(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)第一検査点と第二検査点とが対になった複数の検査点対が、それぞれに設けられた複数の被測定基板のうち少なくとも一つの被測定基板に対して、前記複数の検査点対のうち一つを対象検査点対として選択する工程と、
(b)前記対象検査点対を除く残余の検査点対の前記第一検査点と前記第二検査点との間に予め設定された測定用電流を流しつつ、前記対象検査点対である検査点対に対応して予め設定された一対の測定点間の電圧を測定し、その測定された電圧に基づく電圧を、前記対象検査点対として選択された検査点対に対応する補正用電圧として記憶部に記憶する工程と、
(c)前記対象検査点対を、前記複数の検査点対のうちの他の検査点対から順次選択して前記(b)工程を実行することによって、前記各検査点対に対応する補正用電圧を記憶部に記憶する工程と、
(d)前記複数の被測定基板のうち、前記少なくとも一つの被測定基板とは別の前記被測定基板について、前記複数の検査点対の前記第一検査点と前記第二検査点との間に前記測定用電流をそれぞれ流す工程と、
(e)前記各検査点対に対応する前記一対の測定点間に生じた電圧を、前記(d)工程の実行期間中に、前記各検査点対に対応する測定電圧として測定する工程と、
(f)前記各検査点対に対応する前記測定電圧から前記補正用電圧を減算することによって、補正電圧を算出する工程と、
(g)前記補正電圧と前記測定用電流とに基づいて、前記各検査点対間の抵抗値を算出する工程とを含む抵抗測定方法。
前記(b)及び(d)工程において、定電流回路を用いて前記第一検査点へ前記測定用電流を供給し、定電流回路を用いて前記第二検査点から前記測定用電流を引き込むことによって、前記第一検査点と前記第二検査点との間に前記測定用電流を流す請求項1記載の抵抗測定方法。
前記検査点対のうち一方は、その検査点対に対応する一対の測定点のうちの一方の測定点であり、その検査点対のうち他方は、その一対の測定点のいずれとも異なる検査点である請求項1又は2に記載の抵抗測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一枚の回路基板に形成される配線パターン等の導電部の数は、数百〜数千に及ぶ場合がある。このような多数の配線パターンに対し、一つずつ順番に電流供給と電圧測定を行って抵抗測定しようとすると、すべての配線パターンの抵抗を測定するのに時間がかかる。そこで、電流供給を行う電源部と、電圧測定を行う電圧検出部とを複数対用いて、複数箇所の抵抗測定を並行して実行したいというニーズがある。
【0005】
図9は、複数対の電源部と電圧検出部とによって複数箇所の抵抗測定を並行して実行する場合の課題を説明するための説明図である。
図9に示す被検査基板900には、導電部911,921が形成されている。導電部911の一端は検査点912とされ、導電部911の他端は検査点913とされている。検査点912には電流供給部CS1が接続され、検査点913は回路グラウンドに接続されている。導電部921の一端は検査点922とされ、導電部921の他端は検査点923とされている。検査点922には電流供給部CS2が接続され、検査点913は回路グラウンドに接続されている。
【0006】
電圧検出部VM1は検査点912と検査点913との間の電圧V1を測定し、電圧検出部VM2は検査点922と検査点923との間の電圧V2を測定する。
【0007】
ここで、導電部911,921は分離されているとは限られず、
図9に示すように、例えば検査点912と検査点922とが導通経路931を介して導通し、検査点913と検査点923とが導通経路932を介して導通している場合がある。このような場合に、電流供給部CS1から検査点912へ電流I1を供給すると、電流I1は、導電部911を流れる電流I1aと導通経路931を流れる電流I1bとに分流する。電流供給部CS2から検査点922へ電流I2を供給すると、電流I2は、導電部921を流れる電流I2aと導通経路931を流れる電流I2bとに分流する。
【0008】
もし導通経路931,932がなければ、導電部911の抵抗値はV1/I1aで求められ、導電部921の抵抗値はV2/I2aで求められる。しかしながら、導通経路931,932があると、導通経路931,932による電流の回り込みが発生するため、導電部911には電流I1a+I2bが流れ、導電部921には電流I2a+I1bが流れる。電流I1a,I1b,I2a,I2bは不明であるため、この場合は導電部911,921の抵抗値を求めることができない。
【0009】
本発明の目的は、被測定基板に形成された複数の検査点に対し、並行して電流供給しつつ、各検査点間の抵抗を測定することが可能な抵抗測定方法、抵抗測定装置、及び基板検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る抵抗測定方法は、(a)第一検査点と第二検査点とが対になった複数の検査点対が、それぞれに設けられた複数の被測定基板のうち少なくとも一つの被測定基板に対して、前記複数の検査点対のうち一つを対象検査点対として選択する工程と、(b)前記対象検査点対を除く残余の検査点対の前記第一検査点と前記第二検査点との間に予め設定された測定用電流を流しつつ、前記対象検査点対である検査点対に対応して予め設定された一対の測定点間の電圧を測定し、その測定された電圧に基づく電圧を、前記対象検査点対として選択された検査点対に対応する補正用電圧として記憶部に記憶する工程と、(c)前記対象検査点対を、前記複数の検査点対のうちの他の検査点対から順次選択して前記(b)工程を実行することによって、前記各検査点対に対応する補正用電圧を記憶部に記憶する工程と、(d)前記複数の被測定基板のうち、前記少なくとも一つの被測定基板とは別の前記被測定基板について、前記複数の検査点対の前記第一検査点と前記第二検査点との間に前記測定用電流をそれぞれ流す工程と、(e)前記各検査点対に対応する前記一対の測定点間に生じた電圧を、前記(d)工程の実行期間中に、前記各検査点対に対応する測定電圧として測定する工程と、(f)前記各検査点対に対応する前記測定電圧から前記補正用電圧を減算することによって、補正電圧を算出する工程と、(g)前記補正電圧と前記測定用電流とに基づいて、前記各検査点対間の抵抗値を算出する工程とを含む。
