特許第6691390号(P6691390)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社Mizkan Holdingsの特許一覧 ▶ 株式会社Mizkanの特許一覧

特許6691390具材入りの食品用トッピング剤、トッピング剤素材の分離抑制及び具材の付着向上方法
<>
  • 特許6691390-具材入りの食品用トッピング剤、トッピング剤素材の分離抑制及び具材の付着向上方法 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6691390
(24)【登録日】2020年4月14日
(45)【発行日】2020年4月28日
(54)【発明の名称】具材入りの食品用トッピング剤、トッピング剤素材の分離抑制及び具材の付着向上方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 35/00 20160101AFI20200421BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20200421BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20200421BHJP
   A23L 27/60 20160101ALI20200421BHJP
【FI】
   A23L35/00
   A23L5/00 D
   A23L27/00 A
   A23L27/60 Z
【請求項の数】10
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-36670(P2016-36670)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-12148(P2017-12148A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2019年1月29日
(31)【優先権主張番号】特願2015-130497(P2015-130497)
(32)【優先日】2015年6月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(73)【特許権者】
【識別番号】317006214
【氏名又は名称】株式会社Mizkan
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 了奨
【審査官】 高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−085487(JP,A)
【文献】 特開2003−009830(JP,A)
【文献】 特開2006−280270(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/065364(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥具材と調味粉末とを含有する食品用トッピング剤であって、
かさ比重が0.37g/cm以下である第1の多糖類粉末と、第1の多糖類粉末よりも粒径が小さく、かさ比重が0.43g/cm以上であり、増粘性を有する第2の多糖類粉末と、前記多糖類粉末を凝集させる特性を有する粉末状及び/または粒子状の凝集用可食粉粒とにより構成された素材分離抑制剤が含有され
前記多糖類粉末と前記凝集用可食粉粒との質量混合比が20:80〜80:20の範囲であり、
前記乾燥具材と前記素材分離抑制剤との質量混合比が4:96〜38:62の範囲であり、
前記トッピング剤総量に対する前記第2の多糖類粉末の含有量が2.5質量%以上30質量%以下である
ことを特徴とする具材入りの食品用トッピング剤。
【請求項2】
前記トッピング剤において前記乾燥具材を除いた素材は、水分を5質量%に調整したときのかさ比重が、0.45g/cm以下であることを特徴とする請求項に記載の具材入りの食品用トッピング剤。
【請求項3】
前記多糖類粉末は、デンプン類を主成分として含有することを特徴とする請求項1または2に記載の具材入りの食品用トッピング剤。
【請求項4】
前記多糖類粉末は、デンプン類を主成分として含有するとともに、
前記デンプン類と前記凝集用可食粉粒とを質量比で20:80〜80:20の範囲で混合してなるものである
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の具材入りの食品用トッピング剤。
【請求項5】
前記凝集用可食粉粒は、6質量%以上10質量%以下の水分を含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の具材入りの食品用トッピング剤。
【請求項6】
前記素材分離抑制剤は、前記乾燥具材よりも小さく、かつ、前記調味粉末と同等の大きさかそれよりも大きいことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の具材入りの食品用トッピング剤。
【請求項7】
前記乾燥具材は1mmメッシュオンかつ30mmメッシュパスであり、
前記凝集用可食粉粒は1mmメッシュオンかつ3mmメッシュパスであり、
前記第1の多糖類粉末は1mmメッシュパスであり、
前記第2の多糖類粉末は0.5mmメッシュパスである
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の具材入りの食品用トッピング剤。
【請求項8】
前記トッピング剤は、サラダ用であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の具材入りの食品用トッピング剤。
【請求項9】
前記トッピング剤は、野菜類を主体として盛り付けたサラダ用であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の具材入りの食品用トッピング剤。
【請求項10】
乾燥具材と調味粉末とを含有する食品用トッピング剤に、かさ比重が0.37g/cm以下である第1の多糖類粉末と、第1の多糖類粉末よりも粒径が小さく、かさ比重が0.43g/cm以上であり、増粘性を有する第2の多糖類粉末と、前記多糖類粉末を凝集させる特性を有する粉末状及び/または粒子状の凝集用可食粉粒とにより構成された素材分離抑制剤を添加するとともに、
前記多糖類粉末と前記凝集用可食粉粒との質量混合比を20:80〜80:20の範囲とし、
前記乾燥具材と前記素材分離抑制剤との質量混合比を4:96〜38:62の範囲とし、
前記トッピング剤総量に対する前記第2の多糖類粉末の含有量を2.5質量%以上30質量%以下とする
ことにより、トッピング剤素材の分離を抑制し、かつ被添加食品に対する前記乾燥具材の付着を向上する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、具材入りの食品用トッピング剤、トッピング剤素材の分離抑制方法及び被添加食品に対する具材の付着向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粒度の異なる複数種類の乾燥素材の混合物である乾燥粉末食品の一種として、例えば食品用トッピング剤がよく知られている。この種の食品では、比較的粒度の大きい素材である乾燥具材が浮き、比較的粒度の小さい素材である粉末が沈み込む現象(即ち、乾燥具材とその他粉末とが分離する現象:「素材分離現象」)が生じやすい。従って、製造時に製品を容器内に均一に充填することが難しく、また、使用時に製品を均一に分配することも難しいという欠点があった。
【0003】
