特許第6692025号(P6692025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6692025
(24)【登録日】2020年4月16日
(45)【発行日】2020年5月13日
(54)【発明の名称】直線変位測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/12 20060101AFI20200427BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20200427BHJP
【FI】
   G01D5/12 K
   G01B21/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-193963(P2015-193963)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-67629(P2017-67629A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100080252
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 征四郎
(72)【発明者】
【氏名】菊池 一志
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−22018(JP,A)
【文献】 特開昭61−243309(JP,A)
【文献】 特開昭62−282212(JP,A)
【文献】 特開平5−87552(JP,A)
【文献】 特開2005−37201(JP,A)
【文献】 特開2005−127728(JP,A)
【文献】 特開平7−190053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/38
G01B 21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線的に相対移動する二つの対象物の一方に取り付けられる長手状のメインスケールと、
他方の前記対象物に取り付けられ、前記メインスケールに沿ってスライド移動するとともに前記メインスケールに対する相対変位量を検出するスライダと、を具備する直線変位測定装置であって、
前記スライダは、
前記メインスケール上をこのメインスケールに沿って走行する走行体と、
前記他方の対象物に取り付けられるキャリッジ部と、
前記走行体と前記キャリッジ部とを連結する連結手段と、を備え、
前記連結手段は、前記走行体と前記キャリッジ部との相対変位を許容し、かつ、前記走行体を前記メインスケールに向けて付勢しており、
前記スライダは、さらに、前記走行体と前記キャリッジ部との相対変位が規定の許容範囲を超えたことを検出するミスアライメント検出手段を備え
前記連結手段は、球継手を介して前記走行体と前記キャリッジ部との間を連結するように配設されたコネクティングロッドを有し、
前記ミスアライメント検出手段は、前記コネクティングロッドの変位を所定範囲内に規制するように前記コネクティングロッドの近傍に配設された突設片を有し、
前記突設片は、前記走行体のフレームにおいて、前記コネクティングロッドを間に受け入れるように所定距離をあけて対向するように配置されている
ことを特徴とする直線変位測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の直線変位測定装置において、
前記ミスアライメント検出手段は、前記コネクティングロッドを間にして前記走行体のフレームとは反対側に固定的に配設された押え板を有する
ことを特徴とする直線変位測定装置。
【請求項3】
直線的に相対移動する二つの対象物の一方に取り付けられる長手状のメインスケールと、
他方の前記対象物に取り付けられ、前記メインスケールに沿ってスライド移動するとともに前記メインスケールに対する相対変位量を検出するスライダと、を具備する直線変位測定装置であって、
前記スライダは、
前記メインスケール上をこのメインスケールに沿って走行する走行体と、
前記他方の対象物に取り付けられるキャリッジ部と、
前記走行体と前記キャリッジ部とを連結する連結手段と、を備え、
前記連結手段は、前記走行体と前記キャリッジ部との相対変位を許容し、かつ、前記走行体を前記メインスケールに向けて付勢しており、
前記スライダは、さらに、前記走行体と前記キャリッジ部との相対変位が規定の許容範囲を超えたことを検出するミスアライメント検出手段を備え、
前記ミスアライメント検出手段は、
前記走行体および前記キャリッジ部の一方に設けられた孔部と、
前記走行体および前記キャリッジ部の他方に設けられたピンと、を備え、
前記ピンの頭部が前記孔部に遊嵌するようになっている
ことを特徴とする直線変位測定装置。
【請求項4】
