特許第6699992号(P6699992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6699992
(24)【登録日】2020年5月7日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】流体継手用ガスケットおよび流体継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 23/02 20060101AFI20200518BHJP
   F16L 23/18 20060101ALI20200518BHJP
   F16J 15/06 20060101ALI20200518BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20200518BHJP
   F16L 19/03 20060101ALI20200518BHJP
【FI】
   F16L23/02 D
   F16L23/18
   F16J15/06 N
   F16J15/10 L
   F16L19/03
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-82996(P2015-82996)
(22)【出願日】2015年4月15日
(65)【公開番号】特開2016-205408(P2016-205408A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】石橋 圭介
(72)【発明者】
【氏名】薬師神 忠幸
(72)【発明者】
【氏名】谷川 毅
(72)【発明者】
【氏名】山路 道雄
(72)【発明者】
【氏名】岡部 庸之
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第98/037352(WO,A1)
【文献】 特開平07−158783(JP,A)
【文献】 実開平06−046054(JP,U)
【文献】 国際公開第2013/153672(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/042573(WO,A1)
【文献】 特表平02−501587(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00571641(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02365260(EP,A2)
【文献】 実開昭63−060788(JP,U)
【文献】 特開2013−068270(JP,A)
【文献】 特開2006−313006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 23/02
F16J 15/06
F16J 15/10
F16L 19/03
F16L 23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の継手部材の対向面に設けられた環状の凹所に嵌め入れられることで面シールを行うガスケットであって、第1の面シールを行う厚肉部と、第2の面シールを行う薄肉部とを備え、前記薄肉部による第2面のシールのつぶし率は、前記厚肉部による第1の面シールのつぶし率に比べて小さな値に設定されていることを特徴とする流体継手用ガスケット。
【請求項2】
第1及び第2の継手部材の対向面に設けられた環状の凹所に嵌め入れられることで面シールを行うガスケットであって、第1の面シールを行う厚肉部と、第2の面シールを行う薄肉部とを備え、前記厚肉部による第1の面シールのつぶし代と前記薄肉部による第2のシール面のつぶし代とは、異なる値に設定され、
外周面に、落下防止用突起が2つ以上設けられており、前記落下防止用突起の内の少なくとも1つは、前記第1の継手部材の環状の凹所に、前記第1及び第2の継手部材の締結力により圧接され、前記落下防止用突起の内の少なくとも1つは、前記第2の継手部材の環状の凹所に前記第1及び第2の継手部材の締結力により圧接されることを特徴とする流体継手用ガスケット。
【請求項3】
厚肉部および薄肉部のうちのいずれか一方が金属で形成され、同他方が合成樹脂で形成されている請求項1または2の流体継手用ガスケット。
【請求項4】
第1の流体通路を有する第1の部材と、第2の流体通路を有し、第1の部材に流体密に接続される第2の部材と、両部材の突き合わせ部分に介在されるガスケットと、両部材を連結するねじ手段とを備えており、各部材の突き合わせ端面に、部材同士が突き合わされた際にガスケットが収納される環状のガスケット収納用凹所が設けられている流体継手において、
ガスケット収納用凹所は、ガスケットの厚肉部を収容するための幅広部と、ガスケットの薄肉部を収容するための幅狭部とを備え、第1および第2の部材の突き合わせ端部は、ガスケット収納用凹所の径方向外側において互いに突き合わされており、ガスケットが請求項1から3までのいずれかに記載の流体継手用ガスケットとされていることを特徴とする流体継手。