より具体的にいうと、製造時においては、製品を容器内に充填する際に乾燥具材と調味粉末を含むその他粉末とが均一に混ざり合わず、製品ごとに素材の混合比がばらつきやすい。このため、製品の品質安定性を損なうという問題が生じる場合があった。また、製品を食材に対して使用する際においては、乾燥具材と調味粉末を含むその他粉末との不均一性に起因して、食材に乾燥具材ばかり、あるいは調味粉末ばかりが加えられたりすることが生じる。よって、味が不均一になりやすく、同一食材でも風味が不揃いになるという問題が生じる場合があった。
【0004】
そこで、乾燥具材と調味粉末との分離を抑制する技術として、調味粉末を顆粒化することが従来提案されてきた。即ち、顆粒化された調味粉末を用いることによって、混合物全体の流動性が高くなり、乾燥具材と顆粒とが分離せず一緒に流れ出しやすくなる。その結果、乾燥具材と調味粉末との均一性を高めることができるとされてきた。しかしながら、このような従来技術の場合、素材分離抑制効果が十分に得られないという問題があった。それに加え、調味粉末の顆粒化にコストがかかるあまり、製品に添加できる乾燥具材の量や種類が限定されるという問題もあった。
【0005】
また、調味粉末の顆粒化に際して、顆粒形成が困難な粉末素材(例えば、もち米粉やわさび香料など)が使用できず粉末素材の選択に制約を受けるという問題があった。このほか、顆粒形成時に熱負荷がかかって風味力価が落ちるという問題(例えば、香料など)や、顆粒化してしまうと粉末素材特有の食感や風味を活かせなくなるという問題(例えば、粗塩の塩味など)があった。
【0006】
ゆえに、従来の食品用トッピング剤は、コスト性の観点から、風味の特徴となる乾燥具材の量を少なくせざるを得ず、インパクトの欠けた商品となっていた。また、乾燥具材の種類が限られてしまい、消費者が求めるバリエーションに対する要求を満たすことができなかった。さらに、従来の食品用トッピング剤は、顆粒化の面から考えると、調味原料の風味の質において必ずしも満足できる品質が達成できているとは言えず、消費者が求める本物志向の要求を満たすことができなかった。
【0007】
さらに、具材入りの固形状食品用トッピング剤としては、凍結乾燥法によって具材とその他素材とを乾燥し固形化したものが従来から知られているが、凍結乾燥法には、食品素材の香りの消失、製造コスト高といった欠点があり、食品の種類や用途によっては使用が制限されてしまう場合が多かった。
【0008】
また、飲食品の調味ブレンド工程において、乾燥具材や調味粉末などの様々な素材を投入する場合、添加する素材の種類によっては、各素材を一定量添加するために素材別に多種のノズルや装置を使い分ける煩雑な工程が必要であるという課題があった。
【0009】
そして、上記の課題に鑑みてなされた技術が従来いくつか提案されている(例えば、特許文献1〜4を参照)。即ち、特許文献1である特開2014−128237号公報には、乾燥具材を核にしてそれに粉末油脂を付着させることで、乾燥具材と調味粉末との分散性を改善する技術が開示されている。特許文献2である特開2013−85487号公報には、アルファ化デンプンに可食粉末を強固に結着させた後、これを乾燥具材の表面に結着させる技術が開示されている。特許文献3である特許第5689551号公報には、デンプンとデキストリンとを造粒した後、他の未造粒の原料として各種風味原料を混合して再造粒する技術が開示されている。特許文献4である特開2015−104367号公報には、多孔質粒状粉末に調味粉末を付着させた粉末付着粒状物を含む乾燥調味料に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2014−128237号公報
【特許文献2】特開2013−85487号公報
【特許文献3】特許第5689551号公報
【特許文献4】特開2015−104367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、特許文献1の技術は、加熱溶融した固形油脂と、乾燥具材及び調味粉末とを混合攪拌後、固形油脂を冷却固化させ、さらに粉砕して乾燥食材を得るという、素材粉末の顆粒化と変わらない程度の工程の煩雑さとコストを要する。従って、具材と粉末との分離を抑えるという課題の解決には至るものの、具材ばかりのトッピング剤になり、商品形態として異質なものになってしまう。また、コスト低減という課題の十分な解決には至っていない。
【0012】
特許文献2の技術は、具材の乾燥を速やかに行わせることを目的とするものであって、乾燥具材と調味粉末を含むその他素材との分離抑制に係わる効果については何ら言及されておらず、分離に関する課題の解決には至っていない。
【0013】
特許文献3の技術の場合、各種風味素材は粉末であるばかりでなく、製品の最終形態も顆粒状である。このため、製造コストが高いことに加え、風味素材の香りが消失しやすいという問題があった。
【0014】
特許文献4の技術の場合、外観の粉っぽさを低減し、呈味の濃淡を充分に感じさせることであって、粉末付着粒状物である乾燥具材と調味粉末を含むその他素材との分離抑制に係わる効果については何ら言及されておらず、分離に関する課題の解決には至っていない。また、多孔質粒状粉末にサイズが小さい調味粉末が付着すること自体は一般的に生じる現象であって、その付着性の制御や各素材の混合に関する工夫が認められず、これによる前記具材とその他素材の分離抑制効果を生じることも期待されないと考えられる。
【0015】
一方で、上記特許文献のいずれにおいても、それぞれの乾燥食品の被添加食品上、あるいは被添加食品中における具材の付着向上及び脱落抑制方法については、何ら言及されていない。そして、乾燥具材を被添加食品に付着させるための媒体となる表面水分の少ない食品(例えば生野菜サラダや温野菜サラダなど)において、特にサイズの大きな乾燥具材の被添加食品に対する付着の向上、脱落の防止が、具材入り乾燥食品の添加による食味向上効果を奏するための課題として、依然残されていた。なお、液状のドレッシングでは、上述の被添加食品に対する付着の向上や脱落の防止は、旧来からの課題とされてきた。これに対する解決手段として、ゲル状のドレッシングの開発が試みられてきたものの(一例としてハウス食品製、「のっけてジュレ」)、解決手段として十分な効果を奏するものではなかった。
【0016】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複雑な前処理操作を行わなくても、粒度の異なる乾燥具材と調味粉末とが分離しにくく、コスト性や風味にも優れ、被添加食品に対する具材の付着がよくて食味を向上することができる具材入りの食品用トッピング剤を提供することにある。また、本発明の別の目的は、粒度の異なる乾燥具材と調味粉末との分離を効果的に抑制できる方法、及び被添加食品に対する具材の付着を向上できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記の事情に鑑みて鋭意研究を行った結果、乾燥具材や調味粉末などを含有するものに対し、特定のかさ比重を有する多糖類粉末と、前記多糖類粉末を凝集させる特性を有する粉末状及び/または粒子状の凝集用可食粉粒とを含有させることにより、乾燥具材と調味粉末を含むその他素材とが著しく分離しにくくなることを新規に知見した。そして、乾燥具材と調味粉末とを含む食品用のトッピング剤の製造において、前記多糖類粉末と前記粒子状の凝集用可食粉粒とにより構成される素材分離抑制剤を含有させることにより、コスト高の原因となる素材の複雑な前処理操作を行わなくても、乾燥具材と調味粉末を含むその他素材との分離が著しく抑制され、コスト性や風味に優れた食品用トッピング剤を提供できることを新規に知見した。さらに、乾燥具材を被添加食品に付着させるための媒体となる表面水分の少ない食品(例えば生野菜サラダや温野菜サラダなど)において、前記素材分離抑制効果を阻害することなく、粒径が小さく比表面積が大きく、増粘性を有する多糖類粉末を含有させることにより、前記多糖類粉末単独の場合よりもさらに具材の付着が向上され、具材の脱落が防止され、食味を向上することができる具材入り食品用トッピング剤を提供できることを新規に知見した。そして、本発明者らは上記の知見に基づいてさらに鋭意研究を進めることにより、最終的に下記の発明を完成させるに至ったのである。
