特許第6690903号(P6690903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6690903
(24)【登録日】2020年4月13日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】複合菓子及び複合菓子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/54 20060101AFI20200421BHJP
   A23G 1/54 20060101ALI20200421BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   A23G3/54
   A23G1/54
   A23G3/34 101
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-155451(P2015-155451)
(22)【出願日】2015年8月5日
(65)【公開番号】特開2017-29115(P2017-29115A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年5月15日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年2月17日試供品を株式会社ローソンに配布。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年3月30日試供品を株式会社ドゥ・ハウスに配布。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年5月28日試供品を三菱食品(株)内ローソン埼京菓子DDCに配布。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年6月2日株式会社ローソン各店舗にて販売。
(73)【特許権者】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】山本 誠善
(72)【発明者】
【氏名】渡部 宏之
(72)【発明者】
【氏名】山田 兼人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 克亮
【審査官】 星 功介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−245594(JP,A)
【文献】 特開2013−055960(JP,A)
【文献】 “簡単ヌガーの作り方”,Yahoo!ブログ,[oneline],2011年5月26日,[2019年8月28日検索],インターネット,URL,<URL:https://blogs.yahoo.co.jp/yurugi_manchan/63433502.html>
【文献】 “絶品!焼きチョコマシュマロ”,cookpad,[online],2015年3月8日,[2019年3月22日検索], インターネット,URL,<URL:https://cookpad.com/recipe/3055454>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00−9/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含気され、比重が0.1〜1.2であり、水分含量が4〜20質量%であり、焼成されていない飴生地を内層とし、その表面の60%以上の面積をチョコレートで覆うように成形して、前記チョコレートからなる外層の表面を、吸湿させる工程を経ることなく、該表面に前記飴生地を有しない程度に焼成することを特徴とする複合菓子の製造方法。
【請求項2】
前記飴生地は起泡性素材を含有する飴生地である請求項1記載の複合菓子の製造方法。
【請求項3】
前記起泡性素材がゼラチン又は卵白である請求項2記載の複合菓子の製造方法。
【請求項4】
前記飴生地は、糖類及び水あめを少なくとも含む原料Aを煮詰め、起泡性素材を少なくとも含む原料Bを含気して、これらを混合するか、又は、前記原料Aを煮詰め、前記原料Bを混合して、これを含気して得られたものである請求項1〜3のいずれか1つに記載の複合菓子の製造方法。
【請求項5】
前記チョコレートは、砂糖、ココアパウダー、ノンテンパー型油脂、トレハロース及び/又はマルトースを含有するものである請求項1〜4のいずれか1つに記載の複合菓子の製造方法。
【請求項6】
