特許第6694726号(P6694726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6694726O/D型乳化組成物、水中油型乳化組成物、飲食品及び食品用素材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6694726
(24)【登録日】2020年4月22日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】O/D型乳化組成物、水中油型乳化組成物、飲食品及び食品用素材
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20200511BHJP
   A23L 2/62 20060101ALI20200511BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20200511BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20200511BHJP
   B01F 17/44 20060101ALI20200511BHJP
   B01F 17/56 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   A23D7/00 504
   A23L2/00 L
   A23L5/00 L
   A23L29/10
   B01F17/44
   B01F17/56
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-26291(P2016-26291)
(22)【出願日】2016年2月15日
(65)【公開番号】特開2017-143753(P2017-143753A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】小笠 勇馬
(72)【発明者】
【氏名】高塒 春樹
(72)【発明者】
【氏名】楠井 啓介
【審査官】 松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−327506(JP,A)
【文献】 特開2011−148772(JP,A)
【文献】 特開2003−261416(JP,A)
【文献】 特開2013−112791(JP,A)
【文献】 特開2004−290104(JP,A)
【文献】 特開2000−102356(JP,A)
【文献】 特開2007−289074(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/047846(WO,A1)
【文献】 日本化粧品技術者会誌,2010年,44(2),103-117
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価アルコール、60質量%以上90質量%未満の油溶性物質(乳化剤を除く)、及び構成脂肪酸の51質量%以上が炭素数10以上でありHLB値が10より大かつヨウ素価が10未満の乳化剤(A)を含有し、
HLB値が10より大かつヨウ素価が10以上の乳化剤(B)の含量が0.5質量%以上4質量%未満であり、HLB値が10以下の油溶性乳化剤(C)の含量が前記乳化剤(A)と前記乳化剤(B)の合計含量の1/20未満であることを特徴とするO/D型乳化組成物。
【請求項2】
多価アルコール、60質量%以上90質量%未満の油溶性物質(乳化剤を除く)、及び構成脂肪酸の51質量%以上が炭素数10以上でありHLB値が10より大かつヨウ素価が10未満の乳化剤(A)を含有し、
HLB値が10より大かつヨウ素価が10以上の乳化剤(B)の含量が5質量%未満であり、HLB値が10以下の油溶性乳化剤(C)の含量が前記乳化剤(A)と前記乳化剤(B)の合計含量の1/20未満であり、
前記乳化剤(A)の含量が1〜10質量%であり、
前記多価アルコールの含量が6〜35質量%であり、
ペースト状であることを特徴とするO/D型乳化組成物。
【請求項3】
多価アルコール、60質量%以上90質量%未満の油溶性物質(乳化剤を除く)、及び構成脂肪酸の51質量%以上が炭素数10以上でありHLB値が10より大かつヨウ素価が10未満の乳化剤(A)を含有し、
HLB値が10より大かつヨウ素価が10以上の乳化剤(B)の含量が5質量%未満であり、HLB値が10以下の油溶性乳化剤(C)の含量が前記乳化剤(A)と前記乳化剤(B)の合計含量の1/20未満であり、
前記乳化剤(A)がショ糖脂肪酸エステルであることを特徴とするO/D型乳化組成物。
【請求項4】
前記乳化剤(B)の含量が0.5質量%以上4質量%未満であることを特徴とする請求項2に記載のO/D型乳化組成物。
【請求項5】