【0018】
上記の課題を解決するための手段[1]〜[10]を以下に列挙する。
【0019】
[1]乾燥具材と調味粉末とを含有する食品用トッピング剤であって、かさ比重が0.37g/cm以下である第1の多糖類粉末と、第1の多糖類粉末よりも粒径が小さく、かさ比重が0.43g/cm以上であり、増粘性を有する第2の多糖類粉末と、前記多糖類粉末を凝集させる特性を有する粉末状及び/または粒子状の凝集用可食粉粒とにより構成された素材分離抑制剤が含有され、前記多糖類粉末と前記凝集用可食粉粒との質量混合比が20:80〜80:20の範囲であり、前記乾燥具材と前記素材分離抑制剤との質量混合比が4:96〜38:62の範囲であり、前記トッピング剤総量に対する前記第2の多糖類粉末の含有量が2.5質量%以上30質量%以下であることを特徴とする具材入りの食品用トッピング剤
[2]前記トッピング剤において前記乾燥具材を除いた素材は、水分を5質量%に調整したときのかさ比重が、0.45g/cm以下であることを特徴とする手段に記載の具材入りの食品用トッピング剤。
]前記多糖類粉末は、デンプン類を主成分として含有することを特徴とする手段1または2に記載の具材入りの食品用トッピング剤。
]前記多糖類粉末は、デンプン類を主成分として含有するとともに、前記デンプン類と前記凝集用可食粉粒とを質量比で20:80〜80:20の範囲で混合してなるものであることを特徴とする手段1乃至のいずれか1項に記載の具材入りの食品用トッピング剤。
]前記凝集用可食粉粒は、6質量%以上10質量%以下の水分を含むことを特徴とする手段1乃至のいずれか1項に記載の具材入りの食品用トッピング剤。
]前記素材分離抑制剤は、前記乾燥具材よりも小さく、かつ、前記調味粉末と同等の大きさかそれよりも大きいことを特徴とする手段1乃至のいずれか1項に記載の具材入りの食品用トッピング剤。
]前記乾燥具材は1mmメッシュオンかつ30mmメッシュパスであり、前記凝集用可食粉粒は1mmメッシュオンかつ3mmメッシュパスであり、前記第1の多糖類粉末は1mmメッシュパスであり、前記第2の多糖類粉末は0.5mmメッシュパスであることを特徴とする手段1乃至6のいずれか1項に記載の具材入りの食品用トッピング剤。
]前記トッピング剤は、サラダ用であることを特徴とする手段1乃至7のいずれか1項に記載の具材入りの食品用トッピング剤。
]前記トッピング剤は、野菜類を主体として盛り付けたサラダ用であることを特徴とする手段1乃至のいずれか1項に記載の具材入りの食品用トッピング剤。
10]乾燥具材と調味粉末とを含有する食品用トッピング剤に、かさ比重が0.37g/cm以下である第1の多糖類粉末と、第1の多糖類粉末よりも粒径が小さく、かさ比重が0.43g/cm以上であり、増粘性を有する第2の多糖類粉末と、前記多糖類粉末を凝集させる特性を有する粉末状及び/または粒子状の凝集用可食粉粒とにより構成された素材分離抑制剤を添加するとともに、前記多糖類粉末と前記凝集用可食粉粒との質量混合比を20:80〜80:20の範囲とし、前記乾燥具材と前記素材分離抑制剤との質量混合比を4:96〜38:62の範囲とし、前記トッピング剤総量に対する前記第2の多糖類粉末の含有量を2.5質量%以上30質量%以下とすることにより、トッピング剤素材の分離を抑制し、かつ被添加食品に対する前記乾燥具材の付着を向上する方法
【発明の効果】
【0020】
以上詳述したように、請求項1〜に記載の発明によると、複雑な前処理操作を行わなくても、粒度の異なる乾燥具材と調味粉末とが分離しにくく、コスト性や風味にも優れ、被添加食品に対する具材の付着が向上よく、食味向上を図ることができる具材入りの食品用トッピング剤を提供することができる。また、請求項10に記載の発明によると、粒度の異なる乾燥具材と調味粉末との分離を効果的に抑制できる方法、及び被添加食品に対する具材の付着を効果的に向上できる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】(a)から(f)は本発明の具材入りの食品用トッピング剤の製造手順を説明するための概略図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の具材入りの食品用トッピング剤、それにおける素材の分離抑制方法、及び素材の被添加食品に対する付着が向上され、食味向上を図ることができる方法について詳細に説明する。
【0023】
本発明における「具材入りの食品用トッピング剤」とは、食材にふりかけたり、ふりかけた後に食材に混ぜ込んだり、ふりかけた後に液体に分散・溶解させたりして、食材に対して、具材の見た目や風味、調味料の風味を与えて、食材の嗜好性を高めたり、食品に味付けをすることを目的とする食品素材を総称する概念である。
【0024】
本発明の食品用トッピング剤は、乾燥具材と調味粉末とを含有するとともに、特定のかさ比重を有する増粘性を有する多糖類粉末と、前記多糖類粉末を凝集させる特性を有する粉末状及び/または粒子状の凝集用可食粉粒とにより構成された素材分離抑制剤を含有している。
【0025】
素材分離抑制剤を構成するとともに主として素材分離抑制剤としての効果を付与する多糖類粉末(以下、第1の多糖類粉末という)、及び素材分離抑制剤を構成するとともに主として具材付着向上剤としての効果を付与する多糖類粉末(以下、第2の多糖類粉末という)は、ある程度分子量の大きい(少なくとも1000以上の)多糖類の粉末のことを指し、具体的にはデンプン類を主成分として含有したものである。多糖類粉末の原料としては、デンプン、デンプン含有物、加工デンプン及びこれらの混合物などが使用可能である。具体的には、「デンプン」を含む穀類の粉砕物、穀類から製造された「デンプン」が使用可能であるほか、これを物理的または化学的に加工した「加工デンプン」が使用可能である。
【0026】
素材分離抑制剤を構成する第1の多糖類粉末としては、さらに具体的にいうと、「デンプン含有物」の例としては、もち米粉、おから粉末などを挙げることができる。「デンプン」の例としては、馬鈴薯デンプン、コーンスターチなどを挙げることができる。「加工デンプン」の例としては、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルデンプンなどを挙げることができる。それらの混合物としては、例えば「デンプン」と「加工デンプン」との混合物が好適であり、具体的にはもち米粉デンプンとヒドロキシプロピルデンプンとの混合物がより好適なものとして挙げられる。その理由は、かさ比重の異なる複数種類のデンプンの構造の絡み合いにより、水分を抱き込みやすくなり、増粘性を有する多糖類粉末となるからである。
【0027】
この場合、もち米粉デンプンとヒドロキシプロピルデンプンとの混合物における両者の質量比は任意に設定されるが、もち米粉デンプンよりヒドロキシプロピルデンプンのほうが質量比で少ないほうが好適である。より具体的には、もち米粉デンプンとヒドロキシプロピルデンプンを質量比で95:5〜55:45で混合したもの、特には90:10〜70:30で混合したものの使用がより好適である。
