(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記プレート部における、上記支持体に対向する側の面の周縁部分よりも内側には、上記支持体の平面部に当接する当接面を有する当接部が設けられており、当該当接部は樹脂製であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の支持体分離装置。
上記隙間形成工程では、上記把持部によって上記支持体の外周端部を把持するときに、上記支持体における、上記把持部が接触する部分の周縁部分を吸着保持して持ち上げることを特徴とする請求項8〜10の何れか1項に記載の支持体分離方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
本発明に係る支持体分離装置および支持体分離方法の一形態について、以下に説明する。
【0014】
<1.支持体分離装置の構成>
図1は、本実施形態1の支持体分離装置の要部の構成について示す図であり、
図1(a)は部分上面図であり、
図1(b)は、
図1(a)におけるA−A’線矢視断面である。なお、
図1(a)および
図1(b)には、XY平面を水平面とするXYZ座標系も併せて示す。
【0015】
本実施形態1の支持体分離装置10は、従来技術と同様に、回路等の構造物を実装したウエハ基板が、サポートプレートとともに積層体を構成している状態において、当該積層体からサポートプレートを剥離するために用いる装置である。しかしながら、ウエハ基板を積層した積層体に限らず、最表層にプレートを積層したあらゆるタイプの積層体について当該プレートを剥離するために用いることができる。なお、以下では、ウエハ基板を単に基板と記載する。
【0016】
ここで、詳細は後述するが、本実施形態1の支持体分離装置10によってサポートプレートが分離される積層体100は、
図1(b)に示すように、基板1と、光透過性のサポートプレート2(支持体)とが、接着層3を介して貼り付けられており、更に、接着層3とサポートプレート2との間には、光を照射することにより変質する分離層4が設けられた積層体である。なお、
図1(b)において、積層体100は、その基板1側がダイシングフレーム6を備えたダイシングテープ5に貼着されている。
【0017】
このような積層体100を対象とする本実施形態1の支持体分離装置10は、
図1(b)に示すように、ステージ50(載置台)と、光照射部40と、昇降部30と、保持部20とを備えている。
【0018】
(1.1)ステージ50
ステージ50は、積層体100を載置する台である。ステージ50の上面には、多孔性部分であるポーラス部51が設けられており、ポーラス部51には図示しない減圧部が連通している。これにより、ステージ50上に載置された積層体100は、その基板1側の平面においてポーラス部51により吸着固定される。
【0019】
(1.2)光照射部40
光照射部40は、積層体100における分離層4に対して、光透過性のサポートプレート2を介して光を照射する。
【0020】
具体的には、光照射部40は、積層体100の上を走査しつつ、サポートプレート2を介して上面視における形状が円形である積層体100に構成される分離層4の周縁部分(領域4a)に光を照射して当該部分を変質させる。
【0021】
ここで、
図2は、上面視において円形である分離層4と、光照射部40による光照射で変質した領域4aとを示す図である。
図2に示すように、領域4aの幅W1は、分離層4の外周端部から内側に向かって、0.5mm以上、8mm以下の範囲内であることが好ましく、1.5mm以上、8mm以下の範囲内であることがより好ましい。幅W1が6mm以上であれば、領域4aにおける分離層4に積層された基板1と、サポートプレート2との間に、隙間を形成し、当該隙間から積層体100の内部に向かって流体を噴射することにより、首尾よく積層体100からサポートプレート2を分離することができる。また、幅W1が2mm以下であれば、分離層4において光を照射される領域4aの面積を小さくすることができるため、基板1に対して光が照射される面積を小さくすることができる。
【0022】
なお、本明細書において、分離層が「変質する」とは、分離層がわずかな外力を受けて破壊され得る状態、又は分離層と接する層との接着力が低下した状態にさせる現象を意味する。光を吸収することによって生じる分離層の変質の結果として、分離層は、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。つまり、光を吸収することによって、分離層は脆くなる。分離層の変質とは、分離層が、吸収した光のエネルギーによる分解、立体配置の変化又は官能基の解離等を生じることであり得る。分離層の変質は、光を吸収することの結果として生じる。
【0023】
よって、例えば、サポートプレートを持ち上げるだけで分離層が破壊されるように変質させて、サポートプレートと基板とを容易に分離することができる。より具体的には、例えば、支持体分離装置等により、積層体における基板およびサポートプレートの一方を載置台に固定し、吸着手段を備えた吸着パッド(保持手段)等によって他方を保持して持ち上げることで、サポートプレートと基板とを分離する、又はサポートプレートの周縁部分端部の面取り部位を、クランプ(ツメ部)等を備えた分離プレートによって把持することにより力を加え、基板とサポートプレートとを分離するとよい。また、例えば、接着剤を剥離するための剥離液を供給する剥離手段を備えた支持体分離装置によって、積層体における基板からサポートプレートを剥離してもよい。当該剥離手段によって積層体における接着層の周端部の少なくとも一部に剥離液を供給し、積層体における接着層を溶解させることにより、当該接着層が溶解したところから分離層に力が集中するようにして、基板とサポートプレートとに力を加えることができる。このため、基板とサポートプレートとを好適に分離することができる。
【0024】
なお、積層体に加える力は、積層体の大きさ等により適宜調整すればよく、限定されるものではないが、例えば、面積が40000〜70000mm
2程度の積層体であれば、0.1〜5kgf程度の力を加えることによって、基板とサポートプレートとを好適に分離することができる。
【0025】
光照射部40の光照射によって分離層4の領域4aが変質すると、サポートプレート2の周縁部分端部にある面取り部位2a(
図3(b))をクランプ23によって把持することにより、面取り部位2aと領域4aとの間に隙間を形成することができる。より好ましくは、面取り部位2a(
図3(b))をクランプ23によって把持して持ち上げることにより面取り部位2aと領域4aとの間に隙間を形成する。そして、詳細は後述するが、この隙間をきっかけとして、基板1とサポートプレート2とを分離することができる。
【0026】
光照射部40が分離層4に照射する光は、分離層4が吸収する波長に応じて適宜選択するとよい。分離層4に照射する光を発射するレーザの例としては、YAGレーザ、ルビーレーザ、ガラスレーザ、YVO
4レーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO
2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、又は、非レーザ光等が挙げられる。分離層4に照射する光を発射するレーザは、分離層4を構成している材料に応じて適宜選択することが可能であり、分離層4を構成する材料を変質させ得る波長の光を照射するレーザを選択すればよい。
【0027】
ここで、基板1において、領域4aにおける分離層4に対向するように配置される領域は、集積回路等の構造物が形成されていない非回路形成領域として設定されている。また、基板1において、領域4aに対向するように配置される領域以外の領域には、集積回路等の構造物が形成されている(回路形成領域)。従って、領域4aにおける分離層4のみを変質させることで、領域4aに対向するように配置される領域以外の領域、つまり、基板1における回路形成領域に光を照射することを回避することができる。従って、領域4aにおける分離層4を変質させつつ、基板1における回路形成領域に対して光照射部40から光が照射され、当該光により基板1における回路形成領域がダメージを受けることを回避することができる。
【0028】
(1.3)昇降部30
昇降部30は、
図1(b)に示すように、保持部20の上面視における形状が円形であるプレート部21の上面側の中心部に連結固定されており、
図1(a)および
図1(b)に示すZ軸に沿って保持部20を昇降させる。
【0029】
なお、本実施形態1では、昇降部30はプレート部21に連結固定されているが、本発明はこの態様に限定されるものではなく、例えば、昇降部30にフローティングジョイントおよびストッパーが設けられていてもよい。例えば、フローティングジョイントが、保持部20の上面視における形状が円形であるプレート部21の上面側の中心部に配設されていてもよい。この場合、プレート部21は、フローティングジョイントを介して昇降部30に連結されることにより、回動可能であり、かつ、プレート部21における吸着パッド22が設けられた面が、ステージ50に固定された積層体100の平面に対して傾くように可動する。そして、ストッパーは、プレート部21が必要以上に傾かないようにする係止手段として設けられている。プレート部21が必要以上に傾斜しようとすると、ストッパーがプレート部21の上面部に接触してプレート部21がそれ以上傾斜しない。
これらフローティングジョイントとストッパーとによって、プレート部21の傾きを調整することも可能であり、吸着パッド22によりサポートプレート2を吸着保持するように配置することができる。
【0030】
(1.4)保持部20
保持部20は、プレート部21と、吸着パッド22(吸着部)と、クランプ23(把持部)と、気体噴出部24(噴出部)と、スライド駆動部25(駆動部)と、レベルブロック26(当接部)とを有している。
【0031】
(1.4.1)プレート部21
プレート部21は、昇降部30に連結されている。プレート部21は、ステージ50に対向配置している上面視において概ね円形の構造体である。なお、説明の便宜上、
図1(a)には、プレート部21の中心点Cを示している。
【0032】
(1.4.2)吸着パッド22
吸着パッド22は、プレート部21におけるステージ50との対向側の面に配設されている。より具体的には、吸着パッド22は、
図1(a)に示すように、上面視における形状が円形であるプレート部21の中心点Cを挟んで対向する2箇所と、それらを結ぶ仮想線に対して中心点Cにおいて直交する線に沿って、中心点Cを挟んで対向する2箇所の計4箇所において、プレート部21の外周端部よりも内側(中心点C寄り)にそれぞれ設けられている。
【0033】
吸着パッド22は、ちょうど、ステージ50に載置された積層体100のサポートプレート2側の表面(積層体100の上面と記載することもある)の、領域4aの反対側の領域に当接することができる。
【0034】
吸着パッド22は、サポートプレート2を真空吸着することにより保持することができ、例えば、ベローズパッド等を挙げることができる。吸着パッド22が、上述の位置においてサポートプレート2に当接した状態において真空吸着することにより、例えば吸着パッド22が昇降部30によってZ軸に沿ってステージ50から離間する方向に移動すればサポートプレート2を持ち上げることができる。
【0035】
(1.4.3)クランプ23
クランプ23は、各吸着パッド22の近傍において、スライド駆動部25を介してプレート部21と連結しており、ステージ50に載置された積層体100を把持(保持)することができる構成となっている。
【0036】
より具体的には、クランプ23は、
図1(a)に示すように、上面視における形状が円形であるプレート部21の中心点Cを挟んで対向する2箇所と、当該2箇所を結ぶ仮想線に対して中心点Cにおいて直交する線に沿って、中心点Cを挟んで対向する2箇所の計4箇所において、プレート部21の外周端部よりも外側(中心点Cから離れる側)にそれぞれ設けられている。
【0037】
ここで、
