(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1等を参照しながら、本実施形態に係る静電チャック装置の好ましい例や、複合焼結体や静電チャック部材の好ましい例について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などを適宜異ならせている場合がある。また以下の例は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に好ましい例を説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、数や量や位置やサイズや割合や部材等などについて、省略、追加、置換、その他の変更が可能である。
【0021】
[静電チャック装置]
図1は、本実施形態の静電チャック装置を示す断面図である。本実施形態の静電チャック装置1は、一主面(上面)側を載置面とした平面視円板状の静電チャック部2と、この静電チャック部2の下方に設けられて静電チャック部2を所望の温度に調整する、厚みのある平面視円板状の温度調節用ベース部3と、を好ましく備えている。また、静電チャック部2と温度調節用ベース部3とは、静電チャック部2と温度調節用ベース部3の間に設けられた接着剤層8を介して接着されている。
以下、順に説明する。
【0022】
(静電チャック部)
静電チャック部2は、上面を半導体ウエハ等の板状試料Wを載置する載置面11aとした載置板11と、この載置板11と一体化され該載置板11の底部側を支持する支持板12と、これら載置板11と支持板12との間に設けられた静電吸着用電極13および静電吸着用電極13の周囲を絶縁する絶縁材層14と、を有している。載置板11および支持板12は、本発明における「基体」に該当する。
【0023】
載置板11および支持板12は、重ね合わせた面の形状を同じくする円板状の部材であることが好ましい。載置板11および支持板12は、機械的な強度を有し、かつ腐食性ガスおよびそのプラズマに対する耐久性を有するセラミックス焼結体からなることが好ましい。載置板11および支持板12の形成材料について、詳しくは後述する。
【0024】
載置板11の載置面11aには、直径が板状試料の厚みより小さい突起部11bが複数所定の間隔で形成され、これらの突起部11bが板状試料Wを支える。
【0025】
載置板11、支持板12、静電吸着用電極13および絶縁材層14を含めた全体の厚み、即ち、静電チャック部2の厚みは任意に選択できるが、例えば、一例として0.7mm以上かつ5.0mm以下である。
【0026】
例えば、静電チャック部2の厚みが0.7mmを下回ると、静電チャック部2の機械的強度を確保することが難しくなる場合がある。静電チャック部2の厚みが5.0mmを上回ると、静電チャック部2の熱容量が大きくなり、載置される板状試料Wの熱応答性が劣化し、静電チャック部の横方向の熱伝達の増加により、板状試料Wの面内温度を所望の温度パターンに維持することが難しくなる場合がある。なお、ここで説明した各部の厚さは一例であって、前記範囲に限るものではない。条件に応じて任意に変更してよい。
【0027】
静電吸着用電極13は、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料Wを固定するための静電チャック用電極として用いられる。その用途によって、その形状や、大きさが適宜調整されえる。
【0028】
静電吸着用電極13は、任意に選択される材料を用いて形成することができる。静電吸着用電極13は、例えば、酸化アルミニウム−炭化タンタル(Al
2O
3−Ta
4C
5)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−タングステン(Al
2O
3−W)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al
2O
3−SiC)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タングステン(AlN−W)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タンタル(AlN−Ta)導電性複合焼結体、酸化イットリウム−モリブデン(Y
2O
3−Mo)導電性複合焼結体等の導電性セラミックス、あるいは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属により、形成されることが好ましい。
【0029】
静電吸着用電極13の厚みは、特に限定されるものではなく、任意に選択できる。静電吸着用電極13は、例えば、0.1μm以上かつ100μm以下の厚みを選択することができ、1μm以上50μm以下の厚みがより好ましく、5μm以上かつ20μm以下の厚みが更に好ましい。
【0030】
静電吸着用電極13の厚みが0.1μmを下回ると、充分な導電性を確保することが難しくなる場合がある。静電吸着用電極13の厚みが100μmを越えると、静電吸着用電極13と載置板11および支持板12との間の熱膨張率差に起因し、静電吸着用電極13と載置板11および支持板12との接合界面にクラックが入り易くなる場合がある。
【0031】
このような厚みの静電吸着用電極13は、スパッタ法や蒸着法等の成膜法、あるいはスクリーン印刷法等の塗工法により容易に形成することができる。
【0032】
絶縁材層14は、静電吸着用電極13を囲繞して腐食性ガスおよびそのプラズマから静電吸着用電極13を保護するとともに、載置板11と支持板12との境界部、すなわち静電吸着用電極13以外の外周部領域を接合一体化するものである。絶縁材層14は、載置板11および支持板12を構成する材料と同一の組成の、または主成分が同一の、絶縁材料により構成されている。
【0033】
(温度調整用ベース部)
温度調節用ベース部3は、静電チャック部2を所望の温度に調整するためのもので、厚みのある円板状の部材である。この温度調節用ベース部3としては、例えば、その内部に冷媒を循環させる流路3Aが形成された液冷ベース等が好適に使用できる。
【0034】
この温度調節用ベース部3を構成する材料としては、熱伝導性、導電性、加工性に優れた金属、またはこれらの金属を含む複合材であれば、特に制限はない。例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銅(Cu)、銅合金、ステンレス鋼(SUS) 等が好適に用いられる。この温度調節用ベース部3の少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理が施されているか、あるいはアルミナ等の絶縁膜が成膜されていることが好ましい。
【0035】
温度調節用ベース部3の上面側には、接着層6を介して、絶縁板7が接着されている。接着層6は、任意に選択される材料で形成され、好ましくは、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性、および、絶縁性を有するシート状またはフィルム状の接着性樹脂からなる。接着層の厚さは任意に選択でき、例えば厚み5〜100μm程度に形成される。絶縁板7はポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などの耐熱性を有する樹脂の薄板、シートあるいはフィルムからなることが好ましい。