【0028】
前記素材分離抑制剤を構成する第1の多糖類粉末は比較的かさ高いものであって、そのかさ比重は0.40g/cm以下である必要がある。かさ比重が0.40g/cmよりも大きいと、乾燥具材との混合物中における分散性が悪くなり、混合物の上部に乾燥具材が浮いてしまうからである。多糖類粉末のかさ比重の下限値は特に限定されないが、かさ比重が0.20g/cmよりも小さいものを使用しようとしても、原料の選択肢の幅が狭くなり、結果的に高コスト化にもつながりやすくなる。上記の事情を考慮すると、かさ比重の範囲は、0.20g/cm以上0.35g/cm以下であることがより好ましく、0.20g/cm以上0.30g/cm以下であることがさらに好ましい。
【0029】
素材分離抑制剤を構成する凝集用可食粉粒は、かさ比重が0.40g/cm以下である多糖類粉末を凝集させる特性を有するものであって、その原料としては、油脂及び/または6質量%以上10質量%以下の水分を含む可食粉粒を使用することができる。ちなみに、本発明の凝集用可食粉粒は、含有している油脂及び/または少量の水分によって、自身の表面に複数の多糖類粉末を付着させることで、多糖類粉末を凝集させることができる。
【0030】
天然に油脂を含有する原料としては、例えば、すりごま、チキンエキスパウダー、粉末油脂、卵粉末などが使用可能である。人為的に油脂を含浸させた原料としては、例えば、パーム油を含浸させた後に乾燥して粉砕した「味付け枝豆パウダー」などが使用可能である。これらから選択される2種以上のものを併用することも可能である。
【0031】
6質量%以上10質量%以下の水分を天然に含有する原料としては、例えば、粗塩、黒糖、粉末醤油などが使用可能である。人為的に上記分量の水分を含有させた原料としては、特定の増粘剤や結着剤などが使用可能である。具体的には、事前に十分量の加水をして溶解させた次の成分をバットに薄く広げ、40℃で乾燥させ、上記の水分含量まで乾燥させたものを粉砕した、増粘剤であるカラギーナンやデキストリン、結着剤であるポリリン酸ナトリウムなどが使用可能である。これらのうち2種以上のものを併用することも可能である。
【0032】
なお、上記油脂を含有する凝集用可食粉粒と、上記少量の水分を含む凝集用可食粉粒とは単用してもよいが、併用することも可能である。一例としては、すりごまと粗塩とを混合したものなどが使用可能である。
【0033】
前記素材分離抑制剤を構成する多糖類粉末と凝集用可食粉粒との混合比は限定されず任意に設定することができるが、例えば、質量比で20:80〜80:20の範囲であることが好ましく、30:70〜80:20の範囲であることがさらに好ましい。混合比が上記範囲を逸脱すると、乾燥具材との混合物中における分散性が悪くなり、混合物の上部に前記素材分離抑制剤を構成する多糖類粉末が浮いてしまいやすくなるからである。
【0034】
本発明における素材分離抑制剤は、凝集用可食粉粒の表面に複数の前記かさ比重が0.40g/cm以下である多糖類粉末が付着して凝集した付着混合物であるが、その付着混合物のサイズは、乾燥具材よりも小さく、かつ、調味粉末と同などの大きさかそれよりも大きいものであることがよい。その理由は、このようなサイズとすることで素材分離抑制効果が奏されやすくなる傾向があるからである。
【0035】
一方、主として具材付着向上剤としての効果を付与する第2の多糖類粉末としては、さらに具体的にいうと、「デンプン含有物」の例としては、もち米粉などを挙げることができる。「デンプン」の例としては、もち米粉デンプン、タピオカデンプンなどを挙げることができる。「加工デンプン」の例としては、リン酸化架橋デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、酢酸デンプンなどを挙げることができるが、これらが、粒径が小さいものであることが必要である。その理由は、比表面積が大きいため水分を吸収しやすいことによって高い粘度を生じるからである。なお、このように粒径が小さく、増粘性を有するデンプンを用いた混合物であれば、例えばサラダ用の具材入りのトッピング剤において、表面水分の少ない生野菜類に具材を十分に付着させ、具材入り乾燥食品の添加による食味向上効果を改善するに際して好適だからである。
【0036】
この場合、主として具材付着向上剤としての効果を付与する第2の多糖類粉末のトッピング剤中における質量比は任意に設定されるが、前記素材分離抑制剤としての効果を阻害せず、水分を吸収して被添加食品に具材を付着させる十分な粘度を生じ、かつ、トッピング剤の分散性を阻害しない過度な粘度を生じない割合が好適である。より具体的には、具材入りトッピング剤総量中の混合比が2.5質量%〜30質量%であることが好ましく、5質量%〜20質量%であることがより好ましく、10質量%程度であることがさらに好ましい。この理由としては、かさ比重の異なる複数種類のデンプンの構造の絡み合いにより、水分を抱き込みやすくなり、その配合割合により、適度な増粘性を有する多糖類粉末となるからである。
【0037】
主として具材付着向上剤としての効果を付与する第2の多糖類粉末は、主としての素材分離抑制剤としての効果を付与する第1の多糖類粉末よりもかさ高の低いものであって、そのかさ比重は0.40g/cmより大きい必要がある。かさ比重が0.40g/cm以下であると、粒径が大きく比表面積が小さいことから、水分の吸収性が悪くなり、具材付着向上効果を奏しにくくなるからである。多糖類粉末のかさ比重の上限値は特に限定されないが、かさ比重が大きくなりすぎると粒子が細かすぎてトッピング剤への混ぜ込み時に凝集が生じやすく、トッピング剤中で均一に分散させるためには、かさ比重の範囲は、0.40g/cmより大きく0.50g/cm以下であることがより好ましく、0.45g/cm以上0.50g/cm以下であることがさらに好ましい。
【0038】
食品用トッピング剤に使用される乾燥具材の種類や大きさは、本発明の効果に対して特に制約を与えるものではないが、食材へのトッピングの際の操作性や食べやすさ、及び被添加食品の種類を考慮した場合、適当なサイズがある。細かいサイズの具材と大きなサイズの具材が混合されていることが、トッピングの効果(見映えや食感、呈味の付与)として好ましいが、特に、本発明の用途とするサラダ用のトッピング剤においては、見た目のインパクトや食感付与の観点から、具材が大きいものが含まれていることが望ましく、具体的には、1mmメッシュオンかつ30mmメッシュパスであることが好ましい。
【0039】
食品用トッピング剤に使用される乾燥具材が1mmメッシュオンかつ30mmメッシュパスであり、調味粉末が1mmメッシュパスであるとすると、前記素材分離抑制剤を構成する凝集用可食粉粒は3mmメッシュパスであることが好ましく、具体的にいうと、主として素材分離抑制剤としての効果を付与する第1の多糖類粉末は1mmメッシュパスであることが好ましい。さらに、主として具材付着向上剤としての効果を付与する第2の多糖類粉末は、粒径が小さく比表面積が大きいものであることが好ましく、具体的にいうと、0.5mmメッシュパスであることが好ましい。即ち、前記素材分離抑制剤を構成する多糖類粉末と凝集用可食粉粒とでサイズに大小関係を持たせたのは、相対的にサイズが大きい凝集用可食粉粒と、相対的にサイズが小さい第1の多糖類粉末とを組み合わせることで、凝集用可食粉粒の表面に複数の前記素材分離抑制剤を構成する多糖類粉末を凝集しやすくなり、所望とするサイズ及び形状の素材分離抑制剤が得やすくなるからである。また、前記第2の多糖類粉末は、特に、本発明の用途とするサラダ用のトッピング剤においては、大きい比表面積を有することにより水分を吸収しやすく、表面水分が少ない野菜類においても具材を十分に付着させるための粘性が生じやすいからである。
