(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6694868
(24)【登録日】2020年4月22日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20200511BHJP
【FI】
G01N35/00 F
G01N35/00 A
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-503386(P2017-503386)
(86)(22)【出願日】2016年2月5日
(86)【国際出願番号】JP2016053574
(87)【国際公開番号】WO2016140017
(87)【国際公開日】20160909
【審査請求日】2018年10月22日
(31)【優先権主張番号】特願2015-40429(P2015-40429)
(32)【優先日】2015年3月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 俊郎
【審査官】
永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−208099(JP,A)
【文献】
特開2005−265743(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/073479(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象の検体を分析する分析処理を行う分析部と、
前記分析処理の結果、前記分析処理における分析条件などの分析パラメータの登録・変更・削除などのイベントの発生に関する累積的な情報、及び、前記検体の分析に用いる試薬の情報である試薬情報の登録・削除・交換等のイベントの発生に関する累積的な情報を、前記検体の分析項目ごとに記憶する記憶部と、
前記検体の分析結果、及びイベントの発生状況に関する情報等を表示する表示部と、
前記検体の分析部による分析処理の動作を制御するとともに、前記分析パラメータのイベントの情報、及び前記試薬情報のイベントの情報を前記記憶部から読み出して前記表示部に時系列で表示する制御部とを備え、
前記制御部は、前記表示部において前記イベントの発生時間に関する軸と前記イベントの発生順序に関する軸とが直交するように設定した平面上に、前記イベントの発生順序に関する軸および前記イベントの発生時間に関する軸に沿って、前記分析パラメータのイベントの情報、及び前記試薬情報のイベントの情報を発生順序および発生時間に応じて配置し、かつ、関連する前記イベントの情報をラインで接続して表示することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記記憶部は、前記検体の分析処理に用いる試薬のキャリブレーション結果の生成・編集・継承・削除等のイベントの発生に関する累積的な情報をさらに記憶し、
前記制御部は、前記キャリブレーション結果のイベントの情報を、前記分析パラメータのイベントの情報、及び前記試薬情報のイベントの情報と併せて前記表示部に時系列で表示することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2記載の自動分析装置において、
前記記憶部は、前記検体の分析処理に用いる試薬の精度管理情報の生成等のイベントの発生に関する累積的な情報をさらに記憶し、
前記制御部は、前記精度管理情報のイベントの情報を、前記前記分析パラメータのイベントの情報、前記試薬情報のイベントの情報、及び前記キャリブレーション結果のイベントの情報と併せて前記表示部に時系列で表示することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記記憶部は、前記検体の分析処理に用いる試薬の精度管理情報の生成等のイベントの発生に関する累積的な情報をさらに記憶し、
前記制御部は、前記精度管理情報のイベントの情報を、前記前記分析パラメータのイベントの情報、及び前記試薬情報のイベントの情報と併せて前記表示部に時系列で表示することを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記表示部上での操作を行うためのカーソルによって、前記表示部に表示された前記分析パラメータの登録・変更、削除等、又は、前記検体の分析処理に用いる試薬のキャリブレーション結果の生成・編集・継承・削除等の各イベントを選択した場合、各イベントの内容の詳細情報が表示部上に表示されることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記表示部上での操作を行うためのカーソルによって、前記表示部に表示された前記分析パラメータの登録・変更、削除等、又は、キャリブレーション結果の生成・編集・継承・削除等の各イベントを選択した場合、各イベントの内容の詳細情報が表示部上にポップアップ表示されることを