(54)【発明の名称】α−ハロテトラメチルシクロヘキサノン及びその製造方法並びに(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メチル=カルボキシレート化合物の製造方法
【文献】
          Anais da Academia Brasileira de Ciencias,1972年,44(Suppl.),405-7
        
        (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
  本明細書中の中間体、試薬や目的物の化学式において、構造上、置換位置の異なる異性体や、エナンチオ異性体(Enantiomer)あるいはジアステレオ異性体(Diastereomer)等の立体異性体が存在し得るものがあるが、特に記載がない限り、いずれの場合も各化学式はこれらの異性体のすべてを表すものとする。また、これらの異性体は、単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
 
【0011】
  本発明者らは、(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メチル=カルボキシレート化合物(4)、例えば、OMBのフェロモン(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メチル=アセテートの合成にあたり、中間体として2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物(2)を想定した。この化合物は、還元によって(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール(3)に変換でき、更にこれをアシル化することで、(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メチル=カルボキシレート化合物(4)が合成可能となる。中間体2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物(2)は、α−ハロテトラメチルシクロヘキサノン(1a)または(1b)に塩基を作用させて得られるものの一つである。例えば、α−ハロテトラメチルシクロヘキサノン(1a)に塩基を作用させる場合、反応する水素原子はH
aとH
bの2種類が考えられる。そして、H
aが反応すればファヴォルスキー(Favorskii)転位が起き、H
bが反応すればβ脱離が起き、下記2種類の生成物が得られると予想できる。下記反応式において、H
aが反応した場合は実線で囲った生成物であり、H
bが反応した場合は点線で囲った生成物である。R
1は水素原子または炭素数1から15の一価の炭化水素基を表す。
 
【0013】
  本発明者らは、α−ハロテトラメチルシクロヘキサノン(1a)または(1b)の種々の条件下で塩基を反応させた場合のこれらの化合物の生成比に興味を持ち検討した結果、驚くべきことに、様々な求核剤において、ファヴォルスキー(Favorskii)転位、すなわち、Haへの反応が優先して起こり、2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物(2)が高い選択性で生成することを見出した。
  また、下記一般式に示す(1a’)または(1b’)のように、3位と4位のメチル基がcis−配置のα−ハロテトラメチルシクロヘキサノンを原料に用いる場合、高い立体選択性でOMBの性フェロモンである(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メチル=アセテートと同一の立体相対配置を有する2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物(2’)を与えることを見出した。
 
【0015】
  以下、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
  α−ハロテトラメチルシクロヘキサノン(1a)または(1b)を合成するための出発原料となってもよい3,5,5−トリメチル−4−メチリデン−2−シクロヘキセン−1−オンは、下記式(5)で表される。
 
【0017】
  3,5,5−トリメチル−4−メチリデン−2−シクロヘキセン−1−オン(5)の製造方法としては、例えば、1,4−ジオキサスピロ[4.5]−8−メチリデン−7,9,9−トリメチル−6−デセンから酸処理する方法等を挙げることができる。
 
【0019】
  次に、3,5,5−トリメチル−4−メチリデン−2−シクロヘキセン−1−オン(5)の水素添加反応による3,3,4,5−テトラメチルシクロヘキサン−1−オン(6)の合成について述べる。
 
【0021】
  化合物(5)の水素添加反応に用いる触媒としては、例えば、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、オスミウム、白金、イリジウム、銅、鉄等の金属及びこれらを含む酸化物、水酸化物、ハロゲン化物等が挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。また、上記に例示した金属触媒が担体に担持されても良く、その場合の担体としては、カーボン、アルミナ、ゼオライト、シリカゲル等が挙げられ、パラジウム=カーボンは特に好ましい触媒として挙げることができる。
 
【0022】
  化合物(5)の水素添加反応に用いる溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、ベンジルアルコール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、ジエチレングリコール=モノメチル=エーテル、トリエチレングリコール=モノメチル=エーテル等のアルコール類、ジエチル=エーテル、ジ−n−ブチル=エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ジメチル=スルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)等の非プロトン性極性溶媒類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類を挙げることができ、これらを単独又は混合して用いることができる。
 
【0023】
  水素添加反応における溶媒の使用量は、基質の化合物(5)100部に対して、0.01部から100,000部、好ましくは0.1部から10,000部、更に好ましくは1部から1,000部である。
 
【0024】
  化合物(5)の水素添加反応における水素圧は、常圧から5MPaが好ましく、反応温度は、好ましくは5℃から70℃、より好ましくは20℃から50℃で行う。
 
【0025】
  水素添加反応における反応時間は、任意に設定できるが、ガスクロマトグラフィー(GC)や薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましく、5分間から240時間が好ましい。
  反応の後処理、目的物の単離や精製は、減圧蒸留や各種クロマトグラフィー等の通常の有機合成における精製方法から便宜選択して用いることができる。また、粗生成物が十分な純度を有している場合には、粗生成物のまま次の工程に用いてもよい。
 
【0026】
  なお、OMBの性フェロモンである(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メチル=アセテートの(±)−体を製造する場合においては、下記式に示す化合物(6’)のように4位と5位のメチル基がcis−配置であることが好ましい。水素添加反応では分子の立体的に空いている面から水素原子が付加するため、化合物(5)から高い立体選択性で化合物(6’)を得られる。本工程で得られた化合物(6’)のメチル基の相対立体配置は、次工程以降の反応においても保持される。
 
【0028】
  3,3,4,5−テトラメチルシクロヘキサン−1−オン(6)のハロゲン化による
α−ハロテトラメチルシクロヘキサノン(1a)または(1b)の合成について述べる。
 
