(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の被検球体保持手段では、ワークが斜め上に延びるアームのみで支持されており、ワークに対して測定子を接触させたときの測定子からの測定圧(測定力)がワークに加わると、被検球体保持手段に対するワークの位置に変動が生じ、測定精度の低下を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、球形の測定対象物の真円度を高精度に測定することができる真円度測定装置及びその測定対象物固定治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一の態様に係る真円度測定装置は、球形の測定対象物に対して測定子を母線の位置に接触させながら母線に沿って相対的に移動させて測定対象物の真円度を測定する真円度測定装置であって、測定対象物の母線を含む平面に垂直な方向であって、相反する第1方向及び第2方向のうちの第1方向側の半球の範囲に接触して測定対象物の第1方向側への移動を規制する規制部材と、測定対象物に対して規制部材の接触位置よりも第1方向側の範囲において連結される連結部材と、測定対象物に対して連結部材を着脱可能に連結する連結手段と、測定対象物に対して連結部材を介して第1方向への力を加える荷重手段と、を備える。
【0008】
本態様によれば、球形の測定対象物は、荷重手段により連結部材を介して加えられる第1方向への力により、規制部材に押圧され、測定対象物が軽い場合でも測定子からの測定圧にかかわらず位置の変動が抑止される。従って、高精度な測定が可能となる。
【0009】
本発明の他の態様に係る真円度測定装置において、連結部材は、吸着パッドであり、連結手段は、負圧を発生させる負圧発生手段と、吸着パッドと負圧発生手段とを接続する配管と、からなる態様とすることができる。
【0010】
本態様によれば、測定対象物に対して規制部材への力を加える荷重手段を容易に着脱することができる。
【0011】
本発明の更に他の態様に係る真円度測定装置において、配管は、負圧発生手段を着脱可能に接続する接続部と、吸着パッドと接続部との間に配置され、管路を開閉するバルブと、吸着パッドとバルブとの間に配置された負圧を維持するタンクと、を備えた態様とすることができる。
【0012】
本態様によれば、タンクを負圧にした後、バルブを閉じることで、配管から負圧発生手段を取り外しても連結部材を測定対象物に連結させておくことができ、荷重手段による力を測定対象物に付加させておくことができる。したがって、負圧発生手段により阻害されることなく、規制部材、連結部材、荷重手段と共に測定対象物を回転させて真円度を測定することができる。
【0013】
本発明の更に他の態様に係る真円度測定装置において、荷重手段は、連結部材に連結されたウエイト部材である態様とすることができる。
【0014】
本態様によれば、ウエイト部材の重さに応じた重力を測定対象物に付加することができる。
【0015】
本発明の更に他の態様に係る真円度測定装置において、規制部材は、測定対象物の中心を通り、第1方向に平行な軸の周りの3点において接触する支点部材である態様とすることができる。
【0016】
本態様によれば、測定対象物を3点で決まる位置に安定して固定することができる。
【0017】
本発明の更に他の態様に係る真円度測定装置において、母線は測定対象物の中心を通る水平断面における輪郭曲線であり、第1方向は、鉛直下向きの方向である態様とすることができる。
【0018】
また、上記目的を達成するため、本発明の他の態様に係る真円度測定装置の測定対象物固定治具は、真円度測定装置に着脱可能に装着され、球形の測定対象物を固定する測定対象物固定治具であり、かつ、測定対象物に対して真円度測定装置の測定子を母線の位置に接触させながら母線に沿って相対的に移動させて測定対象物の真円度を測定するための真円度測定装置の測定対象物固定治具であって、測定対象物の母線を含む平面に垂直な方向であって、相反する第1方向及び第2方向のうちの第1方向側の半球の範囲に接触して測定対象物の第1方向側への移動を規制する規制部材と、測定対象物に対して規制部材の接触位置よりも第1方向側の範囲において連結される連結部材と、測定対象物に対して連結部材を着脱可能に連結する連結手段と、測定対象物に対して連結部材を介して第1方向への力を加える荷重手段と、を備える。