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記分析パラメータ、前記試薬情報、前記検体の分析処理に用いる試薬のキャリブレーション結果、前記検体の分析処理に用いる試薬の精度管理情報等の情報の種類、又は、登録・変更・削除・交換等のイベントで前記表示部に表示させる情報をフィルタリングできることを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記表示部は、前記分析パラメータ、前記試薬情報、前記検体の分析処理に用いる試薬のキャリブレーション結果、及び前記検体の分析処理に用いる試薬の精度管理情報の前記イベントの表示期間範囲を設定する設定部を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
分析対象の検体を分析する分析処理を行う分析部と、
前記検体の分析に用いる試薬の情報である試薬情報の登録、前記試薬に対してのキャリブレーション結果の登録、及び、前記キャリブレーション結果を用いての精度管理情報の測定の夫々のイベントの発生に関する情報を分析項目ごとに記憶する記憶部と、
前記イベントの発生に関する情報を表示する表示部と、
前記検体の分析部による分析処理の動作を制御するとともに、前記イベントの発生に関する情報を前記記憶部から読み出して前記表示部に時系列で表示する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記表示部において前記イベントの発生時間に関する軸と前記イベントの発生順序に関する軸とが直交するように設定した平面上に、前記イベントの発生に関する情報を配置し、
前記制御部は、前記イベントの発生順序に関する軸および前記イベントの発生時間に関する軸に沿って、前記試薬情報の登録のイベントの発生に関する情報と、前記キャリブレーション結果の登録のイベント又は前記精度管理情報の測定のイベントの発生に関する情報とを発生順序および発生時間に応じて前記平面上に配置し、かつ、関連する前記イベントの情報をラインで接続して表示することを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
請求項9記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記イベントの発生順序に関する軸に沿って、前記試薬情報の登録のイベントの発生に関する情報と、前記精度管理情報の測定のイベントの発生に関する情報とを前記平面上に配置し、
前記制御部は、精度管理情報の各測定結果のデータプロット群を前記表示部に表示し、前記精度管理情報の測定のイベントの発生に関する情報を選択したときに、前記データプロット群の中から前記精度管理情報の測定のイベント発生に関する情報に対応するデータプロットを強調表示することを特徴とする自動分析装置。
【請求項11】
分析対象の検体を分析する分析処理を行う分析部と、
前記検体の分析に用いる試薬の情報である試薬情報の登録、前記試薬に対してのキャリブレーション結果の登録、及び、前記キャリブレーション結果を用いての精度管理情報の測定の夫々のイベントの発生に関する情報を分析項目ごとに記憶する記憶部と、
前記イベントの発生に関する情報を表示する表示部と、
前記検体の分析部による分析処理の動作を制御するとともに、前記イベントの発生に関する情報を前記記憶部から読み出して前記表示部に時系列で表示する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記表示部において前記イベントの発生時間に関する軸と前記イベントの発生順序に関する軸とが直交するように設定した平面上に、前記イベントの発生に関する情報を配置し、
前記制御部は、前記イベントの発生順序に関する軸および前記イベントの発生時間に関する軸に沿って、同一の分析項目の複数の試薬に対し前記試薬情報の登録のイベントの発生に関する情報を発生順序および発生時間に応じて前記平面上に配置し、かつ、関連する前記イベントの情報をラインで接続して表示することを特徴とする自動分析装置。
【請求項12】
請求項11記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記イベントの発生順序に関する軸に沿って、前記試薬情報の登録のイベントの発生に関する情報と、前記キャリブレーション結果の登録のイベントの発生に関する情報と、前記精度管理情報の測定のイベントの発生に関する情報とを、ひとつの試薬に対し識別できるよう前記平面上に表示することを特徴とする自動分析装置。
【請求項13】
請求項12記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記試薬情報の登録、前記キャリブレーション結果の登録、前記精度管理情報の測定の夫々のイベント毎に前記表示部に表示させる情報をフィルタリングでき、