直線的に相対移動する二つの対象物の一方に取り付けられる長手状のメインスケールと、
他方の前記対象物に取り付けられ、前記メインスケールに沿ってスライド移動するとともに前記メインスケールに対する相対変位量を検出するスライダと、を具備する直線変位測定装置であって、
前記スライダは、
前記メインスケール上をこのメインスケールに沿って走行する走行体と、
前記他方の対象物に取り付けられるキャリッジ部と、
前記走行体と前記キャリッジ部とを連結する連結手段と、を備え、
前記連結手段は、前記走行体と前記キャリッジ部との相対変位を許容し、かつ、前記走行体を前記メインスケールに向けて付勢しており、
前記スライダは、さらに、前記走行体と前記キャリッジ部との相対変位が規定の許容範囲を超えたことを検出するミスアライメント検出手段を備え、
前記連結手段は、球継手を介して前記走行体と前記キャリッジ部との間を連結するように配設されたコネクティングロッドを有し、
前記ミスアライメント検出手段は、所定範囲を超えた前記コネクティングロッドの変位を検出するセンサである
ことを特徴とする直線変位測定装置。
【請求項5】
直線的に相対移動する二つの対象物の一方に取り付けられる長手状のメインスケールと、
他方の前記対象物に取り付けられ、前記メインスケールに沿ってスライド移動するとともに前記メインスケールに対する相対変位量を検出するスライダと、を具備する直線変位測定装置であって、
前記スライダは、
前記メインスケール上をこのメインスケールに沿って走行する走行体と、
前記他方の対象物に取り付けられるキャリッジ部と、
前記走行体と前記キャリッジ部とを連結する連結手段と、を備え、
前記連結手段は、前記走行体と前記キャリッジ部との相対変位を許容し、かつ、前記走行体を前記メインスケールに向けて付勢しており、
前記スライダは、さらに、前記走行体と前記キャリッジ部との相対変位が規定の許容範囲を超えたことを検出するミスアライメント検出手段を備え、
前記連結手段は、
球継手を介して前記走行体と前記キャリッジ部との間を連結するように配設されたコネクティングロッドと、
前記コネクティングロッドを前記メインスケールの側に向けて付勢する弾性部材と、を有し、
前記ミスアライメント検出手段は、前記コネクティングロッドまたは前記弾性部材に付設された歪みゲージである
ことを特徴とする直線変位測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線変位測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業機械において精密な位置制御を行うため、変位測定装置、いわゆるエンコーダが利用される。
直線変位測定装置100を図1に示す。直線変位測定装置100は、長手状のスケール部200と、スケール部200に対して相対的にスライド移動可能に設けられたスライダ300と、を有する。
【0003】
直線変位測定装置100は、例えば、移動ステージ90に取り付けられる。移動ステージ90が、基台91と、基台91に対してスライド移動可能なステージ92と、で構成されているとする。このとき、スケール部200がステージ92の側端面にネジ止めされ、スライダ300が基台91にネジ止めされる。この構成により、基台91に対するステージ92の相対変位が精密に測定される。
【0004】
図2は、図1中のII−II線断面図である。
スケール部200は、長手状のメインスケール210(図2参照)と、メインスケール210を収容するスケール収容筐体220と、を備える。メインスケール210は、主としてガラス基板で構成されており、測長軸方向に目盛りが形成されている。光電式の例でいうと目盛りは回折格子である。
【0005】
スケール収容筐体220は中空かつ長尺状であり、例えばアルミニウム等の(軽量の)金属製であることが多い。スケール収容筐体220は、その側面に軸方向に沿ったスリット222を有し、このスリット222を介して内側と外側とが繋がっている。メインスケール210は、スケール収容筐体220の内部に取り付け固定される。そして、スケール収容筐体220には、取り付け固定用の孔が複数穿設されており、この孔によりスケール収容筐体220はステージ92にネジ止めされる。
【0006】
スライダ300は、スケール収容筐体220の長手方向に相対移動可能に設けられており、メインスケール210に対する相対変位量あるいは相対位置を検出する。スライダ300は、メインスケール210上をメインスケール210に沿って走行する走行体400と、スケール収容筐体220の外部にあってスケール部200に沿ってスライド移動するキャリッジ部310と、走行体400とキャリッジ部310とを連結する連結手段500と、を備える。
【0007】
走行体400には検出部が搭載され、検出部はメインスケール210に対する相対変位量を検出する。連結手段500は、ある程度の角度変動を吸収できる継手であり、走行体400とキャリッジ部310との相対的な変位を許容できるようになっている。(ここでは、球継手を例示している。)