【0036】
なお、絶縁板7は、樹脂シートに代え、絶縁性のセラミック板でもよく、またアルミナ等の絶縁性を有する溶射膜でもよい。
【0037】
(フォーカスリング)
フォーカスリング10は、温度調節用ベース部3の周縁部に載置される、平面視で円環状の部材である。フォーカスリング10は、任意に選択される材料で形成できるが、例えば、載置面に載置されるウエハと同等の電気伝導性を有する材料を形成材料とすることが好ましい。このようなフォーカスリング10を配置することにより、ウエハの周縁部においては、プラズマに対する電気的な環境をウエハと略一致させることができ、ウエハの中央部と周縁部とでプラズマ処理の差や偏りを生じにくくすることができる。
【0038】
(その他の部材)
静電吸着用電極13には、静電吸着用電極13に直流電圧を印加するための、給電用端子15が接続されている。給電用端子15は、温度調節用ベース部3、接着剤層8、及び、支持板12を厚み方向に貫通する貫通孔16の内部に挿入されている。給電用端子15の外周側には、絶縁性を有する碍子15aが設けられている。この碍子15aにより、金属製の温度調節用ベース部3に対して給電用端子15が絶縁されている。
【0039】
図1では、給電用端子15を一体の部材として示しているが、複数の部材が電気的に接続して給電用端子15を構成していてもよい。給電用端子15は、熱膨張係数が互いに異なる温度調節用ベース部3および支持板12に挿入されている。このため、例えば、温度調節用ベース部3および支持板12に挿入されている給電用端子15の部分については、それぞれ異なる材料で構成することも好ましい。
【0040】
給電用端子15のうち、静電吸着用電極13に接続され、支持板12に挿入されている部分(取出電極)の材料としては、耐熱性に優れた導電性材料であれば特に制限されるものではない。例えば、前記部分の材料が、熱膨張係数が静電吸着用電極13および支持板12の熱膨張係数に近似したものが好ましい。例えば、Al
2O
3−TaCなどの導電性セラミック材料からなることも好ましい。
【0041】
給電用端子15のうち、温度調節用ベース部3に挿入されている部分は、例えば、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、コバール合金等の金属材料からなることが好ましい。
【0042】
これら2つの部材は、柔軟性と耐電性を有するシリコン系の導電性接着剤で接続するとよい。
【0043】
静電チャック部2の下面側には、ヒータエレメント5が設けられている。ヒータエレメント5の材料や厚さなどの条件は、任意に選択できる。好ましいヒータエレメント5の一例として、厚みが0.2mm以下、好ましくは0.1mm程度の一定の厚みを有する非磁性金属薄板、例えばチタン(Ti)薄板、タングステン(W)薄板、及びモリブデン(Mo)薄板等から選択される薄板を、フォトリソグラフィー法やレーザー加工により、所望のヒータ形状に、例えば帯状の導電薄板を蛇行させた形状の全体輪郭を円環状に加工することで、好ましいヒータエレメントが得られる。
【0044】
このようなヒータエレメント5は、静電チャック部2に非磁性金属薄板を接着した後に、静電チャック部2の表面で加工成型することで設けてもよい。あるいは、静電チャック部2とは異なる位置でヒータエレメント5として加工成形したものを、静電チャック部2の表面に転写印刷することで、ヒータエレメント5を設けてもよい。
【0045】
ヒータエレメント5は、厚みの均一な耐熱性および絶縁性を有するシート状またはフィルム状であるシリコン樹脂またはアクリル樹脂からなる接着層4により、支持板12の底面に、接着及び固定される。
【0046】
ヒータエレメント5には、ヒータエレメント5に給電するための給電用端子17が接続されている。給電用端子17を構成する材料としては、先の給電用端子15を構成する材料と同等の材料を用いることができる。給電用端子17は、それぞれが温度調節用ベース部3に形成された貫通孔3bを貫通するように、設けられている。
【0047】
また、ヒータエレメント5の下面側には温度センサー20が設けられている。本実施形態の静電チャック装置1では、温度調節用ベース部3と絶縁板7を厚さ方向に貫通するように、設置孔21が形成され、これらの設置孔21の最上部に温度センサー20が設置されている。なお、温度センサー20はできるだけヒータエレメント5に近い位置に設置することが望ましい。このため、
図1に示す構造から更に接着剤層8側に突き出るように、設置孔21を延在して形成し、温度センサー20とヒータエレメント5とを近づける構成にしてもよい。
【0048】
温度センサー20は任意に選択できるが、一例として、石英ガラス等からなる直方体形状の透光体の上面側に蛍光体層が形成された蛍光発光型の温度センサーであることも好ましい。前記構成の温度センサー20が、透光性および耐熱性を有するシリコン樹脂系接着剤等により、ヒータエレメント5の下面に接着されている。
【0049】
蛍光体層は、ヒータエレメント5からの入熱に応じて蛍光を発生する材料からなる。蛍光体層の形成材料としては、発熱に応じて蛍光を発生する材料であればよく、多種多様の蛍光材料を任意に選択できる。蛍光体層の形成材料は、好ましい例として、発光に適したエネルギー順位を有する希土類元素が添加された蛍光材料、AlGaAs等の半導体材料、酸化マグネシウム等の金属酸化物、及び、ルビーやサファイア等の鉱物を挙げることができ、これらの材料の中から適宜選択して用いることができる。
【0050】
ヒータエレメント5に対応する温度センサー20は、それぞれ給電用端子などと干渉しない位置であって、ヒータエレメント5の下面周方向の、任意の位置にそれぞれ設けられている。
【0051】
これらの温度センサー20の蛍光からヒータエレメント5の温度を測定する温度計測部22の種類や構成は任意に選択できる。一例として、
図1では、温度計測部22は、温度調節用ベース部3の設置孔21の外側(下側)に前記蛍光体層に対し励起光を照射する励起部23と、蛍光体層から発せられた蛍光を検出する蛍光検出器24と、励起部23および蛍光検出器24を制御するとともに前記蛍光に基づき主ヒータの温度を算出する制御部25とから構成されている。
【0052】
さらに、静電チャック装置1は、温度調節用ベース部3から載置板11までをそれらの厚さ方向に貫通するように設けられたガス穴28を有している。ガス穴28の内周部には筒状の碍子29が好ましく設けられている。
【0053】
このガス穴28には、ガス供給装置(冷却手段)が接続される。ガス供給装置からは、ガス穴28を介して、板状試料Wを冷却するための冷却ガス(伝熱ガス)が供給される。冷却ガスは、ガス穴を介して、載置板11の上面において複数の突起部11bの間に形成される溝19に供給され、板状試料Wを冷却する。
【0054】
さらに、静電チャック装置1は、温度調節用ベース部3から載置板11までをそれらの厚さ方向に貫通するように設けられた、不図示のピン挿通孔を有していることが好ましい。ピン挿通孔は、例えばガス穴28と同様の構成を採用することができる。ピン挿通孔には、板状試料離脱用のリフトピンが挿通される。
静電チャック装置1は、以上のような構成となっている。
