(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記蛍光体粒子が、波長400〜500nmに励起帯を有し、波長500〜700nmに発光ピークを有し、酸化物、窒化物、および、酸窒化物からなる群から選ばれる1以上の化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光変換部材。
ガラス粉末、蛍光体粒子、樹脂および有機溶媒を混練してスラリーとする混練工程と、得られたスラリーを所望の形状に成形する成形工程と、成形されたスラリーを焼成して光変換部材とする焼成工程と、を有する光変換部材の製造方法であって、
製造される前記光変換部材が、請求項1〜10のいずれか1項記載の光変換部材であることを特徴とする光変換部材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る、光変換部材(以下、「本光変換部材」ともいう)、光変換部材の製造方法および照明光源について説明する。
【0018】
[光変換部材]
本発明の光変換部材は、上記の通り、蛍光体粒子を分散して含有する所望のガラスからなる。
【0019】
ここで、本光変換部材を形成するガラスは、以下に説明するガラス組成を有するように形成される。このような光変換部材は、光源から発せられた光(光源光)の波長を変換し、この変換により得られた変換光を外部へ照射可能とする。光源光は、青色付近の光を発光するLEDを使うことができ、近紫外LED(発光中心波長350〜410nm)でもよいが、発光効率が高い青色LED(発光中心420〜480nm)が好ましい。同様に、前記波長のレーザ光源でも好適である。
【0020】
このとき、光源光の一部は光変換部材を透過させて、光源光と変換光の合成光として外部に照射してもよいし、光源光をほぼ外部に照射しないようにして、主として変換光を外部に照射するようにしてもよい。特に、近紫外LEDや青色LEDが発する光源光は波長が短く、樹脂性のシーリング部材等を劣化させるため、さらにはLEDの発光波長のロット間バラつきを嫌い、光変換部材による変換光のみで色度のバラつきを抑えた設計にするために、主として変換光を外部に照射するようにすることが好ましい。また、自動車など車両の方向指示灯にLEDを用いる場合、保安基準、視認性の点から、青色LEDの発する光源光は外部に照射されないようにし、変換光成分が多い、色純度の高い光を外部に照射することが好ましい。
【0021】
なお、ここで「主として変換光を外部に照射する」とは、光変換部材から外部に照射される光のうち光源光の透過光が光源光に対して3%以下であることを意味し、さらに、好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1%以下、である。
【0022】
〈ガラス〉
本発明のガラスは、酸化物基準のモル%表示で、SiO
2 0〜40%、B
2O
3 10〜45%、Al
2O
3 0〜10%、ZnO 25〜64%、アルカリ土類金属酸化物(MgO+CaO+SrO+BaO) 0〜30%、アルカリ金属酸化物(Li
2O+Na
2O+K
2O) 0〜5%、Bi
2O
3 0.5%以下、PbO 0.5%以下、の組成からなることを特徴とする。以下、このガラスの各成分について説明する。
【0023】
SiO
2は、ガラスのネットワークフォーマーであり、ガラスを安定化でき、耐水性を高める成分でもある。本発明において、SiO
2は任意の成分であるが含有させることが好ましい。SiO
2の含有量は、0〜40%である。SiO
2が40%を超えると、焼結温度を高め、蛍光体に与えるダメージが大きくなったり、焼結が困難になったりするため、好ましくない。SiO
2の含有量は、5〜30%が好ましく、5〜20%がより好ましい。
【0024】
B
2O
3は、ガラスのネットワークフォーマーであり、ガラスを安定化でき、必須の成分である。B
2O
3の含有量は、10〜45%である。B
2O
3の含有量が10%未満では、ガラスが不安定になり、結晶化しやすく、また、焼結性を損ねるおそれがある。一方で、B
2O
3の含有量が45%超では、ガラスの耐水性が低下するおそれがある。B
2O
3の含有量は、10〜35%が好ましく、15〜30%がより好ましい。
【0025】
Al
2O
3はガラスの耐水性を向上させ、結晶化を抑制する成分であるが、本発明においては必須成分ではない。また、焼成時に蛍光体との反応を抑制する成分でもある。Al
2O
3の含有量は、0〜10%である。Al
2O
3の含有量が10%超では、Tgが高くなり過ぎ、液相温度が上がるため、焼結性を損ねるおそれがある。Al
2O
3の含有量は、0〜8%が好ましく、0〜6%がより好ましい。
【0026】
ZnOは、ガラス化範囲を広げ、ガラス組成の自由度を増やすという利点があり、必須成分である。また、ZnOは、Tgを下げ焼結温度を低下させる成分でもある。ZnOの含有量は、25〜64%である。ZnOの含有量が25%未満では、多量の蛍光体粉末を含有する本発明においては焼結性が低下するため好ましくない。一方で、ZnOの含有量が64%超では、ガラスが不安定になり、結晶化しやすく焼結性を損ねるおそれがある。ZnOの含有量は、40〜64%が好ましく、45〜60%がより好ましい。
【0027】
