特許第6696411号(P6696411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6696411ピペリジン誘導体、液晶組成物および液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6696411
(24)【登録日】2020年4月27日
(45)【発行日】2020年5月20日
(54)【発明の名称】ピペリジン誘導体、液晶組成物および液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 211/46 20060101AFI20200511BHJP
   C07D 211/94 20060101ALI20200511BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20200511BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20200511BHJP
【FI】
   C07D211/46CSP
   C07D211/94
   G02F1/13 500
   C09K19/54 C
【請求項の数】17
【全頁数】71
(21)【出願番号】特願2016-229119(P2016-229119)
(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公開番号】特開2017-105762(P2017-105762A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2019年5月31日
(31)【優先権主張番号】特願2015-236621(P2015-236621)
(32)【優先日】2015年12月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後藤 泰行
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝弘
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−507607(JP,A)
【文献】 特開2007−137921(JP,A)
【文献】 特開2014−025025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D201/00−521/00
G02F 1/13
C09K 19/00− 19/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物。


式(1)において、
、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から4のアルキルであり、そしてRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;
環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2,5−ジイル、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−3,6−ジイル、3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−1,3−ジイル、ナフタレン−1,4−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−1,6−ジイル、ナフタレン−1,7−ジイル、ナフタレン−1,8−ジイル、ナフタレン−2,3−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、またはナフタレン−2,7−ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から5のアルキル、炭素数1から5のアルコキシ、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルで置き換えられてもよく、そして1つの水素は式(P−1)で表される一価基で置き換えられてもよく;


式(P−1)において、
、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から4のアルキルであり、そしてRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;
は、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;
式(1)において、
およびZは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−S−、−CO−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;
aは、0、1、2、または3である。
【請求項2】
式(1)において、
、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から4のアルキルであり、そしてRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;
環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2,5−ジイル、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−3,6−ジイル、3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−1,3−ジイル、ナフタレン−1,4−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−1,6−ジイル、ナフタレン−1,7−ジイル、ナフタレン−1,8−ジイル、ナフタレン−2,3−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、またはナフタレン−2,7−ジイル、であり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から5のアルキル、炭素数1から5のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルで置き換えられてもよく;
およびZは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−S−、−CO−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;
aは、0、1、2、または3である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(1)において、
、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から4のアルキルであり、そしてRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;
環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、またはピリジン−2,5−ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素、はフッ素、塩素、炭素数1から5のアルキル、炭素数1から5のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルで置き換えられてもよく;
およびZは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;
aは、1、2、または3である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式(1)において、
、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から4のアルキルであり、そしてRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;
環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、または1,4−フェニレンであり、これらの環において、少なくとも1つの水素はフッ素、塩素、炭素数1から5のアルキル、炭素数1から5のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルで置き換えられてもよく;
およびZは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−、−CO−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
aは、1、2、または3である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
式(1a)、式(1b)、または式(1c)で表される、請求項1に記載の化合物。


式(1a)、式(1b)、または式(1c)において、
、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から4のアルキルであり、そしてRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;
環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは独立して、
1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、または1,4−フェニレンであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;
、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−CO−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;
b、c、d、e、f、およびgは、0または1であり、cおよびdの和は、0または1であり、e、f、およびgの和は、0または1である。
【請求項6】
式(1d)、式(1e)、または式(1f)で表される、請求項1から5のいずれか1項に記載の化合物。


式(1d)、式(1e)、または式(1f)において、
、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から4のアルキルであり、そしてRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;
環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、または1,4−フェニレンであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素で置き換えられてもよく;
、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、または−CH=CH−である。
【請求項7】
式(1d)、式(1e)、または式(1f)において、
、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から4のアルキルであり、そしてRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;
環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは独立して、1,4−フェニレンまたは少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであり;
、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、または−CHCH−であり、そしてZは−COO−である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
式(1g)または式(1h)で表される、請求項1から7のいずれか1項に記載の化合物。


式(1g)または式(1h)において、Rは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;h、i、およびjは独立して、0、1、または2である。
【請求項9】
式(1i)または式(1j)で表される、請求項1から8のいずれか1項に記載の化合物。


式(1i)または式(1j))において、Rは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;k、l、およびmは独立して、0、1、または2である。
【請求項10】
式(1k)で表される、請求項1から8のいずれか1項に記載の化合物。


式(1k)において、nは、0、1、または2である。
【請求項11】
式(1l)で表される、請求項1から10のいずれか1項に記載の化合物。


式(1l)において、oは、0、1、または2である。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の少なくとも1つの化合物を含有する液晶組成物。
【請求項13】
式(2)から式(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項12に記載の液晶組成物。


式(2)から式(4)において、
11およびR12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルまたはアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環B、環B、環B、および環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
11、Z12、およびZ13は独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、または−COO−である。
【請求項14】
式(5)から式(7)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項12または13に記載の液晶組成物。


式(5)から式(7)において、
13は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
11は、フッ素、塩素、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2、または−OCF2CHFCF3であり;
環C、環C、および環Cは独立して、1,4−シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
14、Z15、およびZ16は独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、または−(CH−であり;
11およびL12は独立して、水素またはフッ素である。
【請求項15】
式(8)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項12または13に記載の液晶組成物。


式(8)において、
14は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
12は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環Dは、1,4−シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
17は、単結合、−CHCH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−OCF−、または−CHO−であり;
13およびL14は独立して、水素またはフッ素であり;
iは、1、2、3、または4である。
【請求項16】
式(9)から式(15)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項12または13に記載の液晶組成物。


式(9)から(15)において、
15およびR16は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
17は、水素、フッ素、炭素数1から10のアルキル、または炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環E、環E、環E、および環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン,テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
環Eおよび環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン,テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
18、Z19、Z20、およびZ21は独立して、単結合、−CHCH−、−COO−、−CHO−、−OCF−、または−OCFCHCH−であり;
15およびL16は独立して、フッ素または塩素であり;
11は、水素またはメチルであり;
Xは、−CHF−または−CF−であり;
j、k、m、n、p、q、r、およびsは独立して、0または1であり、k、m、n、およびpの和は、1または2であり、q、r、およびsの和は、0、1、2、または3であり、tは、1、2、または3である。
【請求項17】
請求項12から16のいずれか1項に記載の液晶組成物を少なくとも1つ含有する液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペリジン誘導体、液晶組成物および液晶表示素子に関する。さらに詳しくは、ピペリジニルなどの置換基を有するシクロヘプタトリエン、この化合物を含み、誘電率異方性が正または負の液晶組成物、およびこの組成物を含む液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子において、液晶分子の動作モードに基づいた分類は、PC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(optically compensated bend)、IPS(in-plane switching)、VA(vertical alignment)、FFS(fringe field switching)、FPA(field-induced photo-reactive alignment)などのモードである。素子の駆動方式に基づいた分類は、PM(passive matrix)とAM(active matrix)である。PMは、スタティック(static)、マルチプレックス(multiplex)などに分類され、AMは、TFT(thin film transistor)、MIM(metal insulator metal)などに分類される。TFTの分類は非晶質シリコン(amorphous silicon)および多結晶シリコン(polycrystal silicon)である。後者は製造工程によって高温型と低温型とに分類される。光源に基づいた分類は、自然光を利用する反射型、バックライトを利用する透過型、そして自然光とバックライトの両方を利用する半透過型である。
【0003】
液晶表示素子はネマチック相を有する液晶組成物を含有する。この組成物は適切な特性を有する。この組成物の特性を向上させることによって、良好な特性を有するAM素子を得ることができる。2つの特性における関連を下記の表1にまとめる。組成物の特性を市販されているAM素子に基づいてさらに説明する。ネマチック相の温度範囲は、素子の使用できる温度範囲に関連する。ネマチック相の好ましい上限温度は約70℃以上であり、そしてネマチック相の好ましい下限温度は約−10℃以下である。組成物の粘度は素子の応答時間に関連する。素子で動画を表示するためには短い応答時間が好ましい。1ミリ秒でもより短い応答時間が望ましい。したがって、組成物における小さな粘度が好ましい。低い温度における小さな粘度はより好ましい。
【0004】
【0005】
組成物の光学異方性は、素子のコントラスト比に関連する。素子のモードに応じて、大きな光学異方性または小さな光学異方性、すなわち適切な光学異方性が必要である。組成物の光学異方性(Δn)と素子のセルギャップ(d)との積(Δn×d)は、コントラスト比を最大にするように設計される。適切な積の値は動作モードの種類に依存する。小さなセルギャップの素子には大きな光学異方性を有する組成物が好ましい。組成物における大きな誘電率異方性は、素子における低いしきい値電圧、小さな消費電力と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、正または負に大きな誘電率異方性が好ましい。組成物における大きな比抵抗は、素子における大きな電圧保持率と大きなコントラスト比とに寄与する。したがって、初期段階において室温だけでなく高い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。長時間使用したあと、室温だけでなく高い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。紫外線および熱に対する組成物の安定性は、素子の寿命に関連する。この安定性が高いとき、素子の寿命は長い。このような特性は、液晶プロジェクター、液晶テレビなどに用いるAM素子に好ましい。
【0006】
高分子支持配向(PSA;polymer sustained alignment)型の液晶表示素子では、重合体を含有する液晶組成物が用いられる。まず、少量の重合性化合物を添加した組成物を素子に注入する。次に、この素子の基板のあいだに電圧を印加しながら、組成物に紫外線を照射する。重合性化合物は重合して、組成物中に重合体の網目構造を生成する。この組成物では、重合体によって液晶分子の配向を制御することが可能になるので、素子の応答時間が短縮され、画像の焼き付きが改善される。重合体のこのような効果は、TN、ECB、OCB、IPS、VA、FFS、FPAのようなモードを有する素子に期待できる。
【0007】
液晶組成物は、液晶性化合物を混合することによって調製される。この組成物には、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、消泡剤のような添加物が必要に応じて添加される。これらの中で、光安定剤は、液晶性化合物がバックライトや太陽からの光によって分解されるのを防止する効果がある。この効果によって、素子の高い電圧保持率が維持されるので、素子の寿命は長くなる。ヒンダードアミン系光安定剤(HALS;hindered amine light stabilizer)は、このような目的に適しているが、さらに優れた光安定剤の開発が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2004−507607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の第一の課題は、液晶組成物の光分解を防ぐ効果を有し、液晶組成物への高い溶解度を有する化合物を提供することである。第二の課題は、この化合物を含み、そしてネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、正または負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性、大きな弾性定数などの特性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を提供することである。この課題は、光に対して安定な液晶組成物を提供することでもある。第三の課題は、この組成物を含み、そして素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、高い電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、小さなフリッカ率、および長い寿命を有する液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式(1)で表される化合物、この化合物を含む液晶組成物、およびこの組成物を含む液晶表示素子に関する。