【請求項5】
第1の部材および第2の部材は、いずれも管状継手部材である請求項4の流体継手。
【請求項6】
第1の部材は、ボルト挿通孔を有するフランジが設けられた管状継手部材であり、第2の部材は、めねじ部を有する接続部が設けられた部材である請求項4の流体継手。
【請求項7】
ガスケットの厚肉部、薄肉部およびそれらの境界に形成される各コーナー部分には、丸みが付けられており、これに対応して、ガスケット収納用凹所の幅広部、幅狭部およびそれらの境界に形成される各コーナー部分にも、丸みが付けられている請求項4の流体継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体継手用ガスケットおよび流体継手に関し、特に、管継手などの流体継手において面シールを行うガスケットおよびこのようなガスケットを用いた種々の流体継手に関する。
【背景技術】
【0002】
流体継手として、特許文献1には、第1および第2の管状継手部材と、両継手部材の突き合わせ部分に介在されるガスケットと、両継手部材を連結するねじ手段とを備えており、各継手部材の突き合わせ端面に、継手部材同士が突き合わされた際にガスケットが収納されるガスケット収納部を形成するための環状の凹所がそれぞれ設けられており、管継手の適正締め付け状態では、第1継手部材の凹所内面のほぼ全面がガスケットに密着し、同凹所から露出しているガスケットの面が第2継手部材の凹所内面のほぼ全面に密着するとともに、第1継手部材の突き合わせ端面の凹所よりも径方向内側の部分と第2継手部材の突き合わせ端面の凹所よりも径方向内側の部分とがほぼ全面で密着し、第1継手部材の突き合わせ端面の凹所よりも径方向外側の部分と第2継手部材の突き合わせ端面の凹所よりも径方向外側の部分もほぼ全面で密着する管継手が開示されている。
【0003】
特許文献1のガスケットは、断面が方形の環状のもので、第1および第2の管状継手部材によって形成されるガスケット収納用凹所も断面が方形のものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3538737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流体継手用ガスケットおよび流体継手において、特許文献1に示されているように、すべての材料を合成樹脂とすることがあり、この場合には、金属製に比べて、長期にわたってのシール性の維持が特に重要な課題となる。また、金属製の流体継手用ガスケットおよび流体継手においても、より一層のシール性の向上が求められている。
【0006】
この発明の目的は、シール性を向上した流体継手用ガスケットおよび流体継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による流体継手用ガスケットは、流体継手に設けられた環状の凹所に嵌め入れられることで面シールを行うガスケットであって、第1の面シールを行う厚肉部と、第2の面シールを行う薄肉部とを備え、前記厚肉部による第1の面シールのつぶし代と前記薄肉部による第2のシール面のつぶし代とは、異なる値に設定されていることを特徴とするものである。
【0008】
例えば、厚肉部は、径方向の外側部分に、薄肉部は、径方向の内側部分に設けられる。厚肉部は、径方向の内側部分に、薄肉部は、径方向の外側部分に設けられているようにしてもよい。
【0009】
面シールを行う従来のガスケットは、通常、断面方形とされており、断面方形ではないものであっても、厚肉部および薄肉部の両方が面シールを行うようにはなされていなかった。
【0010】
この発明によると、厚肉部および薄肉部の両方が面シールを行うことで、シール性を向上させることができる。
【0011】
また、ガスケットは、加圧を行う場合は外側に押し付けられ、真空の場合は内側に押し付けられることから、従来のガスケット(Oリング)では、加圧の場合は、ガスケットの外径を基準に、真空の場合は、ガスケットの内径を基準に設計が行われて、基本的にいずれか片方での使用のみとされていた。これに対し、この発明によると、径方向の外側部分を加圧用に、径方向の内側部分を真空用に設定することで、加圧、真空のどちらでも使用することができる。
【0012】
さらにまた、この発明によると、第1の面シールのつぶし代と第2の面シールのつぶし代とを違う値に設定することができるので、シール性能の目標値を用途に応じて最適に設定することができる。
【0013】
ガスケットは、ステンレス鋼(例えばSUS316L)などの金属製であってもよく、パーフロロエラストマー(例えば登録商標カルレッツ)などのフッ素系の合成樹脂製であってもよい。
【0014】
ガスケットの外周面には、落下防止用突起が少なくとも1つ設けられていることが好ましい。このようにすることで、流体継手にガスケットを装着した際における環状の凹所(ガスケット収納用凹所)からのガスケットの脱落を防止することができる。
