【実施例】
【0046】
以下、本実施形態の具材入りの食品用トッピング剤、それにおける素材の分離抑制方法及び被添加食品に対する具材の付着性向上方法をより具体化した実施例を示す。
【0047】
[評価試験1]『素材分離抑制剤を構成する多糖類粉末の原料の選択及びかさ比重の範囲の検証』
【0048】
この評価試験1では、素材分離抑制剤として用いる多糖類粉末の原料の選択及びかさ比重の範囲の検証を目的として行った。ここでは、多糖類粉末の原料として10種類のものを用いた(表1参照)。具体的には、デンプン含有物として「おから粉末」を用い、デンプンとして「タピオカデンプン」、「馬鈴薯デンプン」、「コーンスターチ」、「もち米粉デンプン」を用い、加工デンプンとして「リン酸化架橋デンプン」、「アセチル化アジピン酸架橋デンプン」、「酢酸デンプン」、「ヒドロキシプロピルデンプン」を用い、デンプン・加工デンプン混合物として「もち米粉:ヒドロキシプロピルデンプン=80:20の混合物」を用いた(表1A)。さらに、これらの混合物を調製して用いた(表1B)。
【0049】
そして、多糖類粉末に対する凝集用可食粉粒を「すりごま(質量配合率17%)」とし、乾燥具材を「乾燥たまねぎスライス(質量配合率31%)」とし、これらに上記の多糖類粉末を各々配合(質量配合比52%)し、透明なビニール袋の中に一括投入(総量500g)した。次いで、素材が投入されたビニール袋を空気で膨らませた後、手でよく振って十分に混合・攪拌した。その後、乾燥具材の混合物全体への混ざり込み具合を目視で判定した。その結果を表1A、及び表1Bに示す。なお、乾燥たまねぎスライスの粒度は5mmメッシュオンかつ30mmメッシュパスであり、すりごまの粒度は1mmメッシュオンかつ3mmメッシュパスであり、多糖類粉末の粒度は1mmメッシュパスであった。
【0050】
さらに、上記の混合物について、野菜サラダへの具材の付着性について検証した。具体的には、水洗いした後、水を切ったレタス100gに、各混合物15gをふりかけ、軽く混ぜ込み、10分後の生野菜上の具材の分布について外観観察による評価を行った。
【0051】
この評価試験1では、各サンプルの「乾燥具材の混合物全体への混ざり込み具合」を以下の基準で判定した。
×:乾燥具材が混合物中で不均一に分散し、混合物の上部に浮く(不可)
△:乾燥具材が混合物中でやや不均一に分散し、混合物の上部に浮く割合が多い(不可)
○:乾燥具材が混合物中でほぼ均一に分散し、混合物の上部に浮く割合が少ない(可)
◎:乾燥具材が混合物中で均一に分散し、混合物の上部に浮かない(可)
【0052】
各サンプルの「サラダへの具材の付着性」は以下の基準で判定した。
×:生野菜上に具材が付着しない(不可)
△:生野菜上に具材が付着しにくく、皿の底にこぼれ落ちる割合が多い(不可)
△’:生野菜上への付着が強すぎ、分散性が悪い(不可)
○:生野菜上に具材が付着しやすく、皿の底にこぼれ落ちる割合が少ない(可)
◎:生野菜上に具材が付着する(可)
【0053】
具材の混ざりこみ具合の判定結果、及び、生野菜への具材の付着性の判定結果から、両方の効果を奏する総合評価を以下の基準で判定した。
×:不適
△:やや不適
○:適する
◎:特に適する
【0054】
なお、各多糖類粉末の増粘性については、JISの粘度測定法として規格化されている落体式粘度計を用いた方法によって行い、サンプルの落下性を目視によって判定した。
×:落下が速く、増粘性が低い
△:やや落下が速く、やや増粘性が低い
○:やや落下が遅く、やや増粘性が高い
◎:落下が遅く、増粘性が高い
【0055】
【表1A】
【0056】
表1Aに示されるように、いくつか挙げた多糖類粉末のうち、かさ比重が最も大きかったのは、0.48g/cm
3のもち米粉デンプン(三和澱粉製:商品名「モチールアルファー」)であった。逆に、最も小さかったのは、0.23g/cm