【0055】
(複合焼結体)
次に、本実施形態の基体(載置板11および支持板12)について詳述する。
図2は、基体の好ましい形成材料である、本発明に係る複合焼結体の例を示す模式図である。
以下に、前記基体に好ましく使用できる、本発明に係る複合焼結体の好ましい例について説明する。
【0056】
複合焼結体100は、主相である酸化アルミニウムと、副相である炭化ケイ素と、を含む、セラミックスの複合焼結体から形成されている。複合焼結体100は、酸化アルミニウムの結晶粒内に、ムライト(Mullite)を有する。なお主相とは全体の50%より大きい面積比率や体積比率を有する領域であり、副相とは前記主相ではない領域と考えても良い。主相が、75%以上大きい、あるいは80%以上大きい、面積比率や体積比率を有することも好ましい。より具体的には、例えば、上記主相は、85〜96体積%を有することも好ましく、87〜95%体積%を有することもより好ましい。
【0057】
このような複合焼結体100では、ムライトが存在しない焼結体と比べ、熱伝導率が低下する。これにより、静電チャック装置が有するヒータや、使用環境におけるプラズマ等の熱源の影響が緩和され、基体全体として均熱性が向上する。
【0058】
なおムライトは、炭化ケイ素や酸化アルミニウムと比べると、プラズマに曝露された際の耐久性が低い。そのため、ムライトが酸化アルミニウムの結晶粒界に存在すると、プラズマ環境下で複合焼結体100を用いた場合に、結晶粒界のムライトが消耗しやすい。これにより、ムライトが結晶粒界に存在する複合焼結体は、プラズマ環境下で物性が変化しやすくなる。結晶粒界に存在するムライトの量が多いと物性の変化も大きくなると考えられる。
【0059】
これに対し、本実施形態の基体に使用される複合焼結体100では、ムライトが酸化アルミニウムの結晶粒内に存在する。結晶粒界には、ムライトがない、あるいは非常に少ない。このため、プラズマ環境下で使用したとしても、物性が変化しにくく好ましい。
【0060】
ここで、「ムライト」は、高温下で安定な、ケイ酸アルミニウム化合物である。ムライトの化学組成は、3Al
2O
3・2SiO
2‐2Al
2O
3SiO
2の範囲が可能である。ムライトのAl/Si比は3から4まで変化しうる。本発明における「ムライト」は、3Al
2O
3・2SiO
2で表わされる化合物や、Al
6O
13Si
2で表わされる化合物であっても良い。
【0061】
図2に示す複合焼結体100は、酸化アルミニウムの結晶粒である第1結晶粒110と、ムライトを含む結晶粒である第2結晶粒120と、炭化ケイ素の結晶粒である第3結晶粒130と、を有している。なお第3結晶粒130はムライトをふくまない。
【0062】
複数の第2結晶粒120は、複数の第1結晶粒110が焼結することで構成される主相において、第1結晶粒110の結晶粒内に分散している。また、複数の第3結晶粒130は、第1結晶粒110の結晶粒界110aに存在している。
【0063】
その他、複合焼結体100は、炭化ケイ素の結晶粒である第4結晶粒140も有している。第4結晶粒は、第1結晶粒110の結晶粒内に分散している。第4結晶粒140もムライトを含まない。炭化ケイ素の結晶粒において、第3結晶粒130は結晶粒界に存在し、第4結晶粒140は第1結晶粒の結晶粒内に分散する。第4結晶粒の平均結晶粒径は任意に選択できるが、0.04〜0.8μmであると好ましく、より好ましくは0.1〜0.3μmである。第4結晶粒140の平均粒径は、第3結晶粒130の平均粒径よりも小さいことが好ましい。
【0064】
ムライトを含む第2結晶粒120については、例えば、複合焼結体100の任意の断面をエネルギー分散型X線分析(EDX)で元素分析することで確認することができる。EDXで「ケイ素原子が検出された箇所」のうち、「炭素原子が検出されない箇所」には、炭化ケイ素と酸化アルミニウムとが反応して、ムライトが生じていると判断できる。そのようなムライトが生じている箇所を含む結晶粒を、第2結晶粒120として特定する。
【0065】
第1結晶粒110の平均結晶粒径は任意に選択してよいが、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、0.8μm以上1.6μm以下であるとより好ましい。第1結晶粒110の平均結晶粒径が0.5μm以上であると、粒界数が多すぎることなく、熱伝導率の低下を抑えることができる。そのため、複合焼結体100が加熱または冷却される際に、温度変化に対し追従しやすくなる。第1結晶粒の平均結晶粒径は、後述するように、電子顕微鏡写真をとり、200個以上の第1結晶粒の結晶粒の長軸径を算出し、この算術平均値を、平均結晶粒径とすることができる。
【0066】
また、第1結晶粒110の平均結晶粒径が10μm以下であると、粒界数が少なすぎることなく、熱伝導率の増加を抑えることができる。そのため、複合焼結体100が均熱性を担保しやすくなる。
【0067】
第2結晶粒120は、複合焼結体100の原料である炭化ケイ素と酸化アルミニウムとが反応して生じるムライトを含む。1つの第2結晶粒120に着目した場合、第2結晶粒120は、ムライトを一部含み残部が炭化ケイ素であってもよく、ムライトのみで構成されていてもよい。ムライトを一部含む場合、第2結晶粒中のムライトの割合は、必要に応じて設定できる。
【0068】
第2結晶粒120の平均結晶粒径は、第3結晶粒130の平均結晶粒径よりも小さいことが好ましい。第2結晶粒120の平均結晶粒径は、任意に選択できる。例えば、本実施形態の複合焼結体において、第2結晶粒120の平均結晶粒径は、0.03μm以上0.2μm以下であることが好ましい。
【0069】
第2結晶粒120の平均結晶粒径が0.03μm以上であることにより、第2結晶粒120が複合焼結体100の熱伝導率に対して十分な影響を及ぼすことができる。また、第2結晶粒120の平均粒径が0.2μm以下であることにより、ムライトが好適に形成される。
【0070】
第3結晶粒130の平均結晶粒径は任意に選択できるが、0.9μm以下であると好ましい。第3結晶粒130の平均結晶粒径が0.9μm以下であることにより、複合焼結体100に印加される電界が第3結晶粒内部で減衰されにくく、損失係数を悪化させにくい。第3結晶粒130の平均結晶粒径の下限は、任意に選択できる。
【0071】
第2結晶粒120は、粒界の第3結晶粒130よりも小さいほうが好ましい。第2結晶粒120が小さいほど、ムライト化しやすく、また所望の物性を得やすい。なおムライト化とは、ムライトが含まれている結晶が形成されることを意味する。
【0072】
複合焼結体100の任意の断面において、第3結晶粒130の全体に対する、第2結晶粒120の全体の割合は、任意で選択できるが、面積比で20%以上40%以下であることが好ましい。面積比で25%以上であってもよい。面積比で35%以下であってもよい。
【0073】
複合焼結体において、第3結晶粒130全体に対する第2結晶粒120全体の割合が、面積比で20%以上40%以下である場合、ムライトの含有率を、後述する所望の値とすることが容易になる。また所望の物性を得やすい。
【0074】
なお、本発明において、複合焼結体100における「第2結晶粒120全体の割合」は、複合焼結体の任意で選択される視野の走査型電子顕微鏡写真から算出する。
