(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜4のいずれか1項に記載の体液粘性測定装置において、前記第2の導電部は複数あって、該複数の第2の導電部は一つの前記出力端子に接続されることを特徴とする体液粘性測定装置。
請求項1〜5のいずれか1項に記載の体液粘性測定装置において、前記流路の前記第1、第2の導電部の配置領域の下流側で、前記体液に試薬液を合流させて、該体液及び該試薬液の混合液の粘性を所定の値に調整する液供給機構と、前記混合液の電気伝導率及び電解質濃度を計測する濃度導出手段とを更に備えることを特徴とする体液粘性測定装置。
請求項6記載の体液粘性測定装置において、前記演算手段は、前記濃度導出手段が計測した前記混合液の電解質濃度を用いて前記体液の粘性を算出することを特徴とする体液粘性測定装置。
請求項1〜7のいずれか1項に記載の体液粘性測定装置において、それぞれ、前記流路、合わせて少なくとも3つの前記第1、第2の導電部及び前記出力端子を有する電極ユニットP、Qが設けられ、該電極ユニットPの該流路の出側は、該電極ユニットQの該流路の入り側に、前記体液から特定の物質を取り除くトラップを介して接続され、前記演算手段は、前記電極ユニットP、Qを流れる前記体液の電気伝導率及び粘性をそれぞれ算出することを特徴とする体液粘性測定装置。
請求項1〜7のいずれか1項に記載の体液粘性測定装置において、前記流路及び合わせて少なくとも3つの前記第1、第2の導電部を有するチップと、前記チップが装着される被装着体とが設けられ、前記被装着体には、装着された前記チップの前記第1の導電部を前記交流電源に接続する第1の回路と、装着された該チップの前記第2の導電部を前記出力端子に接続する第2の回路とが設けられていることを特徴とする体液粘性測定装置。
請求項1〜7のいずれか1項に記載の体液粘性測定装置において、前記流路、合わせて少なくとも3つの前記第1、第2の導電部及び前記出力端子を有する電極ユニットRと前記電極ユニットRと同じ構造の電極ユニットSとが設けられ、前記演算手段は、粘性が判明している標準サンプル液を前記電極ユニットSの流路に流して算出した前記標準サンプル液の粘性を基に、前記体液を前記電極ユニットRの前記流路に流して算出した前記体液の粘性を補正することを特徴とする体液粘性測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載の方法では、一回の計測操作によって導出される粘性の値が1つのみであるため、計測誤差を考慮して粘性を求めるためには、粘性を複数回計測することが必要であった。そのため、体液の粘性を正確に計測するには、粘性の計測を複数回繰り返すこと、及び、複数回の計測を行える量の体液を用意することを要するという課題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、微量の試料を使った一回の計測操作によって、独立した複数回の計測操作で得られる電気伝導率及び粘性の測定値を得ることができる体液粘性測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う本発明に係る体液粘性測定装置は、流路を流れる体液の電気伝導率及び粘性を計測する体液粘性測定装置であって、前記流路に設けられ、外部の交流電源に接続される第1の導電部と、前記流路に設けられ、該流路内の前記体液を介して前記第1の導電部に電気的に接続される第2の導電部と、前記第2の導電部に接続された出力端子から出力される電気信号の大きさから前記体液の電気伝導率及び粘性を算出する演算手段とを備え、前記第1、第2の導電部は、合わせて少なくとも3つあって、それぞれ前記体液の流れに沿って前記流路の異なる位置で該体液に接触
し、前記演算手段は、前記体液が前記流路を進んで前記電気信号の値が段階的に上昇するたびに、該電気信号の値を基に前記体液の電気伝導率及び粘性を算出する。
【0006】
本発明に係る体液粘性測定装置において、前記第1、第2の導電部は、前記体液の流れに沿って交互に配置されているのが好ましい。