【0030】
  Xは、塩素原子または臭素原子であり、精製が必要な場合に化合物の沸点、極性等を調整する等の目的で適切なもの選択できる。臭素原子は、原料の入手しやすさやから特に好ましい。
 
【0031】
  α−ハロテトラメチルシクロヘキサノンには、(1a)または(1b)の位置異性体(Regioisomer)とジアステレオ異性体(Diastereomer)が存在する。下記一般式で表されるR−(1a)、S−(1a)、R−(1b)、S−(1b)のいずれを用いても、後述するように同一の目的物2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物が得られるので、その位置選択性および立体選択性は考慮しなくてよい。すなわち、選択的に一方を与える条件でもよいし、任意の割合の混合物でもよい。
 
【0033】
  化合物(6)のハロゲン化に用いる試薬としては、例えば、臭素、塩素等の単体ハロゲン類、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、N−クロロスクシンイミド(NCS)、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、過臭素化臭化ピリジン等のハロゲン化アミド類、5,5−ジブロモメルドラム酸、2,4,4,6−テトラブロモ−2,5−シクロヘキサジエノン等の炭素−ハロゲン結合を有するハロゲン化試薬類挙げることができ、これらを単独又は混合して用いることができるが、反応条件や後処理の容易さや生成物の単離の容易さ等の点で単体ハロゲン類を使用することが好ましい。
 
【0034】
  ハロゲン化試薬の使用量は、基質や塩基の種類によって種々異なるが、基質の化合物(6)1モルに対して、0.0001モルから10,000モル、好ましくは0.001モルから1,000モル、更に好ましくは0.001モルから100モルである。
 
【0035】
  化合物(6)のハロゲン化に用いる溶媒としては、例えば、水、ギ酸、酢酸等のカルボン酸溶媒類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジエチル=エーテル、ジ−n−ブチル=エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類を挙げることができ、これらを単独または混合して用いることができる。
 
【0036】
  ハロゲン化における溶媒の使用量は、基質の化合物(6)100部に対して、0.01部から100,000部、好ましくは0.1部から10,000部、更に好ましくは1部から1,000部である。
 
【0037】
  ハロゲン化における反応時間は、任意に設定できるが、ガスクロマトグラフィー(GC)や薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましく、5分間から240時間が好ましい。
  反応の後処理、目的物の単離や精製は、減圧蒸留や各種クロマトグラフィー等の通常の有機合成における精製方法から便宜選択して用いることができる。また、目的物が十分な純度を有している場合には、粗生成物のまま次の工程に用いてもよい。
 
【0038】
  次に、α−ハロテトラメチルシクロヘキサノン(1a)または(1b)のファヴォルスキー(Favorskii)転位による2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物(2)の合成について述べる。
  ファヴォルスキー(Favorskii)転位は、種々の条件を適用し得るが、基本的にはハロゲン原子を有する化合物(1a)または(1b)をシクロプロパン中間体(1x)に変換し、次いで、中間体(1x)に求核剤を反応させる工程である。
 
【0040】
  式中、R
1は上記と同様である。
  中間体(1x)は不安定な中間体と考えられる。
 
【0041】
  化合物(1a)または(1b)のファヴォルスキー(Favorskii)転位としては、塩基を用いた求核反応を挙げることができる。
  塩基の好ましい例としては、ナトリウム=メトキシド、ナトリウム=エトキシド、ナトリウム=t−ブトキシド、ナトリウム=t−アミロキシド、リチウム=メトキシド、リチウム=エトキシド、リチウム=t−ブトキシド、リチウム=t−アミロキシド、カリウム=メトキシド、カリウム=エトキシド、カリウム=t−ブトキシド、カリウム=t−アミロキシド等のアルコキシド類、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等の水酸化物塩類を挙げることができる。これらの塩基は単独で用いても複数の塩基を混合して用いてもよく、基質の種類や反応性や選択性を考慮して選択できる。
 
【0042】
  塩基の使用量は、基質や塩基の種類によって種々異なるが、基質の化合物(1a)または(1b)1モルに対して、0.0001モルから10,000モル、好ましくは0.001モルから1,000モル、更に好ましくは0.001モルから100モルである。
 
【0043】
  塩基としてアルコキシド類を選択する場合、化合物(2)中の置換基CO
2R
1に対応するアルコキシドR
1O
−を含むアルコキシドを使用すると、エステル交換による反応系の複雑化を避けることができて好ましい。また、これらの塩基は第二工程、すなわち、中間体(1x)の化合物(2)への変換のための反応試薬としても好ましい。
 
【0044】
  化合物(1a)または(1b)のファヴォルスキー(Favorskii)転位は、無溶媒または溶媒中、室温または必要に応じて冷却または加熱する等して実施することができる。
  ファヴォルスキー(Favorskii)転位に用いる溶媒としては、例えば、水、液体アンモニア、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジエチル=エーテル、ジ−n−ブチル=エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−アミル等のエステル類、N,N-ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチル=スルホキシド、ヘキサメチルホスホリック=トリアミド等の非プロトン性極性溶媒類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、ピリジン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、アニリン、ジメチルアニリン等のアミン類を挙げることができ、これらを単独または混合して用いることができる。
 
【0045】
  ファヴォルスキー(Favorskii)転位に用いる溶媒の使用量は、基質100部に対して、0.01部から100,000部、好ましくは0.1部から10,000部、更に好ましくは1部から1,000部である。また、溶媒としてアルコール類を選択する場合、化合物(2)の置換基CO
2R
1に対応するアルコールR
1OHを使用するとエステル交換による反応系の複雑化を避けることができて好ましい。
 
