(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施の形態]
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るセンサ付きケーブルが適用された車輪軸受装置を示す全体断面図であり、
図1(b)は、一部を破断して示すセンサ付きケーブルの構成図である。
図1(c)は、車輪軸受装置の磁気エンコーダを示す平面図である。
【0012】
(車輪軸受装置の構成)
車輪軸受装置1は、円筒状の本体部110、及び車輪が取り付けられるフランジ部111を有する内輪11と、内輪11の本体部110の外周側に配置された外輪12と、内輪11と外輪12との間に配置された複数の転動体13と、内輪11の外輪12に対する回転速度を検出する回転検出装置10とを備えている。
【0013】
内輪11の本体部110の中心部には、その回転軸線Oに沿ってドライブシャフトを連結するためのスプライン嵌合部110aが形成されている。内輪11のフランジ部111は、本体部110の径方向外側に突出して本体部110と一体に形成されている。フランジ部111には、図示しない車輪を取り付けるためのボルトが圧入される複数の貫通孔111aが形成されている。
【0014】
外輪12は、円筒状に形成され、懸架装置を介して車体に連結されたナックル18に複数のボルト181(
図1には1つのボルト181のみ示す)によって固定されている。ナックル18には、後述するセンサ付きケーブル2を取り付けるための貫通孔18aが形成されている。
【0015】
内輪11と外輪12との間の環状の空間は、第1のシール部材14及第2のシール部材15によって封止されている。第1のシール部材14は、内輪11のフランジ部111側に配置され、第2のシール部材15はその反対側(車体側)に配置されている。第2のシール部材15は、断面L字状の芯金151と、芯金151に加硫接着によって接着された弾性部材152とからなり、芯金151の外周に形成された円筒部が外輪12の外周面に圧入されている。
【0016】
回転検出装置10は、内輪11における本体部110の外周に固定された磁気エンコーダ16と、この磁気エンコーダ16に対向して配置されたセンサ付きケーブル2とを有して構成されている。磁気エンコーダ16は、内輪11の本体部110の外周面に嵌着された環状の部材であり、
図1(c)に示すように、周方向に沿って交互に配列された複数のN磁極161と複数のS磁極162とを有している。内輪11の本体部110における車体側の端部の外周面には、磁気エンコーダ16への異物の付着を抑制するカバー部材17が取り付けられている。
【0017】
磁気エンコーダ16は、内輪11と共に回転し、内輪11の回転に伴って、貫通孔18aにおけるセンサ付きケーブル2に対向する部分の磁極(N磁極161又はS磁極162)の磁性が変化する。回転検出装置10は、センサ付きケーブル2に対向する部分の磁気エンコーダ16の磁性の変化を内輪11のフランジ部111に取り付けられた車輪の回転として検出する。センサ付きケーブル2は、外輪12にボルト19によって固定されている。
【0018】
図1(b)に示すように、センサ付きケーブル2は、磁気エンコーダ16の磁界を検出する磁界センサ4と、後述する複数の絶縁電線をシースで被覆してなるケーブル部5と、磁界センサ4を収容するセンサハウジング3とを備えている。センサハウジング3は、磁界センサ4を収容する樹脂からなる収容ケース31と、収容ケース31の少なくとも一部を覆ってモールド成形されたモールド樹脂からなるモールド成形体32と、ボルト19を挿通させる筒状の金属からなる固定リング33とを有している。
【0019】
モールド成形体32は、収容ケース31内に磁界センサ4の本体部41を保持した状態でモールド成形される。このモールド成形は、金型内に溶融した高温の溶融樹脂を注入し、注入された溶融樹脂を固化させることにより行われる。
【0020】
(センサ付きケーブルの構成)
次に、
図2乃至
図4を参照してセンサ付きケーブル2の構成を説明する。
図2は、センサ付きケーブル2の外観を示し、(a)は正面図、(b)は底面図である。
図3は、
図2(b)のA−A線断面図である。
図4(a)は、磁界センサ4及びケーブル部5の第1及び第2の絶縁電線51,52の接続状態を示す平面図であり、
図4(b)は、これらの側面図である。
【0021】
図2及び
図3に示すように、収容ケース31は、磁界センサ4の本体部41を外部に臨ませる開口31aが形成された筒状部310と、筒状部310よりも大径に形成された鍔部311と、モールド成形体32に保持された第1乃至第3被保持部312〜314とを有している。第1被保持部312は、鍔部311よりも小径の円筒状に形成され、第2被保持部313は、第1被保持部312よりも小径の円筒状に形成されている。また、第3被保持部314は、第2被保持部313よりも小径の円筒状であり、鍔部311から最も遠い位置に配置されている。