【0015】
厚肉部および薄肉部のうちのいずれか一方が金属で形成され、同他方が合成樹脂で形成されていることがある。このようにすると、金属製シール構造と合成樹脂製シール構造の両方が設けられることになり、極めて高いシール性が得られる。この場合における第1および第2の部材は、金属製であることが好ましい。
【0016】
この発明による流体継手は、第1の流体通路を有する第1の部材と、第2の流体通路を有し、第1の部材に流体密に接続される第2の部材と、両部材の突き合わせ部分に介在されるガスケットと、両部材を連結するねじ手段とを備えており、各部材の突き合わせ端面に、部材同士が突き合わされた際にガスケットが収納される環状のガスケット収納用凹所が設けられている流体継手において、ガスケット収納用凹所は、ガスケットの厚肉部を収容するための幅広部と、ガスケットの薄肉部を収容するための幅狭部とを備え、ガスケットが上記のいずれかに記載の流体継手用ガスケットとされていることを特徴とするものである。
【0017】
ガスケットの厚肉部がガスケット収納用凹所の幅広部に第1のつぶし代を持って嵌め入れられ、ガスケットの薄肉部がガスケット収納用凹所の幅狭部に第2のつぶし代を持って嵌め入れられる。
【0018】
第1のつぶし代と第2のつぶし代とは同じ値であってもよいが、違う値であることがより好ましい。つぶし代が異なるものとする場合、高温時における径方向内側部分の亀裂の発生を抑えるために、内側のつぶし代(つぶし率)を減らすことがより好ましい。
【0019】
第1および第2の部材は、ガスケットが金属製とされることに対応して、ステンレス鋼などの金属製であってもよく、ガスケットが合成樹脂製とされることに対応して、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などの合成樹脂製であってもよい。
【0020】
ステンレス鋼製の流体継手では、半導体製造過程で使用される例えば酸性フッ化アンモンなどのように金属を腐食させる性質が高いものに対して、十分な耐久性を確保できない場合があり、ステンレス鋼製に代えて、合成樹脂製とすることで、耐久性が向上する。合成樹脂の場合には、金属製のものに比べて、形状の経時変化(応力緩和、コールドフローなど)が大きく、突き合わせ部分での部材間に生じている面圧が徐々に低下し、これによって流体の漏れが起こるおそれがあるが、厚肉部および薄肉部の両方が面シールを行うことで、合成樹脂製であっても十分なシール性が確保される。
【0021】
上記の流体継手において、第1の部材および第2の部材は、いずれも管状継手部材であってもよく、また、第1の部材は、ボルト挿通孔を有するフランジ部が設けられた管状継手部材であり、第2の部材は、めねじ部を有する接続部が設けられた部材であってもよい。
【0022】
流体継手に流される流体は、気体であってもよく、液体であってもよい。第2の部材は、例えば、アルミニウム製のガスチャンバーであってもよく、また、バルブなどの流体制御機器であってもよく、集積化流体制御装置で使用される通路ブロックなどであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
この発明の流体継手用ガスケットおよび流体継手によると、厚肉部および薄肉部の両方が面シールを行うことで、シール性を向上させることができるとともに、加圧、真空のどちらでも使用可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、この発明による流体継手用ガスケットおよび流体継手の第1実施形態の全体構成を示す縦断面図である。
図2図2は、第1実施形態の流体継手用ガスケットおよび流体継手の要部の締付け前の形状を示す拡大縦断面図である。
図3図3は、第1実施形態の流体継手用ガスケットの拡大縦断面図である。
図4図4は、この発明による流体継手用ガスケットおよび流体継手の第2実施形態の全体構成を示す縦断面図である。
図5図5は、この発明による流体継手用ガスケットおよび流体継手の第3実施形態の全体構成を示す縦断面図である。
図6図6は、この発明による流体継手用ガスケットおよび流体継手の第4実施形態の全体構成を示す縦断面図である。
図7図7は、この発明による流体継手用ガスケットおよび流体継手の第5実施形態の全体構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0026】
図1から図3までは、この発明による流体継手の第1実施形態を示している。なお、図1は、流体継手を締め付けた後の状態を示し、図2および図3は、流体継手を締め付ける前における形状を示している。
【0027】
図1に示すように、流体継手(1)は、管継手であり、互いに連通する流体通路を有している第1および第2の管状継手部材(2)(3)と、両継手部材(2)(3)間に介在させられた円環状ガスケット(4)と、第1の継手部材(2)に嵌められた略円筒状のおねじ部材(5)と、第2の継手部材(3)に嵌められた略円筒状のめねじ部材(6)とを備えている。