【0008】
移動ステージ92はリニアガイド等によって真直にガイドされているのに対し、例えばガラス製のメインスケール210の方にはうねりが生じることがある。走行体400とキャリッジ部310との間である程度の相対変位を許容しないと、走行体400がメインスケール210に噛み付いたり、走行体400がメインスケール210から浮き上がったりしてしまう。そこで、走行体400とキャリッジ部310との間はある程度の自由度を持つ継手で連結されている。また、走行体400は、メインスケール210に対向した状態を保つように、バネ(線バネ)によってメインスケール210に押し付けられている。
【0009】
この構成において、ステージ92がスライド移動すると、これに伴ってスケール部200とキャリッジ部310とが相対変位する。連結手段500によってキャリッジ部310と走行体400とが連結されているので、キャリッジ部310とともに走行体400がメインスケール210に対して相対移動する。このとき、検出部がメインスケール210に対する相対変位量を検出し、外部に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−301541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
直線変位測定装置100を対象物(例えば移動ステージ90や工作機械等)に取り付けるにあたっては、規定の設置公差内にしなければならない。しかし実際には、ユーザにより、規定の設置公差を超えて非平行だったり、ゆがんだりした状態で取り付けられてしまうことがある。規定の設置公差を超えていても、継手(連結手段500)の働きがゆがみや非平行を吸収してしまい、走行体400がメインスケール210の上を走行できてしまう。すると、測定値が得られてしまうのであるが、この測定値を信頼して対象物(例えば移動ステージ90や工作機械等)の制御を行ってしまうと、当然のことながら正しい結果は得られない。あるいは、規定の設置公差を超えていると、直線変位測定装置100を構成する部品同士が擦れたりぶつかったりする場合があり、故障の原因になるおそれもある。しかし、ユーザがこの問題に気がつかないまま、加工誤差等の不良や故障が生じてしまうことがある。
【0012】
本発明の目的は、設置不備の場合にはユーザがそのことに気付くようにする直線変位測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の直線変位測定装置は、
直線的に相対移動する二つの対象物の一方に取り付けられる長手状のメインスケールと、
他方の前記対象物に取り付けられ、前記メインスケールに沿ってスライド移動するとともに前記メインスケールに対する相対変位量を検出するスライダと、を具備する直線変位測定装置であって、
前記スライダは、
前記メインスケール上をこのメインスケールに沿って走行する走行体と、
前記他方の対象物に取り付けられるキャリッジ部と、
前記走行体と前記キャリッジ部とを連結する連結手段と、を備え、
前記連結手段は、前記走行体と前記キャリッジ部との相対変位を許容し、かつ、前記走行体を前記メインスケールに向けて付勢しており、
前記スライダは、さらに、前記走行体と前記キャリッジ部との相対変位が規定の許容範囲を超えたことを検出するミスアライメント検出手段を備える
ことを特徴とする。
【0014】
本発明では、
前記ミスアライメント検出手段は、前記コネクティングロッドの変位を所定範囲内に規制するように前記コネクティングロッドの近傍に配設された突設片である
ことが好ましい。
【0015】
本発明では、
前記突設片は、前記走行体のフレームにおいて、前記コネクティングロッドを間に受け入れるように所定距離をあけて対向するように配置されている
ことが好ましい。
【0016】
本発明では、
前記ミスアライメント検出手段は、前記コネクティングロッドを間にして前記走行体のフレームとは反対側に固定的に配設された押え板である
ことが好ましい。
【0017】
本発明では、
前記ミスアライメント検出手段は、
前記走行体および前記キャリッジ部の一方に設けられた孔部と、
前記走行体および前記キャリッジ部の他方に設けられたピンと、を備え、
前記ピンの頭部が前記孔部に遊嵌するようになっている
ことが好ましい。
【0018】
本発明では、
前記連結手段は、球継手を介して前記走行体と前記キャリッジ部との間を連結するように配設されたコネクティングロッドを有し、
前記ミスアライメント検出手段は、所定範囲を超えた前記コネクティングロッドの変位を検出するセンサである
ことが好ましい。
【0019】
本発明では、
前記連結手段は、
球継手を介して前記走行体と前記キャリッジ部との間を連結するように配設されたコネクティングロッドと、
前記コネクティングロッドを前記メインスケールの側に向けて付勢する弾性部材と、を有し、