【0022】
磁界センサ4の本体部41は、筒状部310の内側に形成された収容空間31b内に配置されている。なお、本実施の形態では、収容ケース31に磁界センサ4の全体が収容されているが、磁界センサ4の一部が収容ケース31から露出していてもよい。つまり、収容ケース31は、磁界センサ4の少なくとも一部を収容していればよい。この収容ケース31は、本発明の「収容部」の一態様である。
【0023】
モールド成形体32は、収容ケース31の筒状部310及び鍔部311を外部に露出させて収容ケース31と一体化されている。モールド成形体32は、ナックル18(
図1(a)に示す)に固定されるフランジ部320と、収容ケース31の第1乃至第3被保持部312〜314を保持するケース保持部321と、ケーブル部5が導出される導出部324と、ケース保持部321に保持された収容ケース31と導出部324との間に設けられた湾曲筒部322及び円筒部323とを有している。
【0024】
フランジ部320は、ケース保持部321から突出して形成され、固定リング33を保持している。固定リング33には、ボルト19(
図1(a)に示す)を挿通させるボルト挿通孔33aが形成されている。ケース保持部321は、収容ケース31の第1乃至第3被保持部312〜314を覆っている。湾曲筒部322は、ケーブル部5の第1及び第2の絶縁電線51,52を湾曲した状態で保持している。円筒部323は、ケーブル部5の導出方向に中心軸を一致させて、内輪11の回転軸線O(
図1(a)に示す)と平行な方向に沿って形成されている。
【0025】
ケーブル部5は、モールド成形体32の導出部324から、回転軸線Oと平行な方向に導出されている。導出部324は、円錐状のテーパ部324aと、円筒部323よりも外径が小さい小径筒部324bとを有し、テーパ部324aは、円筒部323と小径筒部324bとの間に介在している。
【0026】
また、ケーブル部5は、
図3及び
図4に示すように、シース50と、第1及び第2の絶縁電線51,52とを有している。シース50の一端部50aは、モールド成形体32に封止されている。第1及び第2の絶縁電線51,52は、モールド成形体32の円筒部323及び導出部324においてシース50に一括して覆われている。
【0027】
シース50は例えばウレタン等の樹脂からなり、モールド成形体32は例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)又はナイロンからなる。特に、モールド成形体32の材質を例えば66ナイロン又は612ナイロンとすれば、シース50との密着性が極めて良好となる。
【0028】
第1の絶縁電線51は、
図4(a)に示すように、銅等の良導電性の金属からなる中心導体511を絶縁性の樹脂からなる絶縁体512で被覆してなる。同様に、第2の絶縁電線52は、
図4(a)に示すように、銅等の良導電性の金属からなる中心導体521を絶縁性の樹脂からなる絶縁体522で被覆してなる。
【0029】
磁界センサ4は、検出素子410を含むセンサ本体部41と、センサ本体部41から引き出された第1のリード線421及び第2のリード線422とを有している。第1のリード線421には、第1の絶縁電線51の中心導体511が接続され、第2のリード線422には、第2の絶縁電線52の中心導体521が接続されている。これらの接続は、溶接又は半田付けによって行うことができる。
【0030】
本実施の形態では、磁界センサ4の検出素子410がホール効果を利用して磁界を検出するホール素子である。検出素子410は、センサ本体部41の内部において第1及び第2のリード線421,422に電気的に接続されている。
【0031】
本実施の形態では、
図3に示すように、第1及び第2の絶縁電線51,52が、円筒部323における湾曲筒部322側の端部においてシース50から露出している。すなわち、第1及び第2の絶縁電線51,52は、円筒部323におけるシース50の一端部50aから露出して、湾曲筒部322に保持されている。第1及び第2の絶縁電線51,52は、収容ケース31に第3被保持部314側から導入され、収容ケース31内にて磁界センサ4と接続されている。
【0032】
また、本実施の形態では、
図3に示すように、モールド成形体32の円筒部323及び導出部324に保持された部分のシース50の中心軸をC
1とし、収容ケース31の筒状部310の中心軸をC
2とすると、中心軸をC
1,C