【0046】
  化合物(1a)または(1b)のファヴォルスキー(Favorskii)転位の反応温度と反応時間は任意に設定できるが、ガスクロマトグラフィー(GC)や薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応の進行を追跡して反応を十分進行させることが好ましい。反応温度は、好ましくは0℃から溶媒の沸点温度、より好ましくは10℃から100℃であり、反応時間は、通常5分間から240時間である。
 
【0047】
  α−ハロテトラメチルシクロヘキサノン(1a)または(1b)のファヴォルスキー(Favorskii)転位による2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物(2)の製造では、上記種々の反応条件から適切な条件を選択することで、工業的に実施するのに十分な選択性や収率で化合物(2)が得られることが知見された。この際、生成物として比較的安定と考えられるβ脱離体、すなわち、3,4,5,5−テトラメチルシクロヘキサ−2−エンが、ほとんど生成しない点は特筆すべきである。更に、α−ハロテトラメチルシクロヘキサノンの位置異性体および立体異性体であるR−(1a)、S−(1a)、R−(1b)、S−(1b)はいずれも同一の目的物を与える点、すなわち、位置及び立体に関し収束的(Regiochemically/Stereochemically  convergent)であって、位置および立体特異的(Reiospecific/Stereospecific)でない点も、α−ハロテトラメチルシクロヘキサノンの位置異性体および立体異性体の作り分けが不要であり、工業的な価値が高い。これらの点における高い選択性は、化合物(1a)におけるHbが立体的に混み合っていること等が理由と考えることができる。
  また、下記式に示すように、4位と5位のメチル基がcis−配置の3,3,4,5−テトラメチルシクロヘキサン−1−オン(6')を用いれば、(1a')または(1b')を経て、OMBの性フェロモンである(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メチル=アセテートと同一の相対立体配置を持つ2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物(2')を高い立体選択性で得られる。
 
【0049】
  上記のファヴォルスキー(Favorskii)転位で得られた目的の2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物(2)は、十分な純度を有している場合には、粗生成物のまま次の工程に用いてもよいが、蒸留、各種クロマトグラフィー、再結晶等の通常の有機合成化学における精製方法から適宜選択して精製してもよい。
 
【0050】
  次に、得られた2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物(2)の還元反応による(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール(3)の合成について述べる。
 
【0052】
  2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物(2)は、そのまま後述の還元反応により(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール(3)に導くことができる。別法としてR
1が炭素数1から15の一価の炭化水素基の場合、2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボン酸にした後、還元反応に供することもできる。先に、2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物(2)の2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボン酸への変換について述べる。
 
【0053】
  R
1が炭素数1から15の一価の炭化水素基の場合、2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物(2)の2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボン酸への変換には、公知のエステルからカルボン酸への変換反応を適用できる。例えば、塩基性または中性条件での加水分解反応、酸性条件での脱離反応を挙げることができる。加水分解反応は、基質のエステル中のR
1が一級または二級炭化水素基である場合に好ましく、酸性条件下での脱離反応は、R
1が三級炭化水素基である場合に好ましい。加水分解反応の場合には、通常、溶媒中塩基または塩類を用いて、溶媒中の水または水を後で添加して反応させる。脱離反応の場合には、通常溶媒中、酸を用いる。いずれも必要に応じて冷却または加熱して反応させてもよい。
 
【0054】
  加水分解反応に用いる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等の水酸化物塩類(好ましくは金属水酸化物、より好ましくはアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物)、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩類(好ましくはアルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属重炭酸塩)、ナトリウム=メトキシド、ナトリウム=エトキシド、ナトリウム=t−ブトキシド、ナトリウム=t−アミロキシド、リチウム=メトキシド、リチウム=エトキシド、リチウム=t−ブトキシド、リチウム=t−アミロキシド、カリウム=メトキシド、カリウム=エトキシド、カリウム=t−ブトキシド、カリウム=t−アミロキシド等のアルコキシド類(好ましくは金属アルコキシド、より好ましくはアルカリ金属アルコキシド)を挙げることができる。
  加水分解に用いる塩類としては、例えば、ヨウ化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化トリメチルシリル、臭化トリメチルシリル等のハロゲン化物類(好ましくはアルカリ金属ハロゲン化物)を挙げることができる。
 
【0055】
  脱離反応に用いる酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸等の無機酸類またはこれらの塩類(例えば硫酸水素カリウム等)、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の有機酸類またはこれらの塩類、三塩化アルミニウム、アルミニウム=エトキシド、アルミニウム=イソプロポキシド、酸化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四塩化錫、四臭化錫、二塩化ジブチル錫、ジブチル錫=ジメトキシド、ジブチル錫=オキシド、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)=メトキシド、チタン(IV)=エトキシド、チタン(IV)=イソプロポキシド、酸化チタン(IV)等のルイス酸(Lewis  acid)類、アルミナ、シリカゲル、チタニア等の酸化物類を挙げることができ、これらは単独または混合して用いられる。
 
【0056】
  加水分解反応または脱離反応に用いる溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピル=アルコール、t−ブチル=アルコール、ベンジル=アルコール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、ジエチレングリコール=モノメチル=エーテル、トリエチレングリコール=モノメチル=エーテル等のアルコール類、ジエチル=エーテル、ジ−n−ブチル=エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ジメチル=スルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)等の非プロトン性極性溶媒類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類を挙げることができ、これらを単独または混合して用いることができる。
 
【0057】
  加水分解反応または脱離反応に用いる溶媒の量は、基質(2)100部に対して、0.01部から100,000部、好ましくは0.1部から10,000部、更に好ましくは1部から1,000部である。
 