前記ミスアライメント検出手段は、前記コネクティングロッドまたは前記弾性部材に付設された歪みゲージである
ことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】直線変位測定装置を示す図。
図2図1中のII−II線断面図。
図3】スライダの斜視図。
図4】スライダの斜視図。
図5】スライダをうら面側から見た図。
図6】走行体を示す斜視図。
図7】スケールがステージに対してやや傾いて取り付けられた様子を例示する図。
図8】スライダとメインスケールとの関係を模式的に示す図。
図9】従来の走行体がスケールに追従する様子を示す図。
図10】第2実施形態を示す図。
図11】第2実施形態を示す図。
図12】第3実施形態を示す図。
図13】第4実施形態を例示する図。
図14】第5実施形態を例示する図。
図15】第6実施形態を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本実施形態の特徴は主としてスライダ300の構成にあり、スケール部200については背景技術と同じであるので、スケール部200についての説明は割愛する。
【0022】
図3図4は、スライダ300の斜視図である。
図5は、スライダ300をうら面側から見た図である。
【0023】
スライダ300は、メインスケール210上をメインスケール210に沿って走行する走行体400と、スケール収容筐体220の外部にあってスケール部200に沿ってスライド移動するキャリッジ部310と、走行体400とキャリッジ部310とを連結する連結手段500と、規定を超えた設置ズレを検出するミスアライメント検出手段600と、を備える。
【0024】
図6は、スライダ300からキャリッジ部310を外して、走行体400と連結手段500の一部とを示す斜視図である。
走行体400は、ベースフレーム部410と、複数のローラ421−425と、ベースフレーム部410に取り付けられた検出部430と、を備える。
【0025】
ベースフレーム部410は、全体的には矩形の枠体である。
ベースフレーム部410のうちメインスケール210に対向する側の面をベースフレーム部410のおもて面とする。
【0026】
複数のローラがベースフレーム部410に軸支されている。ここでは、5つのローラが設けられている。ここで、メインスケール210のうち走行体400に対向する側の面をメインスケール210のおもて面とする。5つのローラのうち、3つがメインスケール210のおもて面に当たり、二つのローラがメインスケール210に側面に当たる。メインスケール210の側面に当たるローラをサイドローラ421、422とし、メインスケール210のおもて面に当たるローラを正面ローラ423、424、425とする。
【0027】
ここで、方向の説明を分かりやすくするため、座標軸を設定する。図3において、メインスケール210の測長軸に沿ってX軸をとり、メインスケール210の幅方向にY軸をとり、メインスケール210のうら面からおもて面に向かう方向をZ軸とする。また、図3中で、上、下、前、後ろを規定し、Y軸の正方向を上、Y軸の負方向を下、X軸の正方向を前、X軸の負方向を後ろ、とする。
【0028】
いま、メインスケール210の側面(図3図4で下側になっているスケールの側面)が基準面となっており、真直かつ平坦面に仕上げられている。サイドローラ421、422は、このメインスケール210の下側側面にあたる。二つのサイドローラ421、422は、ベースフレーム部410の下側辺において前方と後方とにそれぞれ配設されており、その回転軸はZ軸に平行である。この二つのサイドローラ421、422がメインスケール210の下側側面に当たりながら転動することで、走行体400はメインスケール210にガイドされて真直に移動するようになる。
【0029】
三つの正面ローラ423、424、425は、ベースフレーム部410の上側辺の前側と後側、さらに、下側辺のほぼ中央、にそれぞれ配設されており、その回転軸はY軸に平行である。
この三つの正面ローラ423、424、425がメインスケール210のおもて面に当たりながら転動することで、走行体400はメインスケール210に対向した状態を保って移動するようになる。
【0030】
検出部430は、ベースフレーム部410のおもて面に取り付けられ、検出部430はメインスケール210に対向配置される。検出部430は、メインスケール210の目盛りを読み取り、メインスケール210に対する相対変位量または相対位置を検出する。光電式であれば、検出部430は、光源、インデックススケール、受光素子アレイ等を搭載している。場合によっては、検出部430にICチップを搭載してもよい。
【0031】
走行体400がメインスケール210に対向した状態を保って走行すれば、すなわち、検出部430もメインスケール210に対向した状態を保って移動することになる。詳しくいうと、サイドローラ421、422がメインスケール210の下側側面に当たり、かつ、正面ローラ423、424、425がメインスケール210のおもて面に当たっている状態のとき、検出部430とメインスケール210の目盛りとが対向するようにメインスケール210および走行体400は設計されている。
