(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
波長350〜700nmの全範囲の光に対して、前記光調整層が存在する部分における光透過率が12%以上である最大光透過率(T3)と、最小光透過率(T4)とを有し、前記最大光透過率(T3)と前記最小光透過率(T4)との差(T3−T4)が10%以下である請求項1〜5の何れか1項に記載の研磨パッド。
波長350〜700nmの全範囲の光に対して、前記光調整層が存在する部分における光透過率が15%以下である最小光透過率(T5)と、最大光透過率(T6)とを有し、前記最大光透過率(T6)と前記最小光透過率(T5)との差(T6−T5)が20%以上である請求項1〜5の何れか1項に記載の研磨パッド。
【背景技術】
【0002】
半導体メモリに代表される大規模集積回路(LSI)においては、回路の高集積化や微細化が年々進行している。それに伴い、LSIの回路の高集積化や微細化を実現するための製造工程における要求もますます複雑化している。また、半導体デバイスの多層化により、製造時におけるウエハ表面の凹凸が回路の断線や抵抗値のバラツキを発生させるという問題も生じている。そのため、ウエハ表面には高い精度の平坦化が求められている。
【0003】
また、LSIを製造する際に、フォトマスクのパターンをウエハ表面に転写する技術としてフォトリソグラフィ(投光露光)が広く用いられている。短い露光波長を用いる微細な半導体集積回路のフォトリソグラフィにおいては、露光の焦点深度が非常に浅くなる。ウエハ表面に微細な凹凸が存在する場合、フォトマスクのパターンの解像度が低下するためにウエハ表面には高い精度の平坦化が求められる。
【0004】
ウエハ表面は、通常、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)を利用したCMP研磨装置によって研磨される。
図3を参照すれば、CMP研磨装置20は、例えば、回転する定盤(研磨テーブル)5の上面に粘着材13で貼り合された研磨パッド21の面上に、キャリア17に支持されたトップリング(ホルダ)6に吸着保持されたウエハ10を当接させ、スラリーノズル7から研磨スラリーSを供給しながら、定盤5及びトップリング6の回転によりウエハ10の被研磨面を研磨するように構成されている。また、定盤5の内部には研磨終点を光学的手段によって検出するための光照射部8とその反射光を検知する図略の光センサが設けられている。研磨パッド21は透光窓21cを有し、光照射部8からの光を透過させてウエハ10の表面で反射させる。そして、反射光の強度の変化等をモニタすることにより、研磨の終点を検出する。光学的手段によって研磨終点を検出する方法としては、例えば、下記特許文献1は、ウエハ表面を研磨しながら研磨の終点を決定するための技術としてレーザー干渉計を利用した方法を開示する。
【0005】
光照射部から光を出射させ、その反射光により終点を検出するためには、
図3に示したように、研磨パッドの少なくとも一部分に透光窓21cのような光透過部を設け、ウエハの表面で光を反射させる必要がある。例えば、下記特許文献2〜4は、透光窓を一部分に形成した研磨パッドを用いてウエハ表面からの反射光により終点を検出する方法を開示する。具体的には、下記特許文献2や下記特許文献3は、光透過プラグ(透光窓)を液体状態の不透過樹脂に埋め込んだのち不透過樹脂を硬化させ、さらにスライスして透光窓を有する研磨パッドを製造する方法を開示する。また、特許文献4は、研磨表面部分と透光窓が同一の樹脂からなる研磨パッドを開示する。詳しくは、特許文献4は、研磨表面部分と透光窓が同一の樹脂からなり、一部分について急速な冷却処理をすることによりその一部分を非晶質として透明性を付与する方法や、透光窓を形成する部分の反応温度を他の部分と異なる温度とすることによりその部分に透明性を付与する方法を開示する。また特許文献5は、紫外光による劣化を抑制することを目的として、光透過性領域に光吸収性化合物を含ませることを開示する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照して、本実施形態の研磨パッドを説明する。
図1は、本実施形態の研磨パッド11の模式断面図を示す。本実施形態の研磨パッドは、
図1に示すように、研磨面Pを主面とする研磨層1と、研磨層1の裏面Rに粘着材層3を介して積層されて接着されたクッション層2とを備える。
