(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調整量演算部は、前記負荷側反射係数と前記設定後の制御パラメータとに基づいて前記インピーダンス変更手段における反射係数の目標値としてチューニング目標値を算出し、前記インピーダンス変更手段における反射係数が前記チューニング目標値に一致するように前記インピーダンス変更手段の調整量を算出することを特徴とする請求項1に記載の自動整合装置。
前記インピーダンス変更手段は、それぞれ独立した調整量に応じて前記伝送路のインピーダンスを変更する少なくとも3つのインピーダンス変更素子を備えることを特徴とする請求項1に記載の自動整合装置。
前記調整量演算部は、前記負荷側反射係数と前記設定後の制御パラメータとに基づいて、前記3つのインピーダンス制御素子のうちいずれか1つのインピーダンス変更素子における反射係数の目標値として第1チューニング目標値を算出し、
前記第1チューニング目標値と前記設定後の制御パラメータとに基づいて、該インピーダンス変更素子に対する第1調整量を算出し、
前記第1調整量に基づいて、前記3つのインピーダンス制御素子のうち残りのいずれか1つのインピーダンス変更素子における反射係数の目標値として第2チューニング目標値を算出し、
前記第2チューニング目標値と前記設定後の制御パラメータとに基づいて、該インピーダンス変更素子に対する第2調整量を算出し、
前記制御部は、前記第1調整量と前記第2調整量との組に基づいて、2つのインピーダンス変更素子を制御することを特徴とする請求項3に記載の自動整合装置。
前記インピーダンス変更素子は、前記伝送路中に挿入される長さを前記調整量とするスタブであることを特徴とする請求項3から請求項6の何れか1項に記載の自動整合装置。
前記インピーダンス変更素子は、前記伝送路から分岐された導波管内における短絡面の位置を前記調整量とする導波管分岐可変リアクタンスであることを特徴とする請求項3から請求項6の何れか1項に記載の自動整合装置。
前記インピーダンス変更素子は、前記伝送路から分岐された同軸管内における短絡面の位置を前記調整量とする同軸管分岐可変リアクタンスであることを特徴とする請求項3から請求項6の何れか1項に記載の自動整合装置。
前記制御パラメータは、前記インピーダンス変更手段の調整量を算出する際の反復計算に用いられることを特徴とする請求項1から請求項12の何れか1項に記載の自動整合装置。
マイクロ波電源と負荷との間でマイクロ波を伝送する伝送路と、前記伝送路における前記負荷の近傍に設定される負荷側基準点の反射係数である負荷側反射係数を変更するための調整量を有するインピーダンス変更手段と、前記インピーダンス変更手段の調整量を制御する制御部と、を備える整合装置の自動整合方法であって、
前記制御部は、
前記伝送路を伝搬するマイクロ波の周波数情報を取得し、
前記伝送路中のモニタ基準点における前記マイクロ波の進行波および反射波それぞれの利得情報および位相情報を取得し、
前記マイクロ波の周波数情報に基づいて、前記インピーダンス変更手段の調整量と相関をもつ制御パラメータを設定し、
前記モニタ基準点における前記マイクロ波の進行波および反射波それぞれの利得情報および位相情報とから、前記負荷側反射係数を算出し、
前記設定後の制御パラメータと前記負荷側反射係数とを用いて前記インピーダンス変更手段の調整量を算出する、
ことを特徴とする自動整合方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態に係る自動整合装置および自動整合方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る自動整合装置の概略構成を示す図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る自動整合装置100は、マイクロ波電源101と負荷104とを繋ぐ導波管103の一部として構成されたものであり、方向性結合器102と3つのスタブS1,S2,S3と制御部106とを備えている。
【0025】
導波管103は、中空の金属管で構成されており、当該中空の管内に電界および磁界を形成しながらマイクロ波を伝播する伝送路であり、ここでは、マイクロ波電源101と負荷104との間でマイクロ波を伝送する伝送路として機能している。なお、マイクロ波電源101と負荷104との間でマイクロ波を伝送する伝送路は、導波管103に限らず、同軸ケーブルとしてもよい。
【0026】
マイクロ波電源101は、導波管103に出力するマイクロ波の周波数情報を取得する周波数取得手段を有しており、取得された周波数情報を制御部106に送信することができるように構成されている。なお、周波数取得手段が取得するマイクロ波の周波数情報とは、マイクロ波の測定結果とは限らず、マイクロ波電源101が所望の周波数のマイクロ波を発振するための設定パラメータから決定される周波数情報としてもよい。ここでマイクロ波電源101は、例えばソリッドステート方式などの周波数の変更可能なマイクロ波電源を用い、変更可能な周波数の範囲は例えばISM周波数帯とする。
【0027】
方向性結合器102は、導波管103の途中に設定されたモニタ基準点P1におけるマイクロ波の進行波および反射波を取得するための機構であり、導波管103内を伝播するマイクロ波の進行波および反射波の一部を分岐することができるように構成されている。方向性結合器102によって一部が分岐されたマイクロ波の進行波および反射波は、利得位相検出器116によってそれぞれの利得情報および位相情報が取得される。方向性結合器102および利得位相検出器116を介して取得されたモニタ基準点P1におけるマイクロ波の進行波および反射波それぞれの利得情報および位相情報は、制御部106に送信される。なお、導波管103の代わりに同軸ケーブルを用いる構成では、同軸導波管変換器を介して方向性結合器102と接続しても良い。