3のもち米粉:ヒドロキシプロピルデンプン=80:20の混合物(松谷化学製:商品名「ライススターRC」)であった。「乾燥具材の混合物全体への混ざり込み具合」に関しては、かさ比重が0.40g/cm
3を超える多糖類粉末を用いたサンプルでは、いずれも乾燥具材が均一に分散しておらず、評価「×」と判定された。これに対し、かさ比重が0.20g/cm
3以上0.40g/cm
3以下の範囲である多糖類粉末を用いたサンプルでは、いずれも乾燥具材がほぼ均一に分散しており、評価「〇」以上の判定となった。とりわけ、おから粉末(かさ比重が0.26/cm
3)、ヒドロキシプロピルデンプン(かさ比重が0.27g/cm
3)、もち米粉:ヒドロキシプロピルデンプン=80:20の混合物(かさ比重が0.23g/cm
3)を用いたサンプルについては評価「◎」の判定となり、素材分離抑制剤において主として素材分離抑制剤としての効果付与のために用いる多糖類粉末の原料として、適性が高いと結論付けられた。
しかしながら、生野菜への具材の付着性については、上記の多糖類粉末のうち、もち米粉:ヒドロキシプロピルデンプン=80:20の混合物(かさ比重が0.23g/cm
3)を用いたサンプル(評価「◎」)以外においては、評価「○」の判定となり、弱いながら具材付着向上剤としての適性が認められたものの、その他の多糖類粉末においては、評価「△」、「×」以下の判定となり、具材付着向上剤としての適性は低いものであった。
【0057】
そこで、もち米粉:ヒドロキシプロピルデンプン=80:20の混合物の具材付着効果(総合評価「◎」)を参考として、具材付着効果を有するデンプン混合物のより広い組み合わせの探索を目的として、上記かさ比重の異なる各多糖類粉末を混合したものを調製し(表1B)、評価を行った。その結果を表1Bに示す。
【0058】
【表1B】
【0059】
かさ比重が0.23g/cm
3と最も小さい、もち米粉:ヒドロキシプロピルデンプン=80:20の混合物(松谷化学製:商品名「ライススターRC」)と、かさ比重が0.30/cm
3以上の多糖類粉末を混合した場合、具材の混ざりこみ具合の判定では全て「○」となり、素材分離抑制剤としての効果付与のために用いる多糖類粉末の原料として、適性があると結論付けられた。
【0060】
しかし、生野菜への具材の付着性についての判定においては、かさ比重が0.23g/cm
3である「ライススターRC」に、かさ比重が0.30/cm
3以上、0.40/cm
3以下の多糖類粉末を混合した場合には、全て「△‘」となり、具材付着向上剤として用いる多糖類粉末の原料としては、付着性が強すぎて適性が低いと結論付けられた。一方で、かさ比重が0.23g/cm
3である「ライススターRC」に、かさ比重が0.40/cm
3より大きい素材を混合した場合には、全て「◎」となり、具材付着向上剤としての効果付与のために用いる多糖類粉末の原料として、付着性が適当で、適性が高いと結論付けられた。
【0061】
次いで、かさ比重が0.23g/cm
3である「ライススターRC」の代わりに、かさ比重が0.30g/cm
3以上0.40g/cm
3以下の多糖類粉末と、かさ比重が0.40/cm
3より大きい多糖類粉末と混合した場合においては、具材の混ざりこみ具合の判定では全て「○」となり、素材分離抑制剤としての効果付与のために用いる多糖類粉末の原料として、適性があると結論付けられた。また、生野菜への具材の付着性についての判定においては、後者の多糖類粉末のかさ比重が0.30/cm
3以上0.40/cm
3以下である場合には、全て「○」となり、具材付着向上剤としての効果付与のために用いる多糖類粉末の原料として、適性があると結論付けられた。
【0062】
以上の結果から、素材分離抑制剤としての効果と具材付着向上剤としての効果とを合わせて奏する多糖類粉末としては、かさ比重が0.23g/cm
