(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記前段レンズ部と前記後段レンズ部との間に設けられ、前記前段レンズ部と前記後段レンズ部とを嵌合によって接続する嵌合部をさらに備えたことを特徴とする請求項5記載のテレセントリック光学装置。
前記嵌合部は、前記光通過領域に設けられ前記前段レンズ部および前記後段レンズ部の光軸に直交する平面を有することを特徴とする請求項6記載のテレセントリック光学装置。
前記中間領域の光透過率は、前記前段レンズ部または前記後段レンズ部を構成する領域の光透過率よりも低いことを特徴とする請求項8記載のテレセントリック光学装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、物体側および像側の両方にテレセントリックレンズを設け、焦点位置に絞り(テレセントリック絞り)を設ける構成では、構成部品の点数が増加するとともに、各部を光学的に高精度に位置合わせする必要がある。正確な位置合わせができないと、テレセントリシティの劣化を招いたり、像の鮮鋭度の劣化を起こしたりするという問題が生じる。
【0006】
本発明は、部品点数の増加を抑制しつつ高精度で光軸を合わせることができるテレセントリック光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のテレセントリック光学装置は、物体側に設けられた第1テレセントリックレンズ面と、像側に設けられ、第1テレセントリックレンズ面と共通の焦点位置を有する第2テレセントリックレンズ面と、第1テレセントリックレンズ面と第2テレセントリックレンズ面との間において、焦点位置を中心とした光通過領域よりも外側である外側領域に設けられ、外側領域に入射された光を結像に寄与させないよう光路を変更する光路変更部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、焦点位置を中心とした光通過領域よりも外側である外側領域に光路変更部が設けられているため、焦点位置に合わせてテレセントリック絞りを設けることなく、外側領域に入射された光を結像に寄与させないようにすることができる。これにより、光通過領域の外側の不要な光が混入することを防止して、テレセントリシティ良好な光を得ることができる。
【0009】
本発明のテレセントリック光学装置において、光路変更部は、光路を外側に屈折させる屈折面を有していてもよい。これにより、外側領域に入射された光を外側に屈折させることができ、光通過領域の外側の不要な光が混入することを防止することができる。
【0010】
本発明のテレセントリック光学装置において、光路変更部はレンズ曲面を有していてもよい。これにより、光路変更部を通過する光はレンズ曲面の光軸方向に集光され、光通過領域の外側の不要な光が混入することを防止することができる。
【0011】
本発明のテレセントリック光学装置において、光路変更部は、外側領域に入射された光を拡散させる粗面化された面を有していてもよい。これにより、外側領域に入射された光を拡散させることができ、光通過領域の外側の不要な光が混入することを防止することができる。
【0012】
本発明のテレセントリック光学装置において、第1テレセントリックレンズ面を含む前段レンズ部と、第2テレセントリックレンズ面を含む後段レンズ部と、を有し、光路変更部は、前段レンズ部および後段レンズ部の少なくとも一方に設けられていてもよい。これにより、前段レンズ部と後段レンズ部との間に光路変更部が設けられ、2つのレンズ部を組み合わせるだけで両側にテレセントリックレンズ面を有する光学装置を構成することができる。
【0013】
本発明のテレセントリック光学装置において、前段レンズ部と後段レンズ部との間に設けられ、前段レンズ部と後段レンズ部とを嵌合によって接続する嵌合部をさらに備えていてもよい。これにより、前段レンズ部と後段レンズ部とが嵌合によって位置決めされ、別個の部品であっても光軸合わせを簡単かつ正確に行うことができる。
【0014】
本発明のテレセントリック光学装置において、嵌合部は、光通過領域に設けられ前段レンズ部および後段レンズ部の光軸に直交する平面を有していてもよい。これにより、嵌合部を通過する光が屈折せずに進むことになる。