図1(a)には、先述の仮想線に相当するX軸方向に沿った線と、Y軸方向に沿った線とを示しており、同一箇所において、一つの吸着パッド22と、一つのクランプ23とは同一線上に位置している。そして、4箇所のクランプ23は、プレート部21の外周に沿って等間隔に配設されていることから、ステージ50に載置された積層体100を把持(保持)する際に積層体100に力を均等に加えることができる。これは、特に積層体100のサポートプレート2が薄層(例えば0.4mm程度)のガラス層である場合に、サポートプレート2を破損させることなく分離することに寄与する。
【0038】
クランプ23は、
図1(b)に示す断面図において、プレート部21を挟んで両側にある。各クランプ23は、プレート部21の上面に設けられたスライド駆動部25に上端部が連結しており、下端部は、プレート部21の下面(吸着パッド22配設面)よりも下方に位置している。なお、スライド駆動部25には、各クランプ23の高さを調整する機構が具備されており、Z軸方向に沿って各クランプ23の位置を調整することができる。
図1(b)に示すようにステージ50上の積層体100が載置された状態において、保持部20が降りてくると、クランプ23の下端部が積層体100の外周領域近傍に位置することになる。なお、
図1(b)は、説明の便宜上、光照射部40が、ステージ50上の積層体100と、保持部20との間に位置しているが、保持部20が積層体100を保持する際には、光照射部40はこの位置から外れた位置にある。
【0039】
クランプ23を形成するための材料は、把持すべきサポートプレート2の材質に応じて適宜選択すればよい。従って、クランプ23を形成するための材料には、ステンレスやアルミニウム等の金属、および、エンジニアリングプラスチック等を用いることができる。また、サポートプレート2の材質がガラスである場合、エンジニアリングプラスチックである、芳香族ポリエーテルケトンを用いて形成することがより好ましく、芳香族ポリエーテルケトンの中でも、芳香族基を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、芳香族基を有するポリエーテルケトンケトン(PEKK)および芳香族基を有するポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)が好ましく、PEEKが最も好ましい。これにより、ガラスからなるサポートプレート2の外周端部をクランプ23により把持したときに、当該サポートプレート2が破損することを防止することができる。
【0040】
以下、
図3を用いて、クランプ23について詳述する。
図3(a)〜
図3(c)は、
図1(b)において破線の丸囲みを付した箇所の拡大断面図である。
図3(a)は、クランプ23の断面図であり、
図3(b)は、クランプ23における傾斜面23bが、積層体100におけるサポートプレート2の面取り部位2aに当接されている状態を説明する図であり、
図3(c)は、
図3(b)におけるB−B’線矢視断面において、傾斜面23bが、積層体100におけるサポートプレート2の外周端部を係止して捕捉する前の状態を示す図である。
【0041】
図3(a)に示すように、クランプ23は、対峙面23aおよび傾斜面23b(係止面)を有している。
【0042】
対峙面23aは、サポートプレート2の外周端部に対峙する。ここで、対峙面23aは、ステージ50に固定した積層体100におけるサポートプレート2の平面部に対して垂直な面であり、サポートプレート2の外周端部が有する弧と同じ大きさの弧を有するか、又は、外周端部が有する弧の大きさより大きな弧を描くように湾曲している面である。
【0043】
傾斜面23bは、クランプ23の下端部において対峙面23aの下端辺(底辺)に沿って設けられており、プレート部21の中心点Cに向いて構成される面である。すなわち、傾斜面23bは、YZ平面に対して傾斜している。換言すれば、
図1(b)においてプレート部21を挟んで両側に位置するクランプ23の傾斜面23b同士は、下方に向かうに連れて、互いの距離が近くなる方向に傾斜している。これにより、傾斜面23bは、サポートプレート2の外周端部において、プレート部21に対向する面の裏面側に位置する面取り部位2aに当接し、面取り部位2aを係止することができる。
【0044】
より具体的には、傾斜面23bは、XZ平面に対して、30°以上、90°未満の範囲内の傾斜を有している。これにより、サポートプレート2の面取り部位2aに対して、傾斜面23bから過度な力が加えられることを防止することができる。また、プレート部21の下に配設されたレベルブロック26の下面にサポートプレート2の上面を当接した状態において、傾斜面23bの傾斜は、サポートプレート2の面取り部位2aの傾斜に対して平行になるように設けられていることが、当接時に面取り部位2aの端部に過度な力を集中させないために最も好ましい。
【0045】
また、傾斜面23bは、複数のクランプ23の対峙面23aの下端辺に沿って設けられている。複数のクランプ23は、プレート部21の下に配設されたレベルブロック26の下面がサポートプレート2の上面に当接した状態において、サポートプレート2の外周端部を包囲し、複数のクランプ23に夫々設けられた傾斜面23bは、スライド駆動部25によって、同時に、同じ速度にて、サポートプレート2の外周端部に近づけられる。このため、これら傾斜面23bによって、積層体100におけるサポートプレート2の中心点と、プレート部21の中心点Cとが重なるように、当該積層体100を誘導しつつ、サポートプレート2の外周端部を係止し把持することができる。従って、支持体分離装置10は、プレート部21を囲うように等間隔に配置された複数のクランプ23の傾斜面23bによって、サポートプレート2の外周端部を略点接触に近い状態で把持することができる。このため、複数のクランプ23の傾斜面23bからサポートプレート2を把持するための力を均等に加えることができ、プレート部21が持ち上げられたとき、複数のクランプ23の傾斜面23bに当接したサポートプレート2の外周端部が、傾斜面23bから脱離することを好適に防止することができる。
【0046】
ここで、各クランプ23には、傾斜面23bが二つ設けられており、それらが
図3(c)に示すように、対峙面23aに沿って並んで配設されている。並んで配設されている傾斜面23bのそれぞれは、幅Lを5〜10mm程度とすることができる。なお、各傾斜面23bにおけるサポートプレート2に近接する端辺は、対峙面23aと平行に弧を描いている。
【0047】
そして、並んで配設されている傾斜面23bと傾斜面23bとは離間しており、その離間部分が、気体噴出部24から噴出される気体の噴出口27(開口部)として構成されている。具体的には、クランプ23には、その下端部(底部)において、内側(プレート部21側)から反対側まで延設された溝が形成されており、その溝におけるプレート部21側の端が、上述の離間部分に相当する。溝の反対側の端、すなわち、クランプ23における内側(プレート部21側)とは反対側には、気体噴出部24が配設されており、そのノズル端が溝に気体を供給するべく連通している。
【0048】
このように、各クランプ23において噴出口27を傾斜面23bと傾斜面23bとの間に設けることにより、噴出口27から噴出する気体を、面取り部位2aに傾斜面23bが当接することによって持ち上がったサポートプレート2の外周端部の下面に効果的に吹き付けることができる。なお、各クランプ23に設けられた二つの傾斜面23bを一つの傾斜面と捉えることもでき、この場合、噴出口27は、その一つの係止面内に設けられていると換言することもできる。
【0049】
(1.4.4)気体噴出部24
気体噴出部24は、各クランプ23と一体的に構成されている。具体的には、
図1(a)に示すように、上面視における形状が円形であるプレート部21の中心点Cを挟んで対向する2箇所と、それらを結ぶ仮想線に対して中心点Cにおいて直交する線に沿って、中心点Cを挟んで対向する2箇所の計4箇所において、クランプ23よりも外側(中心点Cから離れる側)にそれぞれ設けられている。すなわち、
図1(a)に図示した先述の仮想線に相当するX軸方向に沿った線と、Y軸方向に沿った線とに関して、同一箇所において、一つの吸着パッド22と、一つのクランプ23と、一つの気体噴出部24とは、同一線上において、中心点Cから離れる方向に沿ってこの順で配置している。
【0050】
気体噴出部24は、気体噴出ノズルによって構成され、一方の端部はクランプ23の下端部に配設されており、他方の端部は図示しない気体供給装置に接続されている。
【0051】
気体噴出部24は、噴出させる気体の噴出方向が、斜め下を向いている。具体的には、
図4に示すとおり、噴出させる気体の噴出方向が、分離層4の平面部(XY平面)に対して0〜45°の傾斜角(
図4中のT°)を有するように気体噴出ノズルが配設されている。この傾斜角を有して噴出された気体は、サポートプレート2の外周端部が傾斜面23bによって把持されて形成される隙間において、分離層4のサポートプレート2側の平面に吹き付けられる。これにより、サポートプレート2を分離層4から分離しやすくなる。
【0052】
プレート部21の外周端部に沿って等間隔に配設された気体噴出部24は、夫々、独立して噴出を制御することができる。すなわち、或る気体噴出部24からは気体を噴出させず、特定の気体噴出部24のみから気体を噴出させることが可能である。なお、分離層4のサポートプレート2側の平面に吹き付けられる気体の噴出量としては、0.3〜0.5MPaで、100〜300L/分とすることができる。
【0053】
気体噴出部24から噴出される気体は、サポートプレート2および分離層4に影響を与えず、サポートプレート2の分離に支障がない種類の気体であればよく、例えば、空気、ドライエアー、窒素およびアルゴンからなる群から選択される少なくとも一つを挙げることができる。
【0054】
図3(b)に示すように、傾斜面23bの下端および気体噴出部24の下端は、サポートプレート2における基板1に対向する側の面と、同一平面上に配置されている。これにより、基板1および接着層3等に傾斜面23bおよび気体噴出部24の下端が引っ掛かることを防止することができる。従って、傾斜面23bをサポートプレート2のみに当接させ、サポートプレート2をクランプ23によって首尾よく把持することができる。
【0055】
なお、気体噴出部24は、図示していないが、上述のようにクランプ23とともにZ軸方向に沿って上下に移動可能に移動する機構となっていてもよい。これにより、気体噴出部24から、積層体100の内部に向かって気体を噴出する位置を好適に調整することができる。
【0056】
(1.4.5)スライド駆動部25
スライド駆動部25は、プレート部21の上面における各クランプ23の近傍に配設されている。スライド駆動部25の夫々は、近傍に位置するクランプ23を、XY平面方向に沿って、プレート部21の外周端部に向かって近づけるか、又は離すようにスライド移動させる(
図3(b)および(c))。また、スライド駆動部25は、同時に同じ速度にて、サポートプレート2の外周端部に向かってクランプ23の夫々をスライド移動させる。これにより、サポートプレート2の外周端部をクランプ23によって囲いつつ、把持することができる。
【0057】
スライド駆動部25としては、エアシリンダーによるスライド機構を採用することができる。スライド駆動部25には、図示しないレギュレーターが配設されており、レギュレーターがエアシリンダーの駆動圧を調節することによって、クランプ23によるサポートプレート2の保持力を変えることができる。
【0058】
また、上述のようにスライド駆動部25は、クランプ23および気体噴出部24をZ軸方向に沿って上下に移動可能に移動する機構を有している。
【0059】
(1.4.6)レベルブロック26
レベルブロック26は、プレート部21における下面(ステージ50対向側の面)における各吸着パッド22よりも内側(中心点C寄り)に配設され、下方に向かって突出した構造を有している。後述するように、レベルブロック26の突出端部(下端)には、サポートプレート2の上面(平面部)に当接する当接面26aが設けられており、サポートプレート2を分離する際に吸着パッド22に吸着されたサポートプレート2が不都合に歪むことを防ぐことができる。そのため、レベルブロック26のZ方向の長さ(突出長)は、吸着パッド22のZ方向の長さよりも僅かに短く構成されている。また、レベルブロック26の突出端部(下端)と、クランプ23の下端部との高さの差は、分離するサポートプレート2の厚さに応じて予め一定になるように設計されているが、高さ調整機構を具備しているため、高さを調整することが可能である。