3である「ライススターRC」(もち米粉:ヒドロキシプロピルデンプン=80:20の混合物)、及び、かさ比重が0.40/cm
3以下である多糖類粉末と、さらに粒径が小さくかさ比重が0.40/cm
3より大きく増粘性を有する多糖類粉末を混合したものが好ましいことがわかった。また、前記「ライススターRC」と、かさ比重が、0.40/cm
3より大きい多糖類粉末との混合物であるものにおいても、より具材付着効果が向上され、好ましいことがわかった。即ち、かさ比重が0.40g/cm
3以下である第1の多糖類粉末と、第1の多糖類粉末よりも粒径が小さく、かさ比重が0.40g/cm
3より大きく、増粘性を有する第2の多糖類粉末との混合物が好ましいと結論付けられた。
【0063】
[評価試験2]『凝集用可食粉粒の混合比の範囲の検証』
【0064】
この評価試験2では、素材分離抑制剤として用いる凝集用可食粉粒の混合比の範囲の検証を目的として行った。ここでは、評価試験1の結果に基づき、第1の多糖類粉末として、松谷化学製の商品名「ライススターRC(もち米粉:ヒドロキシルプロピルデンプンの質量混合比が80:20であるもの)」、及び第2の多糖類粉末として、三和澱粉製の商品名「モチールアルファー(もち米粉デンプン)」を質量比で67:33で混合した多糖類粉末として選択した。そして、凝集用可食粉粒を「すりごま」とし、乾燥具材を「乾燥たまねぎスライス(質量配合率31%)」としたうえで、「ライススターRC」と「モチールアルファーとを混合した多糖類粉末、及び「すりごま」の比率を表2のように変化させて、評価試験1と同様の手法で試験及び評価を行った。その結果を表2に示す。なお、乾燥たまねぎスライスの粒度は5mmメッシュオンかつ30mmメッシュパスであり、すりごまの粒度は1mmメッシュオンかつ3mmメッシュパスであり、多糖類粉末である「ライススターRC」の粒度は1mmメッシュパス、「モチールアルファー」の粒度は0.5mmメッシュパス、であった。
【0065】
【表2】
【0066】
その結果、表2に示されるように、多糖類粉末と凝集用可食粉粒との質量配合比は、20:80〜80:20の範囲であることが好ましく(即ち評価「〇」以上と判定)、30:70〜80:20の範囲であることがさらに好ましい(即ち評価「◎」と判定)、と結論付けられた。
【0067】
[評価試験3]『具材付着向上剤としての効果付与のための多糖類粉末の混合比の範囲の検証』
【0068】
この評価試験3では、評価試験1で選抜された多糖類粉末(即ち、具材付着向上剤としての効果付与のための第2の多糖類粉末;本評価試験3においては便宜上「具材付着向上剤」とも称する。)のトッピング剤総量中における混合比の範囲の検証を目的として行った。ここでは、評価試験1の結果に基づき、第1の多糖類粉末として、松谷化学製の商品名「ライススターRC(もち米粉:ヒドロキシルプロピルデンプンの質量混合比が80:20であるもの)」、及び第2の多糖類粉末として、三和澱粉製の商品名「モチールアルファー(もち米粉デンプン)」を多糖類粉末として選択し、凝集用可食粉粒を「すりごま(質量配合率17%)」として選択し、多糖類粉末と凝集用可食粉粒との質量配合比を75:25とした。乾燥具材を「乾燥たまねぎスライス(質量配合率20%)」としたうえで、「ライススターRC」と「モチールアルファー」の比率を表3のように変化させて、評価試験1と同様の手法で試験及び評価を行った。その結果を表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
表3に示されるように、トッピング剤総量に対する具材付着向上剤(第2の多層類粉末)の添加量は、2.5質量%より小さいと、具材付着向上剤の効果が足りず、具材が脱落しやすいことがわかった。また、30%より大きいと、具材付着向上剤の効果が強すぎてトッピング剤が凝集し食材に均一に分散せず、被添加食品の食味向上効果の改善がなされないことがわかった。従って、具材付着向上剤のトッピング剤総量に対する質量混合比は、2.5%〜30%の範囲であることが好ましく(即ち評価「〇」以上と判定)、5%〜20%の範囲であることがより好ましく(即ち評価「◎」と判定)、10%程度が特に好ましいと結論付けられた。