【0015】
本発明のテレセントリック光学装置において、前段レンズ部と後段レンズ部との間には中間領域が設けられ、光路変更部は、前段レンズ部または後段レンズ部を構成する領域の屈折率と、中間領域の屈折率との差に応じて光路を屈折させてもよい。これにより、光路変更部を通過する光は屈折率差に応じて外側に屈折することになる。
【0016】
本発明のテレセントリック光学装置において、中間領域の光透過率は、前段レンズ部または後段レンズ部を構成する領域の光透過率よりも低くなっていてもよい。これにより、光路変更部を通過する光の量を低減させることができる。
【0017】
本発明のテレセントリック光学装置において、光通過領域における前段レンズ部と後段レンズ部との間に隙間が設けられていてもよい。これにより、前段レンズ部と後段レンズ部との間の光通過領域に干渉縞を発生させるような微小な間隙が生じることが無くなる。
【0018】
本発明のテレセントリック光学装置において、前段レンズ部および後段レンズ部のそれぞれの外側領域に設けられた基準穴と、基準穴に挿入される基準棒とを含む位置決め機構をさらに備え、位置決め機構によって、前段レンズ部および後段レンズ部の光軸方向および光軸と直交する方向の位置決めが成されてもよい。これにより、前段レンズ部と後段レンズ部との光軸方向および光軸と直交する方向の確実な位置決めが行われる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0021】
〔第1実施形態〕
図1(a)および(b)は、第1実施形態に係るテレセントリック光学装置を例示する模式断面図である。
図1(a)には組み立て状態が表され、
図1(b)には分離した状態が表される。
図1(a)に示すように、本実施形態に係るテレセントリック光学装置1は、物体側に配置される前段レンズ部10と、像側に配置される後段レンズ部20とを備える。前段レンズ部10および後段レンズ部20のそれぞれは、略円筒形である。前段レンズ部10の物体側には第1テレセントリックレンズ面11が設けられ、後段レンズ部20の像側には第2テレセントリックレンズ面21が設けられる。前段レンズ部10および後段レンズ部20は、光軸AXに沿って連結されている。
【0022】
テレセントリック光学装置1では、前段レンズ部10に設けられた第1テレセントリックレンズ面11の焦点位置f1と、後段レンズ部20に設けられた第2テレセントリックレンズ面21の焦点位置f2とが一致している。これにより、物体との距離が光軸AX方向に変化しても、光軸AXと直交する方向に像の大きさが変化しない光学系となる。
【0023】
本実施形態に係るテレセントリック光学装置1では、第1テレセントリックレンズ面11と第2テレセントリックレンズ面21との間において、焦点位置f1、f2を中心とした光通過領域TRが設けられる。光通過領域TRは、光軸AX上の焦点位置f1、f2を中心とした所定半径の領域である。第1テレセントリックレンズ面11から入射した光のうち光通過領域TRを通過する光C1が第2テレセントリックレンズ面21から出射される。
【0024】
テレセントリック光学装置1において、第1テレセントリックレンズ面11と第2テレセントリックレンズ面21との間における光通過領域TRよりも外側の外側領域ORには、光路変更部30が設けられる。光路変更部30は、外側領域ORに入射された光を結像に寄与させないよう光路を変更する役目を果たす。本実施形態では、光路変更部30は、光路を外側に屈折させる屈折面31を有する。
【0025】
これにより、第1テレセントリックレンズ面11から入射した光のうち光路変更部30から出射される光C2は、屈折面31によって外側(光軸AXから離れる側)に屈折される。
【0026】
ここで、屈折面31の形状は、レンズ形状(球面、非球面、フレネルレンズ形状等を含む)、平面形状(光軸AXに対して傾斜する平面等を含む)、粗面形状など、光路を変更できる形状であれば種々の態様を採用することができる。
【0027】
テレセントリック光学装置1において、前段レンズ部10と後段レンズ部20との間、すなわち屈折面31と後段レンズ部20との間には中間領域15が設けられる。