前記飴生地を二重ノズルの内側ノズルから、前記チョコレートを前記二重ノズルの外側ノズルから、それぞれ押し出し、所定形状になるように切断することにより成形する請求項1〜5のいずれか1つに記載の複合菓子の製造方法。
【請求項7】
前記焼成を、250〜400℃で10〜60秒間行う請求項1〜6のいずれか1つに記載の複合菓子の製造方法。
【請求項8】
前記飴生地には、更に具材が含まれる請求項1〜7のいずれか1つに記載の複合菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合菓子及び複合菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヌガー、キャラメル、マシュマロ等のソフトキャンディ類をチョコレートで被覆してなる複合菓子が知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、油脂性菓子生地表面を吸湿させ、これを焼成することを特徴とする菓子の製造法が記載され、その油脂性菓子生地を付着又は被覆する菓子としては、ビスケット、クラッカー、パイ、シュウ、ウエハース等の焼き菓子、ドロップ、ヌガー、ゼリー等のキャンディ類、ナッツ類、パン類、乾燥果実、スナック菓子等が例示できることが記載されている。
【0004】
また、例えば、下記特許文献2には、チョコレートの表層のみを熱風による加熱により溶融した後、前記チョコレート表面に粉体をまぶして付着させることを特徴とする粉体付きチョコレートの製造方法が記載され、チョコレートはシェルチョコレートにセンターを有するもので構成されていてもよく、センターとしては、シェルチョコレートとは異なるガナッシュ等のチョコレートの他、キャラメル、クリーム、キャンディなどが使用でき、また、ナッツ類の破砕物、スナック類、パフ類、ビスケット、クッキー類のクラムなどの粉粒体も使用できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−245594号公報
【特許文献2】特開2002−335863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、焼成チョコレートで覆われ、その焼成チョコレートとヌガー等の飴生地の食感を一緒に味わうことができるようにした複合菓子は、意外にも従来ほとんど提供されて来なかった。本発明者らの研究によれば、ヌガー等の飴生地をチョコレートで覆って焼成すると、チョコレートからなる外層が陥没したり、チョコレートからなる外層の表面に飴生地が染み出したりするという問題があり、従来提供されて来なかった原因であった。例えば、上記特許文献1の実施例に示されているセンターはビスケット、ウエハース、クッキー等であった。また、上記特許文献2では、チョコレートの表層のみを熱風による加熱により溶融するにとどまっていた。
【0007】
よって、本発明の目的は、上記問題の解決された、ヌガー等の飴生地をチョコレートで覆って焼成してなる複合菓子、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の複合菓子は、飴生地を内層とし、それを覆うチョコレートを焼成した複合菓子であって、前記チョコレートからなる外層の表面に前記飴生地を有していないことを特徴とする。
【0009】
本発明の複合菓子によれば、飴生地を内層とし、それを覆うチョコレートを焼成したので、そのチョコレートからなる外層の少なくとも表層が熱変性し、熱変性したチョコレートによって、食べたとき歯にくっついたりべたついたりすることが防がれ、飴生地の食感にともなう食べづらさを解消することができる。
【0010】
本発明の複合菓子においては、前記飴生地は含気された飴生地であることが好ましい。これによれば、チョコレートで覆って焼成する際、チョコレートからなる外層が陥没したり、チョコレートからなる外層の表面に飴生地が染み出したりすることなく、形をよく保ちつつ焼成することができる。
【0011】
また、前記飴生地の比重が0.1〜1.2であることが好ましい。これによれば、チョコレートで覆って焼成する際、チョコレートからなる外層が陥没したり、チョコレートからなる外層の表面に飴生地が染み出したりすることなく、形をよく保ちつつ焼成することができる。
【0012】
また、前記飴生地の比重が0.1〜1.2であり、水分含量が4〜20質量%であることが好ましい。これによれば、チョコレートで覆って焼成する際、チョコレートからなる外層が陥没したり、チョコレートからなる外層の表面に飴生地が染み出したりすることなく、形をよく保ちつつ焼成することができる。また、前記飴生地の水分含量が4〜20質量%であることにより、ソフトな食感の飴生地を含む複合菓子とすることができる。