前記制御部は、前記同一の分析項目の複数の試薬に対し、前記フィルタリングした情報に対応するイベントの発生に関する情報を前記平面上に配置することを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清や尿等の生体試料の定性・定量分析を行う自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血清や尿等の生体試料(以下、検体と称する)の定性・定量分析を行う自動分析装置においては、分析項目ごとに専用の試薬を登録して用いており、その分析項目に関して既知の濃度を有する試薬(標準液試薬/キャリブレータ)の物性(吸光度や散乱光強度など)を先に登録した試薬を用いて予め測定して、各濃度と測定値(吸光度や散乱光強度など)の関係を表す検量線データを作成し、その検量線データや予め設定した分析条件等の分析パラメータ等に基づいて検体の濃度を算出している。
【0003】
このような自動分析装置においては、検体の分析結果にデータ異常等の何らかの不具合が発生した場合、該当する分析項目がどのように測定されたのかを把握するため、予め設定された分析条件等の分析パラメータや、分析に使用した試薬の情報(試薬情報)などを確認して原因を究明し、速やかに問題を解決する必要がある。
【0004】
自動分析装置における検体測定結果にデータ異常等の何らかの不具合が発生した場合の調査・解析を支援する技術として、例えば、特許文献1(特開2009−168729号公報)には、分析系要素を用いて検体の成分を測定する分析系と、前記分析系が測定した測定結果要素から成る測定結果を記憶する記憶部、及び前記記憶部に記憶されている前記測定結果を出力する出力部を有する自動分析装置において、前記記憶部に記憶されている前記測定結果を任意に選択された前記分析系要素の組合せに応じてデータ処理するデータ処理部が設けられており、前記出力部は前記データ処理部がデータ処理した処理結果を出力可能であることを特徴とする自動分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−168729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術においては、分析処理における不具合の原因の究明に必要な各種情報について、特に連携されることなく個別に散在している情報を別個表示するのみである。したがって、検体測定結果にデータ異常等の何らかの不具合が発生した場合の調査に必要な各種情報の検索・収集作業、及び各種情報を用いた確認・情報解析作業においては、その煩雑さや不正確さ、各データの誤解釈の恐れなどが伴うため、多くの時間や労力のほか、自動分析装置の各画面の専門知識も必要とり、自動分析装置のメンテナンス性や稼働性が低下して、臨床検査などにおいては業務に支障が出る恐れもある。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、検体測定結果のデータ異常等の何らかの不具合が発生した場合の不具合調査に係る各種情報の検索容易性や視認性を向上することにより、不具合の調査・解析に要する時間の短縮及び信頼性の向上を図ることができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、分析対象の検体を分析する分析処理を行う分析部と、前記分析処理の結果、前記分析処理における分析条件などの分析パラメータの登録・変更・削除などのイベントの発生に関する累積的な情報、及び、前記検体の分析に用いる試薬の情報である試薬情報の登録・削除・交換等のイベントの発生に関する累積的な情報を、前記検体の分析項目ごとに記憶する記憶部と、前記検体の分析結果、及びイベントの発生状況に関する情報等を表示する表示部と、前記検体の分析部による分析処理の動作を制御するとともに、前記分析パラメータのイベントの情報、及び、前記試薬情報のイベントの情報を前記記憶部から読み出して前記表示部に時系列で表示する制御部とを備え、前記制御部は、前記表示部において前記イベントの発生時間に関する軸と前記イベントの発生順序に関する軸とが直交するように設定した平面上に、前記分析パラメータのイベントの情報、及び前記試薬情報のイベントの情報の情報を配置したものとする。
【発明の効果】
【0009】
検体測定結果のデータ異常等の何らかの不具合が発生した場合の不具合調査に係る各種情報の検索容易性や視認性を向上することにより、不具合の調査・解析に要する時間の短縮及び信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】表示部に表示される分析項目トレース画面への情報の表示処理を示すフローチャートである。
【
図3】制御装置により表示装置に表示される分析項目トレース画面を示す図である。
【
図4】分析項目トレース画面において、各イベント部分を指し示した際に各イベント内容の詳細を表示する一例を示した図である。
【
図5】分析項目トレース画面と精度管理画面との連携について示す図である。
【
図6】分析項目トレース画面をフィルタリングして情報を表示した場合の一例を示す図である。
【