【0028】
図2は、利得位相検出器の構成例を示す図である。本実施形態に係る利得位相検出器116は、必ずしも
図2に示される構成に限定されるものではないが、
図2に示される利得位相検出器116は、本実施形態に利用可能な構成例を与えている。
図2に示すように、利得位相検出器116は、進行波用および反射波用のログアンプ201と、位相検出部202と、利得出力インターフェイス回路203と、位相出力インターフェイス回路204とを備えている。ログアンプ201は、進行波と反射波とをそれぞれ対数的に増幅し、位相検出器203と利得出力インターフェイス回路203とに出力を供給する。位相検出部202は、進行波と反射波とのそれぞれの位相を検出し、その結果を位相出力インターフェイス回路204へ出力する。そして、利得出力インターフェイス回路203とおよび位相出力インターフェイス回路204は、進行波と反射波とのそれぞれの利得情報および位相情報を出力する構成である。尚、利得情報、位相情報としては、進行波および反射波から得られる利得、位相の情報を所定の関係式にて電圧情報に変換した値を用いてもよい。
【0029】
ここで、
図1の参照に戻る。3つのスタブS1,S2,S3は、それぞれが導波管103に挿入される棒形の金属であり、各スタブS1,S2,S3の挿入箇所におけるマイクロ波の反射を調整するためのインピーダンス調整素子である。各スタブS1,S2,S3の挿入箇所におけるマイクロ波の反射量を定める反射係数は、導波管103に挿入されるスタブS1,S2,S3の挿入長によって変更可能である。結果、3つのスタブS1,S2,S3は、各挿入長を調整することによって、導波管103における負荷104に設定される負荷側基準点P5の反射係数を変更することができるインピーダンス変更手段として機能する。なお、本実施形態では、3つのスタブS1,S2,S3によって負荷側基準点P5の反射係数を変更する構成としているが、各スタブS1,S2,S3の代わりとして、導波管から分岐した副導波管にプランジャー(可動短絡板)を設け、当該プランジャーを移動することでインピーダンスを可変とする導波管分岐可変リアクタンスや、導波管を同軸管に置き換えた同軸管分岐可変リアクタンス等を用いるようにしてもよい。
【0030】
制御部106は、パラメータ設定部110と調整量演算部107と駆動制御部109とを備えている。なお、
図1に示される制御部106の概略構成は、機能ブロックとして記載したものであり、制御部106の実体が
図1のように分離されるとは限らない。例えば、パラメータ設定部110と調整量演算部107とを、1つの演算装置上で実行されるプログラムとして実現することも可能である。また、制御部106は、パラメータ設定部110および調整量演算部107と相互に通信可能に構成された記憶装置108を備え、後述する各種パラメータを記憶し得るように構成することが好ましい。また、記憶装置108は、パラメータ設定部110と調整量演算部107とを演算装置上に実現するためのプログラムも記憶するように構成してもよい。
【0031】
パラメータ設定部110は、マイクロ波電源101が発振するマイクロ波の周波数情報に基づいて、3つのスタブS1,S2,S3の挿入長と相関をもつ制御パラメータを設定ないし補正する。ここで、3つのスタブS1,S2,S3の挿入長と相関をもつ制御パラメータとは、後述するスタブS1,S2,S3のSパラメータなどを意味する。なお、パラメータ設定部110は、現在のスタブS1,S2,S3の位置を知り得るように、調整量演算部107が算出した各スタブS1,S2,S3の挿入長を受信し得るように構成されている。
【0032】
調整量演算部107は、モニタ基準点P1におけるマイクロ波の進行波および反射波それぞれの利得情報および位相情報に基づいて、モニタ基準点P1における基準点反射係数Γinを算出する。さらに、調整量演算部107は、パラメータ設定部110によって設定ないし補正された制御パラメータを用いて負荷側基準点P5における負荷側反射係数ΓLを算出する。その後、調整量演算部107は、負荷側基準点P5における負荷側反射係数ΓLが所望の反射係数になるような各スタブS1,S2,S3の挿入長を算出する。
【0033】
駆動制御部109は、調整量演算部107によって算出されたスタブS1,S2,S3の挿入長に基づいて、各スタブS1,S2,S3の挿入長を制御する。具体的には、駆動制御部109は、各スタブS1,S2,S3に設けられたモータ105a,105b,105cに制御指令を送信し、各モータ105a,105b,105cを動力として各スタブS1,S2,S3の導波管103に対する挿入長を制御する。なお、各スタブS1,S2,S3の代わりに導波管分岐可変リアクタンスや同軸管分岐可変リアクタンスを用いる場合、リアクタンスの一面を短絡面としてその位置を変更すればよい。
【0034】
(負荷側反射係数ΓLの算出方法)
ここで、スタブS1,S2,S3の挿入長を求めるために必要な負荷側反射係数ΓLの算出方法について説明する。
【0035】
図1に示すようにモニタ基準点P1と負荷側基準点P5との間に、点P2,P3,P4を設定する。モニタ基準点P1から点P2までの距離はd2であり、点P2からスタブS1までの距離はd1であり、スタブS1から点P3までの距離はd1であり、点P3からスタブS2までの距離はd1であり、スタブS2から点P4までの距離はd1であり、点P4からスタブS3までの距離はd1であり、スタブS3から負荷側基準点P5までの距離はd1である。
【0036】