【0040】
乾燥具材の例としては、例えば、レーズン、バナナチップ、プルーン、いちじく、りんご、デーツなどの乾燥果実類、アーモンド、カシューナッツ、ペカン、ピーナッツ、マカダミアナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ココナッツ、松の実、クルミ、ナツメグなどの種実類、山椒の実、紫蘇の実、蓼の実、唐辛子、生姜スライス、粒こしょう、粒マスタード、フェンネルシード、クミンシード、コリアンダーシード、ディルシード、フェネグリークシード、ローズマリー、月桂樹の葉、乾燥ワサビ、乾燥ショウガ、乾燥ネギなどの香辛料類、乾燥にんにく、乾燥たまねぎ、乾燥れんこん、乾燥かぼちゃ、乾燥ピーマン、乾燥トマトなどの乾燥野菜類、乾燥ひじき、乾燥わかめなどの乾燥海藻類、乾燥ちりめんじゃこ、乾燥さくらえび、鰹節けずり片などの乾燥魚介類、乾燥ベーコンなどの乾燥肉類、鶏風味植物性タンパク質などの乾燥風味具材、調味顆粒などを挙げることができる。これら乾燥具材は乾燥前後において、破砕や切断などの操作を行い適宜サイズを調整すればよい。これら乾燥具材と、前記素材分離抑制剤との質量混合比は、特に、本発明の用途とするサラダ用のトッピング剤においては、見た目のインパクトや食感付与の観点から、具材が大きいほうが望ましく、よって強い分離抑制効果を要することから前記素材分離抑制剤の量が多いほうが好ましく、4:96〜38:62の範囲であることが好ましく、4:96〜30:70の範囲であることがより好ましい。ここで、乾燥具材の質量混合比が上記好適範囲よりも大きいと、素材分離抑制剤の含有量が少なくなるため、具材が大きいこともあいまって、十分な素材分離抑制効果が奏されにくくなるからである。逆に、乾燥具材の質量混合比が上記好適範囲よりも小さいと、風味の特徴となる乾燥具材が少なくなり、インパクトの欠けた商品となるおそれがあるからである。
【0041】
食品用トッピング剤に使用される調味粉末の例としては、粉末状にした調味のための各種食材を使用することができ、具体的には、調味料粉末(みそ、醤油、ソースの粉末など)、糖類粉末(グルコース、砂糖、果糖の粉末など)、色素粉末(ターメリックやカラメルの粉末など)、香料粉末(ゆず粉末など)、香辛料粉末(胡椒、山椒、ニンニク、唐辛子、生姜、マスタードの粉末など)、旨味調味料粉末(グルタミン酸ソーダの粉末など)、酸味料、脱脂粉乳、鰹節粉末、粉末油脂、デキストリン、増粘剤、酸化防止剤などが使用可能である。なお、塩粒もここで言う調味粉末の一種に含めるものとする。
【0042】
本発明では、前記かさ比重が0.40g/cm以下である第1の多糖類粉末のかさ比重が素材分離抑制効果をもたらす一因として寄与するものと推定される。また、前記かさ比重が0.40g/cm以下である第1の多糖類粉末と、前記かさ比重が0.40g/cmより大きい第2の多糖類粉末を混合した場合に、混合する多糖類粉末のかさ比重が具材付着向上効果のさらなる向上をもたらす一因として寄与するものと推定されるが、本発明の食品用トッピング剤から乾燥具材を除いた素材のかさ比重の範囲について、何らかの特徴を有するか否かについて検証を行った。その結果、食品用トッピング剤から乾燥具材を篩い分けし、篩を通過した素材は、この水分を5質量%に調整した時のかさ比重が0.45g/cm以下であることが特徴の1つとなっていた。
【0043】
本発明の食品用トッピング剤は様々な食材に対して広く適用可能であるが、例えば、生鮮野菜類を盛り付けた野菜サラダや、温野菜を盛り付けた野菜サラダや、ポテトサラダ、卵サラダ、マカロニサラダ、パスタサラダ、ツナサラダ、チキンサラダ、ゴボウサラダ、春雨サラダなどの混ぜ込み型のサラダに対する用途に使用されるのが好適である。なかでも、本発明は表面水分の少ない生鮮野菜類や温野菜類などの野菜を主体として盛り付けたサラダ用の食品用トッピング剤として具体化されることが好ましく、具体的には、グリーンサラダ、コールスロー、シーザーサラダ用の具材入り粉状ドレッシング、粉状調味料、粉状飾りつけ剤として具体化されることがより好ましい。
【0044】
本発明の具材入りの食品用トッピング剤は、例えば次のような比較的簡単な方法により製造される。まず、ロッキングミキサー、ナウターミキサーなどの一般的な乾燥粉粒体混合用機械に、主として素材分離抑制剤としての効果を付与する第1の多糖類粉末及び凝集用可食粉粒を投入して混合し、凝集用可食粉粒を核として複数の前記第1の多糖類粉末を凝集させることで、それらの付着混合物(即ち、素材分離抑制剤)を形成させる(第1混合工程)。次いで、これに乾燥具材や、主として具材付着向上剤としての効果を付与する第2の多糖類粉末、調味粉末を含むその他素材を投入して混合する(第2混合工程)。このように二段階で素材を混合する方法のほか、例えば、乾燥粉粒体混合用機械に上記の全ての素材(第1の多糖類粉末、凝集用可食粉粒、乾燥具材、第2の多糖類粉末、調味粉末を含むその他素材)を一括して投入、混合する方法も採用可能である。後者のように一段階で素材を一括混合する方法であっても、混合物中にて素材分離抑制剤を形成させることができ、十分な素材分離抑制効果及び具材付着向上効果を得ることができる。
【0045】
図1は、本発明の具材入りの食品用トッピング剤の製造方法(例として上記二段階混合法)を説明するための概略図であり、図中においては、乾燥具材1、凝集用可食粉粒2、主として素材分離抑制剤としての効果を付与する第1の多糖類粉末3、調味粉末4、素材分離抑制剤5、主として具材付着向上剤としての効果を付与する第2の多糖類粉末6、食品用トッピング剤7として表している。図1(a)は、第1混合工程の実施前の第1の多糖類粉末3及び凝集用可食粉粒2を示し、図1(b)は、第1混合工程の実施後の素材分離抑制剤を構成する第1の多糖類粉末3及び凝集用可食粉粒2を示している。この工程を経ると、凝集用可食粉粒2を核として複数の前記第1の多糖類粉末3が凝集することで素材分離抑制剤5が形成される。図1(c)は乾燥具材1を示し、図1(d)は調味粉末4を示し、図1(e)は主として具材付着向上剤としての効果を付与する第2の多糖類粉末6を示している。そして、第2混合工程を実施して上記各素材を混合することで、乾燥具材1の表面に複数の素材分離抑制剤5が付着した(いわば、複数の素材分離抑制剤5が乾燥具材1を抱き込んだ)状態の食品用トッピング剤7を得ることができる(図1(f)を参照)。この場合、複数の素材分離抑制剤5の存在によって乾燥具材1表面に凹凸が増え、その凹凸に調味粉末4が引っ掛かりやすくなる。その結果、分離が効果的に抑制され、素材の均一性が高まるものと推測される。また、主として具材付着向上剤としての効果を付与する第2の多糖類粉末6が食品用トッピング剤7に満遍なく付着することにより、被添加食品の水分を吸収することで、具材の被添加食品への十分な付着性を奏する。よって、従来、添加しても被添加食品から脱落して皿の底に溜まってしまい無駄が多く食味向上効果が奏され難かったが、この課題が改善され、無駄なく十分に食味向上効果が奏される食品用トッピング剤7を得ることができる。なお、図1(b)に示す第1混合工程実施後の第1の多糖類粉末3及び凝集用可食粉粒2に対して、先に第2の多糖類粉末6を添加し、その後で残りの素材を添加するという製造手順を採用してもよい。
【実施例】
【0046】
以下、本実施形態の具材入りの食品用トッピング剤、それにおける素材の分離抑制方法及び被添加食品に対する具材の付着性向上方法をより具体化した実施例を示す。
【0047】
[評価試験1]『素材分離抑制剤を構成する多糖類粉末の原料の選択及びかさ比重の範囲の検証』
【0048】