前記乳化剤(B)の含量が0.5質量%以上4質量%未満であることを特徴とする請求項3に記載のO/D型乳化組成物。
【請求項6】
ペースト状であることを特徴とする請求項1、3、5のいずれか1項に記載のO/D型乳化組成物。
【請求項7】
前記乳化剤(A)の含量が0.5〜15質量%であることを特徴とする請求項1、3、5、6のいずれか1項に記載のO/D型乳化組成物。
【請求項8】
前記乳化剤(A)のエステル化度が20%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のO/D型乳化組成物。
【請求項9】
前記乳化剤(B)の含量が0質量%であることを特徴とする請求項2、3、6、7、8のいずれか1項に記載のO/D型乳化組成物。
【請求項10】
前記油溶性乳化剤(C)の含量が0質量%であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のO/D型乳化組成物。
【請求項11】
水に希釈後の油滴の平均粒子径が1.2μm以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のO/D型乳化組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のO/D型乳化組成物と、水溶性物質とを含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のO/D型乳化組成物、又は請求項12に記載の水中油型乳化組成物を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のO/D型乳化組成物、又は請求項12に記載の水中油型乳化組成物を含有することを特徴とする食品用素材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多価アルコール、油溶性物質及び乳化剤を含有するO/D型乳化組成物、当該O/D型乳化組成物を含有する水中油型乳化組成物、及びこれらを含有する飲食品や食品用素材に関する。
【背景技術】
【0002】
O/W型(水中油型)乳化物は、食品、飲料、化粧品、医薬品、塗料、その他多くの分野で広く利用されている。例えば食品の分野においては、乳化物を介しての油脂の添加によるコクや旨味の増強、口当たりの改善といった効果が知られている。ただし、O/W型乳化物は熱力学的に不安定なものであり、その安定性を高めるためには、微細で均一な油滴から成る乳化物とすることが重要となる。
【0003】
O/W型乳化物の調製方法としては種々の方法が知られているが、その中でも、微細なO/W型乳化物を得る方法として界面科学的手法を用いたD相乳化法が知られている(非特許文献1参照)。
【0004】
D相乳化法とは、乳化剤(界面活性化剤)を含んだ多価アルコール溶液に油相を添加して乳化する方法であり、これによってO/D型乳化組成物が得られる。次に、当該O/D型乳化組成物を水相に混合することで微細なO/W型乳化物が得られる。
【0005】
O/D型乳化組成物に関しては、例えば、特許文献1にはO/D型乳化組成物を通常のスープ成分と混合した即席スープ組成物が記載されている。また、特許文献2には所定のポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、非水溶性物質、水又は多価アルコール、モノグリセリド有機酸エステルから成る水溶性組成物(O/D型乳化組成物)が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Fragrance Journal、4、34−41(1993)
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−59545号公報
【特許文献2】特許第4044354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献の実施例に示されたO/D型乳化組成物中の油溶性物質の含量は、40質量%(特許文献1の実施例1)や、5質量%(特許文献2の実施例1〜3)に過ぎないため、例えば食品のコクや旨味を増強するためにO/D型乳化組成物からO/W乳化物を調製して添加しても、添加される油分量は少なく、その効果は限定的である。また、より効果を得るためにO/D乳化組成物をそのまま添加したとしても、風味やコストの面での問題が生じ易い。
【0009】
つまり、食品などに油溶性物質を添加するためにO/D型乳化組成物を用いる場合には、O/D型乳化組成物中の油分が高いほど効率的である(少量添加で済む)といえるが、油分を高めると安定なO/D型乳化組成物を得ることは困難になる。
【0010】