【0075】
すなわち、無作為に選ばれた視野にて拡大倍率10000倍の電子顕微鏡写真を撮影し、この電子顕微鏡写真に写された結晶粒界に存在する炭化ケイ素の結晶粒(第3結晶粒130)の総面積を「第3結晶粒130の全体」の面積とする。一方、上記電子顕微鏡写真において、上述の方法で「第2結晶粒120」を特定し、「「第2結晶粒120の全体」の面積を求める。このようにして求められた面積から、「第3結晶粒130の全体」に対する「第2結晶粒120の全体」の割合を、面積比で求める。
【0076】
同様の処理を、複合焼結体100内の別部分でも行い、2つの視野の電子顕微鏡写真において評価を行い、平均値を「第3結晶粒130の全体に対する、第2結晶粒120の全体の割合」を示す面積比として求める。
【0077】
なお、第3結晶粒130の他、結晶粒界110aには、第2結晶粒120と同様のムライトを含む結晶粒が存在していてもよい。しかしながら、結晶粒界110aにはムライトが存在しないほうが好ましい。なお、結晶粒界110aにある、ムライトを含む結晶粒は、第2結晶粒120として判断されない。
第2結晶粒120と、結晶粒界110aにあるムライトを含む結晶粒との面積比は、任意に選択できる。第2結晶粒120と、結晶粒界110aにあるムライトを含む結晶粒との面積比は、例えば、100〜90:0〜10などの面積比であっても良く、100〜95:0〜5などの面積比であってもよく、100〜99:0〜1などの面積比であっても良い。
【0078】
本実施形態の複合焼結体において、複合焼結体100に含まれる炭化ケイ素の結晶粒の平均結晶粒径、すなわち、第3結晶粒130と第4結晶粒140とを合わせた炭化ケイ素の結晶粒の平均結晶粒径は、任意に選択できるが、0.2μm以上0.8μm以下であることが好ましい。
【0079】
結晶粒径が大きい炭化ケイ素の結晶粒は、アルミナ粒の成長時に、アルミナの粒界移動に追従しやすく、アルミナ結晶粒の成長に応じて、存在位置が変化しやすい。そのため、結晶粒径が大きい炭化ケイ素の結晶粒は、粒成長するアルミナの内部に取り込まれることなく排斥され、焼結体の結晶粒界に位置しやすい。
【0080】
一方、上述のように平均結晶粒径が0.2μm以上0.8μm以下と小さい炭化ケイ素は、アルミナ粒の成長時に、アルミナの粒界移動に追従しにくい。そのため、結晶粒径が小さい炭化ケイ素の結晶粒は、粒成長するアルミナの内部に取り込まれやすくなる。
【0081】
その結果、アルミナ粒内に存在する炭化ケイ素は、結晶粒界に存在する炭化ケイ素よりも結晶粒径が小さい傾向がある。
なお第3結晶粒130と第4結晶粒140との面積比は、任意に選択できる。
【0082】
本実施形態の複合焼結体において、複合焼結体100に対するムライトの含有率は任意に選択できるが、任意に選択される断面での面積比で1.2%以上3.5%以下であることが好ましい。ムライトの含有率が面積比で1.2%以上であることにより、十分な熱伝導率を確保することができる。ムライトの含有率を3.5%以下とすることにより、熱伝導率が下がりすぎることなく、複合焼結体100を静電チャック装置の基体として用いた時に昇降温レートを所望の状態とし易い。なお前記面積比は1.5%以上や、2.0%以上や、2.5%以上であっても良い。前記面積比は3.0%以下や、2.5%以下や、2.0%以下であっても良い。
【0083】
載置板11および支持板12の形成材料である複合焼結体100は、上述のような構成であることにより、均熱性が高いものとなる。
【0084】
なお、炭化ケイ素(SiC)には、結晶構造が多数あることが知られており、立方晶系で3C型(閃亜鉛鉱型)の結晶構造を有するもの、4H型、6H型等の六方晶系でウルツ鉱型の結晶構造を有するもの、菱面体晶系で15R型の結晶構造を有するもの、が挙げられる。このうち、3C型の結晶構造を有するものを「β−SiC」と称する。また、それ以外の結晶構造を有するもの全てを「α−SiC」と称する。いずれの炭化ケイ素も用いることができるが、β−SiCを複合焼結体に特に好ましく含むことができる。
【0085】
本実施形態の載置板11および支持板12は、複合焼結体に含まれるSiCがβ−SiCであることが好ましい。また、焼結体においては、β−SiCの結晶粒が、マトリックス材料である金属酸化物の結晶粒に取り囲まれる状態で分散して存在していることが好ましい。焼結体において、β−SiCの、体積比率は任意に選択できる。SiC、好ましくはβ−SiCは、焼結体全体の4体積%以上15体積%以下であることが好ましく、5体積%以上13体積%以下がより好ましい。
【0086】
SiCの、好ましくはβ−SiCの体積比率が4体積%より少ないと、SiC粒子による電子導電性の発現効果が少ない場合がある。また、β−SiCの体積比率が15体積%より多いと、SiC粒子同士の接触を生じSiC粒子を介した抵抗値低下を生じる可能性があるためである。
【0087】
また、本実施形態の複合焼結体においては、アルミニウム及びケイ素以外の金属不純物含有量が100ppm以下であることが好ましい。金属不純物含有量は、50ppm以下であることが好ましく、25ppm以下であることがより好ましい。
【0088】
[複合焼結体の製造方法]
本実施形態に係る複合焼結体は、酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子とを混合し、焼結させることにより好ましく製造できる。その際、複数の酸化アルミニウム粒子に取り込まれて焼結する炭化ケイ素粒子については、以下に述べる(i)炭化ケイ素粒子の量を多くする、(ii)炭化ケイ素粒子の粒子径を小さくする、という制御により、上述した複合焼結体を好ましく製造することができる。本製造方法により、本発明の複合焼結体を得ることができる。
【0089】
(i)複数の酸化アルミニウム粒子が焼結して第1結晶粒110となる際に、内部に取り込まれる炭化ケイ素粒子が多くなると、確率論として酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子とが反応しやすくなる。その結果、第1結晶粒110の結晶粒内でムライトが生成しやすくなる。
【0090】
(ii)複数の酸化アルミニウム粒子が焼結して第1結晶粒110となる際に、内部に取り込まれる炭化ケイ素粒子の粒子径が小さいと、炭化ケイ素粒子の反応性が高まり、速度論的に酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子とが反応しやすくなる。その結果、第1結晶粒110の結晶粒内でムライトが生成しやすくなる。
【0091】
一例として、本発明の複合焼結体や、本実施形態に係る複合焼結体は、次の方法により好適に製造することができる。
本実施形態の複合焼結体の製造方法は、
(a)酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子とを、それぞれ高速で噴射してお互いに衝突させながら混合する工程と、
(b)混合する工程で得られたスラリーについて、スラリー中の酸化アルミニウム粒子の表面電荷が正となり、スラリー中の前記炭化ケイ素粒子の表面電荷が負となる範囲に、スラリーのpHを調整する工程と、
(c)pHを調整し上記スラリーから分散媒を除去した後、成形する工程と、
