(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の光学ガラスについて説明する。光学ガラスの形状は特に限定されない。光学ガラスは、例えば板状とすることができる。
[光学ガラスの成分]
本発明の光学ガラスは、必須成分と任意成分の組み合わせからなる。必須成分は本光学ガラスに必須に含有されるものであり性能の主要な機能を与える。任意成分は必要に応じて使用される。本明細書において特段の記載がない場合、%は酸化物基準でのモル%を意味する。数値範囲は四捨五入した範囲を含む。また、数値範囲を「A〜B」と示す場合、「A以上B以下」を意味する。
【0009】
[必須成分]
<SiO
2>
SiO
2はガラスを形成する成分であり、ガラスに強度とクラック耐性を付与し、ガラスの安定性および化学的耐久性を向上させる成分である。本実施形態の光学ガラスにおいて、SiO
2の含有量は、9.0%〜11.0%であり、好ましくは9.0%〜10.0%である。この範囲にあることで高強度と高屈折率を両立できる。
【0010】
<B
2O
3>
B
2O
3はTgを低くし、ガラスの強度やクラック耐性などの機械的特性を向上させる成分である。本実施形態の光学ガラスにおいて、B
2O
3の含有量は、22.0%〜24.0%であり、好ましくは22.5%〜23.5%である。この範囲にあることで高強度と高屈折率を両立できる。
【0011】
<La
2O
3>
La
2O
3は本光学ガラスにおいて屈折率の向上と失透温度の低下に寄与する成分である。本実施形態の光学ガラスにおいて、La
2O
3の含有量は、18.0%〜20.0%であり、18.5%〜19.5%が好ましい。この範囲にあることで高屈折率と低失透温度を両立できる。
【0012】
<TiO
2>
TiO
2は一般にガラスの屈折率を高め、ガラスの分散を大きくする成分であるが、本光学ガラスにおいては、特に失透温度と光透過率に寄与する成分である。本実施形態の光学ガラスにおいて、TiO
2の含有量は、30.0%〜31.0%であり、好ましくは30.3%〜30.7%である。この範囲にあることで、高透過率と低失透温度を両立できる。
【0013】
[任意成分]
<Y
2O
3>
本実施形態の光学ガラスは、Y
2O
3を含有することが好ましい。Y
2O
3は本光学ガラスにおいて屈折率の向上と失透温度の低下に寄与する成分である。本実施形態の光学ガラスにおいて、Y
2O
3を含有する場合の好ましい含有量は、3.0%〜5.0%であり、特に好ましくは3.5%〜4.5%である。この範囲にあることで、高屈折率と低失透温度を両立できる。
【0014】
<WO
3>
本実施形態の光学ガラスは、WO
3を含有することが好ましい。WO
3はガラスの失透を抑制させる成分およびガラスの着色に寄与する成分であるため、WO
3の量が多すぎると光透過率が低下する。そのため、本実施形態の光学ガラスにおいて、WO
3を含有する場合の好ましい含有量は、0.1%〜0.4%であり、特に好ましくは0.2%〜0.3%である。この範囲にあることで高透過率と低失透温度を両立できる。
【0015】
<Nb
2O
5>
本実施形態の光学ガラスは、Nb
2O
5を含有することが好ましい。Nb
2O
5は本光学ガラスにおいて屈折率の向上と失透温度の低下に寄与する成分である。本実施形態の光学ガラスにおいて、Nb
2O
5を含有する場合の好ましい含有量は、2.5%〜4.0%であり、特に好ましくは3.0%〜3.5%である。この範囲にあることで高屈折率と低失透温度を両立できる。
【0016】
<ZrO
2>
本実施形態の光学ガラスは、ZrO
2を含有することが好ましい。ZrO
2はガラスの屈折率を高め、ガラスの化学的耐久性を高める成分である。本実施形態の光学ガラスにおいて、ZrO
2を含有する場合の好ましい含有量は、5.0%〜8.0%であり、特に好ましくは6.0%〜7.0%である。この範囲にあることで高耐久性と高屈折率を両立できる。
【0017】
<Gd
2O
3>
本実施形態の光学ガラスは、Gd
2O
3を含有することが好ましい。Gd
2O
3は本光学ガラスにおいて屈折率の向上と失透温度の低下に寄与する成分である。本実施形態の光学ガラスにおいて、Gd
2O
3を含有する場合の好ましい割合は、3.0%〜5.0%であり、特に好ましくは3.5%〜4.5%である。この範囲にあることで高屈折率と低失透温度を両立できる。
【0018】
<その他の任意成分>
本実施形態の光学ガラスは、その他、通常の光学ガラスの製造に使用される微量成分や添加剤を本願発明の効果を損なわない範囲で使用してもよい。
【0019】
[光学ガラス組成]
本実施形態の光学ガラスは、酸化物基準のモル%で以下の化合物を含有する。
SiO
2:9.0%〜11.0%
B
2O
3:22.0%〜24.0%
La
2O
3:18.0%〜20.0%
TiO
2:30.0%〜31.0%
本実施形態の光学ガラスは、好ましくは、酸化物基準のモル%で以下の化合物を含有する。
SiO
2:9.0%〜11.0%
B
2O
3:22.0%〜24.0%
Y
2O
3:3.0%〜5.0%
TiO
2:30.0%〜31.0%
WO
3:0.1%〜0.4%
Nb
2O
5:2.5%〜4.0%
La
2O
3:18.0%〜20.0%
ZrO
2:5.0%〜8.0%
Gd
2O
3:3.0%〜5.0%
本実施形態の光学ガラスは、特に好ましくは、酸化物基準のモル%で以下の化合物を含有する。
SiO
2:9.0%〜10.0%
B
2O
3:22.5%〜23.5%
Y
2O
3:3.5%〜4.5%
TiO
2:30.3%〜30.7%