【0060】
レベルブロック26を形成するための材料は、接触するサポートプレート2の材質に応じて適宜選択すればよいが、例えば樹脂(エンジニアリングプラスチック等)を用いることができる。レベルブロック26は、エンジニアリングプラスチックである、芳香族ポリエーテルケトンを用いて形成することがより好ましく、芳香族ポリエーテルケトンの中でも、芳香族基を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、芳香族基を有するポリエーテルケトンケトン(PEKK)および芳香族基を有するポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)が好ましく、PEEKが最も好ましい。これにより、例えば、ガラスからなるサポートプレート2の上面と接触したときに、当該サポートプレート2が破損することを防止することができる。また、レベルブロック26を軽量化することかでき、昇降部30に掛かる負荷を低減することができる。
【0061】
(1.5)その他の構成
本実施形態1の支持体分離装置10には、上述した各構成以外に構成を具備する。例えば、スライド駆動部25が移動させるクランプ23の夫々の位置を検知する位置センサ(不図示)を具備する。
【0062】
位置センサは、磁気センサによって構成され、クランプ23に固定したマグネットと、クランプ23のスライド移動とともに移動する当該マグネットの変位を検知する二つのセンサヘッドとを有して構成されている。例えば、二つのセンサヘッドは、各々の位置を基準とし、二つのセンサヘッドの間の距離を、例えば、0〜100の値でスケーリングする。例えば、二つのセンサヘッドの間の距離を数mm程度に設定すると、クランプ23の位置をμmオーダーで判定することができる。このスケーリング値に基づき、二つのセンサヘッドは、マグネットの位置を判定する。これにより、マグネットと同時に等しい距離を移動するクランプ23の位置を正確に判定することができる。より具体的には、スケーリング値の範囲別に、クランプ23がサポートプレート2の外周端部を把持する前の位置に配置されているか、クランプ23がサポートプレート2の外周端部を把持しているか、又は、クランプ23がサポートプレート2の外周端部を把持し損ねているかを判定する。例えば、0〜100の範囲でスケーリングされた値の60よりも大きい値を示すとき、クランプ23がサポートプレート2の外周端部を把持する前の位置に配置され、10よりも大きく60以下の値を示すとき、クランプ23がサポートプレート2の外周端部を把持することができる位置に配置され、0以上、10以下の値を示すとき、クランプ23がサポートプレート2の外周端部を把持することができる位置よりも内側に配置されていることを判定することができる。
【0063】
本実施形態1の支持体分離装置10には、他にも、気体噴出部24の気体の噴出を制御したり、昇降部30やスライド駆動部25を制御したりする制御部を具備する。
【0064】
なお、本実施形態1では、クランプ23および気体噴出部24の配設数がプレート部21の外周に沿って4箇所となっている。しかしながら、本発明はこの配設数に限定されるものではない。積層体100のサポートプレート2を把持して持ち上げることができればよく、クランプ23がプレート部21の外周に1箇所のみ配設されていてもよい。なお、複数個所に配設されている場合には、それらはプレート部21の外周に沿って等間隔に配設されていることが好ましい。
【0065】
また、本実施形態1では、各クランプに二つの傾斜面23bが設けられているが、一方の傾斜面23bのみが設けられている場合であってもサポートプレート2の外周部分を持ち上げることは可能である。
【0066】
<2.支持体分離方法>
以上の構成を具備する支持体分離装置10によって積層体100からサポートプレート2を分離する方法(支持体分離方法)を説明する。
【0067】
本実施形態1における支持体分離方法は、基板を固定し、少なくとも一つの把持部によってサポートプレート2の外周端部を把持して持ち上げることで、基板1とサポートプレート2との間に隙間を形成する隙間形成工程と、隙間7が形成された面の裏面からサポートプレート2を吸着保持して持ち上げることで、隙間7を維持する隙間維持工程と、隙間維持工程後、隙間7から積層体100の内部に向かって、クランプ23が備えている気体噴出部24から気体を噴出することで、積層体100からサポートプレート2を分離する分離工程と、を包含している。
【0068】
図5(a)〜
図5(e)は、本実施形態1の支持体分離方法を説明する図である。なお、
図5(a)〜
図5(e)は、
図1(b)と同じ方向からみた断面図である。なお、
図5(a)〜
図5(e)では、昇降部30の図示を省略している。
【0069】
図5(a)には、光照射工程として
図1(b)に示す光照射部40によって分離層4の外周端部が変質して領域4aが形成されている積層体100が、ポーラス部51によってステージ50に吸着している状態を示している。この状態において、クランプ23および気体噴出部24が、積層体100の外周端部の外側に位置するように保持部20の位置が調節されている。なお、この状態において、レベルブロック26もサポートプレート2の上面に当接しており、吸着パッド22は、サポートプレート2の上面を吸着保持している。
【0070】
次に、
図5(b)に示すように、クランプ23および気体噴出部24が、スライド駆動部25によってスライド移動して積層体100に近づき、クランプ23の傾斜面23bが、サポートプレート2の外周端部における面取り部位2aの下側(領域4a側)に接触する。
【0071】
そして、
図5(b)の状態からクランプ23および気体噴出部24が更にスライド移動することにより、
図5(c)に示すように、サポートプレート2の面取り部位2aが傾斜面23bによって領域4aから離れる方向に持ち上がる。この状態において、サポートプレート2における領域4aに対向している領域(面取り部位2aも含む)と、領域4aとの間には隙間7が形成される(隙間形成工程)。なお、
図5(c)に示す状態において、クランプ23が、スライド移動するだけでなく、僅かに上昇することによって、隙間7を形成してもよい。
【0072】
続いて、
図5(d)に示すように、クランプ23および気体噴出部24がスライド駆動部25による駆動を受けて積層体100から離れる方向にスライド移動する。この状態では、クランプ23の傾斜面23bと、サポートプレート2の面取り部位2aとが離間しても、吸着パッド22が吸着し続けているためサポートプレート2の面取り部位2aは持ち上がった状態を維持しており、隙間7が維持される(隙間維持工程)。
【0073】
続いて、
図5(e)に示すように、プレート部21が上昇して、吸着パッド22、クランプ23および気体噴出部24の位置が上昇する。これにより、吸着パッド22が吸着しているサポートプレート2の外周端部が更に持ち上がる。この位置に調整されると、気体噴出部24から気体を噴射する(分離工程)。先述のように気体噴出部24(噴出口27)から噴出される気体は、斜め下方向に噴出される。これにより、気体噴出前は分離層4と接していたサポートプレート2の領域近傍に気体が噴出され、サポートプレート2を分離層4から剥離させて分離することができる。分離できたら、ポーラス部51による積層体100のステージ50への吸着を停止し、一連の支持体分離方法を終了する。
【0074】
図6は、気体噴出部24から気体が噴出された状態を、積層体100の上面視において示す図である。説明の便宜上、プレート部21等の構成は図示を省略している。
【0075】
図6では、4箇所に設けられた気体噴出部24の夫々から気体が噴出されることにより隙間7が積層体100の内側に向かって広がっている様子を示す。
図6に示すように、積層体100の外周端部に沿った4箇所において夫々の隙間7が広がることにより、吸着パッド22のみでサポートプレート2を分離する場合に比べて、サポートプレート2に過度の応力が及ぶことなく、サポートプレート2を分離層4から分離することができる。これは、サポートプレート2が薄く構造的に脆い場合に、そのサポートプレート2を破損することなく短時間で首尾よく分離することができるために非常に有利である。
【0076】
以上の一連の動作は、昇降部30、スライド駆動部25および気体噴出部24が図示しない制御部による制御をうけて実現するものである。
【0077】
例えば、制御部は、まず、昇降部30を制御することによって、吸着パッド22およびクランプ23を所定の高さまで下降させるとともに、ステージ50のポーラス部51の吸引をONにする。次に、制御部は、スライド駆動部25を制御することによって、クランプ23を内側に向けてスライド移動させて(更にクランプ23を上昇させてもよい)隙間を形成する。次に、吸着パッド22による吸着を開始させる。次に、スライド駆動部25を制御することによって、サポートプレート2の面取り部位2aと離間する位置までクランプ23を外側に向けてスライド移動させる。次いで、制御部は、吸着パッド22による吸着を継続させた状態で、気体噴出部24を制御して気体噴出を開始させ、それと略同時に、昇降部30を制御して吸着パッド22を所定の高さまで上昇させる。
【0078】
このような処理は、予め設定されたタイミングチャートに基づいて行ってもよく、あるいはプレート部21の高さや、クランプ23の位置、吸着パッド22の位置をセンシングして、位置を検知しながら制御してもよい。その際には、先述した位置センサを用いることも可能である。
【0079】
<3.積層体>
図1の(a)に示す、本実施形態に係る支持体分離装置10によりサポートプレート2を分離する積層体100について、詳細に説明する。積層体100は、基板1と、接着層3と、光を吸収することにより変質する分離層4と、光を透過する材料からなるサポートプレート2とをこの順に積層してなる。
【0080】
(3.1)基板1
基板1は、接着層3を介して分離層4を設けられたサポートプレート2に貼り付けられる。そして、基板1は、サポートプレート2に支持された状態で、薄化、実装等のプロセスに供され得る。基板1としては、シリコンウエハ基板に限定されず、セラミックス基板、薄いフィルム基板、フレキシブル基板等の任意の基板を使用することができる。
【0081】
なお、当該基板の表面には、構造物、例えば、集積回路、金属バンプ等が実装されていてもよい。
【0082】
(3.2)サポートプレート2
サポートプレート2は、基板1を支持する支持体であり、接着層3を介して、基板1に貼り付けられる。そのため、サポートプレート2としては、基板1の薄化、搬送、実装等のプロセス時に、基板1の破損又は変形を防ぐために必要な強度を有していればよい。また、分離層を変質させるための光を透過させるものであればよい。以上の観点から、サポートプレート2としては、ガラス、シリコン、アクリル系樹脂からなるもの等が挙げられる。
【0083】
なお、サポートプレート2は、300〜1000μmの厚さのものを用いることができる。本実施形態に係る支持体分離方法によれば、このように、厚さが薄いサポートプレート2(支持体)であっても、当該サポートプレート2が破損することを防止しつつ、積層体から好適に分離することができる。
【0084】
(3.3)接着層3
接着層3は、基板1とサポートプレート2とを貼り付けるために用いられる。
【0085】
接着層3を形成するための接着剤には、例えば、アクリル系、ノボラック系、ナフトキノン系、炭化水素系、ポリイミド系、エラストマー、ポリサルホン系等の、当該分野において公知の種々の接着剤を用いることができ、ポリサルホン系樹脂、炭化水素樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、エラストマー樹脂等、又はこれらを組み合わせたもの等をより好ましく用いることができる。
【0086】
接着層3の厚さは、貼り付けの対象となる基板1およびサポートプレート2の種類、貼り付け後の基板1に施される処理等に応じて適宜設定すればよいが、10〜150μmの範囲内であることが好ましく、15〜100μmの範囲内であることがより好ましい。
【0087】