【0007】
本発明に係る体液粘性測定装置において、前記第1、第2の導電部の配置ピッチは一定であるのが好ましい。
【0008】
本発明に係る体液粘性測定装置において、前記流路の幅は、前記体液が毛細管現象によって流れる大きさであるのが好ましい。
【0009】
本発明に係る体液粘性測定装置において、前記第2の導電部は複数あって、該複数の第2の導電部は一つの前記出力端子に接続されるのが好ましい。
【0010】
本発明に係る体液粘性測定装置において、前記流路の前記第1、第2の導電部の配置領域の下流側で、前記体液に試薬液を合流させて、該体液及び該試薬液の混合液の粘性を所定の値に調整する液供給機構と、前記混合液の電気伝導率及び電解質濃度を計測する濃度導出手段とを更に備えるのが好ましい。
【0011】
本発明に係る体液粘性測定装置において、前記演算手段は、前記濃度導出手段が計測した前記混合液の電解質濃度を用いて前記体液の粘性を算出するのが好ましい。
【0012】
本発明に係る体液粘性測定装置において、それぞれ、前記流路、合わせて少なくとも3つの前記第1、第2の導電部及び前記出力端子を有する電極ユニットP、Qが設けられ、該電極ユニットPの該流路の出側は、該電極ユニットQの該流路の入り側に、前記体液から特定の物質を取り除くトラップを介して接続され、前記演算手段は、前記電極ユニットP、Qを流れる前記体液の電気伝導率及び粘性をそれぞれ算出するのが好ましい。
【0013】
本発明に係る体液粘性測定装置において、前記流路及び合わせて少なくとも3つの前記第1、第2の導電部を有するチップと、前記チップが装着される被装着体とが設けられ、前記被装着体には、装着された前記チップの前記第1の導電部を前記交流電源に接続する第1の回路と、装着された該チップの前記第2の導電部を前記出力端子に接続する第2の回路とが設けられているのが好ましい。
【0014】
本発明に係る体液粘性測定装置において、前記流路、合わせて少なくとも3つの前記第1、第2の導電部及び前記出力端子を有する電極ユニットRと前記電極ユニットRと同じ構造の電極ユニットSとが設けられ、前記演算手段は、粘性が判明している標準サンプル液を前記電極ユニットSの流路に流して算出した前記標準サンプル液の粘性を基に、前記体液を前記電極ユニットRの前記流路に流して算出した前記体液の粘性を補正するのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る体液粘性測定装置は、流路に設けられた第1の導電部と、流路に設けられ、流路内の体液を介して第1の導電部に電気的に接続される第2の導電部とを備え、第1、第2の導電部が、合わせて少なくとも3つあって、それぞれ体液の流れに沿って流路の異なる位置で体液に接触するので、体液が流路を進行するのに伴って、出力端子から出力される電気信号の大きさが変わることとなる。よって、異なる大きさの電気信号でそれぞれ体液の電気伝導率及び粘性を算出することができ、独立した複数回の計測操作で得られる電気伝導率及び粘性の測定値を一回の計測操作で得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、
図2、
図3(A)に示すように、本発明の一実施の形態に係る体液粘性測定装置10は、流路11に設けられ、外部の交流電源Vに入力端子40を介して接続される第1の導電部12、13、14、流路11に設けられた第2の導電部15、16、17、18、及び、第2の導電部15、16、17、18に接続された出力端子19から出力される電気信号の大きさから、流路11を流れる体液Fの電気伝導率及び粘性(以下同じ)を計測する装置である。以下、詳細に説明する。
【0018】
粘性の計測対象である体液Fは、電解質溶液であり、例えば、人の血液、髄液、汗、唾液、涙である。
体液粘性測定装置10は、
図1、
図2に示すように、交流電源Vにスイッチ20を介して接続される電極ユニット21を備えている。電極ユニット21は、
図1、
図2、