【0019】
本態様によれば、球形の測定対象物は、荷重手段により連結部材を介して加えられる第1方向への力により、規制部材に押圧され、測定対象物が軽い場合でも測定子からの測定圧にかかわらず位置の変動が抑止される。従って、高精度な測定が可能となる。
【0020】
本発明の他の態様に係る真円度測定装置の測定対象物固定治具において、連結部材は、吸着パッドであり、連結手段は、負圧を発生させる負圧発生手段と、吸着パッドと負圧発生手段とを接続する配管と、からなる態様とすることができる。
【0021】
本態様によれば、測定対象物に対して規制部材への力を加える荷重手段を容易に着脱することができる。
【0022】
本発明の更に他の態様に係る真円度測定装置の測定対象物固定治具において、配管は、負圧発生手段を着脱可能に接続する接続部と、吸着パッドと接続部との間に配置され、管路を開閉するバルブと、吸着パッドとバルブとの間に配置された負圧を維持するタンクと、を備えた態様とすることができる。
【0023】
本態様によれば、タンクを負圧にした後、バルブを閉じることで、配管から負圧発生手段を取り外しても連結部材を測定対象物に連結させておくことができ、荷重手段による力を測定対象物に付加させておくことができる。したがって、負圧発生手段により阻害されることなく、規制部材、連結部材、荷重手段と共に測定対象物を回転させて真円度を測定することができる。
【0024】
本発明の更に他の態様に係る真円度測定装置の測定対象物固定治具において、荷重手段は、連結部材に連結されたウエイト部材である態様とすることができる。
【0025】
本態様によれば、ウエイト部材の重さに応じた重力を測定対象物に付加することができる。
【0026】
本発明の更に他の態様に係る真円度測定装置の測定対象物固定治具において、規制部材は、測定対象物の中心を通り、第1方向に平行な軸の周りの3点において接触する支点部材である態様とすることができる。
【0027】
本態様によれば、測定対象物を3点で決まる位置に安定して固定することができる。
【0028】
本発明の更に他の態様に係る真円度測定装置の測定対象物固定治具において、母線は測定対象物の中心を通る水平断面における輪郭曲線であり、第1方向は、鉛直下向きの方向である態様とすることができる。
【0029】
本発明の更に他の態様に係る真円度測定装置の測定対象物固定治具において、真円度測定装置が有する載物台であって、円筒状又は円柱状の測定対象物が載置される載物台に対して規制部材、連結部材、及び、荷重手段が着脱可能に装着される態様とすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、球形のワークの真円度を高精度に測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0033】
図1は、本発明に係る真円度測定装置の全体構成を示した斜視図である。
【0034】
同図に示す真円度測定装置1は、真円度を測定する周知で既存の真円度測定装置に対して、球形の測定対象物(ワークW)の真円度を測定するために、着脱可能な測定対象物固定治具として球形ワーク固定治具50が取り付けられたものである。
【0035】
まず、既存の真円度測定装置として周知の構成部分について簡易に説明する。
【0036】
真円度測定装置1において、下端部には装置全体を支持する台状のベース10が配置され、ベース10の上面には、上下方向(鉛直方向)に沿った回転軸(θ軸)周り方向に回転可能な載物台12が設けられる。なお、図中、上下方向をZ軸方向として表す。
【0037】
載物台12の上面には、同図では簡素化した示された詳細を後述する球形ワーク固定治具50が着脱可能に固定され、その球形ワーク固定治具50の上面に測定対象物となる球形のワークWが支持される。また、ワークWは、その中心が載物台12の回転軸(θ軸)上となるように支持される。
【0038】
ベース10の内部には、載物台12に連結されるモータ等を備え、載物台12を回転駆動する回転駆動部11が設けられる。
【0039】