2は、90°の角度で交差している。このため、第1及び第2の絶縁電線51,52は、モールド成形体32の円筒部323と収容ケース31との間で、中心角が90°の円弧状に湾曲している。ただし、これに限らず、中心軸をC
1,C
2を、90°±10°の範囲内で交差させてもよい。中心軸C
1,C
2がなす所定の角度のより望ましい範囲は、90°±5°である。
【0033】
シース50は、モールド成形体32の円筒部323に10mm以上の長さに亘って保持されている。
図3では、円筒部323に保持された部分のシース50の長さをL
1で示している。シース50が10mm以上の長さに亘ってモールド成形体32に保持されることにより、シース50を強固に保持することができ、シース50の外周面からの水分の浸入を防ぐことができる。
【0034】
シース50の外径は例えば5mmであり、第1及び第2の絶縁電線51,52のそれぞれの外径は例えば1.5mmである。モールド成形体32の湾曲筒部322において屈曲された第1及び第2の絶縁電線51,52の曲率半径は、例えば3.5mm以上10mm以下である。また、中心軸C
2に沿った方向における収容ケース31の第3被保持部314とケーブル部5のシース50の外周面との間の距離D
1は、例えば3.5mm以上10mm以下である。
【0035】
(センサ付きケーブルの製造方法)
次に、
図5を参照して、センサ付きケーブル2の製造方法について説明する。センサ付きケーブル2は、上金型及び下金型内に高温の溶融樹脂を注入してモールド成形体32を成形するモールド成形によって製造される。
【0036】
図5は、センサ付きケーブル2の製造に用いられる下金型6を、下金型6に配置された各部材と共に示す平面図である。
図5では、下金型6側のキャビティ60に注入された溶融樹脂7をグレーで示している。この下金型と組み合わされる上金型は、下金型6と対称な形状を有し、下金型6と共にキャビティ60を形成する。
【0037】
下金型6には、固定リング33、磁界センサ4が収容された収容ケース31、及びケーブル部5の一端部が配置される。ケーブル部5は、第1及び第2の絶縁電線51,52がシース50から露出して磁界センサ4に接続された状態で下金型6上に配置される。下金型6には、シース50を上金型との間で挟持するための挟持部61が形成されている。下金型6に上金型が重なると、固定リング33、収容ケース31、及びケーブル部5が、下金型6及び上金型に挟まれて固定される。
【0038】
キャビティ60には、注入孔62から溶融樹脂7が注入される。この注入孔62は、ケーブル部5のシース50を指向し、導出部324のテーパ部324aとなる部分に開口62aを有している。注入孔62から注入された溶融樹脂7は、
図5に示す矢印の方向に沿ってキャビティ60内を流動する。すなわち、溶融樹脂7は、導出部324となる部分から円筒部323となる部分を経て湾曲筒部322となる部分に流動し、ケース保持部321及びフランジ部320となる部分に至る。この溶融樹脂7が温度低下して固化すると、モールド成形体32が形成される。
【0039】
溶融樹脂7の熱は、下金型6及び上金型、ならびにケーブル部5を介して放熱される。この際、溶融樹脂7は、温度分布が大きくばらつくことなく、全体が均一に温度低下することが望ましい。溶融樹脂7が固化する過程で極端な温度のばらつきが生じると、遅れて固化する部分が負圧となり、ボイド(気泡)が発生しやすくなるためである。
【0040】
そこで、本実施の形態では、湾曲筒部322となる部分の中央部に第1及び第2の絶縁電線51,52を配置することにより、ボイドの発生を抑制している。つまり、溶融樹脂7の熱は、下金型6及び上金型によって冷却される他、第1及び第2の絶縁電線51,52によっても冷却されるため、湾曲筒部322の中央部に第1及び第2の絶縁電線51,52を保持することにより、製造時における湾曲筒部322となる部分の溶融樹脂7の温度分布が均等化され、ボイドの発生が抑制される。
【0041】
なお、キャビティ60内における第1及び第2の絶縁電線51,52の姿勢は、下金型6及び上金型に挟持されるシース50の軸方向の位置を調節することで調整可能である。また、溶融樹脂7を第1及び第2の絶縁電線51,52に沿って流動させることにより、モールド成形時における第1及び第2の絶縁電線51,52の姿勢が保たれる。
【0042】
(湾曲筒部322の断面構造)
図6(a)は、
図2(a)のB−B線断面における湾曲筒部322の断面の一例を示し、
図6(b)は同じく
図2(a)のB−B線断面における湾曲筒部322の断面の別例を示している。このB−B線断面は、第1及び第2の絶縁電線51,52の延伸方向に対して直交する断面である。なお、
図6(a)及び(b)では、図示内容の明確化のため、湾曲筒部322の断面を示すハッチングを省略している。
【0043】