図3(A)に示すように、流路11が設けられ、第1の導電部12、13、14及び第2の導電部15、16、17、18を具備するチップ22と、チップ22が装着される被装着体23を有している。
【0019】
チップ22は、
図2、
図3(A)に示すように、前後に長い矩形状の板材24及び上側に板材24が固定された前後に長い板状のベース部材25を備えている。
板材24には、底面側に板材24の長手方向に沿って凹部26が形成され、板材24の上面から凹部26の一側にかけて形成された開口部27及び板材24の上面から凹部26の他側にかけて形成された開口部28が設けられている。本実施の形態では、開口部27が体液Fの導入口、開口部28が体液Fの排出口であるが、開口部28を体液Fの導入口、開口部27を体液Fの排出口として利用してもよい。
【0020】
チップ22の流路11は、板材24の底面をベース部材25の上面に接触させて固定することで板材24の凹部26の開口がベース部材25の上面で塞がれて形成されている。流路11は親水性を有し、流路11の幅は、体液Fが毛細管現象によって流路11内を移動できる大きさであり、例えば、10μm〜500μmの範囲である。そのため、開口部27から体液Fが導入されると、体液Fが毛細管現象によって流路11内を開口部27側(一側)から開口部28側(他側)に進行し、流路11内には一側から他側に向かって層流が生じる。
【0021】
本実施の形態では、シルウェット(Silwet)を含有したPDMS(ジメチルポリシロキサン)によって板材24を形成し、流路11の親水性を確保しているが、親水性処理は、これに限定されるものではない。
【0022】
ベース部材25の上面には、第1の導電部12、13、14をそれぞれ有する導線32、33、34及び第2の導電部15、16、17、18をそれぞれ有する導線35、36、37、38が設けられている。なお、本実施の形態では、ベース部材25がガラスによって形成されているが、これに限定されない。
【0023】
そして、導線35(導線32〜34、36〜38についても同じ)は、
図2、
図3(A)に示すように、第2の導電部15(導線32〜34、36〜38については、それぞれ第1の導電部12〜14及び第2の導電部16〜18)が流路11内に配されていればよく、本実施の形態のように、ベース部材25の左端から右端に渡って、導線35全体が、ベース部材25の上面に密着している必要はない。
例えば、
図3(B)に示すように、第2の導電部15を流路11の上側に固定して、ベース部材25から離れるように導線35を配線してもよいし、
図3(C)に示すように、一端が流路11内に配されるように導線35を配線してもよい。これらは、導線32〜34、36〜38についても同じである。
【0024】
流路11においては、
図1、
図2に示すように、体液Fの流れに沿って、第2の導電部15、第1の導電部12、第2の導電部16、第1の導電部13、第2の導電部17、第1の導電部14及び第2の導電部18が順に並べられている(即ち、第1の導電部及び第2の導電部は、体液の流れに沿って交互に配置されている)。
従って、開口部27に導入された体液Fは、流路11内を進みながら、第2の導電部15、第1の導電部12、第2の導電部16、第1の導電部13、第2の導電部17、第1の導電部14及び第2の導電部18に順に接触し、第1の導電部12、13、14及び第2の導電部15、16、17、18は、体液Fの流れに沿って流路11の異なる位置で体液Fに接触する。
【0025】
また、第2の導電部15、第1の導電部12、第2の導電部16、第1の導電部13、第2の導電部17、第1の導電部14及び第2の導電部18の配置ピッチは一定である。よって、開口部27から導入された体液Fは、一定の時間間隔で、第2の導電部15、第1の導電部12、第2の導電部16、第1の導電部13、第2の導電部17、第1の導電部14及び第2の導電部18に順に到達する。
【0026】
