(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6689875
(24)【登録日】2020年4月10日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤用の光架橋性ブロックコポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 4/40 20060101AFI20200421BHJP
C08F 220/12 20060101ALI20200421BHJP
C08F 293/00 20060101ALI20200421BHJP
C08F 2/38 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
C08F4/40
C08F220/12
C08F293/00
C08F2/38
【請求項の数】30
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-550098(P2017-550098)
(86)(22)【出願日】2015年12月15日
(65)【公表番号】特表2018-504509(P2018-504509A)
(43)【公表日】2018年2月15日
(86)【国際出願番号】US2015065660
(87)【国際公開番号】WO2016100251
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年12月13日
(31)【優先権主張番号】14/570,060
(32)【優先日】2014年12月15日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ウッズ、 ジョン ジー.
(72)【発明者】
【氏名】パラシュ、ピーター ディー.
(72)【発明者】
【氏名】スラーク、 アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ショヴォー、 ギヨーム
【審査官】
西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/099748(WO,A1)
【文献】
特表2005−511794(JP,A)
【文献】
特表平07−502560(JP,A)
【文献】
特開平02−248482(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/149411(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/062426(WO,A1)
【文献】
特表2013−522445(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0245216(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第102850474(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 − 2/60
C08F 4/00 − 4/58
C08F 4/72 − 4/82
C08F 251/00 − 283/00
C08F 283/02 − 289/00
C08F 291/00 − 297/08
C08C 19/00 − 19/44
C08F 6/00 − 246/00
C08F 301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一電子移動リビングラジカル重合によってマクロ開始剤ポリマーを製造する方法であって、
a)少なくとも
(1)複数のビニル基含有モノマー、
(2)4−ベンゾイルフェニルメタクリレート、(メチル)アクリル酸エステル置換キサントン、(メチル)アクリル酸エステル置換チオキサントン、(メチル)アクリル酸エステル置換ベンジル、(メチル)アクリル酸エステル置換フェナントレンキノン、(メチル)アクリル酸エステル置換アントラキノン、および(メチル)アクリル酸エステル置換ベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種の光架橋性官能基を有する重合性モノマー、
(3)ハロゲン末端開始剤、
(4)リガンド、および
(5)有機溶媒
を混合して反応混合物を調製する工程;
b)反応混合物を窒素雰囲気下に置く工程;
c)銅をヒドラジンのアセトン溶液に浸漬して、固体銅ヒドラジン活性化触媒を調製する工程;および
d)固体銅ヒドラジン活性化触媒を前記反応混合物に添加し、窒素雰囲気下で触媒の存在下で単一電子移動リビングラジカル重合によって反応混合物を重合させて、光架橋性官能基を含むマクロ開始剤ポリマーを製造する工程であって、
前記マクロ開始剤ポリマーの数平均分子量は55,000〜75,000g/モルであり、多分散指数は1.2〜1.8であり、ガラス転移温度は20℃未満である、工程
の上記a)、b)、c)およびd)工程を有する方法。
【請求項2】
工程a)において提供されるビニル基含有モノマーが、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)が(3)ハロゲン末端開始剤として臭素末端開始剤を提供する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記(2)光架橋性官能基を有する重合性モノマーが、4−ベンゾイルフェニルメタクリレートである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)が、ジメチル2,6−ジブロモヘプタンジオエートおよびメチル−2−ブロモプロピオネートの1つを(3)ハロゲン末端開始剤として供給することを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)が、(4)リガンドとしてヘキサメチル化トリス(2−アミノエチル)アミンを提供することを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程a)が、ジメチルスルホキシドと酢酸エチルの混合物を(5)有機溶媒として提供することを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記(2)光架橋性官能基を有する重合性モノマーが、工程a)における反応混合物中のモノマーの全モル数を基準にして1モル%までの量で存在する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
単一電子移動リビングラジカル重合によってブロックコポリマーを製造する方法であって、
a)請求項1〜8のいずれか1項からのマクロ開始剤ポリマーを、少なくとも1つの追加のビニル基含有モノマー、追加の有機溶媒、およびマクロ開始剤ポリマー中の末端ハロゲン当量あたり1当量の塩素源と組み合わせて、ハロゲン交換反応混合物を形成する工程;
b)任意に、ハロゲン交換反応混合物を35℃で、少なくとも3時間撹拌してインキュベートする工程;
c)次いで、固体銅ヒドラジン活性化触媒の存在下で、ハロゲン交換反応混合物を、多分散指数を1.2〜1.8に維持しながら、マクロ開始剤ポリマーの分子量が4,000〜15,000グラム/モルだけ増加するのに十分な時間インキュベートして、前記少なくとも1つの追加のビニル基含有モノマーを重合する工程
を有する方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの追加のビニル基含有モノマーの重合によって形成されるポリマーブロックが80℃を超えるガラス転移温度を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程a)が、前記少なくとも1つの追加のビニル基含有モノマーとして、メチルメタクリレートを使用することを含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
工程c)の後に、
d)工程c)の生成物に、3000ppmのエチドロン酸を添加し、混合物を40℃で2時間インキュベートする工程;
e)工程d)の混合物に追加の溶媒を添加し、0.5ミクロンの細孔を有するフィルターを通して混合物を濾過する工程;
f)工程e)の濾液を20%塩化ナトリウムの塩水で複数回洗浄し、各洗浄から有機相を保持する工程;および
g)前記有機相を乾燥し、次いで溶媒を蒸発により除去して、ブロックコポリマーの粉末形態を生成する工程
