(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シングルモード光ファイバと、前記シングルモード光ファイバよりも、クラッドに対するコアの比屈折率差が高い高Δシングルモード光ファイバとを接続して第1の光ファイバを構成し、
偏波保持光ファイバと、前記偏波保持光ファイバよりも、クラッドに対するコアの比屈折率差が高い高Δ偏波保持光ファイバとを接続して第2の光ファイバを構成し、
前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとを回転可能に保持し、
前記第2の光ファイバと前記第1の光ファイバとを相対的に回転させて、前記高Δ偏波保持光ファイバのコアと応力付与部との配列方向を、前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとの配列方向とを略一致させるとともに、前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバの先端を接着剤に接触させることで、前記接着剤の表面張力によって前記高Δシングルモード光ファイバと前記高Δ偏波保持光ファイバを密着させて接着し、
前記接着剤が硬化後、前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとをキャピラリに挿通して、前記シングルモード光ファイバと前記高Δシングルモード光ファイバとの接続部と、前記偏波保持光ファイバと前記高Δ偏波保持光ファイバとの接続部を前記キャピラリ内に配置し、
前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとを前記キャピラリに固定し、
前記キャピラリの端面を研磨することで、前記高Δシングルモード光ファイバと前記高Δ偏波保持光ファイバとが、前記キャピラリの端面で接触して配置された光ファイバ端末構造を得ることを特徴とする光ファイバ端末構造の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図11(a)は、従来の光素子接続構造100を示す概略図である。光素子接続構造100は、コヒーレントミキサーチップ103と光ファイバ端末構造101との接続構造である。コヒーレントミキサーチップ103は、信号光が入力されるシグナルポート111aと、局所発振光ポート111bを具備する。すなわち、複数の入力ポートを有する。
【0005】
図11(b)は、光ファイバ端末構造101の断面図である。光ファイバ端末構造101は、光ファイバ105a、105bとキャピラリ109からなる。光ファイバ105a、105bは、キャピラリ109の孔108a、108bにそれぞれ挿入されて固定される。また、光ファイバ端末構造101はコヒーレントミキサーチップ103と接合され、シングルモード光ファイバである光ファイバ105aは、シグナルポート111aに光接続され、偏波保持光ファイバである光ファイバ105bは、局所発振光ポート111bに光接続される。
【0006】
この際、光ファイバ105a、105bのそれぞれのコア117a、117bのピッチ(図中X)は、シグナルポート111aと局所発振光ポート111bのポートピッチと略一致させる必要がある。コヒーレントミキサーチップ103は、既存の半導体製造技術で製造され、シグナルポート111aと局所発振光ポート111bのポートピッチの精度は極めて高く、例えば500μmで設定される。
【0007】
一方、光ファイバ端末構造101における光ファイバ105a、105bのそれぞれのコア117a、117bのピッチは、各種の誤差が複合したものとなる。例えば、125μmの線径の光ファイバ105a、105bは、±0.5μmの線径誤差を有する。また、キャピラリ109の孔108a、108bのピッチは、500μmで設定されるが、±1μmのピッチ誤差を有する。さらに、孔108a、108bの孔径は、126.5μmに対して0.5μmの孔径誤差を有する。
【0008】
このように、各部の誤差を加算すると、光ファイバ端末構造101におけるコア117a、117bのピッチは、500μm±2.25μm程度の誤差を有することになる。すなわち、各コア117a、117bは、最大で片側1.125μmの位置ずれを生じることとなる。
【0009】