【0011】
また、本発明に係る抵抗測定装置は、上述の抵抗測定方法によって前記各検査点対間の抵抗値を算出する。
【0012】
これらの構成によれば、工程(b)によって、対象検査点対を除く残余の検査点対の第一検査点と第二検査点との間に測定用電流を流しつつ、対象検査点対である検査点対に対応する一対の測定点間の電圧が測定される。そして、その測定された電圧に基づく電圧が、対象検査点対として選択された検査点対に対応する補正用電圧として記憶部に記憶される。補正用電圧は、対象検査点対以外の検査点対に供給された測定用電流の回り込みによって、対象検査点対に対応する測定点対間に生じた電圧に相当する。工程(c)によって、各検査点対に対応する補正用電圧が、それぞれ記憶部に記憶される。
【0013】
工程(d)で、各検査点対に対して並行して測定用電流が流される。そして、工程(e)で、各検査点対に対応する一対の測定点間に生じた電圧が、(d)工程の実行期間中に、各検査点対に対応する測定電圧として測定される。従って、各検査点対に対して並行して測定用電流を流しつつ、各検査点対に対応する測定電圧を測定することができるので、測定時間を短縮することが容易である。
【0014】
さらに、工程(f)で、各検査点対に対応する測定電圧から補正用電圧が減算されて補正電圧が算出される。補正電圧は、他の各検査点対からの回り込み電流により生じる電圧であるから、測定電圧から補正用電圧を減算することによって、回り込み電流の影響が排除される。そして、工程(g)で、回り込み電流の影響が排除された補正電圧と、測定用電流とに基づいて各検査点対間の抵抗値が算出されるので、並行して電流供給することにより測定時間を短縮しつつ、回り込み電流の影響を排除することが可能となる。
【0015】
また、前記(b)及び(d)工程において、定電流回路を用いて前記第一検査点へ前記測定用電流を供給し、定電流回路を用いて前記第二検査点から前記測定用電流を引き込むことによって、前記第一検査点と前記第二検査点との間に前記測定用電流を流すことが好ましい。
【0016】
この構成によれば、第一検査点へ供給される電流値と、第二検査点から引き込まれる電流値とが略等しくされるので、第一検査点と第二検査点との間に、他の検査点対からの回り込み電流が流れるおそれが低減される。
【0017】
また、前記検査点対のうち一方は、その検査点対に対応する一対の測定点のうちの一方の測定点であり、その検査点対のうち他方は、その一対の測定点のいずれとも異なる検査点であることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、検査点対のうち一方と測定点対のうち一方とが同じ検査点にされており、検査点対のうち他方と測定点対のうち他方とは異なっている。例えば、被測定基板が、金属板がコアレス基板の一面に密着したような中間基板であり、各検査点がコアレス基板を貫通する導電部によって金属板で短絡されている場合等、検査点対のうち他方と測定点対のうち他方とを異ならせることにより、その他方の測定点には測定用電流が流れない。その結果、測定点と共通する側の検査点に連なる導電部の抵抗値とほぼ近似の抵抗値を測定することが可能となる。
【0019】
また、本発明に係る基板検査装置は、上述の抵抗測定方法によって算出された抵抗値に基づいて、前記被測定基板の検査を行う基板検査部を備える。
【0020】
この構成によれば、並行して電流供給することにより抵抗測定時間を短縮しつつ、回り込み電流の影響を排除することができるので、被測定基板の検査精度を維持しつつ、検査時間を短縮することが容易となる。
【発明の効果】
【0021】
このような構成の抵抗測定方法、抵抗測定装置、及び基板検査装置は、被測定基板に形成された複数の検査点に対し、並行して電流供給しつつ、各検査点間の抵抗を測定することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る抵抗測定方法を用いる基板検査装置1の構成を概念的に示す模式図である。
図1に示す基板検査装置1は、測定対象となる基板B(被測定基板)の抵抗値に基づいて、基板Bを検査する。
【0024】
図1に示す基板検査装置1は、筐体112を有している。筐体112の内部空間には、基板固定装置110と、測定部121と、測定部122と、測定部移動機構125と、制御部20と、操作部21とが主に設けられている。基板固定装置110は、測定対象の基板Bを所定の位置に固定するように構成されている。
【0025】
測定部121は、基板固定装置110に固定された基板Bの上方に位置する。測定部122は、基板固定装置110に固定された基板Bの下方に位置する。測定部121,122は、基板Bに形成されたパッドにプローブPrを接触させるための測定治具4U,4Lを備えている。
【0026】
測定治具4U,4Lには、複数のプローブPrが取り付けられている。測定治具4U,4Lは、基板Bの表面に形成されたパッドの配置と対応するように複数のプローブPrを配置、保持する。測定部移動機構125は、制御部20からの制御信号に応じて測定部121,122を筐体112内で適宜移動させ、測定治具4U,4LのプローブPrを基板Bの各検査点に接触させる。