を含む精製工程をさらに含む、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項9の工程a)において、前記ハロゲン交換反応混合物中に、4−ベンゾイルフェニルメタクリレート、(メチル)アクリル酸エステル置換キサントン、(メチル)アクリル酸エステル置換チオキサントン、(メチル)アクリル酸エステル置換ベンジル、(メチル)アクリル酸エステル置換フェナントレンキノン、(メチル)アクリル酸エステル置換アントラキノン、および(メチル)アクリル酸エステル置換ベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種の光架橋性官能基を有する重合性モノマーを提供する工程であって、前記光架橋性官能基を有する重合性モノマーは、請求項9の工程c)において前記ブロックコポリマー中に重合して組み込まれ、前記ブロックコポリマーに光架橋性官能基を提供する工程をさらに含む、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
単一電子移動リビングラジカル重合によってマクロ開始剤ポリマーを製造する方法であって、
a)少なくとも
(1)少なくとも1種のビニル基含有モノマー、
(2)4−ベンゾイルフェニルメタクリレート、(メチル)アクリル酸エステル置換キサントン、(メチル)アクリル酸エステル置換チオキサントン、(メチル)アクリル酸エステル置換ベンジル、(メチル)アクリル酸エステル置換フェナントレンキノン、(メチル)アクリル酸エステル置換アントラキノン、および(メチル)アクリル酸エステル置換ベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種の光架橋性官能基を有する重合性モノマー、
(3)ハロゲン末端開始剤、
(4)リガンド、および
(5)有機溶媒
を混合して反応混合物を調製する工程;
b)反応混合物を窒素雰囲気下に置く工程;
c)銅をヒドラジンのアセトン溶液に浸漬して、固体銅ヒドラジン活性化触媒を調製する工程;および
d)固体銅ヒドラジン活性化触媒を前記反応混合物に添加し、窒素雰囲気下で触媒の存在下で単一電子移動リビングラジカル重合によって反応混合物を重合させて、光架橋性官能基を含むマクロ開始剤ポリマーを製造する工程であって、
前記マクロ開始剤ポリマーの数平均分子量は4,000〜15,000g/モルであり、多分散指数は1.2〜1.8であり、ガラス転移温度は80℃超である、工程の上記a)、b)、c)およびd)工程を有する方法。
【請求項15】
工程a)が、(1)少なくとも1種のビニル基含有モノマーとしてメチルメタクリレートを提供する工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程a)が、(3)ハロゲン末端開始剤として臭素末端開始剤を提供する工程を含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記(2)光架橋性官能基を有する重合性モノマーが、4−ベンゾイルフェニルメタクリレートである、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
工程a)が、ジメチル2,6−ジブロモヘプタンジオエートおよびメチル−2−ブロモプロピオネートの1つを(3)ハロゲン末端開始剤として供給することを含む、請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
工程a)が、(4)リガンドとしてヘキサメチル化トリス(2−アミノエチル)アミンを提供する工程を含む、請求項14〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
工程a)が、(5)有機溶媒としてジメチルスルホキシドを提供する工程を含む、請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記(2)光架橋性官能基を有する重合性モノマーが、反応混合物中のモノマーの全モル数を基準にして1モル%までの量で存在する、請求項14〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
工程d)の後に、
e)工程d)の生成物に、3000ppmのエチドロン酸を添加し、混合物を40℃で2時間インキュベートする工程;
f)工程e)の混合物に追加の溶媒を添加し、0.5ミクロンの細孔を有するフィルターを通して混合物を濾過する工程;
g)工程f)の濾液を20%塩化ナトリウムの塩水で複数回洗浄し、各洗浄から有機相を保持する工程;および
h)前記有機相を乾燥し、次いで溶媒を蒸発により除去して、粉末形態のマクロ開始剤ポリマーを生成する工程
のさらなる工程を含む、請求項14〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
単一電子移動リビングラジカル重合によってブロックコポリマーを製造する方法であって、
a)請求項22の工程h)からのマクロ開始剤ポリマー、少なくとも1つの追加のビニル基含有モノマー、有機溶媒およびリガンドを含む反応混合物を調製する工程;
b)工程a)からの反応混合物を透明な反応混合物を形成するのに十分な時間撹拌しながらインキュベートする工程;
c)工程b)の後、透明な反応混合物に固体銅ヒドラジン活性化触媒を添加し、少なくとも1つの追加のビニル基含有モノマーを、多分散指数を1.2〜1.8に維持しながら、前記マクロ開始剤ポリマーの分子量が55,000〜75,000g/モルだけ増加するのに十分な時間、重合する工程
の上記a)、b)およびc)工程を有する方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの追加のビニル基含有モノマーの重合によって形成されるポリマーブロックが20℃未満のガラス転移温度を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
工程a)が、追加のビニル基含有モノマーとして、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択されるビニル基含有モノマーを使用することを含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
工程c)の後に、
d)工程c)の生成物に、3000ppmのエチドロン酸を添加し、混合物を40℃で2時間インキュベートする工程;
e)工程d)の混合物に追加の溶媒を添加し、0.5ミクロンの細孔を有するフィルターを通して混合物を濾過する工程;
f)工程e)の濾液を20%塩化ナトリウムの塩水で複数回洗浄し、各洗浄から有機相を保持する工程;および
g)前記有機相を乾燥し、次いで溶媒を蒸発により除去して、ブロックコポリマーの粉末形態を生成する工程
を含む精製工程をさらに含む、請求項23〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
工程b)の期間が少なくとも4時間を含む、請求項23〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
請求項23の工程a)において、前記反応混合物中に、4−ベンゾイルフェニルメタクリレート、(メチル)アクリル酸エステル置換キサントン、(メチル)アクリル酸エステル置換チオキサントン、(メチル)アクリル酸エステル置換ベンジル、(メチル)アクリル酸エステル置換フェナントレンキノン、(メチル)アクリル酸エステル置換アントラキノン、および(メチル)アクリル酸エステル置換ベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1つの光架橋性官能基を有する重合性モノマーを提供する工程であって、前記光架橋性官能基を有する重合性モノマーは、請求項23の工程c)で前記ブロックコポリマー中に重合して組み込まれ、前記ブロックコポリマーに光架橋性官能基を提供する工程をさらに含む、請求項23〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記光架橋性官能基を有する重合性モノマーが、請求項23の工程a)における反応混合物中のモノマーの全モル数を基準にして1モル%までの量で存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