図1中、c−c’線は円盤状の研磨パッドの中心線を示している。研磨層1は、厚み方向に光を透過させる光透過性領域を少なくとも一部分、好ましくは全研磨面に有する。クッション層2は、光透過性領域に対応する部分に開口vを有する。研磨層1の裏面Rの開口vに対応する領域には掘り込み部1aが形成されており、掘り込み部1aに光調整シート4aが粘着材層4bにより接着されて光調整層4が形成されている。ここで、光調整層4は、波長350〜700nmの範囲における何れかの波長域に、光透過率50%以上であって最大になる最大光透過率(T1)と、光透過率が最小になる最小光透過率(T2)とを有し、最大光透過率(T1)と最小光透過率(T2)との差(T1−T2)が20%以上であるシートである。
【0019】
研磨層は、光学的に終点検出が可能であるように、少なくとも一領域、好ましくは全領域が光透過性を有する樹脂層である。ここで、光透過性とは、波長350〜700nmの全範囲の光に対する、厚み方向の光透過率が10%以上であることを意味し、好ましくは12%以上である。研磨層は研磨面の全領域において光透過性を有することが透光窓を形成するための光透過プラグを埋め込まなくてもよいために好ましい。光透過性の低い樹脂に透光窓を形成するための光透過プラグを埋め込んだような不均質な研磨層の場合には、光透過プラグの周辺でスラリー漏れが生じたり、長時間使用した場合に研磨特性が不安定になりやすい傾向がある。研磨層の厚さは特に限定されないが、1.0〜2.5mm、さらには1.2〜2.2mm、とくには1.4〜2.0mmであることが好ましい。
【0020】
また、比較的硬質である研磨層は、被研磨材の被研磨面の局所的な凹凸に追従するが、被研磨材全体の反りやうねりに対しては追従しにくい。研磨層よりも低い硬度を有するクッション層は、被研磨材全体の反りやうねりに対して追従することにより、グローバル平坦性とローカル平坦性とのバランスに優れた研磨を実現できる研磨パッドを与える。
【0021】
クッション層としては、従来から研磨パッド用のクッション層として用いられているものが特に限定なく用いられる。その具体例としては、例えば、ポリウレタンフォームやポリエチレンフォーム等の樹脂発泡体や不織布などが挙げられる。これらの中では、柔軟性と耐久性に優れる点からポリウレタンフォームが特に好ましい。クッション層の厚さは特に限定されないが、0.4〜3mm、さらには0.5〜2mm、とくには0.6〜1.5mmであることが研磨の平坦性と均一性とのバランスに優れる点から好ましい。
【0022】
クッション層は、光を透過させるための開口を有する。開口の形状は研磨装置の光照射部からの光を透過させて終点検出を可能にする程度の大きさであれば特に限定されない。
【0023】
研磨層はクッション層に接着される。研磨層とクッション層とを接着するために用いられる粘着材はとくに限定されないが、例えば、アクリル系,ゴム系,スチレン系,シリコーン系,ウレタン系の粘着材が挙げられる。研磨層とクッション層を接着する粘着材層の厚さは特に限定されないが、10〜500μm、さらには30〜300μm程度であることが好ましい。
【0024】
光調整層は、波長350〜700nmの範囲における何れかの波長に、光透過率50%以上であって最大になる最大光透過率(T1)と、光透過率が最小になる最小光透過率(T2)とを有し、最大光透過率(T1)と最小光透過率(T2)との差(T1−T2)が20%以上であるシートであり、光透過率の波長依存性を制御する層である。
【0025】
最大光透過率(T1)は波長350〜700nmの範囲における何れかの波長に存在する、50%以上である光透過率の最大値である。T1が50%以上であることにより、研磨層の光透過性領域に充分な光を透過させ、終点検出を容易にさせる。T1としては、55%以上、さらには60%以上、とくには65%以上であることが反射光強度の明確な変化を示す点から好ましい。また、最小光透過率(T2)は波長350〜700nmの範囲における何れかの波長に存在する、光透過率の最小値である。
【0026】
光調整層のT1とT2の差(T1−T2)は20%以上であり、22%以上、さらには25%以上、27%以上であることが、最大光透過率(T1)と最小光透過率(T2)との差(T1−T2)が大きいことにより、反射光強度の明確な変化を示す効果が高くなる。
【0027】
ここで光調整層の、波長350〜700nmの範囲における何れかの波長の、光透過率50%以上であって最大になる最大光透過率(T1)と、光透過率が最小になる最小光透過率(T2)は、光調整層を形成する部材を分光光度計「UV−2450」を用いて波長350〜700nmの全範囲の光透過率を測定することにより求められる。