式(1)において、
、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から4のアルキルであり、そしてRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;
環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2,5−ジイル、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−3,6−ジイル、3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−1,3−ジイル、ナフタレン−1,4−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−1,6−ジイル、ナフタレン−1,7−ジイル、ナフタレン−1,8−ジイル、ナフタレン−2,3−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、またはナフタレン−2,7−ジイル、であり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から5のアルキル、炭素数1から5のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルで置き換えられてもよく、そして1つの水素は式(P−1)で表される一価基で置き換えられてもよく;


式(P−1)において、
、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から4のアルキルであり、そしてRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;
は、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;
式(1)において、
およびZは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;
aは、0、1、2または3である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第一の長所は、液晶組成物の光分解を防ぐ効果を有し、液晶組成物への高い溶解度を有する化合物を提供することである。第二の長所は、この化合物を含み、そしてネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、正または負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性、大きな弾性定数などの特性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を提供することである。この長所は、光に対して安定な液晶組成物を提供することでもある。第三の長所は、この組成物を含み、そして素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、高い電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、小さなフリッカ率、および長い寿命を有する液晶表示素子を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この明細書における用語の使い方は、次のとおりである。「液晶性化合物」、「液晶組成物」、および「液晶表示素子」の用語をそれぞれ「化合物」、「組成物」、および「素子」と略すことがある。「液晶性化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないが、上限温度、下限温度、粘度、誘電率異方性のような組成物の物性を調節する目的で添加する化合物の総称である。この化合物は、1,4−シクロヘキシレンや1,4−フェニレンのような六員環を有し、その分子構造は棒状(rod like)である。「液晶表示素子」は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。「重合性化合物」は、組成物中に重合体を生成させる目的で添加する化合物である。
【0013】
液晶組成物は、複数の液晶性化合物を混合することによって調製される。この組成物に、物性をさらに調整する目的で添加物が添加される。重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、色素、および消泡剤のような添加物が必要に応じて添加される。液晶性化合物や添加物は、このような手順で混合される。液晶性化合物の割合(含有量)は、添加物を添加した場合であっても、添加物を含まない液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。添加物の割合(添加量)は、添加物を含まない液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。重量百万分率(ppm)が用いられることもある。重合開始剤および重合禁止剤の割合は、例外的に重合性化合物の重量に基づいて表される。
【0014】
「透明点」は、液晶性化合物における液晶相−等方相の転移温度である。「液晶相の下限温度」は、液晶性化合物における固体−液晶相(スメクチック相、ネマチック相など)の転移温度である。「ネマチック相の上限温度」は、液晶性化合物と母液晶との混合物または液晶組成物におけるネマチック相−等方相の転移温度であり、「上限温度」と略すことがある。「ネマチック相の下限温度」を「下限温度」と略すことがある。「誘電率異方性を上げる」の表現は、誘電率異方性が正である組成物のときは、その値が正に増加することを意味し、誘電率異方性が負である組成物のときは、その値が負に増加することを意味する。「電圧保持率が大きい」は、素子が初期段階において室温だけでなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有することを意味する。組成物や素子では、経時変化試験(加速劣化試験を含む)の前後で特性が検討されることがある。
【0015】
式(1)で表される化合物を化合物(1)と略すことがある。式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を化合物(1)と略すことがある。「化合物(1)」は、式(1)で表される1つの化合物、2つの化合物の混合物、または3つ以上の化合物の混合物を意味する。これらのルールは、他の式で表される化合物についても適用される。式(1)から(15)において、六角形で囲んだA、B、Cなどの記号はそれぞれ環A、環B、環Cなどの環に対応する。六角形は、シクロヘキサンやベンゼンのような六員環を表す。六角形がナフタレンのような縮合環や、アダマンタンのような架橋環を表すことがある。
【0016】
成分化合物の化学式において、末端基R11の記号を複数の化合物に用いた。これらの化合物において、任意の2つのR11が表す2つの基は同一であってもよく、または異なってもよい。例えば、化合物(2)のR11がエチルであり、化合物(3)のR11がエチルであるケースがある。化合物(2)のR11がエチルであり、化合物(3)のR11がプロピルであるケースもある。このルールは、R12、R13、Z11などの記号にも適用される。化合物(8)において、iが2のとき、2つの環Dが存在する。この化合物において2つの環Dが表す2つの基は、同一であってもよく、または異なってもよい。iが2より大きいとき、任意の2つの環Dにも適用される。このルールは、他の記号にも適用される。
【0017】
「少なくとも1つの‘A’」の表現は、‘A’の数が任意であることを意味する。「少なくとも1つの‘A’は、‘B’で置き換えられてもよい」の表現は、‘A’の数が1つのとき、‘A’の位置は任意であり、‘A’の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく選択できることを意味する。このルールは、「少なくとも1つの‘A’が、‘B’で置き換えられた」の表現にも適用される。「少なくとも1つの‘A’が、‘B’、‘C’、または‘D’で置き換えられてもよい」という表現は、任意の‘A’が‘B’で置き換えられた場合、任意の‘A’が‘C’で置き換えられた場合、および任意の‘A’が‘D’で置き換えられた場合、さらに複数の‘A’が‘B’、‘C’、および/または‘D’の少なくとも2つで置き換えられた場合を含むことを意味する。例えば、「少なくとも1つの−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキル」には、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルが含まれる。なお、連続する2つの−CH−が−O−で置き換えられて、−O−O−のようになることは好ましくない。アルキルなどにおいて、メチル部分(−CH−H)の−CH−が−O−で置き換えられて−O−Hになることも好ましくない。
【0018】
「R11およびR12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい」の表現が使われることがある。この表現において、「これらの基において」は、文言どおりに解釈してよい。この表現では、「これらの基」は、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルケニルオキシなどを意味する。すなわち、「これらの基」は、「これらの基において」の用語よりも前に記載された基の総てを表す。この常識的な解釈は、「これらの一価基において」や「これらの二価基において」の用語にも適用される。例えば、「これらの一価基」は、「これらの一価基において」の用語よりも前に記載された基の総てを表す。
【0019】
ハロゲンはフッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を意味する。好ましいハロゲンは、フッ素および塩素である。さらに好ましいハロゲンはフッ素である。液晶性化合物のアルキルは直鎖状または分岐状であり、環状アルキルを含まない。直鎖状アルキルは、一般的に分岐状アルキルよりも好ましい。これらのことは、アルコキシ、アルケニルなどの末端基についても同様である。1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。2−フルオロ−1,4−フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。化学式において、フッ素は左向き(L)であってもよいし、右向き(R)であってもよい。このルールは、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルのような、環から水素を2つ除くことによって生成した非対称な二価基にも適用される。

【0020】
本発明は、下記の項などを包含する。
【0021】
項1. 式(1)で表される化合物。


式(1)において、
、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から4のアルキルであり、そしてRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;
環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2,5−ジイル、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−3,6−ジイル、3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−1,3−ジイル、ナフタレン−1,4−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−1,6−ジイル、ナフタレン−1,7−ジイル、ナフタレン−1,8−ジイル、ナフタレン−2,3−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、またはナフタレン−2,7−ジイル、であり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から5のアルキル、炭素数1から5のアルコキシ、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルで置き換えられてもよく、そして1つの水素は式(P−1)で表される一価基で置き換えられてもよく;