単一電子移動リビングラジカル重合中に、前記(2)光架橋性官能基を有する重合性モノマーが、複数のビニル基含有モノマーと共に、前記マクロ開始剤ポリマー中にランダムに重合される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ブロックコポリマーおよびそれらの形成に関し、より詳細には、単一電子移動リビングラジカル重合によってブロックコポリマーを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー材料は、消費者製品および工業デザインの多くの分野で使用されている。ポリマー材料は、モノマーの個々の単位から形成される。ポリマーが全て同じであるモノマーから形成される場合、それはホモポリマーと呼ばれ、ポリマーが2つ以上のモノマーの混合物から形成される場合、それはコポリマーとして知られている。ポリマーは、モノマーのランダム混合物から形成することができ、またはモノマー添加の順序は、ランダムでなくてもよい。非ランダム付加を有するポリマーの一形態は、ブロックコポリマーとして知られている。ブロックコポリマーにおいて、ポリマーは異なるモノマーのブロックから形成される。例えば、1つのブロックはすべてのメチルメタクリレートモノマーの配列であり得、そして別のブロックは全てのメタクリレートモノマーであり得る。他の例では、1つのブロックは、2つ以上のモノマーのランダム混合物であって、その後のブロックは単一のモノマーから形成されることがあり得る。これらについてもブロックコポリマーとして知られている。ブロックコポリマーは、ブロックコポリマーとして形成されるポリマーにおいて達成され得るユニークな性質のために非常に望ましい。
【0003】
ポリマーを一般的に形成するための一般的な方法は、フリーラジカル重合による方法である。フリーラジカル重合を用いてランダムポリマーを生成することができる。しかしながら、それはブロックコポリマーを生成するためには有用ではない。フリーラジカル重合の代わりに、リビングラジカル重合(LRP)または制御ラジカル重合(CRP)法が、1990年代からポリマーを生成するために利用されてきた。これらの手順は、ブロックコポリマーの製造に使用することができるが、これらの手順の2つの周知の形態は、原子移動ラジカル重合(ATRP)および可逆的付加/断片化連鎖移動(RAFT)である。これらの手順では、最終コポリマーのサイズは、開始剤に対するモノマーの比によって決定される。LRPの1つの利点は、プロセスが起こる方式のために、得られるコポリマーの多分散性がより低くなる傾向があり、より均一なコポリマーサイズ範囲を意味することである。モノマーが使い尽くされるまで反応が進行するので、この方法はコポリマーのサイズを調整することを可能にする。さらに、これらの方法を用いてブロックコポリマーを製造することができる。これらの2つの方法に関連する1つの問題は、それらを使用して形成されたポリマーが黒っぽくなったり、ポリマー中に着色を生じる傾向があることである。これらの色の原因は不明である。しかしながら、ポリマーがラベル、テープおよび接着剤のような物品に組み込まれる場合には、暗色の着色は一般に望ましくない。さらに、暗色または着色した外観は、これらのポリマーが使用するUV硬化性接着剤の硬化を妨害し得る。これらの方法の別の欠点は、時には必要とされる反応温度が非常に高いことであり、重合反応をより低い温度で行うことができることが望ましい。
【0004】
LRPの別の形態は、本開示で使用されるもの、すなわち、単一電子移動・リビングラジカル重合SET−LRPである。ATRPおよびRAFTとの主な相違点の1つは、SET−LRPにおいて触媒が固体、すなわち銅線または銅メッシュであることである。1つの他の利点は、一般に、SET−LRPプロセスをより低温で実施できることである。
【0005】
非常に狭い数平均分子量(Mn)範囲および制御されたサイズを有するブロックコポリマーの比較的迅速な重合を可能にする方法を提供することが望ましい。可能な限り1に近い多分散指数(重量平均分子量/数平均分子量)(Mw/Mn)比を有するブロックコポリマーを製造することも望ましい。より低い温度で実施することができ、色が薄いかまたは全くないコポリマーを生じ、コポリマー中にUV硬化性架橋官能基を含むプロセスを提供することも望ましい。UV架橋性であり、ホットメルト接着剤系で利用できるブロックコポリマーを製造することが特に望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に言えば、この開示は、比較的低温で実施することができ、狭い多分散性、明確なサイズ範囲を有し、およびコポリマー中で薄い色から無色のコポリマーを提供するブロックコポリマーの形成方法を提供する。このプロセスは、SET−LRPの第1ラウンドにおいてマクロ開始剤ブロックを生成し、次に第2ラウンドのSET−LRPにおいて1つ以上のブロックをマクロ開始剤ブロックに加えることを含む。好ましくは、本方法は狭い多分散指数(PDI)を有し、かつUV硬化性架橋可能ホットメルト接着剤に使用するための架橋可能光開始剤で官能化されたジおよびトリ−ブロックコポリマーを合成するために使用される。好ましくは、光開始剤はベンゾフェノンである。
【0007】
一実施形態では、本開示は、単一電子移動リビングラジカル重合によってマクロ開始剤ポリマーを形成する方法であって、複数のビニルモノマー、ハロゲン末端開始剤、およびリガンドを溶媒中に含む反応混合物を提供する工程;反応混合物を窒素でパージする工程;および固体銅ヒドラジン活性化触媒を反応混合物に添加し、窒素の正圧下で触媒の存在下で反応混合物を重合させて、55,000〜75,000グラム/モルの分子量を有し、分散性指数が1.2〜1.8であり、ガラス転移温度が20℃未満であるマクロ開始剤ポリマーを生成する工程を有する方法である。
【0008】
一実施形態では、本開示は、単一電子移動リビングラジカル重合によってブロックコポリマーを形成する方法であって、a)55,000〜75,000グラム/モルの分子量を有する前記マクロ開始剤ポリマーを、少なくとも1つの追加のビニルモノマー、追加の溶剤、およびマクロ開始剤ポリマー中の末端ハロゲン当量あたり1当量の塩素源と組み合わせて、ハロゲン交換反応混合物を形成する工程;b)ハロゲン交換反応混合物を35℃で、少なくとも3時間撹拌してインキュベートする工程;c)工程b)の後に、固体銅ヒドラジン活性化触媒をハロゲン交換反応混合物に添加し、多分散性指数を1.2〜1.8に維持しながら、マクロ開始剤ポリマーの分子量が,000〜15,000グラム/モルだけ増加するのに十分な時間、前記少なくとも1つの追加のビニルモノマーを重合する工程を有する方法である。
【0009】
一実施形態では、本開示は、単一電子移動リビングラジカル重合によってマクロ開始剤を重合する方法であって、少なくとも1種のビニルモノマー、ハロゲン末端開始剤、およびリガンドを溶媒中に含む反応混合物を提供する工程;反応混合物を窒素でパージする工程;および固体銅ヒドラジン活性化触媒を反応混合物に添加し、窒素の正圧下で触媒の存在下で反応混合物を重合させて、4,000〜15,000グラム/モルの分子量を有し、多分散性指数が1.2〜1.8であり、ガラス転移温度が80℃以上であるポリマーを生成する工程を有する方法である。
【0010】
一実施形態では、本開示は、単一電子移動リビングラジカル重合によってブロックコポリマーを形成する方法であって、4,000〜15,000グラム/モルのMnを有するマクロ開始剤ポリマーを少なくとも1つの追加のビニルモノマー、溶媒およびリガンドと混合する工程;反応混合物を透明な反応混合物を形成するのに十分な時間撹拌しながらインキュベートする工程;透明な反応混合物に固体銅ヒドラジン活性化触媒を添加し、少なくとも1つの追加のビニルモノマーを、多分散指数を1.2〜1.8に維持しながら、マクロ開始剤ポリマーの分子量が55,000〜75,000グラム/モルだけ増加するのに十分な時間、重合する工程を有する方法である。
【0011】
一実施形態では、本開示は、上記方法によって製造されたジおよび/またはトリブロックコポリマーを含むホットメルト接着剤である。
【0012】
本開示のこれらおよび他の特徴および利点は、好ましい実施形態の詳細な説明から当業者にはより明らかになるであろう。詳細な説明に添付される図面は、以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示に従って調製されたソフトブロックコポリマーの形成に対するリガンドの種類の効果を示す図である。
【
図2】ハードブロックマクロ開始剤およびそれから調製されたブロックコポリマーのゲル透過クロマトグラフィー(GPC)追跡を示す図である。
【
図3】ソフトブロックマクロ開始剤およびそれから調製されたブロックコポリマーのGPC追跡を示す図である。
【
図4】ソフトブロックマクロ開始剤のハロゲン交換反応の、それらから調製されたブロックコポリマーに対する影響のGPC追跡を示す図である。
【
図5】一官能性ハードブロックマクロ開始剤およびそれから調製されたブロックコポリマーのGPC追跡を示す図である。
【