【0027】
なお、基板検査装置1は、測定部121,122のうちいずれか一方のみを備えてもよい。そして、基板検査装置1は、いずれか一方の測定部によって、基板Bを表裏反転させてその両面の測定を行うようにしてもよい。
【0028】
基板Bは、例えばプリント配線基板、半導体パッケージ用のパッケージ基板、フィルムキャリア、フレキシブル基板、セラミック多層配線基板、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ用の電極板、コアレス基板、半導体基板、及びこれらの基板を製造する過程にある基板であってもよい。
【0029】
基板Bの表面には、パッド、電極、配線パターン等の導電部が形成されている。これら導電部のうち任意の箇所が、検査対象としてプローブPrが接触される検査点とされている。
【0030】
近年、支持体となるコア層を有しない、いわゆるコアレス基板が用いられている。コアレス基板の製造方法として、導電性の金属板(キャリア)を土台としてこの金属板の片面又は両面にビルドアップ層による配線層を積層する。このようにして積層形成された配線層を土台の金属板から剥離することによって、一枚又は二枚のコアレス基板を形成する方法がある。このような基板の製造方法において、土台の金属板からコアレス基板を剥離する前の状態の基板(以下、中間基板と称する)は、コアレス基板の一方の面に、金属板が密着した態様を有している。
【0031】
コアレス基板はコア層を有しないため、機械強度が弱い。そのため、コアレス基板が金属板で支持された状態のまま、コアレス基板に部品を実装することが行われている。部品を実装してしまうとコアレス基板を検査することができないので、中間基板の状態の基板Bに対して、基板検査が行われる。
【0032】
上述の中間基板が検査対象の基板Bである場合、コアレス基板の一方の面が金属板と密着しているので、その面に形成されたすべての導電部が金属板で短絡された状態で、反対側の面に形成された導電部相互間の抵抗値を測定することによって、基板Bの検査を行うことになる。
【0033】
図2は、
図1に示す測定部121の電気的構成の一例を示すブロック図である。測定部122は、測定部121と同様に構成されているのでその説明を省略する。
図3は、基板Bの抵抗測定を行う状態を概念的に示す説明図である。
図3では、説明を簡単にするためスキャナ部31の記載を省略している。
【0034】
図2に示す測定部121は、複数の測定ブロックM1,M2,M3、スキャナ部31、及び複数のプローブPrを備えている。測定ブロックM1は電流供給部CS1、電流引込部CM1、及び電圧検出部VM1a,VM1bを備え、測定ブロックM2は電流供給部CS2、電流引込部CM2、及び電圧検出部VM2a,VM2bを備え、測定ブロックM3は電流供給部CS3、電流引込部CM3、及び電圧検出部VM3a,VM3bを備えている。
【0035】
以下、電流供給部CS1,CS2,CS3を総称して電流供給部CSと称し、電流引込部CM1,CM2,CM3を総称して電流引込部CMと称し、電圧検出部VM1a,VM1b,VM2a,VM2b,VM3a,VM3bを総称して電圧検出部VMと称することがある。測定ブロックの数は、二ブロックであってもよく、四ブロック以上であってもよい。
【0036】
スキャナ部31は、例えばトランジスタやリレースイッチ等のスイッチング素子を用いて構成された切り替え回路である。スキャナ部31は、基板Bに抵抗測定用の電流を供給するための電流端子+F,−Fと、電圧を検出するための電圧検出端子+Sa,−Sa,+Sb,−Sbとを、各測定ブロックに対応して備えている。また、スキャナ部31は、回路グラウンドに接続される接地端子Gを任意の個数備えている。スキャナ部31には、複数のプローブPrが電気的に接続されている。スキャナ部31は、制御部20からの制御信号に応じて、電流端子+F,−F、電圧検出端子+Sa,−Sa,+Sb,−Sb、及び接地端子Gと、複数のプローブPrとの間の接続関係を切り替える。
【0037】
電流供給部CSは、その出力端子の一端が回路グラウンドに接続され、他端が電流端子+Fに接続されている。電流供給部CSは、制御部20からの制御信号に応じて予め設定された供給電流Io(測定電流)を電流端子+Fへ供給する定電流回路である。
【0038】
電流引込部CMは、その一端が電流端子−Fに接続され、他端が回路グラウンドに接続されている。電流引込部CMは、制御部20からの制御信号に応じて予め設定された引込電流Ii(測定電流)を電流端子−Fから回路グラウンドへ引き込む定電流回路である。
【0039】
各検査点の表面には、酸化により酸化膜が生じている場合がある。検査点の表面に酸化膜が生じると、プローブPrとの接触抵抗が増大するため抵抗測定の精度が低下する。このような酸化膜は、所定の酸化膜除去電流値以上の電流を流すことによって除去できる。酸化膜除去電流値は、例えば20mAである。プローブPrには、そのプローブを損傷させることなく流すことのできる電流値の上限値として定格電流値が定められている。プローブPrの定格電流値は、例えば40mAに満たない電流値であり、例えば30mAである。
【0040】
引込電流Ii及び供給電流Io、即ち測定電流は、例えば20mA以上、かつ30mA以下に設定されている。これにより、プローブPrを損傷させることなく、かつ検査点の表面の酸化膜を除去して抵抗測定の精度を向上させるようになっている。
【0041】