この評価試験1では、素材分離抑制剤として用いる多糖類粉末の原料の選択及びかさ比重の範囲の検証を目的として行った。ここでは、多糖類粉末の原料として10種類のものを用いた(表1参照)。具体的には、デンプン含有物として「おから粉末」を用い、デンプンとして「タピオカデンプン」、「馬鈴薯デンプン」、「コーンスターチ」、「もち米粉デンプン」を用い、加工デンプンとして「リン酸化架橋デンプン」、「アセチル化アジピン酸架橋デンプン」、「酢酸デンプン」、「ヒドロキシプロピルデンプン」を用い、デンプン・加工デンプン混合物として「もち米粉:ヒドロキシプロピルデンプン=80:20の混合物」を用いた(表1A)。さらに、これらの混合物を調製して用いた(表1B)。
【0049】
そして、多糖類粉末に対する凝集用可食粉粒を「すりごま(質量配合率17%)」とし、乾燥具材を「乾燥たまねぎスライス(質量配合率31%)」とし、これらに上記の多糖類粉末を各々配合(質量配合比52%)し、透明なビニール袋の中に一括投入(総量500g)した。次いで、素材が投入されたビニール袋を空気で膨らませた後、手でよく振って十分に混合・攪拌した。その後、乾燥具材の混合物全体への混ざり込み具合を目視で判定した。その結果を表1A、及び表1Bに示す。なお、乾燥たまねぎスライスの粒度は5mmメッシュオンかつ30mmメッシュパスであり、すりごまの粒度は1mmメッシュオンかつ3mmメッシュパスであり、多糖類粉末の粒度は1mmメッシュパスであった。
【0050】
さらに、上記の混合物について、野菜サラダへの具材の付着性について検証した。具体的には、水洗いした後、水を切ったレタス100gに、各混合物15gをふりかけ、軽く混ぜ込み、10分後の生野菜上の具材の分布について外観観察による評価を行った。
【0051】
この評価試験1では、各サンプルの「乾燥具材の混合物全体への混ざり込み具合」を以下の基準で判定した。
×:乾燥具材が混合物中で不均一に分散し、混合物の上部に浮く(不可)
△:乾燥具材が混合物中でやや不均一に分散し、混合物の上部に浮く割合が多い(不可)
○:乾燥具材が混合物中でほぼ均一に分散し、混合物の上部に浮く割合が少ない(可)
◎:乾燥具材が混合物中で均一に分散し、混合物の上部に浮かない(可)
【0052】
各サンプルの「サラダへの具材の付着性」は以下の基準で判定した。
×:生野菜上に具材が付着しない(不可)
△:生野菜上に具材が付着しにくく、皿の底にこぼれ落ちる割合が多い(不可)
△’:生野菜上への付着が強すぎ、分散性が悪い(不可)
○:生野菜上に具材が付着しやすく、皿の底にこぼれ落ちる割合が少ない(可)
◎:生野菜上に具材が付着する(可)
【0053】
具材の混ざりこみ具合の判定結果、及び、生野菜への具材の付着性の判定結果から、両方の効果を奏する総合評価を以下の基準で判定した。
×:不適
△:やや不適
○:適する
◎:特に適する
【0054】
なお、各多糖類粉末の増粘性については、JISの粘度測定法として規格化されている落体式粘度計を用いた方法によって行い、サンプルの落下性を目視によって判定した。
×:落下が速く、増粘性が低い
△:やや落下が速く、やや増粘性が低い
○:やや落下が遅く、やや増粘性が高い
◎:落下が遅く、増粘性が高い
【0055】
【表1A】
【0056】
表1Aに示されるように、いくつか挙げた多糖類粉末のうち、かさ比重が最も大きかったのは、0.48g/cmのもち米粉デンプン(三和澱粉製:商品名「モチールアルファー」)であった。逆に、最も小さかったのは、0.23g/cmのもち米粉:ヒドロキシプロピルデンプン=80:20の混合物(松谷化学製:商品名「ライススターRC」)であった。「乾燥具材の混合物全体への混ざり込み具合」に関しては、かさ比重が0.40g/cmを超える多糖類粉末を用いたサンプルでは、いずれも乾燥具材が均一に分散しておらず、評価「×」と判定された。これに対し、かさ比重が0.20g/cm以上0.40g/cm以下の範囲である多糖類粉末を用いたサンプルでは、いずれも乾燥具材がほぼ均一に分散しており、評価「〇」以上の判定となった。とりわけ、おから粉末(かさ比重が0.26/cm)、ヒドロキシプロピルデンプン(かさ比重が0.27g/cm)、もち米粉:ヒドロキシプロピルデンプン=80:20の混合物(かさ比重が0.23g/cm)を用いたサンプルについては評価「◎」の判定となり、素材分離抑制剤において主として素材分離抑制剤としての効果付与のために用いる多糖類粉末の原料として、適性が高いと結論付けられた。
しかしながら、生野菜への具材の付着性については、上記の多糖類粉末のうち、もち米粉:ヒドロキシプロピルデンプン=80:20の混合物(かさ比重が0.23g/cm)を用いたサンプル(評価「◎」)以外においては、評価「○」の判定となり、弱いながら具材付着向上剤としての適性が認められたものの、その他の多糖類粉末においては、評価「△」、「×」以下の判定となり、具材付着向上剤としての適性は低いものであった。
【0057】
そこで、もち米粉:ヒドロキシプロピルデンプン=80:20の混合物の具材付着効果(総合評価「◎」)を参考として、具材付着効果を有するデンプン混合物のより広い組み合わせの探索を目的として、上記かさ比重の異なる各多糖類粉末を混合したものを調製し(表1B)、評価を行った。その結果を表1Bに示す。
【0058】
【表1B】
【0059】
かさ比重が0.23g/cmと最も小さい、もち米粉:ヒドロキシプロピルデンプン=80:20の混合物(松谷化学製:商品名「ライススターRC」)と、かさ比重が0.30/cm以上の多糖類粉末を混合した場合、具材の混ざりこみ具合の判定では全て「○」となり、素材分離抑制剤としての効果付与のために用いる多糖類粉末の原料として、適性があると結論付けられた。
【0060】
しかし、生野菜への具材の付着性についての判定においては、かさ比重が0.23g/cmである「ライススターRC」に、かさ比重が0.30/cm以上、0.40/cm以下の多糖類粉末を混合した場合には、全て「△‘」となり、具材付着向上剤として用いる多糖類粉末の原料としては、付着性が強すぎて適性が低いと結論付けられた。一方で、かさ比重が0.23g/cmである「ライススターRC」に、かさ比重が0.40/cmより大きい素材を混合した場合には、全て「◎」となり、具材付着向上剤としての効果付与のために用いる多糖類粉末の原料として、付着性が適当で、適性が高いと結論付けられた。
【0061】
次いで、かさ比重が0.23g/cmである「ライススターRC」の代わりに、かさ比重が0.30g/cm以上0.40g/cm以下の多糖類粉末と、かさ比重が0.40/cmより大きい多糖類粉末と混合した場合においては、具材の混ざりこみ具合の判定では全て「○」となり、素材分離抑制剤としての効果付与のために用いる多糖類粉末の原料として、適性があると結論付けられた。また、生野菜への具材の付着性についての判定においては、後者の多糖類粉末のかさ比重が0.30/cm以上0.40/cm以下である場合には、全て「○」となり、具材付着向上剤としての効果付与のために用いる多糖類粉末の原料として、適性があると結論付けられた。
【0062】
以上の結果から、素材分離抑制剤としての効果と具材付着向上剤としての効果とを合わせて奏する多糖類粉末としては、かさ比重が0.23g/cmである「ライススターRC」(もち米粉:ヒドロキシプロピルデンプン=80:20の混合物)、及び、かさ比重が0.40/cm以下である多糖類粉末と、さらに粒径が小さくかさ比重が0.40/cmより大きく増粘性を有する多糖類粉末を混合したものが好ましいことがわかった。また、前記「ライススターRC」と、かさ比重が、0.40/cmより大きい多糖類粉末との混合物であるものにおいても、より具材付着効果が向上され、好ましいことがわかった。即ち、かさ比重が0.40g/cm以下である第1の多糖類粉末と、第1の多糖類粉末よりも粒径が小さく、かさ比重が0.40g/cmより大きく、増粘性を有する第2の多糖類粉末との混合物が好ましいと結論付けられた。