【0028】
光調整シートは、上述したような光学特性を有する光調整層を実現できるシートであれば特に限定されないが、好ましくは、樹脂を主成分とし、必要に応じて光透過率の波長依存性を制御するための着色材を含有する樹脂シートが、研磨層への密着性に優れることから好ましい。樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル,アクリル樹脂,スチレン樹脂,ポリオレフィン,塩ビ樹脂,ポリカーボネート,ポリアミド,ポリウレタン等が挙げられる。また、着色材の具体例としては、染料,顔料,無機微粒子が挙げられる。また、光調整シートの厚さは特に限定されないが、0.02〜0.5mm、さらには0.05〜0.3mm、とくには0.1〜0.2mmであることが好ましい。
【0029】
図1に示した本実施形態の研磨パッド11においては、研磨層1の裏面Rの開口vに対応する領域に掘り込み部1aが形成されており、掘り込み部1aの研磨層1の表面に光調整シート4aが粘着材層4bを介して接着されている。このような形態である場合には、研磨層1の掘り込み部1aが形成された領域が薄くなるために、その領域の光透過性が高くなる点から好ましい。掘り込み部1aの深さは研磨層の厚さとの関係で適宜調整されるが、例えば、掘り込み部1aを除く研磨層1の領域の厚さの3〜40%、さらには5〜35%、とくには10〜30%であることが好ましい。具体的には、掘り込み部1aの深さは、例えば、0.05〜0.8mm、さらには0.1〜0.6mm、とくには0.2〜0.5mmであることが好ましい。
【0030】
また、粘着材層4bを形成する粘着材の種類は特に限定されないが、例えば、アクリル系,ゴム系,スチレン系,シリコーン系,ウレタン系の粘着材が挙げられる。また、粘着材層4bの厚さも特に限定されないが、例えば、10〜500μm、さらには30〜300μm程度であることが好ましい。
【0031】
また、光調整シートは、本実施形態の研磨パッド11のように掘り込み部に粘着材層4bを介して貼り合わせるような形態に限らず、研磨層1の開口vに対応する領域を覆うように配設されている限り、他の形態であってもよい。具体的には、例えば、研磨層1の開口vに対応する領域に掘り込み部を形成せずに粘着材層を介して光調整シートを貼り合わせたり、開口vに対応する領域に掘り込み部を形成せずに研磨層の裏面に光調整シートを形成するための塗液を塗工し、乾燥硬化させるような方法により形成したり、掘り込み部に塗液を充填して硬化させるような方法等が挙げられる。なお、粘着材により光調整シートを接着する場合、粘着材層の光透過率が100%近いものを用いた場合には無視できるが、粘着材層が低い光透過率を示す場合には、光調整シートと粘着材層との積層構造で、波長350〜700nmの範囲における何れかの波長域に、光透過率50%以上であって最大になる最大光透過率(T1)と、光透過率が最小になる最小光透過率(T2)とを有し、最大光透過率(T1)と最小光透過率(T2)との差(T1−T2)が20%以上である光調整層を構成するものとする。
【0032】
次に、研磨層を形成する材料について、詳しく説明する。本実施形態における研磨層は、研磨面の全領域において光透過性を有することが、透光窓となるような光透過プラグを埋め込んだりする必要がない点から好ましい。光透過プラグを研磨層に埋め込んだ場合には、光透過プラグの周辺でスラリー漏れを起こしたり、長時間使用した際に研磨特性が不安定になったりしやすくなる傾向がある。研磨面の全領域において光透過性を有する研磨層を得るための材料の具体例としては、例えば、ポリウレタン,ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレアのうち、光透過性に優れた材料が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、熱可塑性ポリウレタンや熱硬化性ポリウレタン等のポリウレタンが光透過性に優れ、耐摩耗性に優れる点から好ましく、とくに熱可塑性ポリウレタンは高い研磨速度と低スクラッチ性の両立を実現しやすい点から好ましい。本実施形態では、上述したような光透過性の研磨パッドを実現できる研磨層の材料として熱可塑性ポリウレタンについて代表例として詳しく説明する。
【0033】