前述したように、コア117a、117bと光接続されるシグナルポート111aと局所発振光ポート111bのピッチは、略500μmで製造されるため、前述した位置ずれは、各部の光接続部における光軸ずれとなる。このような光軸ずれは、接続部における光の結合損失の要因となる。
【0010】
一方、近年、パッシブ系の導波路において、小型化の強い要望があり、材料を変更して、コアとクラッドとの比屈折率差Δを高める取り組みが行われている。例えば、コア材料を従来のGeO
2−SiO
2からZrO
2−SiO
2に変更した比屈折率差Δが大きな高Δ石英系導波路(PLC)がある。ZrO
2は、一般的に用いられているGeO
2と比較して屈折率が高く、熱膨張係数が小さい材料である。そのため、PLC素子やこれを備える光学部品等を小型化しつつ、導波路に残る応力を低減できる材料として期待されている。
【0011】
このような中、発明者らは、コヒーレントミキサーチップ103へ高Δ導波路を適用することによって、小型のコヒーレントミキサーチップの開発を進めている。このように、光導波路のコアとクラッドとの比屈折率差Δが大きくなると、コアへの光の閉じ込めが強くなるため、シングルモード伝搬を実現するためのモードフィールド径が小さくなる。したがって、コヒーレントミキサーチップ103を高Δ化することで、導波路同士の距離を近づけることができ、例えば、シグナルポート111aと局所発振光ポート111bのピッチも小さくすることが可能となる。
【0012】
しかしながら、モードフィールド径が小さくなると、これに伴ってコアを伝搬する光のビーム径が小さくなる。これにより、光導波路が形成された光素子と、当該光素子に対して光を入出力する光ファイバとの間の接続損失が大きくなるという問題がある。
【0013】
例えば、一般的な125μm径のシングルモード光ファイバのように、モードフィールド径が10μm程度の場合には、光軸ずれが1.125μm生じた際に、0.2dB程度の結合損失が発生することとなる。この程度の結合損失であれば、大きな問題とはならない。
【0014】
一方、高Δ導波路とシングルモード光ファイバとの接続において、低接続損失を実現させるために、モードフィールド径を整合した高Δ光ファイバ(例えばモードフィールド径3μm)が用いられることがある。このようにモードフィールド径が小さい場合には、1μm程度の光軸ずれにより、2dB以上の結合損失が生ずるおそれがある。すなわち、高Δになればなるほど、光軸ずれトレランスが小さくなるため、光ファイバ端末構造に対して、より高いピッチ精度が求めらる。
【0015】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、光素子と接続可能なキャピラリ型ファイバアレイにおいて、小型で低損失な光ファイバ端末構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、
一方向に配列される複数の光ファイバと、前記光ファイバとそれぞれ接続され、前記光ファイバよりも、クラッドに対するコアの比屈折率差が高い複数の高Δ光ファイバと、前記高Δ光ファイバおよび前記光ファイバが挿通される孔を有し、前記高Δ光ファイバおよび前記光ファイバが一括して固定されるキャピラリと、を具備し、前記高Δ光ファイバと前記光ファイバの接続部が前記キャピラリの内部に位置し、前記キャピラリの端面において、隣り合う前記高Δ光ファイバ同士が互いに接触するように前記高Δ光ファイバの端面が露出
し、少なくとも1本の前記光ファイバは、偏波保持光ファイバであり、前記偏波保持光ファイバと、前記偏波保持光ファイバよりも、クラッドに対するコアの比屈折率差が高い高Δ偏波保持光ファイバとが接続され、前記高Δ偏波保持光ファイバのコアと応力付与部との配列方向が、前記高Δ偏波保持光ファイバと前記高Δ偏波保持光ファイバに隣接するその他の前記高Δ光ファイバとの配列方向と略一致することを特徴とする光ファイバ端末構造である。
【0019】
前記光ファイバと前記高Δ光ファイバとの接続部において、前記高Δ光ファイバのコア径が、前記光ファイバのコア径に向けて徐々に拡大することが望ましい。
【0021】
第1の発明によれば、高比屈折率差光学素子と光ファイバを、高Δ光ファイバを介して接続することで、それぞれの接続部における結合損失を低減することができる。また、隣り合う高Δ光ファイバ同士が互いに接触するため、コアピッチの誤差を小さくすることができ、両者の接続部の結合損失を低減することができる。
【0022】