【0063】
[評価試験2]『凝集用可食粉粒の混合比の範囲の検証』
【0064】
この評価試験2では、素材分離抑制剤として用いる凝集用可食粉粒の混合比の範囲の検証を目的として行った。ここでは、評価試験1の結果に基づき、第1の多糖類粉末として、松谷化学製の商品名「ライススターRC(もち米粉:ヒドロキシルプロピルデンプンの質量混合比が80:20であるもの)」、及び第2の多糖類粉末として、三和澱粉製の商品名「モチールアルファー(もち米粉デンプン)」を質量比で67:33で混合した多糖類粉末として選択した。そして、凝集用可食粉粒を「すりごま」とし、乾燥具材を「乾燥たまねぎスライス(質量配合率31%)」としたうえで、「ライススターRC」と「モチールアルファーとを混合した多糖類粉末、及び「すりごま」の比率を表2のように変化させて、評価試験1と同様の手法で試験及び評価を行った。その結果を表2に示す。なお、乾燥たまねぎスライスの粒度は5mmメッシュオンかつ30mmメッシュパスであり、すりごまの粒度は1mmメッシュオンかつ3mmメッシュパスであり、多糖類粉末である「ライススターRC」の粒度は1mmメッシュパス、「モチールアルファー」の粒度は0.5mmメッシュパス、であった。
【0065】
【表2】
【0066】
その結果、表2に示されるように、多糖類粉末と凝集用可食粉粒との質量配合比は、20:80〜80:20の範囲であることが好ましく(即ち評価「〇」以上と判定)、30:70〜80:20の範囲であることがさらに好ましい(即ち評価「◎」と判定)、と結論付けられた。
【0067】
[評価試験3]『具材付着向上剤としての効果付与のための多糖類粉末の混合比の範囲の検証』
【0068】
この評価試験3では、評価試験1で選抜された多糖類粉末(即ち、具材付着向上剤としての効果付与のための第2の多糖類粉末;本評価試験3においては便宜上「具材付着向上剤」とも称する。)のトッピング剤総量中における混合比の範囲の検証を目的として行った。ここでは、評価試験1の結果に基づき、第1の多糖類粉末として、松谷化学製の商品名「ライススターRC(もち米粉:ヒドロキシルプロピルデンプンの質量混合比が80:20であるもの)」、及び第2の多糖類粉末として、三和澱粉製の商品名「モチールアルファー(もち米粉デンプン)」を多糖類粉末として選択し、凝集用可食粉粒を「すりごま(質量配合率17%)」として選択し、多糖類粉末と凝集用可食粉粒との質量配合比を75:25とした。乾燥具材を「乾燥たまねぎスライス(質量配合率20%)」としたうえで、「ライススターRC」と「モチールアルファー」の比率を表3のように変化させて、評価試験1と同様の手法で試験及び評価を行った。その結果を表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
表3に示されるように、トッピング剤総量に対する具材付着向上剤(第2の多層類粉末)の添加量は、2.5質量%より小さいと、具材付着向上剤の効果が足りず、具材が脱落しやすいことがわかった。また、30%より大きいと、具材付着向上剤の効果が強すぎてトッピング剤が凝集し食材に均一に分散せず、被添加食品の食味向上効果の改善がなされないことがわかった。従って、具材付着向上剤のトッピング剤総量に対する質量混合比は、2.5%〜30%の範囲であることが好ましく(即ち評価「〇」以上と判定)、5%〜20%の範囲であることがより好ましく(即ち評価「◎」と判定)、10%程度が特に好ましいと結論付けられた。
【0071】
[評価試験4]『凝集用可食粉粒の原料の検証』
【0072】
この評価試験4では、素材分離抑制剤として用いる凝集用可食粉粒の原料の検証を目的として行った。ここでは、評価試験1の結果に基づき、第1の多糖類粉末として、松谷化学製の商品名「ライススターRC」、及び第2の多糖類粉末として、三和澱粉製の商品名「モチールアルファー」を選択した。また、「モチールアルファー」の質量配合割合を評価試験3の結果に基づき、多糖類粉末総量中の2.5質量%〜30質量%の範囲内に設定し、かつ、評価試験2の結果に基づき、多糖類粉末総量と凝集用可食粉粒との質量配合比を20:80〜80:20の範囲内に設定した。このようにして表4A〜表4Jの各凝集用可食粉粒による様々な乾燥具材の素材分離抑制効果の検証を行った。具体的には、乾燥具材として「乾燥たまねぎスライス」を1種のみ用いるか、あるいは、「乾燥にんにく粒」及び「乾燥ベーコン」から選択される2種を組み合わせて用いた。なお、「乾燥たまねぎスライス」、及び「乾燥ベーコン」のサイズは、5mmメッシュオンかつ30mmメッシュパスであり、「乾燥にんにく粒」のサイズは1mmメッシュオンかつ10mmメッシュパスであった。そして、評価試験1と同様の手法で試験及び評価を行った結果を表4A〜表4Jにそれぞれ示す。
【0073】
なお、各凝集用可食粉粒の検証は、多糖類粉末を付着すると想定された、1)油分を含むものや、2)少量の水分を含むものであって、手触りとしてややべとつきが感じられることを指標として前選抜したものを試験に供した。「味付け枝豆パウダー」は、製造工程において、パーム油を含浸させた後に乾燥し、粉砕したものである。増粘剤である「カラギーナン」及び「デキストリン(DE9〜12)」、結着剤である「ポリリン酸ナトリウム」は、事前に十分量の加水をして溶解させた各成分溶解物を金属性のバットに薄く広げ、40℃で乾燥させ、6質量%以上10質量%以下の水分含量まで乾燥させたものをミルで粉粒砕したものを使用した。ちなみに、各乾燥具材の粒度は、1mmメッシュオンかつ30mmメッシュパスの範囲に入るものであり、各凝集用可食粉粒の粒度はいずれも1mmメッシュオンかつ3mmメッシュパスであり、多糖類粉末である「ライススターRC」の粒度は1mmメッシュパス、「モチールアルファー」の粒度は0.5mmメッシュパス、であった。
【0074】
【表4A】
【0075】
【表4B】
【0076】
【表4C】
【0077】
【表4D】
【0078】
【表4E】
【0079】
【表4F】
【0080】
【表4G】
【0081】
【表4H】
【0082】
【表4I】
【0083】
【表4J】
【0084】
その結果、表4A及び表4Bに示すように、いずれも評価「◎」と判定されたことから、凝集用可食粉粒として、天然に油脂を含む「すりごま」、「チキンエキスパウダー」を使用できること、及びそれらを併用できることがわかった。表4Cに示すように、評価「◎」と判定されたことから、凝集用可食粉粒として、人為的に油脂を含浸させた「味付け枝豆パウダー」を使用できることがわかった。 表4Dに示されるように、評価「◎」と判定されたことから、凝集用可食粉粒として、天然に油脂を含む「すりごま」と、天然に少量の水分を含有する「粗塩」とを併用できることがわかった。表4E、表4F、表4Gに示されるように、いずれも評価「◎」と判定されたことから、凝集用可食粉粒として、天然に少量の水分を含有する「粗塩」、「粉末醤油」、「黒糖」を使用できることがわかった。表4H、表4I、表4Jによれば、いずれも評価「◎」と判定されたことから、凝集用可食粉粒として、人為的に少量の水分を含浸させた「カラギーナン(増粘剤)」、「デキストリン(DE9〜12)(増粘剤)」、「ポリリン酸ナトリウム(結着剤)」を使用できることがわかった。
【0085】
また、以上の結果から、凝集用可食粉粒、及び具材付着向上剤としての効果を付与する第2の多糖類粉末の添加は、使用する乾燥具材の種類を問わず有効であり、また、異種の乾燥具材を併用した場合であっても有効であることがわかった。