【0058】
  加水分解反応または脱離反応における反応温度と反応時間は任意に設定できるが、ガスクロマトグラフィー(GC)や薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応の進行を追跡して反応を十分進行させるのがよく、反応温度は好ましくは−78℃から溶媒の沸点温度、より好ましくは−10℃から100℃であり、反応時間は、通常5分間から240時間である。
  反応の後処理、目的物の単離や精製は、減圧蒸留や各種クロマトグラフィー等の通常の有機合成における精製方法から便宜選択して用いることができる。また、目的物が十分な純度を有している場合には、粗生成物のまま次の工程に用いてもよい。
 
【0059】
  次に、上記2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物(2)をそのまま還元する場合または2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボン酸に変換した後に還元して、(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール(3)に導く工程について述べる。
  この還元反応には、公知のカルボン酸エステルまたはカルボン酸からアルコールへの還元反応を適用できる。還元反応は、通常溶媒中、必要に応じて冷却または加熱しながら反応基質を還元剤と反応させる。反応基質としては、用いる還元剤の種類や反応条件にも依存するが、例えば、エステル中のR
1が一級または二級のアルキル基である場合は、2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物(2)をそのまま還元の基質として用いることが好ましく、R
1が三級であって、特にその立体障害が大きい場合には、還元反応の進行が遅いことが考えられる。このような場合には、前述の方法により予め2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボン酸に変換して還元反応の基質として用いることが好ましい。
 
【0060】
  還元反応における還元剤(Reducing  agent)としては、例えば、水素、ボラン、アルキルボラン、ジアルキルボラン、ビス(3−メチル−2−ブチル)ボラン等のホウ素化合物、ジアルキルシラン、トリアルキルシラン、水素化モノアルキルアルミニウム、水素化ジアルキルアルミニウム等の金属水素化物類、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化アルミニウムナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリメトキシホウ素ナトリウム、水素化トリメトキシアルミニウムリチウム、水素化ジエトキシアルミニウムリチウム、水素化トリtert−ブトキシアルミニウムリチウム、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム等の錯水素化塩類(Complex  hydride)やそれらのアルコキシあるいはアルキル誘導体を例示できるが、反応条件や後処理の容易さや生成物の単離の容易さ等の点で錯水素化塩類を使用することが好ましい。
 
【0061】
  還元反応における還元剤の使用量は、使用する還元剤、反応条件等によって異なるが、一般的には基質1モルに対して、好ましくは0.5モルから大過剰量(2モルから500モル)、より好ましくは0.9モルから8.0モルである。
 
【0062】
  還元反応における溶媒としては、例えば、水、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、ジエチル=エーテル、ジ−n−ブチル=エーテル、ジエチレングリコール=ジエチル=エーテル、ジエチレングリコール=ジメチル=エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール=モノメチル=エーテル、ジエチレングリコール=モノメチル=エーテル等のアルコール類、アセトニトリル等のニトリル類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチル=スルホキシド、ヘキサメチルホスホリック=トリアミド等の非プロトン性極性溶媒類が好ましく、これらの溶媒は単独もしくは混合して使用することができる。
  還元反応における溶媒は、用いられる還元剤の種類によって適切なものを選択して用いる。例えば、還元剤と溶媒の好ましい組み合わせとしては、還元剤として水素化ホウ素リチウムを用いる場合には、エーテル類、エーテル類とアルコール類との混合溶媒またはエーテル類と炭化水素類との混合溶媒等、還元剤として水素化アルミニウムリチウムを用いる場合には、エーテル類またはエーテル類と炭化水素類との混合溶媒等が挙げられる。
 
【0063】
  還元反応に用いる溶媒の量は、基質(2)100部に対して、0.01部から100,000部、好ましくは0.1部から10,000部、更に好ましくは1部から1,000部である。
 
【0064】
  還元反応における反応温度または反応時間は、用いる試薬や溶媒により種々異なるが、例えば、還元剤としてテトラヒドロフラン中で水素化アルミニウムリチウムを用いる場合は、反応温度を好ましくは−78℃から50℃、より好ましくは−70℃から20℃で行う。反応時間は、任意に設定できるが、ガスクロマトグラフィー(GC)やシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましく、通常0.5から96時間程度である。
  また、還元反応の原料として、OMBの性フェロモンである(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メチル=アセテートと同一の相対立体配置を持つ下記一般式に示す2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物(2’)を用いれば、下記式に示す(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール(3’)が得られる。
 
【0066】
  上記のようにして製造した(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール(3)の単離や精製は、蒸留や各種クロマトグラフィー等の通常の有機合成における精製方法から適宜選択して用いることができるが、工業的経済性の観点から減圧蒸留が好ましい。また、化合物(3)が十分な純度を有している場合には、粗生成物のまま次の工程に用いてもよい。
 
【0067】
  次に、(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール(3)のエステル化反応による(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メチル=カルボキシレート化合物(4)の合成について述べる。
 
【0069】
  R
2は炭素数1から15の一価の炭化水素基を表す。
  R
2は、前記R
2と同様の置換基が挙げられ、特に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、4−メチルペンチル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基が好ましい。
 
【0070】
  (2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール(3)のエステル化反応による(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メチル=カルボキシレート化合物(4)の製造としては、公知のエステルの製造方法、例えば、アシル化剤との反応、カルボン酸との反応、エステル交換反応、化合物(3)をアルキル化剤に変換した後にカルボン酸と反応させる方法を適用できる。
 