【0013】
また、前記飴生地は起泡性素材を含む飴生地であることが好ましい。これによれば、飴生地に含まれる気泡の状態等、飴生地の組織の安定性が高められる。これにより、効果的に焼成の際の保形性を確保できる。
【0014】
また、前記起泡性素材がゼラチン又は卵白であることが好ましい。これによれば、さらに効果的に焼成の際の保形性を確保できる。
【0015】
また、前記飴生地は、糖類及び水あめを少なくとも含む原料Aを煮詰め、起泡性素材を少なくとも含む原料Bを含気して、これらを混合するか、又は、前記原料Aを煮詰め、前記原料Bを混合して、これを含気して得られたものであることが好ましい。これによれば、食感のよい飴生地を含む複合菓子とすることができる。
【0016】
また、前記チョコレートは、砂糖、ココアパウダー、ノンテンパー型油脂、トレハロース及び/又はマルトースを含有するものであることが好ましい。これによれば、ノンテンパー型油脂により焼成によるブルームが抑制され、トレハロース及び/又はマルトースによりチョコレートのべたつきが抑制された複合菓子とすることができる。
【0017】
また、前記飴生地には、更に具材が含まれることが好ましい。これによれば、複合菓子に、更に具材の風味や食感を付与することができる。
【0018】
一方、本発明の複合菓子の製造方法は、飴生地を内層とし、その全部又は一部をチョコレートで覆うように成形して、前記チョコレートからなる外層の表面に前記飴生地を有しない程度に焼成することを特徴とする。
【0019】
本発明の複合菓子の製造方法によれば、飴生地を内層とし、その全部又は一部をチョコレートで覆うように成形して焼成するので、そのチョコレートからなる外層の少なくとも表層が熱変性し、熱変性したチョコレートによって、食べたとき歯にくっついたりべたついたりすることが防がれ、飴生地の食感にともなう食べづらさが解消した複合菓子を提供することができる。
【0020】
本発明の複合菓子の製造方法においては、前記飴生地は含気された飴生地であることが好ましい。これによれば、チョコレートで覆って焼成する際、チョコレートからなる外層が陥没したり、チョコレートからなる外層の表面に飴生地が染み出したりすることなく、形をよく保ちつつ焼成することができる。
【0021】
また、前記飴生地の比重が0.1〜1.2であることが好ましい。これによれば、チョコレートで覆って焼成する際、チョコレートからなる外層が陥没したり、チョコレートからなる外層の表面に飴生地が染み出したりすることなく、形をよく保ちつつ焼成することができる。
【0022】
また、前記飴生地の比重が0.1〜1.2であり、水分含量が4〜20質量%であることが好ましい。これによれば、チョコレートで覆って焼成する際、チョコレートからなる外層が陥没したり、チョコレートからなる外層の表面に飴生地が染み出したりすることなく、形をよく保ちつつ焼成することができる。また、前記飴生地の水分含量が4〜20質量%であることにより、ソフトな食感の飴生地を含む複合菓子とすることができる。
【0023】
また、前記飴生地を二重ノズルの内側ノズルから、前記チョコレートを前記二重ノズルの外側ノズルから、それぞれ押し出し、所定形状になるように切断することにより成形することが好ましい。これによれば、効率的に製造することができ、生産コストを抑えることができる。
【0024】
また、前記焼成を、250〜400℃で10〜60秒間行うことが好ましい。
【0025】
また、前記飴生地には、更に具材が含まれることが好ましい。これによれば、複合菓子に、更に具材の風味や食感を付与することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ヌガー等の飴生地をチョコレートで覆って焼成してなる複合菓子、及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明において用いられる飴生地としては、ヌガー、フォンダント、フラッペ、キャラメル、マシュマロ、グミ、ソフトキャンディ等が挙げられる。これらは一般に、噛み出しが柔らかく、咀嚼すると口の中で溶け出し、嚥下するまでの間にその風味や食感を楽しむことができる菓子や菓子生地である。ただ、その食感に付随する難点として、歯にくっついたりべたついたりして食べづらい傾向があった。本発明は、そのように歯にくっついたりべたついたりして食べづらい傾向がある、飴生地の全般にわたって適用可能である。