また、2本の光ファイバの内、一方の光ファイバがシングルモード光ファイバであり、他方の光ファイバが偏波保持光ファイバであれば、コヒーレントミキサーチップの入力ポートに効率よく接続することができる。
【0023】
特に、高Δ偏波保持光ファイバのコアと応力付与部との配列方向を、高Δシングルモード光ファイバと高Δ偏波保持光ファイバとの配列方向と略一致させることで、確実にコヒーレントミキサーチップに光接続することができる。
【0024】
また、併設される複数の高Δ光ファイバとダミーファイバが互いに接触し、例えば、互いの中心が略正三角形となるように最密に配置されれば、高Δ光ファイバ同士を安定して接触させて配置させることができる。
【0025】
第2の発明は、第1の発明にかかる光ファイバ端末構造と、コヒーレントミキサーチップとの接続構造であって、前記コヒーレントミキサーチップは、入力ポートに、シグナルポートと局所発振光ポートとを具備し、導波路のクラッドに対するコアの比屈折率差が2.5%以上10%以下の高比屈折率光学素子であり、前記シグナルポートと前記局所発振光ポートのピッチが
、前記高Δ偏波保持光ファイバ
と前記高Δ偏波保持光ファイバに隣接するその他の前記高Δ光ファイバのコアピッチと略一致し、
前記高Δ偏波保持光ファイバに隣接するその他の前記高Δ光ファイバと前記シグナルポートとが接続され、前記高Δ偏波保持光ファイバと前記局所発振光ポートとが接続されることを特徴とする光素子接続構造である。
【0026】
第2の発明によれば、光結合部における損失が少ない、高比屈折率差光学素子である小型のコヒーレントミキサーチップと光ファイバ端末構造との光素子接続構造を得ることができる。
【0027】
第3の発明は、シングルモード光ファイバと、前記シングルモード光ファイバよりも、クラッドに対するコアの比屈折率差が高い高Δシングルモード光ファイバとを接続して第1の光ファイバを構成し、偏波保持光ファイバと、前記偏波保持光ファイバよりも、クラッドに対するコアの比屈折率差が高い高Δ偏波保持光ファイバとを接続して第2の光ファイバを構成し、前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとを回転可能に保持し、前記第2の光ファイバと前記第1の光ファイバとを相対的に回転させて、前記高Δ偏波保持光ファイバのコアと応力付与部との配列方向を、前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとの配列方向とを略一致させるとともに、前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバの先端を接着剤に接触させることで、前記接着剤の表面張力によって前記高Δシングルモード光ファイバと前記高Δ偏波保持光ファイバを密着させて接着し、前記接着剤が硬化後、前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとをキャピラリに挿通して、前記シングルモード光ファイバと前記高Δシングルモード光ファイバとの接続部と、前記偏波保持光ファイバと前記高Δ偏波保持光ファイバとの接続部を前記キャピラリ内に配置し、前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとを前記キャピラリに固定し、前記キャピラリの端面を研磨することで、前記高Δシングルモード光ファイバと前記高Δ偏波保持光ファイバとが、前記キャピラリの端面で接触して配置された光ファイバ端末構造を得ることを特徴とする光ファイバ端末構造の製造方法である。
【0028】
第3の発明によれば、容易に精度よく高Δ光ファイバ同士を接触させた状態で接着し、所定間隔で高Δ光ファイバを固定することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、光素子と接続可能なキャピラリ型ファイバアレイにおいて、小型で低損失な光ファイバ端末構造等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態にかかる光素子接続構造10について説明する。
図1は、光素子接続構造10を示す概略図である。光素子接続構造10は、光素子と光ファイバ端末構造1との接続構造である。なお、以下の説明では、光素子として、コヒーレントミキサーチップ3の例を説明するが、コヒーレントミキサーチップ3以外の光素子であってもよい。
【0032】