以上のようにモニタ基準点P1と負荷側基準点P5との間を分割したとき、モニタ基準点P1と点P2との間、点P2と点P3との間、点P3と点P4との間、および、点P4と負荷側基準点P5との間のSパラメータをそれぞれ、S(E),S(S1),S(S2),S(S3)とすると、これらSパラメータは以下のように表現することができる。
【0038】
上記SパラメータS(E),S(S1),S(S2),S(S3)は、モニタ基準点P1と負荷側基準点P5との間の進行波および反射波の関係を2端子対回路として表現したものとなっている。
図3は、モニタ基準点P1と負荷側基準点P5との間の進行波および反射波の関係を2端子対回路として表現したモデルを示す図である。
【0039】
ここで、S(E)について検討すると、モニタ基準点P1と点P2との間にスタブが存在しないので、
S(E)
11=S(E)
22=0 (5)
S(E)
12=S(E)
21 (6)
である。
【0040】
また、モニタ基準点P1と点P2との間の位相差θ
Eは、導波管103の形状とモニタ基準点P1と点P2との間の距離d2と伝送されているマイクロ波の周波数とによって定まる。そして、上記S(E)
12は、この位相差θ
Eを用いて、以下のように表すことができる。
【0042】
ここで、位相差θ
Eは、周波数と相関があるので、使用候補の周波数における位相差θ
Eの値を条件式ないしテーブルとして予め取得しておくことで、現在の使用周波数に応じて位相差θ
Eを設定ないし補正することができる。一例として周波数の可変範囲が2.4GHz〜2.5GHzの場合において、周波数とθ
Eとの関係を
図4に示す。
図4は、周波数と位相差θ
Eの関係の例を示すグラフである。
【0043】
以上のように、Sパラメータの要素S(E)
12、すなわちSパラメータS(E)は、マイクロ波の周波数に依存する制御パラメータの一つであり、マイクロ波の周波数情報に基づき、パラメータ設定部110によって設定ないし補正される制御パラメータである。使用候補の周波数における位相差θ
Eの値の条件式ないしテーブルは、予め記憶装置108に記憶しておき、パラメータ設定部110は、周波数取得手段によって取得されたマイクロ波の周波数情報に基づいて、SパラメータS(E)の設定ないし補正を行う。
【0044】
次に、点P2と点P3との間のSパラメータS(S1)について検討を行う。点P2と点P3とは、スタブS1を中心として等しい距離d1の位置に配置されているので、SパラメータS(S1)の要素に関して、
S(S1)
11=S(S1)
22 (8)
S(S1)
12=S(S1)
21 (9)
という関係が成り立つ。
【0045】
なお、S(S1)
11およびS(S1)
12は、スタブS1の挿入長L1に変化する複素数である。
図5は、S(S1)
11とスタブS1の挿入長L1との関係を極座標表示したグラフであり、
図6は、S(S1)
12とスタブS1の挿入長L1との関係を極座標表示したグラフである。
【0046】
ここで、スタブの一般論として次のことが知られている。任意のスタブ挿入長Dにおけるスタブの反射係数Γ(D)は、入射波Viと反射波Vrを用いて、以下のように表すことができる。
【0048】
そして、位相定数をβとし、スタブの挿入長をΔdだけ変化させた場合の反射係数Γ(D+Δd)は、以下のように表すことができる。
【0050】
つまり、Γ(D+Δd)は、スタブの挿入長がΔdだけ変化することによって、Γ(D)に対して右回りに回転する変化を受ける。
【0051】
以上の一般論から解るように、スタブS1の挿入長L1を大きくすると、S(S1)
11およびS(S1)
12は、円の軌跡を描きながら変化する。
図5および
図6は、この軌跡を示したものである。
【0052】
また、S(S1)
11およびS(S1)
12は、スタブS1の挿入長L1と相関があることから、予めスタブS1の任意の挿入長L1におけるS(S1)
11およびS(S1)
12をそれぞれ1条件以上取得しておくことで、スタブS1の挿入長L1からS(S1)
11およびS(S1)
12を算出することができる。ここで、S(S1)
11およびS(S1)
12は、マイクロ波の周波数に対して依存性を有しているが、S(S1)
11およびS(S1)
12の実部reS(S1)
11と虚部imS(S1)
11、および、実部reS(S1)
12と虚部imS(S1)
12は、それぞれマイクロ波の周波数に相関があるので、マイクロ波の周波数情報に基づいてS(S1)
11およびS(S1)
12のいずれも補正することができる。
【0053】
図7から
図10は、スタブ挿入長L1の最大の長さをMaxとし、スタブ挿入長L1がL1=Max×1/4,L1=Max×1/2,L1=Max×3/4の場合において、周波数の可変範囲が2.4GHz〜2.5GHzの例に関する、それぞれ、周波数と実部reS(S1)
11、虚部imS(S1)
11、実部reS(S1)
12、および、虚部imS(S1)
12との関係を示すグラフである。
【0054】
以上の検討から解るように、Sパラメータの要素S(S1)
11およびS(S1)
12、すなわちSパラメータS(S1)は、マイクロ波の周波数に依存する制御パラメータの一つであり、マイクロ波の周波数情報に基づき、パラメータ設定部110によって設定ないし補正される制御パラメータである。使用候補の周波数における実部reS(S1)
11、虚部imS(S1)
11、実部reS(S1)
12、および、虚部imS(S1)
12の値の条件式ないしテーブルは、予め記憶装置108に記憶しておき、パラメータ設定部110は、周波数取得手段によって取得されたマイクロ波の周波数情報に基づいて、SパラメータS(S1)の設定ないし補正を行う。
【0055】
次に、点P3と点P4との間のSパラメータS(S2)および点P4と負荷側基準点P5との間のSパラメータS(S3)について検討を行う。ところで、これらSパラメータS(S2)およびS(S3)の各要素は、SパラメータS(S1)と同様の議論により、以下の関係が成り立つ。