【0071】
  アシル化剤との反応では、単独あるいは2種類以上の混合溶媒中、反応基質の(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール(3)を、アシル化剤と、塩基類または酸触媒とに、順次または同時に反応させる。
  アシル化剤との反応に用いる溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、へキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、ジエチル=エーテル、ジ−n−ブチル=エーテル、ジエチレングリコール=ジエチル=エーテル、ジエチレングリコール=ジメチル=エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチル=スルホキシド、ヘキサメチルホスホリック=トリアミド等の非プロトン性極性溶媒類から選択した単独あるいは2種類以上の混合溶媒が挙げられる。
  アシル化剤としては、例えば、カルボン酸クロリド、カルボン酸ブロミド、カルボン酸無水物、カルボン酸トリフルオロ酢酸混合酸無水物、カルボン酸メタンスルホン酸混合酸無水物、カルボン酸トリフルオロメタンスルホン酸混合酸無水物、カルボン酸ベンゼンスルホン酸混合酸無水物、カルボン酸p−トルエンスルホン酸混合酸無水物、カルボン酸p−ニトロフェニル等が挙げられる。
  塩基類としては、好ましくはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
 
【0072】
  酸無水物等のアシル化剤を用いる反応では、塩基の代わりに酸触媒下に反応を行うこともできる。酸触媒としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸類、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸類、三塩化アルミニウム、アルミニウム=エトキシド、アルミニウム=イソプロポキシド、酸化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、四塩化錫、四臭化錫、二塩化ジブチル錫、ジブチル錫=ジメトキシド、ジブチル錫=オキシド、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)=エトキシド、チタン(IV)=イソプロポキシド、酸化チタン(IV)等のルイス酸(Lewis  acid)類が挙げられる。
  反応温度は、用いるアシル化剤の種類や反応条件により適切な反応温度を選択できるが、一般的には−50℃から溶媒の沸点温度が好ましく、−20℃から室温(5℃から35℃、以下同様)が更に好ましい。アシル化剤の使用量は、原料の化合物(3)1モルに対して、0.8モルから500モル、好ましくは0.8モルから50モル、より好ましくは0.8モルから5モルの範囲である。
 
【0073】
  カルボン酸との反応は、(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール(3)とカルボン酸との脱水反応であり、酸触媒下に行うのが一般的である。カルボン酸の使用量は、原料の化合物(3)1モルに対して、0.8モルから500モル、好ましくは0.8モルから50モル、より好ましくは0.8モルから5モルの範囲である。
  化合物(3)とカルボン酸との反応に用いる酸触媒の例として、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸類、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸類、三塩化アルミニウム、アルミニウム=エトキシド、アルミニウム=イソプロポキシド、酸化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、四塩化錫、四臭化錫、二塩化ジブチル錫、ジブチル錫=ジメトキシド、ジブチル錫=オキシド、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)=エトキシド、チタン(IV)=イソプロポキシド、酸化チタン(IV)等のルイス酸(Lewis  acid)類が挙げられ、これらは単独または混合して用いられる。酸触媒の使用量は、原料の化合物(3)1モルに対して、0.0001モルから100モル、好ましくは0.001モルから1モル、より好ましくは0.01モルから0.05モルの触媒量である。
  化合物(3)とカルボン酸との反応に用いる溶媒としては、上記アシル化剤との反応に挙げたものと同様のものを例示できる。
  化合物(3)とカルボン酸との反応温度は、カルボン酸の種類や反応条件により適切な反応温度を選択できるが、一般的には−50℃から溶媒の沸点温度が好ましく、室温から溶媒の沸点温度が更に好ましい。へキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類を含む溶媒を用いて、生じる水を共沸により系外に除去しながら反応を進行させるのもよい。この場合、常圧で溶媒の沸点で還流しながら水を留去してもよいが、減圧下に沸点より低い温度で水の留去を行ってもよい。
 
【0074】
  カルボン酸との反応の別法として、カルボン酸を縮合剤と縮合反応させた後に、(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール(3)と塩基性条件下で縮合反応させる手法も存在する。カルボン酸の使用量は、原料の化合物(3)1モルに対して、0.8モルから500モル、好ましくは0.8モルから50モル、より好ましくは0.8モルから5モルの範囲である。
  カルボン酸と縮合反応に用いる縮合剤の例としては、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)等のカルボジイミド類やO−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム=ヘキサフルオロホスファート(HATU)やO−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム=ヘキサフルオロホスファート(HBTU)等のウロニウム塩類が挙げられ、これらは単独または混合して用いられる。縮合剤の使用量は、原料の化合物(3)1モルに対して、0.8モルから500モル、好ましくは0.8モルから50モル、より好ましくは0.8モルから5モルの範囲である。
  塩基類としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
  縮合剤を用いた、化合物(3)とカルボン酸との縮合反応に用いる溶媒としては、上記アシル化剤との反応に挙げたものと同様のものを例示できる。
  縮合剤を用いた、化合物(3)とカルボン酸との縮合反応温度は、カルボン酸の種類や反応条件により適切な反応温度を選択できるが、一般的には−50℃から溶媒の沸点温度が好ましく、室温から溶媒の沸点温度が更に好ましい。
 
【0075】
  エステル交換反応は、(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール(3)とカルボン酸アルキルとを触媒存在下に反応させ、生じるアルキルアルコールを除去することにより実施する。カルボン酸アルキルとしては、カルボン酸の一級アルキルエステルが好ましく、特にカルボン酸メチル、カルボン酸エチル、カルボン酸n−プロピルが価格、反応の進行のし易さ等の点から好ましい。このカルボン酸アルキルの使用量は、原料の化合物(3)1モルに対して、0.8モルから500モル、好ましくは0.8モルから50モル、より好ましくは0.8モルから5モルの範囲である。
  エステル交換反応に用いる触媒としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸類、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸類、ナトリウム=メトキシド、ナトリウム=エトキシド、カリウム=t−ブトキシド、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基類、青酸ナトリウム、青酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸錫、酢酸アルミニウム、アセト酢酸アルミニウム、アルミナ等の塩類、三塩化アルミニウム、アルミニウム=エトキシド、アルミニウム=イソプロポキシド、酸化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、四塩化錫、四臭化錫、二塩化ジブチル錫、ジブチル錫=ジメトキシド、ジブチル錫=オキシド、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)=エトキシド、チタン(IV)=イソプロポキシド、酸化チタン(IV)等のルイス酸(Lewis  acid)類を挙げることができ、これらは単独または混合して用いられる。触媒の使用量は、原料の化合物(3)1モルに対して、0.0001モルから100モル、好ましくは0.001モルから1モル、より好ましくは0.01モルから0.05モルの触媒量である。
 