各供給電流Ioと各引込電流Iiとは、互いに略等しい電流値Iとされている。これにより、一対の電流供給部CSと電流引込部CMとによって、測定対象の導電部間に、予め設定された測定用電流Iを流すようになっている。各供給電流Ioと各引込電流Iiとが互いに略等しい電流値Iとされていることによって、測定ブロックM1〜M3において、各導電部に流れる電流が均等化される。その結果、抵抗測定しようとする導電部に流れる電流のバラツキが減少し、抵抗測定精度が向上する。供給電流Ioと引込電流Iiとの間には、電流供給部CS及び電流引込部CMの電流精度誤差程度の差が生じている場合がある。
【0042】
電圧検出部VM1a,VM2a,VM3aは、その一端が電圧検出端子+Saに接続され、他端が電圧検出端子−Saに接続されている。電圧検出部VM1a,VM2a,VM3aは、各測定ブロックの電圧検出端子+Sa,−Sa間の電圧を測定し、その電圧値を制御部20へ送信する電圧検出回路である。電圧検出部VM1b,VM2b,VM3bは、その一端が電圧検出端子+Sbに接続され、他端が電圧検出端子−Sbに接続されている。電圧検出部VM1b,VM2b,VM3bは、各測定ブロックの電圧検出端子+Sb,−Sb間の電圧を測定し、その電圧値を制御部20へ送信する電圧検出回路である。
【0043】
スキャナ部31は、制御部20からの制御信号に応じて、接地端子G、測定ブロックM1〜M3の電流端子+F,−F、及び電圧検出端子+Sa,−Sa,+Sb,−Sbを、任意のプローブPrに導通接続可能にされている。これにより、スキャナ部31は、制御部20からの制御信号に応じて、プローブPrが接触している任意の検査点対間に電流を流し、任意の検査点対間に生じた電圧を電圧検出部VMによって測定させ、任意の検査点を回路グラウンドに接続することが可能にされている。
【0044】
図3に示す基板Bは、金属板MPの一方の面に基板WB1が形成され、金属板MPの他方の面に基板WB1と同じ基板WB2が形成された中間基板の一例である。基板WB1,WB2は例えばコアレス基板である。
【0045】
基板WB1,WB2の基板面BS1には、パッドや配線パターン等の導電部PA1,PB1,・・・,PZ1が形成されている。導電部PA1,PB1,・・・,PZ1は検査点とされている。基板WB1,WB2の、金属板MPとの接触面BS2には、パッドや配線パターン等の導電部PA2,PB2,・・・,PZ2が形成されている。金属板MPは、例えば厚さが1mm〜10mm程度の導電性を有する金属板である。
【0046】
接触面BS2は金属板MPと密着しているので、導電部PA2,PB2,・・・,PZ2は、金属板MPを介して互いに導通している。
【0047】
導電部PA1〜PZ1は、ビアや配線パターン等の接続部RA〜RZによって導電部PA2〜PZ2と電気的に接続されている。導電部PA2〜PZ2が金属板MPを介して互いに導通しているので、導電部PA1〜PZ1もまた、接続部RA〜RZと金属板MPとを介して互いに導通している。
【0048】
図3では、基板Bを板厚方向に切断した断面で示している。
図3では、便宜上、導電部PA1〜PZ1及び導電部PA2〜PZ2が一列に並んでいるように記載しているが、実際は、導電部PA1〜PZ1,PA2〜PZ2は、基板面BS1及び接触面BS2の二次元平面内に分散配置されており、抵抗測定時に各導電部間に流れる電流経路が互いに重複する場合がある。以下、導電部PA1〜PZ1を総称して導電部Pと称する。
【0049】
図4は、
図3に示す説明図を等価回路で示した回路図である。
図4に示す等価回路では、金属板MPを抵抗Rのネットワークで示している。
【0050】
制御部20は、例えば、所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)と、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、所定の制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の記憶部204と、図略のタイマ回路、及びこれらの周辺回路等とを備えて構成されている。そして、制御部20は、例えば記憶部204に記憶された制御プログラムを実行することにより、補正用電圧取得部201、抵抗測定部202、及び基板検査部203として機能する。
【0051】
操作部21は、例えばキーボード、マウス、タッチパネルディスプレイ等の、操作入力装置である。操作部21は、ユーザによる操作指示を受け付けて、その操作指示を制御部20へ出力する。
【0052】
記憶部204には、所定の制御プログラムや、各検査点対間の抵抗値の基準値が予め記憶されている。
【0053】
補正用電圧取得部201は、下記の工程(a)〜(c)を実行する。(a)工程では、補正用電圧取得部201は、第一検査点と第二検査点とが対になった複数の検査点対が、それぞれに設けられた複数の基板Bのうち少なくとも一つの基板Bに対して、複数の検査点対のうち一つを対象検査点対として選択する。
【0054】
以下の説明では、説明の便宜上、補正用電圧取得部201又は抵抗測定部202が電流供給部CS及び電流引込部CMによって電流の供給、引込を実行させることを、単に補正用電圧取得部201又は抵抗測定部202が電流を流す、と記載し、補正用電圧取得部201又は抵抗測定部202が電圧検出部VMによって電圧を測定させることを、単に補正用電圧取得部201又は抵抗測定部202が電圧を測定する、と記載することがある。
【0055】
例えば、
図3、
図4に記載の例では、導電部PA1,PD1,PV1が第一検査点の一例に相当し、導電部PC1,PF1,PX1が第二検査点の一例に相当し、導電部PA1,PC1、導電部PD1,PF1、導電部PV1,PX1がそれぞれ検査点対の一例に相当し、導電部PA1,PC1が対象検査点対の一例に相当している。