【0028】
飴生地は、含気されたものであることが好ましい。これによれば、チョコレートで覆って焼成する際、チョコレートからなる外層が陥没したり、チョコレートからなる外層の表面に飴生地が染み出したりすることなく、形をよく保ちつつ焼成することができる。含気は、例えば、飴生地を、必要に応じて加熱、冷却、加圧、減圧しながら、ミキサー、含気ミキサー装置等を用いて激しく撹拌すること等により行うことができる。
【0029】
飴生地は、比重(g/cm)が0.1〜1.2であることが好ましく、0.5〜1.2であることがより好ましく、0.6〜1.2であることが更により好ましく、0.6〜1.0であることが最も好ましい。比重がこの範囲であることにより、焼成後に好ましいソフトな食感を実現できるとともに、チョコレートで覆って焼成する際、チョコレートからなる外層が陥没したり、チョコレートからなる外層の表面に飴生地が染み出したりすることなく、形をよく保ちつつ焼成することができる。比重は、例えば、含気によって調整することができる。比重の測定は、例えば、流動性を有する状態の飴生地を一定容積のカップにすり切り入れてその質量を測定し、カップの容積で除する方法などで行うことができる。また、複合菓子のから一定形状に切り出してサンプリングし(必要に応じて冷凍下でサンプリングして)、その質量を測定するとともに、その容積を水や油などの液相置換法や、菜種やビーズを用いた粉体置換法や、3Dレーザースキャン装置(例えば、株式会社アステックス製、商品名「3D Laser Scanner SELNAC−VM」、英弘精機社製、商品名「Volscan」)などで測定し、それらの測定値から比重を算出してもよい。
【0030】
飴生地は、水分含量が4〜20質量%であることが好ましく、4〜15質量%であることがより好ましく、4〜12質量%であることが更により好ましく、6〜10質量%であることが最も好ましい。水分含量が上記範囲未満であると、飴生地によるソフトな食感が乏しくなる傾向があるので好ましくない。水分含量が上記範囲と超えると、チョコレートで被覆して焼成する際、陥没や破裂する傾向があるので好ましくない。飴生地の水分含量は、例えば、水、酒類、クリーム、糖液等の水系原料の配合を変更したり、原料を含有する溶液の状態で煮詰めるときの煮詰め具合を変えたりすることによって、調整することができる。また、一旦飴生地を調整後に、再度乾燥工程を経て、水分量を調整しても良い。水分含量は、例えば、カールフィッシャー法、乾燥法、乾燥助剤法などの水分含量試験法によって求めることができる。
【0031】
飴生地は、糖類及び水あめを少なくとも含むものであることが好ましい。糖類及び水あめを少なくとも含むことにより、粘弾性を有する食感となる。糖類としては、砂糖、はちみつ、麦芽糖、ブドウ糖、糖アルコール等が挙げられる。
【0032】
飴生地は、起泡性素材を少なくとも含むものであることが好ましい。起泡性素材を少なくとも含むことにより、飴生地に含まれる気泡の状態等、飴生地の組織の安定性が高められる。これにより、さらに効果的に焼成の際の保形性を確保できる。起泡性素材としては、例えば、ゼラチン、卵白、大豆タンパク等のタンパク質素材類や、寒天、カラギーナン、キサンタンガム等の増粘多糖類などが挙げられる。なかでも、ゼラチン、卵白、大豆タンパク、寒天がより好ましく用いられる。
【0033】
飴生地が糖類及び水あめや、起泡性素材を含む場合、その調製の典型例を挙げると、25〜75質量%程度の糖類及び10〜65質量%程度の水あめを少なくとも含み、固形分60〜80質量%程度の原料Aを、70〜90質量%程度になるまで120〜140℃程度の温度下で煮詰め、別に1〜10質量%程度の起泡性素材を少なくとも含む原料Bを含気して、これらを40〜80℃程度の温度下で混合するか、又は、同様にして原料Aを煮詰め、別に1〜10質量%程度の起泡性素材を少なくとも含む原料Bを調製して、これらを60〜120℃程度の温度下で混合して、これを含気する方法などにより調製できる。この場合、含気は、得られる飴生地において所望の含気量や比重となるように、適宜その程度を調整するようにすればよい。
【0034】
飴生地の原料としては、上記以外にも、油脂、乳化剤、香料、増粘多糖類、pH調整剤等、周知の飴生地の原料を適宜使用することができる。
【0035】