【0076】
  エステル交換反応は、無溶媒(反応試薬であるカルボン酸アルキル自身を溶媒として用いてもよい)で行うことができ、余計な濃縮や溶媒回収等の操作を必要としないので好ましいが、溶媒を補助的に用いることも可能である。この場合、溶媒としては、例えば、へキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、ジエチル=エーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール=ジエチル=エーテル、ジエチレングリコール=ジメチル=エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類の単独または混合使用が好ましい。反応温度は用いるカルボン酸アルキルの種類や反応条件により適切な反応温度を選択できるが、通常、加熱下に行われ、エステル交換反応で生じる低沸点の低級アルコール、即ち、メタノール、エタノール、1−プロパノール等の沸点付近で反応を行い、生じる低級アルコールを留去しながら行うのがよい結果を与える。減圧下に沸点より低い温度でアルコールの留去を行ってもよい。
 
【0077】
  化合物(3)をアルキル化剤に変換した後にカルボン酸と反応させる方法では、例えば、(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール(3)を対応するハライド(クロリド、ブロミド、ヨージド)やスルホネート(例えば、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネート等)に変換し、これらとカルボン酸を、通常溶媒中、塩基性条件下に反応させる。また、(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール(3)をトリフェニルホスフィンとジエチル=アゾジカルボキシレートと混合した後に、これらをカルボン酸と通常溶媒中、反応させる例もある。用いられる溶媒、塩基、反応時間、反応温度としては、化合物(3)とアシル化剤との反応で述べたものと同様のもの、条件を挙げることができる。カルボン酸と塩基の組み合わせの代わりに、カルボン酸ナトリウム、カルボン酸リチウム、カルボン酸カリウム、カルボン酸アンモニウム等のカルボン酸塩を用いてもよい。
  また、エステル化反応の原料として下記式に示す、(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール(3')を用いれば、OMBの性フェロモンである(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メチル=アセテートと同一の相対立体配置を持つ(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メチル=カルボキシレート化合物(4')が得られる。
 
【0079】
  上記のようにして合成した(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メチル=カルボキシレート化合物(4)の単離や精製は、減圧蒸留や各種クロマトグラフィー等の通常の有機合成における精製方法から適宜選択して用いることができるが、工業的経済性の観点から減圧蒸留が好ましい。
 
【0080】
  以上のようにして、応用や利用等に必要な十分量の原体を供給するために、短工程かつ効率的な2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物(2)、(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール(3)及び(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メチル=カルボキシレート化合物(4)の製造方法が提供される。
 
【実施例】
【0081】
  以下、実施例を示して、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
  なお、原料、生成物、中間体の純度として、ガスクロマトグラフィー(GC)分析によって得られた値を用い%GCと表記する。GC条件:GC:Simazdu GC−14A、Column:5%Ph−Me silicone、0.25mmφx25m、Carriergas:He、Detector:FID。
  反応に用いられる原料及び反応で得られる生成物は100%純度であるとは限らないので、収率は%GCに基づく下記換算収率の値で表す。化合物によっては、ガスクロマトグラフィーの感度が異なるため、特に原料や生成物が粗生成物の場合には、換算収率が100%を超えることもあり得る。
  化合物のスペクトル測定のためのサンプルは、必要に応じて粗生成物を精製した。
【0082】
【数1】
  以下、換算収率を、単に収率と言うことがある。
【0083】
参考例1
  3,5,5−トリメチル−4−メチリデン−2−シクロヘキセン−1−オン(5)の合成例
【0084】
【化16】
【0085】
  窒素雰囲気下、1,4−ジオキサスピロ[4.5]−8−メチリデン−7,9,9−トリメチル−6−デセン75.4g(91.8%GC)とジエチル=エーテル335gとの混合物に、室温でかき混ぜながら、20%塩酸67gを加えた。室温で2時間かき混ぜた後、水335gの混合物を加え、有機層と水層を分離した。分離した有機層から通常の洗浄、乾燥、濃縮による後処理操作により、目的の3,5,5−トリメチル−4−メチリデン−2−シクロヘキセン−1−オン58.7g(91.5%GC,収率100%)を得た。
【0086】
3,5,5−トリメチル−4−メチリデン−2−シクロヘキセン−1−オン
  淡黄色油状物(Yellowish  oil)
  IR(D−ATR):ν=2966,2875,1712,1668,1587,1443,1407,1381,1366,1284,1251,1112,913cm
-1。
  
1H−NMR(500MHz,CDCl
3):δ=1.18(6H,s),2.06(3H,d,J=1.2Hz),2.33(2H,s),5.36(1H,d,J=2.0),5.43(1H,s),5.90(1H,s)ppm。
  