この回転駆動部11により、載物台12に固定された球形ワーク固定治具50及びワークWが、載物台12と共にθ軸周り方向に回転する。
【0040】
なお、載物台12は手動により回転するものであってもよい。また、載物台12は、θ軸に垂直な方向であって、互いに直交する左右方向及び前後方向に対してもつまみの回転操作等によって移動可能なものであってもよい。
【0041】
ベース10の上面側には、コラム14、キャリッジ16、径方向移動アーム18、旋回アーム20、検出器ホルダ22を有する検出器支持機構13を介して検出器24(測定プローブ)が支持される。
【0042】
検出器24は、例えば円筒状の検出器本体24Aの下端から棒状に延びる測定子24B(スタイラス)と、検出器本体24Aの内部に設けられ、測定子24Bの変位量を作動トランス等により検出して電気信号(検出信号)として出力する不図示の変位検出部と、を有する。
【0043】
測定子24Bは、一平面内において測定子24Bの軸線がその軸線に直交する方向(変位方向)に変位可能に検出器本体24Aに支持されると共に、その変位方向のうちの一方の向き(付勢方向)にバネなどにより付勢される。
【0044】
測定時においてはワークWの周面に対して、測定子24Bの先端部(先端球)がその付勢方向に押圧されて当接が維持される。そして、回転駆動部11によるワークWのθ軸周りの回転とともに、測定子24Bの変位量を示す検出器24からの検出信号が不図示の演算処理装置に読み取られ、その検出信号に基づいて真円度等の算出が実施される。
【0045】
なお、本実施の形態では、球形のワークWの母線の位置、即ち、ワークWの中心を通る水平断面におけるワークWの輪郭曲線の位置に測定子24Bの先端部が当接され、その母線に沿って測定子24Bが移動することにより真円度の測定が行われる。
【0046】
検出器支持機構13について説明すると、ベース10の上面において載物台12の右側には、上下方向に沿って延在するコラム14が立設される。そして、コラム14には、コラム14に沿って上下方向に移動可能なキャリッジ16が支持される。キャリッジ16は、例えばモータの駆動により上下方向に移動するが、つまみの回転操作等によって手動で移動するものであってもよい。
【0047】
このキャリッジ16の上下方向への移動機構により、検出器支持機構13は、検出器24を上下方向の位置を変更可能に支持する。
【0048】
キャリッジ16には、径方向に延びる径方向移動アーム18が径方向に移動可能に支持される。径方向移動アーム18は、例えばモータの駆動により径方向に移動するが、つまみの回転操作等によって手動で移動するものであってもよい。
【0049】
この径方向移動アーム18の径方向への移動機構により、検出器支持機構13は、検出器24の径方向の位置を変更可能に支持する。
【0050】
なお、径方向は、載物台12の回転軸(θ軸)を中心とする径方向(R軸方向)を示し、径方向移動アーム18が移動する方向を左右方向(X軸方向)とし、Z軸方向とX軸方向とに垂直な方向を前後方向(Y軸方向)とする。
【0051】
径方向移動アーム18の左側(載物台12側)の端部には、旋回アーム20の一端(基端)が径方向に沿った旋回軸の周りに旋回可能に連結される。旋回アーム20は、ネジにより径方向移動アーム18に固定されており、つまみ30の回転操作によりネジを緩めることで、旋回アーム20が旋回軸周りに旋回可能となり、旋回アーム20の向きの変更が可能となる。
【0052】
この旋回アーム20の旋回機構により、検出器支持機構13は、検出器24を径方向に沿った旋回軸周りの旋回角度を変更可能に支持する。
【0053】
旋回アーム20の先端部には径方向(左右方向)に延びる検出器ホルダ22の基端部が固定される。
【0054】
検出器ホルダ22の先端部にはつまみ32の回転操作により着脱可能に検出器24が装着される。
【0055】
検出器ホルダ22は、検出器24の先端側(測定子24Bが設けられる側)が旋回アーム20の旋回軸の軸線上に向う方向となるように、かつ、検出器本体24Aの軸線が旋回アーム20の軸線と平行となるように検出器24の基端側を固持する。
【0056】
また、検出器ホルダ22は、検出器24の取付角度、即ち、検出器本体24Aの軸線周りの回転角度を変えて固持することができる。この検出器ホルダ22における検出器24の取付角度の調整機構により、測定子24Bの変位方向及び付勢方向を調整することができる。
