特許第6690954号(P6690954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6690954
(24)【登録日】2020年4月13日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】圧縮成形菓子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 13/80 20170101AFI20200421BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20200421BHJP
   A21D 2/34 20060101ALI20200421BHJP
   A21D 2/36 20060101ALI20200421BHJP
【FI】
   A21D13/80
   A23G3/34 102
   A21D2/34
   A21D2/36
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-14918(P2016-14918)
(22)【出願日】2016年1月28日
(65)【公開番号】特開2017-131168(P2017-131168A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 耕児
(72)【発明者】
【氏名】尾方 英徳
【審査官】 福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−067241(JP,A)
【文献】 実開昭63−151784(JP,U)
【文献】 特開昭60−164424(JP,A)
【文献】 特開昭59−132848(JP,A)
【文献】 特開2004−147575(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102428984(CN,A)
【文献】 食品成分表2014本表編,2014年,p.218-219
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 2/00−17/00
A23G 3/00− 3/56
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状ベーカリー素材を含有する粉末組成物を圧縮成形する工程と、圧縮成形された粉末組成物を加熱処理する工程とを有する、圧縮成形菓子の製造方法。
【請求項2】
上記粉末状ベーカリー素材の含有量が10質量%以上である、請求項1記載の圧縮成形菓子の製造方法。
【請求項3】
上記粉末状ベーカリー素材は6メッシュパス(目開き3.35mm)の粒子を80質量%以上含有する、請求項1又は2記載の圧縮成形菓子の製造方法。
【請求項4】
上記粉末組成物の水分含量が25質量%以下である、請求項1〜3いずれか一項記載の圧縮成形菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶けるような口どけとサクサクとした食感を併せ持つ新規な圧縮成形菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クッキーやビスケットに代表される焼菓子類は、サクサクした食感と日持ちの良さから世界中で最も親しまれている菓子の一つである。これらは一般に、小麦粉等の澱粉類を主原料として、澱粉類に砂糖、油脂、ベーキングパウダー等を添加し、混和、成形、焼成することにより製造されている。近年、嗜好の多様化からサクサクした食感をより強調した焼菓子類が求められるようになっており、様々な検討が行われてきた。
【0003】
サクサクした食感をより強調した焼菓子類を得る方法としては、例えば、澱粉類に添加する油脂に特徴を持たせる方法(特許文献1〜3)、澱粉類として特定の澱粉類を含有させる方法(特許文献4)、澱粉類にその他特定の原料を含有させる方法(特許文献5)が挙げられる。
【0004】
油脂に特徴を持たせる方法として、特許文献1には、特定の3種類の油脂を含有する可塑性油脂組成物を用いることで、サクサクした食感の焼成菓子を得られることが開示されている。また、特許文献2には、油相中のSMS含量とMSM含量、油相中のランダムエステル交換油脂含量等が特定の条件を満たす焼菓子練り込み用油脂組成物により、サクサクした食感で吸湿が抑制された焼菓子を得られることが開示されている。更に、特許文献3には、POP含有量が焼き菓子用油脂組成物全体中12〜40重量%であり、且つ焼き菓子用油脂組成物に含まれるラウリン酸の含有量が構成脂肪酸全体中2〜15重量%である焼き菓子用油脂組成物により、サクサクとした食感で、咀嚼時にねちゃつかず、口溶けの良い等の効果のある焼き菓子類を得られることが開示されている。