図6(a)及び(b)に示すように、モールド成形体32の湾曲筒部322は、第1及び第2の絶縁電線51,52の延伸方向に対して直交する断面が円形状に形成された円形状である。第1及び第2の絶縁電線51,52は、
図6(a)及び(b)に示す湾曲筒部322の円形状の断面における中央部に保持されている。湾曲筒部322の円形状の断面の直径は、例えば10mmである。
【0044】
ここで、湾曲筒部322の円形状の断面において、湾曲筒部322の外周面322a上の任意の点Pから第1及び第2の絶縁電線51,52の何れかの絶縁体512,522の外周面までの最短距離を点Pにおける外周面間距離Lとする。すなわち、外周面間距離Lは、点Pを中心とする円であって、第1及び第2の絶縁電線51,52の何れかの絶縁体512,522に外接し、かつ半径が最小となる円の当該半径に相当する。
【0045】
図6(a)及び(b)では、この外周面間距離Lが最小となる湾曲筒部322の外周面322a上の点をP
aで示し、このP
aにおける外周面間距離LをL
minとして示している。また、
図6(a)及び(b)では、外周面間距離Lが最大となる湾曲筒部322の外周面322a上の点をP
bで示し、このP
bにおける外周面間距離LをL
maxとして示している。またさらに、
図6(a)及び(b)では、P
aを中心として第1及び第2の絶縁電線51,52の何れかの絶縁体512,522に外接する円C
aの一部、ならびにP
bを中心として第1及び第2の絶縁電線51,52の何れかの絶縁体512,522に外接する円C
bの一部を、それぞれ二点鎖線で示している。
【0046】
外周面間距離Lの最大値であるL
maxと、外周面間距離Lの最小値であるL
minとの差をΔL(ΔL=L
max−L
min)とすると、ΔLは、湾曲筒部322の円形状断面の中心点Cで第1の絶縁電線51と第2の絶縁電線52が接触する場合に最も小さくなり、第1の絶縁電線51及び第2の絶縁電線52が中心点Cから離れると大きくなる。
【0047】
このΔLは、小さいほど、ボイドの発生を抑止する上で好ましい。本実施の形態では、ΔLが2mm以内である。ΔLが2mmを超えると、製造時に湾曲筒部322においてボイドが発生しやすくなる。製造時にボイドが発生すると、その後のセンサ付きケーブル2の使用時における温度変化等によってボイドが徐々に大きくなり、モールド成形体32の強度が低下してしまうおそれがある。また、ケーブル部5の他端部側からシース50と第1及び第2の絶縁電線51,52との隙間を介して浸入した水分がセンサハウジング3内に溜まってしまうおそれもある。
【0048】
(比較例)
図7は、比較例に係るモールド成形体32の湾曲筒部322を示す断面図である。この比較例では、外周面間距離Lの最大値L
maxと最小値L
minとの差であるΔLが2mmを超えており、湾曲筒部322の円形状断面の一部にボイドVが発生している。これは、モールド成形によるモールド成形体32の成形時に、溶融樹脂7が湾曲筒部322となる部分の外周側から徐々に固化して収縮することにより、径方向の厚みが厚く、最後に固化する部分の溶融樹脂7が負圧となり、ボイドVが発生したものと考えられる。すなわち、本実施の形態では、ΔLを2mm以内とすることにより、このようなボイドVの発生が抑制されている。
【0049】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した第1の実施の形態に係るセンサ付きケーブル2によれば、第1及び第2の絶縁電線51,52が、モールド成形体32の湾曲筒部322の円形状の断面における中央部に保持されるので、製造時における湾曲筒部322となる部分の溶融樹脂7の温度分布が均等化され、ボイドVの発生が抑制される。特に、本実施の形態では、湾曲筒部322の円形状の断面における外周面間距離Lの最大値L
maxと最小値L
minとの差であるΔLが2mm以内であるので、ボイドVの発生を確実に防ぐことが可能となる。これにより、センサハウジング3の耐久性が高まると共に、センサハウジング3内に水分が溜まってしまうことを防ぐことができる。
【0050】
また、第1の実施の形態に係るセンサ付きケーブル2では、ケーブル部5は、シース50の端部50aから露出した第1及び第2の絶縁電線51,52がモールド成形体32の湾曲筒部322で屈曲されることにより、モールド成形体32に保持された部分のシース50の中心軸C
1が、収容ケース31の筒状部310の中心軸C
2に対して所定の角度(90°)を以って交差している。これにより、モールド成形体32から導出されたケーブル部5が車両に搭載された他の部材等に干渉することを抑制できると共に、モールド成形体32を小型化することができる。
【0051】