研磨面の全領域において光透過性を有する研磨層の製造に用いられる熱可塑性ポリウレタンとしては、アミノ基を含有しない鎖伸長剤と高分子ジオールと有機ジイソシアネートとを少なくとも含む原料を重合させた反応物が好ましい。このような熱可塑性ポリウレタンは光透過性に優れている。
【0034】
アミノ基を含有しない鎖伸長剤としては、アミノ基を有さず水酸基を2個有する分子量300以下の低分子化合物が好ましく用いられる。その具体例としては、例えば、エチレングリコール,ジエチレングリコール,トリエチレングリコール,テトラエチレングリコール,1,2-プロパンジオール,1,3-プロパンジオール,ネオペンチルグリコール,1,2-ブタンジオール,1,3-ブタンジオール,2,3-ブタンジオール,1,4-ブタンジオール,1,5-ペンタンジオール,1,6-ヘキサンジオール,3-メチル-1,5-ペンタンジオール,1,4-ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン,1,4-シクロヘキサンジオール,1,4-シクロヘキサンジメタノール,ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート,1,9-ノナンジオールなどが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよい。これらの中では、1,4-ブタンジオール,ネオペンチルグリコール,1,5-ペンタンジオール,1,6-ヘキサンジオール,3-メチル−1,5-ペンタンジオールが、とくには、1,4-ブタンジオール,3-メチル−1,5-ペンタンジオールが好ましい。また、鎖伸長剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、アミノ基を含有する鎖伸長剤を併用してもよい。
【0035】
また、高分子ジオールの具体例としては、例えば、ポリ(エチレングリコール),ポリ(プロピレングリコール),ポリ(テトラメチレングリコール),ポリ(メチルテトラメチレングリコール)等のポリエーテルジオール;ポリブチレンアジペート,ポリカプロラクトン,ポリ(3−メチル−1,5−ペンタメチレンアジペート)等のポリエステルジオール;ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等のポリカーボネートジオール等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよい。これらの中では、ポリエーテルジオールやポリエステルジオール、とくにはポリエーテルジオールが好ましい。また、高分子ジオールの数平均分子量としては、500〜1500、さらには550〜1200、とくには600〜1000であることが好ましい。高分子ジオールの数平均分子量が高すぎる場合は、研磨層の光透過性が低下する傾向がある。一方、高分子ジオールの数平均分子量が低すぎる場合は、研磨層の硬度が高くなりすぎて研磨中に研磨傷が発生しやすくなる傾向がある。
【0036】
また、有機ジイソシアネートとしては、従来ポリウレタンの製造に用いられている有機ジイソシアネートであれば特に限定なく用いられる。その具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート,4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族または脂環式ジイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート,2,4’-トリレンジイソシアネート,2,6’-トリレンジイソシアネート,m-キシリレンジイソシアネート,等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよい。これらの中では、得られる研磨パッドの耐摩耗性に優れる点から4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートがとくに好ましい。
【0037】
熱可塑性ポリウレタンのイソシアネート基に由来する窒素原子の含有率としては、5.0〜7.0質量%、さらには5.2〜6.7質量%、とくには5.4〜6.4質量%であることが好ましい。窒素原子の含有率が低すぎる場合には研磨層が柔らかくなりすぎ、被研磨面の平坦性や研磨効率が低下する傾向がある。一方、窒素原子の含有率が高すぎる場合には、研磨層が硬くなりすぎて被研磨面にスクラッチが発生しやすくなる傾向があり、また、研磨層の光透過率が低下する傾向がある。
【0038】