体液Fは電気伝導性を有するため、開口部27から導入された体液Fが第2の導電部15を通過して第1の導電部12まで達し、流路11の開口部27から第1の導電部12までの領域全体に体液Fが存在する状態になった際、第2の導電部15は、流路11内の体液Fを介して、第1の導電部12に電気的に接続される。その後、体液Fが第2の導電部16まで達した際には、第2の導電部16が、体液Fを介して、第1の導電部12及び第2の導電部15に電気的に接続される。そして、体液Fが第2の導電部18まで達した際には、全ての第1の導電部12、13、14及び第2の導電部15、16、17、18が、体液Fを介して電気的に接続される。
【0027】
被装着体23は、
図1、
図2に示すように、内側にチップ22が嵌め込まれる枠部39を備えている。枠部39には、交流電源Vに接続される入力端子40と、入力端子40から3つに枝分かれした導線を有する回路41(第1の回路)が、左側に設けられ、出力端子19と、出力端子19から4つに枝分かれした導線を有する回路42(第2の回路)が、右側に設けられている。
枠部39の内側にチップ22が嵌め込まれる(即ち、被装着体23に、チップ22が装着される)ことによって、チップ22は、第1の導電部12、13、14が回路41を介して入力端子40に接続され、第2の導電部15、16、17、18が回路42を介して出力端子19に接続される。
【0028】
即ち、複数の第2の導電部15、16、17、18は回路42に接続され、回路42は第2の導電部15、16、17、18を一つの出力端子19に接続する。以下、特に記さない限り、チップ22は被装着体23に装着されているものとする。
出力端子19には、
図1に示すように、スイッチ43を介して、演算手段44が接続されている。演算手段44は、出力端子19から出力される電流(電気信号の一例)の値から体液Fの粘性を算出する。なお、スイッチ43は、
図1に示すように、演算手段44の接続先を、電極ユニット21の出力端子19から、較正(校正)用の基準抵抗44aに切り替えることができる。
【0029】
演算手段44は、出力端子19からの電流値から、入力端子40、出力端子19間のインピーダンス(本実施の形態では、合成抵抗値)を求め、体液Fの電気伝導率及び粘性を導出する。演算手段44によって算出された体液Fの電気伝導率及び粘性は、図示しない記憶媒体に記憶される。
入力端子40、出力端子19間のインピーダンスの大きさは、流路11内を流れる体液Fの電気伝導率及び粘性と、第1の導電部12、13、14及び第2の導電部15、16、17、18の体液Fを介した接続状態によって決定される。
【0030】
よって、第1の導電部12、13、14及び第2の導電部15、16、17、18の体液Fを介した接続状態が分かれば、入力端子40、出力端子19間のインピーダンスから体液Fの粘性を求めることができる。なお、入力端子40、出力端子19間のインピーダンスと体液Fの粘性に相関関係があることは、例えば、Walden則によって知られている。
【0031】
開口部27に導入され流路11を進む体液Fの先頭部が開口部28に向かって進むのに従って、体液Fの先頭部は、第2の導電部15、第1の導電部12、第2の導電部16、第1の導電部13、第2の導電部17、第1の導電部14及び第2の導電部18を順に通過し、入力端子40、出力端子19間のインピーダンスは段階的に小さくなり、出力端子19から出力される電流値(以下、単に「出力電流値」とも言う)は段階的に上昇する。
【0032】
出力電流値の段階的な上昇は、体液Fの先頭部が、第1の導電部12、第2の導電部16、第1の導電部13、第2の導電部17、第1の導電部14及び第2の導電部18のいずれかに達し、第1の導電部12、13、14及び第2の導電部15、16、17、18の体液Fを介した接続状態が変わることを意味する。
演算手段44は、出力電流値の上昇を検出可能であるので、出力電流値の段階的な上昇を基に第1の導電部12、13、14及び第2の導電部15、16、17、18の体液Fを介した接続状態を検知することができる。よって、演算手段44は、入力端子40、出力端子19間のインピーダンスから体液Fの電気伝導率及び粘性を求めることが可能である。
【0033】