式(P−1)において、
、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から4のアルキルであり、そしてRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;
は、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−S−、−CO−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;
式(1)において、 ZおよびZは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−S−、−CO−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;
aは、0、1、2または3である。
【0022】
項2. 式(1)において、
、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から4のアルキルであり、そしてRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;
環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2,5−ジイル、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−3,6−ジイル、3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−1,3−ジイル、ナフタレン−1,4−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−1,6−ジイル、ナフタレン−1,7−ジイル、ナフタレン−1,8−ジイル、ナフタレン−2,3−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、またはナフタレン−2,7−ジイル、であり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から5のアルキル、炭素数1から5のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルで置き換えられてもよく;
およびZは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−S−、−CO−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;
aは、0、1、2または3である、項1に記載の化合物。
【0023】
項3. 式(1)において、
、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から4のアルキルであり、そしてRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;
環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、またはピリジン−2,5−ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素、はフッ素、塩素、炭素数1から5のアルキル、炭素数1から5のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルで置き換えられてもよく;
およびZは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;
aは、1、2、または3である、項1に記載の化合物。
【0024】
項4. 式(1)において、
、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から4のアルキルであり、そしてRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;
環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、または1,4−フェニレンであり、これらの環において、少なくとも1つの水素はフッ素、塩素、炭素数1から5のアルキル、炭素数1から5のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルで置き換えられてもよく;
およびZは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−、−CO−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
aは、1、2、または3である、項1に記載の化合物。
【0025】
項5. 式(1a)、式(1b)、または式(1c)で表される、項1に記載の化合物。


式(1a)、式(1b)、または式(1c)において、
、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から4のアルキルであり、そしてRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;
環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは独立して、
1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、または1,4−フェニレンであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;
、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH−は、−O−、−CO−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;
b、c、d、e、f、およびgは、0または1であり、cおよびdの和は、0または1であり、e、f、およびgの和は、0または1である。
【0026】
項6. 式(1d)、式(1e)、または式(1f)で表される、項1から5のいずれか1項に記載の化合物。


式(1d)、式(1e)、または式(1f)において、
、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から4のアルキルであり、そしてRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;
環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、または1,4−フェニレンであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素で置き換えられてもよく;
、Z、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、または−CH=CH−である。
【0027】
項7. 式(1d)、式(1e)、または式(1f)において、
、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から4のアルキルであり、そしてRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;
環A、環A、環A、環A、環A、および環Aは独立して、1,4−フェニレンまたは少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであり;
、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、または−CHCH−であり、そしてZは−COO−である、項6に記載の化合物。
【0028】
項8. 式(1g)または式(1h)で表される、項1から7のいずれか1項に記載の化合物。


式(1g)または式(1h)において、Rは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;h、i、およびjは独立して、0、1、または2である。
【0029】
項9. 式(1i)または式(1j)で表される、項1から8のいずれか1項に記載の化合物。


式(1i)または式(1j))において、Rは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシであり;k、l、およびmは独立して、0、1、または2である。
【0030】
項10. 式(1k)で表される、項1から8のいずれか1項に記載の化合物。


式(1k)において、nは、0、1、または2である。
【0031】
項11. 式(1l)で表される、項1から10のいずれか1項に記載の化合物。


式(1l)において、oは、0、1、または2である。
【0032】
項12. 項1から11のいずれか1項に記載の少なくとも1つの化合物を含有する液晶組成物。
【0033】
項13. 式(2)から式(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項12に記載の液晶組成物。


式(2)から式(4)において、
11およびR12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルまたはアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環B、環B、環B、および環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
11、Z12、およびZ13は独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、または−COO−である。
【0034】
項14. 式(5)から式(7)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項12または13に記載の液晶組成物。


式(5)から式(7)において、
13は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
11は、フッ素、塩素、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2、または−OCF2CHFCF3であり;
環C、環C、および環Cは独立して、1,4−シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
14、Z15、およびZ16は独立して、単結合、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、または−(CH−であり;
11およびL12は独立して、水素またはフッ素である。
【0035】
項15. 式(8)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項12または13に記載の液晶組成物。


式(8)において、
14は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
12は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環Dは、1,4−シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
17は、単結合、−CHCH−、−C≡C−、−COO−、−CFO−、−OCF−、または−CHO−であり;
13およびL14は独立して、水素またはフッ素であり;
iは、1、2、3、または4である。
【0036】
項16. 式(9)から式(15)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項12または13に記載の液晶組成物。


式(9)から(15)において、
15およびR16は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
17は、水素、フッ素、炭素数1から10のアルキル、または炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環E、環E、環E、および環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン,テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
環Eおよび環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン,テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
18、Z19、Z20、およびZ21は独立して、単結合、−CHCH−、−COO−、−CHO−、−OCF−、または−OCFCHCH−であり;
15およびL16は独立して、フッ素または塩素であり;
11は、水素またはメチルであり;
Xは、−CHF−または−CF−であり;
j、k、m、n、p、q、r、およびsは独立して、0または1であり、k、m、n、およびpの和は、1または2であり、q、r、およびsの和は、0、1、2、または3であり、tは、1、2、または3である。
【0037】
項17. 項12から16のいずれか1項に記載の液晶組成物を少なくとも1つ含有する液晶表示素子。
【0038】
本発明は、次の項も含む。(a)重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、化合物(1)とは異なる光安定剤、熱安定剤、消泡剤のような添加物の1つ、2つ、または少なくとも3つをさらに含有する上記の液晶組成物。(b)上記の液晶組成物に重合性化合物を添加して調製した重合性組成物。(c)この重合性組成物を重合させることによって調製した液晶複合体。(d)この液晶複合体を含有する高分子支持配向(PSA)型の液晶表示素子。(e)化合物(1)の光安定剤としての使用。(f)化合物(1)の熱安定剤としての使用。(g)化合物(1)とは異なる光安定剤と化合物(1)とを組み合わせた使用。(h)上記の液晶組成物に光学活性化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用。
【0039】
化合物(1)の態様、化合物(1)の合成、液晶組成物、および液晶表示素子について順に説明する。
【0040】
1.化合物(1)の態様
本発明の化合物(1)は、ピペリジン環とシクロヘプタトリエン環とを有することを特徴とする。この化合物は、ヒンダードアミン系の光安定剤として有用である。化合物(1)のピペリジン環は、液晶性化合物の光反応によって生成した分解生成物をトラップするのに適している。化合物(1)のシクロヘプタトリエン環は、この液晶性化合物がバックライトや太陽からの光によって分解するのを防止する効果がある。この化合物は、液晶性化合物の混合物、すなわち液晶組成物に添加することができる。この化合物は、液晶組成物への高い溶解度を有するからである。化合物(1)は、熱安定剤としての効果も有するようである。
【0041】
液晶表示素子を長時間使用すると、液晶性化合物は、光で分解して分解生成物を生成する傾向がある。この生成物は不純物であるから素子にとっては好ましくない。この不純物は、コントラスト比の低下、表示むらの発生、画像の焼き付きのような現象を引き起こすからである。この現象は、目視で容易に識別できるうえ、その程度がわずかであっても非常に目立つ。したがって、従来の光安定剤より、1%でも不純物の生成量を少なく抑えることのできる光安定剤が好ましい。化合物(1)は、そのような光安定剤である。
【0042】
化合物(1)の好ましい例について説明をする。化合物(1)における置換基R、環A、および結合基Zの好ましい例は、化合物(1)の下位式にも適用される。化合物(1)において、これらの基の種類を適切に組み合わせることによって、特性を任意に調整することが可能である。化合物の特性に大きな差異がないので、化合物(1)は、H(重水素)、13Cなどの同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。

【0043】
式(1)において、シクロヘプタトリエン環を横切る直線は、aが1のとき、結合基Zはシクロヘプタトリエン環上のいずれかの炭素に結合していることを意味する。aが2または3のときも同様である。aが0のときは、結合基Zがシクロヘプタトリエン環のいずれかの炭素に結合していることを意味する。環Aを横切る直線は、結合基ZおよびZが環A上のいずれかの炭素に結合していることを意味する。
【0044】
式(1)または式(P−1)において、R、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から4のアルキルである。好ましいR、R、R、およびRは、水素、メチル、エチル、またはこれらの組み合わせである。さらに好ましいR、R、R、およびRは、水素またはメチル、またはこれらの組み合わせである。特に好ましいR、R、R、およびRは、メチルである。すなわち、好ましいピペリジル基は、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルである。
【0045】
式(1)または式(P−1)において、Rは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から10のアルキル、または炭素数1から10のアルコキシである。ヒドロキシは−OHであり、オキシラジカルは>N−O・の部分を有する遊離基である。好ましいRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、炭素数1から3のアルキル、または炭素数1から3のアルコキシである。さらに好ましいRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、またはエトキシである。特に好ましいRは、水素、ヒドロキシ、オキシラジカル、メチル、またはメトキシである。最も好ましいRは、水素、メチル、またはメトキシである。最も好ましいRは、水素、ヒドロキシ、またはメチルでもある。最も好ましいRは、ヒドロキシ、メチル、またはメトキシでもある。
【0046】
式(1)において、環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−3,6−ジイル、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2,5−ジイル、3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−1,3−ジイル、ナフタレン−1,4−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−1,6−ジイル、ナフタレン−1,7−ジイル、ナフタレン−1,8−ジイル、ナフタレン−2,3−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、またはピリジン−2,5−ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から5のアルキル、炭素数1から5のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルで置き換えられてもよく、そして1つの水素は式(P−1)で表される一価基で置き換えられてもよい。