【0028】
継手部材(2)(3)、ガスケット(4)、おねじ部材(5)およびめねじ部材(6)は、全て、合成樹脂製とされている。
【0029】
各継手部材(2)(3)は、内周が流体通路となる円筒状のスリーブ本体(11)(13)と、その突き合わせ端部に一体に設けられたフランジ(12)(14)とからなり、同一形状とされている。
【0030】
ガスケット(4)は、両継手部材(2)(3)の突き合わせ端面間で面シールを形成することでシール性を得るようになっている。両継手部材(2)(3)は、突き合わせ面において互いに対称となるように形成されており、ガスケット(4)も、中心面において対称となるように形成されている。ガスケット(4)の内径は、各継手部材(2)(3)の内径に等しくなされている。
【0031】
継手部材(2)(3)の突き合わせ端面には、ガスケット(4)を収めるための環状の凹所(7)が形成されている。継手部材(2)(3)の突き合わせ端部は、凹所(7)の径方向内側および径方向外側の両方において互いに突き合わされており、環状の凹所(7)は、径方向内側および径方向外側のいずれにも開口しない形状とされている。環状の凹所(7)は、径方向内側に開口した形状とされていてもよい。
【0032】
おねじ部材(5)は、円筒状の本体(15)と、本体(15)の右端面(突き合わせ端面)から右方(軸方向)に突出して両継手部材(2)(3)の突き合わせ部外周面を覆う円筒状カバー部(16)と、本体(15)の右端部(突き合わせ端部)の外周に設けられたおねじ部(17)と、本体(15)の左端部(反突き合わせ端部)の外周に設けられた六角係合部(18)とを有している。おねじ部材(5)は、第1継手部材(2)に左方から嵌められて、その本体(15)右面が第1継手部材(2)のフランジ(12)の左面に左方から当接させられている。
【0033】
めねじ部材(6)は、袋ナットと称されるもので、第2継手部材(3)に右方から嵌められている。めねじ部材(6)は、本体(19)と、本体(19)の右端部に設けられた内向きフランジ(20)とを有している。本体(19)の左端部の内周には、おねじ部材(5)のおねじ部(17)にねじ合わされているめねじ部(19a)が形成されている。内向きフランジ(20)は、第2継手部材(3)のスリーブ本体(13)の周囲にはめられて、第2継手部材(3)のフランジ(12)の右面に右方から当接させられている。
【0034】
おねじ部材(5)のカバー部(16)の内径は、第1および第2継手部材(2)(3)のフランジ(12)(14)の外径よりわずかに大きくされ、外径は、めねじ部材(6)の内径よりもわずかに小さくなされている。
【0035】
第2継手部材(3)のフランジ(14)とめねじ部材(6)の内向きフランジ(20)との間に共回り防止手段としてのスラストワッシャ(8)が介在させられている。
【0036】
スラストワッシャ(8)は、合成樹脂製とされてもよく、ステンレス鋼表面にNi(ニッケル)−P(リン)+PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)複合皮膜が形成されてかつ熱処理が施されたものなどとされてもよい。
【0037】
ガスケット(4)は、断面がT字形とされており、第1の面シールを行う径方向外側の断面略方形の厚肉部(21)と、第2の面シールを行う径方向内側の断面略方形の薄肉部(22)とを備えている。
【0038】
ガスケット(4)の形状に対応して、ガスケット収納用凹所(7)は、径方向外側の断面略方形の幅広部(23)と、径方向内側の断面略方形の幅狭部(24)とを備えている。
【0039】
ガスケット(4)の厚肉部(21)は、そのほぼ全面でガスケット収納用凹所(7)の幅広部(23)の内面に密着し、ガスケット(4)の薄肉部(22)は、そのほぼ全面でガスケット収納用凹所(7)の幅狭部(24)の内面に密着している。
【0040】
図2および図3に示すように、ガスケット(4)の厚肉部(21)、薄肉部(22)およびそれらの境界に形成される各コーナー部分には、丸みが付けられており、これに対応して、ガスケット収納用凹所(7)の幅広部(23)、幅狭部(24)およびそれらの境界に形成される各コーナー部分にも、丸みが付けられている。
【0041】
ガスケット(4)の薄肉部(22)の径方向内側面には、径方向外側に向かって凸となる曲面部(22a)が形成されている。この曲面部(22a)が設けられていることにより、高温時においても、薄肉部(22)の径方向内側面が径方向内側にはみ出す(径方向内側に向かって凸となる)ことが防止されている。
【0042】