CaO、SrO、MgOおよびBaOのアルカリ土類金属酸化物は、結晶化傾向を下げてガラスの安定性を高めるとともに、焼結性を向上させる成分であるが、耐水性はやや下げる傾向にあって、必須成分ではない。これらアルカリ土類金属酸化物成分の含有量はそれぞれ0〜30%、すなわち、MgOの含有量は0〜30%、CaOの含有量は0〜30%、SrOの含有量は0〜30%、BaOの含有量は0〜30%、であり、これらアルカリ土類金属酸化物の合計量は、0〜30%が好ましい。この合計量が、30%超では、ガラスの安定性が低下する、ガラスの吸収端が長波長側にシフトし、LED素子の青色光を吸収してしまうおそれがある。
【0028】
アルカリ土類金属酸化物の含有量は、より好ましくは、15%以下である。また、アルカリ土類金属酸化物の中では、BaOが好ましく、BaOの含有量は0〜5%がより好ましく、0〜1%がさらに好ましい。
【0029】
Li
2O、Na
2OおよびK
2Oのアルカリ金属酸化物は、Tgを下げ焼結温度を低下させる成分であり、この系では必須成分ではない。アルカリ金属酸化物のそれぞれの含有量は0〜5%、すなわち、Li
2Oの含有量が0〜5%、Na
2Oの含有量が0〜5%、K
2Oの含有量が0〜5%、であり、これらアルカリ金属酸化物の合計量は0〜5%が好ましい。
【0030】
上記合計量が5%超では、屈折率が低下し、ガラスの化学的耐久性が低下する、焼成時に蛍光体との反応を促進する、ガラスの吸収端が長波長側にシフトし、LED素子の青色光を吸収してしまうおそれがある。この合計量は、より好ましくは0〜3%、さらに好ましくは0〜0.5%である。アルカリ金属酸化物は、耐水性を下げる傾向にあるため、特にTgを下げたいなどの理由がない場合、含有しない方が好ましい。
【0031】
Bi
2O
3やPbOは、光や熱に起因する作用によりコロイド化しやすい成分であり、実質的に含有しないことが好ましい。本願発明においては、多量の蛍光体粒子を含有するため、これら成分が含まれていると蛍光体粒子とガラスの界面でコロイド化しやすく、光変換部材の輝度低下を引き起こすおそれがあり好ましくない。なお、ここで「実質的に含有しない」とは、その含有量が0.5%以下を意味する。
【0032】
このガラスは本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有していてもよい。その他の成分を含有する場合は合計の量が、酸化物基準のモル%表示で20%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましく、1%未満が特に好ましい。
【0033】
P
2O
5は、ガラスのネットワークフォーマーであり、少量の場合は耐水性を向上させる成分であり、本発明においては任意成分である。P
2O
5の含有量は、0〜2%が好ましい。P
2O
5の含有量が2%超では、ガラスが分相しやすく安定性が低下する。
【0034】
La
2O
3は、B
2O
3の含有量が多い場合にガラス化が可能となり、耐水性を高め、屈折率を高める成分であり、本発明においては任意成分である。La
2O
3−B
2O
3−ZnO系は屈折率がSiO
2−B
2O
3−ZnO系よりも高く、一般的な蛍光体の屈折率により近付き、光散乱を抑えるのに優れたガラスである。La
2O
3の含有量は、0〜20%が好ましい。La
2O
3の含有量が20%超では、結晶化傾向が高くなり、ガラスの安定性が低下する。
【0035】
TeO
2は、焼結温度を下げ、ガラスの結晶化を抑制し安定にする成分であり、本発明においては任意成分である。TeO
2の含有量は、0〜10%が好ましい。TeO
2の含有量が10%超では、非常に揮散が激しい成分であるため、熔解制御が困難になるおそれがある。TeO
2の含有量は、7%以下がより好ましい。
【0036】
また、上記以外にも、Nb
2O
5、Ta
2O
5、TiO
2、ZrO
2、Gd
2O
3、Ga
2O
3は、耐水性を高め、ガラスの結晶化を抑制する成分でもあり、本発明のガラスに含有させても構わない任意成分である。しかしながら、いずれもガラスの焼結温度を高める成分であるため、これら成分の含有量は、それぞれ10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
【0037】
Ce
2O
3、Sb
2O
3、SnO
2は、酸化還元を調整する成分であり、本発明のガラスに含有させても構わない任意成分である。ただし、量が多いと着色のおそれがあるため、入れる場合には1%以下の少量が好ましく、0.5%以下がより好ましい。
【0038】
Fe
2O
3、CuO、Mo
2O
3、V
2O
5、Cr
2O
3は、ガラスを着色する成分であるため、母ガラスに用いるには好ましくない。本発明のガラスにはできるだけ含まないことが好ましく、含む場合であっても、これらの含有量はそれぞれ0.5%以下が好ましい。さらに、これらの成分の合量を0.5%以下とするのが好ましい。
【0039】
上記組成のガラスは、そのガラス転移点Tg(以下、単に「Tg」ともいう)が比較的低いものとなり、特に、Tgが450〜650℃であることが好ましい。ガラス転移点が600℃超のガラスでは、本光変換部材の製造工程中、焼成する際の温度が高くなり、使用する蛍光体の種類によっては蛍光体が失活したり、ガラスと蛍光体が反応したりして、光変換部材の量子収率が低下するおそれがある。量子収率の低下を抑制するためには、ガラスのTgは、好ましくは650℃以下、より好ましくは600℃以下、さらに好ましくは580℃以下である。