【0057】
なお、
図1の真円度測定装置1は、ワークWが回転することで、検出器24がワークWの周りを相対的に周方向に回転移動するワーク回転型の測定装置であるが、検出器24がワークWの周りを回転移動する検出器回転型の測定装置であってもよい。
【0058】
図2、
図3、
図4は、各々、載物台12上に設置される
図1の状態の球形ワーク固定治具50に関して、水平方向から示した部分断面図、
図2と垂直な方向であって水平方向から示した断面図、及び、上方から示した平面図である。
【0059】
これらの図に示すように球形ワーク固定治具50は、最下部に円板状のベース部材52を有し、そのベース部材52がネジ54(
図4参照)により載物台12の上面に着脱可能に固定される。
【0060】
これにより、既存の真円度測定装置に対して球形ワーク固定治具50を簡易に着脱することができ、既存の真円度測定装置を用いて球形のワークWの真円度の測定を行うことができるようになる。ワーク固定治具50を載物台12から取り外せば、通常の真円度測定装置として球形以外の形状のワークの真円度を通常通りに測定することができる。なお、球形ワーク固定治具50を載物台12に着脱可能に固定する手段は本実施の形態に限らない。
【0061】
ベース部材52の上面側には円筒状の真空タンク部材56がネジ58(
図2、
図3参照)により固定される。真空タンク部材56は、円筒状の側壁部60の内側に空洞部62(
図2、
図3参照)を有する。
【0062】
空洞部62は、空洞部62に接続された管路の真空状態(負圧状態)を長く保持するためのものであり、下端側がベース部材52により閉塞され、上端側が側壁部60から径方向に延設された上壁部64により中央の開口部64Aを除いた部分が閉塞される。
【0063】
側壁部60には、空洞部62と真空タンク部材56の外部とを連通する2つの貫通孔60A、60Bがθ軸周りの略反対方向(略180度をなす方向)となる位置に形成される。
【0064】
一方の貫通孔60Aには、真空(負圧)を発生させる負圧発生手段である不図示の真空エジェクタと真空タンク部材56とを接続する配管66の管路が連通する。他方の貫通孔60Bには真空圧力計68が取り付けられる。
【0065】
配管66は、真空タンク部材56に固定される配管66Aと、配管66Aから分離可能であって一端が真空エジェクタに接続される配管66Bとからなる。
【0066】
配管66Aは、レバー70Aの回転により内部の管路を開閉するバルブ70を有する。
【0067】
また、配管66Aと配管66Bとが着脱可能に装着されて接続される接続部72の構成要素として、配管66Bの端部には真空パッド74が取り付けられる。真空パッド74は真空エジェクタの作動により配管66Aの端部に真空吸着して配管66Aと配管66Bとを連結する。
【0068】
真空タンク部材56の上壁部64の上面には円板状の固定部材76がネジ78により固定される。固定部材76は、下面側に円柱状に突出する突出部76Aを有し、その突出部76Aが上壁部64の開口部64Aに略隙間なく嵌合する。
【0069】
また、固定部材76には、空洞部62に面する突出部76Aの下面から固定部材76の上面まで貫通する貫通孔76Bが形成される。
【0070】
一方、固定部材76の上面には、3つに分岐した管路を有し、3つの接続端80A、80B、80Cを有するT字型の継手80が取り付けられる。
【0071】
接続端80Cは、固定部材76に接続され、固定部材76の貫通孔76Bと継手80の内部の管路とが連通する。その管路は接続端80Aと接続端80Bへと2つの管路に分岐される。
【0072】
継手80の2つの接続端80A、80Bの各々には、可撓性を有する2つのチューブ82A、82Bの各々の一端が接続され、継手80により分岐された2つの管路の各々がチューブ82A、82Bの各々の管路に連通する。
【0073】
チューブ82A、82Bの各々の他端は、硬質の接続端83A、83Bを介して後述のウエイト部材84に接続される。
【0074】
固定部材76の上面側には、θ軸に沿って延びる円筒状の支持部材86が配置される。
【0075】