【0032】
キャリッジ部310は、スケール収容筐体220の外部にあって、対象物(例えば基台91)に取り付け固定される。
ここでは、キャリッジ部310は、基台91にネジ止めされている。
【0033】
連結手段500は、走行体400とキャリッジ部310とを連結しつつ、走行体400をメインスケール210に押し付ける。
連結手段500は、コネクティングロッド505と、二つの球継手510、520と、ネック部530と、線バネ(弾性部材、付勢手段)540と、を備える。
【0034】
コネクティングロッド505は、ベースフレーム部410のうら面側においてX軸と平行に配設されている。第1球継手510は、ベースフレーム部410の長手方向の略中央部に設けられており、コネクティングロッド505の基端は、第1球継手510によって、ベースフレーム部410のうら面のほぼ中央に連結されている。ここでは、ベースフレーム部410のうら面のほぼ中央に球511を受ける球受け凹部512が設けられている。そして、コネクティングロッド505の基端に設けられた球511が、この球受け凹部512に嵌められている。なお、球511が球受け凹部512から容易に外れないように、押え板513で球511を球受け凹部512に押し付けている。
【0035】
コネクティングロッド505の先端はベースフレーム部410の前側端よりもさらに長く突き出ており、コネクティングロッド505の先端は第2球継手520に連結されている。
第2球継手520については後述する。
【0036】
ネック部530は、キャリッジ部310に一体的に設けられており、スケール収容筐体220のスリット222を通ってスケール収容筐体220の内側に入る。そして、ネック部530は、ベースフレーム部410のうら面側でベースフレーム部410の前方近傍において立ち上がる連結ヘッド部531を有する。連結ヘッド部531は、コネクティングロッド505の先端に接続される接続片部532と、コネクティングロッド505に対して押し付け力を生じさせるための掛止片部533と、を有する。接続片部532は、ベースフレーム部410の前方にあり、第2球継手520によってコネクティングロッド505の先端と連結されている。ここでは、コネクティングロッド505の先端に球521があり、接続片部532に球受け凹部522があり、球521が球受け凹部522に嵌め込まれるようになっている。球521が球受け凹部522から容易に外れないように、押え板523で球521を球受け凹部522に押し付けている。また、接続片部532には、さらに、X軸に平行な挿通孔534が設けられている。この挿通孔534および掛止片部533の作用については次に説明する。
【0037】
線バネ(付勢手段)540は、コネクティングロッド505の先端と、前記掛止片部533と、の間に介装されている。線バネ(付勢手段)540の基端がコネクティングロッド505の先端に取り付けられ、線バネ540の先端が掛止片部533に係合している。具体的には、線バネ540は、コネクティングロッド505の先端から後方に折り返して前記挿通孔534を通り、前記掛止片部533に係合している。
【0038】
なお、図3図5を見てわかる通り、線バネ540は、コネクティングロッド505と平行ではなく、基端から先端に向かうに従ってやや斜め下方に下がっている。掛止片部533とコネクティングロッド505の先端との間で線バネ540が付勢力を働かせると、コネクティングロッド505の先端が支点となって、コネクティングロッド505の基端がメインスケール210に向けて付勢される。これにより、走行体400がメインスケール210に向けて付勢されることになる。具体的には、線バネ540の先端が基端に比べてやや下方に下がっていることから、走行体400は斜め上方に付勢される。したがって、走行体400のサイドローラ421、422がメインスケール210の下側側面に押し付けられ、同時に、正面ローラ423、424、425がメインスケール210のおもて面に押し付けられる。これにより、走行体400は、メインスケール210に対向した状態を保ち、かつ、メインスケール210の基準面にガイドされながら、メインスケール210に沿って走行することになる。
【0039】
ミスアライメント検出手段600は、ベースフレーム部410のうら面で且つ前方に突設された二つの突設片601で構成されている。二つの突設片601は所定距離をあけて対向する対になっており、間にコネクティングロッド505を受け入れるようになっている。二つの突設片601は、ベースフレーム部410のうら面においてプラスX方向寄りにあるY軸に平行な梁に設けられている。そして、二つの突設片601はY方向に離間している。二つの突設片601の間の距離は、コネクティングロッド505の径よりも僅かに広い程度である。各突設片601とコネクティングロッド505との間の隙間は例えば0.1mm〜0.3mm程度である。