コヒーレントミキサーチップ3は、位相変調光通信方式における光受信器として使用される。コヒーレントミキサーチップ3は、信号光を参照光として局所発振光に混合し、光信号の位相情報を抽出する。
【0033】
コヒーレントミキサーチップ3の導波路13のクラッドに対するコアの比屈折率差は、2.5%以上10%以下であり、さらに望ましくは、5.5%以上10%以下である。また、導波路13の1550nmにおけるモードフィールド径は約3μmである。すなわち、コヒーレントミキサーチップ3は、高比屈折率光学素子(高Δ光学素子)である。このように、コヒーレントミキサーチップ3を高Δ化することで、コヒーレントミキサーチップ3を小型化することができる。
【0034】
なお、モードフィールド径および本明細書で特に定義しない用語についてはITU−T(国際電気通信連合) G.650.1における定義、測定方法に適宜従うものとする。
また、比屈折率差とは、以下で定まる数値である。
Δ={(n
c1−n
c)/n
c1}×100
ここで、n
c1はコアの最大屈折率、n
cはクラッドの屈折率である。
【0035】
コヒーレントミキサーチップ3は、入力ポートに、信号光が入力されるシグナルポート11aと、局所発振光が入力される局所発振光ポート11bとを有する。シグナルポート11aと局所発振光ポート11bは、コヒーレントミキサーチップ3の同一の側面に所定のピッチで配置される。
【0036】
コヒーレントミキサーチップ3には、光ファイバ端末構造1が接続される。
図2(a)は、光ファイバ端末構造1の拡大断面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のA−A線断面図である。なお、コヒーレントミキサーチップ3と光ファイバ端末構造1との接合界面は、反射防止のため斜めに形成され、例えば、互いに接着剤で接着される。
【0037】
光ファイバ端末構造1は、複数の光ファイバ5a、5bと、光ファイバ5a、5bとそれぞれ接続される複数の高Δ光ファイバ7a、7bと、キャピラリ9等から構成される。高Δ光ファイバ7aは、光ファイバ5aよりも、クラッド15aに対するコア17aの比屈折率差が高い。同様に、高Δ光ファイバ7bは、光ファイバ5bよりも、クラッド15bに対するコア17bの比屈折率差が高い。
【0038】
キャピラリ9は、光ファイバ5a、5bおよび高Δ光ファイバ7a、7bが挿通される孔8を有し、光ファイバ5a、5bおよび高Δ光ファイバ7a、7bが一括して孔8に固定される。また、光ファイバ5a、5bと高Δ光ファイバ7a、7bのそれぞれの接続部は、キャピラリ9の内部に位置し、キャピラリ9の端面において、隣り合う高Δ光ファイバ7a、7b同士が互いに接触して、高Δ光ファイバ7a、7bの端面が露出する。
【0039】
なお、キャピラリ9の長さは、例えば1.5mm〜5mmであり、キャピラリ9の内部の高Δ光ファイバ7a、7bの長さは、1mm〜4mm程度であることが望ましい。高Δ光ファイバ7a、7bの長さが長すぎると、キャピラリサイズが大きくなり、高Δ光ファイバ7a、7bの長さが短すぎると、高Δ光ファイバ7a、7bを介して、光ファイバ5a、5bと高Δ導波路との接続部における接続損失の低減効果が小さくなる。また、キャピラリ9の長さが長すぎると、接続構造全体の大型化となり、キャピラリ9の長さが短すぎると、光ファイバ5a、5bと高Δ光ファイバ7a、7bとの接続部の保護が十分でなくなる。
【0040】
なお、光ファイバ等の本数は図示した例には限られないが、光ファイバ端末構造1は、少なくとも2本の光ファイバ5a、5bを具備し、その内の一方の光ファイバ5aは、シングルモード光ファイバである。すなわち、シングルモード光ファイバと、シングルモード光ファイバよりも、クラッド15aに対するコア17aの比屈折率差が高い高Δ光ファイバ7a(高Δシングルモード光ファイバ)とが接続される。
【0041】
なお、シングルモード光ファイバは、ITU−T G.652に準拠する、1.3μm帯にゼロ分散波長を持つ光ファイバである。通常のシングルモード光ファイバにおいて、コアのクラッドに対する比屈折率差は約0.3%であり、1550nmにおけるモードフィールド径は約10μmである。
【0042】