【0056】
複数の基板B、とは、例えば基板Bの量産が予定されているなどして、基板Bが複数枚製造されることを意味する。必ずしも一箇所に同時に複数枚の基板Bが存在していなくてもよい。工程(a)〜(c)における少なくとも一つの基板Bとしては、良品の基板B、あるいは良品であると推定される基板Bのサンプルを用いることが好ましい。
【0057】
(b)工程では、補正用電圧取得部201は、対象検査点対を除く残余の検査点対の第一検査点と第二検査点との間、すなわち、導電部PA1,PC1を除く導電部PD1,PF1間と、導電部PV1,PX1間とに、電流供給部CS2,CS3と電流引込部CM2,CM3とによって測定用電流Iを流す。そしてこの測定用電流Iを流しつつ、対象検査点対である導電部PA1,PC1に対応して予め設定された一対の検査点である測定点対間に生じた電圧を補正用電圧として測定し、その補正用電圧を、対象検査点対として選択された導電部PA1,PC1に対応する補正用電圧として記憶部204に記憶する。
【0058】
なお、補正用電圧が記憶される記憶部は、必ずしも基板検査装置に組み込まれている例に限らない。記憶部は、例えばメモリカードやUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記憶媒体であってもよく、装置外部に配設され、ネットワーク等を介してアクセス可能にされた記憶装置であってもよい。
【0059】
図3、
図4に記載の例では、導電部PA1,PB1の一対と、導電部PB1,PC1の一対とが、それぞれ、導電部PA1,PC1に対応して設定された一対の測定点に相当している。導電部PA1,PB1間の電圧は電圧検出部VM1aによって測定され、導電部PB1,PC1間の電圧は電圧検出部VM1bによって測定される。導電部PA1,PC1、導電部PD1,PF1、導電部PV1,PX1の各検査点対に対応する測定点対は、予め設定されて記憶部204に記憶されている。
【0060】
(c)工程では、補正用電圧取得部201は、対象検査点対を、複数の検査点対のうちの他の検査点対である導電部PD1,PF1、導電部PV1,PX1から順次選択して(b)工程を実行することによって、各検査点対に対応する補正用電圧を記憶部204に記憶する。
【0061】
抵抗測定部202は、下記の工程(d)〜(g)を実行する。(d)工程では、抵抗測定部202は、前記少なくとも一つの基板Bとは別の基板Bを測定対象として、複数の検査点対の第一検査点と第二検査点との間に測定用電流Iをそれぞれ流す。
図3、
図4の例によれば、すべての電流供給部CS1,CS2,CS3による電流供給と、すべての電流引込部CM1,CM2,CM3による電流引き込みとが、並行して実行される。
【0062】
別の基板Bとは、例えば基板Bの製造工程や、基板Bへの部品実装の前工程などで、検査しようとする対象の基板である。工程(a)〜(c)の対象となった基板Bに対して工程(d)〜(g)を実行してもよいが、本発明の効果は、工程(a)〜(c)の対象となった基板B以外の基板Bの抵抗値を測定する際に得られる。
【0063】
(d)工程では、抵抗測定部202は、測定対象の基板Bについて、導電部PA1,PC1、導電部PD1,PF1、及び導電部PV1,PX1の検査点対に測定用電流Iをそれぞれ流す。
【0064】
(e)工程では、抵抗測定部202は、測定対象の基板Bについて、各検査点対である導電部PA1,PC1、導電部PD1,PF1、及び導電部PV1,PX1に対応する各測定点対間に生じた電圧を、(d)工程の実行期間中に、各検査点対に対応する測定電圧として測定する。
【0065】
(f)工程では、抵抗測定部202は、各検査点対に対応する測定電圧と補正用電圧とに基づいて、補正電圧を算出する。
【0066】
(g)工程では、抵抗測定部202は、補正電圧と測定用電流Iとに基づいて、各検査点対間の抵抗値を算出する。
【0067】
基板検査部203は、抵抗測定部202によって算出された各検査点対間の抵抗値に基づいて、基板Bの検査を実行する。
【0068】
次に、上述の基板検査装置1の動作について説明する。被測定基板が基板Bである場合を例に、測定部121を用いて基板部WB1の抵抗測定を行う抵抗測定方法について説明する。測定部122を用いて基板部WB2の抵抗測定を行う場合については、測定部121を用いて基板部WB1の抵抗測定を行う場合と同様であるのでその説明を省略する。
【0069】
図5、
図6は、本発明の一実施形態に係る抵抗測定方法における、補正用電圧の取得動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【0070】
まず、ユーザが良品の基板Bを基板固定装置110に固定し、操作部21を操作して補正用電圧の取得を指示する。そうすると、補正用電圧取得部201は、測定部移動機構125によって測定部121を移動させ、基板固定装置110に固定された基板Bの導電部Pに測定治具4UのプローブPrを接触させる(ステップS1)。
図3に示す例では、いわゆる四端子測定法によって抵抗測定する場合を例示しており、電流供給用のプローブPrとは別に、電圧測定用のプローブPrが用いられている。
【0071】
なお、基板検査装置1は、四端子測定法によって抵抗測定を行う例に限られず、各導電部にプローブPrを一つずつ接触させ、一つのプローブPrで電流供給と電圧測定とを兼用する構成としてもよい。この場合、一対の検査点に対応する一対の測定点として、そのままその一対の検査点が用いられることになる。
【0072】
