(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6689533
(24)【登録日】2020年4月10日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】包装体の製造方法及びシーラー
(51)【国際特許分類】
B65B 51/10 20060101AFI20200421BHJP
B65B 51/16 20060101ALI20200421BHJP
B65D 75/62 20060101ALI20200421BHJP
B65B 9/08 20120101ALI20200421BHJP
B65B 51/26 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
B65B51/10 N
B65B51/16 100
B65D75/62 A
B65B9/08
B65B51/26
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-113240(P2016-113240)
(22)【出願日】2016年6月7日
(65)【公開番号】特開2017-218183(P2017-218183A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2018年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上野 友央
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 克己
【審査官】
吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−262532(JP,A)
【文献】
特開2016−003032(JP,A)
【文献】
特開2007−290769(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0217447(US,A1)
【文献】
特開2006−347601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 51/10
B65B 9/08
B65B 51/16
B65B 51/26
B65D 75/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装体の製造方法であって、
周縁部に脆弱部が設けられたシートを二つ折りにする工程と、
前記二つ折りにしたシートに対して所定の間隔で収容部を隔てる隔離シール部を形成する工程と、を含み
隔離シール部を形成する際にヒートシール面の一部が欠損しているシーラーを用いることで、前記隔離シール部が前記脆弱部に到達しないようにした包装体の製造方法。
【請求項2】
隔離シール部を形成する際に、シートとシートとの間にノズルを挟み込んだ状態で隔離シール部を形成する、請求項1記載の包装体の製造方法
【請求項3】
二つ折りで形成された非シール辺と対向し、かつ、隔離シール部の端部を跨ぐようにしてシール辺を設けることで、収容部を密封する工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の包装体の製造方法。
【請求項4】
周縁部に脆弱部を備えた二つ折りシートをヒートシールし、周縁部側が開口した収容部を形成するためのシーラーであって、
前記シーラーはヒートシール面がシートを挟んで向かい合うように配置された一対の挟持構造であり、
前記一対のシーラーのうち少なくともいずれか一方のシーラーは、前記シートの周縁部に対応するヒートシール面が欠損しているシーラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体の製造方法及びシーラーに関する。より詳しくは、包装体の製造時に意図せぬ破断の発生を防ぐことができる包装体の製造方法及びシーラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従前より、その収容部に固体または液体などの内容物が封入された包装体が流通している。このような包装体の例としては、即席食品や冷凍食品、チルド食品等の粉末スープや調味料などが挙げられる。このような包装体の生産方法として、連結包装体を作成した後に個別の包装体に切り離す方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、最近では包装体の開封性を改善するために、切れ目や切り欠き等の脆弱部が設けられた包装体も提案されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、切れ目や切り欠き以外の脆弱部の形成方法として、マジックカット(登録商標)、ハーフカットやレーザー加工等も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−3032号
【特許文献2】実開昭57−058035号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、切れ目や切り欠きなどの脆弱部は、内容物を収容した包装体に対して後加工により形成することができる。しかし、マジックカット(登録商標)やハーフカットなどの脆弱部は、内容物を収容した包装体に対して後加工により形成するのは極めて困難である。そのため、包装体成形前のシートにあらかじめ加工しておくのが一般的である。
【0006】
一方、シートの周縁部にマジックカット(登録商標)やハーフカットが形成されたシートを特許文献1に記載の方法で包装体に成形すると、縦シールに沿って脆弱部から意図せぬ破断が発生するという問題があった。これは、縦シールが充填ノズルの幅とほぼ同じ幅で包装体の上下に亘って形成されると、縦シールの端部(特に開口部)に張力が集中してしまい、脆弱部が破断してしまうためである。その結果、マジックカットまたはハーフカットから縦シールに沿って破断が生じてしまう。