【0047】
好ましい環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロへキセニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−1,4−ジイル、またはナフタレン−2,6−ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。さらに好ましい環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、またはナフタレン−2,6−ジイルである。最も好ましい環Aは、1,4−フェニレンである。
【0048】
式(1)または式(P−1)において、ZおよびZは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH2−は、−O−、−S−、−CO−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH−CH−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよい。
【0049】
好ましいZまたはZは、単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、または−CH=CH−である。さらに好ましいZまたはZは、単結合、−COO−、または−OCO−である。特に好ましいZまたはZは、単結合、または−COO−である。最も好ましいZは、単結合である。最も好ましいZは、−COO−である。
【0050】
式(1)において、aは、0、1、2または3である。好ましいaは0または1である。さらに好ましいaは1である。
【0051】
上記の好ましい例を参照しながら、置換基R、環A、結合基Z、添え字aの組み合わせを適切に選択することによって、目的とする特性を有する化合物(1)を得ることができる。化合物(1)の好ましい例は、項2、項3などに記載した化合物である。
【0052】
2.化合物(1)の合成
化合物(1)の合成法について説明する。化合物(1)は、有機合成化学の方法を適切に組み合わせることにより合成できる。この方法は、フーベン−ヴァイル(Houben-Wyle, Methoden der Organische Chemie, Georg-Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・シンセシズ(Organic Syntheses, John Wily & Sons, Inc.)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wily & Sons Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載されている。
【0053】
2−1.結合基Zの生成
結合基ZまたはZを生成する方法に関して、最初にスキームを示す。次に、方法(1)から(11)でスキームに記載した反応を説明する。このスキームにおいて、MSG(またはMSG)は少なくとも1つの環を有する1価の有機基である。スキームで用いた複数のMSG(またはMSG)が表わす一価の有機基は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)から(1J)は化合物(1)に相当する。
【0054】
【0055】
【0056】
(1)単結合の生成
公知の方法で合成されるアリールホウ酸(21)とハロゲン化物(22)とを、炭酸塩およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で反応させて化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、公知の方法で合成されるハロゲン化物(23)にn−ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下でハロゲン化物(22)を反応させることによっても合成される。
【0057】
(2)−COO−の生成
ハロゲン化物(23)にn−ブチルリチウムを、続いて二酸化炭素を反応させてカルボン酸(24)を得る。公知の方法で合成される化合物(25)とカルボン酸(24)とをDCC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて化合物(1B)を合成する。
【0058】
(3)−CFO−の生成
化合物(1B)をローソン試薬のような硫黄化剤で処理してチオノエステル(26)を得る。チオノエステル(26)をフッ化水素ピリジン錯体とNBS(N−ブロモスクシンイミド)でフッ素化し、化合物(1C)を合成する。M. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992,827.を参照。化合物(1C)はチオノエステル(26)をDAST((ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド)でフッ素化しても合成される。W. H. Bunnelle et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 768.を参照。Peer. Kirsch et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 1480. に記載の方法によってこの結合基を生成させることも可能である。
【0059】
(4)−CH=CH−の生成
ハロゲン化物(22)をn−ブチルリチウムで処理した後、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)などのホルムアミドと反応させてアルデヒド(28)を得る。公知の方法で合成されるホスホニウム塩(27)をカリウムt−ブトキシドのような塩基で処理してリンイリドを発生させる。このリンイリドをアルデヒド(28)に反応させて化合物(1D)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0060】
(5)−CHCH−の生成
化合物(1D)をパラジウム炭素のような触媒の存在下で水素化することにより、化合物(1E)を合成する。
【0061】
(6)−(CH−の生成
ホスホニウム塩(27)の代わりにホスホニウム塩(29)を用い、方法(4)の方法に従って−(CH−CH=CH−を有する化合物を得る。これを接触水素化して化合物(1F)を合成する。
【0062】
(7)−CHCH=CHCH−の生成
ホスホニウム塩(27)の代わりにホスホニウム塩(30)を、アルデヒド(28)の代わりにアルデヒド(31)を用い、方法(4)の方法に従って化合物(1G)を合成する。反応条件によってはトランス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりトランス体をシス体に異性化する。
【0063】
(8)−C≡C−の生成
ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下で、ハロゲン化物(23)に2−メチル−3−ブチン−2−オールを反応させたのち、塩基性条件下で脱保護して化合物(32)を得る。ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、化合物(32)をハロゲン化物(22)と反応させて、化合物(1H)を合成する。
【0064】
(9)−CF=CF−の生成
ハロゲン化物(23)をn−ブチルリチウムで処理したあと、テトラフルオロエチレンを反応させて化合物(33)を得る。ハロゲン化物(22)をn−ブチルリチウムで処理したあと化合物(33)と反応させて化合物(1I)を合成する。
【0065】
(10)−OCH−の生成
アルデヒド(28)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元して化合物(34)を得る。化合物(34)を臭化水素酸などで臭素化して臭化物(35)を得る。炭酸カリウムなどの塩基存在下で、臭化物(35)を化合物(36)と反応させて化合物(1J)を合成する。
【0066】
(11)−CFCF−の生成
J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 5414. に記載された方法に従い、ジケトン(−COCO−)をフッ化水素触媒の存在下、四フッ化硫黄でフッ素化して−(CF−を有する化合物を得る。
【0067】
2−2.環の原料
シクロヘプタ−1,3,5−トリエン環の原料は、トロピリウムテトラフルオロボラート、2,4,6−シクロヘプタトリエン−1−カルボニトリルなどであり、これらはアルドリッチから入手できる。2,2,6,6−テトラメチルピペリジン環の原料は、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドンなどであり、これらはアルドリッチから入手できる。
【0068】
3.液晶組成物
3−1.成分化合物
本発明の液晶組成物について説明をする。この組成物は、少なくとも1つの化合物(1)を成分Aとして含む。この組成物は、2つまたは3つ以上の化合物(1)を含んでもよい。化合物(1)の好ましい割合は、紫外線に対して高い安定性を維持するために、液晶組成物の重量に基づいて0.01重量%以上であり、液晶組成物へ溶解させるために5重量%以下である。さらに好ましい割合は0.05重量%から2重量%の範囲である。最も好ましい割合は、0.05重量%から1重量%の範囲である。
【0069】

【0070】
この組成物は、化合物(1)を成分Aとして含有し、表2に示す成分B、C、D、およびEから選択された液晶性化合物をさらに含有することが好ましい。この組成物を調製するときには、誘電率異方性の正負と大きさとを考慮して成分B、C、D、およびEを選択することが好ましい。この組成物は、化合物(1)から(15)とは異なる液晶性化合物を含んでもよい。この組成物は、そのような液晶性化合物を含まなくてもよい。
【0071】
成分Bは、2つの末端基がアルキルなどである化合物である。成分Bの好ましい例として、化合物(2−1)から(2−11)、化合物(3−1)から(3−19)、および化合物(4−1)から(4−7)を挙げることができる。これらの化合物において、R11およびR12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【0072】

【0073】
成分Bは、小さな誘電率異方性を有する。成分Bは中性に近い。化合物(2)は、粘度を下げるまたは光学異方性を調整する効果がある。化合物(3)および(4)は、上限温度を上げることによってネマチック相の温度範囲を広げる、または光学異方性を調整する効果がある。
【0074】
成分Bの含有量を増加させるにつれて組成物の粘度は小さくなるが誘電率異方性が小さくなる。そこで、素子のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は多いほうが好ましい。IPS、VAなどのモード用の組成物を調製する場合には、成分Bの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上である。
【0075】
成分Cは、右末端にハロゲンまたはフッ素含有基を有する化合物である。成分Cの好ましい例として、化合物(5−1)から(5−16)、化合物(6−1)から(6−113)、化合物(7−1)から(7−57)を挙げることができる。これらの化合物において、R13は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。X11は、フッ素、塩素、−OCF、−OCHF、−CF、−CHF、−CHF、−OCFCHF、または−OCFCHFCFである。
【0076】

【0077】

【0078】

【0079】

【0080】

【0081】

【0082】
成分Cは、誘電率異方性が正であり、熱や光に対する安定性が非常に良好であるので、IPS、FFS、OCBなどのモード用の組成物を調製する場合に用いられる。成分Cの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて1重量%から99重量%の範囲が適しており、好ましくは10重量%から97重量%の範囲、さらに好ましくは40重量%から95重量%の範囲である。成分Cを誘電率異方性が負である組成物に添加する場合、成分Cの含有量は30重量%以下が好ましい。成分Cを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。
【0083】
成分Dは、右末端基が−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nである化合物(8)である。成分Dの好ましい例として、化合物(8−1)から(8−64)を挙げることができる。これらの化合物において、R14は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。X12は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nである。
【0084】

【0085】

【0086】
成分Dは、誘電率異方性が正であり、その値が大きいので、TNなどのモード用の組成物を調製する場合に用いられる。この成分Dを添加することにより、組成物の誘電率異方性を上げることができる。成分Dは、液晶相の温度範囲を広げる、粘度を調整する、または光学異方性を調整する、という効果がある。成分Dは、素子の電圧−透過率曲線の調整にも有用である。
【0087】
TNなどのモード用の組成物を調製する場合には、成分Dの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて1重量%から99重量%の範囲が適しており、好ましくは10重量%から97重量%の範囲、さらに好ましくは40重量%から95重量%の範囲である。成分Dを誘電率異方性が負である組成物に添加する場合、成分Dの含有量は30重量%以下が好ましい。成分Dを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。
【0088】
成分Eは、化合物(9)から(15)である。これらの化合物は、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンのように、ラテラル位が2つのハロゲンで置換されたフェニレンを有する。成分Eの好ましい例として、化合物(9−1)から(9−8)、化合物(10−1)から(10−17)、化合物(11−1)、化合物(12−1)から(12−3)、化合物(13−1)から(13−11)、化合物(14−1)から(14−3)、および化合物(15−1)から(15−3)を挙げることができる。これらの化合物において、R15、R16、およびR17は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、そしてR17は、水素またはフッ素であってもよい。
【0089】