接着層3は、基板1とサポートプレート2とを貼り付けるために用いられる。接着層3は、例えば、スピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー塗布、スリット塗布等の方法により接着剤を塗布することによって形成することができる。また、接着層3は、例えば、接着剤を直接、基板1に塗布する代わりに、接着剤が両面に予め塗布されているフィルム(いわゆる、ドライフィルム)を、基板1に貼付することで形成してもよい。
【0088】
接着層3は、基板1とサポートプレート2とを貼り付けるために用いられる接着剤によって形成される層である。
【0089】
接着剤として、例えばアクリル系、ノボラック系、ナフトキノン系、炭化水素系、ポリイミド系、エラストマー等の、当該分野において公知の種々の接着剤が使用可能である。
【0090】
以下、接着層3が含有する樹脂の組成について説明する。
【0091】
接着層3が含有する樹脂としては、接着性を備えたものであればよく、例えば、炭化水素樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、エラストマー樹脂、ポリサルホン系樹脂等、又はこれらを組み合わせたもの等が挙げられる。
【0092】
(炭化水素樹脂)
炭化水素樹脂は、炭化水素骨格を有し、単量体組成物を重合してなる樹脂である。炭化水素樹脂として、シクロオレフィン系ポリマー(以下、「樹脂(A)」ということがある)、並びに、テルペン樹脂、ロジン系樹脂および石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(以下、「樹脂(B)」ということがある)等が挙げられるが、これに限定されない。
【0093】
樹脂(A)としては、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を重合してなる樹脂であってもよい。具体的には、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分の開環(共)重合体、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を付加(共)重合させた樹脂等が挙げられる。
【0094】
樹脂(A)を構成する単量体成分に含まれる前記シクロオレフィン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体、ジシクロペンタジエン、ヒドロキシジシクロペンタジエン等の三環体、テトラシクロドデセン等の四環体、シクロペンタジエン三量体等の五環体、テトラシクロペンタジエン等の七環体、又はこれら多環体のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)置換体、アルケニル(ビニル等)置換体、アルキリデン(エチリデン等)置換体、アリール(フェニル、トリル、ナフチル等)置換体等が挙げられる。これらの中でも特に、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、又はこれらのアルキル置換体からなる群より選ばれるノルボルネン系モノマーが好ましい。
【0095】
樹脂(A)を構成する単量体成分は、上述したシクロオレフィン系モノマーと共重合可能な他のモノマーを含有していてもよく、例えば、アルケンモノマーを含有することが好ましい。アルケンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、α−オレフィン等が挙げられる。アルケンモノマーは、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
【0096】
また、樹脂(A)を構成する単量体成分として、シクロオレフィンモノマーを含有することが、高耐熱性(低い熱分解、熱重量減少性)の観点から好ましい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィンモノマーの割合は、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。また、樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィンモノマーの割合は、特に限定されないが、溶解性および溶液での経時安定性の観点からは80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。
【0097】
また、樹脂(A)を構成する単量体成分として、直鎖状又は分岐鎖状のアルケンモノマーを含有してもよい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するアルケンモノマーの割合は、溶解性および柔軟性の観点からは10〜90モル%であることが好ましく、20〜85モル%であることがより好ましく、30〜80モル%であることがさらに好ましい。
【0098】
なお、樹脂(A)は、例えば、シクロオレフィン系モノマーとアルケンモノマーとからなる単量体成分を重合させてなる樹脂のように、極性基を有していない樹脂であることが、高温下でのガスの発生を抑制する上で好ましい。
【0099】
単量体成分を重合するときの重合方法や重合条件等については、特に制限はなく、常法に従い適宜設定すればよい。
【0100】
樹脂(A)として用いることのできる市販品としては、例えば、ポリプラスチックス株式会社製の「TOPAS」、三井化学株式会社製の「APEL」、日本ゼオン株式会社製の「ZEONOR」および「ZEONEX」、JSR株式会社製の「ARTON」等が挙げられる。
【0101】
樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることが特に好ましい。樹脂(A)のガラス転移温度が60℃以上であると、積層体が高温環境に曝されたときに接着層3の軟化をさらに抑制することができる。
【0102】
樹脂(B)は、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂および石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である。具体的には、テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、変性ロジン等が挙げられる。石油樹脂としては、例えば、脂肪族又は芳香族石油樹脂、水添石油樹脂、変性石油樹脂、脂環族石油樹脂、クマロン・インデン石油樹脂等が挙げられる。これらの中でも、水添テルペン樹脂、水添石油樹脂がより好ましい。
【0103】
樹脂(B)の軟化点は特に限定されないが、80〜160℃であることが好ましい。樹脂(B)の軟化点が80〜160℃であると、積層体が高温環境に曝されたときに軟化することを抑制することができ、接着不良を生じない。
【0104】
樹脂(B)の重量平均分子量は特に限定されないが、300〜3,000であることが好ましい。樹脂(B)の重量平均分子量が300以上であると、耐熱性が十分なものとなり、高温環境下において脱ガス量が少なくなる。一方、樹脂(B)の重量平均分子量が3,000以下であると、炭化水素系溶剤への接着層の溶解速度が良好なものとなる。このため、支持体を分離した後の基板上の接着層の残渣を迅速に溶解し、除去することができる。なお、本実施形態における樹脂(B)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の分子量を意味するものである。
【0105】
なお、樹脂として、樹脂(A)と樹脂(B)とを混合したものを用いてもよい。混合することにより、耐熱性が良好なものとなる。例えば、樹脂(A)と樹脂(B)との混合割合としては、(A):(B)=80:20〜55:45(質量比)であることが、高温環境時の熱耐性、および柔軟性に優れるので好ましい。
【0106】
(アクリル−スチレン系樹脂)
アクリル−スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン又はスチレンの誘導体と、(メタ)アクリル酸エステル等とを単量体として用いて重合した樹脂が挙げられる。
【0107】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数15〜20のアルキル基を有するアクリル系長鎖アルキルエステル、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステル等が挙げられる。アクリル系長鎖アルキルエステルとしては、アルキル基がn−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等であるアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。なお、当該アルキル基は、分岐鎖状であってもよい。
【0108】
炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステルとしては、既存のアクリル系接着剤に用いられている公知のアクリル系アルキルエステルが挙げられる。例えば、アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、ドデシル基、ラウリル基、トリデシル基等からなるアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。
【0109】
脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、イソボルニルメタアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0110】
芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、芳香族環としては、例えばフェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。また、芳香族環は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有していてもよい。具体的には、フェノキシエチルアクリレートが好ましい。
【0111】
(マレイミド系樹脂)
マレイミド系樹脂としては、例えば、単量体として、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−sec−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−へプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド等のアルキル基を有するマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−シクロヘプチルマレイミド、N−シクロオクチルマレイミド等の脂肪族炭化水素基を有するマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−m−メチルフェニルマレイミド、N−o−メチルフェニルマレイミド、N−p−メチルフェニルマレイミド等のアリール基を有する芳香族マレイミド等を重合して得られた樹脂が挙げられる。
【0112】
例えば、下記化学式(1)で表される繰り返し単位および下記化学式(2)で表される繰り返し単位の共重合体であるシクロオレフィンコポリマーを接着成分の樹脂として用いることができる。
【化1】
(化学式(2)中、nは0又は1〜3の整数である。)
このようなシクロオレフィンコポリマーとしては、APL 8008T、APL 8009T、およびAPL 6013T(全て三井化学株式会社製)等を使用することができる。
【0113】
(エラストマー)
エラストマーは、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含んでいることが好ましく、当該「スチレン単位」は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシアルキル基、アセトキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。また、当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であることがより好ましい。さらに、エラストマーは、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であることが好ましい。