またさらに、第1の実施の形態に係るセンサ付きケーブル2では、磁界センサ4の本体部41は、収容ケース31の筒状部310に収容され、モールド成形体32は、収容ケース31の第1乃至第3被保持部312〜314を保持している。これにより、モールド成形体32のモールド成形時に、磁界センサ4の本体部41に溶融樹脂7が直接触れることがなく、検出素子410が溶融樹脂7の熱によって損傷を受けることが抑制される。
【0052】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、
図8及び
図9を参照して説明する。
図8は、第2の実施の形態に係るセンサ付きケーブル2´を示す断面図であり、
図9は、
図8のC−C線断面図である。なお、このセンサ付きケーブル2´は、第1の実施の形態に係るセンサ付きケーブル2と同様の製造方法により製造される。
【0053】
本実施の形態に係るセンサ付きケーブル2´は、センサハウジング3´におけるモールド成形体32´の形状が第1の実施の形態に係るセンサハウジング3のモールド成形体32と異なり、またケーブル部5のシース50の端部が収容ケース31に収容され、収容ケース31の第3被保持部314からシース50が導出されている他は、第1の実施の形態に係るセンサ付きケーブル2と同様に構成されている。
図8及び
図9において、第1の実施の形態について説明したものと実質的に共通する構成要素については、
図3及び
図6に付したものと同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0054】
第2の実施の形態に係るセンサハウジング3´のモールド成形体32´は、第1の実施の形態に係るセンサハウジング3の湾曲筒部322に対応する湾曲筒部322´を有しているが、この湾曲筒部322´の中心軸の曲率半径は、第1の実施の形態に係る湾曲筒部322の中心軸の曲率半径よりも大きく形成されている。
【0055】
この曲率半径の違いは、湾曲筒部322´内において第1及び第2の絶縁電線51,52がケーブル部5のシース50に覆われ、第1及び第2の絶縁電線51,52がシース50と共に屈曲されていることによるものである。つまり、シース50は、第1及び第2の絶縁電線51,52(
図6では第1の絶縁電線51のみ示す)よりも外径が大きくかつ硬度が高いために屈曲し難いので、センサハウジング3´の湾曲筒部322´の曲率半径は、第1の実施の形態における湾曲筒部322の中心軸の曲率半径よりも大きくなる。これにより、本実施の形態に係るセンサハウジング3´では、収容ケース31の第3被保持部314と、モールド成形体32´の円筒部323´に直線状に保持された範囲におけるシース50の外周面との間の距離D
1´が、第1の実施の形態のセンサハウジング3における距離D
1の2倍程度となる。
【0056】
その一方で、本実施の形態に係るセンサハウジング3´では、シース50が長い範囲に亘ってモールド成形体32´に覆われるので、モールド成形体32´の材質をナイロンよりも低コストなPBTとしても、十分な防水性を確保することが可能となる。
【0057】
図9に示すように、湾曲筒部322´の円形状の断面において、湾曲筒部322´の外周面322a´上の任意の点Pからシース50の外周面までの最短距離を点Pにおける外周面間距離Lすると、この外周面間距離Lは、シース50の中心が湾曲筒部322´の円形状の断面の中心と一致している場合には、湾曲筒部322´の外周面322a´上の何れの点Pにおいても等しく、シース50の中心が湾曲筒部322´の円形状の断面の中心からずれると、点Pの位置によって外周面間距離Lが変化する。
【0058】
図9では、この外周面間距離Lが最小となる湾曲筒部322´の外周面322a´上の点をP
aで示し、このP
aにおける外周面間距離LをL
minとして示している。また、
図9では、外周面間距離Lが最大となる湾曲筒部322´の外周面322a´上の点をP
bで示し、このP
bにおける外周面間距離LをL
maxとして示している。
【0059】
外周面間距離Lの最大値であるL
maxと、外周面間距離Lの最小値であるL
minとの差をΔL(ΔL=L
max−L
min)とすると、ΔLは、シース50の中心が湾曲筒部322´の円形状の断面の中心と一致している場合に最も小さくなり、シース50の中心が湾曲筒部322´の円形状の断面の中心から離れると大きくなる。
【0060】
このΔLは、小さいほど製造時における湾曲筒部322´となる部分の溶融樹脂の温度分布が均等化され、ボイドの発生が抑制される。本実施の形態では、ΔLが2mm以内である。ΔLが2mmを超えると、製造時に湾曲筒部322´にボイドが発生しやすくなってしまう。
【0061】
(比較例)
図10は、比較例に係るモールド成形体32´の湾曲筒部322´を示す断面図である。この比較例では、外周面間距離Lの最大値L