【0090】

【0091】
成分Eは、誘電率異方性が負に大きい。成分Eは、IPS、VA、PSAなどのモード用の組成物を調製する場合に用いられる。成分Eの含有量を増加させるにつれて組成物の誘電率異方性が負に大きくなるが、粘度が大きくなる。そこで、素子のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は少ないほうが好ましい。誘電率異方性が−5程度であることを考慮すると、充分な電圧駆動をさせるには、含有量が40重量%以上であることが好ましい。
【0092】
成分Eのうち、化合物(9)は二環化合物であるので、粘度を下げる、光学異方性を調整する、または誘電率異方性を上げる効果がある。化合物(10)および(11)は三環化合物であるので、上限温度を上げる、光学異方性を上げる、または誘電率異方性を上げるという効果がある。化合物(12)から(15)は、誘電率異方性を上げるという効果がある。
【0093】
IPS、VA、PSAなどのモード用の組成物を調製する場合には、成分Eの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて、好ましくは40重量%以上であり、さらに好ましくは50重量%から95重量%の範囲である。成分Eを誘電率異方性が正である組成物に添加する場合は、成分Eの含有量は30重量%以下が好ましい。成分Eを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。
【0094】
化合物(1)に成分B、C、D、およびEを適切に組み合わせることによって熱や光に対する高い安定性、高い上限温度、低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性(すなわち、大きな光学異方性または小さな光学異方性)、正または負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、適切な弾性定数(すなわち、大きな弾性定数または小さな弾性定数)などの物性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を調製することができる。このような組成物を含む素子は、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、小さなフリッカ率、および長い寿命を有する。
【0095】
素子を長時間使用すると、表示画面にフリッカ(flicker)が発生することがある。フリッカ率(%)は、(|正の電圧を印加したときの輝度−負の電圧を印加したときの輝度|)/平均輝度)×100、によって表すことができる。フリッカ率が0%から1%の範囲である素子は、素子を長時間使用しても、表示画面にフリッカ(flicker)が発生しにくい。このフリッカは、画像の焼き付きに関連し、交流で駆動させる際に正フレームの電位と負フレームの電位との間に差が生じることによって発生すると推定される。化合物(1)を含有する組成物は、フリッカの発生を低減させるのにも有用である。
【0096】
3−2.添加物
液晶組成物は公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。用途に応じて、この組成物に添加物を添加してよい。添加物の例は、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、式(1)で表される化合物を除く光安定剤、熱安定剤、色素、消泡剤などである。このような添加物は当業者によく知られており、文献に記載されている。
【0097】
PSA(polymer sustained alignment;高分子支持配向)モードを有する液晶表示素子では、組成物が重合体を含有する。重合性化合物は、組成物中に重合体を生成させる目的で添加される。電極間に電圧を印加した状態で紫外線を照射して、重合性化合物を重合させることによって、組成物の中に重合体を生成させる。この方法によって、適切なプレチルトが達成されるので、応答時間が短縮され、画像の焼き付きが改善された素子が作製される。
【0098】
重合性化合物の好ましい例は、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、およびビニルケトンである。さらに好ましい例は、少なくとも1つのアクリロイルオキシを有する化合物および少なくとも1つのメタクリロイルオキシを有する化合物である。さらに好ましい例には、アクリロイルオキシとメタクリロイルオキシの両方を有する化合物も含まれる。
【0099】
さらに好ましい例は、化合物(M−1)から(M−18)である。これらの化合物において、R25からR31は独立して、水素またはメチルであり;R32、R33、およびR34は独立して、水素または炭素数1から5のアルキルであり、R32、R33、およびR34の少なくとも1つは炭素数1から5のアルキルであり;v、w、およびxは独立して、0または1であり;uおよびyは独立して、1から10の整数である。L21からL26は独立して、水素またはフッ素であり;L27およびL28は独立して、水素、フッ素、またはメチルである。
【0100】

【0101】
重合性化合物は、重合開始剤を添加することによって、速やかに重合させることができる。反応条件を最適化することによって、残存する重合性化合物の量を減少させることができる。光ラジカル重合開始剤の例は、BASF社のダロキュアシリーズからTPO、1173、および4265であり、イルガキュアシリーズから184、369、500、651、784、819、907、1300、1700、1800、1850、および2959である。
【0102】
光ラジカル重合開始剤の追加例は、4−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(4−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物である。
【0103】
液晶組成物に光ラジカル重合開始剤を添加したあと、電場を印加した状態で紫外線を照射することによって重合を行うことができる。しかし、未反応の重合開始剤または重合開始剤の分解生成物は、素子に画像の焼き付きなどの表示不良を引き起こすかもしれない。これを防ぐために重合開始剤を添加しないまま光重合を行ってもよい。照射する光の好ましい波長は150nmから500nmの範囲である。さらに好ましい波長は250nmから450nmの範囲であり、最も好ましい波長は300nmから400nmの範囲である。
【0104】
重合性化合物を保管するとき、重合を防止するために重合禁止剤を添加してもよい。重合性化合物は、通常は重合禁止剤を除去しないまま組成物に添加される。重合禁止剤の例は、ヒドロキノン、メチルヒドロキノンのようなヒドロキノン誘導体、4−t−ブチルカテコール、4−メトキシフェノール、フェノチアジンなどである。
【0105】
光学活性化合物は、液晶分子にらせん構造を誘起して必要なねじれ角を与えることによって逆ねじれを防ぐ、という効果を有する。光学活性化合物を添加することによって、らせんピッチを調整することができる。らせんピッチの温度依存性を調整する目的で2つ以上の光学活性化合物を添加してもよい。光学活性化合物の好ましい例として、下記の化合物(Op−1)から(Op−18)を挙げることができる。化合物(Op−18)において、環Jは1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり、R28は炭素数1から10のアルキルである。*印は不斉炭素を表す。
【0106】

【0107】
酸化防止剤は、大きな電圧保持率を維持するために有効である。酸化防止剤の好ましい例として、下記の化合物(AO−1)および(AO−2);Irganox415、Irganox565、Irganox1010、Irganox1035、Irganox3114、およびIrganox1098(商品名;BASF社)を挙げることができる。紫外線吸収剤は、上限温度の低下を防ぐために有効である。紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などであり、具体例として下記の化合物(AO−3)および(AO−4);Tinuvin329、TinuvinP、Tinuvin326、Tinuvin234、Tinuvin213、Tinuvin400、Tinuvin328、およびTinuvin99−2(商品名;BASF社);および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を挙げることができる。
【0108】
立体障害のあるアミンのような光安定剤は、大きな電圧保持率を維持するために好ましい。光安定剤の好ましい例として、下記の化合物(AO−5)、(AO−6)、および(AO−7);Tinuvin144、Tinuvin765、およびTinuvin770DF(商品名;BASF社);LA−77YおよびLA−77G(商品名;ADEKA社)を挙げることができる。熱安定剤も大きな電圧保持率を維持するために有効であり、好ましい例としてIrgafos168(商品名;BASF社)を挙げることができる。GH(guest host)モードの素子に適合させるために、アゾ系色素、アントラキノン系色素などのような二色性色素(dichroic dye)が組成物に添加される。消泡剤は、泡立ちを防ぐために有効である。消泡剤の好ましい例は、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどである。
【0109】