13C−NMR(125MHz,CDCl
3):δ=20.86,28.54,38.23,51.82,114.25,126.88,151.57,153.38,199.26ppm。
  GC−MS(EI,70eV):27,39,51,66,79,91,107,122,135,150(M
+)。
【0087】
実施例1
  式(6)で表される、3,3,4,5−テトラメチルシクロヘキサン−1−オンの合成例として、3,3,4,5−テトラメチルシクロヘキサン−1−オン(6’)の合成
【0088】
【化17】
【0089】
  窒素雰囲気下、3,5,5−トリメチル−4−メチリデン−2−シクロヘキセン−1−オン21.4g(84.3%GC)とエタノール200gとの混合物に、室温でかき混ぜながら、パラジウム=カーボン1.7gを加えた。水素雰囲気下、室温で2時間かき混ぜた後、通常のろ過,濃縮による後処理操作により、目的の3,3,4,5−テトラメチルシクロヘキサン−1−オン20.4g(75.0%GC,収率83%,)を得た。なお、GC−MSで分析するとsyn−体/anti−体の二つの異性体は94:6の比であった。
【0090】
3,3,4,5−テトラメチルシクロヘキサン−1−オン
  淡黄色油状物(Yellowish  oil)
  IR(D−ATR):ν=2962,2873,1716,1456,1419,1383,1370,1347,1309,1277,1252,1230,1183,1169,1138,1047,1010,893,845,617cm
-1。
  
1H−NMR(500MHz,CDCl
3):δ=0.95(9H,m),0.98(3H,s),1.44(1H,dq,J=7.3,3.9Hz),1.89(1H,dt,J=14.2,1.5Hz),2.05(1H,d,J=13.8Hz),2.09(1H,dd,J=14.2,2.0Hz),2.28(1H,d,J=13.8Hz),2.32(1H,m)ppm。
  
13C−NMR(125MHz,CDCl
3):δ=7.70,19.67,28.34,28.81,31.71,38.01,42.70,44.06,49.45,212.05ppm。
  GC−MS(EI,70eV):27,41,56,69,83,98,111,125,139,154(M
+)。
【0091】
実施例2
  一般式(1a)または(1b)で表される、α−ハロテトラメチルシクロヘキサノンの合成例として、α−ブロモテトラメチルシクロヘキサノン[一般式(1a’)または(1b’)においてX=Brの場合]の合成
【0092】
【化18】
【0093】
  窒素雰囲気下、3,3,4,5−テトラメチルシクロヘキサン−1−オン10.2g(91.0%GC)とジエチル=エーテル60gとの混合物に、0℃でかき混ぜながら、臭素10.1gを加えた。0℃で1時間かき混ぜた後、炭酸水素ナトリウム水溶液とチオ硫酸ナトリウム水溶液の混合物110gを加え,有機層と水層を分離した。分離した有機層から通常の洗浄、乾燥、濃縮による後処理操作により、目的のα−ブロモテトラメチルシクロヘキサノン14.6g(89.7%GC,収率93%)をジアステレオマー混合物として得た。
【0094】
α−ブロモテトラメチルシクロヘキサノン
  淡黄色油状物(Yellowish  oil)
  IR(D−ATR):ν=2960,2875,1728,1456,1424,1385,1371,1347,1274,1177,1142,1125,1069,1063,1047,989,343,887,858,808,775,132,629,570cm
-1。
  
1H−NMR(500MHz,CDCl
3):δ=0.94〜1.25(12H,m),1.76(1H,m),2.20〜2.53(3H,m),4.28(0.7H,d,J=11.5Hz),4.72(0.3H,s)ppm。
  GC−MS(EI,70eV):41,55,69,83,97,232(M
+)。
【0095】
実施例3
  一般式(2)で表される、2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物の合成例として、メチル=2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボキシレート[一般式(2’)において、R
1=CH
3=Meの場合]の合成例1
【0096】
【化19】
【0097】
  窒素雰囲気下、α−ブロモテトラメチルシクロヘキサノン2.60g(80.4%GC)とメタノール10gとの混合物に、室温でかき混ぜながら、ナトリウム=メトキシドの28%メタノール溶液2.60gを加えた。室温で2時間かき混ぜた後、加熱還流させ2時間撹拌した。室温まで降温した後に、希塩酸24gを加え,有機層と水層を分離した。分離した有機層から通常の洗浄、乾燥、濃縮による後処理操作により、目的物のメチル=2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボキシレート1.81g(33.2%GC,収率36%)を得た。
【0098】
メチル=2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボキシレート
  淡黄色油状物(Yellowish  oil)
  
1H−NMR(500MHz,CDCl
3):δ=0.76(3H,d,J=7.6Hz),0.84(3H,s),0.97(3H,d,J=6.9Hz),1.00(3H,s)1.62−1.77(3H,m),2.41−2.50(2H,m),3.64(3H,s)ppm。
  
13C−NMR(125MHz,CDCl
3):δ=10.17,16.99,23.73,29.43,40.22,41.82,43.94,46.17,50.02,51.52,177.33ppm。
  GC−MS(EI,70eV):29,41,55,69,87,98,109,128,137,153,169,184(M
+)。
【0099】
実施例4
  一般式(2)で表される、2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物の合成例として、メチル=2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボキシレート[一般式(2’)において、R
1=CH
3=Meの場合]の合成例2
【0100】
【化20】
【0101】
  実施例3のメタノールの代わりにテトラヒドロフランを用いて、実施例3と同様な反応により、目的のメチル=2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボキシレート(収率30%)を得た。
【0102】
実施例5
  一般式(2)で表される、2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物の合成例として、メチル=2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボキシレート[一般式(2’)において、R
1=CH
3=Meの場合]の合成例3
【0103】
【化21】
【0104】
  実施例3のメタノールの代わりにトルエンを用いて、実施例3と同様な反応により、目的のメチル=2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボキシレート(収率28%)を得た。
【0105】
実施例6
  一般式(2)で表される、2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物の合成例として、2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボン酸[一般式(2’)において、R
1=Hの場合]の合成例1
【0106】
【化22】
【0107】
  窒素雰囲気下、α−ブロモテトラメチルシクロヘキサノン2.45g(85.0%GC)とメタノール5gと水5gとの混合物に、室温でかき混ぜながら、水酸化ナトリウムの25%水溶液2gを加えた。室温で2時間かき混ぜた後、加熱還流させ10時間撹拌した。室温まで降温した後に、希塩酸20gを加え,有機層と水層を分離した。分離した有機層から通常の洗浄、乾燥、濃縮による後処理操作により、目的物のメチル=2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボン酸1.07g(48.3%GC,収率34%)を得た。
【0108】
2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボン酸
  淡黄色油状物(Yellowish  oil)
  