(d)得られる成形体を、非酸化性雰囲気下、25MPa以上の圧力で押し固めながら1600℃以上に加熱して加圧焼結する工程と、を有する。
【0092】
本実施形態に係る複合焼結体の製造方法では、用いる酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウムの含有量が99.99%以上であることが好ましい。このような高純度の酸化アルミニウム粒子は、ミョウバン法を用いることにより調整可能である。ミョウバン法を用いて調整した酸化アルミニウム粒子は、例えばバイヤー法を用いて調整した酸化アルミニウム粒子と比べると、金属不純物であるナトリウム原子の含有量を大幅に低減することが可能である。また、所望の純度の酸化アルミニウム粒子が得られるのであれば、種々の方法を採用可能である。
【0093】
以下に上記工程について説明する。
((a)混合する工程)
上記混合する工程においては、分散媒に分散させた酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子(分散液)を用意する。2流粒子衝突型の粉砕混合装置を用い、分散液をそれぞれ加圧することで高速で噴射して、前記粒子をお互いに衝突させながら、混合することが好ましい。これにより、酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子とが粉砕され、これらの粉砕粒子を含む分散液が得られる。本工程では、高速で別々に噴射されたスラリーが互いに衝突すればよい。スラリーが衝突する速さも任意に選択してよい。
【0094】
酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子とを衝突させる際、大きい粒子は、衝突時の運動エネルギーが大きく、粉砕されやすい。一方、小さい粒子は、衝突時の運動エネルギーが小さく、粉砕されにくい。そのため、上記粉砕混合装置を用いて得られる酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子は、粗大粒子や過粉砕の粒子の少ない、粒度分布幅の狭い粒子となる。したがって、2流粒子衝突型の粉砕混合装置を用いて粉砕混合した混合粒子を用いると、焼結工程において、粗大粒子を核とする異常粒成長を抑制することができる。
【0095】
また、このような粉砕混合装置を用いて粉砕混合する場合、例えば、ボールミルやビーズミル等のメディアを用いて粉砕混合する方法と比べると、各メディアの破損に起因した不純物の混入を抑制することが可能である。
【0096】
なお、本実施形態に係る複合焼結体の製造方法では、用いる炭化ケイ素粒子について、酸化性雰囲気下で加熱処理を施し、予め炭化ケイ素粒子の表面を酸化処理する工程を有するとよい。以下、上記酸化処理のことを「プレ酸化」と称する。
【0097】
プレ酸化の温度条件は任意に選択できるが、例えば300℃以上500℃以下が好ましい。プレ酸化温度が300℃以上であると、炭化ケイ素粒子の表面を酸化可能となる。また、プレ酸化温度が500℃以下であると、炭化ケイ素粒子の表面の酸化が進行し過ぎることがない。例えば、酸化温度を600℃以上とすると、炭化ケイ素粒子の表面の酸化が進行し過ぎる結果、粒子表面の酸化膜を介して炭化ケイ素粒子同士が結合し、粗大化するおそれがある。
【0098】
プレ酸化の時間は任意に選択できるが、10時間以上が好ましい。プレ酸化の時間が10時間未満である場合、酸化が十分に進行しにくい。プレ酸化の時間が長時間(例えば50時間)となっても構わないが、一定の酸化膜量が形成された後は、酸化膜量はほぼ変化しない。そのため、プレ酸化の時間は、例えば10時間以上20時間以下が好ましい。
【0099】
炭化ケイ素粒子をプレ酸化処理することにより、炭化ケイ素粒子の親水性が高まる。これにより、スラリー中での炭化ケイ素粒子の分散性が向上する。
分散媒の種類は任意に選択できるが、例を挙げると、蒸留水などを好ましく使用することができる。
混合に使用する酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子の割合は任意に選択できるが、体積比において、85〜96/4〜15が好ましく、87〜95/5〜13がより好まい。
分散媒に分散させた酸化アルミニウム粒子の粒子径は任意に選択できるが、0.1〜0.3μmであることが好ましく、0.15〜0.25μmであることがより好ましい。
噴射前の分散媒中の炭化ケイ素粒子の粒子径は任意に選択できるが、10〜150nmであることが好ましく、30〜100nmとがより好ましい。
噴射前の分散媒中の粒子中の、酸化アルミニウム粒子の割合は任意に選択できるが、例を挙げれば、85〜96体積%であることが好ましく、87〜95体積%であることが好ましい。
噴射前の分散媒中の粒子中の、炭化ケイ素粒子の割合は任意に選択できるが、例を挙げれば、4〜15体積%であることが好ましく、5〜13体積%であることが好ましい。
噴射前の分散媒中の、分散媒の量に対する、炭化ケイ素粒子と酸化アルミニウム粒子の合計量の割合は任意に選択できる。例を挙げれば、下限値の例として、10質量%以上や、20質量%以上や、30質量%以上や40質量%以上を挙げることができる。上限値の例として、90質量%以下や、80質量%以下や、70質量%以下などを好ましく挙げることができる。
粉砕混合に使用する、分散媒に分散させた酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子を用意する方法は、任意に選択できる。例えば、分散媒に酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子を連続あるいは同時に加えても良い。あるいは、分散媒に酸化アルミニウム粒子を分散させ、別に用意した同じ分散媒に炭化ケイ素粒子を分散させても良い。これら2つの分散液を混合して使用しても良いし、別々のまま噴射させても良い。
また分散剤を予め任意の量の分散媒に加えておき、これを用いてもよい。分散剤は任意に選択できる。
【0100】
((b)pHを調整する工程)
得られた混合溶液(スラリー)のpHを調整する。この工程においては、スラリー中に含まれる酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子との表面電荷を考慮してpH調整を行う。上記混合する工程で得られるスラリー(pH調整前のスラリー)は、通常、pH11程度の塩基性を示す。
【0101】
図3は、スラリー中の酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子とについて、スラリーpHと粒子のζ電位との関係を示すグラフである。図中、横軸はスラリーのpHを示し、縦軸は、各粒子のζ電位(単位:mV)を示す。ここで、pH調整を行う前のスラリーの溶媒は0.1N NH4NO3である。
【0102】
図に示すように、系のpHが酸性側(pH<7)の場合、酸化アルミニウム粒子は、ζ電位が正となる。これは、系のpHが酸性側の場合、酸化アルミニウム粒子の表面の水酸基がプロトン(H
+)化され、表面が正電荷を帯びることによる。
【0103】
一方、系のpHが塩基性側(pH>7)の場合、酸化アルミニウム粒子は、ζ電位が負となる。これは、系のpHが塩基性側の場合、酸化アルミニウム粒子の表面の水酸基からプロトンが解離し、表面が負電荷を帯びることによる。