【0114】
スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であり、エラストマーの重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であれば、後述する炭化水素系の溶剤に容易に溶解するので、より容易かつ迅速に接着層を除去することができる。また、スチレン単位の含有量および重量平均分子量が上記の範囲内であることにより、ウエハがレジストリソグラフィー工程に供されるときに曝されるレジスト溶剤(例えばPGMEA、PGME等)、酸(フッ化水素酸等)、アルカリ(TMAH等)に対して優れた耐性を発揮する。
【0115】
なお、エラストマーには、上述した(メタ)アクリル酸エステルをさらに混合してもよい。
【0116】
また、スチレン単位の含有量は、より好ましくは17重量%以上であり、また、より好ましくは40重量%以下である。
【0117】
重量平均分子量のより好ましい範囲は20,000以上であり、また、より好ましい範囲は150,000以下である。
【0118】
エラストマーとしては、スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であり、エラストマーの重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であれば、種々のエラストマーを用いることができる。例えば、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロックコポリマー(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SBBS)、および、これらの水添物、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEEPS)、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SeptonV9461(株式会社クラレ製)、SeptonV9475(株式会社クラレ製))、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(反応性のポリスチレン系ハードブロックを有する、SeptonV9827(株式会社クラレ製))、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレンブロックコポリマー(SEEPS−OH:末端水酸基変性)等が挙げられる。エラストマーのスチレン単位の含有量および重量平均分子量が上述の範囲内であるものを用いることができる。
【0119】
また、エラストマーの中でも水添物がより好ましい。水添物であれば熱に対する安定性が向上し、分解や重合等の変質が起こりにくい。また、炭化水素系溶剤への溶解性およびレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
【0120】
また、エラストマーの中でも両端がスチレンのブロック重合体であるものがより好ましい。熱安定性の高いスチレンを両末端にブロックすることでより高い耐熱性を示すからである。
【0121】
より具体的には、エラストマーは、スチレンおよび共役ジエンのブロックコポリマーの水添物であることがより好ましい。熱に対する安定性が向上し、分解や重合等の変質が起こりにくい。また、熱安定性の高いスチレンを両末端にブロックすることでより高い耐熱性を示す。さらに、炭化水素系溶剤への溶解性およびレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
【0122】
接着層3を構成する接着剤に含まれるエラストマーとして用いられ得る市販品としては、例えば、株式会社クラレ製「セプトン(商品名)」、株式会社クラレ製「ハイブラー(商品名)」、旭化成株式会社製「タフテック(商品名)」、JSR株式会社製「ダイナロン(商品名)」等が挙げられる。
【0123】
接着層3を構成する接着剤に含まれるエラストマーの含有量としては、例えば、接着剤組成物全量を100重量部として、50重量部以上、99重量部以下の範囲内が好ましく、60重量部以上、99重量部以下の範囲内がより好ましく、70重量部以上、95重量部以下の範囲内が最も好ましい。これら範囲内にすることにより、耐熱性を維持しつつ、ウエハと支持体とを好適に貼り合わせることができる。
【0124】
また、エラストマーは、複数の種類を混合してもよい。つまり、接着層3を構成する接着剤は複数の種類のエラストマーを含んでいてもよい。複数の種類のエラストマーのうち少なくとも一つが、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含んでいればよい。また、複数の種類のエラストマーのうち少なくとも一つが、スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内である、又は、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であれば、本発明の範疇である。また、接着層3を構成する接着剤において、複数の種類のエラストマーを含む場合、混合した結果、スチレン単位の含有量が上記の範囲内となるように調整してもよい。例えば、スチレン単位の含有量が30重量%である株式会社クラレ製のセプトン(商品名)のSepton4033と、スチレン単位の含有量が13重量%であるセプトン(商品名)のSepton2063とを重量比1対1で混合すると、接着剤に含まれるエラストマー全体に対するスチレン含有量は21〜22重量%となり、従って14重量%以上となる。また、例えば、スチレン単位が10重量%のものと60重量%のものとを重量比1対1で混合すると35重量%となり、上記の範囲内となる。本発明はこのような形態でもよい。また、接着層3を構成する接着剤に含まれる複数の種類のエラストマーは、全て上記の範囲内でスチレン単位を含み、かつ、上記の範囲内の重量平均分子量であることが最も好ましい。
【0125】
なお、光硬化性樹脂(例えば、UV硬化性樹脂)以外の樹脂を用いて接着層3を形成することが好ましい。光硬化性樹脂以外の樹脂を用いることで、接着層3の剥離又は除去の後に、基板1の微小な凹凸の周辺に残渣が残ることを防ぐことができる。特に、接着層3を構成する接着剤としては、あらゆる溶剤に溶解するものではなく、特定の溶剤に溶解するものが好ましい。これは、基板1に物理的な力を加えることなく、接着層3を溶剤に溶解させることによって除去可能なためである。接着層3の除去に際して、強度が低下した基板1からでさえ、基板1を破損させたり、変形させたりせずに、容易に接着層3を除去することができる。
【0126】
(ポリサルホン系樹脂)
接着層3を形成するための接着剤は、ポリサルホン系樹脂を含んでいてもよい。接着層3をポリサルホン系樹脂によって形成することにより、高温において積層体を処理しても、その後の工程において接着層を溶解し、基板からサポートプレートを剥離することが可能な積層体を製造することができる。接着層3がポリサルホン樹脂を含んでいれば、例えば、アニーリング等により積層体を300℃以上という高温で処理する高温プロセスにおいても、積層体を好適に用いることができる。
【0127】
ポリサルホン系樹脂は、下記一般式(3)で表される構成単位、および、下記一般式(4)で表される構成単位のうちの少なくとも1種の構成単位からなる構造を有している。
【化2】
(ここで、一般式(3)のR
1、R
2およびR
3、並びに一般式(4)中のR
1およびR
2は、それぞれ独立してフェニレン基、ナフチレン基およびアントリレン基からなる群より選択され、X’は、炭素数が1以上、3以下のアルキレン基である。)
ポリサルホン系樹脂は、式(3)で表されるポリサルホン構成単位および式(4)で表されるポリエーテルサルホン構成単位のうちの少なくとも一つを備えていることによって、基板1とサポートプレート2とを貼り付けた後、高い温度条件において基板1を処理しても、分解および重合等により接着層3が不溶化することを防止することができる積層体を形成することができる。また、ポリサルホン系樹脂は、上記式(3)で表されるポリサルホン構成単位からなるポリサルホン樹脂であれば、より高い温度に加熱しても安定である。このため、洗浄後の基板1に接着層に起因する残渣が発生することを防止することができる。
【0128】
ポリサルホン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、30,000以上、70,000以下の範囲内であることが好ましく、30,000以上、50,000以下の範囲内であることがより好ましい。ポリサルホン系樹脂の重量平均分子量(Mw)が、30,000以上の範囲内であれば、例えば、300℃以上の高い温度において用いることができる接着剤組成物を得ることができる。また、ポリサルホン系樹脂の重量平均分子量(Mw)が、70,000以下の範囲内であれば、溶剤によって好適に溶解することができる。つまり、溶剤によって好適に除去することができる接着剤組成物を得ることができる。
【0129】
(希釈溶剤)
接着層3を形成するときに使用する希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、イソノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素、炭素数4から15の分岐鎖状の炭化水素、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ナフタレン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン等の環状炭化水素、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジフェニルメンタン、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、テルピネン−1−オール、テルピネン−4−オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー、d−リモネン、l−リモネン、ジペンテン等のテルペン系溶剤;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい);ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル等の芳香族系有機溶剤等を挙げることができる。
【0130】
(その他の成分)
接着層3を構成する接着剤は、本質的な特性を損なわない範囲において、混和性のある他の物質をさらに含んでいてもよい。例えば、接着剤の性能を改良するための付加的樹脂、可塑剤、接着補助剤、安定剤、着色剤、熱重合禁止剤および界面活性剤等、慣用されている各種添加剤をさらに用いることができる。
【0131】
(3.4)分離層4
次に、分離層4とは、サポートプレート2を介して照射される光を吸収することによって変質する材料から形成されている層である。また、
図5(e)に示すように、基板1とサポートプレート2との間に設けられた隙間から積層体100の内部に向かって流体を噴射したとき、領域4a以外の領域における分離層4も破壊される。
【0132】
分離層4の厚さは、例えば、0.05μm以上、50μm以下の範囲内であることがより好ましく、0.3μm以上、1μm以下の範囲内であることがさらに好ましい。分離層4の厚さが0.05μm以上、50μm以下の範囲に収まっていれば、短時間の光の照射および低エネルギーの光の照射によって、分離層4に所望の変質を生じさせることができる。また、分離層4の厚さは、生産性の観点から1μm以下の範囲に収まっていることが特に好ましい。
【0133】
なお、積層体100において、分離層4とサポートプレート2との間に他の層がさらに形成されていてもよい。この場合、他の層は光を透過する材料から構成されていればよい。これによって、分離層4への光の入射を妨げることなく、積層体100に好ましい性質等を付与する層を、適宜追加することができる。分離層4を構成している材料の種類によって、用い得る光の波長が異なる。よって、他の層を構成する材料は、すべての光を透過させる必要はなく、分離層4を構成する材料を変質させ得る波長の光を透過させることができる材料から適宜選択し得る。