【0005】
特定の澱粉類を含有させる方法として、特許文献4には、粉砕された、穀粉類又は澱粉類及びその加工品及びその分解物より選ばれる1種又は2種以上の粉末を含有することを特徴とする製菓・製パン用品質改良剤を使用することにより、サクサクとしてしっかりした食感であるが、中はソフトで口溶けが良い焼き菓子を得られることが開示されている。
【0006】
その他特定の原料を含有させる方法として、特許文献5には、こんにゃく粉、糖質及び澱粉を合わせて調製した乾燥こんにゃく加工品を含むことを特徴とする穀類加工食品用食感改良剤により、サクサクとした軽い食感を付与できることが開示されている。
【0007】
しかし、上記の方法でも一定の改良効果が見られるものの、小麦粉を主原料とした生地を焼成する基本的な工程が共通するため、食感に変化を持たせることには限界があり、従来とは異なるアプローチによるサクサクした食感をより強調した焼菓子類が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−148471号公報
【特許文献2】特開2012−239462号公報
【特許文献3】特開2010−4806号公報
【特許文献4】特開2003−210098号公報
【特許文献5】特開2004−187526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって本発明の目的は、従来とは異なるアプローチによるサクサクした食感をより強調した焼菓子類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、従来にない食感を有する菓子について検討する過程で、錠菓等の圧縮成形菓子の原料として、粉末状ベーカリー素材を含有させることにより、溶けるような口どけとサクサクとした食感を併せ持つ新規な菓子を得られることを知見した。
すなわち本発明は、粉末状ベーカリー素材を含有する粉末組成物を圧縮成形することを特徴とする、圧縮成形菓子の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、溶けるような口どけとサクサクとした食感を併せ持つ新規な菓子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の圧縮成形菓子の製造方法は、粉末状ベーカリー素材を含有する粉末組成物を圧縮成形するものである。
【0013】
まず、粉末状のベーカリー素材について説明する。
ベーカリー素材について
本明細書においてベーカリー素材とは、澱粉類を含有し、種類や用途に応じてその他任意の成分を含有するベーカリー生地を加熱処理して得られたものをいう。本発明に用いるベーカリー生地は、澱粉類を10〜90質量%、特に25〜75質量%含有することが好ましい。また、ベーカリー素材中のその他任意の成分の含有量には特に制限はなく、種類や用途に応じて適宜決定することができる。
【0014】
上記澱粉類としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉などの小麦粉類、ライ麦粉、大麦粉、米粉などのその他の穀粉類、アーモンド粉、へーゼルナッツ粉、カシュ−ナッツ粉、オーナッツ粉、松実粉などの堅果粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉などの澱粉や、これらの澱粉をアミラーゼなどの酵素で処理したものや、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理、グラフト化処理などの中から選ばれた1種又は2種以上の処理を施した化工澱粉等が挙げられる。
【0015】