図6】一官能性ソフトブロックマクロ開始剤およびそれから調製されたブロックコポリマーのGPC追跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ホットメルト接着剤組成物は、室温では固体であるが、熱を加えると溶融して液体または液体状態になり、溶融状態でそれらが基材に塗布される。冷却すると、接着剤組成物はその固体形態に戻る。接着剤組成物の冷却によって形成された硬質相は、最終結合に全ての凝集性(強度、靭性、クリープおよび耐熱性)を付与する。ホットメルト接着剤組成物は、熱可塑性であり、繰り返し、加熱されて流体状態になり冷却されて固体状態になり得る。ホットメルト接着剤組成物は、水または溶剤を含まない。
【0015】
硬化性または反応性のホットメルト接着剤組成物はまた、室温で固体であり、熱を加えると溶融して液体または液体状態になり、溶融状態でそれらが基材に塗布される。冷却すると、接着剤組成物はその固体形態に戻る。接着剤組成物の冷却によりおよび硬化前に形成された相は、接着剤に初期または未加工の強度を付与する。接着剤組成物の成分は、放射線への暴露のような適切な条件に暴露されると化学架橋反応によって硬化する。硬化する前は、接着剤組成物は熱可塑性のままであり、再溶融および再固体化させることができる。一度硬化されると、接着剤組成物は不可逆的な固体形態にあり、もはや熱可塑性ではない。架橋接着剤組成物は、熱可塑性ホットメルト接着剤よりも耐熱性が高い。
【0016】
本開示は、特にホットメルト接着剤の成分として使用するためのジおよびトリ−ブロックコポリマーの形成に関する。特に明記しない限り、本明細書および特許請求の範囲を通して、用語分子量は、ポリマーおよびマクロ開始剤を指す場合、ポリマーの数平均分子量(Mn)を指す。一実施形態では、コポリマーは、アクリレート類とメタクリレート類の組み合わせから形成された1つ以上のソフトブロックと組み合わせたメチルメタクリレートの1つ以上のハードブロックを含むことが好ましい。ソフトブロックに特に好ましいのは、2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)、n−ブチルアクリレート(nBA)、メタクリレート(MA)およびtert−ブチルアクリレート(tBA)のアクリレート類の組み合わせである。特に好ましいのは、ソフトブロックの形成後に酸加水分解または熱分解によって、重合tBAをアクリル酸に変換することである。トリブロックコポリマーは、1つのソフトブロックを有する2つのハードブロックまたは1つのハードブロックを有する2つのソフトブロックのいずれかであり得る。好ましくは、ブロックコポリマーはまた、ポリマーのUV硬化性架橋を提供する光開始剤を含む。好ましくは、光開始剤はベンゾフェノンである。光開始剤は、コポリマーのブロックのいずれにも組み込むことができて、UV硬化性架橋を提供することができる。
【0017】
本開示によるソフトブロックコポリマーは、好ましくはランダムアクリレートコポリマーを含み、20℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する。好ましくは、コポリマーは、2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)、n−ブチルアクリレート(nBA)、メチルアクリレート(MA)およびtert−ブチルアクリレート(tBA)のブレンドである。一実施形態では、これらは2−EHA/nBA/MA/tBAの28/42/25/5のモル比で組み合わされて、ソフトブロックコポリマー部分を形成する。一実施形態では、組み込み後、酸加水分解または熱分解によってtBAをアクリル酸官能基に変換する。好ましい実施形態では、標的ソフトブロックMnは約55,000〜75,000グラム/モルであり、多分散指数は1.2〜1.8である。高い所望の分子量を有しおよび2−EHAを使用するので、ソフトブロックコポリマーは、好ましい溶媒であるジメチルスルホキシド(DMSO)に完全には溶解しない。したがって、ソフトブロックの重合に使用される溶媒は、好ましくはDMSOと酢酸エチルの混合物であり、好ましくは全溶媒対全モノマーの重量比が2:1〜1:2である。
【0018】
硬質ブロックポリマーは、好ましくは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)ポリマーである。好ましくは、ハードブロックは4,000〜15,000グラム/モルのMnを有する。サイズがはるかに小さいことおよび2−EHAがないことを考慮すると、ハードブロックは好ましくは酢酸エチルなしで溶媒DMSO中で重合される。好ましくは、ハードブロックは、示差走査熱量測定(DSC)によって決定される80℃より高いガラス転移温度Tgを有し、より好ましくは約110〜115℃のガラス転移温度Tgを有する。重合中の溶媒対モノマーの重量/重量比は、好ましくは2:1〜1:2である。さらに、銅触媒のレベルは、所望のハードブロックの形成のための開始剤に対して銅触媒1〜5当量の範囲にあるべきであることが分かった。銅触媒の量が5当量より多い場合、反応および転化率が著しく低下した。約20〜30時間、より好ましくは24〜27時間後に、転化率が80〜95%の範囲であることが好ましい。10当量の銅触媒の存在下で、最大転化率はわずか70%であった。好ましくは、ハードブロックのシンジオタクティシティは0.56〜0.65であり、これは、本開示において
1H−NMR分析を用いて確認される。ジおよびトリブロックコポリマーに組み込まれるPMMAブロックの量は、ジおよびトリブロックコポリマーの溶融粘度に大きく影響する。30重量%のレベルでは、PMMAハードブロックはブロックコポリマーの溶融温度を180℃以上に上昇させる。PMMAハードブロックが10重量%以下のレベルにあるとき、ブロックコポリマーは180℃で容易に溶融し、ホットメルト接着剤の最終用途に望ましい。従って、硬質ブロックポリマーのレベルを、全ブロックコポリマー重量に基づいて、10重量%〜1重量%、より好ましくは7重量%〜1重量%、最も好ましくは5重量%〜1重量%以下に維持することが望ましい。
【0019】
ハードブロックポリマーおよびソフトブロックポリマーは、いかなる方法でも組み合わせることができる。例えば、ブロックの1つは、単官能性開始剤または二官能性開始剤のいずれかを用いて作製することができる。このブロックは、他のブロックを追加するためのマクロ開始剤として使用される。したがって、一官能性開始剤で開始する場合、最終結果はジブロックコポリマーである。二官能性開始剤で開始する場合、最終結果はトリブロックコポリマーであり、マクロ開始剤は中心にあり、他のブロックはそれから伸びている。後述するように、ブロックコポリマーにUV硬化性架橋性官能基を提供するために使用される光開始剤は、ハードブロックまたはソフトブロックのいずれかに組み込むことができる。
【0020】
本開示において使用するのに好ましい光開始剤の1つは、4−ベンゾイルフェニルメタクリレートである。本開示において使用される全ての光開始剤は、重合可能であり、それは重合反応中にモノマー原料と共に含まれ、それによりポリマーに重合され得ることを意味する。光開始剤4−ベンゾイルフェニルメタクリレートは、いくつかの供給元から商業的に入手することができる。これは、ブロックコポリマーのハードブロックまたはソフトブロックのいずれかにも組み込むことができる。これは、一般に、供給物中のモノマーの総モル数に基づいて1%までの正の量、言い換えれば、ポリマーのための原料の全モノマーのモル数に基づいて1モル%までの量で、ブロックコポリマーに対して有効なUV架橋活性を提供する;しかし、使用されるレベルは、必要な架橋官能基によって決定され、より高くすることもできる。架橋は、2つのベンゾイルフェニルメタクリレートの間で起こる。それを所定のブロックに組み入れるためには、ブロックを形成するためのモノマー(類)を有する供給材料に、それを所望のレベルで単に添加するだけである。他の共重合可能なベンゾフェノン官能化モノマー、ならびに非開裂光開始剤を使用することもできる。例示目的のみで、これらの重合可能な光開始剤としては、(メチル)アクリレートエステル置換キサントン、チオキサントン、ベンジル、フェナントレンキノン、アントラキノン、および置換ベンゾフェノン、ならびに当業者に公知の他の光開始剤が挙げられる。これらの光開始剤の組み込みは、ブロックコポリマーにUV硬化性架橋機能を提供する。これらのUV硬化性ブロックコポリマーはホットメルト接着剤に特別な用途がある。
【0021】
<試薬>