飴生地には、具材を含有せしめてもよい。具材としては、アーモンド、ピーナッツ、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、マカデミアンナッツ等のナッツ類、レーズン、プラム、アプリコット等のドライフルーツ類、栗等の野菜・果実シロップ漬け類、バナナチップ、ニンジン、カボチャ等の乾燥野菜・果実チップ類、米パフ、小麦パフ、コーンパフ等のパフ類、乾燥麺、油ちょう麺等のスナック類、ポテトチップス等の油ちょう菓子類、ビスケット、クラッカー、クッキー、ウエファース等の焼菓子類、ラスク等のパン類などが挙げられる。このうちナッツ類等、天然の油脂分を比較的多く含有する具材であれば、その油脂分により飴生地の歯への付着が防がれる傾向となり、風味もよいので、より好ましい。具材は適当な大きさに粉砕してもよい。具材は2種以上を併用してもよい。具材の含有量としては、飴生地中0〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。この範囲を超えると、飴生地によるソフトな食感が乏しくなる傾向があるので好ましくない。なお、飴生地に具材を含有せしめた場合、上記に説明した飴生地の比重や水分含量の好ましい範囲や、糖類及び水あめ、起泡性素材の配合量の好ましい範囲は、具材を含んでなる飴生地全体における好ましい範囲を意味するものとする。また、以下、「飴生地」は、具材を含む場合はそれを含む意味であるものとする。
【0036】
本発明において用いられるチョコレートは、その種類等に特に制限はなく、公知の技術により調製することができる。規約や法規上の規定によって限定されず、例えば、純チョコレート、チョコレート、準チョコレート、純ミルクチョコレート、ミルクチョコレート、準ミルクチョコレートなどであってもよく、カカオマスやココアパウダーを含まないホワイトチョコレートなどであってもよい。原料としては、カカオマス、ココアパウダー、ココアバター、ココアバター代用脂、ココアバター代替脂、ココアバター類似脂、その他の植物性油脂、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、砂糖、乳糖、マルトース、トレハロースなどの糖類、レシチンなどの乳化剤、香料などが用いられる。常法に従って上記原料をミキシングし、リファイニングを行った後、コンチングを行うこと等により調製することができる。
【0037】
チョコレートには、必要に応じて、コンチング工程後、加熱、冷却、加圧、減圧しながら激しく撹拌する、いわゆるホイップ処理を施して、気泡を含有させてもよい。撹拌は、例えば、ミキサー、含気ミキサー装置等を用いて行うことができる。含気させる場合、チョコレートとの比重が0.2〜1.2となるように含気させることが好ましく、0.7〜1.2がより好ましく、0.9〜1.2が更により好ましい。チョコレートの比重の測定は、飴生地の比重の測定と同様にして行うことができる。チョコレートの比重がこの範囲であることにより、内層の飴生地と一体感がある食感が得られる。
【0038】
また、チョコレートは、砂糖、ココアパウダー、ノンテンパー型油脂、トレハロース及び/又はマルトースを含有するものであることが好ましい。これによれば、ノンテンパー型油脂により焼成によるブルームが抑制され、トレハロース及び/又はマルトースによりチョコレートのべたつきが抑制された複合菓子とすることができる。なお、「ノンテンパー型油脂」とは、チョコレートを構成する、カカオ豆に由来しない油脂であって、チョコレートにブルームが発生するのを防ぐためのテンパリング処理を不要とする、該油脂のことである。ブルームが発生するのを防ぐ油脂であるか否かは、それをココアバターで置き換えたときとの比較により、容易に判別できる。具体的には、パーム油等の分画軟質部や大豆油等の液状油をトランス異性化硬化して得られるトランス酸型油脂、ヤシ油、パーム核油、ババス油のようなラウリン酸基を多く含むグリセリドからなる油脂及びその分画油より得られるラウリン酸型油脂、1,2−ジ飽和脂肪酸−3−モノ不飽和脂肪酸グリセリド(SSU)といった非対称型グリセリドや、それを2−不飽和脂肪酸−1,3−ジ飽和脂肪酸のトリグリセリドといったSUS型のグリセリドと共存させた油脂などである。
【0039】
ノンテンパー型油脂の配合量は、チョコレート中に20〜45質量%であることが好ましく、25〜40質量%であることがより好ましい。トレハロースの配合量は、チョコレート中に0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましい。マルトースの配合量は、チョコレート中に0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましい。また、トレハロース及びマルトースを配合させる場合、その合計配合量は、チョコレート中に0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。