上記その他任意の成分としては、通常ベーカリー生地の原料として用いることのできるものであれば特に制限なく使用することができ、例えば油脂類、糖類・甘味料、乳化剤、卵類、増粘多糖類、イースト、β−カロチン・カラメル・紅麹色素などの着色料、トコフェロール・茶抽出物などの酸化防止剤、デキストリン、カゼイン・ホエー・クリーム・脱脂粉乳・醗酵乳・牛乳・全粉乳・ヨーグルト・練乳・加糖練乳・全脂練乳・脱脂練乳・濃縮乳・純生クリーム・ホイップ用クリーム(コンパウンドクリーム)・植物性ホイップ用クリームなどの乳や乳製品、ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・クリームチーズ・ゴーダチーズ・チェダーチーズなどのチーズ類、原料アルコール、焼酎・ウイスキー・ウオッカ・ブランデーなどの蒸留酒、ワイン・日本酒・ビールなどの醸造酒、各種リキュール、膨張剤、無機塩類、食塩、ベーキングパウダー、イーストフード、生地改良剤、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ハーブ、豆類、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、酵素、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、調味料、香辛料、香料、野菜類・肉類・魚介類などの食品素材、コンソメ・ブイヨンなどの植物及び動物エキス、食品添加物などを挙げることができる。
【0016】
上記油脂類としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、キャノーラ油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂等が挙げられる。これらの油脂は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0017】
上記糖類・甘味料としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ソーマチン、サッカリン、ネオテーム、甘草等が挙げられる。これらの糖類・甘味料は、単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0018】
上記乳化剤としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、例えば大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、乳脂肪球被膜、サポニン、植物ステロール類等の天然乳化剤が挙げられる。
【0019】
上記卵類としては、全卵・卵黄・卵白・加塩全卵・加塩卵黄・加塩卵白・加糖全卵・加糖卵黄・加糖卵白・乾燥全卵・乾燥卵黄・凍結全卵・凍結卵黄・凍結卵白、凍結加糖全卵・凍結加糖卵黄・凍結加糖卵白・酵素処理全卵・酵素処理卵黄等が挙げられる。
【0020】
上記増粘安定剤としては、キサンタンガム・グアーガム・ローカストビーンガム・カラギーナン・アラビアガム・アルギン酸・アルギン酸塩・ペクチン・プルラン・タマリンドシードガム・サイリウムシードガム・結晶セルロース・ヘミセルロース・リグニン・カルボキシメチルセルロース・メチルセルロース・ポリデキストロース・寒天・グルコマンナン・タラガム・カラヤガム・トラガントガム・ジェランガム・ゼラチン・ファーセルラン等が挙げられる。
【0021】
上記澱粉類を主原料とし、種類や用途に応じてその他任意の成分を含有するベーカリー生地の具体的な例示としては、例えば、食パン生地、テーブルロール生地、菓子パン生地、調理パン生地、フランスパン生地、ライブレッド生地等のパン生地、シュトーレン生地、パネトーネ生地、クグロフ生地、ブリオッシュ生地、ドーナツ生地等のイースト菓子生地、デニッシュ生地、クロワッサン生地、パイ生地等のペストリー生地、バターケーキ生地、パウンドケーキ生地、スポンジケーキ生地、ドーナツ生地、ブッセ生地、ホットケーキ生地、ワッフル生地等のケーキ生地、ビスケット生地、クッキー生地、クラッカー生地等が挙げられる。
上記ベーカリー生地の製造方法には特に制限なく、ベーカリー生地の種類や用途、等に応じ適宜決定すればよい。
【0022】
ベーカリ生地は加熱処理に付され、それによって本発明において用いられるベーカリー素材を得ることができる。ベーカリー生地を加熱処理する方法としては、焼成、蒸し、フライ等を挙げることができる。ここで、焼成とは、直火、オーブン、電子レンジ等を用いてベーカリー生地を加熱することをいう。蒸しとは、水蒸気を用いてベーカリー生地を加熱することをいう。フライとは、加熱した油の中でベーカリー生地を加熱することをいう。これらの加熱処理うちの2種以上の加熱処理を併用してもよい。どの加熱処理方法を採用するかは、ベーカリーの種類に応じて適宜調整することができる。加熱温度及び加熱時間に関しても特に制限はなく、ベーカリーの種類、加熱処理の方法、等に応じ適宜決定することができる。
【0023】
