【実施例】
【0030】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
<予備試験>
糖類の種類によって、保存中の退色又は変色にどのような影響をおよぼすかについて予備試験にて検証した。糖類の種類は、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、トレハロース、ソルビトール、麦芽水飴(マルトース含量33%、固形分含量75%)、還元水飴(固形分75%)を用いた。
【0031】
乾燥緑色野菜としては、熱風乾燥したキャベツを指標とした。
【0032】
乾燥キャベツの作製方法としては、緑色を有する外側のキャベツの葉を約30x25mmの大きさにカットし、0.1%重曹水溶液で98℃、2分間ブランチング処理し、ブランチングしたキャベツを取り出し、流水にて冷却洗浄した後、生キャベツの重量の60重量%となるまで遠心脱水した。次いで脱水したキャベツ100重量%に対して上記の糖類を固形分量として20重量%の糖類を添加し、乾燥後のキャベツに含まれる全糖類の重量が70重量%程度となるように混合・静置し、余分なドリップを除去した後、80℃で2時間乾燥した後、70℃で2時間さらに乾燥し、60℃で4〜6時間乾燥して、水分含量が7重量%となるように調整し、乾燥キャベツサンプルを作製した。また、乾燥キャベツサンプルの20倍希釈液のpHは約7.5前後となるように調整した。
【0033】
作製した乾燥キャベツサンプルの保存中の色調の変化を簡易的に確認する方法として乾燥キャベツに重量の10重量%の水分を加湿し、加湿した乾燥キャベツを60℃で48時間加熱処理を行い、強制的に劣化させ、色調について評価を行った。評価については、5人の熟練のパネラーにて目視で行い、乾燥後の色調を5点としたときに、外観上同等のものを5点、やや退色もしくは変色があるが良好なものを4点、退色もしくは褐変があるが概ね可なものを3点、退色もしくは褐変が目立ち商品として不可なものを2点、退色もしくは変色が著しく、商品として非常に不可なものを1点とした。
【0034】
予備試験結果を下記表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
上記の結果から、保存中の退色や変色を防ぐ効果がある糖類としては、ラクトース、マルトース及びマルトースを多く含む麦芽水飴が好ましいことがわかった。逆にフルクトース、スクロースが保存中の変色を促進する可能性が高いことがわかった。その他の糖類については、保存中の変色がある程度進むが、フルクトースやスクロースと比較して変色の度合いが少なく、麦芽水飴(固形分含量75%、糖組成マルトース33重量%)の結果から、ラクトースやマルトースが多く含まれていれば、ある程度の他の糖類が含まれていたとしても保存中の退色や変色への影響は少ないものと考えられた。また、還元性を示さないスクロース、トレハロース、ソルビトール及び還元水飴を用いた場合も保存中の変色を示す可能性があることからメーラード反応だけが保存中の変色の原因でないことが示唆された。
【0037】
<実験1>糖含量並びにラクトース又は/及びマルトース含量について
(実施例1−1)
糖類添加を脱水したキャベツ100重量%に対してマルトース4重量%、グルコース6重量%とし、糖類を十分混合した後、25℃で1時間静置して浸透させる以外は、予備試験の方法に従って乾燥キャベツサンプルを作製した。
【0038】
(実施例1−2)
糖類添加を脱水したキャベツ100重量%に対してマルトース8重量%、グルコース12重量%とし、糖類を十分混合した後、25℃で1時間静置して浸透させる以外は、予備試験の方法に従って乾燥キャベツサンプルを作製した。
【0039】
(実施例1−3)
糖類添加をキャベツ100重量%に対してマルトース20重量%とし、糖類を十分混合した後、25℃で1時間静置して浸透させる以外は、予備試験の方法に従って乾燥キャベツサンプルを作製した。
【0040】
(実施例1−4)
糖類添加をキャベツ100重量%に対してラクトース4重量%、グルコース6重量%とし、糖類を十分混合した後、25℃で1時間静置して浸透させる以外は、予備試験の方法に従って乾燥キャベツサンプルを作製した。
【0041】
(実施例1−5)
糖類添加をキャベツ100重量%に対してラクトース8重量%、グルコース12重量%とし、糖類を十分混合した後、25℃で1時間静置して浸透させる以外は、予備試験の方法に従って乾燥キャベツサンプルを作製した。
【0042】
(実施例1−6)
糖類添加をキャベツ100重量%に対してラクトース20重量%とし、糖類を十分混合した後、25℃で1時間静置して浸透させる以外は、予備試験の方法に従って乾燥キャベツサンプルを作製した。
【0043】
(実施例1−7)
糖類添加をキャベツ100重量%に対してラクトース4重量%、マルトース4重量%、グルコース12重量%とし、糖類を十分混合した後、25℃で1時間静置して浸透させる以外は、予備試験の方法に従って乾燥キャベツサンプルを作製した。
【0044】
(実施例1−8)
糖類添加をキャベツ100重量%に対して麦芽水飴(マルトース含量33重量%)30重量%とし、糖類を十分混合した後、25℃で1時間静置して浸透させる以外は、予備試験の方法に従って乾燥キャベツサンプルを作製した。
【0045】
(比較例1−1)
糖類添加をキャベツ100重量%に対してマルトース3重量%、グルコース7重量%とし、糖類を十分混合した後、25℃で1時間静置して浸透させる以外は予備試験の方法に従って乾燥キャベツサンプルを作製した。