【0056】
S(S2)
11=S(S2)
22 (12)
S(S2)
12=S(S2)
21 (13)
S(S3)
11=S(S3)
22 (14)
S(S3)
12=S(S3)
21 (15)
【0057】
また、点P3から点P4の区間および点P4から負荷側基準点P5の区間は、点P2から点P3の区間と同じ構造であることから、スタブS2の挿入長L2およびスタブS3の挿入長L3に対するS(S2)
11、S(S2)
12、S(S3)
11、S(S3)
12の挙動は、SパラメータS(S1)と同様に、
図5ないし
図6のような挙動となる。さらに、S(S2)
11、S(S2)
12、S(S3)
11、S(S3)
12の実部および虚部は、マイクロ波の周波数と相関がある。したがって、S(S2)
11、S(S2)
12、S(S3)
11、S(S3)
12は、スタブS2の挿入長L2およびスタブS3の挿入長L3から算出可能であり、マイクロ波の周波数を用いて補正することが可能である。
【0058】
モニタ基準点P1から負荷側基準点P5までの間の各SパラメータS(E),S(S1),S(S2),S(S3)の特徴が解ったところで、SパラメータS(E),S(S1),S(S2),S(S3)を合成したモニタ基準点P1と負荷側基準点P5との間のSパラメータS(T)を算出することを考える。このために、各SパラメータS(E),S(S1),S(S2),S(S3)をTパラメータに変換すると、以下のようになる。
【0060】
そして、上記TパラメータT(E),T(S1),T(S2),T(S3)を合成すると以下のようになる。
【0062】
上記T(T)をSパラメータに変換することにより、以下を得る。
【0064】
以上により、2端子対回路における関係から、負荷側反射係数ΓLは以下のように算出される。
【0066】
上記式(22)から解るように、負荷側反射係数ΓLは、モニタ基準点P1と負荷側基準点P5との間のSパラメータS(T)とモニタ基準点P1における基準点反射係数Γinとを用いて計算することができる。
【0067】
ここで、モニタ基準点P1における基準点反射係数Γinは、上述のように、方向性結合器102を介して取得されたモニタ基準点P1におけるマイクロ波の進行波および反射波それぞれの利得情報および位相情報から算出可能である。また、モニタ基準点P1と負荷側基準点P5との間のSパラメータS(T)は、SパラメータS(E),S(S1),S(S2),S(S3)から算出可能であり、各SパラメータS(E),S(S1),S(S2),S(S3)は、各スタブS1,S2,S3の挿入長L1,L2,L3から算出可能である。このとき、各SパラメータS(E),S(S1),S(S2),S(S3)は、マイクロ波の周波数に依存するが、本実施形態では、マイクロ波電源101が、導波管103に出力するマイクロ波の周波数情報を取得する周波数取得手段を有しており、取得された周波数情報をパラメータ設定部110に送信することができるように構成されているので、パラメータ設定部110は、マイクロ波の周波数情報に基づいて、各SパラメータS(E),S(S1),S(S2),S(S3)を設定ないし補正することが可能である。
【0068】
(負荷側反射係数ΓLの調整方法)
次に負荷側反射係数ΓLの調整方法を説明する。
【0069】
まず、負荷側反射係数ΓLを以下のように表現し、モニタ基準点P1と負荷側基準点P5との間の反射係数をチューナー反射係数Γtとする。
ΓL=R+jX (23)
Γt=S(T)
22 (24)
【0070】
例えば、モニタ基準点P1におけるVSWR(voltage standing wave ratio)を最小とする場合、目標値Γsetは、式(23)で表現される負荷側反射係数ΓLの複素共役となるときであり、モニタ基準点P1と負荷側基準点P5との間の反射係数Γtが目標値Γsetとなるように各スタブS1,S2,S3の挿入長L1,L2,L3を調整する必要がある。
Γset=R−jX (25)
Γt=Γset (26)
【0071】
ここで、スタブS1の挿入長をmとし、スタブS2の挿入長をnとし、スタブS3の挿入長を0とした場合のチューナー反射係数をΓt12(m,n)とする。一方、スタブS1の挿入長を0とし、スタブS2の挿入長をtとし、スタブS3の挿入長をuとした場合のチューナー反射係数をΓt23(t,u)とする。すると、チューナー反射係数Γt12(m,n)とチューナー反射係数Γt23(t,u)は、
図11に示すように、調整可能範囲を分割することができる。
図11は、チューナー反射係数の調整可能領域を示す図であり、
図11において、チューナー反射係数Γt12(m,n)は実線内の領域で示され、チューナー反射係数Γt23(t,u)は、破線内の領域で示されている。
【0072】
なお、
図11におけるチューナー反射係数Γt12(m,n)の境界線は、式(1)〜式(9)および式(12)〜式(21)から求めることができる。なお、境界線データは、マイクロ波の周波数に依存するが、S(S1)
12とスタブS1の挿入長L1の関係を用いるので、既述の議論により、周波数情報により補正することができる。
【0073】
ここで、スタブS1,S2の挿入長L1,L2とチューナー反射係数Γt12との関係について説明する。
【0074】
図12は、スタブS1の挿入長L1をL1=0,L1=Max×1/2,L1=Max×3/4,L1=Maxのそれぞれに固定した条件において、スタブS2の挿入長L2を変化させた場合のチューナー反射係数Γt12の変化を示すグラフである。ただし、Maxは、スタブS1の挿入長の最大値を意味する。
【0075】