ここで、演算手段44は、出力電流値が段階的に上昇するたびに、出力電流値を基に体液Fの電気伝導率及び粘性を算出する。よって、所定量(第1の導電部12、13、14及び第2の導電部15、16、17、18の全てが流路11内の体液Fで電気的に接続される量)の体液Fを開口部27から導入することによって、演算手段44は、体液Fについて、電気伝導率及び粘性を複数回算出可能である。
【0034】
そして、演算手段44は、算出した複数の粘性値(本実施の形態では粘性率)を基に、体液Fの最終的な粘性値を得る。例えば、算出した複数の粘性値の平均を最終的な粘性値にすることができる。そして、算出された各粘性値に所定以上の差がある場合や、出力電流値が所定の時間間隔で段階的に上昇しない場合、演算手段44は、異常ありを意味する信号を出力するように設計されている。
本実施の形態では、出力電流値が段階的に6回上昇することから、演算手段44は、体液Fの電気伝導率及び粘性を6回算出する。
【0035】
本実施の形態では、
図1に示すように、演算手段44が主として2つの電気回路45、46によって構成されているが、電気回路の数は2つである必要はない。
また、本実施の形態では、第1の導電部12、13、14及び第2の導電部15、16、17、18が合わせて7つであるが、第1、第2導電部は合わせて少なくとも3つあればよい。これは、第1、第2の導電部が合わせて少なくとも3つあれば、出力電流値が段階的に上昇し、体液の電気伝導率及び粘性値を少なくとも2つの異なる出力電流値から算出することができるためである。
【0036】
また、本実施の形態においては、電極ユニット21が1つのみであったが、
図4に示すように、2つの電極ユニット48、49(電極ユニットP、Q)を設けることも可能である。電極ユニット48、49はそれぞれ、基本的に電極ユニット21と同じ構造を備え、流路11、及び合わせて7つ(即ち、合わせて少なくとも3つ)の第1の導電部12、13、14及び第2の導電部15、16、17、18、及び出力端子19を有している。
【0037】
電極ユニット48の流路11の出側(他側)は、電極ユニット49の流路11の入り側(一側)に、体液Fから特定の物質(例えば、体液Fが血液の場合、特定の物質は血球)を取り除くトラップ50を介して接続されている。なお、電極ユニット48、49において、電極ユニット21と同様の構成については同じ符号を付して詳しい説明を省略する(以下同じ)。
【0038】
従って、電極ユニット48の開口部27から導入された体液Fは、電極ユニット48の流路11を通過し、トラップ50で特定の物質が取り除かれた後、電極ユニット49の流路11を流れる。そのため、図示しない演算手段は、電極ユニット48の出力端子19からの出力電流値を基に、特定の物質が取り除かれていない体液Fの粘性を算出し、電極ユニット49の出力端子19からの出力電流値を基に、特定の物質が取り除かれた体液F(例えば、血球が除去された血漿を含む血液)の電気伝導率及び粘性を算出する。
【0039】
また、
図5に示すように、流路11の第1の導電部12、13、14及び第2の導電部15、16、17、18の配置領域の下流側で、体液Fに試薬液を合流させて、体液F及び試薬液の混合液の粘性を所定の値に調整する液供給機構52を設けてもよい。
図5に示す例では、電極ユニット49の下流側に、電極ユニット49の流路11の出側に流路11の入り側が接続された電極ユニット51が設けられ、電極ユニット49の流路11と電極ユニット51の流路11の接続領域に、液供給機構52が管を介して連結されている。
【0040】
電極ユニット51は、基本的に電極ユニット21と同じ構造を備え、液供給機構52は、例えば、ポンプ及び電磁弁を有して構成可能である。
液供給機構52は、例えば、体積比で体液Fの略20倍の蒸留水(試薬液の一例、以下、単に「水」とも言う)を、電極ユニット49、51の間で、体液Fに合流させて、体液F及び水の混合液の粘性率を水と同レベルにする。電極ユニット51の出力端子19には、出力端子19からの出力電流値を基に電極ユニット51の流路11を流れる混合液の電解質濃度を計測する図示しない濃度導出手段が接続されている。濃度導出手段は、例えば、ソフトウェアプログラムがインストールされた電子計算機によって構成可能である。