【0007】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、シートの周縁部にマジックカット(登録商標)やハーフカットなどの脆弱部が形成されたシートを用いて包装体を製造した場合であっても、意図せぬ破断が生じにくい包装体の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明の別の課題は、シートの周縁部にマジックカット(登録商標)、ハーフカットやレーザー加工等の脆弱部が形成されたシートを用いて包装体を製造する際に、意図せぬ破断が生じにくい包装体の製造に適したシーラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決する本発明は、包装体の製造方法であって、周縁部に脆弱部が設けられたシートを二つ折りにする工程と、前記二つ折りにしたシートに対して所定の間隔で収容部を隔てる隔離シール部を形成する工程と、を含み、隔離シール部を形成する際にヒートシール面の一部が欠損しているシーラーを用いることで、前記隔離シール部が前記脆弱部に到達しないようにした包装体の製造方法である。
【0010】
このような構成によると、シール面の一部が欠損したシーラーを用いるため、隔離シール部の端部が脆弱部にまで到達しない。そのため、包装体を成形する際に脆弱部に張力や熱がかからず、脆弱部から隔離シール部に沿って意図せぬ破断が発生することを防ぐことができる。
【0011】
前記製造方法においては、隔離シール部を形成する際に、シートとシートとの間にノズルを挟み込んだ状態で隔離シール部を形成することが好ましい。また、二つ折りで形成された非シール辺と対向し、かつ、隔離シール部の端部を跨ぐようにしてシール辺を設けることで、収容部を密封する工程をさらに含むことが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、ノズルを挟み込んだ状態で包装体を成形できるため、隔離シール部の幅を必要以上に取る必要がなく、コストを削減することができる。また、収容部にノズルが入り込んだ状態となるため、内容物の充填が容易となる。さらに、隔離シール部の端部を跨ぐようにシール辺を設けることで、新たな装置を追加することなく、収容部を密閉することができる。
【0013】
前記課題を解決する本発明は、二つ折りしたシートをヒートシールすることで収容部を形成するシーラーであって、前記シーラーはヒートシール面がシートを挟んで向かい合うように配置された一対の挟持構造であり、前記一対のシーラーのうち少なくともいずれか一方のシーラーは、前記シートの周縁部に対応するヒートシール面が欠損しているシーラーである。
【0014】
このような構成によると、シートの周縁部に対応するシーラーのシール面が欠損しているため、シーラーがシートを挟持してもその部分だけヒートシールしないようにすることができる。これにより、シート周辺部にかかる張力や熱を弱めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、脆弱部が形成されたシートを用いて包装体を製造することができる。これにより、易開封性が改善された包装体を提供することができる。また、包装体の製造時において意図せぬ破断の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る製造方法で作成された包装体の正面図であって、(a)は内容物を充填する前の包装体であり、(b)は内容物を充填した製品形態の包装体である。
【
図2】本発明に係る製造方法を実施するための装置の概略説明図である
【
図3】本発明に係るシーラーを説明するための図面であって、(a)は斜視図であり、(b)はヒートシール時における平面図である。
【
図4】従来のシーラーを説明するための図面であって、(a)は斜視図であり、(b)はヒートシール時における平面図である。
【
図5】従来のシーラーを用いて製造した包装体を表す正面図である。
【0017】
以下、本発明を実施するための好適な形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同じ名称の部分には同一符号を付している。
【0018】
図1は本発明に係る製造方法で作成された包装体の正面図であって、(a)は内容物を充填する前の包装体であり、(b)は内容物を充填した製品形態の包装体である。
【0019】
包装体100は、非透過性の包装用シート素材からなる。非透過性の包装用シート素材としては、例えば、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、またはポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、若しくはこれらを積層したフィルムに対し、アルミニウムや銅等の金属を蒸着したもの、アルミ箔などが挙げられる。
【0020】
包装体100は、連続した包装用シート素材を二つ折りにすることで形成される非シール辺110と、非シール辺110と直行する方向に設けられた隔離シール部120とによって収容部130が形成されたシール包装である。
【0021】
本発明で用いられる非透過性の包装用シート素材の周縁部には、脆弱部140が設けられている。脆弱部140としては、マジックカット(登録商標)、ハーフカットやレーザー加工等が挙げられる。また、脆弱部140は包装用シート素材のすべての周縁部に設けられていても良いし、一部の周縁部のみに設けられていても良い。
【0022】
隔離シール部120は収容部130を隔てるためのシール部であって、所定の間隔で形成されている。隔離シール部120は非シール辺110から脆弱部140の直下まで形成されているが、隔離シール部120の端部と脆弱部140との間には隙間dが形成されている。隔離シール部120の端部と脆弱部140との隙間dは1〜10mmあることが好ましく、1〜5mmあることがより好ましい。
【0023】
隔離シール部120及び非シール辺110により囲まれた収容部130には内容物が封入される。また、本発明にかかる包装体100は、最終的に非シール辺110に対向して設けられるシール辺150によって収容部130が密閉されることで、最終製品として用いられる。
【0024】
最終製品は、即席食品やチルド食品、冷凍食品等の製品の付属品として用いることができる。内容物としては、例えば粉末スープや液体スープ、具材、七味唐辛子や山椒、胡椒等の粉粒体からなる調味料等が挙げられる。
【0025】
次に、本発明にかかる包装体100の製造方法について説明する。ここでは、最終製品として内容物が充填された収容部130が2つ連結した包装体100を例に説明する。