【0040】
また、チョコレートには、本発明の作用効果を害しない範囲で、呈味材を配合してもよい。呈味材としては、例えばナッツ類の粉砕物、果汁パウダー、果物凍結乾燥チップ、コーヒーチップ、キャラメル、抹茶、カカオニブ、膨化型スナック食品、ビスケットチップ、キャンディーチップ、チョコレートチップ、ドライフルーツ、又はマシュマロなどが用いられる。なお、以下、「チョコレート」は、呈味材を含む場合はそれを含む意味であるものとする。
【0041】
本発明の複合菓子は、上記に説明した飴生地とチョコレートを用い、飴生地を内層とし、それを覆うチョコレートを焼成した複合菓子である。そして、そのチョコレートからなる外層の表面に飴生地を有していないことを特徴とする。
【0042】
ここで、「覆う」とは、複合菓子の表面の少なくとも一部がチョコレートからなる外層により占められていることを意味し、必ずしも複合菓子の全面がチョコレートからなる外層により占められている必要はない。また、「内層とし」とは、複合菓子の全体からみて、飴生地がチョコレートの内側に配されることを意味し、必ずしもチョコレートからなる外層との境目が形成されることは意味していない。また、飴生地が他の成分からなる組織や内包物と多層を形成したり、積層を形成したり、飴生地に他の成分からなる組織や内包物が分散したり、飴生地が他の成分からなる組織や内包物に分散したりしていてもよく、必ずしも飴生地によって均一な層が形成されていてことは意味していない。また、「そのチョコレートからなる外層の表面に前記飴生地を有していない」とは、焼成前に複合菓子の全体からみてチョコレート層を境にして内側にあった飴生地が、焼成後にそのチョコレートを破ったり、そのチョコレートから染み出したりする等して、表面に移行していないことを意味し、焼成前に複合菓子の表面に現われていた飴生地や、焼成後にチョコレートからなる外層の表面に付着した飴生地を有していても、本発明の技術的範囲に包含されるものとする。よって例えば、複合菓子を、押出成形装置の二重ノズルから、その内側ノズルからは上記飴生地を、その外側ノズルからは上記チョコレートを、それぞれ押し出し、所定形状になるように切断する方法で成形した場合のように、飴生地からなる内層が焼成前からその切断面で顕わである場合には、チョコレートを破ったり、染み出しているということには該当しない。
【0043】
本発明の複合菓子においては、複合菓子の表面積の40%以上、より好ましくは60%以上、更により好ましくは80%以上が、チョコレートからなる外層によって覆われていることが好ましい。この範囲未満であると、食したときに歯に付着するのを防止する効果に乏しくなる傾向があるので好ましくない。複合菓子の全面がチョコレートからなる外層により占められていてもよい。
【0044】
本発明の複合菓子においては、複合菓子中の飴生地とチョコレートの質量比が85:15〜30:70であることが好ましく、80:20〜40:60であることがより好ましく、80:20〜60:40であることが更により好ましい。飴生地に対するチョコレートの質量比がこの範囲未満であると、食したときに歯に付着するのを防止する効果に乏しくなる傾向があるので好ましくない。また、チョコレートに対する飴生地の質量比がこの範囲未満であると、飴生地による食感が乏しくなる傾向があるので好ましくない。
【0045】
本発明の複合菓子の大きさは、適宜設定すればよいが、最小径あるいは短辺の長さが0.5〜5.0cmとなるようにすることが好ましく、1.0〜2.5cmとなるようにすることがより好ましい。大きさが上記範囲未満であると成形し難くなる傾向があるので好ましくない。また、大きさが上記範囲を超えると自重により、焼成時の保形性の確保が難しくなる傾向があるので好ましくない。
【0046】
一方、本発明の複合菓子の製造方法は、飴生地を内層とし、その全部又は一部をチョコレートで覆うように成形して、そのチョコレートからなる外層の表面に飴生地を有しない程度に焼成することを特徴とする。ここで「覆う」、「内層とし」、「そのチョコレートからなる外層の表面に前記飴生地を有しない」の意味については、上述した意義と同じある。
【0047】