【0104】
これに対し、炭化ケイ素粒子のζ電位の挙動は異なる。図に示すように炭化ケイ素粒子は、pH2〜3付近でζ電位が0となり、pH3付近の酸性領域から、塩基性領域までの広い範囲でζ電位が負となる。
【0105】
このような関係のある2つの粒子が同じスラリーに共存している場合、系のpHが「スラリー中の酸化アルミニウム粒子の表面電荷が正」となり、「スラリー中の炭化ケイ素粒子の表面電荷が負」となる範囲では、両粒子が凝集する、所謂ヘテロ凝集が生じる。
【0106】
この際、酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子とが沈殿しないように、スラリー中には、適宜分散剤が添加されているとよい。
【0107】
系のpHは、3以上7以下が好ましく、5以上7以下がより好ましく、6以上7以下がさらに好ましい。pH調整後の両粒子のζ電位同士を比べた場合、ζ電位の絶対値が近いほどヘテロ凝集しやすく、所望の凝集状態となる。
【0108】
上記範囲へのpHの調整は、スラリーに酸を加えることにより行うことができる。使用可能な酸としては、硝酸、リン酸、塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸等の有機酸を挙げることができる。このうち、塩酸、硫酸等は、後述の焼結する工程において装置内で塩素や硫黄を生じ、装置劣化の原因となり得る可能性がある。そのため、pHの調整には、硝酸、リン酸、有機酸等を用いることが好ましい。
【0109】
((c)成形する工程)
成形する工程においては、まず、pH調整後の分散液(スラリー)をスプレードライする。このことにより、酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子との混合粒子からなる乾燥顆粒を得る。
【0110】
次いで、目的とする焼結体の形状に応じて、得られた顆粒を成形、例えば一軸成形(一軸プレス成形)する。
【0111】
次いで、得られた成形体を、不活性ガス雰囲気下で、常圧で(プレスすることなく)任意に選択される温度で、加熱する。例えば500℃に加熱し、成形体に含まれる水分や分散媒等の夾雑物を除去する。不活性ガスとしては、窒素またはアルゴンを用いることができる。この操作においては、成形体を変性することなく成形体から夾雑物を除去できるならば、加熱温度は500℃に限られない。例えば、350〜600℃や、より好ましくは450〜550℃が例として挙げられる。
【0112】
さらに、夾雑物を除去した成形体を、大気中で、必要に応じて選択される温度、例えば400℃で加熱して、成形体を構成する混合粒子を、酸化処理する酸化工程を有することが好ましい。このような操作によれば、酸化処理において混合粒子に含まれる炭化ケイ素粒子の表面には酸化膜が形成される。酸化膜には、混合粒子に含まれる金属不純物が溶け出しやすい。このため、混合粒子に含まれる金属不純物が粒子表面に偏って存在することになる。すると、後述する加圧焼結する工程において、金属不純物を除去しやすいため好ましい。酸化処理の温度は400℃に限定されず、例えば、必要に応じて250〜500℃や、より好ましくは300〜450℃などが例として挙げられる。酸化処理の時間は任意に選択できるが、例えば6〜48時間や、より好ましくは12〜24時間が例として挙げられる。
【0113】
((d)加圧焼結する工程)
加圧焼成する工程においては、まず、上記工程で得られた上述の成形体を、真空雰囲気(第1の非酸化性雰囲気)において、1600℃よりも低い温度且つ常圧で(プレスすることなく)、加熱(予備加熱)する。このような操作によれば、予備加熱時の温度を適宜設定することにより、混合粒子に含まれるアルカリ金属等の金属不純物が蒸発し、金属不純物を容易に除去できる。そのため、このような操作によれば、混合粒子の純度を向上しやすくなり、基体の体積抵抗値を制御しやすくなる。1600℃よりも低い温度としては、必要に応じて選択できる。
【0114】
また、成形する工程において、上述したように夾雑物を除去した成形体に対し酸化処理を施すと、本工程において真空雰囲気下で予備加熱することにより、粒子表面に形成された酸化膜が揮発する。同時に、酸化膜に含まれる金属不純物が蒸発する。そのため、成形体から金属不純物を容易に除去できる。したがって、このような操作によれば、混合粒子の純度を向上しやすくなり、基体の体積抵抗値を制御しやすくなる。
【0115】
なお、本実施形態において「真空」とは、「大気圧より低い圧力の基体で満たされた空間内の状態」のことであり、JIS規格において工業的に利用できる圧力として定義された状態のことを指す。本実施形態においては、真空雰囲気は、低真空(100Pa以上)であってもよいが、中真空(0.1Pa〜100Pa)であると好ましく、高真空(10
−5Pa〜0.1Pa)であるとより好ましい。
【0116】
本実施形態の複合焼結体の製造方法においては、例えば、真空雰囲気下、1200℃で4時間以上予備加熱した後、大気圧まで、不活性ガス、例えばアルゴンで気圧を戻すことが好ましい。
【0117】
次いで、予備加熱を施した成形体を、不活性ガス雰囲気、例えばアルゴン雰囲気(第2の非酸化性雰囲気)において、5MPa以上の圧力で押し固めながら1600℃以上に加熱して、加圧焼結する。このような操作によれば、成形体に含まれる酸化アルミニウム粒子や炭化ケイ素粒子の焼結が進行し、気孔の少ない緻密な焼結体が得られる。1600℃以上の温度は必要に応じて選択できる。前記圧力も任意に選択できる。
【0118】
本実施形態の複合焼結体の製造方法においては、例えば、アルゴン雰囲気下、1600℃以上1850℃以下で、焼結圧力25MPa以上50MPa以下の範囲で焼結することができる。
【0119】
このような方法で製造して得られた焼結体は、金属不純物含有量が低減し高純度な焼結体となる。金属不純物含有量が目標値に達しない場合には、予備加熱の時間を長くする、または予備加熱の温度を高くするとよい。
【0120】
図4〜9は、本実施形態の複合焼結体の製造方法について説明する説明図である。
図4〜
図6はスラリーのpHをpH11程度に調整した場合の粒子の各段階での状態を、
図7〜9はスラリーのpHをpH6.5程度に調整した場合の粒子の各段階での状態を、模式的に示す。これらの図について、以下に説明する。
まず、pH調整なしの工程を説明する。
図4は、例えばpH11程度のスラリーにおける粒子の状態を示す模式図である。
図5は、
図4で示したスラリーから分散媒を除去した時の粒子の状態を示す模式図である。
図6は、
図5で示した粒子を用いて作製した、複合焼結体を示す模式図である。
【0121】
図6において、各図の六角形は、それぞれ主相である酸化アルミニウムの結晶粒を示している。また、
図6において、各図の黒丸は、それぞれ副相である炭化ケイ素の結晶粒を示し、黒丸の大きさは炭化ケイ素の結晶粒の大きさを示している。
【0122】
図4において、符号Aは酸化アルミニウム粒子、符号Bは炭化ケイ素粒子を示す。上述の
図3で示したように、pH11程度のスラリーにおいては、酸化アルミニウム粒子および炭化ケイ素粒子のいずれもが、表面が負に帯電している(ζ電位が負である)ため、スラリー系中で互いに反発する。
【0123】
これにより、