【0040】
一方で、ガラス転移点Tgが450℃未満では焼成温度を低くする必要があるが、ガラスが流動する温度よりも光変換部材の成型時に用いる樹脂や有機化合物の熱分解温度を下回る条件になるため、光変換部材中のカーボン含有量が多く、光吸収が大きくなり、光変換部材の量子収率が低下するおそれがある。また、内包泡が多くなり、光変換部材の光透過率が低下し、光源の発光効率が低くなるおそれがある。ガラス転移点Tgは、より好ましくは475℃以上、さらに好ましくは500℃以上である。なお、本明細書においてガラスのTgは、DTA曲線から算出されるものである。
【0041】
また、ガラスの密度は2.5〜5.0g/cm
3であることが好ましい。この範囲を外れると後述する蛍光体との比重差が大きくなり、蛍光体粒子がガラス粉末中に均一に分散されなくなり、光変換部材にした場合に変換効率が低下するおそれがある。密度はより好ましくは2.7〜4.5g/cm
3、さらに好ましくは3.0〜4.3g/cm
3である。
【0042】
さらに、ガラスの屈折率は、波長633nmにおいて、1.5以上であることが好ましい。蛍光体粒子との屈折率差が大きくなり、光変換部材にした場合に光散乱が大きくなり、変換効率が低下するおそれがある。屈折率はより好ましくは1.55以上、さらに好ましくは1.6以上である。
【0043】
〈ガラスの製造方法〉
次に、本発明のガラスは、常法に従って、上記の所望の組成となるようにガラス原料粉末を混合し、これを溶融した後、冷却、固化して得ればよい。後述する光変換部材を製造するためのガラス原料粉末としては、本製造方法により、一旦溶融後、固化して得られたガラスを、常法により粉砕して、所定の粒度として得られるガラス粉末を用いればよい。
【0044】
[光変換部材]
本光変換部材は、上記の通り、蛍光体粒子が分散されたガラスからなるものであり、ここで、本光変換部材を形成するガラスは、上記本ガラスで形成されるものである。このような光変換部材は、光源から発せられた光の波長を変換し、波長を変換した光を外部へ照射可能とする。ここで使用する光源としてはLED発光素子が好ましい。
【0045】
本光変換部材に使用する蛍光体粒子は、光源の波長を変換できるものであれば、その種類は限定されず、例えば、光変換部材に使用される公知の蛍光体粒子が挙げられる。このような蛍光体粒子としては、例えば、酸化物、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、ハロゲン化物、アルミン酸塩化物またはハロリン酸塩化物等の蛍光体からなる粒子が挙げられる。上記した蛍光体の中でも、青色の光を赤、緑または黄色に変換するものが好ましく、波長400〜500nmに励起帯を有し、波長500〜700nmに発光ピーク(λ
p)を有するものがより好ましい。また、より高波長の光を取り出すため波長410超〜500nmに励起対を有し、波長500〜700nmに発光のピーク(λp)を有するものがさらに好ましい。
【0046】
本光変換部材は、前述の通り光源光をほぼ外部に照射しないようにして、主として変換光を外部に照射するものである。緑色の発光を利用したい場合は、Eu
2+を付活したβ型サイアロン(以下、本明細書ではβ‐SiAlONと略す)を母材とした蛍光体粒子を、緑色〜黄色の発光を利用したい場合は、Ce
3+を付活したイットリウムとアルミニウムの複合酸化物(Y
3Al
5O
12;以下、本明細書ではYAGと略す)や、ルテチウムとアルミニウムの複合酸化物(Lu
3Al
5O
12;以下、本明細書ではLAGと略す)を母材とした蛍光体粒子を、橙色〜赤色の発光を利用したい場合は、Eu
2+を付活したCa固溶α型サイアロン(以下、本明細書ではα‐SiAlONと略す)や、(Ca(Sr)AlSiN
3)等のCASN系結晶を母材とした蛍光体粒子を用いる。
【0047】
上記したこれらの蛍光体は、ガラスとの焼結時の高い温度に耐え得るものであり、発光時に部材や蛍光体近辺の温度が上がり、輝度が低下するという温度消光現象が現れにくい蛍光体材料である。
【0048】
蛍光体は、光変換部材を通過する光が所望の色に変換されるのであれば、上記した化合物からなる群から選ばれる1以上の化合物を含有していればよく、具体的には、複数種の化合物を混合して含有していてもよいし、いずれか1つを単独で含有していてもよい。色設計の容易さの観点から、いずれか1つを単独で含有することが好ましい。
【0049】
蛍光体粒子の50%粒子直径(以下、本明細書では50%粒径と略す)D
50は、1〜30μmが好ましい。蛍光体粒子の50%粒径D
50が1μm未満であると、蛍光体粒子の比表面積が大きくなり、失活しやすくなるおそれがある。この50%粒径D
50は、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、特に好ましくは7μm以上である。一方、蛍光体粒子の50%粒径D
50が30μm超では、光変換部材中で分散性が悪くなり、光の変換効率が悪くなると共に、色度ムラが生じるおそれがある。そのため、50%粒径D
50は、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。なお、本明細書において、50%粒径D