【0071】
[評価試験4]『凝集用可食粉粒の原料の検証』
【0072】
この評価試験4では、素材分離抑制剤として用いる凝集用可食粉粒の原料の検証を目的として行った。ここでは、評価試験1の結果に基づき、第1の多糖類粉末として、松谷化学製の商品名「ライススターRC」、及び第2の多糖類粉末として、三和澱粉製の商品名「モチールアルファー」を選択した。また、「モチールアルファー」の質量配合割合を評価試験3の結果に基づき、多糖類粉末総量中の2.5質量%〜30質量%の範囲内に設定し、かつ、評価試験2の結果に基づき、多糖類粉末総量と凝集用可食粉粒との質量配合比を20:80〜80:20の範囲内に設定した。このようにして表4A〜表4Jの各凝集用可食粉粒による様々な乾燥具材の素材分離抑制効果の検証を行った。具体的には、乾燥具材として「乾燥たまねぎスライス」を1種のみ用いるか、あるいは、「乾燥にんにく粒」及び「乾燥ベーコン」から選択される2種を組み合わせて用いた。なお、「乾燥たまねぎスライス」、及び「乾燥ベーコン」のサイズは、5mmメッシュオンかつ30mmメッシュパスであり、「乾燥にんにく粒」のサイズは1mmメッシュオンかつ10mmメッシュパスであった。そして、評価試験1と同様の手法で試験及び評価を行った結果を表4A〜表4Jにそれぞれ示す。
【0073】
なお、各凝集用可食粉粒の検証は、多糖類粉末を付着すると想定された、1)油分を含むものや、2)少量の水分を含むものであって、手触りとしてややべとつきが感じられることを指標として前選抜したものを試験に供した。「味付け枝豆パウダー」は、製造工程において、パーム油を含浸させた後に乾燥し、粉砕したものである。増粘剤である「カラギーナン」及び「デキストリン(DE9〜12)」、結着剤である「ポリリン酸ナトリウム」は、事前に十分量の加水をして溶解させた各成分溶解物を金属性のバットに薄く広げ、40℃で乾燥させ、6質量%以上10質量%以下の水分含量まで乾燥させたものをミルで粉粒砕したものを使用した。ちなみに、各乾燥具材の粒度は、1mmメッシュオンかつ30mmメッシュパスの範囲に入るものであり、各凝集用可食粉粒の粒度はいずれも1mmメッシュオンかつ3mmメッシュパスであり、多糖類粉末である「ライススターRC」の粒度は1mmメッシュパス、「モチールアルファー」の粒度は0.5mmメッシュパス、であった。
【0074】
【表4A】
【0075】
【表4B】
【0076】
【表4C】
【0077】
【表4D】
【0078】
【表4E】
【0079】
【表4F】
【0080】
【表4G】
【0081】
【表4H】
【0082】
【表4I】
【0083】
【表4J】
【0084】
その結果、表4A及び表4Bに示すように、いずれも評価「◎」と判定されたことから、凝集用可食粉粒として、天然に油脂を含む「すりごま」、「チキンエキスパウダー」を使用できること、及びそれらを併用できることがわかった。表4Cに示すように、評価「◎」と判定されたことから、凝集用可食粉粒として、人為的に油脂を含浸させた「味付け枝豆パウダー」を使用できることがわかった。 表4Dに示されるように、評価「◎」と判定されたことから、凝集用可食粉粒として、天然に油脂を含む「すりごま」と、天然に少量の水分を含有する「粗塩」とを併用できることがわかった。表4E、表4F、表4Gに示されるように、いずれも評価「◎」と判定されたことから、凝集用可食粉粒として、天然に少量の水分を含有する「粗塩」、「粉末醤油」、「黒糖」を使用できることがわかった。表4H、表4I、表4Jによれば、いずれも評価「◎」と判定されたことから、凝集用可食粉粒として、人為的に少量の水分を含浸させた「カラギーナン(増粘剤)」、「デキストリン(DE9〜12)(増粘剤)」、「ポリリン酸ナトリウム(結着剤)」を使用できることがわかった。