図1(a)に示す例では、中間領域15は空間を有する。空間が設けられていることで、屈折面31と空間との光の屈折率差に応じて光路が屈折することになる。
【0028】
このように、屈折面31の形状や、屈折面31と中間領域15との屈折率差によって光路が外側に屈折されるため、第1テレセントリックレンズ面11から入射した光のうち、光路変更部30に向かう光C2は光軸AXから離れるよう屈折され、光通過領域TRに向かう光C1のみが第2テレセントリックレンズ面21から出射されることになる。
【0029】
テレセントリック光学装置1において、前段レンズ部10と後段レンズ部20との間には嵌合部40が設けられる。
図1(b)に示すように、嵌合部40は、凹部45と凸部46とが嵌合する部分である。凹部45は、前段レンズ部10に設けられ、凸部46は後段レンズ部20に設けられる。なお、凹部45が後段レンズ部20に設けられ、凸部46が前段レンズ部10に設けられていてもよい。
【0030】
この凹部45と凸部46とが嵌合することによって、前段レンズ部10と後段レンズ部20との位置合わせが行われる。この嵌合部40の位置は、テレセントリック光学装置1における光通過領域TRの位置と対応している。凹部45と凸部46とが嵌合して互いに接触する部分には、平面45aおよび46aが設けられる。平面45aおよび46aは、光軸AXと直交する面である。平面45aは凹部45の底面であり、平面46aは凸部46の突出面である。凹部45と凸部46とは、平面45aおよび46aが互いに当接する位置まで嵌め込まれる。
【0031】
図2(a)および(b)は、前段レンズ部および後段レンズ部の正面図である。
図2(a)には前段レンズ部10を光軸AXに沿って凹部45側から見た正面図が表され、
図2(b)には後段レンズ部20を光軸AXに沿って凸部46側から見た正面図が表される。
図2(a)に示すように、前段レンズ部10の中央には凹部45が設けられる。凹部45は内径D1を有する。凹部45の周辺には光路変更部30の屈折面31が設けられる。
【0032】
図2(b)に示すように、後段レンズ部20の中央には凸部46が設けられる。凸部46は外径D2を有する。凸部46の外径D2および凹部45の内径D1は、凸部46と凹部45との互いの位置合わせが固定される嵌め合い寸法に設けられる。
【0033】
前段レンズ部10および後段レンズ部20は、例えばガラスモールドやプラスチックモールドによって成形される。前段レンズ部10の凹部45や後段レンズ部20の凸部46が型成形によって製造されることから、これらを嵌合によって組み合わせることで、光軸AXを基準にした前段レンズ部10および後段レンズ部20の正確な位置合わせを容易に行うことができる。
【0034】
このような構成を備えたテレセントリック光学装置1によれば、焦点位置f1、f2を中心とした光通過領域TRよりも外側である外側領域ORに光路変更部30が設けられているため、焦点位置f1、f2に合わせてテレセントリック絞りを設けることなく、光通過領域TRの外側の光を光路の外側に屈折させることができる。すなわち、前段レンズ部10および後段レンズ部20を嵌合によって連結するだけで、テレセントリック絞りを設けることなく、光通過領域TRの外側の不要な光を除去し、テレセントリシティ良好な光を得ることができる。
【0035】
〔第2実施形態〕
図3(a)および(b)は、第2実施形態に係るテレセントリック光学装置を例示する模式断面図である。
図3(a)に示すテレセントリック光学装置1Bにおいては、光路変更部30に粗面化された面(粗面32)が設けられている。粗面32は、光路変更部30の後段レンズ部20と対向する面であり、光路変更部30に入射された光C2を拡散させる。これにより、光通過領域TRの外側の不要な光が後段レンズ部20に混入することを防止することができる。
なお、
図3(a)の図示では、粗面32は光軸AXに直交する平面が粗面化されており、入射位置に応じて光C2を様々な方向に屈折させる。このため、前述の屈折面31のように光路を外側にのみ屈折させるようにできていないが、光路を外側に屈折させる屈折面31そのものを粗面化してもよい。
【0036】