モノマーである2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)、n−ブチルアクリレート(nBA)、メチルアクリレート(MA)、tert−ブチルアクリレート(tBA)およびメチルメタクリレート(MMA)はいずれも純度98%であり、Aldrichから受領のものを使用した。触媒として使用された銅線は、20ゲージ、直径0.812ミリメートルであり、フィッシャーから入手した。ヒドラジン水和物の溶液(20ミリリットルのアセトン当たり3滴)に10分間浸漬することにより銅を活性化し、続いてアセトンで徹底的にすすいだ。次いで、すすがれた銅線を窒素下で乾燥し、直ちに使用した。リガンドであるトリス(2−ジメチルアミノエチル)アミン(Me
6TREN)は、文献Ciampolini,M.,Five−Coordinated High−Spin Complexes of Bivalent Cobalt, Nickel and Copper With Tris(2−dimethylaminoethyl) amine, Inorg. Chem., 1966, 5 (1), p 41に知られているようにして合成した。リガンドN,N,N’,N’,N−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)は、Aldrichから入手し、受領したものをそのまま使用した。二官能性開始剤ジメチル2,6−ジブロモヘプタンジオエート(97%);一官能性開始剤メチル−2−ブロモプロピオネート(98%);塩化ナトリウム(99%超);ヒドラジン64%を含むヒドラジン水和物(100%);エチドロン酸一水和物(95%);および硫酸ナトリウム(99%超)は全てAldrichから受領したものをそのまま使用した。酢酸エチル(99%超)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)(99%超)は、VWRから受領したものをそのまま使用した。
【0022】
<
1H−NMR法>
1H−NMRスペクトルは、Varian VNMRJ 1.1D操作ソフトウェアおよびACD/NMRプロセッサ12.01分析ソフトウェアを使用して、300MHzのVarian Mercury Plus機器で記録した。試料はクロロホルム中で10〜20ミリグラム/ミリリットル(mg/ml)で調製し、内部標準として0.03%のテトラメチルシランを含む。緩和時間を10秒に設定し、32のスペクトルを積算した。ソフトブロックの転化率の程度は、
1H−NMR分光法を用いて、ビニルプロトンからのシグナル領域のδ約6.50〜6.00ppm(3H/mol)の、バックボーンポリマープロトンからのシグナル領域のδ約2.4ppmに対する比を用いて決定した。ハードブロックの転化率の程度は、
1H−NMR分光法を用いて、モノマーからのO−CH
3からの信号領域のδ約3.60ppm(3H/mol)の、ポリマーからのO−CH
3からの信号領域のδ約3.45ppmに対する比を用いて決定した。
【0023】
<ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法>
GPC分析には、Waters Size Exclusion Chromatography(SEC)システムを使用した。このシステムは、1525バイナリHPLCポンプ、717オートサンプラー、2487デュアルλ吸光度および屈折率検出器を有し、Empower 2ソフトウェアが実行される。分離は、テトラヒドロフラン(THF)中約10mg/mlの濃度の100マイクロリットルのサンプルを用いて、直列に接続された2つのWaters PolyPoreカラム、300×7.5ミリメートル(mm)を用いて、1mL/分THFの一定流速で行った。Polymer Standard ServiceからのPMMA標準品を使用して12点の較正曲線を得た。標準品は、800〜1,820,000グラム/モル(g/mole)のサイズを有していた。
【0024】
<示差走査熱量測定(DSC)および熱重量分析(TGA)法>
DSC分析は、TAインスツルメンツの冷蔵冷却システム90と連結したTA Instruments DSC Q 2000で行った。TGA分析はTA Instruments TGA Q 500で行った。両方のシステムからの出力を集め、TA Instruments Analysisソフトウェアで分析した。
【0025】
<SET−LRPプロセスに及ぼすリガンドの種類の影響>
リガンドは、SET−LRPプロセスにおいて、最初の実験中、Cu
1Xの不均化を可能にする重要な機能的実体であるので、ソフトブロックコポリマーの形成プロセスにおいてリガンドの種類を変化させた。試験した2つのリガンドは、N,N,N’,N’,N−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)およびMe
6TRENであった。試験ソフトブロックコポリマーの重合条件は、リガンドの種類を除いて同じとした。1つの実験では、リガンドは開始剤に対して0.5当量のPMDETAであり、他の実験では、リガンドは開始剤に対して0.2当量のMe
6TRENであった。
【0026】
ソフトブロックを、以下の表1に示す成分を用いて調製した。これらのソフトブロックは、モル比で42/28/25/5のnBA/2−EHA/MA/tBAを有する。モノマー類、DMSO、酢酸エチル、2−ブロモプロピオン酸メチル開始剤、およびリガンド、PMDETAまたはMe
6TRENのいずれか、を250mlの四つ口フラスコに添加した。フラスコに、メカニカル撹拌機、加熱マントル、還流冷却器、熱電対、スパージング管を備えた窒素導入口、およびセプタム密封添加ポートを取り付けた。混合物を10分間機械的に撹拌して透明な溶液を得、次いで、スパージング管を通して低流量の窒素で室温で20分間脱気した。バブリング管を取り外し、反応器のヘッドスペースを窒素で10分間掃引した。ヒドラジン活性化銅線(7.6cm
2)をコイル状に巻いて反応器に加えた。反応器を密封し、僅かな陽圧下、僅かに大気圧を上回る窒素下に維持した。反応は、全反応期間中、室温で行った。セプタムを介して挿入された窒素パージされた気密シリンジを使用して、選択された時点で試験するために、試料を採取した。
【0027】
リガンドMe
6TRENの存在下で合計23時間の反応後、転化率は97%であり、溶液の粘度は増加し、溶液の色はわずかに不透明の薄い緑色であった。銅線を反応器から取り出し、内容物を空気に30分間暴露して反応をクエンチした。このサンプルの多分散指数(PDI)は1.19であり、GPCによる分子量は76,800であり、これは理論分子量に非常に近い。
【0028】
リガンドPMDETAの存在下で合計50時間の反応後、転化率はわずか95%であり、溶液の粘度は増加し、溶液の色はわずかに不透明の薄い緑色であった。銅線を反応器から取り出し、内容物を空気に30分間暴露して反応をクエンチした。このサンプルのPDI値は1.64であり、GPCによる分子量は75,900であった。
【0029】
両方の生成物についてのGPC分析の結果を
図1に示す。結論として、より低い当量レベルのリガンドMe
6TRENは、反応速度を上げるのにはるかに効果的であり、非常に狭い多分散性を生成する上でより効果的である。したがって、リガンドMe
6TRENは、PMDETAよりも本発明の方法において好ましい。PMDETAの存在下で調製された生成物の曲線は、より広い分布とほぼ同じピークサイズを有する。得られたソフトブロックの構造を確認するために、
1H−NMR分析を用いた。
1H−NMR分析は、PMDETAを用いて形成された調製物中に2%の残留モノマーを示し、Me
6TRENを用いて形成された調製物中に1%の残留モノマーを示した。
【0031】
<<二官能性ハードブロックマクロ開始剤を用いたトリブロックコポリマーの形成>>
<ハードブロック二官能性マクロ開始剤の形成と精製>
以下の表2に示す成分を用いて、二官能性ハードブロックマクロ開始剤を調製した。MMA、DMSO、ジメチル2,6−ジブロモヘプタンジオエート開始剤、およびMe
6TRENを250mlの四つ口フラスコに加えた。フラスコは、機械的攪拌機、加熱マントル、還流冷却器、熱電対、スパージングチューブを備えた窒素入口、およびセプタム密封添加ポートを備えていた。混合物を10分間撹拌して透明な溶液を得た後、スパージング管を通して低流量の窒素で室温で20分間脱気した。バブリング管を取り外し、反応器のヘッドスペースを窒素で10分間掃引した。ヒドラジン活性化銅線は、5当量で20.31cm
2で使用され、コイル状に巻いて反応器に加えた。反応器を密封し、僅かに大気圧を上回る窒素の僅かな陽圧下に維持した。反応温度をゆっくりと次の3時間に亘って25℃まで上昇し、25℃に達したとき、反応混合物を30℃に加熱し、その温度でさらに21時間維持した。合計24時間の反応後、転化率は80%であった。転化率%に基づく理論分子量は6,000g/モルと計算され、GPCによる分子量は10,200g/ルであり、PDIは1.53であった。銅線を反応器から取り出し、内容物を空気に30分間暴露して反応をクエンチした。酢酸エチルを粗反応混合物に加え、分液漏斗中、20重量%NaClの塩水50mlで3回洗浄した。最初の2回の洗浄はそれぞれ2時間、3回目の洗浄は14時間であった。底部の水相を除去し、有機相を硫酸ナトリウムで一晩16時間乾燥させた。酢酸エチルを、75℃4時間、ロータリーエバポレーターで除いた。精製されたハードブロックは、暗色の着色のない白色粉末であった。