【0085】
また、以上の結果から、凝集用可食粉粒、及び具材付着向上剤としての効果を付与する第2の多糖類粉末の添加は、使用する乾燥具材の種類を問わず有効であり、また、異種の乾燥具材を併用した場合であっても有効であることがわかった。
【0086】
[評価試験5]『乾燥具材と、素材分離抑制剤の混合比の範囲の検証』
【0087】
この評価試験5では、乾燥具材と素材分離抑制剤の混合比の範囲の検証を目的として行った。ここでは、評価試験1の結果に基づき、第1の多糖類粉末として、松谷化学製の商品名「ライススターRC」を素材分離抑制剤を構成する多糖類粉末を選択するとともに、第2の多糖類粉末として、三和澱粉製の商品名「モチールアルファー」を具材の付着性を向上させる効果を奏する多糖類粉末を選択し、評価試験2の結果に基づき、「すりごま」を凝集用可食粉粒として選択し、それらの質量配合比を80:20とした。また、評価試験3の結果に基づき、乾燥具材に対する素材分離抑制剤の質量配合比を表5のように変化させて、食品用トッピング剤のサンプルを作製するとともに、評価試験1と同様の手法でそれらに対する試験及び評価を行った。その結果を表5に示す。なお、本評価試験5においては、具材付着向上剤としての効果付与のための第2の多糖類粉末のことを便宜上「具材付着向上剤」とも称する。従って、表中で「乾燥具材に対する素材分離抑制剤の質量配合比」と言った場合には、「乾燥具材に対する素材分離抑制剤(ただし具材付着向上剤としての第2の多糖類粉末を除くもの)の質量配合比」を意味するものとする。後述する評価試験6、7についても同様である。
【0088】
その他調味粉末としては、「風味粉末(マヨネーズ風味粉末)(調味粉末総量中の64質量%)」、「塩顆粒(塩味づけ)(同18質量%)」、「グラニュー糖(甘味づけ)(同18質量%)」などからなる混合物を55質量%用いた。粒度はいずれも1mmメッシュパスである。なお、これら調味粉末は、本発明の素材分離抑制効果には関係のないものである。
【0089】
【表5】
かっこ内の数値は乾燥具材と素材分離抑制剤との質量混合比を示す。
【0090】
その結果、表5に示されるように、乾燥具材と、素材分離抑制剤との質量混合比は、4:96〜38:62の範囲であることが好ましく(即ち評価「〇」以上と判定)、4:96〜30:70の範囲であることがより好ましい(即ち評価「◎」と判定)、と結論付けられた。
【0091】
[評価試験6]『トッピング剤から乾燥具材を除いた素材のかさ比重の範囲の検証』
【0092】
この評価試験6では、トッピング剤から乾燥具材を除いた素材のかさ比重の範囲の検証を目的として行った。ここでは、評価試験1の結果に基づき、第1の多糖類粉末として、「ライススターRC」を選択し、評価試験2の結果に基づき、凝集用可食粉粒として「すりごま」を選択し、それらの質量配合比を80:20とした。さらに、評価試験1の結果に基づき、第2の多糖類粉末として、三和澱粉製の商品名「モチールアルファー」として選択した。素材分離抑制剤と具材付着向上剤(第2の多糖類粉末)と調味粉末との質量配合比を表6のように変化させて、食品用トッピング剤のサンプルを作製した。次いで、作製されたトッピング剤から乾燥具材のみを篩い分けて除去し、乾燥具材を除いた素材の水分を5質量%に調整した後、メッシュを通過した素材のかさ比重を測定した。その他調味粉末の組成は、評価試験4と同様とした。
【0093】
【表6】
【0094】
その結果、表6に示されるように、メッシュの通過により乾燥具材を除いた素材は、水分を5質量%に調整した時のかさ比重が0.45g/cm
3以下の範囲(具体的に、ここでは0.33g/cm
3〜0.45g/cm
3)となることが特徴の一つであることがわかった。