50は、レーザ回折式粒度分布測定により得られた粒度分布から、体積基準での積算%における50%値として算出した値である。
【0050】
本光変換部材の量子収率は80%以上が好ましい。量子収率が80%未満では、光の利用効率が悪く、利用されずに消費される光が多いため好ましくない。光変換部材の量子収率は、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。なお、上記量子収率は、励起光を照射した時の、発光としてサンプルから放出されたフォトン数と、サンプルにより吸収されたフォトン数との比率で表される。上記フォトン数は、積分球法で測定する。
【0051】
光変換部材は、厚み300μm以下、例えば、50〜300μm、のプレート状が好ましい。光変換部材の厚みを50μm以上とすれば、光変換部材のハンドリングが容易になり、特に所望の大きさにカットする際に光変換部材の割れを抑制できる。光変換部材の厚みは、より好ましくは80μm以上、さらに好ましくは100μm以上、特に好ましくは120μm以上である。光変換部材の厚みを300μm以下とすれば、ガラスよりも熱伝導率が高い基板上に実装することで、蛍光体の発熱を逃がすことができ、温度消光を抑えることができる。その実装方法は、シリコーン樹脂などの接着剤で貼る方法や、光変換部材と高熱伝導率基板を焼結する方法、あるいはお互いの基板の平坦度を極端に高めて材料の融点や軟化点以下の低温で接合する方法が挙げられる。ここでは、高熱伝導率基板とは発光素子であってもよいし、厚み10μm以上有したバルク体であってもよい。光変換部材の厚みは、好ましくは270μm以下、さらに好ましくは250μm以下である。好ましくは220μm以下である。
【0052】
本光変換部材の平面形状は特に限定されない。例えば、光変換部材が光源と接して使用される場合、光源からの光の漏れを防ぐために、光変換部材の形状は光源の形状に合わせて製造される。光源は矩形状または円状が一般的であるため、光変換部材も矩形状または円状が好ましい。また、本光変換部材は板状、すなわち断面形状は矩形状が好ましい。光変換部材内で板厚にばらつきが小さいほど、面内の色のばらつきを小さくできるため好ましい。
【0053】
本光変換部材は基本的に蛍光体粒子が分散されたガラスからなる。ガラスと蛍光体粒子の混合割合は、特に限定されないが、光変換部材中に、体積分率で、蛍光体粒子を15%超40%以下、ガラスを60%以上85%未満が好ましい。
【0054】
蛍光体粒子を15%超かつガラスを85%未満で含有すれば、光源光をほぼ外部に照射しないようにして、主として変換光を外部に照射することができる。蛍光体粒子の体積分率は、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上である。ガラスの体積分率は、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは75%以下である。蛍光体粒子の含有量の上限は37.5%以下がより好ましく、35%以下がさらに好ましい。
【0055】
本光変換部材は、さらに、該ガラス中に、所定の耐熱フィラーが分散されてもよい。このように耐熱フィラーを含有させることで、焼成時における収縮を抑制し、蛍光体の分散状態を均一化できる。このようにして蛍光体を均一に分散できると、光変換部材から外部に照射される変換光の色バラつきを低減でき、安定した所望の色味を有する光を得ることができる。
【0056】
本光変換部材に耐熱フィラーを使用する場合は、光変換部材の製造時における焼成温度に対して耐熱性を有するものであればよく、例えば、アルミナ、ジルコニア、マグネシア等が挙げられ、これらのうち1種以上を含有してもよい。
【0057】
このように、ガラス中に蛍光体粒子と耐熱フィラーとを分散して構成する場合には、光変換部材の焼成時における収縮を十分に抑制する効果が挙げられる。そのために、ガラス、蛍光体粒子および耐熱フィラーを所定の割合で含有するようにする。例えば、これらの合計量を100%としたとき、体積分率で、耐熱フィラーを0.1〜30%含有することが好ましい。この含有率が0.1%未満であると十分に収縮を抑制できなくなるおそれがあり、30%を超えると光変換部材の光の光透過率が低下して光源の利用効率が低下するおそれがある。
【0058】
このとき、体積分率で、ガラスを50〜85%、蛍光体粒子を15〜40%、含有することが好ましい。このような含有量とすることで、光変換部材として、光源からの光の光透過率、蛍光体粒子の光変換量、をバランスよく製造でき、かつ、製造時の収縮を抑制して、光変換色度のムラが生じることを抑制できる。
【0059】
上記のように耐熱フィラーを含有させると、焼成時の収縮を抑制して、面内の光変換色度のばらつきを抑えることができ、色度ムラの少ない光を得ることができる。さらに、光変換部材の光透過率を高く維持できるため、光束量を維持しつつ、発光変換効率を良好なものとできる。
【0060】
[光変換部材の製造方法]
本光変換部材は、ガラス粉末および蛍光体粒子、さらに必要に応じて耐熱フィラーの混合粉末の焼結体からなることが好ましい。また、本光変換部材は、該混合粉末と樹脂および有機溶媒を混練して得られるスラリーを焼成した焼結体からなることがより好ましく、上記スラリーを透明樹脂に塗工し、乾燥させて得られるグリーンシートを焼結して得られるガラスシートからなることがさらに好ましい。なお、本明細書において上記樹脂および有機溶媒の混合物をビヒクルということもある。