【0033】
<ハードブロックマクロ開始剤を用いたトリブロックコポリマーの形成>
上記のハードブロックをDMSOと酢酸エチルの混合溶媒に溶解した。ハードブロックをマクロ開始剤として使用した。重合成分を以下の表3に示す。モノマー、溶媒、マクロ開始剤およびリガンドを、メカニカル撹拌機、加熱マントル、還流冷却器、熱電対、スパージング管を備えた窒素導入口およびセプタム密封添加ポートを備えた1リットルの四つ口反応フラスコに加えた。混合物を4時間撹拌して透明な溶液を得た後、次いで室温で20分間窒素をバブリングして脱気した。反応器ヘッドスペースを窒素で10分間掃引し、次いで密閉し、窒素下で僅かに大気圧を超える圧を維持した。ヒドラジン活性化銅メッシュ38cm
2をコイルに巻いて、反応器に添加し、それを窒素でわずかに正圧下に保った。温度を3時間かけて35℃までゆっくり上昇し、この温度を維持した。反応を合計24時間行い、
1H−NMR分析による転化率は97%であった。
【0035】
ハードブロックマクロ開始剤および形成されたトリブロックコポリマーのサンプルをGPCによって分析し、その結果を
図2に示す。結果は、数平均分子量(Mn)が、モル当たり10,200グラムから66,000のMnにきれいにシフトし、多分散指数(重量平均分子量/数平均分子量)(Mw/Mn)が1.53から1.40へ減少したことを示した。この結果は、このプロセスによって、ハードブロックマクロ開始剤の100%官能化を示唆している。
【0036】
<<二官能性ソフトブロックマクロ開始剤を用いたトリブロックコポリマーの形成>>
<ソフトブロック二官能性マクロ開始剤の形成>
ソフトブロックは、以下の表4に示す成分を用いて調製した。目標の所望の重量は75,000g/モルである。560当量のモノマー、DMSO、酢酸エチル、ジメチル2,6−ジブロモヘプタン二酸エステル開始剤1当量、およびMe
6TRENリガンド0.01当量を、250ml四つ口フラスコに加えた。フラスコに、メカニカル撹拌機、加熱マントル、還流冷却器、熱電対、スパージング管を備えた窒素導入口、およびセプタム密封添加ポートを取り付けた。混合物を10分間機械的に撹拌して透明な溶液を得、次いで、スパージング管を通して低流量の窒素で室温で20分間脱気した。バブリング管を取り外し、反応器のヘッドスペースを窒素で10分間掃引した。開始剤に対して30当量のコイル状に巻かれたヒドラジン活性化銅線、および0.2当量のCuBr
2を反応器に添加した。反応器を密封し、僅かに陽圧の窒素下に維持した。反応温度をゆっくりと次の3時間に亘って28℃まで上昇し、その後、反応混合物を30℃まで加熱し、その温度でさらに7時間維持した。セプタムを介して挿入された窒素パージされた気密シリンジを使用して、選択された時点で試験するために、試料を採取した。合計10時間の反応時間の後、
1H−NMR分析によって確認したところ、転化率は82%であった。銅線を反応器から取り出し、内容物を空気に30分間暴露して反応をクエンチした。GPC分析によるソフトブロックの分子量は61,340g/モルであり、理論分子量は61,500g/モルであり、多分散指数は1.15であった。
【0038】
<二官能性ソフトブロックマクロ開始剤を用いたトリブロックコポリマーの生成>
目標付加量は、ハードブロックの5,000g/モルであった。上のソフトブロックマクロ開始剤、マクロ開始剤に対してMMA100当量、Me
6TREN 0.2当量、DMSOおよび酢酸エチルを添加することによって反応を行った。フラスコを上記のように窒素バブリングでパージした。次に、ソフトブロックマクロ開始剤に対して30当量の新たに活性化された銅線を反応混合物に添加した。反応を、40℃の温度で48時間実施したところ、
1H−NMR分析で90%の転化率が得られた。理論分子量は74,000g/モルであり、GPCによる分子量は71,950g/モルであり、多分散指数は1.37であった。得られたブロックコポリマーをメタノール沈殿により精製した。
【0039】
ソフトブロックマクロ開始剤および得られたトリブロックコポリマーのGPCによる分析は、所望のトリブロックコポリマーがほとんど形成されなかったことを示した(
図3参照)。これらの結果は、臭素末端ソフトブロックマクロ開始剤からのMMAの再開始が非効率的であることを示唆している。
【0040】
<ソフトブロックマクロ開始剤のハライド交換反応>
MMAのソフトブロックマクロ開始剤への貧弱な再始動の問題を解決するために、一連のハロゲン化物交換反応を試験した。その目的は、ソフトブロック末端臭素を塩化物と交換することであった。塩化ナトリウム、塩化テトラブチルアンモニウム(TBAC)、および塩化ナトリウムとTBACの混合物の3つの交換溶液を試験した。他の可能な塩化物源としては、例えば、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化メチルトリフェニルホスホニウムおよび塩化ベンジルトリメチルアンモニウムが挙げられる。このプロセスは、ソフトブロックマクロ開始剤に対して2当量の塩化物の供給源を添加することであった。塩化物源をソフトブロックマクロ開始剤に、MMA11.13グラム0.111ミリモル、DMSO 20mL、および酢酸エチル20mLと一緒に35℃で3時間撹拌しながら添加した。次いでフラスコをパージし、銅触媒を反応混合物に添加し、混合物をパージし、密封し、35℃でさらに24時間反応させた。反応期間後、サンプルをGPCで分析し、その結果を
図4に示す。結果は、分子量がより高い重量に向かって予測されるシフトを示したが、添加が望まれるハードブロックの量が少ないため、シフトは小さい。結果は、ソフトブロックマクロ開始剤のほぼすべてがMMAの重合を再開したことを示している。最良の結果が塩化物源として塩化ナトリウムで得られ、59,300グラム/モルのMnおよび他の2つの条件よりも低い多分散指数1.29を有するトリブロックコポリマー生成物を生成した。ソフトブロックマクロ開始剤は、41,000グラム/モルのMnおよび1.17の多分散性指数を有していた。TBACとの交換反応後に形成されたトリブロックコポリマーは、59,400グラム/モルのMnおよび1.43の多分散指数を有していた。NaClとTBACの組み合わせによる交換反応後に形成されたトリブロックコポリマーは、56,400グラム/モルのMnおよび1.31の多分散指数を有していた。
【0041】
<ハードブロックまたはソフトブロックマクロ開始剤を用いたジブロックコポリマーの生成>
一官能性ハードブロックマクロ開始剤を以下のように調製した。メカニカルスターラー、熱電対、窒素パージラインおよび加熱マントルを備えた250mLのガラス反応器に、以下のもの:メチルメタクリレート(40.02g、0.04モル);メチル2−ブロモプロピオネート単官能開始剤(0.6637g、0.0039モル); Me
6TREN(0.052g、0.23ミリモル)、およびDMSO(44mL)を加えた。混合物を約10℃に冷却し、窒素を混合物に30分間バブリングすることによりパージした。ヒドラジン活性化20−ゲージ銅線(1.16g、0.018モル)を加え、混合物を周囲温度で48時間撹拌した。粗生成物を酢酸エチル(175mL)で希釈し、溶液を水で数回洗浄してDMSOおよび銅塩を除去した。溶媒を蒸発させて、ハードブロックマクロ開始剤モノ臭素末端PMMA 22.8gを収率56%で得た。ハードブロックマクロ開始剤は、PMMA標準で較正したGPCによって測定したところ、22,500の分子量および1.41に等しい単峰性の多分散性を有していた。ハードブロックマクロ開始剤の構造は、
1H NMR分析によって確認した。ハードブロックマクロ開始剤は約110℃で明瞭なTgを示し、文献に報告されているものと同様の支配的なシンジオタクチック立体規則性を示す。具体的には、シンジオタクチックレベルは60%、アタクチックレベルは35%、アイソタクチックレベルは5%であった。
【0042】
上記単官能ハードブロックマクロ開始剤を用いたジブロックコポリマーは、以下のようにして調製した。メカニカルスターラー、熱電対、窒素パージラインおよび加熱マントルを備えた250mLのガラス反応器に、以下のもの:上記ハードブロックマクロ開始剤(3.18g、0.14ミリモル);2EHA(3.57g、19.4ミリモル);nBA(3.60g; 28.1ミリモル);MA(1.34g、15.6ミリモル)、tBA(0.50g、3.9ミリモル)、Me