式(11)から解るように、1つのスタブのみ変化させる場合は円の軌跡を描きながら右回りに回転する。そのため、スタブS1の挿入長L1を固定し、スタブS2の挿入長L2を0からMaxまで変化させると、
図12に示すように実線矢印の方向に円の軌跡を描きながら変化する。一方、スタブS2の挿入長L2を任意の長さnに固定して、スタブS1の挿入長L1を0からMaxまで変化させると、式(11)から、チューナー反射係数Γt12は、始点Γt12(0,n)から円の軌跡を描きながら右回りに変化する。このことから、
図12に示すように、スタブS1の挿入長L1を固定し、スタブS2の挿入長L2を変化させたときのチューナー反射係数Γt12の変化により描かれる円の軌跡は、スタブS1の挿入長L1が大きいほど外側に描かれる。
【0076】
ここで、スタブS1の挿入長L1をmに固定し、スタブS2の挿入長L2を変化させたときのチューナー反射係数Γt12の変化により描かれる円弧の中心をO12(m)としたとき、スタブS1の挿入長L1を0からMaxまで変化させると、
図12に示すように円弧の中心O12は破線矢印の方向に変化する。
【0077】
また、円弧の中心O12の実部reO12および虚部imO12は、周波数に対してそれぞれ相関があり、周波数情報により補正することができる。
図13および
図14は、スタブS1の挿入長L1がL1=Max×1/4,L1=Max×1/2,L1=Max×3/4の場合について、周波数の可変範囲が2.4GHz〜2.5GHzの例における、それぞれの周波数と円弧の中心O12の実部reO12および虚部imO12の関係を示すグラフである。
【0078】
一方、スタブS2,S3の挿入長L2,L3とチューナー反射係数Γt23との関係は以下のようである。
【0079】
図15は、スタブS2の挿入長L2をL2=0,L2=Max×1/2,L2=Max×3/4,L2=Maxのそれぞれに固定した条件において、スタブS3の挿入長L3を変化させた場合のチューナー反射係数Γt23の変化を示すグラフである。ただし、Maxは、スタブS2の挿入長の最大値を意味する。
【0080】
式(11)から解るように、1つのスタブのみ変化させる場合は円の軌跡を描きながら右回りに回転する。そのため、スタブS2の挿入長L2を固定し、スタブS3の挿入長L3を0からMaxまで変化させると、
図15に示すように実線矢印の方向に円の軌跡を描きながら変化する。一方、スタブS3の挿入長L3を任意の長さuに固定して、スタブS2の挿入長L2を0からMaxまで変化させると、式(11)から、チューナー反射係数Γt23は、始点Γt23(0,u)から円の軌跡を描きながら右回りに変化する。このことから、
図15に示すように、スタブS2の挿入長L2を固定し、スタブS3の挿入長L3を変化させたときのチューナー反射係数Γt23の変化により描かれる円の軌跡は、スタブS2の挿入長L2が大きいほど外側に描かれる。
【0081】
ここで、スタブS2の挿入長L2をtに固定し、スタブS3の挿入長L3を変化させたときのチューナー反射係数Γt23の変化により描かれる円弧の中心をO23(t)としたとき、スタブS2の挿入長L2を0からMaxまで変化させると、
図15に示すように円弧の中心O23は破線矢印の方向に変化する。
【0082】
また、円弧の中心O23の実部reO23および虚部imO23は、周波数に対してそれぞれ相関があり、周波数情報により補正することができる。
図16および
図17は、スタブS2の挿入長L2がL2=Max×1/4,L2=Max×1/2,L2=Max×3/4の場合について、周波数の可変範囲が2.4GHz〜2.5GHzの例における、それぞれの周波数と円弧の中心O23の実部reO23および虚部imO23の関係を示すグラフである。
【0083】
次に、式(26)を満たす各スタブS1,S2,S3の挿入長L1,L2,L3の制御方法を
図18から
図20を参照しながら説明する。
図18から
図20は、紙面の都合上分割して記載しているが、各スタブS1,S2,S3の挿入長L1,L2,L3の制御方法を示す連続したフローチャートである。
【0084】
本実施形態に係る制御方法は、
図18に示されるフローチャートの上部から始まる。ステップS201にて、方向性結合器102を介して取得されたモニタ基準点P1におけるマイクロ波の進行波および反射波それぞれの利得情報および位相情報から、調整量演算部107がモニタ基準点P1おける基準点反射係数Γinを算出する。
【0085】
次に、ステップS202にて、周波数取得手段を用いてマイクロ波電源101が導波管103に出力するマイクロ波の周波数情報を取得する。
【0086】
次に、ステップS203にて、パラメータ設定部110が、周波数取得手段を用いて取得されたマイクロ波の周波数情報を用いて、制御パラメータA,B,C,Dを設定ないし補正する。ここで、制御パラメータAとは、モニタ基準点P1と点P2との間の位相差θ
Eであり、制御パラメータBとは、スタブS1の挿入長L1とS(S1)
11との関係式またはテーブル値であり、制御パラメータCとは、スタブS1の挿入長L1とS(S1)
12との関係式またはテーブル値であり、制御パラメータDとは、スタブS1とスタブS2とを組み合わせて変更した場合のチューナー反射係数の調整が可能な領域の境界線のデータである。上述のように、これら制御パラメータA,B,C,Dは、周波数に対する依存性を有するので、パラメータ設定部110にてマイクロ波の周波数情報を用いて設定ないし補正する。
【0087】
次に、ステップS204にて、調整量演算部107は、ステップS201にて算出された基準点反射係数ΓinとステップS203にて設定ないし補正された制御パラメータA,B,C,Dを用いて、負荷側基準点P5における反射係数ΓLを算出する。具体的には、上述の式(1)〜式(9)および式(12)〜式(22)を用いれば、負荷側基準点P5における反射係数ΓLを算出することができる。