【0061】
このように、焼結体として本光変換部材を製造するには、ガラス粉末、蛍光体粒子、樹脂および有機溶媒、さらに必要に応じて耐熱フィラーを混練してスラリーとする混練工程と、得られたスラリーを所望の形状に成形する成形工程と、成形されたスラリーを焼成して光変換部材とする焼成工程と、を順次行えばよい。
【0062】
(混練工程)
本発明における混練工程は、ガラス粉末、蛍光体粒子、樹脂および有機溶媒、さらに必要に応じて耐熱フィラーを混練してスラリーとするもので、これら原料を均一に混練できればよい。この混練にあたっては、公知の混練方法、例えば、ディゾルバー、ホモミキサー、ニーダー、ロールミル、サンドミル、アトライター、ボールミル、バイブレーターミル、高速インペラーミル、超音波ホモジナイザー、振とう機等を使用した混練を行えばよい。なお、光変換部材に耐熱フィラーを含有させる場合には、上記混練工程において、原料成分として耐熱フィラーも同時に混合してスラリーを得ればよい。
【0063】
ここで使用するガラス粉末は、上記したガラスの組成を満足するように公知のガラス粉末の複数種を混合して調製してもよいし、所定の熱特性を有するように成分を調合して混合し、電気炉などで溶融し、急冷して所定の組成を有するガラスとして製造しておき、これを粉砕し、分級して調製してもよい。
【0064】
このときガラス粉末の50%粒径D
50は3.5μm未満が好ましい。50%粒径D
50が3.5μm以上では、蛍光体粒子や耐熱フィラーがガラス粉末中に均一に分散されなくなり、光変換部材にした場合に光変換効率が低下したり、焼成時の収縮量が大きくなったりするおそれがある。50%粒径D
50は、より好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは1.9μm以下である。
【0065】
また、ガラス粉末の最大粒径D
maxは、30μm以下が好ましい。最大粒径D
maxが30μm超では、蛍光体粒子や耐熱フィラーがガラス粉末中に均一に分散されにくくなり、光変換部材を製造した場合に、蛍光体の光変換効率が低下したり、焼成時の収縮量が大きくなったりするおそれがある。D
maxは、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。なお、本明細書において、D
maxはレーザ回折式粒度分布測定により算出した最大粒径の値である。
【0066】
また、蛍光体粒子および耐熱フィラーは、上記光変換部材において説明した粒子である。
【0067】
そして、上記樹脂としては、エチルセルロース、ニトロセルロース、アクリル樹脂、酢酸ビニル、ブチラール樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ロジン樹脂などを使用できる。また、上記有機溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アルコール、エーテル、ケトン、エステル類などを使用できる。なお、グリーンシートの強度向上のためには、ビヒクルに、ブチラール樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ロジン樹脂などを含有することが好ましい。
【0068】
上記成分を混練する際、光変換部材中における蛍光体とガラスとの混合割合が上記説明の範囲となるように、蛍光体粒子およびガラス粉末を混合すればよい。具体的には、蛍光体粒子およびガラス粉末の合計量を100%としたとき、混合粉末中の各成分の含有量は、体積分率で、蛍光体粒子が15%超40%以下、ガラス粉末が60%以上85%未満とするのが好ましい。
【0069】
なお、耐熱フィラーを混合する場合には、蛍光体粒子、耐熱フィラーおよびガラス粉末の合計量を100%としたとき、混合粉末中の各成分の含有量は、体積分率で、蛍光体粒子が15%超40%以下、耐熱フィラーが0.1%以上30%以下、ガラス粉末が50%以上85%未満とするのが好ましい。
【0070】
蛍光体粒子を15%超、ガラス粉末を85%未満で含有すれば、光源光をほぼ外部に照射しないようにして、主として変換光を外部に照射することができる。
【0071】
蛍光体粒子の体積分率が40%超で、ガラス粉末の体積分率が60%未満では、蛍光体粒子とガラス粉末の混合体の焼結性を損ね、焼結体内部の空隙が増加し、さらに光変換部材の光透過率が低くなるおそれがある。また、変換される蛍光色の光が多くなり、所望の色の光が得られないおそれがある。
【0072】
また、耐熱フィラーの体積分率が0.1%以上であると、光変換部材の焼成時の収縮を効率的に抑制でき、蛍光体粒子が均一に分散している状態を保持でき好ましい。また、耐熱フィラーの体積分率が30%超となると、混合粉末の焼結性を損ね、焼結体内部の空隙が増加し、さらに光変換部材の光透過率が低くなるおそれがある。
【0073】
樹脂および有機溶剤からなるビヒクルは、上記混合粉末に対して、次の成形工程で所定形状に成形可能な程度の粘度となる量を混合してスラリーとすればよい。
【0074】
(成形工程)