図8】各アイテムの表示期間の範囲を設定する表示範囲設定画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【0013】
図1において、自動分析装置100は、少なくとも1つ以上の分析部1と操作部2とを備えており、分析部1は、分析対象の検体(例えば、血液や尿などの生体試料)に試薬等を加え、その物性(吸光度や散乱高強度など)を測定するものであり、分析対象の検体を収容した検体容器3を収納しラック搬送ベルト18により搬送されるラック4と、分析対象の検体に加える試薬を収容した複数の試薬ボトル5を収納した試薬ディスク6と、分析対象の検体に試薬を加えた反応液を収容する複数の反応容器7を収納した反応ディスク8と、検体容器3に収容された検体を予め定められた反応容器7に分注する検体分注プローブ9と、試薬ボトル5に収容された試薬を予め定められた反応容器7に分注する試薬分注プローブ10と、反応容器7に収容された反応液を撹拌する撹拌装置11と、反応容器7に収容された反応液に光束を照射する光源12と、光源12から照射され反応容器7を透過した光を検出する多波長光度計13と、多波長光度計13での検出信号を変換するA/Dコンバータ15と、反応容器7を洗浄する洗浄装置14と、分析部1の各構成の動作を制御するコンピュータ16とを備えており、分析部1の各構成は内部インタフェース17を介してコンピュータ16に接続されている。
【0014】
操作部2は、分析部1を操作するものであり、操作部2を含む自動分析装置全体の動作を制御する制御装置21と、各種指令や情報を入力するキーボード22やマウス23などの入力装置24と、測定依頼情報や分析パラメータなどの各種データを記憶するハードディスクなどの記憶装置25と、操作画面等を表示する表示装置26と、印刷装置27とを備えており、外部インタフェース28を介して分析部1と接続されている。なお操作部2は、公衆回線や専用回線などのネットワーク29を介して、外部情報処理装置30と接続されており、パラメータやデータの授受を行うことができる。
【0015】
本実施の形態の自動分析装置においては、オペレータが操作部2の入力装置24によって測定指示などの各種指令を入力することにより、分析処理の動作を行う。分析処理の開始が指示されると、検体分注プローブ9が、検体容器3の中に入った検体の所定量を依頼された項目数に応じて各反応容器7に分注する。ある検体容器3の検体に対する分注処理を完了したら、次の検体容器3が検体分注位置(検体分注プローブ9の真下)に来るようにラック搬送ベルト18がラック4を移動する。検体を分注された反応容器7は反応ディスク8の回転動作により移動される。反応ディスク8上の反応容器7に対して、試薬分注プローブ10による試薬ボトル5内の試薬の分注、撹拌装置11による反応液の撹拌、光源12及び多波長光度計13による吸光度の測定が順次行われ、その後、測定の終了した反応容器7は洗浄装置14によって洗浄される。多波長光度計13により検出された吸光度信号(検出信号)はA/Dコンバータ15により変換され、内部インタフェース17を介してコンピュータ16に入力される。コンピュータ16に入力された吸光度信号から、予め測定項目ごとに設定された分析法に基づくプログラムにより分析を行う。例えば、標準液試料(キャリブレータ)を測定する場合は設定された既知濃度値から検量線データが算出される。また、患者検体及び精度管理試料などの検体(生体試料)を測定する場合は標準液試料の測定で得られた検量線データを用いて濃度データが算出される。これらのデータは、測定結果として試料の種類等を記号化した情報を付加され外部インタフェース28を介して操作部2に送信され、記憶装置25に記憶され、また必要に応じて印刷装置27により印刷される。また必要に応じて操作部2と外部情報処理装置30はデータの授受を行う。
【0016】
記憶装置25には、分析処理の結果のほかに、分析処理における分析パラメータの登録・変更・削除などのイベントの発生に関する累積的な情報、検体の分析に用いる試薬の情報である試薬情報の登録・削除・交換等のイベントの発生に関する累積的な情報、検体の分析処理に用いる試薬のキャリブレーション結果の生成・編集・継承・削除等のイベントの発生に関する累積的な情報、及び検体の分析処理に用いる試薬の精度管理情報の生成等のイベントの発生に関する累積的な情報が記憶されている。各情報は分析項目ごとに記憶されており、それぞれ、分析項目名、イベントの種類(分析パラメータ、試薬情報、キャリブレーション結果、精度管理情報など)、イベントの内容(生成・登録・編集・継承・変更・交換・削除など)、イベントの発生時間、及び、その詳細な内容が関連付けられて記憶されている。
【0017】
分析パラメータは、分析処理における分析条件(採取する検体量、分析処理に供する試薬の種類及び量、最適な測定条件など)などであり、分析処理の開始前に予め登録され、また必要に応じて変更及び削除される。
【0018】