成形方法としては、モールド成形により、モールド(型)内に、上記チョコレートによってシェル、上記飴生地によってセンター、上記チョコレートによってボトムを、順次作製する方法、押出成形により、押出成形装置の二重ノズルから、その内側ノズルからは上記飴生地を、その外側ノズルからは上記チョコレートを、それぞれ押し出し、所定形状になるように切断する方法、被覆成形により、所定形状にした上記飴生地をエンロバーなどを用いて上記チョコレートでコーティングする方法、ワンショットデポジターを用いて、外側ノズルから第2油脂性菓子の押出しを開始した後、内側ノズルから第1油脂性菓子の押出しを行い、内側ノズルからの押出しを終了した後、外側ノズルからの押出しを終了させる方法等を採用することができる。このうち特に押出成形装置による製造が好ましい。これによれば、効率的に製造することができ、生産コストを抑えることができる。
【0048】
焼成は、オーブン、シュバンクバーナー、ガスバーナー、電子レンジなどを用いて行うことができる。焼成条件は、用いる装置の能力、特性に応じ、適宜調整すればよい。その調整によって、例えば、チョコレートからなる外層の表層が手で持ったときにべとつかない程度に焼成により熱変性しているようにすることが好ましい。また、飴生地の熱変性をできるだけ避けて、その食感や風味等が維持されるようにすることが好ましい。オーブンの場合には、250〜400℃、好ましくは250〜350℃で10〜60秒間などが典型的である。焼成後には、送風等による強制冷却を行うことにより、除熱してもよい。
【0049】
なお、手で持ったときにべとつかないかどうかは、通常菓子をつまむ程度の力で表面を触り、チョコレートが手指に付着するか否かにより判断することができる。
【実施例】
【0050】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0051】
[調製例1]
表1に示す配合で、比重と水分含量をそれぞれ変えて、例1〜6のヌガー生地を調製した。具体的には次のようにして調製した。砂糖200質量部、水あめ200質量部、はちみつ250質量部を混合し、120℃になるまで煮詰めた。別に、乾燥卵白5質量部と砂糖30質量部と水をホイッパーで混合し、必要に応じてホイッパーで比重を調整した。次いで両者を併せてビーターで混合した。なお、ヌガーの比重(g/cm)は、一定容積(cm)の計量カップに固化前のヌガーを充填し、固化後に摺り切りし、一定容積あたりのヌガーの質量(g)を測定することにより算出した。また、ヌガーの水分含量(質量%)は、常圧加熱乾燥助剤法(103℃、5時間)にて測定した。
【0052】
【表1】

【0053】
被覆用のチョコレートとして、砂糖31質量部、トレハロース10質量部、ココアパウダー15質量部、全脂粉乳15質量部、植物油脂(20℃のSFCが82%)29質量部、レシチン0.5質量部の配合によりチョコレートを調製した。このチョコレートを調温し、2.5cm(たて)×1.5cm(よこ)×1.2cm(高さ)のモールドに入れ、シェルワークによりチョコレートシェルを成形した。これに上記ヌガー生地およそ8gを分注して、同じチョコレートでボトムを塞いで冷却し、デモールドして成形物を得た。各モールドあたりに使用したチョコレートはおよそ4gであった。得られた成形物をベーキングペーパーに載せて、オーブンで350℃、30秒間焼成した後、10℃で10分間冷却して複合菓子を得た。
【0054】
その結果、チョコレートからなる外層が陥没したり、その外層の表面にヌガーが染み出たりすることなく、複合菓子を製造することができた。
【0055】
また、例1,4,5のヌガー生地で製造した複合菓子について、食したときに歯に付着するのを防止する効果を、焼成の前後で確認したところ、いずれの例でも焼成したほうが歯付きの防止効果に優れていた。
【0056】
なお、焼成の前後に複合菓子の内層部分を一定形状にカットし、その質量を測定するとともに、その容積を3Dレーザースキャン装置(株式会社アステックス製、商品名「3D Laser Scanner SELNAC−VM」)で測定し、比重を算出したところ、焼成前後でほぼ変化していなかった。
【0057】
[調製例2]
表2に示す配合で、アーモンドの具材量をそれぞれ変えて、例7〜9のヌガーを調製した。具体的には次のようにして調製した。砂糖200質量部、水あめ200質量部、はちみつ250質量部を混合し、120℃になるまで煮詰めた。別に、乾燥卵白5質量部と砂糖30質量部と水30質量部をホイッパーで混合した。次いで両者を必要に応じてアーモンドとともに併せてビーターで混合した。
【0058】
【表2】

【0059】