【0040】
(動作)
このような構成を備える第1実施形態の動作を説明する。
図1のごとくスケール部200をステージ92に取り付け、キャリッジ部310を基台91に取り付ける。そして、ステージ92をスライド移動させると、これに伴ってスケール部200とキャリッジ部310とが相対変位する。キャリッジ部310は連結手段500によって走行体400と連結されているので、キャリッジ部310とともに走行体400がメインスケール210に対して相対移動する。このとき、検出ヘッド部がメインスケール210に対する相対変位量を検出し、外部に出力する。
【0041】
さらに、本実施形態の特徴であるミスアライメント検出手段600(突設片601、601)の機能を分かりやすく説明するため、図7のようなケースをお考え頂きたい。図7においては、スケール200がステージ92に対してやや傾いて取り付けられている。
なお、図7は、わかりやすいように極端に傾けて描いているが、実際の設置公差は平行度0.1mm以下であり、これを超えると測定誤差や部品破損等の問題が生じてくる可能性がある。
【0042】
ステージ92が基台91に対して左右にスライド移動する様子を考えて頂きたい。図8は、ステージ92が右へスライドするときのスライダ300とメインスケール210との関係を模式的に示す図である。なお、図8ではわかりやすいように、ステージ92を止めて、スライダ300が相対的に左に移動したとして描いている。
【0043】
メインスケール210がずれて設置されてしまっているため、メインスケール210に対してキャリッジ部310が相対的に右に移動すると、メインスケール210がキャリッジ部310からどんどん離れていく。メインスケール210がずれて設置されていても、走行体400は連結手段500の特に線バネ540の付勢力によってメインスケール210に密接した姿勢を保ちつつメインスケール210に沿って移動しようとする。しかしながら、メインスケール210がキャリッジ部310からどんどん離れていくと、走行体400とキャリッジ部310とを繋ぐコネクティングロッド505が走行体400に対してどんどん傾斜するようになる。そして、突設片601とコネクティングロッド505との間の隙間が許容する以上にコネクティングロッド505が傾斜すると、コネクティングロッド505が突設片601に引っ掛かる。
【0044】
コネクティングロッド505が突設片601に当たると、コネクティングロッド505はこれ以上走行体400に対して傾斜できない。(表現を変えると、走行体400はこれ以上コネクティングロッド505に対して傾斜できない。)コネクティングロッド505がさらに傾斜していくと、突設片601とコネクティングロッド505との係合により、コネクティングロッド505に引きずられて走行体400はメインスケール210から離れてしまうことになる。このように走行体400がメインスケール210から離れてしまうと、検出部430がスケール信号を十分に検出できなくなる。十分な信号強度が得られない場合、検出エラーとなる。すると、例えばエラー表示がディスプレイに表示され、さらに、マシン(移動ステージ90や工作機械)の動作が停止する。このとき、ユーザは何らかのエラーに気付く。
【0045】
なお、図8は極端に描いているのであって、図8のように完全にずれなくてもメインスケール210から走行体400がわずかでも(例えば0.5mm程度)ずれると信号強度エラーになる。
【0046】
突設片601の働きがさらによくわかるように、対比例として、図9には従来の走行体400がスケールに追従する様子を示す。図9のように突設片601が無かった場合、連結手段500の球継手によって走行体400とキャリッジ部310との間の傾斜や離隔が吸収されてしまい、メインスケール210が傾いていたとしても走行体400はどこまでもメインスケール210に追従してしまう。すると、何らかの検出信号が得られてしまうため、ユーザはメインスケール210のミスアライメントに気付かないままになってしまう。
【0047】
このように本実施形態においては、ミスアライメント検出手段600としての突設片601がベースフレーム部410に突設されている。これにより、キャリッジ部310に対して走行体400が傾き過ぎたり、離れ過ぎたりした際には突設片601がコネクティングロッド505に引っ掛かり、コネクティングロッド505に引きずられて走行体400がメインスケール210から外れる。したがって、ミスアライメントになっているメインスケール210に対しては走行体400が追従不可能であり、ミスアライメントになっているメインスケール210に対しては信号強度エラーが発せられる。信号強度エラーとして測定が中断されることでユーザはミスアライメントに気付くことができ、誤ってミスアライメントになっている状態のまま測定が継続されることがなくなる。また、これにより、部品同士が擦れたりぶつかったりする問題を回避して、エンコーダ(直線変位測定装置100)の破損を防止することができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態を説明する。