試薬情報は、検体の分析に用いる試薬に関する情報であり、分析処理の開始前に予め登録され、また必要に応じて削除され、試薬の交換に関する情報が付加される。分析処理に用いられる試薬はロット単位で管理されており、自動分析装置100の内部に分析項目ごとに複数の試薬が登録及び待機されている。
【0019】
キャリブレーション結果は、検体の分析処理に用いる試薬のキャリブレーションを実施した際に生成され、また必要に応じて編集及び削除される。また、分析処理に使用している試薬の容量が無くなった時には、待機させている試薬に自動的に交換して当該分析項目の分析を続行するが、その際、交換した試薬における分析で用いられる検量線データは、同一ロットの試薬を用いて過去に作成された検量線データのうち最適なものが継承される。このキャリブレーション結果の継承機能によってキャリブレーション結果が継承され、交換した試薬で再度キャリブレーションを実施して検量線データを作成する必要がないようになっている。
【0020】
精度管理情報は、精度管理処理を実施した際に生成される。精度管理処理では、既知濃度の精度管理試料を定期的に測定し、当該試薬とその検量線データによって得られる測定結果が既知濃度の有効範囲内であるかどうかをチェックすることにより、検体の分析処理に用いる試薬の精度管理を行い、分析結果の信頼性を担保している。
【0021】
本実施の形態の自動分析装置100においては、検体の分析結果にデータ異常等の何らかの不具合が発生した場合、該当する分析項目がどのように測定されたのかを把握するため、分析パラメータ、試薬情報、キャリブレーション結果、及び精度管理情報を表示部に表示する。オペレータは表示部に表示された情報に基づいて不具合の原因を究明し、速やかな問題解決を図る。
【0022】
図2は、表示部に表示される分析項目トレース画面への情報の表示処理を示すフローチャートである。
【0023】
図2おいて、制御装置21は、表示範囲設定画面(後述)で設定された表示範囲を読み出し(ステップS201)、読み出した表示範囲に基づいて、分析パラメータ、試薬情報、キャリブレーション結果、及び精度管理情報を記憶装置25から読み出す(ステップS202)。既に表示されている表示があるかどうかを判定し(ステップS203)、判定結果がNOの場合には、読み出した情報のうち最も発生時間の早い情報を表示し(ステップS205)、ステップS208に進む。また、ステップS203判定結果がYESの場合には、既に表示された情報に対応して時系列で表示する(ステップS204)。続いて、既に表示された情報と関連があるかどうかを判定し(ステップS206)、判定結果がYESの場合には、関連する情報とラインで接続し(ステップS207)、ステップS208に進む。ステップS206での判定結果がNOの場合には、ステップS208に進む。ステップS208では、読み出した全ての情報を表示したかどうかを判定し(ステップS208)、判定結果がNOの場合には、ステップS203に戻り、判定結果がYESの場合には、処理を終了する。
【0024】
図3は、制御装置により表示装置に表示される分析項目トレース画面を示す図である。
【0025】
図3において、分析項目トレース画面300は、分析項目の測定結果に関わる各種アイテム(イベントの種類)のイベントの発生状況を時系列に表示するものであり、オペレータが調査目的とする分析項目を選択するプルダウンリスト301と、各イベントの発生状況を時系列に表示する情報表示部302と、情報表示部302の表示範囲を移動する縦スクロールバー303及び横スクロールバー304と、表示する情報のフィルタ設定を行う画面を表示するためのフィルタ設定ボタン305と、分析項目トレース画面300の表示範囲を設定する表示範囲設定ボタン306と、分析項目トレース画面300を閉じるための閉じるボタン307とを備えている。
【0026】
情報表示部302では、縦軸方向に各種アイテムの発生順序、横軸方向に時間を設定し、各イベント発生日時を横軸で表した構成で時系列に表示する。
【0027】
例えば、情報表示部302には、プルダウンリスト301で選択された分析項目に関する基本情報として、分析パラメータのイベント(登録・変更・削除)発生状況310を、1行において各イベントが識別できるように表示されていく。全体の情報の推移は横スクロールバー304の操作で確認する。
【0028】
続いて、試薬のイベント(登録・交換・削除)発生状況311,113が表示される場合、分析パラメータには複数の試薬を登録することができるので、試薬単位で別の行に表示されていく。このとき、キャリブレーション結果を継承した場合を除き、関連する分析パラメータのイベントとの関連を示すライン311aで接続される。ひとつの試薬に対する各イベントが、1行において識別できるように表示され、全体の情報の推移は横スクロールバーの操作で確認する。また何個の試薬が登録されてきたかの過程は縦スクロールバーの操作で確認する。
【0029】