図3(b)に示すテレセントリック光学装置1Cにおいては、前段レンズ部10と後段レンズ部20との間に埋め込み部50が設けられる。埋め込み部50には、中間領域15に、前段レンズ部10の光透過率よりも低い光透過率の材料(低透過率材料)が埋め込まれている。光透過率の非常に低い材料を埋め込むことで、埋め込み部50は遮光膜となる。これにより、光路変更部30を通過する光の量が低減され、光通過領域TRの外側の不要な光が後段レンズ部20に混入することを防止することができる。
なお、
図3(b)の図示では、光路変更部30と埋め込み部50との境界面33が直線(平面)で現されているが、屈折面31あるいは粗面32としてもよい。
【0037】
〔第3実施形態〕
図4(a)および(b)は、第3実施形態に係るテレセントリック光学装置を例示する模式断面図である。
第3実施形態に係るテレセントリック光学装置1Dおよび1Eは、前段レンズ部10および後段レンズ部20を一体化した構成である。
図4(a)に示すテレセントリック光学装置1Dでは、一体化された前段レンズ部10および後段レンズ部20の間に光路変更部30が設けられる。光路変更部30の前段レンズ部10の側の面は粗面化されている。さらに光路変更部30の後段レンズ部20の側の面も粗面化されている。
【0038】
テレセントリック光学装置1Dを製造するには、一端側に第1テレセントリックレンズ面11を備え、他端側に第2テレセントリックレンズ面21を備えた略円筒型の部材をガラスモールドやプラスチックモールドで形成し、この部材の中央部の外周に切れ込みを入れる。この切れ込みを入れることで空間の中間領域15が形成されるとともに光路変更部30が形成される。切れ込みを入れる際に用いるブレードの表面の粗さによって、光路変更部30の両面の粗面化が行われる。
【0039】
図4(b)に示すテレセントリック光学装置1Eでは、一体化された前段レンズ部10および後段レンズ部20の間に埋め込み部50が設けられる。埋め込み部50には、中間領域15に、前段レンズ部10の光透過率よりも低い光透過率の材料(低透過率材料)が埋め込まれている。これにより、光路変更部30を通過する光の量が低減される。
【0040】
テレセントリック光学装置1Eを製造するには、一端側に第1テレセントリックレンズ面11を備え、他端側に第2テレセントリックレンズ面21を備えた略円筒型の部材をガラスモールドやプラスチックモールドで形成し、この部材の中央部の外周に途中まで切れ込みを入れる。この切れ込みを入れることで空間の中間領域15が形成される。そして、中間領域15内に低透過率材料を埋め込むことで埋め込み部50を形成する。
【0041】
図4(a)および(b)に示したいずれのテレセントリック光学装置1Dおよび1Eでも、前段レンズ部10および後段レンズ部20が一体化されているため、両者の光軸合わせが不要である。また、部品点数を少なくすることができる。
【0042】
〔第4実施形態〕
図5(a)〜(c)は、第4実施形態に係るテレセントリック光学装置を例示する模式斜視図である。
本実施形態に係るテレセントリック光学装置1Fは、複数のレンズ部が並ぶレンチキュラー型である。テレセントリック光学装置1Fでは、4つのシリンドリカルレンズが並ぶ構成である。
【0043】
前段レンズ部10には4つのシリンドリカルレンズに対応して4つの第1テレセントリックレンズ面11が設けられ、後段レンズ部20には4つのシリンドリカルレンズに対応して4つの第2テレセントリックレンズ面21が設けられる。
【0044】
図5(a)〜(c)では、テレセントリック光学装置1Fの製造方法を順に示している。
先ず、
図5(a)に示すように、前段レンズ部10および後段レンズ部20をそれぞれガラスモールドやプラスチックモールドによって形成する。前段レンズ部10および後段レンズ部20の各シリンドリカルレンズに対応する部分には、レンズ長手方向に延びる凸状部12および22が設けられる。
【0045】
次に、
図5(b)に示すように、前段レンズ部10および後段レンズ部20の互いの凸状部12および22を突き当てるようにして両者を重ね合わせる。前段レンズ部10および後段レンズ部20は接着剤で固定されたり、図示しない保持部によって固定されたりする。前段レンズ部10および後段レンズ部20の互いに位置合わせは、凸状部12および22の位置関係によって決定することができる。なお、図示しないマークや凹凸によって位置合わせを行ってもよい。