同様に、他方の光ファイバ5bは、偏波保持光ファイバであり、シングルモード光ファイバに対して、コア17bの両側に応力付与部15が形成される。光ファイバ5bは、光ファイバ5bよりもクラッド15bに対するコア17bの比屈折率差が高い高Δ光ファイバ7b(高Δ偏波保持光ファイバ)と接続される。なお、高Δ光ファイバ7bのコア17bと応力付与部15との配列方向は、高Δ光ファイバ7aと高Δ光ファイバ7bとの配列方向と略一致する。
【0043】
図2(b)に示すように、高Δ光ファイバ7a、7bは、互いに接触する。また、高Δ光ファイバ7a(高Δシングルモード光ファイバ)とシグナルポート11aとが接続され、高Δ光ファイバ7b(高Δ偏波保持光ファイバ)と局所発振光ポート11bとが接続される。すなわち、シグナルポート11aと局所発振光ポート11bのピッチは、高Δ光ファイバ7a、7bのコア17a、17bのピッチ(図中C)と略一致する。
【0044】
ここで、高Δ光ファイバ7a、7bのコア17a、17bのピッチは、キャピラリ9の孔8のサイズや位置の誤差の影響を受けない。すなわち、高Δ光ファイバ7a、7bが接触するため、コア17a、17bのピッチは、概ね、高Δ光ファイバ7a、7bの外径の誤差の影響のみを受ける。例えば、高Δ光ファイバ7aの外径(図中E)と、高Δ光ファイバ7bの外径(図中)Dがそれぞれ125μm±0.5μmであれば、コア17a、17bのピッチCは、125μm±0.5μmの精度で設定することができる。ピッチ誤差が最大で0.5μmであれば、例えばモードフィールド径が3μmの場合でも、ピッチずれによる結合損失を1dB以下とすることができる。
【0045】
また、コア17a、17bのピッチCが、キャピラリ9の孔8のサイズの影響を受けないため、高Δ光ファイバ7a、7bのサイズに対して、孔8のサイズ(クリアランス)を大きくとることができる。例えば、接触した高Δ光ファイバ7a、7bの外接長円のサイズ(設計値)に対して、孔8の長円サイズ(設計値)を1.5μm以上(より望ましくは2.5μm以上)大きくしてもよい。このようにすることで、高Δ光ファイバ7a、7bの挿入作業が容易となり、また、仮に、高Δ光ファイバ7a、7bと光ファイバ5a、5bとの接続部の外径が多少膨らんだとしても、確実に孔8に挿入することができる。
【0046】
なお、高Δ光ファイバ7a、7bと光ファイバ5a、5bとの接続は、例えばTEC(Thermally−diffused Expanded Core)融着で行われる。
図3は、
図2(a)のB部におけるコアの概念図である。シングルモード光ファイバである光ファイバ5aのコア17aに対して、高Δ光ファイバ7aのコア17aはサイズが小さい。
【0047】
このような場合には、TEC処理によって、サイズの小さなコア17aの径とサイズの大きなコア17の径を整合させる。すなわち、光ファイバ5aと高Δ光ファイバ7aとの接続部(接続領域19)において、モードフィールド径変換部21を形成し、高Δ光ファイバ7aのコア17aの径を徐々に拡大させ、光ファイバ5aのコア17の径を徐々に縮小させるように形成する。このように、融着接続時の加熱条件を工夫することで、接続領域19におけるモードフィールド径の段差を滑らかにし、結合損失を低く抑え、例えば結合損失を0.3dB/facet程度に抑えることができる。なお、光ファイバ5bと高Δ光ファイバ7bとの接続も同様である。
【0048】
ここで、高比屈折率差光学素子であるコヒーレントミキサーチップ3の導波路13とシングルモード光ファイバである光ファイバ5aとを、従来の方法で直接接続すると、数dB/facet程度の結合損失となる恐れがある。これに対し、高Δ光ファイバ7aを介して両者を接続することで、接続箇所が増えたとしても、トータルの接続損失を低減することができる。例えば、コヒーレントミキサーチップ3と高Δ光ファイバ7aとの接続損失を0.4dB/facet程度に抑えることができれば、コヒーレントミキサーチップ3と光ファイバ5aとのトータルの接続損失を0.7dB/facet程度に抑えることができる。
【0049】
次に、光ファイバ端末構造1の製造方法について説明する。まず、光ファイバ5aの先端に、高Δ光ファイバ7aを接合して、第1の光ファイバを構成する。同様に、光ファイバ5bの先端に、高Δ光ファイバ7bを接合して、第2の光ファイバを構成する。
【0050】
次に、
図4(a)に示すように、光ファイバ5a、5b(高Δ光ファイバ7a、7b)とダミーファイバ7cを仮保持部材23で回転可能に保持する。仮保持部材23の端部からは、高Δ光ファイバ7a、7bとダミーファイバ7cの先端がそれぞれ同一長さ(例えば10mm程度)だけ突出する。なお、ダミーファイバ7cは、例えば、光ファイバ5a、5b(高Δ光ファイバ7a、7b)と略同径のファイバである。