次に、補正用電圧取得部201は、導電部PA1,PC1を対象検査点対として選択する(ステップS2:工程(a))。補正用電圧取得部201は、電流供給部CS2,CS3及び電流引込部CM2,CM3によって、対象検査点対以外の検査点対である導電部PD1,PF1間と、導電部PV1,PX1間とに、それぞれ測定用電流Iを流させる。一方、補正用電圧取得部201は、電流供給部CS1及び電流引込部CM1からは、対象検査点対の導電部PA1,PC1には電流を流させない(ステップS3)。
【0073】
次に、補正用電圧取得部201は、電流供給部CS2,CS3及び電流引込部CM2,CM3による電流供給及び引き込みを開始させてから予め設定された設定待時間Twが経過した後(ステップS4でYES)、導電部PA1,PC1に対応する測定点対である導電部PA1,PB1と、導電部PB1,PC1とについて、導電部PA1,PB1間の電圧を電圧検出部VM1aによって極性を含めて測定させ、導電部PB1,PC1間の電圧を電圧検出部VM1bによって極性を含めて測定させる(ステップS5)。
【0074】
導電部PA1〜PZ1、接続部RA〜RZ、及び金属板MPには、浮遊容量が存在する。そのため、各電流供給部CSからの電流供給開始直後は、その供給電流によって浮遊容量が充電され、測定点対間の電圧が充電に伴って徐々に上昇する。そのため、各電流供給部CSからの電流供給開始直後に測定点対間の電圧を測定すると、充電過程の過渡的な電圧が測定される結果、補正用電圧の測定精度が低下する。
【0075】
そこで、補正用電圧取得部201は、ステップS4及び後述するステップS9,S15において、導電部対への電流供給開始から設定待時間Twが経過するのを待って、電圧測定を実行する。設定待時間Twは、浮遊容量が充電されて測定点対間の電圧が安定するのに十分な時間、例えば1秒程度の時間が予め設定されている。
【0076】
次に、補正用電圧取得部201は、電圧検出部VM1a,VM1bの測定電圧を、対象検査点対である導電部PA1,PC1に対応する補正用電圧Vc1a及び補正用電圧Vc1bとして記憶部204に記憶させる(ステップS6)。ステップS3〜S6は、工程(b)の一例に相当している。
【0077】
以上、ステップS2〜S6によれば、導電部PA1,PC1以外の検査点対に対応するすべての電流供給部CS2,CS3及び電流引込部CM2,CM3により流れた電流によって導電部PA1,PC1に対応する二対の測定点である導電部PA1,PB1及び導電部PB1,PC1に生じた電圧が、補正用電圧Vc1a及び補正用電圧Vc1bとして記憶部204に記憶される。
【0078】
補正用電圧Vc1a及び補正用電圧Vc1bは、電流供給部CS2,CS3及び電流引込部CM2,CM3に起因する回り込み電流によって生じた電圧に相当している。
【0079】
次に、補正用電圧取得部201は、導電部PD1,PF1を新たな対象検査点対として選択する(ステップS7)。以下、補正用電圧取得部201は、ステップS3〜S6と同様の処理を、導電部PD1,PF1を対象検査点対とすると共に、導電部PD1,PE1の対と、導電部PE1,PF1の対とを新たな測定点対として実行し、導電部PD1,PF1に対応する補正用電圧Vc2a及び補正用電圧Vc2bを記憶部204に記憶させる(ステップS8〜S12)。
【0080】
以上、ステップS7〜S12によれば、導電部PD1,PF1以外の検査点対に対応するすべての電流供給部CS1,CS3及び電流引込部CM1,CM3により流れた電流によって導電部PD1,PF1に対応する二対の測定点である導電部PD1,PE1及び導電部PE1,PF1に生じた電圧が、補正用電圧Vc2a及び補正用電圧Vc2bとして記憶部204に記憶される。
【0081】
補正用電圧Vc2a及び補正用電圧Vc2bは、電流供給部CS1,CS3及び電流引込部CM1,CM3に起因する回り込み電流によって生じた電圧に相当している。
【0082】
次に、補正用電圧取得部201は、導電部PV1,PX1を新たな対象検査点対として選択する(ステップS13)。以下、補正用電圧取得部201は、ステップS3〜S6と同様の処理を、導電部PV1,PX1を対象検査点対とすると共に、導電部PV1,PW1の対と、導電部PW1,PX1の対とを新たな測定点対として実行し、導電部PV1,PX1に対応する補正用電圧Vc3a及び補正用電圧Vc3bを記憶部204に記憶させる(ステップS14〜S17)。ステップS8〜S17は、工程(c)の一例に相当している。
【0083】
以上、ステップS13〜S17によれば、導電部PV1,PX1以外の検査点対に対応するすべての電流供給部CS1,CS2及び電流引込部CM1,CM2により流れた電流によって導電部PV1,PX1に対応する二対の測定点である導電部PV1,PW1及び導電部PW1,PX1に生じた電圧が、補正用電圧Vc3a及び補正用電圧Vc3bとして記憶部204に記憶される。
【0084】
補正用電圧Vc3a及び補正用電圧Vc3bは、電流供給部CS1,CS2及び電流引込部CM1,CM2に起因する回り込み電流によって生じた電圧に相当している。
【0085】
以上、ステップS1〜S17の処理によって、導電部PA1,PC1、導電部PD1,PF1、及び導電部PV1,PX1の各検査点対に対応する補正用電圧Vc1a,Vc1b、補正用電圧Vc2a,Vc2b、及び補正用電圧Vc3a,Vc3bが記憶部204に記憶される。
【0086】
なお、ステップS1〜S17を、一枚の基板Bに対して実行する例に限らない。例えば、ステップS1〜S5,S7〜S11,S13〜S16を、複数枚の基板Bに対して実行し、ステップS6,S12,S17では、ステップS5,S11,S16で、複数枚の基板Bで測定された、複数枚分の測定値の平均値を、補正用電圧Vc1a,Vc1b、補正用電圧Vc2a,Vc2b、及び補正用電圧Vc3a,Vc3bとして記憶部204に記憶するようにしてもよい。