図5に示すように、(c)成形する工程において分散媒を除去する際、異種粒子同士が均一に混ざり合いにくく、同種の粒子同士が凝集しやすい状況が生まれる。
その結果、(d)焼結する工程において、炭化ケイ素粒子を排除した形で、酸化アルミニウム粒子同士が焼結しやすくなる。
【0124】
そのため、
図6に示すように、得られる複合焼結体では、炭化ケイ素の結晶粒は、酸化アルミニウムの結晶粒から排除される形で、結晶粒界に多く存在する。また、酸化アルミニウムの結晶粒内に存在する炭化ケイ素の結晶粒は、大きく育ちやすく、粒子数も少なくなりやすい。
【0125】
次にpH調整ありの工程について説明する。
一方、
図7は、例えば
図4のスラリーをpH11からpH6.5程度に調整した後の状態を示す模式図である。
図7〜9はそれぞれ、
図4〜6に対応する図である。
【0126】
図7に示すように、pH6.5程度のスラリーにおいては、酸化アルミニウム粒子の表面が正に帯電し(ζ電位が正)、炭化ケイ素粒子の表面が負に帯電する(ζ電位が負)。
そのため、スラリー系中ではヘテロ凝集し、相対的に大きい粒子である酸化アルミニウム粒子の表面に、相対的に小さい粒子である炭化ケイ素粒子が付着する。
【0127】
一方、本実施形態の複合焼結体の製造方法において、スラリーのpHを6.5程度に調整し、炭化ケイ素粒子のζ電位が低下すると、炭化ケイ素粒子同士で凝集(ホモ凝集)するおそれも高まる。
【0128】
これに対し、上述のように用いる炭化ケイ素粒子をプレ酸化する場合、炭化ケイ素粒子の分散性が向上する。そのため、プレ酸化処理を施した炭化ケイ素粒子を用いる場合、炭化ケイ素粒子のホモ凝集を抑制し、上記ヘテロ凝集を優位に進めることができる。これにより、所望の凝集状態を得やすくなる。
【0129】
図8に示すように、(c)成形する工程において分散媒を除去する際には、すでに表面に炭化ケイ素が付着した酸化アルミニウムが凝集することにより、異種粒子同士が均一に混ざり合いやすい状況が生まれる。その結果、(d)焼結する工程において、炭化ケイ素粒子を取り込みながら酸化アルミニウム粒子同士が焼結しやすくなる。
【0130】
そのため、
図9に示すように、得られる複合焼結体では、酸化アルミニウムが多くの炭化ケイ素の結晶粒を取り込みながら成長する。このため、酸化アルミニウムの結晶粒界における炭化ケイ素の結晶粒は、存在量が少なくなる。また、酸化アルミニウムの結晶粒内においても炭化ケイ素の結晶粒は、小さくなりやすく、粒子数も多くなりやすい。
【0131】
また、焼結中の酸化アルミニウム粒子が粒成長する際、酸化アルミニウム粒子(粒界)の移動に伴って、相対的に大きな結晶粒の炭化ケイ素も移動する。この移動に伴い、大きさ結晶粒の炭化ケイ素は、他の炭化ケイ素の結晶粒と接触する確率が高まり、粒成長しやすくなる。
【0132】
一方、相対的に小さな結晶粒の炭化ケイ素は、酸化アルミニウム粒子が移動しても、この移動に追従しにくい。そのため、小さい結晶粒の炭化ケイ素は、小さい結晶粒のまま酸化アルミニウムの粒界内に取り込まれやすい。
【0133】
これらの結果結晶粒内に存在する第2結晶粒は、結晶粒界に存在する第3結晶粒130よりも小さくなりやすい。
【0134】
以上のようにして、本実施形態の複合焼結体を製造することができる。
【0135】
得られた複合焼結体は、続く工程において研削することにより、所望の基体とすることができる。基体の載置面に形成された突起については、公知の方法により適宜形成可能である。
【0136】
以上のような複合焼結体は、均熱性に優れたものとなる。
【0137】
また、このような複合焼結体を用いた静電チャック部、静電チャック装置によれば、均熱性に優れ、加工装置に適用した場合に高い加工精度を実現することができる高性能なものとなる。
【0138】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【実施例】
【0139】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の説明においては、必要に応じ、
図2で示した各符号を用いて得られる複合焼結体の構成を説明する。
【0140】
<評価方法>
(焼結体の組成の確認)
得られた複合焼結体の表面を、機械研磨とイオンミリングにより処理して、試料を作製した。得られた試料の上記処理の処理面について、原子分解能分析電子顕微鏡(型番:JEM-ARM200FDual-X、日本電子株式会社製)を用い、EDX検出器(型番:JED-2300、日本電子株式会社製)にて確認を行った。結果を表1に示す。
【0141】
(ムライトの確認)
上記試料の処理面について、原子分解能分析電子顕微鏡(型番:JEM-ARM200F Dual-X、日本電子株式会社製)を用いて観察し、得られた明視野STEM像のFFT分析を行うことで、ムライトの格子間距離を確認した。それによりムライトの形成を確認した。
【0142】
(第3結晶粒全体に対する第2結晶粒全体の割合(面積比))
本実施例においては、複合酸化物(焼結体)の表面を3μmのダイヤモンドペーストで鏡面研磨した後、アルゴン雰囲気下、1400℃で、30分サーマルエッチングを施した。
得られた焼結体の表面を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー株式会社製、型番:S−4000)を用いて、拡大倍率10000倍で組織観察を行った。
【0143】
得られた電子顕微鏡写真を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Mac-View Version4)に取り込み、結晶粒界または粒内にある200個以上の炭化ケイ素粒子の面積を算出させた。電子顕微鏡写真から、各炭化ケイ素粒子について金属酸化物の結晶粒内に存在しているか否かを判断した。また、上記STEM像のFFT分析の結果も用いて、面積を求めた第3結晶粒としての炭化ケイ素粒子全体に対する、金属酸化物の結晶粒内に分散している第2結晶粒としての炭化ケイ素の結晶粒の割合を求めた。
【0144】
(第1結晶粒の平均結晶粒径)
上記電子顕微鏡写真を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Mac-View Version4)に取り込み、200個以上の第1結晶粒の結晶粒の長軸径を算出させた。得られた各結晶粒の長軸径の算術平均値を、求める「平均結晶粒径」とした。
【0145】
(熱伝導率)
熱伝導率は、レーザーフラッシュ法による熱拡散率の測定結果と、DSC法による比熱の測定結果とから算出した。
【0146】
(均熱性)
均熱性を評価するための試験体として、直径350mm×1mm厚の焼結体を作製し、試験体とした。詳しくは、直径350mmで厚さが1mmより厚い焼結体を作製した後に、表面を平面研削加工することで厚さを調節し、1mm厚の焼結体(試験体)を得た。
【0147】
得られた均熱性評価用の試験体を、ヒータを有する直径350mmの第1金属板と、直径350mmの第2金属板とで挟持した。
【0148】
加熱板を用いて試験体を加熱し、試験体の温度を加熱板側が高く、冷却板側が低くなるように温度勾配を与えた。加熱開始から5分後に、試験板の熱の流れが定常状態になったと考え、冷却板側の試験体の表面3カ所の温度を測定した。