【0110】
化合物(AO−1)において、R40は炭素数1から20のアルキル、炭素数1から20のアルコキシ、−COOR41、または−CHCHCOOR41であり、ここでR41は炭素数1から20のアルキルである。化合物(AO−2)および(AO−5)において、R42は炭素数1から20のアルキルである。化合物(AO−5)において、R43は水素、メチルまたはO(酸素ラジカル)であり;環Gは1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり;化合物(AO−7)において、環Gは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであり;化合物(AO−5)および(AO−7)において、zは、1、2、または3である。
【0111】
4.液晶表示素子
液晶組成物は、PC、TN、STN、OCB、PSAなどの動作モードを有し、アクティブマトリックス方式で駆動する液晶表示素子に使用できる。この組成物は、PC、TN、STN、OCB、VA、IPSなどの動作モードを有し、パッシブマトリクス方式で駆動する液晶表示素子にも使用することができる。これらの素子は、反射型、透過型、半透過型のいずれのタイプにも適用ができる。
【0112】
この組成物は、NCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子にも適しており、ここでは組成物がマイクロカプセル化されている。この組成物は、ポリマー分散型液晶表示素子(PDLCD)や、ポリマーネットワーク液晶表示素子(PNLCD)にも使用できる。これらの組成物においては、重合性化合物が多量に添加される。一方、重合性化合物の割合が液晶組成物の重量に基づいて10重量%以下であるとき、PSAモードの液晶表示素子が作製される。好ましい割合は0.1重量%から2重量%の範囲である。さらに好ましい割合は、0.2重量%から1.0重量%の範囲である。PSAモードの素子は、アクティブマトリックス方式、パッシブマトリクス方式のような駆動方式で駆動させることができる。このような素子は、反射型、透過型、半透過型のいずれのタイプにも適用ができる。
【実施例】
【0113】
1.化合物(1)の実施例
実施例により本発明をさらに詳しく説明する。実施例は典型的な例であるので、本発明は実施例によって制限されない。化合物(1)は、下記の手順により合成した。合成した化合物は、NMR分析などの方法により同定した。化合物や組成物の物性、および素子の特性は、下記の方法により測定した。
【0114】
NMR分析:測定には、ブルカーバイオスピン社製のDRX−500を用いた。H−NMRの測定では、試料をCDClなどの重水素化溶媒に溶解させ、室温、500MHz、積算回数16回の条件で測定した。テトラメチルシランを内部標準として用いた。19F−NMRの測定では、CFClを内部標準として用い、積算回数24回で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。
【0115】
ガスクロマト分析:測定には、島津製作所製のGC−2010型ガスクロマトグラフを用いた。カラムは、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いた。キャリアーガスとしてはヘリウム(1mL/分)を用いた。試料気化室の温度を300℃、検出器(FID)の温度を300℃に設定した。試料はアセトンに溶解して、1重量%の溶液となるように調製し、得られた溶液1μlを試料気化室に注入した。記録計には島津製作所製のGCSolutionシステムなどを用いた。
【0116】
HPLC分析:測定には、島津製作所製のProminence(LC−20AD;SPD−20A)を用いた。カラムはワイエムシー製のYMC−Pack ODS−A(長さ150mm、内径4.6mm、粒子径5μm)を用いた。溶出液はアセトニトリルと水を適宜混合して用いた。検出器としてはUV検出器、RI検出器、CORONA検出器などを適宜用いた。UV検出器を用いた場合、検出波長は254nmとした。試料はアセトニトリルに溶解して、0.1重量%の溶液となるように調製し、この溶液1μLを試料室に導入した。記録計としては島津製作所製のC−R7Aplusを用いた。
【0117】
紫外可視分光分析:測定には、島津製作所製のPharmaSpec UV−1700用いた。検出波長は190nmから700nmとした。試料はアセトニトリルに溶解して、0.01mmol/Lの溶液となるように調製し、石英セル(光路長1cm)に入れて測定した。
【0118】
測定試料:相構造および転移温度(透明点、融点、重合開始温度など)を測定するときには、化合物そのものを試料として用いた。ネマチック相の上限温度、粘度、光学異方性、誘電率異方性などの物性を測定するときには、化合物と母液晶との混合物を試料として用いた。
【0119】
外挿法:化合物を母液晶と混合した試料を用いた場合は、次のように測定した。化合物15重量%と母液晶85重量%とを混合して試料を調製した。この試料の測定値から、次の等式にしたがって外挿値を算出し、この値を記載した。<外挿値>=(100×<試料の測定値>−<母液晶の重量%>×<母液晶の測定値>)/<化合物の重量%>
【0120】
この割合で結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出する場合には、化合物と母液晶との割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出しなくなった割合で試料の物性を測定した。なお、特に断りのない限り、化合物と母液晶との割合は、15重量%:85重量%である。
【0121】
化合物の誘電率異方性がゼロまたは正であるときは、下記の母液晶(A)を用いた。各成分の割合を、重量%で表した。

【0122】
化合物の誘電率異方性がゼロまたは負であるときは、下記の母液晶(B)を用いた。各成分の割合を重量%で表した。

【0123】
測定方法:物性の測定は下記の方法で行った。これらの多くは、社団法人電子情報技術産業協会(JEITA;Japan Electronics and Information Technology Industries Association)で審議制定されるJEITA規格(JEITA・ED−2521B)に記載されている。これを修飾した方法も用いた。測定に用いたTN素子には、薄膜トランジスター(TFT)を取り付けなかった。
【0124】
(1)相構造:偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料を置いた。この試料を、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、相の種類を特定した。
【0125】
(2)転移温度(℃):測定には、パーキンエルマー社製の走査熱量計、Diamond DSCシステムまたはエスアイアイ・ナノテクノロジー社製の高感度示差走査熱量計、X−DSC7000を用いた。試料は、3℃/分の速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピークまたは発熱ピークの開始点を外挿により求め、転移温度を決定した。化合物の融点、重合開始温度もこの装置を使って測定した。化合物が固体からスメクチック相、ネマチック相などの液晶相に転移する温度を「液晶相の下限温度」と略すことがある。化合物が液晶相から液体に転移する温度を「透明点」と略すことがある。
【0126】
結晶はCと表した。結晶を二種類に区別できる場合は、それぞれをCまたはCと表した。スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。スメクチックA相、スメクチックB相、スメクチックC相、およびスメクチックF相のような相の区別がつく場合は、それぞれS、S、S、およびSと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。転移温度は、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」のように表記した。これは、結晶からネマチック相への転移温度が50.0℃であり、ネマチック相から液体への転移温度が100.0℃であることを示す。
【0127】
(3)化合物の相溶性:化合物の割合が、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、3重量%、または1重量%となるように母液晶と化合物とを混合した試料を調製した。試料をガラス瓶に入れ、−10℃または−20℃の冷凍庫で一定期間保管した。試料のネマチック相が維持されたか、または結晶(またはスメクチック相)が析出したかを観察した。ネマチック相が維持される条件を相溶性の尺度として用いた。必要に応じて化合物の割合や冷凍庫の温度を変更することもある。
【0128】
(4)ネマチック相の上限温度(TNIまたはNI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。試料が化合物(1)と母液晶との混合物であるときは、TNIの記号で示した。この値は、上記の外挿法を使って算出した。試料が化合物(1)と、化合物(2)から(15)から選択された化合物との混合物であるときは、測定値をNIの記号で示した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0129】
(5)ネマチック相の下限温度(T;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、Tを<−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0130】
(6)粘度(バルク粘度;μ;20℃で測定;mPa・s):測定には、東京計器株式会社製のE型回転粘度計を用いた。
【0131】
(7)光学異方性(屈折率異方性;25℃で測定;Δn):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥、の等式から計算した。
【0132】
(8)比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の等式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。
【0133】
(9)電圧保持率(VHR−1;25℃で測定;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmであった。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積であった。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率で表した。
【0134】
(10)電圧保持率(VHR−2;80℃で測定;%):25℃の代わりに、80℃で測定した以外は、上記の方法で電圧保持率を測定した。得られた結果をVHR−2の記号で示した。
【0135】
(11)フリッカ率(25℃で測定;%):測定には横河電機(株)製のマルチメディアディスプレイテスタ3298Fを用いた。光源はLEDであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が3.5μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のFFS素子に試料を入れた。この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に電圧を印加し、素子を透過した光量が最大になる電圧を測定した。この電圧を素子に印加しながらセンサ部を素子に近づけ、表示されたフリッカ率を読み取った。
【0136】
誘電率異方性が正の試料と負の試料とでは、物性の測定法が異なることがある。誘電率異方性が正であるときの測定法は、測定(12a)から測定(16a)に記載した。誘電率異方性が負の場合は、測定(12b)から測定(16b)に記載した。
【0137】
(12a)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s;誘電率異方性が正の試料):測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。ツイスト角が0度であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。この素子に16Vから19.5Vまで0.5V毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM.Imaiらの論文、40頁の等式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度を測定した素子を用い、下に記載した方法で求めた。
【0138】
(12b)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s;誘電率異方性が負の試料):測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmのVA素子に試料を入れた。この素子に39Vから50Vまで1V毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM.Imaiらの論文、40頁の等式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算に必要な誘電率異方性は、下記の誘電率異方性の項で測定した。
【0139】
(13a)誘電率異方性(Δε;25℃で測定;誘電率異方性が正の試料):2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の等式から計算した。
【0140】
(13b)誘電率異方性(Δε;25℃で測定;誘電率異方性が負の試料):誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の等式から計算した。誘電率(ε‖およびε⊥)は次のように測定した。
1)誘電率(ε‖)の測定:よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであるVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。
2)誘電率(ε⊥)の測定:よく洗浄したガラス基板にポリイミド溶液を塗布した。このガラス基板を焼成した後、得られた配向膜にラビング処理をした。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
【0141】
(14a)弾性定数(K;25℃で測定;pN;誘電率異方性が正の試料):測定には横河・ヒューレットパッカード株式会社製のHP4284A型LCRメータを用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである水平配向素子に試料を入れた。この素子に0Vから20V電荷を印加し、静電容量(C)および印加電圧(V)を測定した。これらの測定値を「液晶デバイスハンドブックク」(日刊工業新聞社)、75頁にある等式(2.98)、等式(2.101)を用いてフィッティングし、等式(2.99)からK11およびK33の値を得た。次に171頁にある等式(3.18)に、先ほど求めたK11およびK33の値を用いてK22を算出した。弾性定数Kは、このようにして求めたK11、K22、およびK33の平均値で表した。
【0142】
(14b)弾性定数(K11およびK33;25℃で測定;pN;誘電率異方性が負の試料):測定には株式会社東陽テクニカ製のEC−1型弾性定数測定器を用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである垂直配向素子に試料を入れた。この素子に20Vから0V電荷を印加し、静電容量(C)および印加電圧(V)を測定した。これらの値を、「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社)、75頁にある等式(2.98)、等式(2.101)を用いてフィッティングし、等式(2.100)から弾性定数の値を得た。
【0143】
(15a)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V;誘電率異方性が正の試料):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が0.45/Δn(μm)であり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に印加する電圧(32Hz、矩形波)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が90%になったときの電圧で表した。
【0144】
(15b)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V;誘電率異方性が負の試料):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に印加する電圧(60Hz、矩形波)は0Vから20Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が10%になったときの電圧で表した。
【0145】
(16a)応答時間(τ;25℃で測定;ms;誘電率異方性が正の試料):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5.0μmであり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に矩形波(60Hz、5V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%であるとみなした。立ち上がり時間(τr:rise time;ミリ秒)は、透過率が90%から10%に変化するのに要した時間である。立ち下がり時間(τf:fall time;ミリ秒)は透過率10%から90%に変化するのに要した時間である。応答時間は、このようにして求めた立ち上がり時間と立ち下がり時間との和で表した。
【0146】
(16b)応答時間(τ;25℃で測定;ms;誘電率異方性が負の試料):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が3.2μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のPVA素子に試料を入れた。この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子にしきい値電圧を若干超える程度の電圧を1分間印加し、次に5.6Vの電圧を印加しながら23.5mW/cmの紫外線を8分間照射した。この素子に矩形波(60Hz、10V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%であるとみなした。応答時間は透過率90%から10%に変化するのに要した時間(立ち下がり時間;fall time;ミリ秒)で表した。
【0147】
[合成例1]
化合物(No.1)の合成