本発明における成形工程は、上記混練工程で得られたスラリーを、所望の形状に成形するものである。成形方法としては、所望の形状が付与できれば、特に制限されるものではなく、例えば、プレス成形法、ロール成形法、ドクターブレード成形法などの公知の方法が挙げられる。ドクターブレード成形法で得られるグリーンシートは、均一な膜厚の光変換部材を大面積で効率よく製造できるため好ましい。
【0075】
グリーンシートは、例えば、以下の工程で製造できる。ガラス粉末、蛍光体粒子および耐熱フィラーをビヒクルに混練し、脱泡してスラリーを得る。得られたスラリーをドクターブレード法により、樹脂フィルム上に塗工し、乾燥する。乾燥後、所望の大きさに切り出し、樹脂フィルムを剥がして、グリーンシート(混練物)を得る。さらに、これらをプレスし、積層体にすることで、所望の厚みの成形体を確保できる。
【0076】
ここで、スラリーを塗工する樹脂フィルムとしては、剥離性を有するものであれば、特に限定されない。ここで使用する樹脂フィルムは、均一な膜厚のグリーンシートが得られるように、均一な厚さのものを使用することが好ましく、このような樹脂フィルムとしては、例えば、PETフィルムなどが挙げられる。
【0077】
(焼成工程)
本発明の焼成工程は、成形工程で得られた成形したスラリーを焼成することで焼結させ、光変換部材とする工程である。この焼成工程における焼成は、混合粉末を焼結させて、蛍光体粒子と耐熱フィラーとを分散して含有するガラスを得るものであり、公知の焼成方法により焼結ガラス体を製造すればよい。
【0078】
焼成工程は焼成して焼結ガラス体とできれば、その条件は特に限定されない。内包泡を低減するためには焼成雰囲気は10
3Pa以下の減圧雰囲気もしくは酸素濃度が1〜25%の雰囲気が好ましい。また、本工程における焼成温度の最高温度を700℃以下とするもので、この最高温度は500〜700℃の範囲が好ましい。また、焼成時間は0.5〜10時間の範囲が好ましい。本発明の光変換部材の製造方法において、上記範囲外で実施すると、光変換部材の量子収率が低下するおそれがある。
【0079】
得られた光変換部材は、研磨することで表面平坦性を高め、基材との密着性を高めることができる。研磨した場合の光変換部材の表面平坦性は、JIS2001年に定められるJIS−B0601表面粗さにおいて、Raが0.3μm以下、好ましくは0.2μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。また、生産性の効率化のため、基材との接着側のみ研磨することも考えられる。
【0080】
[照明光源]
本発明の照明光源は、上記本光変換部材と、該光変換部材を通して外部へ光を照射可能な光源と、から構成される。
【0081】
上記のようにして得られた光変換部材と光源とを組合せることで、所望の色を発する照明光源として利用できる。光変換部材は、光源と接して配置されると、光の漏れを防げるため好ましい。また、光源としては、LED発光素子が好ましく、青色LED発光素子がより好ましい。LED発光素子を光源として使用すれば、LED照明光源として利用できる。
【0082】
このような照明光源の一実施形態としては、
図1に示した照明光源が挙げられる。この照明光源10は、凹部を有する基板11と、上記凹部中央に配置されたLED12と、基板11の凹部を覆うように配置された光変換部材13と、から構成されている。このとき基板としては、照明光源として用いられている従来公知の材質、例えばガラスセラミックス製、等であればよく特に限定されない。この基板11は、LEDをパッケージ化するため、LEDを配置、固定するための凹部を有している。
【0083】
そして、この凹部の中央に、LED12が配置、固定され、さらに、凹部の内部を覆うように、基板11に光変換部材13が接合されLED12を封止している。したがって、LED12が発する光は直接又は基板11に反射してから基板11の開口側に向かい、光変換部材13を通過するようになる。このとき、光変換部材13を通過する光は、光変換部材13の内部に有する蛍光体粒子により波長が変換されて変換光となり、得られた変換光が外部に照射される。
【0084】
また、本発明の照明光源の他の実施形態としては、
図2に示した照明光源が挙げられる。
図1と同様の部材については
図1と同じ番号を記した。
図2に示した照明光源10は、凹部を有する基板11と、上記凹部中央に配置されたLED12と、LED12の上面に配置された光変換部材13と、から構成されている。この実施形態では、光変換部材13をLED12の上に積層して設けている点が
図1に示した照明光源とは異なり、このときLED12と光変換部材13とは接着剤で固定される。ここで用いる接着剤としては、固化後に光透過性の高いものを用いる。基板、およびLEDは
図1に示した照明光源で説明された材料と同様のものを用いることができる。
【0085】
本発明の照明光源のさらに他の実施形態としては、
図3に示した照明光源が挙げられる。
図3は、LEDが発する光を光変換部材で反射した反射光を利用する例である。
図1と同様の部材については
図1と同じ番号を記した。
図3に示した照明光源20は、凹部を有する基板11と、上記凹部中央に配置されたLED12と、LED12から大きく離した位置に、LED12の発する光が斜めに入射するような角度で配置された光変換部材13と、LED光源12と光変換部材13との間に配置されたレンズ21と、から構成されている。基板11と、光変換部材13と、レンズ21とは任意の部材によって保持、固定し、所定の構造を維持できるようにしてもよい。