【0149】
測定位置は、試験体の中心部(座標位置0,0)、試験体の中心部から270°方向に−160mm(座標位置−160,0)、中心部から90°方向に160mm(160,0)とした。
【0150】
3カ所の温度測定位置において、測定温度の最大値と最小値との差が5℃以内であれば、均熱性が良好であるとして評価した。また、測定温度の最大値と最小値との差が5℃を超える場合、均熱性が不良であるとして評価した。
【0151】
(実施例1)
出発原料として、平均粒子径が0.03μmであり熱プラズマCVDで合成されたβ−SiC型の炭化ケイ素(β−SiC)粒子と、平均粒子径が0.1μmであり金属不純物含有量が95ppmの酸化アルミニウム(Al
2O
3)粒子とを用いた。
【0152】
β−SiC粒子については、大気雰囲気下、500℃で12時間加熱処理し、粒子表面を酸化させた。以下、上記酸化処理のことを「プレ酸化」と称する。以下の工程においては、プレ酸化処理を施したβ−SiCを用いた。
【0153】
β−SiC粒子とAl
2O
3粒子との全体量に対し、β−SiC粒子が8.5質量%となるように秤量し、分散剤が入った蒸留水に投入した。
また、蒸留水に対するβ−SiC粒子とAl
2O
3粒子の合計の割合は60質量%とした。β−SiC粒子とAl
2O
3粒子とを投入した分散液について、超音波分散装置にて分散処理の後、2流粒子衝突型の粉砕混合装置を用いて粉砕混合した。
【0154】
得られた混合溶液について、スラリーに硝酸を添加し、スラリーのpHを6.5に調整した。
【0155】
pHを調整したスラリーをスプレードライ装置にて噴霧乾燥させ、β−SiCとAl
2O
3との乾燥混合粒子とした。
【0156】
混合粒子をプレス圧8MPaで一軸プレス成形し、直径320mm×15mm厚の成形体とした。
【0157】
得られた成形体を黒鉛製のモールドにセットし、プレス圧を加えることなく370℃まで昇温させ、水分および分散剤(夾雑物)を除去した。その後、夾雑物を除去した成形体を、大気中370℃に加熱し、成形体に含まれるβ−SiC粒子の表面を酸化した。
【0158】
その後、アルゴン雰囲気下、プレス圧40MPa、1800℃で焼結を行い、実施例1の複合焼結体を得た。
【0159】
また、実施例1の複合焼結体について、上述の条件にて電子顕微鏡写真を撮影した。得られた電子顕微鏡写真からAl
2O
3の結晶粒(第1結晶粒110)の平均結晶粒径を求めたところ、0.94μmであった。
【0160】
図10〜12は、実施例1の複合焼結体のEDX測定結果を示すEDXマッピングである。
図10は複合焼結体のBF−STEM写真である。
図11は、
図10と同視野において、炭素の存在箇所を明るく示すEDX測定結果である。
図12は、
図10と同視野において、ケイ素の存在箇所を明るく示すEDX測定結果である。
【0161】
図10〜12によれば、ケイ素原子と炭素原子との存在箇所に差が生じていることが分かる。ケイ素原子が存在しているが炭素原子が存在していない箇所には、ムライトが形成していると判断することができる。
【0162】
ムライトが形成していると考えられる箇所について、高速フーリエ変換(FFT)解析を行い、6.0Åのムライトに相当する回折パターンが存在することを確認した。
【0163】
また、ムライトを含む結晶粒(第2結晶粒120)の平均結晶粒径を求めたところ、0.07μmであった。
また、SiCの結晶粒(第3結晶粒130)の平均結晶粒径を求めたところ、0.37μmであった。第2結晶粒120は、第3結晶粒130よりも小さかった。
【0164】
得られた複合焼結体において、結晶粒界にムライトは確認できなかった。
得られた複合焼結体の熱伝導率は、21.1W/m・Kであった。
【0165】
(実施例2)
β−SiC粒子とAl
2O
3粒子との全体量に対し、β−SiC粒子を4質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の複合焼結体を得た。
【0166】
また、実施例2の複合焼結体について、上述の条件にて電子顕微鏡写真を撮影した。得られた電子顕微鏡写真からAl
2O
3の結晶粒(第1結晶粒110)の平均結晶粒径を求めたところ、1.05μmであった。
また、ムライトを含む結晶粒(第2結晶粒120)の平均結晶粒径を求めたところ、0.08μmであった。
また、SiCの結晶粒(第3結晶粒130)の平均結晶粒径を求めたところ、0.35μmであった。第2結晶粒120は、第3結晶粒130よりも小さかった。
【0167】
得られた複合焼結体において、結晶粒界にムライトは確認できなかった。
得られた複合焼結体の熱伝導率は、24.0W/m・Kであった。
【0168】
(比較例1)
出発原料として、平均粒子径が0.03μmであり熱プラズマCVDで合成されたβ−SiC型のβ−SiC粒子と、平均粒子径が0.1μmであり金属不純物含有量が95ppmのAl
2O
3粒子とを用いた。
【0169】
β−SiC粒子とAl
2O
3粒子との全体量に対し、β−SiC粒子が8.5質量%となるように秤量し、分散剤が入った蒸留水に投入した。β−SiC粒子とAl
2O
3粒子とを投入した分散液について、超音波分散装置にて分散処理の後、2流粒子衝突型の粉砕混合装置を用いて粉砕混合した。
【0170】
得られた混合溶液を、pH調整することなく、スプレードライ装置にて噴霧乾燥させ、β−SiCとAl
2O
3との混合粒子とした。
【0171】
次いで、実施例1と同様に成形を行い、成形体を窒素雰囲気下、プレス圧を加えることなく500℃まで昇温させ、水分および分散剤(夾雑物)を除去した。その後、夾雑物を除去した成形体を大気中400℃に加熱し、成形体に含まれるβ−SiC粒子の表面を酸化した。
【0172】
得られた成形体を黒鉛製のモールドにセットし、加圧焼結を行った。まず、成形体を、真空雰囲気下、プレス圧を加えることなく1200℃まで昇温させた。その後、アルゴン雰囲気下、プレス圧40MPa、1800℃で焼結を行い、比較例1の焼結体を得た。
【0173】
また、比較例1の複合焼結体について、上述の条件にて電子顕微鏡写真を撮影した。得られた電子顕微鏡写真からAl
2O
3の結晶粒(第1結晶粒110)の平均結晶粒径を求めたところ、0.78μmであった。
また、第1結晶粒110の結晶粒内にムライトは確認できなかった。
また、SiCの結晶粒(第3結晶粒130)の平均結晶粒径を求めたところ、0.31μmであった。
【0174】
得られた複合焼結体において、結晶粒界にもムライトは確認できなかった。
得られた複合焼結体の熱伝導率は、28.8W/m・Kであった。
【0175】
実施例1,2、比較例1の評価結果を表1,2に示す。表1は、実施例1,2、比較例1の焼結体の組成、結晶粒についてまとめた表である。表2は、実施例1,2、比較例1についての評価結果をまとめた表である。
【0176】
表2において、均熱性が良好である場合には「○」とし、均熱性が不良である場合には「×」とした。
【0177】
【表1】
【0178】
【表2】
【0179】
評価の結果、実施例の複合焼結体は、比較例の複合焼結体よりも熱伝導率が低かった。
また、均熱性評価の結果、実施例の複合焼結体は、比較例の複合焼結体よりも良好な均熱性を示した。
【0180】
以上の結果から、本発明が有用であることが分かった。