【0051】
図4(b)は、高Δ光ファイバ7a、7bとダミーファイバ7cとの先端部近傍における配置を示す概念図である。仮保持部材23で保持した状態では、各ファイバは、概ね、互いに最密となるように配置されるが、各ファイバ同士には隙間が形成される。この状態で、高Δ光ファイバ7a、7bとダミーファイバ7cの先端を、あらかじめ容器に溜められた接着剤25に浸漬する。接着剤25は例えば溶液系の接着剤であり、合成樹脂等の高分子固形分が、水、アルコール、有機溶剤などの溶媒に溶け込んだ液状のものである。このような溶液系接着剤では、溶媒が気化した後に残留する溶質が硬化することで接着される。
【0052】
なお、接着剤25としては、通常使用される溶質濃度よりもさらに希釈されたものが望ましい。このようにすることで、接着剤の粘度を下げ、また、残留する溶質量を抑えることができる。このため、光ファイバ心線同士の隙間の接着層の厚みを略0とし、高Δ光ファイバ7a、7b同士を接触させ、コア17a、17bの互いの間隔をより精度よく一定にすることができる。すなわち、接着力は弱くてもよいが、例えば1000cps以下のものを用いることができ、さらに望ましくは、100cps以下のごく低粘度のものが望ましい。また、硬化時に接着剤25が収縮する事で、高Δ光ファイバ7a、7bをより密接に引き寄せ合う効果が得られる。また、接着剤25は、高Δ光ファイバ7a、7bのクラッド15a、15bよりも低屈折率のものが望ましい。
【0053】
このような接着剤としては、例えば、溶液系としては、セメダイン社製「セメダインC」(商品名)を薄め液で希釈したもの(屈折率の調整のためフッ素を添加することが望ましい)や、極低粘度の接着剤(アクリレート系)としては、NTT−AT社製の屈折率制御樹脂(UV硬化)や、極低粘度の接着剤(エポキシ系)としては、Epo−Tek社製の熱硬化型接着剤を用いることができる。また接着剤を加熱することにより、より粘度を下げることができるため、接着後の高Δ光ファイバ7a、7b同士の隙間をより小さくすることが可能である。
【0054】
なお、ダミーファイバ7cは、必ずしも必要ではないが、併設される複数の高Δ光ファイバ7a、7bとダミーファイバ7cとが、互いに接触するように、互いの中心が最密に略正三角形になるように配置されることが望ましい。このようにすることで、高Δ光ファイバ7a、7b同士を、より確実に接触させることができる。
【0055】
図5(a)、
図5(b)は、接着剤25の表面張力による高Δ光ファイバ7a、7b同士の接着状態を示す概念図で、
図5(a)は正面図(簡単のためダミーファイバ7cの図示を省略する)、
図5(b)は断面図である。
【0056】
前述の通り、高Δ光ファイバ7a、7b同士およびダミーファイバ7cとの間には隙間が形成される場合があるが、接着剤25の粘度は低く、表面張力(毛細管現象)によって接着剤25は高Δ光ファイバ7a、7b同士およびダミーファイバ7cとの隙間に吸い上げられる。この際、互いの表面張力によって高Δ光ファイバ7a、7b同士が密着される(図中矢印G方向)。
【0057】
すなわち、
図5(b)に示すように、高Δ光ファイバ7a、7b同士およびダミーファイバ7cの間に多少不均一な隙間が形成されていても、その隙間には接着剤25が吸い上げられて、高Δ光ファイバ7a、7b同士およびダミーファイバ7cが密着される。この際、それぞれのファイバ間に吸引されて存在する接着剤の表面張力が安定化する配置、すなわち、高Δ光ファイバ7a、7b同士およびダミーファイバ7cが確実に最密配置となるとともに、この状態で接着剤25を硬化させることで互いを接着することができる。
【0058】
なお、接着剤25の吸い上げ高さが高すぎると(接着剤25の吸い上げ量が多すぎると)、却って高Δ光ファイバ7a、7bの端部同士の間の接着剤25の量が多くなる。このため、光ファイバ心線7同士の隙間が大きくなる恐れがある。このため、表面張力により吸い上げられる接着剤25の量は、キャピラリ9の内部における高Δ光ファイバ7a、7b同士の隙間を埋める量以下とすることが望ましい。すなわち、
図4において、接着剤25の吸い上げ高さが、仮保持部材23よりも下であり、かつ、後述する研磨部よりも上方までくるように調整することが望ましい。
【0059】