6TREN(0.012g、0.052ミリモル);DMSO 25mL;および酢酸エチル25mLを加えた。混合物を撹拌して成分を溶解し、約12℃に冷却し、酸素を除去するために混合物に窒素をバブリングして30分間パージした。ヒドラジン活性化20ゲージ銅線(0.265g、4.17ミリモル)を添加し、モノマーがすべて消費されるまで混合物を30℃で加熱した。生成物の構造は、
1H NMR分析によって所望のブロックコポリマーであることが確認された。ブロックコポリマーは、GPC分析により、PMMA標準に対して、54,200の分子量および1.86の単峰性の多分散性を示した。GPCにより、低分子量ハードブロックマクロ開始剤が完全に転化したことが示された。ハードブロックマクロ開始剤およびそれから調製されたブロックコポリマーのGPC追跡を
図5に示す。
【0043】
ソフトブロック中にベンゾフェノン光開始剤基を組み込んだ単官能性ソフトブロックマクロ開始剤を以下のように調製した。メカニカルスターラー、熱電対、窒素パージラインおよび加熱マントルを備えた1Lガラス反応器に、以下のもの:2−EHA(100.0g、0.543モル);nBA(100.0g、0.781モル);MA(39.3g、0.457モル);tBA(11.1g、0.087モル);4−ベンゾイルフェニルメタクリレート(4.78g、0.018モル);メチル2−ブロモプロピオネート(0.769g、0.0046モル);Me
6TREN(0.210g、0.91ミリモル);酢酸エチル、200mL;DMSO、200mLを添加した。混合物を攪拌して成分を溶解し、約10℃に冷却し、酸素を除去するために窒素を混合物に30分間バブリングすることによってパージした。パージを除去し、ヒドラジン活性化20ゲージ銅線(0.90g、0.014モル)を添加した。反応混合物を周囲温度に戻し、窒素の陽圧下で20時間撹拌した。混合物の一部を
1H NMRスペクトル分析のために除去したところ、モノマーの97%の転化率が示され、予想された構造が確認された。生成物のGPC分析は、PMMA標準に対して58,000g/モルの分子量および1.28のPDIを示した。
【0044】
上記ソフトブロックマクロ開始剤を用いたジブロックコポリマーを、以下のようにして調製した。DMSO(50mL)中の塩化ナトリウム(1.00g、0.017モル)、MMA(18.4g、0.184モル)および酢酸エチル(50mL)をマクロ開始剤溶液に添加し、周囲温度で48時間撹拌した後、
1H NMR分析で示されるようにMMAが本質的に消費された。得られたポリマーを以下のようにして精製した。銅イオンを隔離するために、キレート剤エチドロン酸をジブロックコポリマー反応混合物に0.125gのレベル(3000ppm)で添加した。エチドロン酸との反応は40℃で2時間行った。この間、反応混合物は白色に変わった。次に、60mlの酢酸エチルを加え、混合物を、細孔が0.5ミクロンの2mm多孔質紙フィルターマットを通して加圧濾過した。濾過した溶液を分液漏斗に移し、20%塩化ナトリウムの塩水50mlで3回洗浄した。最初の2回の洗浄はそれぞれ2時間、3回目の洗浄は14時間であった。洗浄により、光学的に透明で完全に分離した2つの相が得られた。各洗浄において、低相である水相を除去し、廃棄した。最終的な有機相を硫酸ナトリウム上で16時間乾燥させた。次いで、最終工程として、酢酸エチルをロータリーエバポレーターで75℃、2mTorrの真空下で3時間除去した。この構造は、
1H NMR分析によって所望のブロックコポリマーであることが確認された。GPC分析により、分子量がマクロ開始剤の分子量よりも増加し、ブロックコポリマー構造をさらに確認したところ、最終分子量は64,800g/モルであり、PDIは1.32であった。一官能性ソフトブロックマクロ開始剤およびそれから製造されたブロックポリマーのGPC追跡を
図6に示す。
【0045】
<<アクリル酸tert−ブチルの加水分解>>
モノマーアクリル酸は、SET−LRPプロセスの下では非常に容易には共重合しないが、ホットメルト接着剤の接着特性に及ぼす影響のために重要なモノマーである。本開示では、tert−ブチルアクリレート(tBA)を、アクリル酸の保護された形態として使用する。上記のように、tBAはソフトブロックマクロ開始剤の形成およびハードブロックマクロ開始剤からの重合に使用される。tBAをポリマー中に組み込んだ後、そのエステル基を選択的に除去して、アクリル酸のカルボン酸官能基を提供することができる。これは、酸分解/加水分解または熱分解によって達成することができる。
【0046】
ブロックコポリマーを形成した後、ギ酸をtBAの10倍のレベルで反応混合物に添加してtBAを加水分解した。ギ酸との反応は60℃で16時間行った。
1H−NMR試験で示されるように転化は完全であった。さらに、加水分解前および加水分解後のポリマーの酸価をアセトンおよびイソプロパノール中で測定した結果、92%以上の転化率を示した。
【0047】
<<光開始剤の加水分解と分析>>
1つの懸念事項は、tBAをアクリル酸に変換するために使用される酸加水分解が、ブロックコポリマー中のベンゾフェノンのような光開始剤の加水分解につながる可能性があることであった。もしこれが起こった場合、ブロックコポリマーについては、UV硬化性および架橋官能性が失われるか、または大幅に減少する。非常に高レベルのベンゾフェノンを有する試験ポリマーを、以下のように形成した。モノマーとして、nBA 70モル%および4−ベンゾイルフェニルメタクリレート 30モル%を使用して、上記のソフトブロックマクロ開始剤の形成と同じように、ポリマーを調製した。最終生成物の転化率は90%であり、Mnは15,000g/モルであった。ベンゾフェノンの取り込みは、GPCおよびUV検出によって確認した。試験ポリマーを、ポリマー1部に対して、溶剤2部のレベルで、DMSOと酢酸エチルとの50:50混合物中に入れた。これを、ベンゾフェノン1部当たり10部のギ酸に、70℃で16時間暴露した。可能性のある加水分解生成物は4−ヒドロキシベンゾフェノンである。加水分解の前後でのGPCによるポリマーの分析は、ポリマーのレベルの変化や光開始剤モノマーの増加がないことを示した。
1H−NMRスペクトルによる分析では、加水分解の前後で、変化がなかった。最後に、赤外線分析では、サンプル中にOH基が存在しないことを示した。従って、使用される酸加水分解条件では、ブロックコポリマーから光開始剤が加水分解されない。
【0048】
<<tert−ブチルアクリレートの熱分解開裂>>
熱分解開裂の条件を試験するために、上記のソフトブロックマクロ開始剤について記載したSET−LRPプロセスを用いて、モノマーとしてnBA(60モル%)およびtBA(40モル%)を用いて、高tBA含量ポリマーを製造した。得られたコポリマーは15,000g/モルのMnを有していた。理論的には、このコポリマーの完全な熱分解は、17.02%の重量損失をもたらすと予想される。tBAの熱分解重量減少は、約180℃で生じると予想される。TGA分析は以下のように行った。コポリマーを、110℃の温度に上昇し、そこで20分間保持して残留溶媒を除去した。次いで、コポリマーを、10℃/分の速度で300℃まで上昇させた。250℃に変曲点があり、コポリマーの分解を示した。180℃〜250℃の重量減少は18%であり、理論的損失17.02%に非常に近かった。さらに、160℃、170℃、180℃で、別々の等温線を2時間実施した。重量減少は、それぞれ8.37%、12.04%および17.04%であった。したがって、これらの条件は、また、ポリマーの形成後にコポリマー中のtBAをtBAからアクリル酸官能性に変換するために使用することができる。
【0049】
<<二官能性ソフトブロックマクロ開始剤を用いたトリブロックコポリマーの形成>>
<ソフトブロック42/28/25/5二官能性マクロ開始剤の形成>
以下の表6に示す成分を用いて、二官能性ソフトブロックマクロ開始剤を調製した。このソフトブロックは、モル比で42/28/25/5のnBA/2−EHA/MA/tBAを有する。モノマー、DMSO、酢酸エチル、ジメチル2,6−ジブロモヘプタン二酸エステル開始剤、およびMe
6TRENリガンドを250ml四つ口フラスコに加えた。フラスコに、メカニカル撹拌機、加熱マントル、還流冷却器、熱電対、スパージング管を備えた窒素導入口、およびセプタム密封添加ポートを取り付けた。混合物を10分間機械的に撹拌して透明な溶液を得、次いで、スパージング管を通して低流量の窒素で室温で20分間脱気した。バブリング管を取り外し、反応器のヘッドスペースを窒素で10分間掃引した。ヒドラジン活性化銅線(開始剤に対して20当量、7.6cm