WO
3:0.2%〜0.3%
Nb
2O
5:3.0%〜3.5%
La
2O
3:18.5%〜19.5%
ZrO
2:6.0%〜7.0%
Gd
2O
3:3.5%〜4.5%
また、本実施形態の光学ガラスは、酸化物基準のモル%で組成が99.5%≦(SiO
2+B
2O
3+Y
2O
3+TiO
2+WO
3+Nb
2O
5+La
2O
3+ZrO
2+Gd
2O
3)≦100.0%の範囲にあることも好ましく、特に好ましくは(SiO
2+B
2O
3+Y
2O
3+TiO
2+WO
3+Nb
2O
5+La
2O
3+ZrO
2+Gd
2O
3)=100.0%(ただし、製造上回避不能な不純物を含むことは許容される。)
これらの範囲にあることで屈折率の高さ、光透過性及び失透温度の低さを全て満たすことができる。
また、本実施形態の光学ガラスは、製造上回避不能な不純物量以上にZnOを含有しないことが好ましい。ZnOを含有すると本光学ガラスは失透しやすくなる。
また、本実施形態の光学ガラスは、製造上回避不能な不純物量以上にアルカリ金属を含有しないことが好ましい。アルカリ金属を含有すると本光学ガラスは耐候性や耐薬品性が悪化する。
【0020】
[光学ガラス]
本実施形態の光学ガラスの屈折率ndは、1.90〜2.10であることが好ましく、特に1.95〜2.05であることが好ましい。特に本発明の光学ガラスを導光板に使用する場合、この範囲にあることで導光板をより薄く設計することが可能になる。
本実施形態の光学ガラスは、450nmの波長における内部透過率が88.0%以上であることが好ましく、特に90.0%以上であることが好ましい。この範囲にあることで、導光板中の青色光の減衰を抑え、HMDに映し出される映像が黄色く見えることを抑えることができる。
本実施形態の光学ガラスは、失透温度が1170℃未満であることが好ましい。特に1150℃未満であることが好ましい。この範囲にあることで、ガラス製造時における結晶の発生による失透を起こりにくくし、ガラス製造が容易になる。
【0021】
[光学ガラスの製造方法]
本実施形態の光学ガラスの製造方法は特に限定されず、既存の板ガラス製造方法を使用することができる。例えばフロート法、フュージョン法及びロールアウト法等、公知の手法を用いることができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明の効果を奏する限りにおいて実施形態を適宜変更することができる。
<測定方法>
[失透温度]
以下の条件で実施例及び比較例の光学ガラスの失透温度Tを測定した。
表1に示す組成の原料を1250℃、2時間の条件で白金るつぼ中で溶解させて均一な溶解ガラスとした。溶解ガラスを200℃に加熱したモールド(縦×横×高さ=60mm×50mm×30mm)に流し込んでガラスブロックとした。ガラスブロックを常温の水中に入れることによって粉砕し、2mm角程度のカレットとした。このカレットから5gを計り、評価用サンプルとした。
白金皿に評価用サンプルを載せ、1100℃〜1200℃の所定の温度に設定した電気炉中で16時間加熱してサンプルを溶解させる。16時間後、サンプルを電気炉から取り出して、自然放冷により冷却しながら、結晶析出の有無を光学顕微鏡にて観察する。結晶が確認された条件を記録し、各条件における電気炉の設定温度の中で最も高い温度が失透温度Tである。実施例及び比較例の光学ガラスは、評価サンプルの失透温度Tを下記基準で判断し、二重丸または丸を合格とする。
二重丸:T<1150℃
丸:1150≦T<1170℃
バツ:1170℃≦T
【0023】
[光透過率]
以下の条件で光透過率Xを測定した。
実施例等で得られた縦×横=30mm×30mm、板厚が10mmと1mmの2種のガラス板について分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製U−4100)を使用し、板厚10mmにおける450nmの光透過率Xを求めた(本実施形態において光透過率とは表裏面における反射損失を除いた内部透過率のことを意味する。)。実施例及び比較例の光学ガラスは、評価サンプルの透過率Xを下記基準で判断し、二重丸または丸を合格とする。
二重丸:90.0%≦X
丸:88.0%≦X<90.0%
バツ:88.0<X
【0024】
[屈折率]
実施例等で得られた縦×横×板厚=30mm×30mm×10mmのガラス板について屈折率計(Kalnew社製KPR−2000)により屈折率(nd)を測定した。
【0025】
[実施例1]
表1に示す組成の原料を1250℃、2時間の条件で白金るつぼ中で溶解させて均一な溶解ガラスとした。溶解ガラスを200℃に加熱したモールド(縦×横×高さ=60mm×50mm×30mm)に流し込んでガラスブロックとした。
次にガラスブロックを切断機(マルトー社製小型切断機)を用いて縦×横=30mm×30mmに切断し研削機(秀和工業社製SGM−6301)及び片面研磨機(日本エンギス社製EJ−380IN)を用いて板厚の調整と表面研磨を行い、縦×横=30mm×30mm、板厚10mm、及び1mmのガラス板を製造した。これらのガラス板を用いて各種評価を行った。結果を表1に示す。
研削条件:#100ダイヤモンドホイールを用いて2.0μm/秒で研削後、#1000ダイヤモンドホイールを用いて1.0μm/秒で研削後、#2000ダイヤモンドホイールを用いて0.5μm/秒で研削した。
研磨条件:研磨剤(酸化セリウム)、回転数(80rpm、10分間)
【0026】
[実施例2〜3、比較例1〜2]
表1に記載の条件に変更した以外は実施例1と同様に操作を行った。
【0027】
【表1】