第2実施形態の基本的構成は第1実施形態と同様であるが、第2実施形態はミスアライメント検出手段600としてさらに押え板603が付加された点に特徴を有する(図11参照)。前記第1実施形態では、Y軸方向に離間した二つの突設片601の間にコネクティングロッド505を受け入れていた。したがって、メインスケール210がY軸方向に傾いている場合にはこれを検出できた。ただし、第1実施形態では例えばメインスケール210がZ軸方向にずれている場合にはこれを検知できない。
【0049】
例えば、図10においては、X軸方向に進退する門型スライダ93の位置をエンコーダ(直線変位測定装置100)で検出するとする。
このとき、スケール部200は、門型スライダ93の進行方向と平行に設置されなければならないが、図10のようにX軸に平行な方向からずれて設置されてしまうことがある。
【0050】
このようなずれを検出できるようにするため、ミスアライメント検出手段600は、図10に示すように、ベースフレーム部410のうら面側において、コネクティングロッド505の上を跨ぐようにして配置された押え板603を有する。押え板603の先端は、ベースフレーム部410のうら面に固定されている。具体的には、押え板603の先端は、ベースフレーム部410のうら面において、第1球継手510を間にしてネック部530とは反対側に固定されている。そして、押え板603は、コネクティングロッド505の上を跨ぎ、押え板603の基端がネック部530に固定されている。このとき、押え板603とコネクティングロッド505との間には僅かに隙間が確保されており、走行体400がキャリッジ部310に対してZ方向にもある程度相対変位することを許容できるようにしている。
【0051】
メインスケール210が(Z軸方向に)ずれて設置されてしまっているため、例えばメインスケール210に対してキャリッジ部310が相対的に移動すると、メインスケール210とキャリッジ部310とが(Z軸方向に)どんどん離れていく。メインスケール210がずれて設置されていたとしても、走行体400は、連結手段500の特に線バネ540の付勢力によってメインスケール210に密着した姿勢を保ちつつメインスケール210に沿って移動しようとする。しかしながら、メインスケール210がキャリッジ部310からどんどん離れていくと、走行体400とキャリッジ部310とを繋ぐコネクティングロッド505が走行体400に対してどんどん(Z軸方向に)傾斜するようになる。そして、押え板603とコネクティングロッド505との間の隙間が許容する以上にコネクティングロッド505が(Z軸方向に)傾斜すると、コネクティングロッド505が押え板603に引っ掛かる。
【0052】
コネクティングロッド505が押え板603に当たると、コネクティングロッド505はこれ以上走行体400に対して(Z軸方向に)傾斜できない。(走行体400はこれ以上コネクティングロッド505に対して(Z軸方向に)傾斜できない。)コネクティングロッド505がさらに(Z軸方向に)傾斜していくと、押え板603とコネクティングロッド505との係合によりコネクティングロッド505に引きずられて走行体400はメインスケール210から離れる(図11参照)。このように走行体400がメインスケール210から離れてしまうと、検出部430がスケール信号を十分に検出できなくなる。十分な信号強度が得られない場合、検出エラーとなる。例えば、エラー表示がディスプレイに表示され、マシン(移動ステージ90や工作機械)の動作が停止する。このとき、ユーザは何らかのエラーに気付く。
【0053】
第2実施形態によれば、メインスケール210がZ軸方向にずれてミスアライメントされていたとしても、信号強度エラーとして測定が中断されるので、ユーザはミスアライメントに気付くことができる。
誤ってミスアライメントになっている状態のまま測定が継続されることがなくなる。
【0054】
(第3実施形態)
第2実施形態にあっては、押え板603をベースフレーム部410に付設した。コネクティングロッド505と走行体400とのZ方向の相対変位を規制する手段として、例えば、図12に示すように、押え板604を突設片601の先端に設けてもよい。押え板604は、コネクティングロッド505の上をオーバーハングするように突設片601の先端からL字に曲がるように設けられている。この押え板604であっても第2実施形態と同等の作用効果を奏するのはもちろんである。
【0055】
(第4実施形態、第5実施形態)