熱可塑性ポリウレタンは、上述したような鎖伸長剤と、高分子ジオールと、有機ジイソシアネートとを少なくとも含む原料を用い、公知のプレポリマー法またはワンショット法を用いたウレタン化反応により重合することにより得られる。好ましくは、実質的に溶剤の不存在下で、上述した各成分を所定の比率で配合して単軸又は多軸スクリュー型押出機を用いて溶融混合しながら連続溶融重合する方法によって得られる。
【0039】
各成分の配合割合は目的とする特性に応じて適宜調整されるが、例えば、高分子ジオールと鎖伸長剤とに含まれる活性水素原子1モルに対して、有機ジイソシアネートに含まれるイソシアネート基が0.95〜1.3モル、さらには0.96〜1.1モル、とくには0.97〜1.05モルとなる割合で配合することが好ましい。有機ジイソシアネートに含まれるイソシアネート基の割合が低すぎる場合には熱可塑性ポリウレタンの機械的強度および耐摩耗性が低下する傾向があり、高すぎる場合には、熱可塑性ポリウレタンの生産性、保存安定性が低下する傾向がある。
【0040】
また、熱可塑性ポリウレタンは、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、架橋剤,充填剤,架橋促進剤,架橋助剤,軟化剤,粘着付与剤,老化防止剤,発泡剤,加工助剤,密着性付与剤,無機充填剤,有機フィラー,結晶核剤,耐熱安定剤,耐候安定剤,帯電防止剤,着色剤,滑剤,難燃剤,難燃助剤(酸化アンチモンなど),ブルーミング防止剤,離型剤,増粘剤,酸化防止剤,導電剤等の添加剤を含有してもよい。熱可塑性ポリウレタンの添加剤の含有割合は特に限定されないが、50質量%以下、さらには20質量%以下、とくには5質量%以下であることが好ましい。
【0041】
上述のように連続溶融重合することにより得られた熱可塑性ポリウレタンは、例えば、ペレット化された後、押出成形法,射出成形法,カレンダー成形法などの各種の成形法によりシート状の成形体に成形される。とくには、Tダイを用いた押出成形によれば厚さの均一なシート状の成形体が得られる点から好ましい。
【0042】
熱可塑性ポリウレタンの成形体の密度としては、1.0g/cm
3以上、さらには1.1g/cm
3以上、とくには、1.2g/cm
3以上であることが好ましい。熱可塑性ポリウレタンの成形体の密度が低すぎる場合には、研磨層が柔らかくなってローカル平坦性が低下する傾向がある。また、熱可塑性ポリウレタンとしては無発泡の熱可塑性ポリウレタンが、発泡構造により光透過性が阻害されないために光透過性に優れた研磨層が得られる点からとくに好ましい。
【0043】
研磨層は、上述したような熱可塑性ポリウレタンのシート状の成形体を切削,スライス,打ち抜き加工等により寸法、形状、厚さ等を調整することにより仕上げられる。研磨層の厚さは特に限定されないが、1.0〜2.5mm、さらには1.2〜2.2mm、とくには1.4〜2.0mmであることが好ましい。
【0044】
研磨層には、厚み方向に光が透過可能な領域も含めて被研磨材と接触する研磨面の全領域に、研削加工やレーザー加工により、同心円状のような所定のパターンで
図1のGで示したような溝や穴のような凹部が形成されることが好ましい。このような凹部は、研磨面に研磨スラリーを均一かつ充分に供給するとともに、スクラッチ発生の原因となる研磨屑の排出や、研磨パッドの吸着保持によるウエハの破損の防止に役立つ。溝および穴の配置パターンとしては、例えば、同心円状、格子状、螺旋状、放射状など、または、これらの複数を組み合わせたパターンが挙げられる。また、例えば同心円状に凹部を形成する場合、凹部間のピッチとしては30mm以下、さらには1〜20mm、とくには2〜10mm程度であることが好ましい。また、凹部の幅としては、0.1〜5mm、さらには0.2〜3mm、とくには0.3〜1mm程度であることが好ましい。また、凹部の深さとしては、0.3〜2mm、さらには0.4〜1.8mm、とくには0.5〜1.5mm程度であることが好ましい。また、溝の断面形状としては、例えば、長方形,台形,三角形,半円形等の形状が目的に応じて適宜選択される。
【0045】
本実施形態の研磨パッドは、光調整層が存在する部分は、例えば、次のような光学特性を有することが好ましい。第1の光学特性としては、波長350〜700nmの全範囲の光に対して、光調整層が存在する部分における光透過率が12%以上、さらには15%以上、とくには17%以上であるような最大光透過率(T3)と、最小光透過率(T4)とを有し、最大光透過率(T3)と前記最小光透過率(T4)との差(T3−T4)が10%以下、さらには7%以下、とくには5%以下であることが好ましい。なお、T3とT4は、一致する、すなわち、T3−T4は0%であってもよい。