【0046】
前段レンズ部10および後段レンズ部20の互いの凸状部12および22が突き当てられることで、前段レンズ部10と後段レンズ部20との間に中間領域15の隙間が発生する。
【0047】
次に、
図5(c)に示すように、中間領域15の隙間に低透過率材料を埋め込み、埋め込み部50を形成する。これにより、テレセントリック光学装置1Fが完成する。
【0048】
このようなレンチキュラー型のテレセントリック光学装置1Fにおいても、テレセントリック絞りを設けることなく、簡単な構成でテレセントリシティ良好な光学装置を提供することができる。
【0049】
なお、
図5(a)〜(c)に示す前段レンズ部10および後段レンズ部20では、凸状部12および22を備える例を説明したが、
図1に示すような凹部45および凸部46による嵌合部40によって前段レンズ部10および後段レンズ部20を嵌め合わせてもよい。
【0050】
〔第5実施形態〕
図6は、第5実施形態に係るテレセントリック光学装置を例示する模式斜視図である。
図6に示すように、第5実施形態に係るテレセントリック光学装置1Gは、複数のレンズ部が並ぶレンチキュラー型である。テレセントリック光学装置1Gでは、4つのシリンドリカルレンズが並ぶ構成である。
【0051】
テレセントリック光学装置1Gでは、複数の第1テレセントリックレンズ面11の間、および複数の第2テレセントリックレンズ面21の間に光吸収部51が設けられる。また、複数の光路変更部30のそれぞれに設けられた屈折面31はレンズ面になっており、屈折面31を通過した光を光吸収部51に集光するようになっている。このような構成により、各々の光路変更部30で進路を変更された光は光吸収部51で吸収され、その結果、隣りの第2テレセントリックレンズ面21には再入射しない。
【0052】
〔第6実施形態〕
図7(a)および(b)は、第6実施形態に係るテレセントリック光学装置を例示する模式断面図である。
図7(a)には組み立て状態が表され、
図7(b)には分離した状態が表される。
テレセントリック光学装置1Hでは、前段レンズ部10と後段レンズ部20との間に設けられる嵌合部40として、前段レンズ部10および後段レンズ部20のそれぞれに凹部451/452および凸部461/462が設けられている。
【0053】
前段レンズ部10に設けられる凹部451と後段レンズ部20に設けられる凹部452とは同じ形状、同じ大きさになっている。また、前段レンズ部10に設けられる凸部461と後段レンズ部20に設けられる凸部462とは同じ形状、同じ大きさになっている。すなわち、前段レンズ部10および後段レンズ部20は同じ形状になっている。前段レンズ部10と後段レンズ部20とを嵌合する場合には、光軸AXを中心に一方を他方に対して180度回転させ、凹部451と凸部462、凹部452と凸部461を向かい合わせにして嵌合する。これにより、テレセントリック光学装置1Hが構成される。
【0054】
本実施形態に係るテレセントリック光学装置1Hでは、前段レンズ部10および後段レンズ部20が同じ形状になっているため、1つのモールド型によって前段レンズ部10および後段レンズ部20を形成することができる。
【0055】
〔第7実施形態〕
図8〜
図10は、第7実施形態に係るテレセントリック光学装置を例示する模式断面図である。
第7実施形態に係るテレセントリック光学装置1I、1Jおよび1Kは、前段レンズ部10と後段レンズ部20とを嵌合部40を用いることなく組み合わせた構成である。
【0056】
ここで、凹部45を有する前段レンズ部10や凸部46を有する後段レンズ部20が成形されたときに、凹部45の平面45aと凸部46の平面46aとが完全な平面にならず、お互いに異なる形状の微小な凹凸がそれぞれの面に生じている場合がある。それらの平面45aと平面46aとが当接すると、当接面に微小な間隙が出来てしまう。そして、その当接面は光通過領域TRでもあるので、光C1が通過すると微小な間隙によって干渉縞が生じてしまい、光C1の光強度の減衰をもたらしてしまう可能性がある。そこで、
図8〜