図3において、LED12が発する光Lはレンズ21を通して集光され、光変換部材13に届いた光は光変換部材13の内部に有する蛍光体粒子により波長が変換されて変換光となり、一部は光変換部材13を透過し、一部は反射し、反射光L’となる。
【0086】
また、本発明の照明光源のさらに他の実施形態としては、
図4に示した照明光源が挙げられる。
図4は光源としてレーザーを用い、光変換部材で反射した反射光を利用する例である。
図4に示した照明光源30は、レーザーダイオード31と、レーザーダイオード31から離した位置に、レーザーダイオード31の光が斜めに入射するような角度で配置された光変換部材13と、から構成されている。レーザーダイオード31と光変換部材13とは任意の部材によって、固定し、所定の構造を維持できるようにしてもよい。
【実施例】
【0087】
以下、実施例、比較例および参考例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。なお、以下に記載の例1は、光変換部材を製造するにあたって用意したガラスの製造、特性等について示した参考例で(例1−1〜例1−26は実施参考例、例1−27〜1−37は比較参考例)、これらはまとめて表1〜2に示している。ここで、実施参考例は本光変換部材のガラス組成の範囲に入っているガラスを示し、比較参考例は本光変換部材のガラス組成の範囲に入っていないガラスを示している。なお、表1〜2の「−」は未評価であることを示す。
【0088】
また、以下に記載の例2は、実施例(例2−1〜例2−8、例2−12〜18)および比較例(例2−9〜例2−11、例2−19〜例2−21)を示したものである。
【0089】
[例1:ガラスの製造]
酸化物基準のモル%表記で、それぞれ表1〜2で表示した組成になるように各成分の原料を調合し、ガラス原料を混合しガラス組成物とした。これを、例1−1〜例1−18、例1−27は白金坩堝中で1550℃に、例1−19〜例1−26、例1−28〜例1−37は白金坩堝で1400℃に、それぞれ電気炉で加熱、溶融して、融液の一部を回転ロールで急冷して、ガラスリボンを形成した。また、融液の一部は成形後冷却し、ガラス板を得た。なお、例1−1〜例1−37に示した組成において、Bi
2O
3およびPbOは含有していない。
【0090】
得られたガラスリボンを、ボールミルで粉砕し、#100メッシュの篩を通すことで、例1−1〜例1−37の各例における、50%粒径D
50が3μmの粉末(ガラス粉末)を得た。
【0091】
各例のガラスのガラス転移点Tgは、示差熱分析計(リガク社製、商品名:TG8110)を使用して測定した。また、ガラス粉末の50%粒径D
50は、レーザ回折式粒度分布測定(島津製作所社製、装置名:SALD2300)により算出した。
ガラスの熱膨張係数(CTE)は、熱機械分析装置(TMA)により、50〜350℃の平均線熱膨張係数(×10
−7)として求めた。
比重dは、各例で得られたガラス板を用いてアルキメデス法によりを測定した。
なお、例1−15〜例1−18における熱膨張係数、比重は、ガラスの組成から計算により算出した値である。
【0092】
焼結性は、次のように評価した。まず、各例で得られたガラス粉末の3g程度を圧粉体に成型し、これを表1〜2に記載した焼成温度まで10℃/分の速度で昇温した。次いで、焼成温度で30分保持した後、電気炉のスイッチを切り、放冷し、焼成体を得た。得られた焼成体が焼成後に流動し、角が丸くなってガラス質の光沢が出ている焼成体を「○」、そうでないものを「×」と評価した。
【0093】
耐水性は、ETAC社製の高温高湿槽TH401HE(商品名)を用いて85℃/85%の環境に所定時間曝すことで試験した。サンプルは、各例で得られたガラス板を厚み1mm、大きさ20mm×20mmの板状に加工後、その両面を鏡面研磨したものを用いた。
【0094】
6時間後、24時間後、168時間後(1週間後)、にサンプルを取り出して確認し、1mm以上の白い斑点が5個以上析出しているか否かにより判断した。6時間後確認した際に析出していたガラスを「×」、24時間後確認した際に析出していたガラスを「△」、168時間後確認した際に析出していたガラスを「○」、168時間後でも析出が確認できなかったガラスを「◎」、と評価した。
【0095】
なお、参考として、ソーダライムガラス(SLS)も同一の試験を行って評価したところ「○」であった。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
[例2:光変換部材の製造]
(1)次に、例1で得られたガラス粉末を使用して、乾式気流分級機を利用し、さらに粒度分布を狭い分布になるように調整し、50%粒径D
50が1.4〜1.6μm、最大粒径D
maxが21μm以下とし、光変換部材を次のように製造した。なお、ガラス中に分散させる蛍光体粒子として、50%粒径D
50が16μm、450nm励起で蛍光体ピーク波長が約590nmであるα−SiAlON:Eu
2+蛍光体を使用した。また、ここで使用されるフリット(ガラス粉末)は、例1−1で得られたガラスをガラス1、例1−2で得られたガラスをガラス2、というように例1の各番号に対応するようにガラス37までガラス番号を付与して記載した。
【0099】