【0046】
また、第2の光学特性としては、波長350〜700nmの全範囲の光に対して、光調整層が存在する部分における光透過率が15%以下、さらには12%以下、とくには10%以下である最小光透過率(T5)と、最大光透過率(T6)とを有し、最大光透過率(T6)と最小光透過率(T5)との差(T6−T5)が20%以上、さらには25%以上、とくには30%以上であることが好ましい。
【0047】
第1の光学特性と第2の光学特性は、研磨装置の構成や被研磨材の種類、求められる終点検出の精度などによって変わるが、通常は第1の光学特性がより好ましい。
【0048】
以上説明したような本実施形態の研磨パッドは、CMP研磨装置に具備される光学的手段によって研磨終点を検出する場合に、反射光強度の明確な変化を示すことにより終点検出の精度が向上する。また、製造ロット毎や研磨パッド毎に光透過率の波長依存性を修正することができる。
【0049】
次に、
図2を参照して、代表例として本実施形態の研磨パッド11を用いたCMPの一例について説明する。
【0050】
本実施形態の研磨パッド11を用いたCMPに用いられる研磨装置20は、
図2に示すような研磨パッド11を固定する円形の回転する定盤5と、ウエハ10を吸着保持するトップリング6と、トップリング6を上下に揺動させながらウエハ10を研磨パッド11に圧接させるキャリア17と、固定された研磨パッド11の上面に研磨スラリーSを供給するためのスラリーノズル7と、を備える。研磨パッド11は定盤5に粘着材層9を介して接着されている。研磨装置20は、定盤5及びトップリング6の回転によりウエハ10の被研磨面を研磨パッド11の研磨面に圧し当てて研磨するように構成されている。また、研磨装置20は図略のパッドコンディショナーを備える。さらに、定盤5の内部には研磨の終点を光学的手段によって検出するための光照射部8とその反射光の強度の変化を検出するための図略の光センサが設けられている。
【0051】
研磨装置20を用いたCMPにおいては、はじめに、定盤5の表面に研磨パッド11を粘着材層9を介して貼り合わせる。このとき、研磨パッド11の光調整層4が存在する部分に光照射部8が照射する光が入射するように配置する。そして、定盤5を図略のモータにより矢印に示す方向に回転させ、回転する研磨パッド11の表面に蒸留水を流しながら、例えば、ダイヤモンド粒子をニッケル電着等により担体表面に固定した図略のパッドコンディショナーを押し当てて、研磨パッド11の表面のコンディショニングを行う。コンディショニングにより、研磨パッド表面を被研磨面の研磨に好適な表面粗さに調整する。次に、回転する研磨パッド11の表面にスラリーノズル7から研磨スラリーsを供給する。またCMPを行うに際し、必要に応じ、研磨スラリーと共に、潤滑油、冷却剤などを併用してもよい。研磨スラリーとしては、例えば、水やオイル等の液状媒体;シリカ,アルミナ,酸化セリウム,酸化ジルコニウム,炭化ケイ素等の砥粒;過酸化水素水等の酸化剤;グリシン、EDTA等のキレート剤:塩基、酸等のpH調整剤;界面活性剤、水溶性ポリマー等の分散剤等を含有しているCMPに用いられる研磨スラリーであれば特に限定なく用いられる。
【0052】
そして、研磨スラリーsが満遍なく行き渡った研磨パッド11の被研磨面にトップリング6に吸着保持されて回転するウエハ10を圧し当てて、研磨面と被研磨材とを相対的に摺動させながら研磨を実施する。このとき、定盤5の内部の光照射部8から発光する光が、光調整層4及び研磨層1を透過してウエハ10の被研磨面に到達し、その反射光が図略の光センサで検知される。光センサは、例えば、反射光強度の変化をモニタすることにより膜厚変化量を測定する。そして、研磨を続け、所定の膜厚変化量になるような反射光強度の変化を検出したときに、キャリア17はトップリング6を上昇させて研磨を終了させる。このようにして研磨を行う。
【0053】