本発明の第4実施形態を図13に例示し、第5実施形態を図14に例示する。上記第1〜第3実施形態においては、コネクティングロッド505の傾斜を規制する突設片601や押え板603、604を付設することでミスアライメント検出手段600を構成していた。ミスアライメント検出手段600としてはコネクティングロッド505に関係無く構成されていてもよい。
【0056】
例えば、図13においては、ベースフレーム部410に中空の孔605を穿設し、ネック部530にピン606を突設している。ピン606の先端には前記孔605に遊嵌される頭部を設ける。頭部の径は、前記孔605の内部の径よりは小さく、孔605の口よりは大きくなっており、頭部は孔605の口に引っ掛かるようになっている。ピン606と孔605との組は、一組だけではなく、二つ以上であってもよい。図13では、ピン606と孔605との組は、X軸のプラス寄りに一組、X軸のマイナス寄りに一組設けている。
【0057】
このような構成であっても、走行体400がキャリッジ部310に対して所定以上傾斜した場合にはピン606の頭部が孔605の口に引っかかり、走行体400がメインスケール210から外れる。
これにより、メインスケール210がミスアライメントされていれば信号強度エラーとして測定が中断される。
【0058】
また、図14においては、図13と同じく、ベースフレーム部410に中空の孔607を穿設し、ネック部530にピン608を突設している。ここで、孔607はL字に屈曲した形状であり、ピン608の頭部もL字になるように屈曲している。このような構成であっても、走行体400がキャリッジ部310に対して所定以上傾斜した場合にはピン608の頭部が孔607に引っかかり、走行体400がメインスケール210から外れる。これにより、メインスケール210がミスアライメントされていれば信号強度エラーとして測定が中断される。
【0059】
なお、ネック部に孔を配置し、走行体にピンを配置するようにしても同等の作用効果が得られる。
【0060】
(第6実施形態)
本実施の第6実施形態を図15に例示する。
上記第1〜第5実施形態においては、スケール部200がミスアライメントされていた場合に走行体400がメインスケール210から外れるようにしてミスアライメントを検出するようにしていた。
ミスアライメント検出手段600としては、走行体400がメインスケール210から外れるようにしなくても、走行体400とコネクティングロッド505との間の相対角度(相対変位)を直接検出する構成としてもよい。
【0061】
例えば、図15に例示するように、コネクティングロッド505の位置を検出するセンサ609をベースフレーム部410に配設してもよい。センサ609としては、例えば磁気式や静電容量式の近接センサ609を採用することができる。コネクティングロッド505が所定量変位したらセンサ609で検出できるようにする。そして、センサ609での検出があった場合、ディスプレイ表示や警告音にてユーザに報知するようにする。これにより、ユーザはメインスケール210のミスアライメントに気付くことができる。
【0062】
なお、センサ609としては、もちろんカメラ等の画像センサでもよいのであって特段限定されない。さらには、例えば、センサ609として歪みゲージを用いてもよい。例えば、コネクティングロッド505あるいは線バネ540に歪みゲージを貼り付けておき、規定を超えて歪みが発生したら検知信号がでるようにしておいてもよい。
【0063】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
ミスアライメント検出手段としての突設片601はベースフレーム部410に突設されているとしたが、コネクティングロッドの相対変位を規制できるのであれば、突設片の設置位置は特段限定されるものではない。例えば、突設片に相当する規制片をキャリッジ部側に設置してもよい。ネック部530、より具体的には接続片部532にこのような規制片を設けることは十分に可能である。
【符号の説明】
【0064】
90…移動ステージ、91…基台、92…ステージ、93…門型スライダ、
100…直線変位測定装置、
200…スケール部、210…メインスケール、220…スケール収容筐体、222…スリット、
300…スライダ、310…キャリッジ部、
400…走行体、410…ベースフレーム部、421、422…サイドローラ、423、424、425…正面ローラ、
430…検出部、
500…連結手段、505…コネクティングロッド、
510…第1球継手、511…球、512…球受け凹部、513…押え板、
520…第2球継手、521…球、522…球受け凹部、523…押え板、
530…ネック部、531…連結ヘッド部、532…接続片部、533…掛止片部、534…挿通孔、
540…線バネ、
600…ミスアライメント検出手段、
601…突設片、603…押え板、604…押え板、605…孔、606…ピン、607…孔、608…ピン、609…センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15