図10に示すテレセントリック光学装置1I、1Jおよび1Kでは、前段レンズ部10と後段レンズ部20とを嵌合部40を用いることなく組み合わせている。
【0057】
図8に示すテレセントリック光学装置1Iは、
図1(a)および(b)に示すテレセントリック光学装置1の嵌合部40が設けられていない構成である。
図9に示すテレセントリック光学装置1Jは、
図3(a)に示すテレセントリック光学装置1Bの嵌合部40が設けられていない構成である。
図10に示すテレセントリック光学装置1Kは、
図9に示すテレセントリック光学装置1Jの後段レンズ部20にも粗面32が設けられた構成である。
【0058】
これらのテレセントリック光学装置1I、1Jおよび1Kにおいて、嵌合部40によらず前段レンズ部10と後段レンズ部20とを組み合わせるには、次のような位置決め機構を用いている。すなわち、前段レンズ部10の外側領域ORよりもさらに外側に基準穴α1を設け、後段レンズ部20の外側領域ORよりもさらに外側に基準穴α2を設け、これらの基準穴α1およびα2に基準棒βを挿入する。これにより前段レンズ部10と後段レンズ部20との位置決め機構が構成される。この位置決め機構によって、前段レンズ部10および後段レンズ部20の光軸AXに沿った方向および光軸AXと直交する方向の位置決めが成されるとともに、光通過領域TRにおける前段レンズ部10と後段レンズ部20との間に一定の隙間が設けられる。
【0059】
また、基準棒βの途中には、基準穴α1、α2よりも太い部分Pが設けられる。この部分Pの厚みによって前段レンズ部10と後段レンズ部20との距離が決まる(光軸AX方向の位置決め)。この部分Pの厚みは、前段レンズ部10と後段レンズ部20の焦点位置が一致するように決められる。
【0060】
このような位置決め機構によれば、前段レンズ部10と後段レンズ部20との間の光通過領域TRに干渉縞を発生させるような微小な間隙が生じることが無くなり、かつ、外側領域ORに設けられている光路変更部30の屈折面31によって不要な光を排除することができる。
【0061】
〔適用例〕
図11および
図12は、適用例を示す模式図である。
図11および
図12には、リニアスケール100に本実施形態に係るテレセントリック光学装置1を適用した例が示される。
図11に示すように、リニアスケール100は、検出ユニット110と、スケール120と、を備える。スケール120は、測定基準線MLに沿って配置される複数の測定格子121を備える。測定格子121は、例えばスリットである。検出ユニット110には制御部130が接続される。リニアスケール100では、検出ユニット110とスケール120との測定基準線MLに沿った相対的な位置関係を検出する。検出ユニット110で取り込んだ信号は制御部130に送られ、検出ユニット110の測定基準線MLに対する位置の演算が行われる。
【0062】
図12には、検出ユニット110の構成が示される。検出ユニット110には、受光部112および本実施形態に係るテレセントリック光学装置1が設けられる。リニアスケール100では、発光部111から出射した光の測定格子121での透過光をテレセントリック光学装置1を介して受光部112で受光し、受光量変化を検出することで変位量の測定を行う。
【0063】
このようなリニアスケール100の検出ユニット110の光学系として本実施形態に係るテレセントリック光学装置1を用いることで、検出ユニット110の光学系の構成を簡素化できるとともに、良好なテレセントリシティによって精度の高い測定を行うことが可能になる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、部品点数の増加を抑制しつつ高精度で光軸を合わせることができるテレセントリック光学装置を提供することが可能になる。
【0065】
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、上記においては光路変更部30が前段レンズ部10に設けられた例を示したが、光路変更部30は後段レンズ部20に設けられていてもよいし、前段レンズ部10および後段レンズ部20の両方に設けられていてもよい。また、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。