【0087】
これにより、複数枚の被測定基板から得られた補正用電圧が、記憶部に記憶されるので、基板の特性バラツキの影響が低減され、補正用電圧の精度が向上する。
【0088】
図7、
図8は、本発明の一実施形態に係る抵抗測定方法における、抵抗測定動作及び検査動作の一例を説明するためのフローチャートである。まず、ユーザが、抵抗測定を行おうとする基板Bを基板固定装置110に固定し、操作部21を操作して抵抗値測定を指示する。そうすると、抵抗測定部202は、測定部移動機構125によって測定部121を移動させ、基板固定装置110に固定された基板Bの導電部Pに測定治具4UのプローブPrを接触させる(ステップS21)。
【0089】
次に、抵抗測定部202は、各電流供給部CS及び各電流引込部CMによって、導電部PA1,PC1、導電部PD1,PF1、及び導電部PV1,PX1間に、それぞれ測定用電流Iを流させる(ステップS22:工程(d))。
【0090】
次に、抵抗測定部202は、各電流供給部CS及び各電流引込部CMによる電流供給及び引き込みを開始させてから設定待時間Twが経過した後(ステップS23でYES)、導電部PA1,PB1間の電圧と導電部PB1,PC1間の電圧とを、電圧検出部VM1a,VM1bによって、測定電圧Vs1a,Vs1bとして極性を含めて測定させ(ステップS24:工程(e))、導電部PD1,PE1間の電圧と導電部PE1,PF1間の電圧とを、電圧検出部VM2a,VM2bによって、測定電圧Vs2a,Vs2bとして極性を含めて測定させ(ステップS25:工程(e))、導電部PV1,PW1間の電圧と導電部PW1,PX1間の電圧とを、電圧検出部VM3a,VM3bによって、測定電圧Vs3a,Vs3bとして極性を含めて測定させる(ステップS26:工程(e))。
【0091】
次に、抵抗測定部202は、記憶部204に記憶された補正用電圧Vc1a,Vc1b,Vc2a,Vc2b,Vc3a,Vc3bと、ステップS24〜S26で測定された測定電圧Vs1a,Vs1b,Vs2a,Vs2b,Vs3a,Vs3bとに基づいて、下記の式(1)〜(6)を用いて補正電圧V1a,V1b,V2a,V2b,V3a,V3bを算出する(ステップS31:(f))。
補正電圧V1a=Vs1a−Vc1a ・・・(1)
補正電圧V1b=Vs1b−Vc1b ・・・(2)
補正電圧V2a=Vs2a−Vc2a ・・・(3)
補正電圧V2b=Vs2b−Vc2b ・・・(4)
補正電圧V3a=Vs3a−Vc3a ・・・(5)
補正電圧V3b=Vs3b−Vc3b ・・・(6)
【0092】
次に、抵抗測定部202は、下記の式(7)〜(12)に基づいて、抵抗値R1a,R1b,R2a,R2b,R3a,R3bを算出する(ステップS32)。
抵抗値R1a=V1a/ I ・・・(7)
抵抗値R1b=V1b/ I ・・・(8)
抵抗値R2a=V2a/ I ・・・(9)
抵抗値R2b=V2b/ I ・・・(10)
抵抗値R3a=V3a/ I ・・・(11)
抵抗値R3b=V3b/ I ・・・(12)
【0093】
以上、ステップS21〜S32の抵抗測定方法によれば、導電部PA1,PC1に対応する抵抗値R1a,R1bと、導電部PD1,PF1に対応する抵抗値R2a,R2bと、導電部PV1,PX1に対応する抵抗値R3a,R3bとを算出することができる。
【0094】
ステップS22によれば、測定ブロックM1,M2,M3によって、導電部PA1,PC1、導電部PD1,PF1、及び導電部PV1,PX1の各検査点対に対して、並行して測定用電流Iを流すことができるので、各検査点対に対して、個別に順次電流を流す場合と比べて処理時間を短縮することができる。
【0095】
各検査点対に対して個別に電流を流して順次測定する場合、検査点対を切り換える都度設定待時間Twが発生するため、処理時間が長くなる。一方、ステップS22,S23によれば、設定待時間Twによる充電時間待ちは一回でよいので、各検査点対に対して個別に電流を流して順次測定する場合と比べて処理時間の短縮効果が大きい。
【0096】
ステップS1〜S17による補正用電圧の測定処理は、一枚又は所定枚数の基板Bで実行すればよく、その後の基板Bの抵抗測定は、ステップS21〜S32のみを実行すればよいので、抵抗測定対象の基板Bの枚数が増加するほど、処理時間の短縮効果が増大する。
【0097】
また、ステップS22のように、各検査点対に対して並行して測定用電流Iを流す場合、抵抗測定しようとする検査点対間に、その検査点対とは別の検査点対に対応する電流供給部CS及び電流引込部CMからの電流が回り込むおそれがある。このような電流の回り込みが生じると、その検査点対に流れる電流の電流値が、本来流そうとしている測定用電流Iとは異なる電流値になってしまう。この場合、オームの法則に基づき測定された電圧値を測定用電流Iで除算すると、実際に流れた電流値と異なる電流値で除算することになるため、算出された抵抗値に誤差が生じる。
【0098】
そこで、ステップS31において、測定電圧から補正用電圧を減算して補正電圧を算出する。補正用電圧は、上述したように、回り込み電流で生じた電圧に相当しているから、測定電圧から補正用電圧を減算することによって、回り込み電流の影響を排除することができる。ステップS32では、このようにして得られた補正電圧に基づいて抵抗値が算出されるので、抵抗値の測定精度を向上することができる。
【0099】