上記のようにベーカリー生地を加熱処理して得られたものを本発明におけるベーカリー素材として用いることができる。
【0024】
本発明において、上記ベーカリー素材は粉末状であることが必要である。ベーカリー素材の粒径や粒度分布に特に制限はないが、3.5メッシュ(目開き5.6mm)パスの粒子を80質量%以上、特に90質量%以上含有することが好ましい。粉末状ベーカリー素材は、好ましくは6メッシュ(目開き3.35mm)パス、より好ましくは9メッシュ(目開き2.00mm)パスの粒子を、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含有する。
また、同時に、ベーカリー素材は270メッシュ(目開き53μm)パスの粒子の含有量が30質量%未満であることが好ましく、150メッシュ(目開き106μm)パスの粒子の含有量が30質量%未満であることがより好ましい。
ベーカリー素材は、3.5メッシュを通過できない粒子の含有量が80質量%未満であると、最終的に得られる圧縮成形菓子が均一な食感とならなくなってしまう場合があるほか、崩れやすいものとなってしまう。一方、粒径が小さすぎる場合、結着力が劣ったものとなる場合があり、この場合にもボロボロと崩れやすいものとなってしまう。
【0025】
ベーカリー素材を粉末状にする方法としては、一般に使用される方法を使用することができ、例えば瑪瑙、アルミナ等からなる乳鉢中で、乳棒を用いて粉砕する方法、ボールミル、ニーダー、石臼、カレンダーロール等のローラー、スクリュー、すりつぶし機、ミキサー、混練機等を用いる方法が挙げられる。
上記のように得られた粉末状ベーカリー素材は適宜篩に通すことにより、粒径をそろえることできる。
【0026】
本発明で使用する粉末状ベーカリー素材は、上記ベーカリー素材を製造する際の加熱処理の条件(時間、温度等)を調製することにより、及び/又は粉末状にした後に再度加熱処理することにより、水分含量が25質量%以下にするのが好ましく、20質量%以下にするのがより好ましく、15質量%以下にするのが最も好ましい。
粉末状ベーカリー素材の水分含量が25質量%よりも多いと、圧縮成形する際の作業性が悪いものとなる場合があり好ましくない。
なお、粉末状ベーカリー素材の水分含量の下限は0.5質量%以上とすることが好ましい。粉末状ベーカリー素材の水分含量が下限を下回ると、得られる圧縮成形菓子がパサついた食感となる場合がある。
粉末状ベーカリー素材の水分含量は、例えば赤外線水分計(例えば、株式会社ケツト科学研究所、赤外線水分計FD−720)により測定することができる。
【0027】
次に、本発明に用いる粉末組成物について説明する。
本発明の粉末組成物は、上記粉末状ベーカリー素材のみからなっていてもよい。または、本発明の粉末組成物は、上記粉末状ベーカリー素材を含有し、かつ、一般に食品素材として使用することのできる任意の粉末状成分を含有するものであってもよい。本発明の粉末組成物が上記粉末状ベーカリー素材及び上記任意の粉末状成分を含有する場合、上記粉末状ベーカリー素材の含有量は、好ましくは圧縮成形菓子(粉末組成物)の10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、もっとも好ましくは50質量%以上である。
粉末状ベーカリー素材の含有量が10質量%よりも少ないと、本発明の効果が十分に得られない場合があるため好ましくない。
【0028】
上記粉末組成物が上記粉末状ベーカリー素材及び上記任意の粉末状成分を含有する場合、上記粉末組成物における上記任意の粉末状成分の含有量には特に制限はなく、目的とする圧縮成形菓子の種類、等に応じ適宜決定することができるが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、最も好ましくは50質量%以下である。
上記任意の成分としては、例えば粉末状の乳製品、粉末状の粉末チョコレート成分、粉末状の糖類・甘味料、粉末状の乳化剤、粉末果汁等が挙げられる。
【0029】
上記粉末状の乳製品としては、全粉乳、脱脂粉乳、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン(TMP)、ミルクプロテインコンセントレート(MPC)、チーズパウダー等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
【0030】