このように調整する方法としては、接着剤25の量をあらかじめ必要最低限の量としておくか、所定高さまで接着剤25が上がってきたとことで、高Δ光ファイバ7a、7b同士およびダミーファイバ7cの先端を接着剤25から引き揚げればよい。
【0060】
なお、接着剤25は希釈された溶液タイプの接着剤であるので、硬化後のファイバ束のファイバ間のファイバ同士が密接しない部位には接着剤の収縮によって隙間が形成される事になる。
【0061】
接着剤25が硬化する前に、
図6(a)、
図6(b)に示すように、高Δ光ファイバ7bの回転調芯を行う(図中矢印H)。すなわち、高Δ光ファイバ7a、7b端面をカメラ等で確認しながら、高Δ光ファイバ7bを回転させて、高Δ光ファイバ7bのコア17bと応力付与部15との配列方向を、高Δ光ファイバ7aと高Δ光ファイバ7bとの配列方向とを略一致させる。なお、高Δ光ファイバ7bの回転調芯は、接着剤25を付着させる前に行ってもよい。また、高Δ光ファイバ7bを固定して、他のファイバを回転させてもよい。すなわち、高Δ光ファイバ7bと高Δ光ファイバ7aとを相対的に回転させればよい。
【0062】
以上のように、第2の光ファイバを回転させて、高Δ光ファイバ7bのコア17bと応力付与部15との配列方向を、第1の光ファイバと第2の光ファイバとの配列方向とを略一致させるとともに、第1の光ファイバと第2の光ファイバの先端を接着剤25に接触させることで、接着剤25の表面張力によって高Δ光ファイバ7a、7bを密着させて接着することができる。
【0063】
次に、接着剤25の硬化後、ダミーファイバ7cを除去して、
図7に示すように、高Δ光ファイバ7a、7bが接触して接着された状態で、当該部位をキャピラリ9に挿通して、第1の光ファイバと第2の光ファイバをキャピラリ9に接着剤(図示省略)により固定する。この際に使用される接着剤としては、熱硬化型エポキシ系接着剤や、UV硬化型アクリレート系接着剤を使用すればよい。
【0064】
次いで、キャピラリ9より突出する高Δ光ファイバ7a、7bおよびキャピラリ9の一部を研磨面27で研磨する。以上により、高Δ光ファイバ7a、7bが、キャピラリ9の端面で互いに接触して配置された光ファイバ端末構造1が形成される。なお、光ファイバ端末構造1の端面を研磨によって均一な面を得るのではなく、例えばダイシングソー等による切断により均一な面を得ても良い。
【0065】
なお、高Δ光ファイバ7a、7bとキャピラリ9とを接着する接着剤としては、低粘度であることが望ましいが接着剤25よりも粘度が高くてもよい(例えば5000cps以下)。また、硬化時の収縮率は低く、硬度が高い(ショアDで60以上)であることが望ましい。このような接着剤としては、例えば、エポキシ系の熱硬化接着剤である、EPOXY TECHNOLOGY社製「Epo-tek 353−ND」(商品名)や、アクリレート系UV硬化接着剤である、大日本インキ社製「OP−40Z」(商品名)や、NTT−AT社製の屈折率制御樹脂(UV硬化)を用いることができる。
【0066】
なお、本実施例では先に仮保持部材23に挿通する手順としたが、本発明はこれに限られる必要は無く、例えばキャピラリ9によって仮保持を行い、高Δ光ファイバ7a、7bを接着後、そのままキャピラリ9を高Δ光ファイバ7a、7bの端部近傍に移動させて、高Δ光ファイバ7a、7bとキャピラリ9とを接着固定してもよい。
【0067】
また、高Δ光ファイバ7a、7bの凝集効果を向上させる手段として、高Δ光ファイバ7a、7bの表面の濡れ性を向上させてもよい。濡れ性を向上させる手段としては、プライマーと呼ばれる表面処理剤を塗布乾燥する方法や、プラズマ放電処理による方法が知られている。また当然ではあるが、作業に際し、高Δ光ファイバ7a、7bは十分に清浄にしておく事が望ましい。
【0068】
なお、ダミーファイバ7cを除去せずに、高Δ光ファイバ7a、7bおよびダミーファイバ7cが最密で互いに密着した状態で、キャピラリに固定してもよい。例えば、
図8(a)に示すように、略三角形の孔8を有するキャピラリ9aを用いて、高Δ光ファイバ7a、7bおよびダミーファイバ7cを一括してキャピラリ9aに固定してもよい。この場合には、キャピラリ9aの中心線状に、高Δ光ファイバ7a、7bのコア17a、17bが配列することが望ましい。
【0069】
また、