【0041】
演算手段は、濃度導出手段から、濃度導出手段が計測した電解質濃度を取得可能であり、濃度導出手段が計測した混合液の電解質濃度を用いて体液Fの粘性を算出する。
ここで、インピーダンスを基に体液の粘性を算出する計算式には、その体液の電解質濃度が必要である。この点、体液の電解質濃度の値は体液の種類ごとに一定範囲であり、ばらつきが小さい。よって、計算式に電解質濃度の予め定められた値を代入すれば、電解質濃度を計測せずとも、対象とする体液の粘性を算出することができる。但し、電解質濃度をより正確に算出する観点においては、計測した電解質濃度を計算式に代入して粘性を算出するのが好ましい。
【0042】
また、
図6に示すように、電極ユニット21と同じ構造の2つの電極ユニット53、54(電極ユニットR、S)を設け、電極ユニット53の流路11に体液Fを流し、電極ユニット54の流路11に粘性が判明している標準サンプル液を流して、算出した体液Fの粘性を補正することもできる。
演算手段は、電極ユニット54の流路11に流した標準サンプル液の粘性及び電極ユニット53の流路11に流した体液Fの粘性をそれぞれ算出し、算出した標準サンプル液の粘性(具体的には、算出した標準サンプル液の粘性と、粘性が判明していた標準サンプル液の粘性の差)を基に、算出した体液Fの粘性を補正する。計測時の温度など環境の違いにより、算出される体液Fの粘性には多少の誤差が生じることが考えられるため、標準サンプル液の粘性を基に、算出した体液Fの粘性を補正するのは、より正確な粘性を得る上で好適である。更に、例えばサーミスター素子などの温度測定手段を電極ユニット上に設置して計測時の温度を記録し、より正確を期すこともできる。
【実施例】
【0043】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実験について説明する。
本実験においては、合わせて7つの第1、第2の導電部を有する電極ユニットを採用し、流路にショ糖を加えて粘度を上げた食塩水(以下、単に「食塩水」とも言う)を流した。
図7、
図8に、計測された出力電流の時間軸に対する推移を示す。なお、
図8のグラフは、
図7のグラフの一部を拡大したものであり、
図8には、段階的に上昇する出力電流それぞれに対応する合成抵抗の値を記している。
図7、
図8より、段階的に上昇する出力電流の各上昇値が略同じであること、並びに、出力電流が5〜6秒間隔で段階的に上昇したことが確認できた。その結果、段階的に上昇する出力電流それぞれから電気伝導率及び粘性を算出できることが分かる。
なお、
図7において、Dは食塩水を導入した時点を示し、Wは流路に水を流して食塩水を洗い流した時点を示す。
【0044】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、体液が毛細管現象によって進む流路の代わりに、体液がポンプあるいは重力によって進む流路を採用してもよい。但し、毛細管現象によって体液が進行する流路を採用した場合、粘性を計測するために要する体液の量を少なくすることができる。
【0045】
また、本実施の形態では交流電源から入力端子に与えられる交流電圧の周波数が単一で一定であるが、入力端子に周波数が異なる複数の交流電圧を与えることもできる。入力端子に周波数が異なる交流電圧を与える場合、演算手段は、各周波数のインピーダンスを求めて体液の粘性を算出することとなる。
そして、体液が流れるのに伴ってインピーダンスが変化する構成であれば、第1、第2の導電部が体液の流れに沿って交互に配置されている必要はない。更に、第1、第2の導電部の配置ピッチは一定でなくてもよい。
また、第2の導電部が複数個ある場合、複数の第2の導電部を、一つの出力端子に接続する必要はなく、それぞれ別個の出力端子に接続してもよい。複数の第2の導電部をそれぞれ別個の出力端子に接続する場合、各出力端子からの出力電流値を基に別個の粘性が算出される。