表3に示すようなガラスと蛍光体の組み合わせで、ガラス粉末および蛍光体粒子を体積分率で80:20となるように、それぞれ混合した。さらにビヒクルと混練し、脱泡してスラリーを得た。このスラリーをPETフィルム(帝人社製)にドクターブレード法で塗工した。これを、乾燥炉で約30分間乾燥し、約7cm四方の大きさに切り出し、PETフィルムを剥がして、厚み0.3〜0.5mmのグリーンシートを得た。
【0100】
これを、離型剤を塗布したムライト基板に載せて、表3に示すような焼成温度で焼成雰囲気は大気焼成とし、例2−1〜2−8の光変換部材を製造した。得られた光変換部材の厚みは約0.2mmであった。焼成条件は、表3に記載した焼成温度まで10℃/分の速度で昇温し、次いで、焼成温度で30分保持した後、電気炉のヒーターを切り放冷した。
【0101】
得られた例2−1〜2−8の光変換部材について、試験用パッケージを作製し、量子収率、輝度低下、の各特性を測定、評価した。試験用パッケージは、凹部を有するガラスセラミックス製の基板の凹部中央に、LED(Cree社製、商品名:EZ1000)にシリコーン接着材(信越化学工業社製)を介して1mm□×厚み200μmの光変換部材を積層接着したものを、配置して得た。
【0102】
光変換部材の量子収率は、得られた光変換部材の中央部を1cm四方の大きさに切り出し、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製、商品名:Quantauru−QY)を使用して、励起光波長450nmにて測定した。
【0103】
例1−1、例1−6、例1−7のガラスを厚さ1mm、大きさ20mm×20mmの板状に加工後、その両面を鏡面研磨したものを用い、光透過率をPerkin Elmer社製のUV−Vis Spectrometer Lambda950により測定したところ、450nmの透過率はそれぞれ、86.9%、86.9%、86.5%であった。
【0104】
光変換部材の輝度低下量測定試験は、LEDに750mAの電流を流し、100℃の試験環境下で200時間試験を行い、その試験前後での全光束量の変化(低下)を測定し算出した。このとき、全光束量は、ラブスフェア社製の積分球を用いて測定した。
【0105】
【表3】
【0106】
(2)また、比較例として、表4に示す組成を有するガラスを例1と同様の操作により作製し、これを用いて例2と同様の操作により光変換部材を得た。表4に示すガラス組成の焼結性、耐水性は○だった。得られた光変換部材について、上記例2と同様の操作により量子収率、輝度低下を調べたところ、量子収率は良好であったものの、輝度低下が著しく、寿命が短い部材となってしまうことがわかった。試験後のサンプルをSTEM分析したところ、蛍光体粒子とガラスとの界面にビスマスの金属コロイドが確認された。これは、光励起された蛍光体に残される、ストークスシフトに相当する振動エネルギーが蛍光体近傍に溜まり発熱し、加えて青色LEDの光を起因とする作用により最終的には光変換部材を構成するガラスが還元され、コロイドが形成したものと考えられる。その着色により、輝度が低下したものと思われる。
【0107】
【表4】
【0108】
(3)さらに、ガラス1とガラス19の、蛍光体含有量、厚み、焼成温度、を表5に記載のようにして、例2と同様の操作により光変換部材を得た。得られた光変換部材のLED光吸収率について算出し、表5にまとめて示した。
【0109】
LED光吸収率は、凹部を有するガラスセラミック製の基板の凹部中央に、LED(Cree社製、商品名:EZ1000)を配置し、LEDを覆うように基板サイズ5〜7mm四方の光変換部材を配置したものを用いて、次式のように算出した。
LED光吸収率=[LED光強度−光変換部材の青色抜け強度]/LED光強度
(式中、[LED光強度]、[光変換部材の青色抜け強度]は、いずれも410nm〜490nmの光強度を積算した数値である。)
【0110】
【表5】
【0111】
表3〜5より明らかなように、本発明の光変換部材は、特定のガラス組成のガラス粉末と蛍光体粒子で構成されており、蛍光体粒子を15体積%超含有しても十分に焼成でき、また長時間にわたる使用において輝度低下が3%以下の低いレベルに抑えることができる。また、本発明の光変換部材は、量子収率が85%以上と良好であり、多量の蛍光体粒子を含有させることで、光源となるLED光の吸収率が98%以上と非常に優れたものとなることがわかった。
【0112】
なお、例2−9〜2−11は、Bi
2O
3が多く含まれたガラスを用いており、耐光熱試験後において、蛍光体とガラスの界面近傍のガラス中に金属コロイドを形成しており、輝度低下が大きくなっていた。
【0113】
光励起された蛍光体は、振動緩和を伴い電子励起状態から基底状態へと輻射遷移するが、その際、ストークスシフトに相当する振動エネルギーが蛍光体近傍に留まり、発熱する。このとき、Bi
2O
3を含むガラスは450nmの光を若干吸収し、蛍光体近傍ではそもそも発熱しているが、上記原因によりさらに高温になり、ガラスが光を起因とする作用で還元され、コロイド着色して、これにより輝度が低下したものと考えられる。これはPbOを含有するガラスにおいても同様と考えられる。
【0114】
一方、本願発明のガラス組成では、上記のようなコロイド形成の問題が生じにくく、輝度低下がほとんど見られず、優れた光変換部材が得られるものである。