ステップS3,S8,S14,S22で、本来流そうとしている測定用電流Iの方向と、回り込みにより生じた電流の方向とが逆方向であった場合、回り込み電流は、測定電圧を低下させるように作用する。しかしながら、ステップS5,S11,S16において、補正用電圧(回り込み電流により生じた電圧)を、極性を含めて測定しているので、電流方向が逆であった場合には、補正用電圧がマイナスの値となる。その結果、ステップS31において、回り込み電流が逆方向の場合はマイナスの補正用電圧を減算、すなわち補正用電圧の絶対値を加算することになる。その結果、回り込み電流が逆方向の場合であっても、ステップS31において、回り込み電流の影響を排除することができる。
【0100】
すなわち、ステップS1〜S32の抵抗測定方法によれば、複数の電源部から並行して電流供給しつつ、各検査点間の抵抗を測定することによって、抵抗測定精度の低下を抑制しつつ、抵抗測定時間を短縮することが可能となる。
【0101】
次に、基板検査部203は、基準値Ref(1a),Ref(1b),Ref(2a),Ref(2b),Ref(3a),Ref(3b)に基づいて、抵抗値R1a,R1b,R2a,R2b,R3a,R3bの良否を判定する(ステップS33)。基準値Ref(1a),Ref(1b),Ref(2a),Ref(2b),Ref(3a),Ref(3b)は、抵抗値R1a,R1b,R2a,R2b,R3a,R3bの良否を判定するための基準値であり、予め記憶部204に記憶されている。
【0102】
例えば、基板検査部203は、抵抗値R1a,R1b,R2a,R2b,R3a,R3bと、基準値Ref(1a),Ref(1b),Ref(2a),Ref(2b),Ref(3a),Ref(3b)とをそれぞれ比較し、その差が予め設定された許容範囲内であれば、その抵抗値は良好、許容範囲外であれば不良と判定する(ステップS33)。
【0103】
そして、基板検査部203は、抵抗値R1a,R1b,R2a,R2b,R3a,R3bの全てが良好であれば(ステップS34でYES)検査対象の基板Bは良品と判定し(ステップS35)、抵抗値R1a,R1b,R2a,R2b,R3a,R3bが一つでも不良であれば(ステップS34でNO)検査対象の基板Bは不良と判定し、処理を終了する。
【0104】
基板検査部203は、抵抗測定精度の低下を抑制しつつ、抵抗測定時間を短縮することが可能な抵抗測定方法によって得られた抵抗値に基づいて基板Bの検査を行うので、検査精度の低下を抑制しつつ、基板Bの検査時間を短縮することが可能となる。
【0105】
なお、
図3、
図4では、検査点対のうち一方は、その検査点対に対応する一対の測定点のうちの一方の測定点であり、その検査点対のうち他方は、その一対の測定点のいずれとも異なる検査点である例を示している。
【0106】
具体的には、例えば測定ブロックM1を例に説明すると、導電部PA1,PC1(検査点対)のうち一方の導電部PA1は、導電部PA1,PC1に対応する測定点対である導電部PA1,PB1のうち一方であり、導電部PA1,PC1のうち他方の導電部PC1は、その測定点対である導電部PA1,PB1とは異なる検査点である。また、導電部PA1,PC1(検査点対)のうち一方の導電部PC1は、導電部PA1,PC1に対応するもう一つの測定点対である導電部PB1,PC1のうち一方であり、導電部PA1,PC1のうち他方の導電部PA1は、その測定点対である導電部PB1,PC1とは異なる検査点である。
【0107】
このようにすると、測定点対である導電部PA1,PB1間の電圧を測定する電圧検出部VM1aは、導電部PA1から、接続部RA、金属板MP、及び接続部RBを介して導電部PB1に至る経路の両端電圧を測定することになる。ここで、接続部RBは電流供給部CS1及び電流引込部CM1の電流経路から外れているので、電圧検出部VM1aの測定電圧は、接続部RAと金属板MPの直列抵抗に生じた電圧となる。さらに、金属板MPは面状導体であるため、接続部RAより低抵抗になる可能性が高い。その結果、電圧検出部VM1aの測定電圧を測定用電流Iで除して得られた抵抗値は、ほぼ、接続部RAの抵抗値に近い。
【0108】
同様に、電圧検出部VM1bの測定電圧を測定用電流Iで除して得られた抵抗値は、ほぼ、接続部RCの抵抗値に近い。
【0109】
このように、コアレス基板等の基板WB1の一方の面に導体板が密着された中間基板等を抵抗測定対象として、検査点対のうち一方を、その検査点対に対応する一対の測定点のうちの一方の測定点とし、その検査点対のうち他方を、その一対の測定点のいずれとも異なる検査点とした場合には、検査点と測定点とに共用される導電部RA1に連なる接続部RAの抵抗値を電圧検出部VM1aの測定電圧に基づき測定可能となり、検査点と測定点とに共用される導電部RC1に連なる接続部RCの抵抗値を電圧検出部VM1bの測定電圧に基づき測定可能となる。
【0110】
なお、電圧検出部VM1b,VM2b,VM3bを備えない構成としてもよい。さらに、電圧検出部VM1aによって導電部PA1,PC1間の電圧を測定させ、電圧検出部VM2aによって導電部PD1,PF1間の電圧を測定させ、電圧検出部VM3aによって導電部PV1,PX1間の電圧を測定させる構成としてもよい。
【0111】
また、電流引込部CM1,CM2,CM3を備えず、回路グラウンドに接続されたプローブPrを、導電部PC1,PF1,PX1に接触させる構成としてもよい。
【0112】
また、基板検査装置1は、基板検査部203を備えない抵抗測定装置として構成されていてもよい。また、上述の抵抗測定方法は、必ずしも一台の装置によって実行されるものに限らない。上述の抵抗測定方法は、複数の装置によって分担して実行されてもよい。例えば、ステップS1〜S17(工程(a)〜(c))と、ステップS21〜S32(工程(d)〜(g))とが、異なる装置によって実行されてもよい。