支持部材86の下端には径方向外側に突出するフランジ部88が形成され、そのフランジ部88がネジ90により固定部材76に固定される。
【0076】
支持部材86は、内部に空洞部86Aを有すると共に、下端部分と上端部分とに上下方向に延びる切込み92A、92B、94A、94Bを有する。なお、切込み92Aと切込み92B、切込み94Aと切込み94Bの各々はθ軸周りの略反対方向となる位置、即ち、θ軸を挟んで正反対となる位置に形成される。
【0077】
上述の継手80は、接続端80Cが支持部材86の内部の空洞部86Aに配置され、接続端80Aと接続端80Bの各々が切込み92Aと切込み92Bの各々に配置される。そして、支持部材86の外部に配置されるチューブ82A、82Bの各々の一端が切込み92A、92Bにおける接続端80A、80Bの各々に接続される。
【0078】
支持部材86の空洞部86Aには、重りとして作用する円柱状のウエイト部材84が上下方向に移動可能に配置される。
【0079】
ウエイト部材84には、その中心軸を挟んで正反対となる側面(周面)の2箇所と上面の略中心とに管路端85A、85B、85Cとしての開口を有する管路85であって、それらの管路端85A、85B、85Cを互いに連通させるT字状の管路85が形成される。
【0080】
そして、管路端85Aと管路端85Bとに、チューブ82A、82Bの各々の接続端83A、83Bが切込み94A、94Bを挿通して接続される。
【0081】
これによって、ウエイト部材84は、上下方向の移動範囲に関して、少なくとも接続端83A、83Bが切込み94A、94Bに対して移動可能な範囲に制限される。特に、ウエイト部材84の下側への移動範囲は、チューブ82A、82Bが切込み94A、94Bの下側端部に当接する位置に制限される。
【0082】
ウエイト部材84の上面には、円筒状の吸着パッド96が立設され、吸着パッド96の下端から上端まで貫通する管路がウエイト部材84の管路端85Cに接続される。
【0083】
吸着パッド96の上端は、円形状の開口を有し、後述のようにこの開口に働く吸引力によりワークWが吸着保持される。
【0084】
支持部材86の上端には円板状のテーブル部材98がネジ等により固定されて支持される。テーブル部材98の中央部には、ワークWを載置するワーク載置部100が設けられる。
【0085】
ワーク載置部100は、
図3におけるワーク載置部100を拡大して示した
図5に示すように、テーブル部材98において、θ軸と略同軸上となる中心軸に沿って上面から下面まで貫通する円柱状のワーク載置孔101を有する。
【0086】
球状のワークWは、下側の一部分がこのワーク載置孔101の内部に没入した状態に置かれると共に、ワーク載置孔101の下側から挿入された吸着パッド96に吸着される。
【0087】
また、ワーク載置部100は、テーブル部材98の上面側のワーク載置孔101の周辺部において、ワーク載置孔101の円形の周縁に沿って等間隔(θ軸周りの約120度の回転角度間隔ごと)に設置され3つの支持点ボール102A、102B、102Cを有する(
図4、
図5参照)。
【0088】
支持点ボール102A、102B、102Cは、ルビーなどの硬質材料により球状に形成され、各々、ネジ部材104A、104B、104C(ネジ部材104Aのみ
図5に図示)の先端に取り付けられる。そして、ネジ部材104A、104B、104Cがテーブル部材93に形成されたネジ孔に螺合されることによって、テーブル部材98の上面に支持点ボール102A、102B、102Cが固定される。
【0089】
ワークWは、これらの支持点ボール102A、102B、102Cに当接することで、3点により支持される。
【0090】
なお、ワークWの直径が例えば8mmのとき、支持点ボール102A、102B、102Cの直径を1mmとした場合、ワークWの中心は支持点ボール102A、102B、102Cの中心に対して約1.5mm高い位置に支持される。
【0091】
続いて、上記球形ワーク固定治具50の作用について説明する。
【0092】
球状のワークWの真円度を測定する場合に、操作者は、上述のように球形ワーク固定治具50を載物台12に固定する。そして、球形のワークWを球形ワーク固定治具50のテーブル部材98におけるワーク載置孔101の位置に置き、ワークWを支持点ボール102A、102B、102Cに載せる。