従って、本発明の目的は、高油分でありながら水に希釈後に微細な油滴となる安定なO/D型乳化組成物、当該O/D型乳化組成物を含有する水中油型乳化組成物、及びこれらを含有する飲食品や食品用素材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、下記の[1]〜[11]のO/D型乳化組成物、水中油型乳化組成物、飲食品及び食品用素材を提供する。
[1]多価アルコール、60質量%以上90質量%未満の油溶性物質(乳化剤を除く)、及び構成脂肪酸の51質量%以上が炭素数10以上でありHLB値が10より大かつヨウ素価が10未満の乳化剤(A)を含有し、HLB値が10より大かつヨウ素価が10以上の乳化剤(B)の含量が5質量%未満であり、HLB値が10以下の油溶性乳化剤(C)の含量が前記乳化剤(A)と前記乳化剤(B)の合計含量の1/20未満であることを特徴とするO/D型乳化組成物。
[2]前記乳化剤(A)のエステル化度が20%以下であることを特徴とする前記[1]に記載のO/D型乳化組成物。
[3]前記乳化剤(A)の含量が0.5〜15質量%であることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載のO/D型乳化組成物。
[4]前記乳化剤(B)の含量が0.5質量%以上4質量%未満であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のO/D型乳化組成物。
[5]前記乳化剤(B)の含量が0質量%であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のO/D型乳化組成物。
[6]前記油溶性乳化剤(C)の含量が0質量%であることを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載のO/D型乳化組成物。
[7]水に希釈後の油滴の平均粒子径が1.2μm以下であることを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれか1つに記載のO/D型乳化組成物。
[8]ペースト状であることを特徴とする前記[1]〜[7]のいずれか1つに記載のO/D型乳化組成物。
[9]前記[1]〜[8]のいずれか1つに記載のO/D型乳化組成物と、水溶性物質とを含有することを特徴とする水中油型乳化組成物。
[10]前記[1]〜[8]のいずれか1つに記載のO/D型乳化組成物、又は前記[9]に記載の水中油型乳化組成物を含有することを特徴とする飲食品。
[11]前記[1]〜[8]のいずれか1つに記載のO/D型乳化組成物、又は前記[9]に記載の水中油型乳化組成物を含有することを特徴とする食品用素材。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、高油分でありながら水に希釈後に微細な油滴となる安定なO/D型乳化組成物、当該O/D型乳化組成物を含有する水中油型乳化組成物、及びこれらを含有する飲食品や食品用素材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔O/D型乳化組成物〕
本発明の実施の形態に係るO/D型乳化組成物は、多価アルコール、60質量%以上90質量%未満の油溶性物質(乳化剤を除く)、及び構成脂肪酸の51質量%以上が炭素数10以上でありHLB値が10より大かつヨウ素価が10未満の乳化剤(A)を含有し、HLB値が10より大かつヨウ素価が10以上の乳化剤(B)の含量が5質量%未満であり、HLB値が10以下の油溶性乳化剤(C)の含量が前記乳化剤(A)と前記乳化剤(B)の合計含量の1/20未満である。
【0014】
(多価アルコール)
本発明の実施の形態に用いられる多価アルコールは、分子内に水酸基を2個以上有するものであればよい。例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリンなどのポリグリセリン;グリセリン;プロピレングリコール;グルコース、マルトース、マルチトール、ショ糖、フラクトース、キシリトール、イノシトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マルトトリオース、澱粉分解糖などの糖;糖アルコールが挙げられる。これらは単独で用いても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。特に、グリセリンやソルビトールを用いることが長期保存性の観点から好ましい。
【0015】
本実施の形態に係るO/D型乳化組成物は、多価アルコールを固形分として5〜35質量%含有することが好ましく、5〜30質量%含有することがより好ましく、5〜25質量%含有することが更に好ましい。O/D型乳化組成物の多価アルコール含量が上記範囲程度であると、相対的にO/D型乳化組成物中の油分量が高くなるため、好ましい。