【0088】
次に、ステップS205にて、調整量演算部107は、式(23)および式(25)を用いて目標値Γsetを求める。
【0089】
ここで、ステップS206にて、調整量演算部107は、目標値ΓsetがスタブS1とスタブS2とを組み合わせて変更した場合のチューナー反射係数の調整が可能な領域Rに属しているか否かを判定する。具体的には、調整量演算部107は、ステップS203にて設定ないし補正した制御パラメータDを用いて、制御パラメータDが定める領域R内に目標値Γsetが属するか否かを判定する。結果、目標値Γsetが領域R内であればZ1の処理へ進み、領域R外であればZ2の処理へ進む。
【0090】
まず、目標値Γsetが領域R内である場合のZ1の処理について説明する。
図19は、Z1の処理についてのフローチャートである。
【0091】
Z1の処理では、最初に、ステップS301にて、パラメータ設定部110が、周波数取得手段を用いて取得されたマイクロ波の周波数情報を用いて、制御パラメータEを設定ないし補正する。ここで制御パラメータEとは、スタブS1の挿入長L1と中心O12(m)の関係式またはテーブル値である。なお、既述であるが、中心O12(m)は、スタブS1の挿入長L1をmに固定し、スタブS2の挿入長L2を変化させたときのチューナー反射係数Γt12の変化により描かれる円弧の中心である。当該ステップにて設定ないし補正した制御パラメータEをO’12(m)とし、このO’12(m)の実部をreO’12(m)とし、虚部をimO’12(m)とする。
【0092】
次に、ステップS302にて、調整量演算部107は、ステップS301にて設定ないし補正された制御パラメータEを用いて、以下のように、スタブS1の挿入長の設定値L1setを算出する。
【0093】
スタブS1,S2の挿入長をそれぞれm,nとしたとき、補正後の制御パラメータA,B,Cと式(1)〜式(9),式(12)〜式(22),式(24)とからチューナー反射係数Γt12(m,n)が求まる。このチューナー反射係数Γt12(m,n)の実部をreΓt12(m,n)とし、虚部をimΓt12(m,n)とする。
【0094】
すると、チューナー反射係数Γt12(m,n)と補正後の中心O’12(m)との間の距離の2乗Vaは、以下のようになる。
【0096】
一方、目標値Γsetと補正後の中心O’12(m)との間の距離の2乗Vbは、以下のようになる。
【0098】
ここで、スタブS1,S2の挿入長L1,L2とチューナー反射係数Γt12との関係から、
Vb−Va>0 (29)
となる場合は、設定値L1setがmよりも挿入長が大きいことを意味する。したがって、スタブS1の挿入長であるmを大きな値に変更し、再度、式(27)および式(28)の計算を行う。
【0099】
一方、
Vb−Va<0 (30)
となる場合は、設定値L1setがmよりも挿入長が小さいことを意味する。したがって、スタブS1の挿入長であるmを小さな値に変更し、再度、式(27)および式(28)の計算を行う。
【0100】
上記計算を繰り返すことで、
Vb−Va=0 (31)
となるmを探索する。このように得られたmがスタブS1の設定値L1setである。
【0101】
次に、ステップS303にて、上記求められた設定値L1setを用いて、式(26)を満たすスタブS2の挿入長の設定値L2setを以下のように求める。
【0102】
中心O’12(m)に上記求められた設定値L1setを代入し、中心O’12(L1set)を考える。この中心O’12(L1set)を始点とした2つのベクトルであるベクトルO’12(L1set)ΓsetとベクトルO’12(L1set)Γt12(L1set,n)の外積をWaとすると、外積Waは以下のようになる。
【0104】
ここで、スタブS1,S2の挿入長L1,L2とチューナー反射係数Γt12との関係から、
Wa<0 (33)
となる場合は、設定値L2setがnよりも挿入長が大きいことを意味する。したがって、スタブS2の挿入長であるnを大きな値に変更し、再度、式(32)の計算を行う。
【0105】
一方、
Wa>0 (34)
となる場合は、設定値L2setがnよりも挿入長が小さいことを意味する。したがって、スタブS2の挿入長であるnを小さな値に変更し、再度、式(32)の計算を行う。
【0106】
上記計算を繰り返すことで、
Wa=0 (35)
となるnを探索する。このように得られたnがスタブS2の設定値L2setである。
【0107】
最後に、ステップS304では、調整量演算部107は、上記のように算出されたスタブS1,S2のそれぞれの設定値L1set,L2setを駆動制御部109へ送信し、駆動制御部109は、スタブS1,S2の挿入長がそれぞれ設定値L1set,L2setになるように、モータ105a,105bを駆動する。なお、このときにスタブS3の挿入長は変更する必要はない。
【0108】
一方、目標値Γsetが領域R外である場合のZ2の処理は以下のように行われる。
図20は、Z2の処理についてのフローチャートである。
【0109】
Z2の処理では、最初に、ステップS401にて、パラメータ設定部110が、周波数取得手段を用いて取得されたマイクロ波の周波数情報を用いて、制御パラメータFを設定ないし補正する。ここで制御パラメータFとは、スタブS2の挿入長L2と中心O23(t)の関係式またはテーブル値である。なお、既述であるが、中心O23(t)は、スタブS2の挿入長L2をtに固定し、スタブS3の挿入長L3を変化させたときのチューナー反射係数Γt23の変化により描かれる円弧の中心である。当該ステップにて設定ないし補正した制御パラメータFをO’23(t)とし、このO’23(t)の実部をreO’23(t)とし、虚部をimO’23(t)とする。