常法に従い、押出成形装置を用いて、その二重ノズルの内側ノズルからは上記ヌガー生地が、その外側ノズルからは、調製例1で使用したのと同じチョコレートが、それぞれ押し出されて、押し出された内層と外層の質量の比が3:1となるようにし、その押出物を所定長さで切断することで、およそ4.5cm(たて)×1.8cm(よこ)×1.2cm(高さ)の形状の成形物を得た。得られた成形物を調製例1と同様に焼成、冷却して複合菓子を得た。
【0060】
その結果、チョコレートからなる外層が陥没したり、その外層の表面にヌガーが染み出たりすることなく、複合菓子を製造することができた。
【0061】
[調製例3]
砂糖70質量部、水飴30質量部、水20質量部を溶解タンクに混合し、121℃で、水分含量が10質量%となるまで煮詰めた。次いでこれを70℃に冷却してフォンダントを得、約2cm×1cm×1cmのサイズに成形し、放冷してフォンダントの成形物を得た。得られた成形物を、調製例1で使用したのと同じチョコレートでエンロービング後、調製例1と同様に焼成、冷却して複合菓子を得た。
【0062】
その結果、チョコレートからなる外層が陥没したり、その外層の表面にフォンダントが染み出たりすることなく、複合菓子を製造することができた。
【0063】
[調製例4]
砂糖75質量部、水飴75質量部、水25質量部を混合し、118℃で糖度がBx90°になるまで煮詰めた後70℃まで冷却した。別に、ゼラチン(ゲル強度:200ブルーム)10質量部をその2質量倍の水に80℃で溶解し70℃に冷却した。次いで両者を8:1(質量比)で混合してフラッペを得、約2cm×1cm×1cmのサイズに成形し、放冷してフラッペの成形物を得た。なお、このフラッペの比重は、調製例1と同様にして計量カップを用いて測定、算出したところ、0.5であった。得られた成形物を、調製例3と同様にしてチョコレートでエンロービング後、焼成、冷却して複合菓子を得た。
【0064】
その結果、チョコレートからなる外層が陥没したり、その外層の表面にフラッペが染み出たりすることなく、複合菓子を製造することができた。
【0065】
[調製例5]
砂糖100質量部、水飴150質量部、加糖練乳120質量部、パーム油40質量部、バター30質量部を混合し、120℃になるまで煮詰めた。ついでこれを70℃に冷却してキャラメルを得、約2cm×1cm×1cmのサイズに成形し、放冷してキャラメルの成形物を得た。なお、このキャラメルの比重は、調製例1と同様にして計量カップを用いて測定、算出したところ、1.1であった。得られた成形物を、調製例3と同様にしてチョコレートでエンロービング後、焼成、冷却して複合菓子を得た。
【0066】
その結果、チョコレートからなる外層が陥没したり、その外層の表面にキャラメルが染み出たりすることなく、複合菓子を製造することができた。
【0067】
[調製例6]
砂糖100質量部、水飴150質量部、加糖練乳120質量部、パーム油40質量部、バター30質量部を混合し、120℃になるまで煮詰めた後70℃まで冷却した。別に、ゼラチン(ゲル強度:250ブルーム)10質量部をその2質量倍の水に80℃で溶解し70℃に冷却した(ゼラチン溶液)。次いで両者を8:2(質量比)で混合してキャラメルを得、約2cm×1cm×1cmのサイズに成形し、放冷してキャラメルの成形物を得た。なお、このキャラメルの比重は、調製例1と同様にして計量カップを用いて測定、算出したところ、0.6であった。得られた成形物を、調製例3と同様にしてチョコレートでエンロービング後、焼成、冷却して複合菓子を得た。
【0068】
その結果、チョコレートからなる外層が陥没したり、その外層の表面にキャラメルが染み出たりすることなく、複合菓子を製造することができた。また、食したときに歯に付着するのを防止する効果を、焼成の前後で確認したところ、焼成したほうが、歯付きの防止効果に優れていた。
【0069】
[調製例7]
砂糖30質量部、麦芽糖25質量部、水あめ25質量部、水20質量部を混合し、Brix85になるまで煮詰めた。この糖液に、予め膨潤・溶解したゼラチン(ブルーム強度:200)の溶液25質量部を、ゼラチン濃度が最終的に2w/v%になるように添加し、45℃に保温しながらホイッパーを用いて混合し、マシュマロを調製した。なお、このマシュマロの比重は、調製例1と同様にして計量カップを用いて測定、算出したところ、0.25であった。これを分注機を用いておよそ2gごと分注し、マシュマロの成形物を得た。得られた成形物を、調製例3と同様にしてチョコレートでエンロービング後、焼成、冷却して複合菓子を得た。
【0070】
その結果、チョコレートからなる外層が陥没したり、その外層の表面にマシュマロが染み出たりすることなく、複合菓子を製造することができた。