【0026】
図2は、本発明に係る包装体100の製造方法を実施するための製袋充填機400を示す概略説明図である。
【0027】
製袋充填機400は、シートロール410、縦シーラー420、充填ノズル431,432、横シーラー440、及びカッター450から構成される。製袋充填機400により、シートロール410から排出された包装用シート素材200が、縦シーラー420、充填ノズル431,432、横シーラー440、カッター450をそれぞれ経由して、内容物が封入された最終製品が順次製造される。
【0028】
シートロール410は、包装用シート素材200がロール状に巻かれたものである。ここで、包装用シート素材200は、ヒートシール可能な素材であれば特に限定されないが、例えば、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、またはポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、若しくはこれらを積層したフィルムに対し、アルミニウムや銅等の金属を蒸着したもの、アルミ箔などを用いてもよい。包装用シート素材200は、シートロール410から引き出されながら連続的に搬送される。
【0029】
包装用シート素材200は、縦シーラー420に到達する前に、搬送方向に沿う方向に折り目が来るように、搬送されながら二つ折りされる。このとき、二つ折りされた折部(非シール辺110、
図1参照)が下方に位置し、上方は開いた状態となっている。
【0030】
二つ折りされた包装用シート素材200に対して、充填ノズル431,432が挿入され、縦シーラー420により上下方向にヒートシールされる。これにより、収容部130(
図1参照)が形成される。
【0031】
ここで、
図1(a)及び
図3(a),(b)を参照しつつ、本発明に係る縦シーラー420の構造についてより詳しく説明する。縦シーラー420は包装用シート素材に対してヒートシール面421で熱を加え、包装用シート素材同士を熱溶着させることで隔離シール部120を形成する。本発明に係る縦シーラー420は、ヒートシール面421の一部に欠損部422を有する構造になっている。欠損部422を設けることで欠損部422に対応する位置の包装用シート素材には熱が加わらず、包装用シート素材同士が熱溶着されない。すなわち、欠損部422によって隔離シール部120が脆弱部140にまで到達しない。
【0032】
また、欠損部422を設けることで、充填ノズル431,432側面と包装用シート素材200との間に隙間ができないように(すなわち、包装用シート素材200に対して搬送方向と平行方向に張力をかけた状態で)充填ノズル431,432を挟み込んだまま隔離シール部120を形成したとしても、開口部周囲には欠損部422分だけゆとりが存在する。そのため、開口部(特に脆弱部140)には張力や熱がかからないので、脆弱部140からの意図せぬ破断を防ぐことができる。
【0033】
なお、欠損部422は隔離シール部120が脆弱部140に到達しない大きさや形状であれば特に制限されず、適宜設計変更可能である。また、
図3(b)では、縦シーラー420のいずれにも欠損部422を設けたが、どちらか一方にだけ欠損部422を設けても良い。
【0034】
一方、
図4(a)のように、欠損部のない縦シーラー720の場合、ヒートシール面721全面で包装用シート素材同士が熱溶着される。そのため、
図5に示すように隔離シール部120が脆弱部140にまで到達してしまう。また、
図4(b)に示すように、充填ノズル431,432側面と包装用シート素材200との間に隙間ができないように(すなわち、包装用シート素材200に対して搬送方向と平行方向に張力をかけた状態で)充填ノズル431,432を挟み込んだまま隔離シール部120を形成しようとすると、隔離シール部120の端部に張力が集中する。そして、隔離シール部120の端部にかかる張力がある閾値を超えると、脆弱部140から意図せぬ破断が発生してしまう。
【0035】
なお、隔離シール部120が脆弱部140まで到達しないようにする方法として、包装用シート素材200と包装用シート素材200との間に断熱材を挟み込む方法も考えられるが、かかる場合においても、断熱材の端部に張力が集中するため、脆弱部140からの意図せぬ破断が発生してしまうものと考えられる。
【0036】
次に、形成された収容部130に対して、充填ノズル431,432から内容物が充填される。なお、
図1では簡略化して記載したが、縦シーラー420及び充填ノズル431,432は、それぞれ複数個設けられていても良く、包装用シート素材200が搬送される速度と同期して移動してもよい。なお、こうして内容物が充填された包装用シート素材200は、以降の工程においては連結包装体210と呼称する。
【0037】
連結包装体210は、横シーラー440により上端がシールされることで、収容部130が封止される。このとき、
図1(b)に示すように、横シーラー440の端部と脆弱部140が設けられた包装用シート素材200の端部の位置が一致し、かつ、隔離シール部120の端部が横シールのシール幅に含まれるようにシールされることが好ましい。
【0038】
なお、横シーラー440によりシールされる前に、ヒーターにより上端が予熱されてもよい。ヒーターで予熱することで、横シーラー440によるシールを確実に行うことができる。また、連結包装体210がヒーターで予熱される位置は、縦シーラー420によるシール後、横シーラー440によるシール前であれば特に限定されない。
【0039】
横シーラー440により上端がシールされた連結包装体210は、カッター450により切り離され、個別の包装体100が完成する。
【0040】
上記実施例では2つの包装体が連結した包装体を例に説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、包装体は連結していなくても良いし、逆に3つ以上連結していても良い。
【符号の説明】
【0041】
100 包装体
110 非シール辺
120 隔離シール部
130 収容部
140 脆弱部
150 シール辺
200 包装用シート素材
400 製袋充填機
410 シートロール
420、720 縦シーラー
421,721 ヒートシール面
422 欠損部
431,432 充填ノズル
440 横シーラー
450 カッター