このような本実施形態のCMPは、各種半導体装置、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等の製造プロセスにおける研磨に好ましく用いられる。研磨対象の例としては、水晶、シリコン、ガラス、光学基板、電子回路基板、多層配線基板、ハードディスクなどが挙げられる。特に、被研磨材は、シリコンウエハや半導体ウエハであることが好ましい。半導体ウエハとしては、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、有機ポリマー等の絶縁膜;銅、アルミニウム、タングステン等の配線材金属膜;タンタル、チタン、窒化タンタル、窒化チタン等のバリアメタル膜などを表面に有するものが挙げられる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明の範囲はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0055】
[実施例1]
数平均分子量850のポリテトラメチレングリコール(PTMG)、1,4-ブタンジオール(BD)、及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を、PTMG:BD:MDI=32.5:15.6:51.9(質量比)となる割合で用い、且つそれらの合計供給量が300g/分になるようにして、同軸で回転する二軸押出機(30mmφ、L/D=36、シリンダー温度:75〜260℃)に定量ポンプで連続的に供給して、連続溶融重合を行って熱可塑性ポリウレタンを製造した。生成した熱可塑性ポリウレタンの溶融物をストランド状に水中に連続的に押出した後、ペレタイザーでペレット状に細断し、得られたペレットを70℃で20時間除湿乾燥することにより、熱可塑性ポリウレタンを製造した。なお、原料配合比から算出したイソシアネート基由来の窒素原子含有量は5.8質量%であった。
【0056】
そして、得られた熱可塑性ポリウレタンを次に単軸押出機(90mmφ)に仕込み、シリンダー温度215〜225℃、ダイス温度225℃にてリップ幅3.0mmのT−ダイより速度40cm/分で下向きに押出し、厚さ2.0mmのシートを作製した。
【0057】
このシートの表面を研削して厚さが1.5mmで均一なシートを作製し、直径510mmの円盤状に切り出した後、円盤状シートの研磨面となる片面に幅0.5mm、深さ0.8mm、ピッチ3.5mmの同心円溝を形成した。次いで、研磨面と反対側の面(研磨層の裏面)の中心から100mmの部分に、長辺が直径方向に平行であり深さが0.4mmの長方形(長辺54mm、短辺16mm)の掘り込み部を研削により形成した。次に、研磨層の研磨面とは反対側の面に、クッション層として厚さ1.2mmのポリウレタンフォームを貼り付けた後、研磨層の裏面の掘り込み部に相当する領域のクッション層を切り抜いて開口を形成し、厚み方向に光が透過可能な領域を有する研磨パッドを製造した。
【0058】
そして、得られた研磨パッドのクッション層の開口において、研磨層の裏面に実質的に光吸収性を有さない粘着材で光調整シートA1を接着して光調整層を形成した。光調整シートA1は、厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレート(PET)のシートを染料で染色して得られた樹脂シートであり、波長350〜700nmにおける最大の光透過率(T1)65%を波長350nmで示し、最小の光透過率(T2)35%を550nmで示した。従って、T1とT2の差は30%であった。また、研磨パッドの光調整層の領域の光透過率は、最大値(T3)20%を波長350nmで示し、波長350〜700nmにおける最小の光透過率(T4)15%を550nmで示した。従って、T3とT4との差は5%であった。
【0059】
そして、研磨パッドをアプライドマテリアルズ社製研磨装置「MIRRA」に設置した。そして、旭ダイヤモンド工業(株)製ダイヤモンドドレッサー「CMP−M」を用い、超純水を200mL/分の流速で流しながらドレッサー回転数120rpm、研磨パッド回転数50rpm、ドレッサー荷重5.0lbfにて30分間、研磨パッドの表面をコンディショニングした。次に、研磨パッドの回転数80rpm、ウエハ回転数70rpm、研磨圧力20kPaの条件において、研磨スラリー((株)フジミインコーポレーテッド製「PL−7105」、超純水、過酸化水素水(濃度31質量%)を1:2:0.09の質量比で混合したもの)を200mL/分の流速で流しながら、SEMATECH854パターンウエハを130秒間研磨した。この研磨において、銅膜が除去されてバリアメタル膜が露出した時のレーザー光の反射率が10%以上変化した場合を終点検出が可能であると評価した。パターンウエハを研磨した結果、表面の銅膜が除去された段階で検出レーザー強度の明確な変化が認められ、光による研磨終点の検出が可能であった。また、表面の銅膜が除去されるまでに要した時間は85秒であった結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