maxと最小値L
minとの差であるΔLが2mmを超えており、湾曲筒部322´の円形状断面の一部にボイドVが発生している。これは、モールド成形体32´の成形時に、溶融樹脂が湾曲筒部322´となる部分の外周側から徐々に固化して収縮することにより、径方向の厚みが厚い部分において溶融樹脂が負圧となり、ボイドVが発生したものと考えられる。すなわち、本実施の形態では、ΔLを2mm以内とすることにより、このようなボイドVの発生が抑制されている。
【0062】
(第2の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した第2の実施の形態に係るセンサ付きケーブル2´によれば、シース50がモールド成形体32´における湾曲筒部322´の円形状の断面の中央部に保持されるので、製造時に湾曲筒部322´となる部分の溶融樹脂の温度分布が均等化され、ボイドVの発生が抑制される。特に、本実施の形態では、湾曲筒部322´の円形状の断面における外周面間距離Lの最大値L
maxと最小値L
minとの差であるΔLが2mm以内であるので、ボイドVの発生を確実に防ぐことが可能となる。これにより、第1の実施の形態と同様に、センサハウジング3´の耐久性が高まると共に、センサハウジング3´内に水分が溜まってしまうことを防ぐことができる。
【0063】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0064】
[1]中心導体(511,521)を絶縁体(521,522)で被覆してなる複数の絶縁電線(51,52)と、前記複数の絶縁電線(51,52)を一括して覆うシース(50)と、検出素子(410)を含むセンサ本体部(41)、及び前記センサ本体部(41)から引き出されて前記中心導体(511,521)に接続されたリード線(421,422)を有するセンサ(4)と、前記シース(50)の一端部を封止すると共に、前記センサ(4)の少なくとも一部を収容するハウジング(センサハウジング3,3´)とを備え、前記ハウジング(3,3´)は、前記センサ(4)の少なくとも一部を収容する収容部(収容ケース31)と、前記シース(50)が導出される導出部(324)と、前記収容部(31)と前記導出部(324)の間に設けられ、前記複数の絶縁電線(51,52)を湾曲した状態で保持する断面円形状の湾曲筒部(322,322´)とを有し、前記湾曲筒部(322,322´)は、前記複数の絶縁電線(51,52)の延伸方向に対して直交する断面が円形状に形成されたモールド樹脂からなり、前記複数の絶縁電線(51,52)は、前記湾曲筒部(322,322´)の前記円形状の断面における中央部に保持されている、センサ付きケーブル(2,2´)。
【0065】
[2]前記複数の絶縁電線(51,52)は、前記シース(50)から露出して前記湾曲筒部(322)に保持されている、前記[1]に記載のセンサ付きケーブル(2)。
【0066】
[3]前記湾曲筒部(322)の前記円形状の断面において、前記湾曲筒部(322)の外周面(322a)上の任意の点(P)から前記複数の絶縁電線(51,52)の何れかの前記絶縁体(512,522)の外周面までの最短距離を外周面間距離(L)としたとき、前記外周面間距離(L)の最大値(L
max)と最小値(L
min)との差が2mm以内である、前記[2]に記載のセンサ付きケーブル(2)。
【0067】
[4]前記複数の絶縁電線(51,52)は、前記湾曲筒部(322´)において前記シース(50)に覆われている、前記[1]に記載のセンサ付きケーブル(2´)。
【0068】
[5]前記湾曲筒部(322´)の前記円形状の断面において、前記湾曲筒部(322´)の外周面(322a´)上の任意の点(P)から前記シース(50)の外周面までの最短距離を外周面間距離(L)としたとき、前記外周面間距離(L)の最大値(L
max)と最小値(L
min)との差が2mm以内である、前記[4]に記載のセンサ付きケーブル(2´)。
【0069】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0070】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、車輪軸受装置1の回転検出装置10に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、車両に搭載された各種の物理量を検出する検出装置に本発明を適用することが可能である。この場合、センサとしては、磁界センサに限らず、温度センサや圧力センサ、あるいはヨーレイトセンサ等を適用することが可能である。また、車両用以外にも、本発明を適用することが可能である。