【0016】
(油溶性物質)
本発明の実施の形態に用いられる油溶性物質は、油脂(アシルグリセロール)に加熱もしくは非加熱の状態で溶解する性質のもので、乳化剤以外のものであれば特に制限はない。例えば、脂肪酸、油脂、ワックス、脂溶性ビタミンが挙げられる。
【0017】
上記脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ベヘン酸、ヘキサデカトリエン酸、オクタデカトリエン酸、エイコサテトラエン酸、ドコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラヘキサエン酸及びこれらの異性体が挙げられる。
【0018】
上記油脂は、脂肪酸のグリセリンエステルであり、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、オリーブ油、パーム油、綿実油、サフラワー油、米油、ひまわり油、胡麻油、及びこれらの硬化油、エステル交換油もしくは分別油などの植物性油脂、ラード、牛脂、乳脂、魚油、及びこれらの硬化油、エステル交換油もしくは分別油などの動物性油脂が挙げられる。また、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の合成油脂が挙げられる。
【0019】
上記ワックスは、脂肪酸と高級1価又は2価アルコールとのエステルであり、例えば、ホホバ油、ライスワックス、プロポリス、カルナウバワックス、キャンディラワックス、蜜蝋が挙げられる。
【0020】
上記脂溶性ビタミンとしては、例えば、ビタミンA、D、E、K及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0021】
上記の脂肪酸、油脂、ワックス、脂溶性ビタミン等の油溶性物質は単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本実施の形態に係るO/D型乳化組成物は、油溶性物質を60質量%以上90質量%未満含有する。好ましくは65〜89質量%であり、より好ましくは70〜87質量%であり、更に好ましくは75〜85質量%である。O/D型乳化組成物に占める油溶性物質の含量を60質量%以上とすることにより、油溶性物質を多く添加ないし配合したい対象物に効率よく油溶性物質を添加ないし配合できるので好ましい。
【0023】
本実施の形態に係るO/D型乳化組成物は、油分が増すにしたがって粘度が高くなり、液状からペースト状までの状態変化が見られる。取り扱いやすさの点から、特にペースト状であることが望ましい。
【0024】
(乳化剤(A))
本発明の実施の形態に用いられる乳化剤(A)は、食用に適する乳化剤であって、構成脂肪酸の51質量%以上が炭素数10以上でありHLB値が10より大かつヨウ素価が10未満の乳化剤であればよい。例えば、グリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリド有機酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどの合成乳化剤、リン脂質、糖脂質、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の合成乳化剤でない乳化剤等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
乳化剤(A)は、構成脂肪酸の51質量%以上が炭素数10以上の脂肪酸でなければならない。構成脂肪酸の51質量%以上が炭素数10以上の脂肪酸であると、得られる乳化組成物の乳化が安定しやすい。
【0026】
炭素数10以上の脂肪酸としては、炭素数10以上の飽和脂肪酸が好ましく、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等が挙げられる。
【0027】
乳化剤(A)は、そのHLB値が11以上であることが好ましく、14以上であることがより好ましい。また、乳化剤(A)は、そのヨウ素価が8未満であることが好ましく、5未満であることがより好ましい。
【0028】
また、乳化剤(A)は、そのエステル化度が20%以下であることが好ましく、15.5%以下であることがより好ましい。ここで、エステル化度とは、乳化剤1分子中の全水酸基数に対する、乳化剤1分子中のエステル化された水酸基数を百分率で表した数値(%)のことである。
【0029】
本実施の形態に係るO/D型乳化組成物は、乳化剤(A)を0.5〜15質量%含有することが好ましく、1〜10質量%含有することがより好ましく、1.5〜8質量%含有することが更に好ましく、2〜5質量%含有することが最も好ましい。上記乳化剤(A)を上記含量の範囲で用いると、油溶性物質の含量が60質量%以上であっても乳化がより安定するので好ましい。