【0093】
続いて、バルブ70のレバー70Aを操作してバルブ70を開き(バルブ70の内部管路を開放し)、真空エジェクタを作動させる。そして、真空エジェクタに接続された配管66Bの端部の真空パッド74を、バルブ70を含む配管66Aの端部に真空吸着させて配管66Aと配管66Bとを連結する(
図4の状態)。
【0094】
これにより、真空タンク部材56と真空エジェクタとが配管66により接続され、真空タンク部材56の内部の空洞部62の空気が配管66を介して真空エジェクタにより吸引されて空洞部62が負圧状態となる。
【0095】
そして、空洞部62が負圧状態になると、固定部材76、チューブ82A、82B、ウエイト部材84の各々の管路を介して吸着パッド96の上端の開口に吸引力が発生する。
【0096】
続いて、操作者は、例えば、チューブ82A、82Bとウエイト部材84との接続部分である接続端83A、83Bを把持して上方に動かし、ウエイト部材84と共に吸着パッド96を上方に移動させる。そして、ワークWの下側部分に吸着パッド96を真空吸着させる。
【0097】
これにより、ワークWには、ウエイト部材84の重さに対応した下方への重力が加えられる。そして、ワークWにウエイト部材84の重力が付加されることで、ワークWが軽い場合であっても、ワークWが支持点ボール102A、102B、102Cに強く圧接し、水平方向及び上下方向への変動が規制される。
【0098】
次に、真空タンク部材56に接続された真空圧力計68により空洞部62の内部圧力が予め決められている適正圧力まで低下したことを確認して、バルブ70のレバー70Aを操作してバルブ70を閉じる(バルブ70の内部管路を閉鎖する)。
【0099】
そして、真空エジェクタを停止させて、配管66Bの真空パッド74を配管66Aの端部から引き離して
図6のように配管66Bを配管66Aから取り外す。
【0100】
これにより、球形ワーク固定治具50は配管66B及び真空エジェクタによって阻害されることなく、θ軸周りに回転することが可能となる。
【0101】
また、真空タンク部材56の空洞部62によって、真空エジェクタによる吸引が行われない状態であっても、かつ、ワークWと吸着パッド96との隙間などからのリークが生じても、負圧状態を長く維持して吸着パッド96のワークWへの吸着状態を保持することができる。そのため、測定中にワークWからウエイト部材84が離脱することなくそれらが連結された状態に維持される。
【0102】
次に、検出器24の測定子24Bの先端をワークWの母線の位置に当接させる。このとき、例えば、検出器本体24Aの軸心をZ軸方向(
図1の状態)、測定子24Bの変位方向をX軸方向(径方向)、検出器本体24Aに対する測定子24Bの付勢方向をワークW側として後述する
図8のように測定子24Bの先端をワークWの母線の位置に当接させる。また、測定子24BをワークWとの接触によって付勢力に抗して付勢方向と反対向きに変位させた状態に設定し、ワークWには測定子24Bから所定の測定圧(測定力)が加えられた状態とする。
【0103】
続いて、回転駆動部11により載物台12を回転させて球形ワーク固定治具50と共にワークWをθ軸周りに回転させながら測定子24Bの変位量を示す検出信号を検出器24から出力させる。
【0104】
これによって、検出器24からの検出信号を取得した演算処理装置において真円度等の算出が行われる。
【0105】
以上のような球形ワーク固定治具50によれば、ワークWがθ軸周りに回転した際に、測定子24BはワークWに対して所定の測定力を加えながらワークWの母線に沿ってワークWの周りを相対的に回転移動する。
【0106】
これによりワークWは、測定子24Bからの測定力により水平方向への力を受ける。ワークWが軽い場合、自重だけではワークWが測定力により水平方向又は上方向に動いてしまい、精度の高い測定ができない。
【0107】
これに対して、上記の球形ワーク固定治具50では、ワークWにウエイト部材84を吸着パッド96を介して連結することによってワークWに対して自重による下向きの力の他に、ウエイト部材84の重さによる下向きの力を付加している。
【0108】