【0148】
第1工程:
アルゴン雰囲気下の反応器へ、テトラフルオロホウ酸トロピウム(13.20g、74.2mmol)とメタノール(75ml)とを入れ、そこへ、室温下でNaOMe/メタノール溶液(25ml、125.0mmol)を滴下し、12時間撹拌した。その後、NaOMe/メタノール溶液(5ml、25.0mmol)を滴下し、60℃で4時間撹拌した。反応混合物を25℃まで冷却した後、水に注いだ。この混合物をヘキサンで抽出し、抽出液を飽和重曹水および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を常圧下で留去して残渣を得た。残渣を減圧蒸留で精製して、化合物(T−1)(5.34g、収率59%)を得た。
【0149】
第2工程:
アルゴン雰囲気下の反応器へ、i−PrMgCl/LiCl(66ml、66.0mmol)を入れ、そこへ、室温下でp−ジブロモベンゼン(15.48g、66.0mmol)のTHF(40ml)溶液を滴下し、45℃で3時間撹拌した。その後、反応混合物を25℃まで冷却し、化合物(T−1)(5.34g、43.7mmol)のTHF(30ml)溶液を滴下し、さらに50℃で1時間撹拌した。反応混合物を25℃まで冷却した後、10%塩化アンモニウム水溶液に注いだ。この混合物をイソプロピルエーテルで抽出し、抽出液を飽和食塩水および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を常圧下で留去して残渣を得た。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=95/5、容積比)で精製して、化合物(T−2)(7.69g、収率71%)を得た。
【0150】
第3工程:
アルゴン雰囲気下の反応器へ、Mg(0.83g、34.2mmol)、LiCl(1.45g、34.2mmol)およびTHF(5ml)を入れた。そこへ、室温下で化合物(T−2)(7.69g、31.1mmol)のTHF(20ml)溶液を滴下し、50℃で2時間撹拌して、グリニャール試薬を調製した。別の反応器にクロロギ酸メチル(6.11g、64.7mmol)およびTHF(30ml)をアルゴン雰囲気下で入れ、−5℃に冷却した。先に調製したグリニャール試薬を滴下し、1時間撹拌した。反応混合物を10%塩化アンモニウム水溶液に注いだ。この混合物をイソプロピルエーテルで抽出し、抽出液を飽和食塩水および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を常圧下で留去して残渣を得た。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=95/5、容積比)で精製して、化合物(T−3)(4.42g、収率63%)を得た。
【0151】
第4工程:
反応器へ、化合物(T−3)(2.02g、8.9mmol)、メタノール(20ml)を入れ、そこへ、室温下でNaOH(2g、50mmol)水溶液(10ml)を滴下し、1.5時間撹拌した。反応混合物に10%HCl水溶液(50ml)を加え、この混合物を酢酸エチルで抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄し、溶媒を常圧下で留去して化合物(T−4)(1.89g、収率100%)を得た。
【0152】
第5工程:
アルゴン雰囲気下の反応器へ、化合物(T−4)(1.89g、8.9mmol)、ジクロロメタン(20ml)およびDMF(2ml)を入れ、そこへ、室温下で塩化チオニル(2ml、27.4mmol)を滴下し、加熱還流下で3時間撹拌した。反応混合物を25℃まで冷却した後、溶媒を常圧下で留去して残渣を得た。この残渣、ジクロロメタン(20ml)、テトラメチルピペリジノール(4.2g、26.7mmol)およびピリジン(15ml)をアルゴン雰囲気下で反応器に入れ、終夜で撹拌した後、反応混合物を水に注いだ。この混合物を酢酸エチルで抽出し、抽出液を10%HCl水溶液、5%重曹水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を常圧下で留去して残渣を得た。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=95/5、容積比)で精製し、さらに再結晶(ヘキサン)により精製し、化合物(No.1)(0.82g、収率26%)を得た。
【0153】
H−NMR(CDCl;Δppm):8.03(dd,2H)、7.44(dd,2H)、6.76(t,2H)、6.31−6.28(m,2H)、5.45(tt,1H)、5.40(dd,2H)、2.82(t,1H)、2.07(dd,2H)、1.42−1.17(m,15H).
【0154】
[合成例2]
化合物(No.11)を合成例1の方法に従って合成した。
H−NMR(CDCl;δppm):8.03(d,2H)、7.43(d,2H)、6.75(quin,2H)、6.29(m,2H)、5.40(dd,2H)、5.32(tt,1H)、2.82(t,1H)、2.31(br,3H)、2.01(d,2H)、1.26−1.16(m,14H).
【0155】
[合成例3]
化合物(No.12)の合成。
【0156】
第1工程:
化合物(No.101)を合成例1の方法に従って合成した。
化合物(No.101)(2.00g、収率39%)
【0157】
第2工程:
アルゴン雰囲気下の反応器へ、化合物(No.101)(2.00g、5.5mmol)、1,4−ジオキサン(20ml)を入れ、そこへ、室温下でアスコルビン酸(2.89g、16.4mmol)水溶液を滴下し、3時間撹拌した。反応混合物をジクロロメタンで抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄し、溶媒を常圧下で留去して残渣を得た。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、さらに再結晶により精製し、化合物(No.12)(0.86g、収率43%)を得た。
【0158】
H−NMR(CDCl;δppm):8.02(d,2H)、7.43(d,2H)、6.75(quin,2H)、6.28(m,2H)、5.40(dd,2H)、5.30(tt,1H)、4.22(br,1H)、2.82(t,1H)、2.04(dd,2H)、1.71(dd,2H)、1.25(s,12H).
【0159】
[合成例4]
化合物(No.14)を合成例1の方法に従って合成した。
H−NMR(CDCl;δppm):8.02(d,2H)、7.42(d,2H)、6.75(quin,2H)、6.28(m,2H)、5.39(dd,2H)、5.28(tt,1H)、3.63(s,3H)、2.81(t,1H)、1.97(dd,2H)、1.71(dd,2H)、1.25(s,6H)、1.24(s,6H).
【0160】
[低温における溶解度の比較]


本発明の化合物(No.1)および比較化合物(LA77)の低温における溶解度を比較した。化合物(LA77)は、ADEKA製のヒンダードアミン系光安定剤である。下記の液晶組成物(A)に化合物(No.1)を0.1%の割合で添加し、50℃で30分間加熱した。この溶液を−20℃で20日間保管した。その後、結晶が析出したか否かを目視により観察した。一方、ADEKA製の比較化合物(LA77)についても同様な方法で観察した。表3に結果を示す。表3の記号において“○”は結晶が析出しなかったことを、“×”は結晶が析出したことを示す。表3から、本発明の化合物(No.1)は、液晶組成物(A)への溶解度が良好であることが分かった。なお、液晶組成物(A)の成分とその割合は以下のとおりであった。
【0161】
液晶組成物(A)
【0162】
液晶組成物(A)の特性は、次のとおりであった。NI=76.0℃;Δn=0.107;Δε=−3.0.
【0163】
表3.液晶組成物(A)への溶解度の比較
【0164】
実施例1に記載した合成法に準じて、以下の化合物(No.1)から(No.100)などを合成できる。
【0165】

【0166】

【0167】

【0168】

【0169】

【0170】
2.液晶組成物の実施例
使用例によって本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの使用例によっては制限されない。本発明は、使用例1の組成物と使用例2の組成物との混合物を含む。本発明は、使用例の組成物の少なくとも2つを混合した混合物をも含む。実施例(使用例を含む)における化合物は、下記の表4の定義に基づいて記号により表した。表4において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は化合物が属する化学式を表す。(−)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の含有量(百分率)は、液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)である。最後に、液晶組成物の特性値をまとめた。特性は、先に記載した方法にしたがって測定し、測定値を(外挿することなく)そのまま記載した。
【0171】