[実施例2]
実施例1において、光調整シートA1の代わりに光調整シートA2を用いた以外は同様にして研磨パッドを得、評価した。なお、光調整シートA2は、厚さ0.1mmのPETのシートを染料で染色して得られた樹脂シートであり、波長350〜700nmにおける最大の光透過率(T1)80%を波長650nmで示し、最小の光透過率(T2)30%を350nmで示した。従って、T1とT2との差は50%であった。また、研磨パッドの光調整層の領域の光透過率は、波長350〜700nmにおける最大値(T6)35%を波長650nmで示し、最小の光透過率(T5)10%を350nmで示した。従って、T6とT5との差は25%であった。この研磨パッドを研磨装置に装着し、パターンウエハを研磨した結果、表面の銅膜が除去された段階で検出レーザー強度の明確な変化が認められ、光による研磨終点の検出が可能であった。また、表面の銅膜が除去されるまでに要した時間は85秒であった。
【0062】
[実施例3]
実施例1において、研磨層の研磨面と反対側の面(研磨層の裏面)の中心から100mmの部分に、深さが0.4mmの長方形の掘り込み部を研削した代わりに、深さを0.05mmとした掘り込み部を形成した以外は同様にして研磨パッドを製造し、評価した。研磨パッドの光調整層の領域の光透過率は、最大値(T3)15%を波長700nmで示し、波長350〜700nmにおける最小の光透過率(T4)10%を500nmで示した。従って、T3とT4との差は5%であった。この研磨パッドを研磨装置に装着し、パターンウエハを研磨した結果、表面の銅膜が除去された段階で検出レーザー強度の明確な変化が認められ、光による研磨終点の検出が可能であった。また、表面の銅膜が除去されるまでに要した時間は87秒であった。
【0063】
[実施例4]
実施例3において、厚み方向に光が透過可能な領域において、研磨層表面に同心円溝を形成しないこと以外は実施例3と同様にして、厚み方向に光が透過可能な領域を有する研磨パッドを製造し、評価した。研磨パッドの光調整層の領域の光透過率は、最大値(T3)18%を波長700nmで示し、波長350〜700nmにおける最小の光透過率(T4)12%を500nmで示した。従って、T3とT4との差は6%であった。この研磨パッドを研磨装置に装着し、パターンウエハを研磨した結果、表面の銅膜が除去された段階で検出レーザー強度の明確な変化が認められ、光による研磨終点の検出が可能であった。また、表面の銅膜が除去されるまでに要した時間は95秒であった。
【0064】
[比較例1]
実施例1において、光調整シートA1の代わりに光調整シートA3を用いた以外は同様にして研磨パッドを得、評価した。なお、光調整シートA3は、厚さ0.1mmのPETのシートを染料で染色して得られた樹脂シートであり、最大の光透過率(T1)35%を波長600nmで示し、波長350〜700nmにおける最小の光透過率(T2)5%を
400nmで示した。従って、T1とT2との差は30%であった。また、研磨パッドの光調整層の領域の光透過率は、最大値(T3)11%を波長600nmで示し、波長350〜700nmにおける最小の光透過率(T4)1%を400nmで示した。従って、T3とT4との差は10%であった。研磨パッドを研磨装置に装着し、パターンウエハを研磨した結果、表面の銅膜が除去された段階での検出レーザー強度の変化が小さく、光による研磨終点の検出ができなかった。
【0065】
[比較例2]
実施例3において、光調整シートA1の代わりに光調整シートA4を用いた以外は同様にして研磨パッドを得、評価した。なお、光調整シートA4は、厚さ0.1mmのPETのシートを染料で染色して得られた樹脂シートであり、最大の光透過率(T1)40%を波長450nmで示し、波長350〜700nmにおける最小の光透過率(T2)30%を700nmで示した。従って、T1とT2との差は10%であった。また、研磨パッドの光調整層の領域の光透過率は、最大値(T3)10%を波長500nmで示し、波長350〜700nmにおける最小の光透過率(T4)3%を350nmで示した。従って、T3とT4との差は7%であった。研磨パッドを研磨装置に装着し、パターンウエハを研磨した結果、表面の銅膜が除去された段階での検出レーザー強度の変化が小さく、光による研磨終点の検出ができなかった。