【0095】
[評価試験7]『本発明の効果の検証』
【0096】
以上の条件検討結果に基づいて、以下、具材入りの食品用トッピング剤を調製し、乾燥具材と、調味粉末と、多糖類粉末と凝集用可食粉粒とを混合してなる素材分離抑制剤との混合安定性、及び具材付着向上剤としての効果を付与する多糖類粉末による被添加食品への具材の付着性について検証を行った。ここでは、生野菜サラダ用である具材入りの食品用トッピング剤の一例として、「具材入り粉状ドレッシング」を表7のように調製し、他の処方例との比較を実施した。
【0097】
検証方法としては、表7の各素材を以下の質量配合率で、不透明なパウチ容器中に一括投入(総量250g)し、パウチ容器を空気で膨らませた後、手でよく振って十分に混合・攪拌した。その後、内容物を、20gずつ、連続して10回分取し、乾燥具材を篩い分けした後、各回の乾燥具材の質量を測定した。その値を基に、乾燥具材含有率平均値(%)、乾燥具材含有率のばらつき指標(3σ)を計算し、評価試験1と同様の基準で、乾燥具材とその他素材との素材分離抑制効果の程度を判定した。さらに、各混合物を生野菜サラダに振り掛けて、軽く混ぜ込み、野菜表面への具材の付着状態を目視で判定した。乾燥具材の混合物全体への混ざり込み具合、及び乾燥具材の野菜への付着性は[評価試験1]と同じ基準を用い、判定した。
【0098】
【表7】
【0099】
その結果、表7に示されるように、サラダ用の「具材入り粉状ドレッシング」において、本発明を適用した実施例1の製品は、乾燥具材含有率のばらつき指標(3σ)が著しく小さく、乾燥具材とその他素材との素材分離抑制効果が十分に奏されていることがわかった。さらに、乾燥具材の生野菜への付着性も良いことがわかった。
【0100】
これに対し、「凝集用可食粉粒なし」とした比較例1、「分離抑制剤構成多糖類粉末なし」とした比較例2では、上記ばらつき指標(3σ)が実施例1に比べて大きくなっており、乾燥具材とその他素材との素材分離抑制効果が十分に奏されていなかった。ゆえに、それぞれ単独では素材分離抑制効果は奏されず、素材分離抑制効果を奏するためには、多糖類粉末と凝集用可食粉粒とを併用すること(即ち、これらの併用により素材分離抑制剤を形成すること)が必須であることが実証された。
【0101】
同様に、「調味粉末の顆粒化技術」である比較例3(即ち従来技術)においても、乾燥具材とその他素材との素材分離抑制効果が不十分であり、これに対しても、本発明を適用した実施例1の製品は、素材分離抑制効果が著しく高いことがわかった。なお、乾燥具材含有率平均値(%)、(対質量配合率)については、各実施例及び各比較例間にて大差はなく、許容範囲で問題はないと判断された。
【0102】
なお、「具材付着向上剤なし」とした実施例2においては、実施例1と同様に素材分離抑制効果が著しく高いものの、被添加食品における具材の付着性にやや劣り、実施例1ほど具材の付着が起こらず、トッピング剤の添加による食味改善効果は認められたものの、具材付着向上剤の混合が、具材の付着性向上に基づくサラダの食味改善効果に有効であることが実証された。ゆえに、サラダのような表面水分の少ない生野菜類に具材を十分に付着させ、具材入り乾燥食品の添加により食味向上効果を改善するに際して、粒径が小さく少量の増粘性を有する多糖類粉末を混合することがより好ましいことが実証された。
【0103】
[結論]
以上の結果を総合すると、本実施形態の各実施例によれば、素材の複雑な前処理操作を行わなくても、粒度の異なる乾燥具材と調味粉末とが分離しにくく、コスト性や風味にも優れ、被添加食品に対する具材の付着が向上されて被添加食品の食味を向上することができる具材入りの食品用トッピング剤を提供することができる。なお、本発明は上記実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜変更してもよい。