【0086】
[評価試験5]『乾燥具材と、素材分離抑制剤の混合比の範囲の検証』
【0087】
この評価試験5では、乾燥具材と素材分離抑制剤の混合比の範囲の検証を目的として行った。ここでは、評価試験1の結果に基づき、第1の多糖類粉末として、松谷化学製の商品名「ライススターRC」を素材分離抑制剤を構成する多糖類粉末を選択するとともに、第2の多糖類粉末として、三和澱粉製の商品名「モチールアルファー」を具材の付着性を向上させる効果を奏する多糖類粉末を選択し、評価試験2の結果に基づき、「すりごま」を凝集用可食粉粒として選択し、それらの質量配合比を80:20とした。また、評価試験3の結果に基づき、乾燥具材に対する素材分離抑制剤の質量配合比を表5のように変化させて、食品用トッピング剤のサンプルを作製するとともに、評価試験1と同様の手法でそれらに対する試験及び評価を行った。その結果を表5に示す。なお、本評価試験5においては、具材付着向上剤としての効果付与のための第2の多糖類粉末のことを便宜上「具材付着向上剤」とも称する。従って、表中で「乾燥具材に対する素材分離抑制剤の質量配合比」と言った場合には、「乾燥具材に対する素材分離抑制剤(ただし具材付着向上剤としての第2の多糖類粉末を除くもの)の質量配合比」を意味するものとする。後述する評価試験6、7についても同様である。
【0088】
その他調味粉末としては、「風味粉末(マヨネーズ風味粉末)(調味粉末総量中の64質量%)」、「塩顆粒(塩味づけ)(同18質量%)」、「グラニュー糖(甘味づけ)(同18質量%)」などからなる混合物を55質量%用いた。粒度はいずれも1mmメッシュパスである。なお、これら調味粉末は、本発明の素材分離抑制効果には関係のないものである。
【0089】
【表5】

かっこ内の数値は乾燥具材と素材分離抑制剤との質量混合比を示す。
【0090】
その結果、表5に示されるように、乾燥具材と、素材分離抑制剤との質量混合比は、4:96〜38:62の範囲であることが好ましく(即ち評価「〇」以上と判定)、4:96〜30:70の範囲であることがより好ましい(即ち評価「◎」と判定)、と結論付けられた。
【0091】
[評価試験6]『トッピング剤から乾燥具材を除いた素材のかさ比重の範囲の検証』
【0092】
この評価試験6では、トッピング剤から乾燥具材を除いた素材のかさ比重の範囲の検証を目的として行った。ここでは、評価試験1の結果に基づき、第1の多糖類粉末として、「ライススターRC」を選択し、評価試験2の結果に基づき、凝集用可食粉粒として「すりごま」を選択し、それらの質量配合比を80:20とした。さらに、評価試験1の結果に基づき、第2の多糖類粉末として、三和澱粉製の商品名「モチールアルファー」として選択した。素材分離抑制剤と具材付着向上剤(第2の多糖類粉末)と調味粉末との質量配合比を表6のように変化させて、食品用トッピング剤のサンプルを作製した。次いで、作製されたトッピング剤から乾燥具材のみを篩い分けて除去し、乾燥具材を除いた素材の水分を5質量%に調整した後、メッシュを通過した素材のかさ比重を測定した。その他調味粉末の組成は、評価試験4と同様とした。
【0093】
【表6】
【0094】
その結果、表6に示されるように、メッシュの通過により乾燥具材を除いた素材は、水分を5質量%に調整した時のかさ比重が0.45g/cm以下の範囲(具体的に、ここでは0.33g/cm〜0.45g/cm)となることが特徴の一つであることがわかった。
【0095】
[評価試験7]『本発明の効果の検証』
【0096】
以上の条件検討結果に基づいて、以下、具材入りの食品用トッピング剤を調製し、乾燥具材と、調味粉末と、多糖類粉末と凝集用可食粉粒とを混合してなる素材分離抑制剤との混合安定性、及び具材付着向上剤としての効果を付与する多糖類粉末による被添加食品への具材の付着性について検証を行った。ここでは、生野菜サラダ用である具材入りの食品用トッピング剤の一例として、「具材入り粉状ドレッシング」を表7のように調製し、他の処方例との比較を実施した。
【0097】
検証方法としては、表7の各素材を以下の質量配合率で、不透明なパウチ容器中に一括投入(総量250g)し、パウチ容器を空気で膨らませた後、手でよく振って十分に混合・攪拌した。その後、内容物を、20gずつ、連続して10回分取し、乾燥具材を篩い分けした後、各回の乾燥具材の質量を測定した。その値を基に、乾燥具材含有率平均値(%)、乾燥具材含有率のばらつき指標(3σ)を計算し、評価試験1と同様の基準で、乾燥具材とその他素材との素材分離抑制効果の程度を判定した。さらに、各混合物を生野菜サラダに振り掛けて、軽く混ぜ込み、野菜表面への具材の付着状態を目視で判定した。乾燥具材の混合物全体への混ざり込み具合、及び乾燥具材の野菜への付着性は[評価試験1]と同じ基準を用い、判定した。
【0098】
【表7】
【0099】
その結果、表7に示されるように、サラダ用の「具材入り粉状ドレッシング」において、本発明を適用した実施例1の製品は、乾燥具材含有率のばらつき指標(3σ)が著しく小さく、乾燥具材とその他素材との素材分離抑制効果が十分に奏されていることがわかった。さらに、乾燥具材の生野菜への付着性も良いことがわかった。
【0100】
これに対し、「凝集用可食粉粒なし」とした比較例1、「分離抑制剤構成多糖類粉末なし」とした比較例2では、上記ばらつき指標(3σ)が実施例1に比べて大きくなっており、乾燥具材とその他素材との素材分離抑制効果が十分に奏されていなかった。ゆえに、それぞれ単独では素材分離抑制効果は奏されず、素材分離抑制効果を奏するためには、多糖類粉末と凝集用可食粉粒とを併用すること(即ち、これらの併用により素材分離抑制剤を形成すること)が必須であることが実証された。
【0101】
同様に、「調味粉末の顆粒化技術」である比較例3(即ち従来技術)においても、乾燥具材とその他素材との素材分離抑制効果が不十分であり、これに対しても、本発明を適用した実施例1の製品は、素材分離抑制効果が著しく高いことがわかった。なお、乾燥具材含有率平均値(%)、(対質量配合率)については、各実施例及び各比較例間にて大差はなく、許容範囲で問題はないと判断された。
【0102】
なお、「具材付着向上剤なし」とした実施例2においては、実施例1と同様に素材分離抑制効果が著しく高いものの、被添加食品における具材の付着性にやや劣り、実施例1ほど具材の付着が起こらず、トッピング剤の添加による食味改善効果は認められたものの、具材付着向上剤の混合が、具材の付着性向上に基づくサラダの食味改善効果に有効であることが実証された。ゆえに、サラダのような表面水分の少ない生野菜類に具材を十分に付着させ、具材入り乾燥食品の添加により食味向上効果を改善するに際して、粒径が小さく少量の増粘性を有する多糖類粉末を混合することがより好ましいことが実証された。
【0103】
[結論]
以上の結果を総合すると、本実施形態の各実施例によれば、素材の複雑な前処理操作を行わなくても、粒度の異なる乾燥具材と調味粉末とが分離しにくく、コスト性や風味にも優れ、被添加食品に対する具材の付着が向上されて被添加食品の食味を向上することができる具材入りの食品用トッピング剤を提供することができる。なお、本発明は上記実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0104】
1…乾燥具材
2…凝集用可食粉粒
3…(素材分離抑制剤を構成するとともに主として素材分離抑制効果を付与する)第1の多糖類粉末
4…調味粉末
5…素材分離抑制剤
6…(素材分離抑制剤を構成するとともに主として具材付着向上効果を付与する)第2の多糖類粉末
7…食品用トッピング剤
図1