ガスケット(4)の厚肉部(21)の径方向外側面には、径方向外側に向かって突出する2つのリップ(断面半円状の環状の突起)(25)が対称状に形成されている。このリップ(25)が設けられていることにより、流体継手(1)にガスケット(4)を装着した際におけるガスケット収納用凹所(7)からのガスケット(4)の脱落を防止することができる。リップ(25)の高さは、例えば、0.1〜0.2mmとされる。
【0043】
上記第1実施形態の流体継手(1)において、ガスケット(4)の径方向外側の厚肉部(21)は、流体の加圧を行う場合を考慮して設計され、ガスケット(4)の径方向内側の薄肉部(22)は、流体の真空を行う場合を考慮して設計される。また、厚肉部(21)による第1の面シールのつぶし代(またはつぶし率)と薄肉部(22)による第2の面シールのつぶし代(またはつぶし率)とは、それぞれ別個に好ましい値(通常は異なる値)に設定される。こうして、ガスケット(4)の厚肉部(21)および薄肉部(22)の両方がそれぞれ面シールを行うことで、優れたシール性を得ることができる。
【0044】
図4は、この発明による流体継手の第2実施形態を示している。なお、図4は、流体継手を締め付けた後の状態を示している。
【0045】
図4に示すように、流体継手(31)は、管継手であり、互いに連通する流体通路を有している第1および第2の管状継手部材(32)(33)と、両継手部材(32)(33)間に介在させられた円環状ガスケット(34)と、第1の継手部材(32)に嵌められた略円筒状のおねじ部材(35)と、第2の継手部材(33)に嵌められた略円筒状のめねじ部材(36)とを備えている。
【0046】
継手部材(32)(33)、ガスケット(34)、おねじ部材(35)およびめねじ部材(36)は、全て、金属製とされている。
【0047】
各継手部材(32)(33)は、内周が流体通路となる円筒状のスリーブ本体(41)(43)と、その突き合わせ端部に一体に設けられたフランジ(42)(44)とからなり、同一形状とされている。
【0048】
ガスケット(34)は、両継手部材(32)(33)の突き合わせ端面間で面シールを形成することでシール性を得るようになっている。両継手部材(32)(33)は、突き合わせ面において互いに対称となるように形成されており、ガスケット(34)も、中心面において対称となるように形成されている。ガスケット(34)の内径は、各継手部材(32)(33)の内径に等しくなされている。
【0049】
継手部材(32)(33)の突き合わせ端面には、ガスケット(34)を収めるための環状の凹所(37)が形成されている。継手部材(32)(33)の突き合わせ端部は、凹所(37)の径方向外側において互いに突き合わされており、環状の凹所(37)は、径方向内側に開口した形状とされている。
【0050】
第2継手部材(33)のフランジ(44)とめねじ部材(36)の内向きフランジとの間に共回り防止手段としてのスラストワッシャ(38)が介在させられている。
【0051】
おねじ部材(35)、めねじ部材(36)およびスラストワッシャ(38)の形状は、第1実施形態と同じとされている。これらについての詳細な説明は省略する。
【0052】
ガスケット(34)は、断面がT字形とされており、第1の面シールを行う径方向外側の断面略方形の厚肉部(51)と、第2の面シールを行う径方向内側の断面略方形の薄肉部(52)とを備えている。
【0053】
ガスケット(34)の形状に対応して、ガスケット収納用凹所(37)は、径方向外側の断面略方形の幅広部(53)と、径方向内側の断面略方形の幅狭部(54)とを備えている。
【0054】
ガスケット(34)の厚肉部(51)は、そのほぼ全面でガスケット収納用凹所(37)の幅広部(53)の内面に密着し、ガスケット(34)の薄肉部(52)は、そのほぼ全面でガスケット収納用凹所(37)の幅狭部(54)の内面に密着している。
【0055】
第1実施形態のものに対し、継手部材(32)(33)およびガスケット(34)が金属製とされていることに伴い、ガスケット(34)の厚肉部(51)、薄肉部(52)およびそれらの境界に形成される各コーナー部分には、大きな丸みはなく、これに対応して、ガスケット収納用凹所(37)の幅広部(53)、幅狭部(54)およびそれらの境界に形成される各コーナー部分にも、大きな丸みは設けられていない。また、ガスケット(34)の薄肉部(52)の径方向内側面の曲面部およびガスケット(34)の厚肉部(51)の外周面のリップも省略されている。
【0056】
上記第2実施形態の流体継手(31)において、ガスケット(34)の径方向外側の厚肉部(51)は、流体の加圧を行う場合を考慮して設計され、ガスケット(34)の径方向内側の薄肉部(52)は、流体の真空を行う場合を考慮して設計される。また、厚肉部(51)による第1の面シールのつぶし代(またはつぶし率)と薄肉部(52)による第2の面シールのつぶし代(またはつぶし率)とは、それぞれ別個に好ましい値(通常は異なる値)に設定される。こうして、ガスケット(34)の厚肉部(51)および薄肉部(52)の両方がそれぞれ面シールを行うことで、優れたシール性を得ることができる。
【0057】