続いて、表示したある試薬に対してのキャリブレーションのイベント(結果登録・編集・継承・削除)発生状況312,314が、1行において各イベントが識別できるように表示される。ひとつのキャリブレーションに対するイベントの全体の推移は横スクロールバー304の操作で確認する。このとき、関連する試薬情報との関連を示すライン312aで接続される。なお、過去のキャリブレーション結果を継承する機能によってキャリブレーション結果が継承された場合には、過去のどのキャリブレーション結果から継承されたのかが判るように、継承したキャリブレーション結果とライン314aで接続されて明示される。
【0030】
また、ひとつのキャリブレーション結果を用いての精度管理(QC:Quality Control)情報のイベント(測定)発生状況315,316,317,318が1行において表示されていく。このとき、関連するキャリブレーション結果との関連を示すライン315a,316aで接続される。全体の情報の推移は横スクロールバーの操作で確認する。
【0031】
このように、ひとつの試薬に対してキャリブレーションとQCの各イベントが発生していくという自動分析装置の運用形態であることから、キャリブレーション情報とQC情報は試薬情報から派生する付随的な情報としての位置付けとなる。したがって、ひとつの試薬とキャリブレーション、及びQCを合わせた3行構成のまとまりとして表示される。これが別の試薬に対しても3行構成で表示されていき、全体の情報の推移は縦スクロールバーの操作で確認する。
【0032】
なお、
図3においては、各イベントの表示の一例を示したが、後述するフィルタ設定画面700(後の
図7参照)の表示条件の設定に基づいて、各イベントの表示/非表示がなされる。従って、フィルタ設定画面700の設定によっては、
図3に示したような分析パラメータ、キャリブレーション結果、試薬情報、及び精度管理情報を表示する場合の他に、分析パラメータ、キャリブレーション結果、及び試薬情報を表示する場合や、分析パラメータ、キャリブレーション結果、及び精度管理情報を表示する場合もある。
【0033】
図4は、分析項目トレース画面において、各イベント部分を指し示した際に各イベント内容の詳細を表示する一例を示した図である。
【0034】
図4において、分析パラメータ変更に係るイベント発生状況311を指し示した場合には、日時、手段、変更点等の詳細情報を例えば、ポップアップ画面321で表示(ポップアップ表示)する。同様に、キャリブ結果登録に係るイベント発生状況312を指し示した場合には、日時、検量線、ファクタ等の詳細情報をポップアップ画面322で表示(ポップアップ表示)する。また、同様に、試薬登録イベント発生状況313を指し示した場合には、日時、ロット番号、ボトル番号等の詳細情報をポップアップ画面323で表示(ポップアップ表示)する。オペレータは目的とした分析項目がどの時点でどのような分析パタメータが変更され、どの試薬のどのキャリブレーション結果が当該検体の分析に使用されたのかを各種の画面間を横断することなく、ひとつの画面内で確認することが可能となる。
【0035】
図5は、分析項目トレース画面と精度管理画面との連携について示す図である。
【0036】
図5において、精度管理画面500は、精度管理情報の詳細を表示するものであり、分析項目設定部501と、精度管理情報の作成(測定)日時や測定結果などの諸情報を表示する諸情報表示部502と、精度管理の累積的な測定結果を表示する結果表示部503と、横スクロールバー504とを備えている。
【0037】
分析項目トレース画面300において表示中の任意のQC情報(精度管理情報)のイベント発生状況(例えば、QC測定のイベント発生状況318)を選択した場合に、精度管理画面500に遷移し、累積管理されている測定結果うち、結果表示部503に表示されている測定結果のデータプロット群(データプロット506等)の中から、選択した精度管理情報のイベント発生状況318に対応するデータプロット505について強調表示等によりフォーカスを当てて表示する。このように、分析項目トレース画面300の精度管理情報のイベント発生状況と精度管理画面500の精度管理情報の各測定結果とは連携しており、オペレータは、精度管理画面内のデータプロット群の中から目的とするデータを手動での検索する必要が無く、容易に目的とするデータを検索することが可能である。
【0038】
図6は、分析項目トレース画面をフィルタリングして情報を表示した場合の一例を示す図であり、
図7はフィルタ設定画面の一例を示す図である。
【0039】
図6において、フィルタ設定ボタン305を押下すると、
図7のフィルタ設定画面700が表示される。
【0040】
図7において、フィルタ設定画面700は、分析項目トレース画面300の情報表示部302に表示する情報のフィルタリングの条件を設定する画面であり、分析パラメータに関するフィルタリング条件を設定する分析パラメータフィルタリング条件設定部701と、試薬情報に関するフィルタリング条件を設定する試薬情報フィルタリング条件設定部702と、キャリブレーション結果に関するフィルタリング条件を設定するキャリブレーション結果フィルタリング条件設定部703と、精度管理情報に関するフィルタリング条件を設定する精度管理情報フィルタリング条件設定部704と、実行ボタン705と、閉じるボタン706とを備えている。
