場合、無端ベルト上にシリコーンゴムスポンジ層を有するものであるが、この場合、無端ベルトの材質、寸法等はベルトの種類に応じて適宜選定し得る。
【0049】
また、シリコーンゴムスポンジ層の外周に更にフッ素樹脂層やフッ素ゴム層を設けてもよい。この場合、フッ素系樹脂層は、フッ素系樹脂コーティング材やフッ素系樹脂チューブなどにより形成され、シリコーンゴムスポンジ層を被覆する。フッ素系樹脂コーティング材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)のラテックスや、ダイエルラテックス(ダイキン工業社製のフッ素系ラテックス)が挙げられ、またフッ素系樹脂チューブとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、フッ化エチレン−ポリプロピレン共重合体樹脂(FEP)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリフッ化ビニル樹脂が挙げられる。
【0050】
なお、シリコーンゴムスポンジ層の厚さは限定されないが、ゴム弾性を有効に利用することから、好ましくは、0.05〜80mmの範囲内、または0.1〜50mmの範囲内である。また、その上に形成されるフッ素樹脂又はフッ素ゴム層の厚さは、好ましくは、5〜200μmの範囲内、または10〜100μmの範囲内である。
【実施例】
【0051】
本発明のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物およびシリコーンゴムスポンジを実施例により詳細に説明する。なお、実施例中、粘度は25℃における値である。また、実施例中、シリコーンゴムスポンジの特性は次にようにして測定した値である。
【0052】
<粘度>
ポリオルガノシロキサンの25℃における粘度(mPa・s)は、JIS K7117−1に準拠したB型粘度計によって測定した値であり、動粘度(mm/s)は、JIS Z8803に準拠したウベローデ型粘度計によって測定した値である。
【0053】
<密度>
JIS K 6268に準じて、密度を測定した。
【0054】
<硬さ>
JIS K 7312に規定されたタイプC硬さ試験機(Asker C硬度計)を用いた試験方法に準じ、厚さ6mmの試験片を使用して、硬さを測定した。
【0055】
<引張強さ、伸び>
JIS K 6251に準じて、引張強さおよび伸びを測定した。
【0056】
<圧縮永久ひずみ>
JIS K 6262に準じて、180℃、25%圧縮という条件で、22時間後の圧縮永久ひずみを測定した。
【0057】
<収縮率>
直径 29mm、厚さ 12.8mmのキャビティを有する金型を用いて成型した、圧縮永久ひずみ測定用試験片の中心部分の厚さと端部の厚さを測定して、次の式に代入して収縮率を求めた。
【0058】
【数1】
【0059】
[調製例1]
(シリカマスターバッチの調製)
粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン 100質量部、BET比表面積400m/gのフュームドシリカ 50質量部、ヘキサメチルジシラザン 10質量部、テトラメチルジビニルシラザン 0.36質量部、水 2質量部、粘度20mPa・sの分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基の含有量=約10.9質量%) 0.26質量部をロスミキサーに投入し、室温で均一になるまで混合した後、減圧下、200℃で2時間加熱混練して、流動性のあるシリカマスターバッチを調製した。
【0060】
[調製例2]
(無機系増粘剤で増粘した水分散液の調製)
スメクタイトクレー(株式会社ホージュン製の有機ポリマー複合親水性精製ベントナイト;pH6.5) 0.85質量部とイオン交換水 99.15質量部をホモミキサーに投入し、室温で均一になるまで混合して、無機系増粘剤により増粘した水分散液(c-1)を調製した。
【0061】
[調製例3]
(セルロースナノファイバーで増粘した水分散液の調製)
セルロースナノファイバー(数平均繊維径が4nm)の2%水分散液(第一工業製薬株式会社製の商品名Rheocrysta C−2SP) 10質量部とイオン交換水 20質量部をホモミキサーに投入し、室温で均一になるまで混合して、セルロースナノファイバーで増粘した水分散液(c-2)を調製した。
【0062】
[実施例1〜10、比較例1〜3]
シリカマスターバッチ、(A)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分を表1〜3に記載の組成(質量部)でホモミキサー(特殊機化株式会社製)に投入し、25℃で均一になるまで混合した。次いで、得られた混合物に(B)成分、(G)成分および(H)成分を表1〜3に記載の組成(質量部)で混合し、脱気してスポンジ形成性シリコーンゴム組成物を調製した。なお、表1〜3において、SiH/Viは、シリコーンゴム組成物において、(A)成分に相当するポリオルガノシロキサン中のビニル基1モルに対する、(B)成分に相当するポリオルガノシロキサン中のケイ素原子結合水素原子のモル数を示す。
【0063】
このようにして調製したスポンジ形成性シリコーンゴム組成物を、圧縮成形機を用いて、90℃で10分間の条件下で架橋させて、含水状態の各種試験片を作製した。次に、これらの試験片を200℃で4時間、開放系に放置して試験片中の水を除去し、シリコーンゴムスポンジ試験片を作製した。これらのシリコーンゴムスポンジ試験片を用いて、密度、硬さ、引張強さ、伸び、圧縮永久ひずみ、収縮率を測定した。その結果を表1〜3に示した。
【0064】
シリカMB: 調製例1で調製したシリカマスターバッチ(ヒュームドシリカの含有量=約31質量%)
(a−1): 粘度10,000mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基の含有量=0.13質量%)
(a−2): 粘度350mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基の含有量=約1.17質量%)
(b−1): 動粘度43.5mm/sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量=約0.69質量%)
(c−1): 調製例2で調製した無機系増粘剤で増粘させた水分散液(スメクタイトクレーの含有量=0.85質量%)
(c−2): 調製例3で調製したセルロースナノファイバーにより増粘させた水分散液(セルロースナノファイバーの含有量=0.67質量%)
(d−1): ノニオン系界面活性剤(ソルビタン脂肪酸エステル、花王株式会社製の商品名:レオドールSP−O10V、HLBの値=4.3)
(d−2): ノニオン系界面活性剤(ソルビタン脂肪酸エステル、花王株式会社製の商品名:レオドールSP−O30V、HLBの値=1.8)
(e−1): LiN(SOCF)
(e−2): NaN(SOCF)
(e−3): LiPF
(f−1): 白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属の含有量=約4000ppm)
(g−1): エチニルシクロヘキサノール 2質量部と粘度10,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン 98質量部との混合物
顔料MB: ベンガラ(バイエル社製の商品名:バイフェロクス) 40質量部と粘度10,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン 60質量部との混合物
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のスポンジ形成性シリコーンゴム組成物は、成形性に優れ、成形後に微細な気泡を有し、収縮率が小さく、2次加硫後の歪が小さいシリコーンゴムスポンジを形成することができるので、電子写真複写機、レーザビームプリンター、オンデマンド印刷機、ファクシミリ等の画像形成装置に使用されるロールやベルトの弾性材料や、断熱材、吸音材、クッション、パッキン、ガスケット、パッドなどの高温下で使用されるスポンジ用途に好適に使用される。