【0110】
次に、ステップS402にて、調整量演算部107は、ステップS401にて設定ないし補正された制御パラメータFを用いて、以下のように、スタブS2の挿入長の設定値L2setを算出する。
【0111】
スタブS2,S3の挿入長をそれぞれt,uとしたとき、補正後の制御パラメータA,B,Cと式(1)〜式(9),式(12)〜式(22),式(24)とからチューナー反射係数Γt23(t,u)が求まる。このチューナー反射係数Γt23(t,u)の実部をreΓt23(t,u)とし、虚部をimΓt23(t,u)とする。
【0112】
すると、チューナー反射係数Γt23(t,u)と補正後の中心O’23(t)との間の距離の2乗Vcは、以下のようになる。
【0114】
一方、目標値Γsetと補正後の中心O’23(t)との間の距離の2乗Vdは、以下のようになる。
【0116】
ここで、スタブS2,S3の挿入長L2,L3とチューナー反射係数Γt23との関係から、
Vd−Vc>0 (38)
となる場合は、設定値L2setがtよりも挿入長が大きいことを意味する。したがって、スタブS2の挿入長であるtを大きな値に変更し、再度、式(36)および式(37)の計算を行う。
【0117】
一方、
Vd−Vc<0 (39)
となる場合は、設定値L2setがtよりも挿入長が小さいことを意味する。したがって、スタブS2の挿入長であるtを小さな値に変更し、再度、式(36)および式(37)の計算を行う。
【0118】
上記計算を繰り返すことで、
Vd−Vc=0 (40)
となるtを探索する。このように得られたtがスタブS2の設定値L2setである。
【0119】
次に、ステップS403にて、上記求められた設定値L2setを用いて、式(26)を満たすスタブS3の挿入長の設定値L3setを以下のように求める。
【0120】
中心O’23(t)に上記求められた設定値L2setを代入し、中心O’23(L2set)を考える。この中心O’23(L2set)を始点とした2つのベクトルであるベクトルO’23(L2set)ΓsetとベクトルO’23(L2set)Γt23(L2set,u)の外積をWbとすると、外積Wbは以下のようになる。
【0122】
ここで、スタブS2,S3の挿入長L2,L3とチューナー反射係数Γt23との関係から、
Wb<0 (42)
となる場合は、設定値L3setがuよりも挿入長が大きいことを意味する。したがって、スタブS3の挿入長であるuを大きな値に変更し、再度、式(41)の計算を行う。
【0123】
一方、
Wb>0 (43)
となる場合は、設定値L3setがuよりも挿入長が小さいことを意味する。したがって、スタブS3の挿入長であるuを小さな値に変更し、再度、式(41)の計算を行う。
【0124】
上記計算を繰り返すことで、
Wb=0 (44)
となるuを探索する。このように得られたuがスタブS3の設定値L3setである。
【0125】
最後に、ステップS404では、調整量演算部107は、上記のように算出されたスタブS2,S3のそれぞれの設定値L2set,L3setを駆動制御部109へ送信し、駆動制御部109は、スタブS2,S3の挿入長がそれぞれ設定値L2set,L3setになるように、モータ105b,105cを駆動する。なお、このときにスタブS1の挿入長は変更する必要はない。
【0126】
以上のように、各スタブS1,S2,S3の挿入長を制御すれば、式(26)を満たし、VSWRを最小にすることが可能である。
【0127】
なお、上記計算は、モニタ基準点P1おけるVSWRを最小とする場合に関する計算例であるが、モニタ基準点P1におけるVSWRを任意の値Yaとする場合も、上記と同様の計算方法を利用することができる。以下、モニタ基準点P1におけるVSWRを任意の値Yaとする場合について簡単に説明する。
【0128】
仮に目標値を以下のように設定する。
Γset=R−jX+α (45)
【0129】
この目標値Γsetに対して、
図18におけるS201からS206と
図19におけるS301からS303と
図20におけるS401からS403の処理を行うことにより、各スタブS1,S2,S3の挿入長の設定値L1set,L2set,L3setを得ることができる。
【0130】
一方、2端子対回路における関係から、モニタ基準点P1における基準点反射係数Γinは、以下のように表すことができる。
【0132】
また、モニタ基準点P1におけるVSWRは以下のように表すことができる。
【0134】
そこで、各スタブS1,S2,S3の挿入長の設定値L1set,L2set,L3setと式(1)〜式(9),式(12)〜式(22),式(24),式(46),式(47)とを用いて、式(45)を目標値とした場合のモニタ基準点P1におけるVSWRの値Ybを得ることができる。
【0135】
このように得られたVSWRの値Ybに関し、
Yb>Ya (48)
となる場合は、式(45)の値αを小さな値に変更し、再度、式(45)を目標値とした場合のモニタ基準点P1におけるVSWRの値Ybを得る。一方、
Yb<Ya (49)
となる場合は、式(45)の値αを大きな値に変更し、再度、式(45)を目標値とした場合のモニタ基準点P1におけるVSWRの値Ybを得る。
【0136】
上記ように値αの調整を繰り返すことで、
Yb=Ya (50)
となる値αが得られる。
【0137】
この値αを用いた式(45)の目標値Γsetを用いて、
図18から
図20に示されるフローチャートを実行することでVSWRを値Yaに調整することができる。
【0138】