【0041】
各フィルタリング条件設定部701,702,703,704には、それぞれ、イベントの内容(生成・登録・編集・継承・変更・交換・削除など)に関するフィルタリング条件の設定部が設けられており、これらを適宜選択し、実行ボタン705を押下することにより、分析項目トレース画面300の情報の表示内容がフィルタ設定画面700で選択したイベントのみの表示に切り換わる。このときの情報表示部302の表示内容は、選択したイベントが集約され、画面の縦方向(縦軸の方向)の各情報の表示間隔が縮小される。イベント内容は複数選択が可能であり、各アイテムのイベントを全て選択すれば特定のアイテムだけを表示させることも可能となる。なお、
図6、
図7の例においては、試薬情報の登録とキャリブレーション結果の結果登録を選択実行して分析項目トレース画面300を表示させた場合を例示している。すなわち、オペレータは、特定のイベントや特定のアイテムのみに着目したい場合に、フィルタ設定ボタン305を押下し、フィルタ設定画面700によってフィルタリング条件を設定することにより、必要な情報を容易に得ることができる。
【0042】
図8は、各アイテムの表示期間の範囲を設定する表示範囲設定画面の一例を示す図である。
【0043】
図8において、表示範囲設定画面800は、分析項目トレース画面300の表示範囲設定ボタン306を押下することにより表示される。
【0044】
表示範囲設定画面800は、オペレータが各アイテムの表示期間の範囲を設定するものであり、分析パラメータに関する表示期間の範囲を設定する分析パラメータ表示範囲設定部801と、試薬情報に関する表示期間の範囲を設定する試薬情報表示範囲設定部802と、キャリブレーション結果に関する表示期間の範囲を設定するキャリブレーション結果表示範囲設定部803と、制度管理情報に関する表示期間の範囲を設定する精度管理情報表示範囲設定部804と、実行ボタン805と、閉じるボタン806とを備えている。
【0045】
各表示範囲設定部801,802,803,804には、それぞれ、表示期間の範囲の設定部が設けられており、表示範囲として1日、1週間、1ヵ月、全部、無しの設定を適宜選択し、実行ボタン805を押下することにより、分析項目トレース画面300の各アイテムの情報の表示期間が設定した表示期間の範囲のみの表示に切り替わる。この際、表示期間を集約して表示するようになるので、画面の横方向の各アイテムの間隔が縮小される。
【0046】
オペレータは、フィルタ設定画面700のフィルタ機能と表示範囲設定画面800の表示範囲設定機能とを組み合わせることにより、調査対象の分析項目に関わる各種アイテムのイベント発生状況を多面的に確認することが可能となる。
【0047】
以上のように構成した本実施の形態の効果を説明する。
【0048】
従来技術においては、分析処理における不具合の原因の究明に必要な各種情報について、特に連携されることなく個別に散在している情報を別個表示するのみである。したがって、検体測定結果にデータ異常等の何らかの不具合が発生した場合の調査に必要な各種情報の検索・収集作業、及び各種情報を用いた確認・情報解析作業においては、その煩雑さや不正確さ、各データの誤解釈の恐れなどが伴うため、多くの時間や労力のほか、自動分析装置の各画面の専門知識も必要とり、自動分析装置のメンテナンス性や稼働性が低下して、臨床検査などにおいては業務に支障が出る恐れもある。
【0049】
これに対して、本実施の形態においては、分析対象の検体を分析する分析処理を行う分析部と、分析処理の結果、分析処理における分析条件などの分析パラメータの登録・変更・削除などのイベントの発生に関する累積的な情報、及び、検体の分析に用いる試薬の情報である試薬情報の登録・削除・交換等のイベントの発生に関する累積的な情報を、検体の分析項目ごとに記憶する記憶部と、検体の分析結果、及びイベントの発生状況に関する情報等を表示する表示部と、制御部とを備え、検体の分析部による分析処理の動作を制御するとともに、分析パラメータのイベントの情報、及び、試薬情報のイベントの情報を記憶部から読み出して表示部に時系列で表示するように構成したので、検体測定結果のデータ異常等の何らかの不具合が発生した場合の不具合調査に係る各種情報の検索容易性や視認性を向上することができ、これによって不具合の調査・解析に要する時間の短縮及び信頼性の向上を図ることができる。
【0050】
なお、本発明は上記した各実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本願発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
1 分析部
2 操作部
21 制御装置
25 記憶装置
26 表示装置
100 自動分析装置
300 分析項目トレース画面
302 情報表示部
305 フィルタ設定ボタン
306 表示範囲設定ボタン
500 精度管理画面
700 フィルタ設定画面
800 表示範囲設定画面