1H−NMR(500MHz,CDCl
3):δ=0.76(3H,d,J=7.6Hz),0.86(3H,s),1.02(3H,s),1.02(3H,d,J=5.4Hz),1.66−1.76(3H,m),2.45−2.55(2H,m),10.90(1H,brs)ppm。
  
13C−NMR(125MHz,CDCl
3):δ=10.18,16.98,23.74,29.43,40.33,41.92,43.67,46.32,49.99,183.50ppm。
  GC−MS(EI,70eV):29,41,55,69,82,97,109,123,141,154(M
+)。
【0109】
実施例7
  一般式(2)で表される、2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物の合成例として、2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボン酸[一般式(2’)において、R
1=Hの場合]の合成例2
【0110】
【化23】
【0111】
  実施例6のメタノールと水の代わりにt−ブチルアルコールを用い、水酸化ナトリウムの代わりにカリウム=t−ブトキシドを用いて、実施例6と同様な反応により、目的の2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボン酸(収率35%)を得た。
【0112】
実施例8
  一般式(2)で表される、2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタン化合物の合成例として、2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボン酸[一般式(2’)において、R
1=Hの場合]の合成例3
【0113】
【化24】
【0114】
  実施例6のメタノールの代わりにTHFを用いて、実施例6と同様な反応により、目的の2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボン酸(収率22%)を得た。
【0115】
実施例9
  実施例9
  式(3)で表される、(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノールの合成例として、(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール(3')の合成
【0116】
【化25】
【0117】
  窒素雰囲気下、水素化アルミニウムリチウム0.89gとテトラヒドロフラン5gとの混合物に、0℃でかき混ぜながら、メチル=2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボキシレート3.06g(35.3%GC)とテトラヒドロフラン20gを滴下した。室温で終夜かき混ぜた後、水酸化ナトリウム水溶液45g加え,ろ過を行った。得られたろ液から通常の洗浄、乾燥、濃縮による後処理操作により、目的物の2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール2.65g(31.6%GC,収率92%)を得た。
【0118】
(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール
  淡黄色油状物(Yellowish  oil)
  1H−NMR(500MHz,CDCl3):δ=0.78(3H,d,J=7.3Hz),0.85(3H,s),0.95(3H,d,J=6.9Hz),0.96(3H,s),1.15(1H,dd,J=12.2,9.2Hz),1.60−1.70(2H,m),1.77−1.92(2H,m),3.52(1H,m),3.65(1H,m)ppm。
  13C−NMR(125MHz,CDCl3):δ=10.21,17.40,23.82,29.73,38.57,41.31,44.45,46.15,48.17,67.47ppm。
  GC−MS(EI,70eV):29,41,55,69,82,97,109,123,141,154(M+)。
【0119】
実施例10
  式(3)で表される、(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノールの合成例として、(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール(3')の合成
【0120】
【化26】
【0121】
  窒素雰囲気下、水素化アルミニウムリチウム0.57gとテトラヒドロフラン5gとの混合物に、0℃でかき混ぜながら、2,3,4,4−テトラメチルシクロペンタンカルボン酸1.78g(43.3%GC)とテトラヒドロフラン20gを滴下した。室温で終夜かき混ぜた後、水酸化ナトリウム水溶液45g加え、ろ過を行った。得られたろ液から通常の洗浄、乾燥、濃縮による後処理操作により、目的物の(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール1.78g(45.3%GC,収率114%)を得た。
【0122】
実施例11
  式(4)で表される、(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メチル=カルボキシレート化合物の合成例として、(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メチル=アセテート[一般式(4')において、R2=CH3=Meの場合]の合成
【0123】
【化27】
【0124】
  窒素雰囲気下、(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メタノール1.78g(45.3%GC)とピリジン1.04gとアセトニトリル20gとの混合物に、0℃でかき混ぜながら、塩化アセチル0.95gを滴下した。室温で2時間かき混ぜた後、水40gを加え,有機層と水層を分離した。分離した有機層から通常の洗浄、乾燥、濃縮による後処理操作により、目的物の(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メチル=アセテート2.11g(45.5%GC,収率94%)を得た。
【0125】
(2,3,4,4−テトラメチルシクロペンチル)メチル=アセテート
  淡黄色油状物(Yellowish  oil)
  
1H−NMR(500MHz,CDCl
3):δ=0.77(3H,d,J=7.3Hz),0.84(3H,s),0.93(3H,d,J=6.9Hz),0.95(3H,s),1.13(1H,dd,J=12.6,9.2Hz),1.60−1.67(2H,m),1.86−1.95(2H,m),2.03(3H,s),3.97(1H,m),4.04(1H,m)ppm。
  
13C−NMR(125MHz,CDCl
3):δ=10.17,17.09,20.97,23.78,39.05,41.22,44.42,44.46,46.14,68.70,171.30ppm。
  GC−MS(EI,70eV):29,43,55,69,82,97,109,123,138,155,165,183(M
+)。