2)をコイル状に巻いて反応器に加えた。反応器を密封し、大気圧を少し上回る僅かな正圧の窒素下で維持した。反応温度をゆっくりと次の3時間に亘って30℃まで上昇し、30℃に達したとき、反応混合物を35℃に加熱し、その温度でさらに13時間維持した。セプタムを介して挿入された窒素パージされた気密シリンジを使用して、選択された時点で試験するために、試料を採取した。合計16時間の反応時間の後、転化率は97%であり、溶液の粘度は増加し、溶液の色はわずかに不透明の薄い緑色であった。銅線を反応器から取り出し、内容物を空気に30分間暴露して反応をクエンチした。最終二官能性ソフトブロックマクロ開始剤溶液は、それ以上精製することなくトリブロックコポリマーを形成する末端ブロックの合成のためのマクロ開始剤として使用することができる。それは、41,000g/モルの分子量および1.17の多分散性指数を有していた。
【0051】
<ソフトブロック二官能性マクロ開始剤を用いたトリブロックコポリマーの形成>
トリブロックコポリマーを形成するために、表7の成分を、表6に記載のように調製したソフトブロックの溶液に添加した。最初に、MMA、DMSO、酢酸エチルおよび塩化ナトリウムをソフトブロックマクロ開始剤に添加した。混合物を35℃で3時間撹拌し、塩化ナトリウムを完全に可溶化した。明細書の他の箇所で説明したように、塩化ナトリウムはソフトブロックマクロ開始剤の末端の臭素とのハロゲン交換反応に関与する。議論したように、末端臭素を有するソフトブロックマクロ開始剤は、MMAの付加を開始するのに非効率的である。臭素を塩化物で置き換えることは、ソフトブロックマクロ開始剤へのMMAの付加を有意に高める。次いで、溶液を上記のように窒素で脱気し、ヒドラジン活性化銅ワイヤーコイルをソフトブロックマクロ開始剤の形成に用いた条件下で反応混合物に添加した。反応を、24時間撹拌しながら35℃に維持した。24時間後、
1H−NMR試験により、MMAの転化率は90%であると見積もられた。銅線を取り出し、空気に30分間曝して反応を停止させた。残留アクリレートモノマーは検出されなかった。生成されたトリブロックコポリマーは、マクロ開始剤の内部ソフトブロックとポリメチルメタクリレート(PMMA)のハードブロックの末端ブロックを有する。ハードブロックの目標付加量は、約4,000g/モル〜15,000g/モルである。
【0053】
<トリブロックコポリマーの精製>
銅イオンを隔離するために、キレート剤エチドロン酸をトリブロックコポリマー反応混合物に0.125gのレベル(3000ppm)で添加した。エチドロン酸との反応は40℃で2時間行った。この間、反応混合物は白色に変わった。次に、60mlの酢酸エチルを加え、混合物を、細孔が0.5ミクロンの2mm多孔質紙フィルターマットを通して加圧濾過した。濾過した溶液を分液漏斗に移し、20%塩化ナトリウムの塩水50mlで3回洗浄した。最初の2回の洗浄はそれぞれ2時間、3回目の洗浄は14時間であった。洗浄により、光学的に透明で完全に分離した2つの相が得られた。各洗浄において、低相である水相を除去し、廃棄した。最終的な有機相を硫酸ナトリウム上で16時間乾燥させた。次いで、最終工程として、酢酸エチルをロータリーエバポレーターで75℃、2mTorrの真空下で3時間除去した。最終ブロックコポリマーは、59,300g/モルの分子量および1.29の多分散性指数を有していた。本開示に従って製造され、精製されたブロックコポリマーは、ほとんど着色がなく、未知の原因の暗色を有する通常製造されたブロックコポリマーとは対照的であった。
【0054】
<<二官能性ハードブロックマクロ開始剤を用いたトリブロックコポリマーの形成>>
<PMMAハードブロック二官能性マクロ開始剤の形成>
以下の表8に示す成分を用いて、二官能性ハードブロックマクロ開始剤を調製した。MMA、DMSO、ジメチル2,6−ジブロモヘプタンジオエート開始剤、およびMe
6TRENを250mlの四つ口フラスコに加えた。フラスコは、機械的攪拌機、加熱マントル、還流冷却器、熱電対、スパージングチューブを備えた窒素入口、およびセプタム密封添加ポートを備えていた。混合物を10分間撹拌して透明な溶液を得た後、スパージング管を通して低流量の窒素で室温で20分間脱気した。バブリング管を取り外し、反応器のヘッドスペースを窒素で10分間掃引した。ヒドラジン活性化銅線は、5当量で20.31cm
2で使用され、コイル状に巻いて反応器に加えた。反応器を密封し、僅かに大気圧を上回る窒素の僅かな陽圧下に維持した。反応温度をゆっくりと次の3時間に亘って25℃までゆっくり上昇し、25℃に達したとき、反応混合物を30℃に加熱し、その温度でさらに24時間維持した。セプタムを介して挿入された窒素パージされた気密シリンジを使用して、選択された時点で試験するために、試料を採取した。合計27時間の反応時間の後、転化率は92%であり、溶液の粘度は増加し、溶液の色はわずかに不透明の薄い緑色であった。銅線を反応器から取り出し、内容物を空気に30分間暴露して反応をクエンチした。SET−LRP下のMMAの増殖速度は、同一の条件下でのMAの増殖速度よりも約5〜10倍遅い。ハードブロックマクロ開始剤の目標分子量範囲は4,000g/モル〜15,000g/モルである。DSCによる製品の分析では、上昇速度10℃/分または20℃/分の両方ともに、文献値に非常に近く対応する115℃に近いTg値を与えた。実験中、銅線のレベルは開始剤に対して約1〜5当量に保たれる必要があることが判明した。5を超えるレベルを使用した場合、転化率が減少し、10当量のレベルでは、達成できる最大転化率は70%に過ぎなかった。
【0056】
<ハードブロック二官能性マクロ開始剤の精製>
マクロ開始剤の粗反応混合物を、250mlの酢酸エチルと合わせた。次いで、混合物を分液漏斗中で、20%食塩水の各50mlで3回洗浄した。最初の洗浄は2時間、3回目の洗濯は14時間であった。低相の水相を廃棄した。最終的な有機相を硫酸ナトリウムで16時間乾燥させ、次いで酢酸エチルをロータリーエバポレーターで75℃4時間で除去した。生成物は白色粉末であり、分子量は9,225g/モルであり、多分散性値は1.70であった。
【0057】
<ハードブロック二官能性マクロ開始剤を用いたトリブロックコポリマーの形成>
二官能ハードブロックマクロ開始剤を用いてトリブロックコポリマーを形成するために、表9の成分を反応させた。最初にモノマー、DMSO、酢酸エチルおよびMe
6TRENを、1リットルの4つ口フラスコ中のPMMAハードブロックマクロ開始剤に添加した。フラスコは、メカニカル攪拌機、加熱マントル、還流冷却器、熱電対、スパージングチューブを備えた窒素入口、およびセプタム密封添加ポートを有していた。混合物を4時間撹拌して透明な溶液を得た後、スパージング管を通して低流量で窒素を室温で20分間バブリングすることによって脱気した。スパージング管を取り外し、反応器のヘッドスペースを窒素で10分間掃引した。ヒドラジン活性化銅メッシュをコイルに巻いて反応混合物に添加し、大気圧をわずかに上回るわずかな陽圧の窒素下で密封した。温度を3時間かけて35℃までゆっくり上昇し、攪拌しながらこの温度で13時間維持した。16時間後、
1H−NMR試験により、モノマーの転化率は95%であると見積もられた。銅メッシュを除去し、空気に30分間曝して反応を停止させた。溶液の粘度は上昇し、溶液はわずかに不透明の緑色であった。
【0059】
<トリブロックコポリマーの精製>
銅イオンを隔離するために、キレート剤エチドロン酸をトリブロックコポリマー反応混合物に1.447g(3000ppm)のレベルで添加した。エチドロン酸との反応は40℃で2時間行った。この間、反応混合物は白色に変わった。次に、60mlの酢酸エチルを加え、混合物を、細孔が0.5ミクロンの2mm多孔質紙フィルターマットを通して加圧濾過した。濾過した溶液を分液漏斗に移し、20%塩化ナトリウムの塩水50mlで3回洗浄した。最初の2回の洗浄はそれぞれ2時間、3回目の洗浄は14時間であった。洗浄により、光学的に透明で完全に分離した2つの相が得られた。各洗浄において、低相である水相を除去し、廃棄した。最終的な有機相を硫酸ナトリウム上で16時間乾燥させた。次いで、最終工程として、酢酸エチルをロータリーエバポレーターで75℃、2mTorrの真空下で3時間除去した。生成物は、42,103g/モルの分子量および1.26の多分散性指数を有していた。この製品は、ソフトブロックマクロ開始剤から製造されたブロックコポリマーについて上述したのと同じように、ほとんどまたは全く着色していない。
【0060】
前述の開示は、関連する法的基準に従って記載されているので、その説明は、本質的に限定するのではなく例示的なものである。開示された実施形態に対する変形および変更は、当業者には明らかであり、本開示の範囲内に入る。したがって、本開示が与えられる法的保護の範囲は、以下の請求項を検討することによってのみ決定することができる。