図8(b)に示すように、孔8の形状を高Δ光ファイバ7a、7bおよびダミーファイバ7cの最密配置の外形に沿った形状としてもよい。すなわち、高Δ光ファイバ7a、7bおよびダミーファイバ7cを最密配置した際に、それぞれのファイバ同士の間の外形凹部に対して張り出すようにキャピラリ9bの孔8の形状を形成してもよい。この場合には、孔8の各ファイバ外形に対応した円弧形状部分が、各ファイバの180°以上の範囲で覆うように形成される。
【0070】
なお、
図9に示すキャピラリ9cのように、高Δ光ファイバ7a、7bのみを保持する場合においても、高Δ光ファイバ7a、7bの間の外形凹部に対して、孔8の内面に張り出し部を形成してもよい。すなわち、ファイバの本数によらず、各ファイバ間の外形凹部に対応したサイズの張り出し部を、孔8の内面に形成してもよい。
【0071】
キャピラリ9b、9cによれば、各ファイバをより強固に保持することができる。また、光ファイバに等方的に応力が加わることで、高Δ光ファイバ7bおよび光ファイバ5bの偏波消光比の劣化を防止することができる。なお、高Δ光ファイバ7a、7bおよびダミーファイバ7cの接触部近傍には、
図6(b)等に示すように、わずかに接着剤25が残るが、硬化した接着剤25と張り出し部の先端とが干渉しないように、張り出し形状が設定される。
【0072】
以上、本実施の形態によれば、特に、コヒーレントミキサーチップ3との接続に有効な、光ファイバ端末構造1を得ることができる。この際、高比屈折率差光学素子であるコヒーレントミキサーチップ3と光ファイバ5a、5bとが高Δ光ファイバ7a、7bを介して接続されるため、コヒーレントミキサーチップ3と光ファイバ5a、5bとを直接接続する場合と比較して、トータルの結合損失を低減することができる。
【0073】
特に、光ファイバ5a、5bと高Δ光ファイバ7a、7bとの接続部において、高Δ光ファイバ7a、7bのコア17a、17bの径が、光ファイバ5a、5bのコア径に向けて徐々に拡大するため、結合損失を低減することができる。
【0074】
また、高Δ光ファイバ7a、7bを接触させた状態でキャピラリ9等に固定するため、高Δ光ファイバ7a、7bのそれぞれのコア17a、17bのピッチは、概ね、高Δ光ファイバ7a、7bの外径のみに依存する。このため、キャピラリ9の孔8のサイズや位置ずれなどの影響を受けることがなく、高Δ光ファイバ7a、7bのそれぞれのコア17a、17bを精度よく配置することができる。
【0075】
また、光ファイバ5a、5bと高Δ光ファイバ7a、7bとの接続部が、キャピラリ9の内部に位置するため、接続部を効率よく保護することができる。また、接続部の外径がわずかに膨らんだ際にも、高Δ光ファイバ7a、7bに対する孔8のサイズを大きくすることができるため、確実に孔8に挿通することができるとともに、挿通作業も容易である。
【0076】
また、高Δ光ファイバ7a、7b(第1の光ファイバ、第2の光ファイバ)をダミーファイバ7cとともに最密配置した状態で一体化するため、確実に高Δ光ファイバ7a、7bを接触させることができる。高Δ光ファイバ7a、7bのコア17a、17bのピッチの精度を高めることができるため、コヒーレントミキサーチップ3との結合損失を低減することができる。
【0077】
この際、各ファイバを最密配置する方法として、希釈した接着剤25の表面張力を利用することで、容易に確実に各ファイバ同士を最密に配置して接着することができる。
【0078】
また、高Δ光ファイバ7a、7b(第1の光ファイバ、第2の光ファイバ)を仮保持部材23で仮保持するため、高Δ偏波保持光ファイバである高Δ光ファイバ7bの回転調芯が容易である。
【0079】
なお、前述した実施形態では、高Δ光ファイバ7a、7bとダミーファイバ7cの3本のファイバを最密に配置して固定する例を示したが、これに限定されない。例えば、
図10に示すように、複数本(3本以上)の高Δ光ファイバ7aを互いに接触させて一直線上に配列するためには、全体が正三角形状(最外周のファイバの中心を結ぶ線が正三角形)となるようにダミーファイバ7cを積み上げて接着してもよい。この場合でも、接着後にダミーファイバ7cを除去してもよい。
【0080】
また、ダミーファイバ7cは、高Δ光ファイバ7a、7bと同一の外形であることが望ましいが、断面円形のみではなく、四角、三角など、高Δ光ファイバ7a、7bと同時に接触させることが可能であれば、他の形状であってもよい。
【0081】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。