【0030】
(乳化剤(B))
本発明の実施の形態に用いられる乳化剤(B)は、食用に適する乳化剤であって、HLB値が10より大かつヨウ素価が10以上の乳化剤であればよい。例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの合成乳化剤、リン脂質、糖脂質、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の合成乳化剤でない乳化剤等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
乳化剤(B)は、不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とする乳化剤であることが好ましい。不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸等の炭素数18以上の不飽和脂肪酸が好ましい。
【0032】
乳化剤(B)は、そのHLB値が11以上であることが好ましく、14以上であることがより好ましい。また、乳化剤(B)は、そのヨウ素価が15以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。
【0033】
上記乳化剤(B)の含量が、O/D型乳化組成物の5質量%未満であることが好ましく、4質量%未満であることがより好ましく、3質量%未満であることが更に好ましく、0質量%である(含有しない)ことが最も好ましい。含有する場合の下限値は特に限定されないが、例えば、0.5質量%以上である。上記乳化剤(B)を上記含量の範囲で用いると、油溶性物質の含量が60質量%以上であっても乳化がより安定するので好ましい。
【0034】
(油溶性乳化剤(C))
本発明の実施の形態に用いられる油溶性乳化剤(C)は、食用に適する乳化剤であって、HLB値が10以下の油溶性乳化剤であればよい。例えば、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリド有機酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
油溶性乳化剤(C)の含量は、上記乳化剤(A)と上記乳化剤(B)の合計含量の1/20未満であることが好ましく、1/40未満であることがより好ましく、油溶性乳化剤(C)を含まない(0質量%である)ことが更に好ましい。また、油溶性乳化剤(C)の含量は、O/D型乳化組成物の1質量%未満であることが好ましく、0.5質量%未満であることがより好ましい。油溶性乳化剤(C)の含量が上記乳化剤(A)と上記乳化剤(B)の合計含量の1/20以上であると、油溶性物質の含量が60質量%以上であるO/D型乳化組成物の乳化が不安定になってしまう。
【0036】
本発明の実施形態に係るO/D型乳化組成物は、多価アルコールと乳化剤をホモミキサー等で撹拌しているところへ油分を添加していくことにより調製できる。調製物がO/D型乳化組成物である場合、例えば水に対して調製物を10%添加し、マグネチックスターラーで10分間撹拌後、レーザ回折式粒度分布測定装置等を用いて油滴の平均粒子径を測定すると約1.5μm以下の微細な油滴となっていることを確認できる。本発明の実施形態に係るO/D型乳化組成物の水への希釈後の油滴の平均粒子径は、1.2μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましい。
【0037】
〔O/W型乳化組成物〕
本発明の実施の形態に係るO/W型(水中油型)乳化組成物は、本発明の実施形態に係る上記O/D型乳化組成物と、水溶性物質とを含有する。O/D型乳化組成物を水溶性物質に混合することにより、O/W型乳化組成物を調製できる。水溶性物質とは、例えば、水、牛乳、スープ、ソース等である。
【0038】
O/D型乳化組成物と水溶性物質の配合比(質量比)は、特に限定されるものではないが、例えば、O/D型乳化組成物:水溶性物質=0.1:99.9〜5:95の範囲とすることが好適である。
【0039】
〔飲食品及び食品用素材〕
本発明の実施の形態に係る飲食品及び食品用素材は、本発明の実施形態に係る上記O/D型乳化組成物、又は本発明の実施形態に係る上記O/W型乳化組成物を含有する。
【0040】
本発明の実施形態に係るO/D型乳化組成物は、油溶性物質を直接添加ないし配合するだけでは馴染みが悪い飲食品や食品用素材に、効率よく油溶性物質を添加ないし配合できる。本発明の実施形態に係るO/W型乳化組成物も同様である。
【0041】
好適な飲食品としては、例えば、漬物、乾物、粉物、缶詰、冷凍食品、レトルト食品、インスタント食品、即席麺、ドライフーズ、加工乳、菓子、サプリメント、機能性食品、育児用粉ミルク、ケチャップ、マヨネーズ、タルタルソース、ウスターソース、ラー油、魚醤、オイスターソース、豆板醤、XO醤、香辛料、ハーブ、油脂、サラダドレッシングなどの食品、酒、コーヒー、茶などの飲料が挙げられる。