【0134】
また、分離層4は、光を吸収する構造を有する材料のみから形成されていることが好ましいが、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、光を吸収する構造を有していない材料を添加して、分離層4を形成してもよい。また、分離層4における接着層3に対向する側の面が平坦である(凹凸が形成されていない)ことが好ましく、これにより、分離層4の形成が容易に行なえ、かつ貼り付けにおいても均一に貼り付けることが可能となる。
【0135】
(フルオロカーボン)
分離層4は、フルオロカーボンからなっていてもよい。分離層4は、フルオロカーボンによって構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、サポートプレート2を持ち上げる等)ことによって、分離層4が破壊されて、サポートプレート2と基板1とを分離し易くすることができる。分離層4を構成するフルオロカーボンは、プラズマCVD(化学気相堆積)法によって好適に成膜することができる。
【0136】
フルオロカーボンは、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層4に用いたフルオロカーボンが吸収する範囲の波長の光を分離層に照射することにより、フルオロカーボンを好適に変質させ得る。なお、分離層4における光の吸収率は80%以上であることが好ましい。
【0137】
分離層4に照射する光としては、フルオロカーボンが吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザ、ルビーレーザ、ガラスレーザ、YVO
4レーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO
2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、又は、非レーザ光を適宜用いればよい。フルオロカーボンを変質させ得る波長としては、これに限定されるものではないが、例えば、600nm以下の範囲のものを用いることができる。
【0138】
(光吸収性を有している構造をその繰り返し単位に含んでいる重合体)
分離層4は、光吸収性を有している構造をその繰り返し単位に含んでいる重合体を含有していてもよい。該重合体は、光の照射を受けて変質する。該重合体の変質は、上記構造が照射された光を吸収することによって生じる。分離層4は、重合体の変質の結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失っている。よって、わずかな外力を加える(例えば、サポートプレート2を持ち上げる等)ことによって、分離層4が破壊されて、サポートプレート2と基板1とを分離し易くすることができる。
【0139】
光吸収性を有している上記構造は、光を吸収して、繰り返し単位として該構造を含んでいる重合体を変質させる化学構造である。該構造は、例えば、置換若しくは非置換のベンゼン環、縮合環又は複素環からなる共役π電子系を含んでいる原子団である。より詳細には、該構造は、カルド構造、又は上記重合体の側鎖に存在するベンゾフェノン構造、ジフェニルスルフォキシド構造、ジフェニルスルホン構造(ビスフェニルスルホン構造)、ジフェニル構造若しくはジフェニルアミン構造であり得る。
【0140】
上記構造が上記重合体の側鎖に存在する場合、該構造は以下の式によって表され得る。
【化3】
(式中、Rはそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、ハロゲン、水酸基、ケトン基、スルホキシド基、スルホン基又はN(R
4)(R
5)であり(ここで、R
4およびR
5はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である)、Zは、存在しないか、又は−CO−、−SO
2−、−SO−若しくは−NH−であり、nは0又は1〜5の整数である。)
また、上記重合体は、例えば、以下の式のうち、(a)〜(d)の何れかによって表される繰り返し単位を含んでいるか、(e)によって表されるか、又は(f)の構造をその主鎖に含んでいる。
【化4】
(式中、lは1以上の整数であり、mは0又は1〜2の整数であり、Xは、(a)〜(e)において上記の“化3”に示す式のいずれかであり、(f)において上記の“化3”に示す式のいずれかであるか、又は存在せず、Y
1およびY
2はそれぞれ独立して、−CO−又はSO
2−である。lは好ましくは10以下の整数である。)
上記の“化3”に示されるベンゼン環、縮合環および複素環の例としては、フェニル、置換フェニル、ベンジル、置換ベンジル、ナフタレン、置換ナフタレン、アントラセン、置換アントラセン、アントラキノン、置換アントラキノン、アクリジン、置換アクリジン、アゾベンゼン、置換アゾベンゼン、フルオリム、置換フルオリム、フルオリモン、置換フルオリモン、カルバゾール、置換カルバゾール、N−アルキルカルバゾール、ジベンゾフラン、置換ジベンゾフラン、フェナントレン、置換フェナントレン、ピレンおよび置換ピレンが挙げられる。例示した置換基がさらに置換基を有している場合、その置換基は、例えば、アルキル、アリール、ハロゲン原子、アルコキシ、ニトロ、アルデヒド、シアノ、アミド、ジアルキルアミノ、スルホンアミド、イミド、カルボン酸、カルボン酸エステル、スルホン酸、スルホン酸エステル、アルキルアミノおよびアリールアミノから選択される。
【0141】
上記の“化3”に示される置換基のうち、フェニル基を二つ有している5番目の置換基であって、Zが−SO
2−である場合の例としては、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,6−ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)スルホン、およびビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。
【0142】
上記の“化3”に示される置換基のうち、フェニル基を二つ有している5番目の置換基であって、Zが−SO−である場合の例としては、ビス(2,3−ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(5−クロロ−2,3−ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4−ジヒドロキシ−6−メチルフェニル)スルホキシド、ビス(5−クロロ−2,4−ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,5−ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,5−ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,3,4−トリヒドロキシ−6−メチルフェニル)−スルホキシド、ビス(5−クロロ−2,3,4−トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4,6−トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(5−クロロ−2,4,6−トリヒドロキシフェニル)スルホキシド等が挙げられる。
【0143】
上記の“化3”に示される置換基のうち、フェニル基を二つ有している5番目の置換基であって、Zが−C(=O)−である場合の例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,5,6’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−アミノ−2’−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ−2’−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ジエチルアミノ−2’−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ−4’−メトキシ−2’−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ−2’,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、および4−ジメチルアミノ−3’,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0144】
上記構造が上記重合体の側鎖に存在している場合、上記構造を含んでいる繰り返し単位の、上記重合体に占める割合は、分離層4の光の透過率が0.001%以上、10%以下になる範囲内にある。該割合がこのような範囲に収まるように重合体が調製されていれば、分離層4が十分に光を吸収して、確実かつ迅速に変質し得る。すなわち、積層体100からのサポートプレート2の除去が容易であり、該除去に必要な光の照射時間を短縮させることができる。
【0145】
上記構造は、その種類の選択によって、所望の範囲の波長を有している光を吸収することができる。例えば、上記構造が吸収可能な光の波長は、100nm以上、2,000nm以下の範囲内であることがより好ましい。この範囲内のうち、上記構造が吸収可能な光の波長は、より短波長側であり、例えば、100nm以上、500nm以下の範囲内である。例えば、上記構造は、好ましくはおよそ300nm以上、370nm以下の範囲内の波長を有している紫外光を吸収することによって、該構造を含んでいる重合体を変質させ得る。
【0146】
上記構造が吸収可能な光は、例えば、高圧水銀ランプ(波長:254nm以上、436nm以下)、KrFエキシマレーザ(波長:248nm)、ArFエキシマレーザ(波長:193nm)、F2エキシマレーザ(波長:157nm)、XeClレーザ(波長:308nm)、XeFレーザ(波長:351nm)若しくは固体UVレーザ(波長:355nm)から発せられる光、又はg線(波長:436nm)、h線(波長:405nm)若しくはi線(波長:365nm)等である。
【0147】
上述した分離層4は、繰り返し単位として上記構造を含んでいる重合体を含有しているが、分離層4はさらに、上記重合体以外の成分を含み得る。該成分としては、フィラー、可塑剤、およびサポートプレート2の剥離性を向上し得る成分等が挙げられる。これらの成分は、上記構造による光の吸収、および重合体の変質を妨げないか、又は促進する、従来公知の物質又は材料から適宜選択される。
【0148】
(無機物)
分離層4は、無機物からなっていてもよい。分離層4は、無機物によって構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、サポートプレート2を持ち上げる等)ことによって、分離層4が破壊されて、サポートプレート2と基板1とを分離し易くすることができる。
【0149】
上記無機物は、光を吸収することによって変質する構成であればよく、例えば、金属、金属化合物およびカーボンからなる群より選択される1種類以上の無機物を好適に用いることができる。金属化合物とは、金属原子を含む化合物を指し、例えば、金属酸化物、金属窒化物であり得る。このような無機物の例示としては、これに限定されるものではないが、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン、クロム、SiO
2、SiN、Si
3N
4、TiN、およびカーボンからなる群より選ばれる1種類以上の無機物が挙げられる。なお、カーボンとは炭素の同素体も含まれ得る概念であり、例えば、ダイヤモンド、フラーレン、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブ等であり得る。
【0150】
上記無機物は、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層4に用いた無機物が吸収する範囲の波長の光を分離層に照射することにより、上記無機物を好適に変質させ得る。