そのため、ワークWが軽い場合であっても、ワークWが支持点ボール102A、102B、102Cに強く圧接して、測定力に対するワークWの水平方向及び上下方向への動きが規制される。したがって、精度の高い測定が可能となる。
【0109】
ここで、測定力によってワークWが動かないための条件について詳説する。
【0110】
図7は、球形ワーク固定治具50におけるワーク載置部100を上方から示したイメージ図であり、
図8は、ワーク載置部100を側方から示したイメージ図である。
【0111】
これらの図に示すようにワークWは、ワークWの中心を通る上下方向の軸であるθ軸の周りに等間隔(120度間隔)に配置された3つの支持点ボール102A、102B、102Cにより支持される。
【0112】
また、ワークWの中心と各支持点ボール102A、102B、102Cの中心とを結ぶ直線と、θ軸とのなす角がα度であるとする。
【0113】
更に、検出器24の測定子24Bがθ軸と1つの支持点ボール(例えば支持点ボール102Aとする)の中心とを含む平面と、ワークWの母線(ワークWの中心を通る水平断面の輪郭線)との交点位置に測定子24Bの先端が接触している状況を想定する。
【0114】
そして、測定子24BがワークWに加える測定力をFmとし、ワークWの重さとウエイト部材84の重さによりワークWに働く重力による下向きの力をFwとし、ワークWが各支持点ボール102A、102B、102Cに与える分力をFaとする。各支持点ボール102A、102B、102Cに与えられる分力Faは測定力Fmが与えられていない状態においては等分配されるものとする。また、分力Faの水平成分をFah、鉛直成分(上下成分)をFavとする。
【0115】
このような前提において、測定力Fmによって、ワークWが動かないための条件は、次の条件式(1)により表される。
【0116】
Fah>Fm ・・・(1)
即ち、ワークWから支持点ボール102Aに加わる分力Faの水平成分Fahが測定力Fmよりも大きければ、少なくともワークWが支持点ボール102Aから離間する可能性がなく、条件式(1)を満たせばワークWが動く可能性はない。
【0117】
ここで、各支持点ボール102A、102B、102Cが受ける分力Faの鉛直成分Favは、
Fav=Fw/3 ・・・(2)
である。
【0118】
そして、鉛直成分FavはFa・cosαであり、かつ、水平成分FahはFa・sinαであることから、上式(2)も考慮すると、分力Faの水平成分Fahは、次式(3)となる。
【0119】
Fah=Fa・sinα=(Fav/cosα)・sinα
=Fw・tanα/3 ・・・(3)
したがって、上述の条件式(1)は、次の条件式(4)により表される。
【0120】
Fw・tanα/3>Fm ・・・(4)
例えば、Fm=0.1N(≒10gf)、α=30°とした場合、上記の条件式(1)により、
Fw>3・Fm/tanα=3・0.1/tan60°
=0.17N(≒17gf)
したがって、ワークWとウエイト部材84とで17g以上となるようにすれば、測定力FmによってワークWが動かないようにすることができる。
【0121】
一方、ワークWの回転により、測定子24Bが、
図7、
図8の状態とは反対側の位置でワークWの母線に接触している状態となった場合を
図9、
図10に示す。なお、
図9は、ワーク載置部を上方から示したイメージ図であり、
図10は、ワーク載置部を側方から示したイメージ図である。
【0122】
この状態では、各支持点ボール102A、102B、102Cのうち、測定力Fmの向きにワークWが動くとワークWが離間する支持点ボールが2つ存在する。例えば、同図の例では支持点ボール102B、102Cがこれに相当する。
【0123】
そして、それらに加わる分力Faの水平成分Fahのうち、測定力Fmと反対向きとなる成分を合成したときの力をFbhとする。
【0124】
このとき、力Fbhが測定力Fmよりも大きければ、少なくともワークWが2つの支持点ボール102B、102Cから離間する可能性がなく、ワークWが動く可能性はない。
【0125】
したがって、測定力Fmによって、ワークWが動かないための条件は、次の条件式(5)により表される。
【0126】
Fbh>Fm ・・・(5)