【0042】
また、好適な食品用素材としては、例えば、スポンジケーキ等の焼き菓子生地、カレーやシチュー等のルウ、スープの素が挙げられる。
【0043】
本発明の実施形態に係るO/D型乳化組成物又はO/W型乳化組成物は、飲食品や食品用素材の種類によって適宜、適量が添加される。
【実施例】
【0044】
次に、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明する。しかし、本発明は、これらの実施例になんら制限されるものではない。
【0045】
<O/D型乳化組成物の調製>
表1〜2の配合にしたがって、多価アルコールであるソルビトールの70%水溶液(三菱商事フードテック株式会社製「ソルビットD−70」)又はグリセリンの98.5%以上溶液(花王株式会社製「グリセリン」)と水溶性乳化剤とを75℃にて撹拌混合して均一の溶液を得た。温度75℃を保持しながらホモミキサー(プライミクス株式会社製「アヂホモミクサー2M−05型」)を用いて5000rpmで撹拌しているところへ、75℃に調温した油溶性物質及び油溶性乳化剤(C)を添加した。添加後、さらに8000rpmで5分間撹拌し、実施例1〜13及び比較例1〜5のO/D型乳化組成物を得た。得られたO/D型乳化組成物について、下記の方法により水希釈後の油滴の平均粒子径を測定した結果を表1〜2に示す。
【0046】
<油滴の平均粒子径の測定方法>
O/D型乳化組成物を水に対して10%添加し、マグネチックスターラーで10分間撹拌させた後、レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−300V(株式会社島津製作所製)を用いて油滴の平均粒子径を測定した。
【0047】
<使用した油溶性物質>
〔油脂A〕:パームスーパーオレイン(日清オイリオグループ株式会社製造品、ヨウ素価65)を油脂Aとした。
〔油脂B〕:トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸がn−オクタン酸(炭素数8)とn−デカン酸(炭素数10)であり、その質量比が75:25である中鎖脂肪酸トリグリセリド(日清オイリオグループ株式会社製)を油脂Bとした。
【0048】
<使用した乳化剤>
・乳化剤(A)
〔L7D〕:ポリグリセリン脂肪酸エステル(構成脂肪酸:ラウリン酸、HLB17、エステル化度5.8%、ヨウ素価2以下、商品名「リョートーポリグリエステルL7D」、三菱化学フーズ株式会社製)
〔M7D〕:ポリグリセリン脂肪酸エステル(構成脂肪酸:ミリスチン酸、HLB16、エステル化度5.8%、ヨウ素価2以下、商品名「リョートーポリグリエステルM7D」、三菱化学フーズ株式会社製)
〔F160〕:ショ糖脂肪酸エステル(構成脂肪酸:ステアリン酸70%+パルミチン酸30%、HLB15、エステル化度15.1%、ヨウ素価1以下、商品名「DKエステルF160」、第一工業製薬株式会社製)
〔SS〕:ショ糖脂肪酸エステル(構成脂肪酸:ステアリン酸70%+パルミチン酸30%、HLB19、エステル化度12.5%、ヨウ素価1以下、商品名「DKエステルSS」、第一工業製薬株式会社製)
・乳化剤(B)
〔MO5S〕:ポリグリセリン脂肪酸エステル(構成脂肪酸:オレイン酸、HLB11.6、エステル化度10.0%、ヨウ素価42、商品名「SYグリスターMO5S」、阪本薬品工業株式会社製)
・油溶性乳化剤(C)
〔CRS75〕:ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(HLB2.1、ヨウ素価85、商品名「SYグリスターCRS75」、阪本薬品工業株式会社製)
・その他の乳化剤
〔CE19D〕:ポリグリセリン脂肪酸エステル(構成脂肪酸:カプリル酸、HLB15、エステル化度15.8%、ヨウ素価2以下、商品名「リョートーポリグリエステルCE19D」、三菱化学フーズ株式会社製)
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
表1より、実施例1〜13では水希釈後の平均粒子径が約1μm以下の微細な油滴となるO/D型乳化組成物が得られたことが分かる。
【0052】
一方、表2より、乳化剤(B)を5質量%用いた比較例1、2や炭素数が10より小さい飽和脂肪酸を構成脂肪酸とする乳化剤を用いた比較例3では、得られたO/D型乳化組成物は水に希釈した際にすぐに分離してしまい平均粒子径を測定することができず、不安定な乳化組成物となっていることが分かる。また、油溶性物質含量が90質量%の比較例4や油溶性乳化剤(C)の含量が規定の量よりも多い比較例5でも、比較例1〜3と同様であった。