【0151】
無機物からなる分離層4に照射する光としては、上記無機物が吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザ、ルビーレーザ、ガラスレーザ、YVO
4レーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO
2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、又は、非レーザ光を適宜用いればよい。
【0152】
無機物からなる分離層4は、例えばスパッタ、化学蒸着(CVD)、メッキ、プラズマCVD、スピンコート等の公知の技術により、サポートプレート2上に形成され得る。無機物からなる分離層4の厚さは特に限定されず、使用する光を十分に吸収し得る膜厚であればよいが、例えば、0.05μm以上、10μm以下の範囲内の膜厚とすることがより好ましい。また、分離層4を構成する無機物からなる無機膜(例えば、金属膜)の両面又は片面に予め接着剤を塗布し、サポートプレート2および基板1に貼り付けてもよい。
【0153】
なお、分離層4として金属膜を使用する場合には、分離層4の膜質、レーザ光源の種類、レーザ出力等の条件によっては、レーザの反射や膜への帯電等が起こり得る。そのため、反射防止膜や帯電防止膜を分離層4の上下又はどちらか一方に設けることで、それらの対策を図ることが好ましい。
【0154】
(赤外線吸収性の構造を有する化合物)
分離層4は、赤外線吸収性の構造を有する化合物によって形成されていてもよい。該化合物は、赤外線を吸収することにより変質する。分離層4は、化合物の変質の結果として、赤外線の照射を受ける前の強度又は接着性を失っている。よって、わずかな外力を加える(例えば、支持体を持ち上げる等)ことによって、分離層4が破壊されて、サポートプレート2と基板1とを分離し易くすることができる。
【0155】
赤外線吸収性を有している構造、又は赤外線吸収性を有している構造を含む化合物としては、例えば、アルカン、アルケン(ビニル、トランス、シス、ビニリデン、三置換、四置換、共役、クムレン、環式)、アルキン(一置換、二置換)、単環式芳香族(ベンゼン、一置換、二置換、三置換)、アルコールおよびフェノール類(自由OH、分子内水素結合、分子間水素結合、飽和第二級、飽和第三級、不飽和第二級、不飽和第三級)、アセタール、ケタール、脂肪族エーテル、芳香族エーテル、ビニルエーテル、オキシラン環エーテル、過酸化物エーテル、ケトン、ジアルキルカルボニル、芳香族カルボニル、1,3−ジケトンのエノール、o−ヒドロキシアリールケトン、ジアルキルアルデヒド、芳香族アルデヒド、カルボン酸(二量体、カルボン酸アニオン)、ギ酸エステル、酢酸エステル、共役エステル、非共役エステル、芳香族エステル、ラクトン(β−、γ−、δ−)、脂肪族酸塩化物、芳香族酸塩化物、酸無水物(共役、非共役、環式、非環式)、第一級アミド、第二級アミド、ラクタム、第一級アミン(脂肪族、芳香族)、第二級アミン(脂肪族、芳香族)、第三級アミン(脂肪族、芳香族)、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、アンモニウムイオン、脂肪族ニトリル、芳香族ニトリル、カルボジイミド、脂肪族イソニトリル、芳香族イソニトリル、イソシアン酸エステル、チオシアン酸エステル、脂肪族イソチオシアン酸エステル、芳香族イソチオシアン酸エステル、脂肪族ニトロ化合物、芳香族ニトロ化合物、ニトロアミン、ニトロソアミン、硝酸エステル、亜硝酸エステル、ニトロソ結合(脂肪族、芳香族、単量体、二量体)、メルカプタンおよびチオフェノールおよびチオール酸等の硫黄化合物、チオカルボニル基、スルホキシド、スルホン、塩化スルホニル、第一級スルホンアミド、第二級スルホンアミド、硫酸エステル、炭素−ハロゲン結合、Si−A
1結合(A
1は、H、C、O又はハロゲン)、P−A
2結合(A
2は、H、C又はO)、又はTi−O結合であり得る。
【0156】
上記炭素−ハロゲン結合を含む構造としては、例えば、−CH
2Cl、−CH
2Br、−CH
2I、−CF
2−、−CF
3、−CH=CF
2、−CF=CF
2、フッ化アリール、および塩化アリール等が挙げられる。
【0157】
上記Si−A
1結合を含む構造としては、SiH、SiH
2、SiH
3、Si−CH
3、Si−CH
2−、Si−C
6H
5、SiO−脂肪族、Si−OCH
3、Si−OCH
2CH
3、Si−OC
6H
5、Si−O−Si、Si−OH、SiF、SiF
2、およびSiF
3等が挙げられる。Si−A
1結合を含む構造としては、特に、シロキサン骨格およびシルセスキオキサン骨格を形成していることが好ましい。
【0158】
上記P−A
2結合を含む構造としては、PH、PH
2、P−CH
3、P−CH
2−、P−C
6H
5、A
33−P−O(A
3は脂肪族又は芳香族)、(A
4O)
3−P−O(A
4はアルキル)、P−OCH
3、P−OCH
2CH
3、P−OC
6H
5、P−O−P、P−OH、およびO=P−OH等が挙げられる。
【0159】
上記構造は、その種類の選択によって、所望の範囲の波長を有している赤外線を吸収することができる。具体的には、上記構造が吸収可能な赤外線の波長は、例えば1μm以上、20μm以下の範囲内であり、2μm以上、15μm以下の範囲内をより好適に吸収することができる。さらに、上記構造がSi−O結合、Si−C結合およびTi−O結合である場合には、9μm以上、11μm以下の範囲内であり得る。なお、各構造が吸収できる赤外線の波長は当業者であれば容易に理解することができる。例えば、各構造における吸収帯として、非特許文献:SILVERSTEIN・BASSLER・MORRILL著「有機化合物のスペクトルによる同定法(第5版)−MS、IR、NMR、UVの併用−」(1992年発行)第146頁〜第151頁の記載を参照することができる。
【0160】
分離層4の形成に用いられる、赤外線吸収性の構造を有する化合物としては、上述のような構造を有している化合物のうち、塗布のために溶媒に溶解することができ、固化されて固層を形成することができるものであれば、特に限定されるものではない。しかしながら、分離層4における化合物を効果的に変質させ、サポートプレート2と基板1との分離を容易にするには、分離層4における赤外線の吸収が大きいこと、すなわち、分離層4に赤外線を照射したときの赤外線の透過率が低いことが好ましい。具体的には、分離層4における赤外線の透過率が90%より低いことが好ましく、赤外線の透過率が80%より低いことがより好ましい。
【0161】
一例を挙げて説明すれば、シロキサン骨格を有する化合物としては、例えば、下記化学式(5)で表される繰り返し単位および下記化学式(6)で表される繰り返し単位の共重合体である樹脂、あるいは下記化学式(5)で表される繰り返し単位およびアクリル系化合物由来の繰り返し単位の共重合体である樹脂を用いることができる。
【化5】
(化学式(6)中、R
6は、水素、炭素数10以下のアルキル基、又は炭素数10以下のアルコキシ基である。)
中でも、シロキサン骨格を有する化合物としては、上記化学式(5)で表される繰り返し単位および下記化学式(7)で表される繰り返し単位の共重合体であるt−ブチルスチレン(TBST)−ジメチルシロキサン共重合体がより好ましく、上記式(5)で表される繰り返し単位および下記化学式(7)で表される繰り返し単位を1:1で含む、TBST−ジメチルシロキサン共重合体がさらに好ましい。
【化6】
また、シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、例えば、下記化学式(8)で表される繰り返し単位および下記化学式(9)で表される繰り返し単位の共重合体である樹脂を用いることができる。
【化7】
(化学式(8)中、R
7は、水素又は炭素数1以上、10以下のアルキル基であり、化学式(9)中、R
8は、炭素数1以上、10以下のアルキル基、又はフェニル基である。)
シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、このほかにも、特開2007−258663号公報(2007年10月4日公開)、特開2010−120901号公報(2010年6月3日公開)、特開2009−263316号公報(2009年11月12日公開)、および特開2009−263596号公報(2009年11月12日公開)において開示されている各シルセスキオキサン樹脂を好適に利用することができる。
【0162】
中でも、シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、下記化学式(10)で表される繰り返し単位および下記化学式(11)で表される繰り返し単位の共重合体がより好ましく、下記化学式(10)で表される繰り返し単位および下記化学式(11)で表される繰り返し単位を7:3で含む共重合体がさらに好ましい。
【化8】
シルセスキオキサン骨格を有する重合体としては、ランダム構造、ラダー構造、および籠型構造があり得るが、何れの構造であってもよい。
【0163】
また、Ti−O結合を含む化合物としては、例えば、(i)テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、およびチタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート等のアルコキシチタン;(ii)ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、およびプロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等のキレートチタン;(iii)i−C
3H
7O−[−Ti(O−i−C
3H
7)
2−O−]
n−i−C
3H
7、およびn−C
4H
9O−[−Ti(O−n−C
4H
9)
2−O−]
n−n−C
4H
9等のチタンポリマー;(iv)トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、チタニウムステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジイソステアレート、および(2−n−ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン等のアシレートチタン;(v)ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン等の水溶性チタン化合物等が挙げられる。
【0164】
中でも、Ti−O結合を含む化合物としては、ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン(Ti(OC
4H
9)
2[OC
2H
4N(C
2H
4OH)
2]
2)が好ましい。
【0165】
上述した分離層4は、赤外線吸収性の構造を有する化合物を含有しているが、分離層4はさらに、上記化合物以外の成分を含み得る。該成分としては、フィラー、可塑剤、およびサポートプレート2の剥離性を向上し得る成分等が挙げられる。これらの成分は、上記構造による赤外線の吸収、および化合物の変質を妨げないか、又は促進する、従来公知の物質又は材料から適宜選択される。
【0166】
(赤外線吸収物質)
分離層4は、赤外線吸収物質を含有していてもよい。分離層4は、赤外線吸収物質を含有して構成されることにより、光を吸収することによって変質するようになっており、その結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、サポートプレート2を持ち上げる等)ことによって、分離層4が破壊されて、サポートプレート2と基板1とを分離し易くすることができる。
【0167】
赤外線吸収物質は、赤外線を吸収することによって変質する構成であればよく、例えば、カーボンブラック、鉄粒子、又はアルミニウム粒子を好適に用いることができる。赤外線吸収物質は、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層4に用いた赤外線吸収物質が吸収する範囲の波長の光を分離層4に照射することにより、赤外線吸収物質を好適に変質させ得る。
【0168】
(反応性ポリシルセスキオキサン)