上記粉末チョコレート成分としては、カカオニブ、カカオマス、ココアケーキ、ココアバター、ココアパウダー、カカオエキスパウダー等のカカオ成分、ミルクチョコレートパウダー、スイートチョコレートパウダー、ホワイトチョコレートパウダー、カラーチョコレートパウダー、ビターチョコレートパウダー等の粉末チョコレート等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
【0031】
上記粉末状の糖類・甘味料としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等の糖類、また、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア、アスパルテーム等の上記甘味料が挙げられ、上記の糖類・甘味料の中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
【0032】
上記粉末状の乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の合成乳化剤や、大豆レシチン、卵黄レシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球被膜等の天然乳化成分が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0033】
上記粉末組成物は、水分含量が25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることが最も好ましい。粉末組成物を加熱処理すること、等によりにより、粉末組成物の水分含量を上述の範囲とすることができる。
水分含量が25質量%よりも多いと、圧縮成形する際の作業性が悪いものとなる場合があり好ましくない。
粉末組成物の水分含量の下限は0.5質量%以上とすることが好ましい。粉末組成物の水分含量が下限を下回ると、得られる圧縮成形菓子がパサついた食感となる場合がある。
粉末組成物の水分含量は、例えば赤外線水分計(例えば、株式会社ケツト科学研究所、赤外線水分計FD−720)により測定することができる。
【0034】
次に、本発明の製造方法で行う圧縮成形について説明する。
圧縮成形は、上記粉末組成物に圧力をかけて固体状に固めることができれば特に制限なく行うことができるが、単発打錠機、卓上錠剤成形機などの打錠装置を使用し、直接打錠法によるのが好ましい。打錠装置は、目的とする圧縮成形菓子の量や大きさにより適宜選択することが可能である。圧縮成形する際の成形圧は、目的とする圧縮成形菓子の大きさにより異なるが、通常50〜2000kgf/cmであり、好ましくは100〜1500kgf/cmであり、より好ましくは150〜1000kgf/cmである。圧縮成形は加熱下で行ってもよく、非加熱下でおこなってもよい。圧縮成形の時間は、粉末組成物に十分に保形性を有する時間であればよい。
【0035】
本発明の製造方法では、上記圧縮成形の後、圧縮成形菓子(圧縮成形された粉末組成物)に加熱処理を行うことがより、圧縮成形菓子にサクサクした歯切れの良い食感を付与できる点で好ましい。
加熱手段としては、直火による焼成、オーブンによる焼成、電子レンジによる焼成等の他、蒸し焼き、等が挙げられる。焼成は、圧縮成形菓子に焼き目を入れることなく、圧縮成形菓子を乾燥させるための処理である乾燥焼きの操作を含む。焼成温度は、一般的には180〜210℃程度であり、1〜10分間程度の焼成時間が汎用されるが、求める食感や素材によって適宜設定することができ、150℃付近や120℃付近での焼成、又は100℃付近で乾燥焼きしてもよい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0037】
<粉末状ベーカリー素材1の製造(パウンドケーキ由来)>
マーガリン100質量部、及び、上白糖90質量部をミキサーボウルに投入し、卓上ミキサーでビーターを使用して低速1分、高速5分クリーミングした。次いで低速でミキシングしながら、全卵(正味)90質量部、及び、液糖15質量部を2分かけてゆっくり加え、さらに低速1分ミキシングし、ここに、あらかじめ篩にかけた薄力粉100質量部とベーキングパウダー1質量部を加え混合しパウンドケーキ生地を得た。続いて、離型油をごく薄く塗布したパウンド型に生地を流しいれ、上火180℃、下火170℃で40分間焼成しパウンドケーキを得た。
得られたパウンドケーキは粗熱が取れた後15mm厚にスライスし、さらに110℃で30分再焼成(乾燥焼き)し、その後フードプロセッサーで粉砕し、粉末状ベーカリー素材1を得た。