【0172】
[使用例1]
2−HB−C (8−1) 5%
3−HB−C (8−1) 12%
7−HB−1 (2−5) 5%
3−HB−O2 (2−5) 10%
2−BTB−1 (2−10) 3%
3−HHB−F (6−1) 4%
3−HHB−1 (3−1) 8%
3−HHB−O1 (3−1) 5%
3−HHB−3 (3−1) 14%
3−HHEB−F (6−10) 4%
5−HHEB−F (6−10) 4%
2−HHB(F)−F (6−2) 7%
3−HHB(F)−F (6−2) 7%
5−HHB(F)−F (6−2) 7%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 5%
上記の組成物に下記の化合物(No.1)を0.05重量%の割合で添加した。


NI=99.3℃;η=17.8mPa・s;Δn=0.098;Δε=4.5.
【0173】
[使用例2]
3−HB−CL (5−2) 13%
3−HH−4 (2−1) 12%
3−HB−O2 (2−5) 8%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 3%
5−HHB(F,F)−F (6−3) 5%
3−HBB(F,F)−F (6−24) 25%
5−HBB(F,F)−F (6−24) 24%
5−HBB(F)B−2 (4−5) 5%
5−HBB(F)B−3 (4−5) 5%
上記の組成物に下記の化合物(No.11)を0.07重量%の割合で添加した。


NI=71.8℃;η=18.9mPa・s;Δn=0.114;Δε=5.3.
【0174】
[使用例3]
3−HB−O2 (2−5) 7%
7−HB(F,F)−F (5−4) 3%
3−HBB−F (6−22) 3%
2−HHB(F)−F (6−2) 10%
3−HHB(F)−F (6−2) 10%
5−HHB(F)−F (6−2) 10%
2−HBB(F)−F (6−23) 9%
3−HBB(F)−F (6−23) 9%
5−HBB(F)−F (6−23) 13%
2−HBB−F (6−22) 4%
3−HBB−F (6−22) 4%
5−HBB−F (6−22) 3%
3−HBB(F,F)−F (6−24) 5%
5−HBB(F,F)−F (6−24) 10%
上記の組成物に下記の化合物(No.12)を0.08重量%の割合で添加した。


NI=86.2℃;η=24.6mPa・s;Δn=0.116;Δε=5.7.
【0175】
[使用例4]
3−HB−CL (5−2) 5%
5−HB−CL (5−2) 11%
3−HH−4 (2−1) 12%
3−HH−5 (2−1) 4%
3−HHB−F (6−1) 4%
3−HHB−CL (6−1) 3%
4−HHB−CL (6−1) 4%
3−HHB(F)−F (6−2) 10%
4−HHB(F)−F (6−2) 9%
5−HHB(F)−F (6−2) 9%
7−HHB(F)−F (6−2) 8%
5−HBB(F)−F (6−23) 4%
1O1−HBBH−5 (4−1) 3%
3−HHBB(F,F)−F (7−6) 2%
4−HHBB(F,F)−F (7−6) 3%
5−HHBB(F,F)−F (7−6) 3%
3−HH2BB(F,F)−F (7−15) 3%
4−HH2BB(F,F)−F (7−15) 3%
上記の組成物に下記の化合物(No.14)を0.05重量%の割合で添加した。


NI=114.2℃;η=19.1mPa・s;Δn=0.091;Δε=3.7.
【0176】
[使用例5]
3−HHB(F,F)−F (6−3) 9%
5−HHB(F,F)−F (6−3) 5%
3−H2HB(F,F)−F (6−15) 8%
4−H2HB(F,F)−F (6−15) 8%
5−H2HB(F,F)−F (6−15) 8%
3−HBB(F,F)−F (6−24) 21%
5−HBB(F,F)−F (6−24) 15%
3−H2BB(F,F)−F (6−27) 10%
5−HHBB(F,F)−F (7−6) 3%
5−HHEBB−F (7−17) 2%
3−HH2BB(F,F)−F (7−15) 3%
1O1−HBBH−4 (4−1) 4%
1O1−HBBH−5 (4−1) 4%
上記の組成物に下記の化合物(No.1)を0.08重量%の割合で添加した。


NI=98.8℃;η=34.6mPa・s;Δn=0.114;Δε=8.9.
上記の組成物に化合物(Op−05)を0.25重量%の割合で添加したときのピッチは66.4μmであった。
【0177】
[使用例6]
5−HB−F (5−2) 12%
6−HB−F (5−2) 9%
7−HB−F (5−2) 7%
2−HHB−OCF3 (6−1) 7%
3−HHB−OCF3 (6−1) 7%
4−HHB−OCF3 (6−1) 7%
5−HHB−OCF3 (6−1) 5%
5−HH2B−OCF3 (6−4) 4%
3−HHB(F,F)−OCF2H (6−3) 4%
3−HHB(F,F)−OCF3 (6−3) 5%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 4%
3−HH2B(F)−F (6−5) 3%
3−HBB(F)−F (6−23) 10%
5−HBB(F)−F (6−23) 10%
5−HBBH−3 (4−1) 3%
3−HB(F)BH−3 (4−2) 3%
上記の組成物に下記の化合物(No.11)を0.01重量%の割合で添加した。


NI=83.8℃;η=15.5mPa・s;Δn=0.091;Δε=4.7.
【0178】
[使用例7]
5−HB−CL (5−2) 11%
3−HH−4 (2−1) 8%
3−HHB−1 (3−1) 5%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 8%
3−H2HB(F,F)−F (6−15) 5%
3−HBB(F,F)−F (6−24) 15%
5−HBB(F,F)−F (6−24) 15%
3−HHEB(F,F)−F (6−12) 10%
4−HHEB(F,F)−F (6−12) 3%
5−HHEB(F,F)−F (6−12) 3%
2−HBEB(F,F)−F (6−39) 3%
3−HBEB(F,F)−F (6−39) 5%
5−HBEB(F,F)−F (6−39) 3%
3−HHBB(F,F)−F (7−6) 6%
上記の組成物に下記の化合物(No.12)を0.04重量%の割合で添加した。


NI=80.9℃;η=22.2mPa・s;Δn=0.100;Δε=8.6.
【0179】
[使用例8]
3−HB−CL (5−2) 6%
5−HB−CL (5−2) 4%
3−HHB−OCF3 (6−1) 5%
3−H2HB−OCF3 (6−13) 5%
5−H4HB−OCF3 (6−19) 15%
V−HHB(F)−F (6−2) 5%
3−HHB(F)−F (6−2) 5%
5−HHB(F)−F (6−2) 5%
3−H4HB(F,F)−CF3 (6−21) 8%
5−H4HB(F,F)−CF3 (6−21) 10%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 3%
5−H2HB(F,F)−F (6−15) 5%
5−H4HB(F,F)−F (6−21) 7%
2−H2BB(F)−F (6−26) 5%
3−H2BB(F)−F (6−26) 7%
3−HBEB(F,F)−F (6−39) 5%
上記の組成物に下記の化合物(No.14)を0.03重量%の割合で添加した。


NI=67.3℃;η=24.4mPa・s;Δn=0.093;Δε=8.1.
【0180】
[使用例9]
3−HB−CL (5−2) 5%
5−HB−CL (5−2) 12%
7−HB(F,F)−F (5−4) 3%
3−HH−4 (2−1) 10%
3−HH−5 (2−1) 5%
3−HB−O2 (2−5) 15%
3−HHB−1 (3−1) 8%
3−HHB−O1 (3−1) 5%
2−HHB(F)−F (6−2) 7%
3−HHB(F)−F (6−2) 7%
5−HHB(F)−F (6−2) 7%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 6%
3−H2HB(F,F)−F (6−15) 5%
4−H2HB(F,F)−F (6−15) 5%
上記の組成物に下記の化合物(No.1)を0.03重量%の割合で添加した。


NI=70.2℃;η=13.2mPa・s;Δn=0.074;Δε=2.7.
【0181】
[使用例10]
V2−BB−1 (2−8) 5%
5−HB−CL (5−2) 3%
7−HB(F)−F (5−3) 7%
3−HH−4 (2−1) 9%
3−HH−5 (2−1) 10%
3−HB−O2 (2−5) 8%
3−HHEB−F (6−10) 8%
5−HHEB−F (6−10) 8%
3−HHEB(F,F)−F (6−12) 10%
4−HHEB(F,F)−F (6−12) 5%
3−GHB(F,F)−F (6−109) 5%
4−GHB(F,F)−F (6−109) 6%
5−GHB(F,F)−F (6−109) 7%
2−HHB(F,F)−F (6−3) 4%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 5%
上記の組成物に下記の化合物(No.11)を0.05重量%の割合で添加した。


NI=70.2℃;η=18.1mPa・s;Δn=0.071;Δε=6.0.
【0182】
[使用例11]
1V2−BEB(F,F)−C (8−15) 6%
3−HB−C (8−1) 18%
2−BTB−1 (2−10) 10%
3−HH−V (2−1) 10%
5−HH−VFF (2−1) 20%
3−HHB−1 (3−1) 4%
VFF−HHB−1 (3−1) 8%
VFF2−HHB−1 (3−1) 11%
3−H2BTB−2 (3−17) 5%
3−H2BTB−3 (3−17) 4%
3−H2BTB−4 (3−17) 4%
上記の組成物に下記の化合物(No.12)を0.06重量%の割合で添加した。


NI=81.4℃;η=10.4mPa・s;Δn=0.129;Δε=6.7.
【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明の化合物は、光安定剤として有用である。この化合物を含有する液晶組成物は、パソコン、テレビなどに用いる液晶表示素子に広く利用できる。