分離層4は、反応性ポリシルセスキオキサンを重合させることにより形成することができ、これにより、分離層4は高い耐薬品性と高い耐熱性とを備えている。
【0169】
本明細書中において、反応性ポリシルセスキオキサンとは、ポリシルセスキオキサン骨格の末端にシラノール基、又は、加水分解することによってシラノール基を形成することができる官能基を有するポリシルセスキオキサンであり、当該シラノール基又はシラノール基を形成することができる官能基を縮合することによって、互いに重合することができるものである。また、反応性ポリシルセスキオキサンは、シラノール基、又は、シラノール基を形成することができる官能基を備えていれば、ランダム構造、籠型構造、ラダー構造等のシルセスキオキサン骨格を備えたものを採用することができる。
【0170】
また、反応性ポリシルセスキオキサンは、下記式(12)に示す構造を有していることがより好ましい。
【化9】
式(12)中、R”は、それぞれ独立して、水素および炭素数1以上、10以下のアルキル基からなる群より選択され、水素および炭素数1以上、5以下のアルキル基からなる群より選択されることがより好ましい。R”が、水素又は炭素数1以上、10以下のアルキル基であれば、分離層形成工程における加熱によって、式(12)によって表される反応性ポリシルセスキオキサンを好適に縮合させることができる。
【0171】
式(12)中、pは、1以上、100以下の整数であることが好ましく、1以上、50以下の整数であることがより好ましい。反応性ポリシルセスキオキサンは、式(12)で表される繰り返し単位を備えることによって、他の材料を用いて形成するよりもSi−O結合の含有量が高く、赤外線(0.78μm以上、1000μm以下)、好ましくは遠赤外線(3μm以上、1000μm以下)、さらに好ましくは波長9μm以上、11μm以下における吸光度の高い分離層4を形成することができる。
【0172】
また、式(12)中、R’は、それぞれ独立して、互いに同じか、又は異なる有機基である。ここで、Rは、例えば、アリール基、アルキル基、および、アルケニル基等であり、これらの有機基は置換基を有していてもよい。
【0173】
R’がアリール基である場合、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等を挙げることができ、フェニル基であることがより好ましい。また、アリール基は、炭素数1〜5のアルキレン基を介してポリシルセスキオキサン骨格に結合していてもよい。
【0174】
R’がアルキル基である場合、アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基を挙げることができる。また、Rがアルキル基である場合、炭素数は1〜15であることが好ましく、1〜6であることがより好ましい。また、Rが、環状のアルキル基である場合、単環状又は二〜四環状の構造をしたアルキル基であってもよい。
【0175】
R’がアルケニル基である場合、アルキル基の場合と同様に、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルケニル基を挙げることができ、アルケニル基は、炭素数が2〜15であることが好ましく、2〜6であることがより好ましい。また、Rが、環状のアルケニル基である場合、単環状又は二〜四環状の構造をしたアルケニル基であってもよい。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、およびアリル基等を挙げることができる。
【0176】
また、R’が有し得る置換基としては、水酸基およびアルコキシ基等を挙げることができる。置換基がアルコキシ基である場合、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキルアルコキシ基を挙げることができ、アルコキシ基における炭素数は1〜15であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。
【0177】
また、一つの観点において、反応性ポリシルセスキオキサンのシロキサン含有量は、70モル%以上、99モル%以下であることが好ましく、80モル%以上、99モル%以下であることがより好ましい。反応性ポリシルセスキオキサンのシロキサン含有量が70モル%以上、99モル%以下であれば、赤外線(好ましくは遠赤外線、さらに好ましくは波長9μm以上、11μm以下の光)を照射することによって好適に変質させることができる分離層を形成することができる。
【0178】
また、一つの観点において、反応性ポリシルセスキオキサンの重量平均分子量(Mw)は、500以上、50,000以下であることが好ましく、1,000以上、10,000以下であることがより好ましい。反応性ポリシルセスキオキサンの重量平均分子量(Mw)が500以上、50,000以下であれば、溶剤に好適に溶解させることができ、支持体上に好適に塗布することができる。
【0179】
反応性ポリシルセスキオキサンとして用いることができる市販品としては、例えば、小西化学工業株式会社製のSR−13、SR−21、SR−23およびSR−33等を挙げることができる。
【0180】
<4.積層体の変形例>
上記実施形態1では、サポートプレート2と接着層3との間に分離層4がある積層体100を用いている。しかしながら、機械的な力を加えることにより、剥離することかできる程度の接着力を有している接着層の採用している場合には、分離層が無く、接着層が基板とサポートプレートとに直接接着している積層体であっても、実施形態1において説明した支持体分離装置を用いてサポートプレートを分離することも可能である。
【0181】
そのような、機械的な力を加えることで剥離することができる程度の接着力を有している接着層を形成することかできる接着剤としては、例えば、感圧性接着剤、可剥離性接着剤等を挙げることができる。感圧性接着剤(粘着剤)としては、例えば、ラテックスゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム等の合成ゴムやタッキファイア樹脂等を含んでいるような、公知の感圧性接着剤を挙げることができる。また、可剥離性接着剤としては、可剥離性を有していればよく、例えば、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、又は熱硬化性樹脂等に、ワックスやシリコーン等の離型剤を配合することにより接着力を調整した接着剤であってもよい。また、熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂等を含み、これらの樹脂を硬化させることにより可剥離性を発現するような、硬化型の接着剤であってもよい。また、このような、剥離可能な接着剤は、蜜蝋やワックス等の接着力の低い熱可塑性樹脂を主たる成分として含んでなる接着剤であり得る。
【0182】
〔実施形態2〕
上記実施形態1では、
図6に示すように4箇所に設けた気体噴出部24の全てから同時に気体を噴出させる構成を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本実施形態2では、気体噴出に関する別の態様について
図7を用いて説明する。
【0183】
図7は、本実施形態2の構成を示しており、気体噴出部24から気体を噴出したときの模式図を、積層体100を上面視した状態において示す図である。なお、
図7は、上記実施形態1の
図6に対応する図である。
【0184】
本実施形態2では、気体噴出部24から気体を噴出する工程において、まず
図7(a)に示すように、位置(i)にある気体噴出部24から気体を噴出し、このとき位置(ii)〜(iv)にある気体噴出部24からは気体を噴出しない。ここでは、位置(i)にある気体噴出部24から例えば3秒間、0.5L/分の気体を隙間7に吹き付ける。
【0185】
続いて、気体の噴出箇所を切り替えて、
図7(b)に示すように、位置(iv)にある気体噴出部24からの気体の噴出を開始し、位置(i)にある気体噴出部24からの気体噴出を停止する。このとき、位置(ii)および(iii)にある気体噴出部24からは気体を噴出しない。ここでは、位置(iv)にある気体噴出部24から例えば3秒間、0.5L/分の気体を隙間7に吹き付ける。
【0186】
続いて、気体の噴出箇所を切り替えて、
図7(c)に示すように、位置(i)および(iv)にある気体噴出部24からの気体の噴出を開始する。このとき、位置(ii)および(iii)にある気体噴出部24からは気体を噴出しない。ここでは、位置(i)および(iv)にある気体噴出部24から例えば5秒間、0.5L/分の気体を隙間7に吹き付ける。
【0187】
以上の工程を経ることにより、サポートプレート2を積層体100から分離してもよい。
【0188】
以上の気体噴出箇所の切り換えは、上記実施形態1の支持体分離装置10の図示しない制御装置において制御して行えばよい。
【0189】
〔実施形態3〕
上記実施形態1では、
図3(c)に示すように、各クランプ23において傾斜面23bが二つあってその間に噴出口27を配設した構成を説明した。しかしながら、本発明において噴出口27の配設位置はこれに限定されるものではない。噴出口27は、傾斜面23bの近傍に配設されていればよい。これについて、
図8を用いて説明する。
【0190】
図8は、本実施形態3の構成を示す図である。本実施形態3では、傾斜面23bおよび噴出口27の配設形態が、実施形態1のそれと異なる点以外は、実施形態1と同じ構成を有している。
【0191】
具体的には、
図8に示すように、本実施形態3においては、対峙面23aの下端辺(底辺)に沿って、その中間部分に一つの傾斜面23bが形成されており、この傾斜面23bを挟むようにして、噴出口27が配設されている。
【0192】
このように、噴出口27の配設位置を傾斜面23bの近傍とすることにより、サポートプレート2の外周端部において、プレート部21に対向する面の裏面側に位置する面取り部位2aに傾斜面23bを当接させたときに、サポートプレート2の外周部分に形成される隙間に効果的に気体を噴出することができ、サポートプレート2の外周部分を好適に把持することができる。
【0193】
〔実施形態4〕
上記実施形態1では、各クランプ23に設けられた噴出口27に気体噴出部24が接続された態様であるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、吸着パッド22がサポートプレート2の上面の外周部分に吸着して隙間7が維持されている状態において、気体を噴出する一つのノズルが積層体100の周縁部分を周方向に沿って移動して、隙間7に気体を噴出する態様であってもよい。
【0194】
〔実施形態5〕
上記実施形態1では、クランプ23および気体噴出部24が、一体的に昇降し、且つ一体的にスライド移動する構成となっている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、クランプ23および気体噴出部24の夫々が、駆動機構を備え、
図5(a)〜
図5(e)に示す各工程を実施することも可能である。
【0195】
なお、夫々が駆動機構を備えている場合、
図5(e)では、気体噴出部24を気体噴出に好ましい位置に移動させてから、気体噴出部24から気体を噴射することも可能である。これにより、より効果的に隙間を広げることができる。
【0196】
〔その他の実施形態〕
上述の実施形態において、積層体の上面視における形状は、円形状であるが、本発明に係る支持体分離装置、および支持体分離方法により分離する積層体の上面視における形状(つまり、基板および支持体の上面視における形状)は、長方形、直方形等の多角形状であってもよい。本発明に係る支持体分離装置、および支持体分離方法は、基板と支持体との間に流体を噴出することにより、基板と支持体とを分離することができればよく、積層体の上面視における形状は限定されない。よって、本発明に係る支持体分離装置、および支持体分離方法は、半導体素子(電子部品)を含む半導体パッケージ(半導体装置)して知られる、WLP(Wafer Level Package)に限定されず、PLP(Panel Level Package)にも好適に応用することができる。
【0197】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。