ここで、各支持点ボール102B、102Cの各々に加えられる分力Faの水平成分Fahに対して、測定力Fmと反対向きとなる成分はFah・sin30°=Fah/2となる。したがって、各支持点ボール102B、102Cについての成分Fah/2を合成した力Fbhは、Fahと等しくなり、上記の条件式(5)は条件式(1)と等しくなる。
【0127】
このことから、この状態においても条件式(4)を満たすことで測定力Fmによって、ワークWが動かないようにすることができる。
【0128】
以上、上記実施の形態では、吸着パッド96と真空エジェクタとの間を接続する配管66がワークWの回転を阻害するために、ワークWの回転時には、吸着パッド96に対して真空エジェクタを切り離すようにした。
【0129】
しかしながら、例えば、吸着パッドに接続された配管であってワークWと共に回転する配管と、真空エジェクタに接続された配管であって固定された配管とをロータリジョイントを用いて連結する構成とすることもできる。この場合は、ワークWの回転時(測定時)において上記実施の形態のように真空エジェクタを切り離す必要がなく、測定時においても真空エジェクタを作動させておくことができる。また、真空タンク部材56の空洞部62のような真空を保持するための空洞部も不要とすることができる。
【0130】
ただし、このようなロータリジョイントは、回転しない部分、例えば、載物台12の下の回転駆動部11に配置する必要があるため、真円度測定装置に対して球体ワーク固定治具の全ての構成要素を完全には着脱可能とすることは難しい。
【0131】
したがって、既存の真円度測定装置をそのまま用いることはできず、一部の構成を事前に変更する必要がある。
【0132】
これに対して、
図3〜
図5に示した球形ワーク固定治具50は、真円度測定装置に対して球体ワーク固定治具の全ての構成要素を完全には着脱可能とすることができ、既存の真円度測定装置をそのまま使用することができるという利点がある。
【0133】
なお、検出器24がワークWの周りを回転移動する検出器回転型の真円度測定装置の場合は、検出器の回転時(測定時)において上記実施の形態のように真空エジェクタを切り離す必要がなく、測定時においても真空エジェクタを作動させておくことができる。また、真空タンク部材56の空洞部62のような真空を保持するための空洞部も不要とすることができる。
【0134】
また、上記実施の形態では、ワークWに対す下向きの力をウエイト部材84により付加したが、
図11のようにバネのような付勢部材120により部材122及び吸着パッド96を介してワークWに下向きの力を付加するようにしてもよい。部材122は、上記実施の形態のウエイト部材84に対応するが、その重さによる重力をワークWに付加することを目的とするものでなく軽いものであってもよい。
【0135】
また、上記実施の形態では、ワークWをテーブル部材98における支持点ボール102A〜102Cにより3点で支持するものとしたが、これに限らない。ワークWの下向きへの移動を規制する規制部材によりワークWを支持するものであればよい。
【0136】
また、上記実施の形態では、ワークWに対してウエイト部材84や
図11の付勢部材120等の荷重手段により下向きの力を加え、テーブル部材98における支持点ボール102A〜102Cのような規制部材によりワークWの下向きへの移動を規制してワークWを支持するものとしたが、これに限らない。
【0137】
たとえば、測定子24BをワークWに接触させながら移動させる母線を含む平面に垂直な方向であって、相反する第1方向及び第2方向のうちの第1方向側の半球の範囲に接触してワークWの第1方向側への移動を規制する規制部材と、ワークWに対して第1方向への力を加える荷重手段とを備えた構成であればよく、第1方向は、下向き以外の方向とすることができる。
【0138】
また、上記実施の形態では、ウエイト部材84等の荷重手段を、吸着パッド96を介してワークWに連結したが、吸着以外の手段、例えば、磁力や接着剤によりワークWに連結部材を着脱可能に連結してもよい。
【0139】
即ち、ワークWに対して上述の規制部材の接触位置よりも上述の第1方向側の範囲において連結される連結部材と、ワークWに対して連結部材を着脱可能に連結する連結手段であって、吸着手段以外の任意の手段と、ワークWに対して連結部材を介して第1方向への力を加える荷重手段と、を備えた構成とすることができる。