【0046】
(比較例1−2)
糖類添加をキャベツ100重量%に対してマルトース4重量%、グルコース4重量%とし、糖類を十分混合した後、25℃で1時間静置して浸透させる以外は予備試験の方法に従って乾燥キャベツサンプルを作製した。
【0047】
(比較例1−3)
糖類添加をキャベツ100重量%に対してラクトース3重量%、グルコース7重量%とし、糖類を十分混合した後、25℃で1時間静置して浸透させる以外は予備試験の方法に従って乾燥キャベツサンプルを作製した。
【0048】
各乾燥キャベツサンプルの全糖量、糖含量を分析した。尚、実施例1−8以外は、添加する糖類が2糖以下のため、HPLC法で各糖を個別分析した後、積算して全糖量を算出した。また、実施例1−8については、HPLC法にてマルトース含量を測定するとともに、全糖量は、フェノール硫酸法で測定した。また、予備試験で行った劣化試験についての外観評価に加えて、乾燥中及び乾燥後のキャベツの壊れにくさについても評価を行った。乾燥中の柔軟性、乾燥後の硬さ、強度に優れ、壊れにくく非常に良好なものを◎、乾燥中の柔軟性、乾燥後の硬さ、強度もあり、壊れにくさについては概ね良好なものを○、乾燥中の柔軟性、乾燥後の硬さ、強度に欠け、壊れやすいものを△、乾燥中の柔軟性、乾燥後の硬さ、強度に著しく欠け、著しく壊れやすいものを×とした。結果を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
壊れやすさについては、全糖量が55重量%以上であれば、全糖量が高いほど良好であり、特に65重量%以上であると非常に良好であることがわかる。また、全糖量が55重量%未満であると、壊れやすくなるだけでなく、マルトースを含んだとしても変色しやすくなることがわかる。マルトース又は/及びラクトース含量が10重量%以上含まれ、且つ全糖量が55重量%以上であると保存中の変色が抑えられることが示された。
【0051】
また、マルトースの方が、ラクトースより保存中の色調の変化を抑えることができるが、糖がべたつきやすく、ラクトースを添加することで、糖によるベタツキが押させられるため、併用することにより製品の製造適性がよくなる。ラクトースは独特の甘味を有するため、マルトースを主体として、製造適性を改善するためにラクトースを添加することが好ましい。
【0052】
<実験2>pH調整及びマグネシウム塩添加について
(実施例2−1)
98℃の熱湯、2分間ブランチング処理し、乾燥後の乾燥キャベツサンプルの20倍希釈液のpHは7.0とする以外は、実施例1−7の方法に従って乾燥キャベツサンプルを製造した。
【0053】
(実施例2−2)
0.05%重曹水溶液で98℃、2分間ブランチング処理し、乾燥後の乾燥キャベツサンプルの20倍希釈液のpHは7.2とする以外は、実施例1−7の方法に従って乾燥キャベツサンプルを製造した。
【0054】
(実施例2−3)
0.15%重曹水溶液で98℃、2分間ブランチング処理し、乾燥後の乾燥キャベツサンプルの20倍希釈液のpHは7.8とする以外は、実施例1−7の方法に従って乾燥キャベツサンプルを製造した。
【0055】
(実施例2−4)
0.30%重曹水溶液で98℃、2分間ブランチング処理し、乾燥後の乾燥キャベツサンプルの20倍希釈液のpHは8.0とする以外は、実施例1−7の方法に従って乾燥キャベツサンプルを製造した。
【0056】
(実施例2−5)
糖類添加時に炭酸マグネシウム塩を脱水後のキャベツの重量に対して0.1重量%添加し、乾燥後の乾燥キャベツサンプルの20倍希釈液のpHは7.7とする以外は、実施例1−7の方法に従って乾燥キャベツサンプルを製造した。
【0057】
(実施例2−6)
98℃の熱湯、2分間ブランチング処理し、糖類添加時に炭酸マグネシウム塩を脱水後のキャベツの重量に対して0.1重量%添加し、炭酸ナトリウムを0.1重量%添加することで乾燥後の乾燥キャベツサンプルの20倍希釈液のpHは7.5とする以外は、実施例1−7の方法に従って乾燥キャベツサンプルを製造した。
【0058】
(比較例2−1)
0.05%クエン酸水溶液で98℃、2分間ブランチング処理し、乾燥後の乾燥キャベツサンプルの20倍希釈液のpHは6.5とする以外は、実施例1−7の方法に従って乾燥キャベツサンプルを製造した。
【0059】
(比較例2−2)
0.50%重曹水溶液で98℃、2分間ブランチング処理し、乾燥後の乾燥キャベツサンプルの20倍希釈液のpHは8.5とする以外は、実施例1−7の方法に従って乾燥キャベツサンプルを製造した。
【0060】
また、予備試験で行った劣化試験についての外観評価を実験2でも同様に行った。結果を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
ブランチング時にアルカリ側にpHを調整することでブランチング時の退色を抑えられるが、乾燥後の20倍希釈のpHを8よりも高くすると強制劣化時の変色が進む。逆にブランチング時に酸性側にpHを調整し、乾燥後の20倍希釈のpHを7未満とするとブランチング時及び乾燥時に退色が進む。従って、乾燥後の20倍希釈のpHが、7〜8、さらに好ましくは7.2〜7.8となるようにブランチング処理又は糖類添加時にpH調整を行うことが好ましい。
【0063】
また、ブランチング後の糖添加時にマグネシウム塩を添加し、必要によりpHを調整することにより、乾燥後の緑色の色調がより鮮やかになり、強制劣化後も色調が維持される。