なお、上記制御方法は、導波管を用いた3スタブチューナーの例を用いているが、導波管と導波管分岐リアクタンスまたは同軸と同軸分岐リアクタンスの組み合わせにおいても適用可能である。1つの分岐リアクタンス調整量を変更した時の分岐リアクタンスの反射係数の変化は、式(11)の任意のスタブ挿入長Dを分岐リアクタンス調整量、スタブ挿入長の変化量Δdをリアクタンス変化量とすることで同様に表すことができる。そのことから、分岐リアクタンス調整量と分岐リアクタンスのSパラメータの関係式またはテーブル値をもつことで、導波管を用いた3スタブチューナーと同様の手順でモニタ基準点P1におけるVSWR値を任意の値に調整可能である。
【0139】
(第2実施形態)
図21は、周波数測定部の構成例を示す図である。
図21に示すように、第2実施形態に係る自動整合装置100aは、第1実施形態に係る自動整合装置100と略同様の構成を有しているが、第1実施形態に係る自動整合装置100では、マイクロ波電源101からマイクロ波の周波数情報を取得しているが、第2実施形態に係る自動整合装置100aでは、方向性結合器102を介してマイクロ波の周波数情報を取得している点で異なる。したがって、以下では、方向性結合器102を介してマイクロ波の周波数情報を取得するための構成についてのみ説明する。
【0140】
図21に示すように、第2実施形態に係る自動整合装置100aは、方向性結合器102を介してマイクロ波の周波数情報を取得するために、周波数測定部111を備えている。周波数測定部111は、方向性結合器102を介してマイクロ波の進行波を取得し、当該進行波から周波数を測定し、その測定結果をパラメータ設定部110へ送信するように構成されている。
【0141】
周波数測定部111における周波数の測定方法は、例えばダイレクト方式周波数カウンタやレシプロカル方式周波数カウンタを用いることができるが、
図22に示す構成を用いることも可能である。
図22は、周波数測定部の構成例を示す図である。
【0142】
図22に示すように、周波数測定部111は、分配器112とフィルタ113と2つのパワー検出器114a,114bとパワー比較部115とを備えている。
【0143】
周波数測定部111に入力された進行波は、分配器112によって2つに分配され、一方はパワー検出器114aに直接入力され、もう一方はフィルタ113を介してパワー検出器114bに入力される。ここで、フィルタ113は、ローパスフィルタまたはハイパスフィルタであり、使用する周波数の範囲内でフィルタ113の挿入損失が周波数と相関をもって変化するように選択されている。
【0144】
パワー比較部115は、パワー検出器114aが検出した出力Paとパワー検出器114bが検出した出力Pbとを比較し、パワー比ΔPを求める。予めパワー比ΔPと周波数の関係を取得して記憶しておくことで、パワー比較部115は、パワー比ΔPからマイクロ波の周波数を決定することができる。
【0145】
上記のようにパワー比較部115によって測定されたマイクロ波の周波数情報は、パラメータ設定部110へ送信されるが、その後の処理は第1実施形態の場合と同一である。
【0146】
なお、本実施形態でも、各スタブS1,S2,S3の代わりに導波管分岐可変リアクタンスや同軸管分岐可変リアクタンスを用いることが可能である。
【0147】
なお、以上の実施形態においては、スタブS1,S2,S3の3つのスタブを備えて3つのスタブを操作する構成を示したが、これ以外の態様としてもよいのは言うまでもない。
【0148】
例えば、3つのスタブS1,S2,S3ないし4つ以上を備えているものの、そのうちの2つのスタブ(例えばS1,S2)のみを操作することでも、マイクロ波の周波数の変更に対応した自動整合を実現することも条件によっては可能となる。この場合、調整量演算部107は、負荷側反射係数と設定ないし補正後の制御パラメータとに基づいて、操作する2つのスタブのうちいずれか一方のスタブ(例えばS1)における反射係数の目標値として第1チューニング目標値を算出し、第1チューニング目標値と設定ないし補正後の制御パラメータとに基づいて、スタブ(例えばS1)に対する第1調整量を算出し、第1調整量に基づいて、他方のスタブ(例えばS2)における反射係数の目標値として第2チューニング目標値を算出し、第2チューニング目標値と設定ないし補正後の制御パラメータとに基づいて、スタブ(例えばS2)に対する第2調整量を算出し、駆動制御部109が第1調整量と第2調整量との組に基づいて、2つのスタブ(例えばS1,S2)制御することになる。
【0149】
また、自動整合装置および自動整合方法を適用する用途によっては、インピーダンスの調整範囲が限定され、2つのスタブ(例えばS1,S2)のみを備えることでも十分に自動整合を実行することが可能となる。この場合、調整量演算部107は、負荷側反射係数と設定ないし補正後の制御パラメータとに基づいて、2つのスタブ(例えばS1,S2)のうちいずれか一方のスタブ(例えばS1)における反射係数の目標値として第1チューニング目標値を算出し、第1チューニング目標値と設定ないし補正後の制御パラメータとに基づいて、スタブ(例えばS1)に対する第1調整量を算出し、第1調整量に基づいて、他方のスタブ(例えばS2)における反射係数の目標値として第2チューニング目標値を算出し、第2チューニング目標値と設定ないし補正後の制御パラメータとに基づいて、スタブ(例えばS2)に対する第2調整量を算出し、駆動制御部109が第1調整量と第2調整量との組に基づいて、2つのスタブ(例えばS1,S2)を制御することになる。
【0150】
さらに、上記変形例に関しても、スタブの代わりに導波管分岐可変リアクタンスや同軸管分岐可変リアクタンスを用いることが可能である。
【0151】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記各実施形態の各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。