(粉末状ベーカリー素材1の粒径:9メッシュパスしたものは80質量%以上、150メッシュパスしたものは30質量%未満)
【0038】
<粉末状ベーカリー素材2の製造(クラッカー由来)>
ドライイースト0.25質量部、及び水30質量部をミキサーボウルに投入し、予備発酵させた後、中力粉70質量部を加え、フックを使用し低速で2分、中速で2分混合し、中種生地を得た。この中種生地を生地ボックスに入れ、温度25℃、相対湿度80%の恒温室で、18時間中種醗酵を行なった。
続いて、あらかじめ篩にかけた薄力粉30質量部に上記中種生地、ショートニング10質量部、食塩1.5質量部、重曹0.65質量部、水3質量部を添加し、低速で3分、中速で3分本捏ミキシングし、クラッカー生地を得た。
得られたクラッカー生地を3つ折り2回し(最終圧延0.75mm)、クラッカー形状にカットしてピケを入れ、上火240℃、下火250℃で6分間焼成し、クラッカーを得た。
得られたクラッカーをすり鉢で細かく磨り潰した後、目開き5mmのザルでふるい、粉末状ベーカリー素材2を得た。
(粉末状ベーカリー素材2の粒径:9メッシュパスしたものは100質量%、150メッシュパスしたものは30質量%未満)
【0039】
粉末組成物及び圧縮成形菓子の製造([実施例1]〜[実施例6]、[比較例1])
[実施例1]
上記粉末状ベーカリー素材1をそのまま粉末組成物Aとした(粉末組成物Aの水分含量:5質量%)。
続いて、粉末組成物A4gを打錠機(HANDTAB-100T15、市橋精機株式会社製)を用いて500kgf/cmで圧縮成形し、圧縮成形菓子aを得た。打錠(圧縮成形)は25℃で行った。
得られた圧縮成形菓子aは歯切れの良い食感を有しながらも口中で溶けるような口どけを有していた。
【0040】
[実施例2]
上記粉末状ベーカリー素材1を80質量部と粉末チョコレート20質量部を粉末組成物Bとした(粉末組成物Aの水分含量:4.5質量%)。粉末組成物A4gを打錠機(HANDTAB-100T15、市橋精機株式会社製)を用いて500kgf/cmで圧縮成形し、圧縮成形菓子bを得た。打錠(圧縮成形)は25℃で行った。
得られた圧縮成形菓子bは歯切れの良い食感を有しながらも口中で溶けるような口どけを有していた。
【0041】
[実施例3]
上記粉末状ベーカリー素材2をそのまま粉末組成物Cとした(粉末組成物Cの水分含量:3質量%)。
続いて、粉末組成物C4gを打錠機(HANDTAB-100T15、市橋精機株式会社製)を用いて500kgf/cmで圧縮成形し、圧縮成形菓子cを得た。打錠(圧縮成形)は25℃で行った。
得られた圧縮成形菓子cは歯切れの良い食感を有しながらも口中で溶けるような口どけを有していた。
【0042】
[実施例4]
上記粉末状ベーカリー素材2を80質量部とチーズパウダー20質量部を混合し粉末組成物Dとした(粉末組成物Dの水分含量:3.5質量%)。
続いて、粉末組成物D4gを打錠機(HANDTAB-100T15、市橋精機株式会社製)を用いて500kgf/cmで圧縮成形し、圧縮成形菓子dを得た。打錠(圧縮成形)は25℃で行った。
得られた圧縮成形菓子dは歯切れの良い食感を有しながらも口中で溶けるような口どけを有していた。
【0043】
[実施例5]
上記粉末組成物D4gを打錠機(HANDTAB-100T15、市橋精機株式会社製)を用いて500kgf/cmで圧縮成形し、続いて上火200℃、下火170℃で4分間焼成し、圧縮成形菓子eを得た。打錠(圧縮成形)は25℃で行った(粉末組成物Dの水分含量:3.5質量%)。
得られた圧縮成形菓子eは非常に歯切れの良い食感を有しながらも口中で溶けるような口どけを有していた。
【0044】
[実施例6]
上記粉末状ベーカリー素材2を60質量部とチーズパウダー40質量部を混合し粉末組成物Eとした(粉末組成物Eの水分含量:4質量%)。
続いて、粉末組成物E4gを打錠機(HANDTAB-100T15、市橋精機株式会社製)を用いて500kgf/cmで圧縮成形し、続いて上火200℃、下火170℃で4分間焼成し、圧縮成形菓子fを得た。打錠(圧縮成形)は25℃で行った。
得られた圧縮成形菓子fは非常に歯切れの良い食感を有しながらも口中で溶けるような口どけを有していた。
【0045】
[比較例1]
粉末チョコレート4gを打錠機(HANDTAB-100T15、市橋精機株式会社製)を用いて500kgf/cmで圧縮成形し、比較例である圧縮成形菓子gを得た。打錠(圧縮成形)は25℃で行った。
得られた圧縮成形菓子gは口どけは良好であったものの、歯切れが乏しいものであった。