なお、第2実施形態の各継手部材(32)(33)の突き合わせ端面には、図示省略しているが、ガスケット(34)を押さえる環状突起が設けられているようにしてもよい。
【0058】
図5は、この発明による流体継手の第3実施形態を示している。なお、図5は、流体継手を締め付けた後の状態を示している。
【0059】
図5に示すように、流体継手(61)は、管継手であり、互いに連通する流体通路を有している第1および第2の管状継手部材(62)(63)と、両継手部材(62)(63)間に介在させられた第1および第2の円環状ガスケット(64)(65)と、第1の継手部材(62)に嵌められた略円筒状のおねじ部材(66)と、第2の継手部材(63)に嵌められた略円筒状のめねじ部材(67)とを備えている。
【0060】
継手部材(62)(63)、第1のガスケット(64)、おねじ部材(66)およびめねじ部材(67)は、全て、金属製とされており、第2のガスケット(65)は、合成樹脂製とされている。
【0061】
各継手部材(62)(63)は、内周が流体通路となる円筒状のスリーブ本体(71)(73)と、その突き合わせ端部に一体に設けられたフランジ(72)(74)とからなり、同一形状とされている。
【0062】
第1および第2のガスケット(64)(65)は、両継手部材(62)(63)の突き合わせ端面間で面シールを形成することでシール性を得るようになっている。両継手部材(62)(63)は、突き合わせ面において互いに対称となるように形成されており、第1および第2のガスケット(64)(65)も、中心面において対称となるように形成されている。第1のガスケット(64)の内径は、各継手部材(62)(63)の内径に等しくなされている。
【0063】
継手部材(62)(63)の突き合わせ端面には、第1および第2のガスケット(64)(65)を収めるための環状の凹所(68)が形成されている。継手部材(62)(63)の突き合わせ端部は、凹所(68)の径方向外側において互いに突き合わされており、環状の凹所(68)は、径方向内側に開口した形状とされている。
【0064】
第2継手部材(63)のフランジ(74)とめねじ部材(67)の内向きフランジとの間に共回り防止手段としてのスラストワッシャ(69)が介在させられている。
【0065】
おねじ部材(66)、めねじ部材(67)およびスラストワッシャ(69)の形状は、第1実施形態と同じとされており、これらについての詳細な説明は省略する。
【0066】
第1および第2のガスケット(64)(65)は、その合わせた形状が断面T字形とされて、第1の面シールを行う径方向外側の断面略方形の厚肉部(81)と、第2の面シールを行う径方向内側の断面略方形の薄肉部(82)とを形成している。
【0067】
第1のガスケット(64)は、薄肉部(82)を構成しており、その外周面に断面半円形の環状の凹所(64a)が形成され、第2のガスケット(65)は、厚肉部(81)を構成しており、その内周面に環状の凸部(65a)が形成されている。そして、凹所(64a)と凸部(65a)とが嵌め合わされることにより、第1および第2のガスケット(64)(65)は、全体として、断面T字形の環状のガスケットを構成している。
【0068】
第1および第2のガスケット(64)(65)の形状に対応して、ガスケット収納用凹所(68)は、径方向外側の断面略方形の幅広部(83)と、径方向内側の断面略方形の幅狭部(84)とを備えている。
【0069】
厚肉部(81)を構成している第2のガスケット(65)は、その露出している面ほぼ全面でガスケット収納用凹所(68)の幅広部(83)の内面に密着し、薄肉部(52)を構成している第1のガスケット(64)は、その露出している面ほぼ全面でガスケット収納用凹所(68)の幅狭部(84)の内面に密着している。
【0070】
継手部材(62)(63)のスリーブ本体(71)(73)の突き合わせ端面には、第1のガスケット(64)を押さえる環状突起(71a)(73a)が設けられている
上記第3実施形態の流体継手(61)において、厚肉部(81)を形成している径方向外側のガスケット(65)は、流体の加圧を行う場合を考慮して設計され、薄肉部(82)を形成している径方向内側のガスケット(64)は、流体の真空を行う場合を考慮して設計される。また、厚肉部(81)による第1の面シールのつぶし代(またはつぶし率)と薄肉部(82)による第2の面シールのつぶし代(またはつぶし率)とは、それぞれ別個に好ましい値(通常は異なる値)に設定される。そして、金属製ガスケット(64)によると、形状の経時変化が金属製のものに比べて大きいという合成樹脂製のガスケット(65)の短所が補われ、合成樹脂製のガスケット(65)によると、酸性フッ化アンモンなどのような金属を腐食させる流体に対する金属製ガスケット(64)の短所が補われる。こうして、金属製ガスケット(64)および合成樹脂製ガスケット(65)の両方がそれぞれ面シールを行うことで、優れたシール性を得ることができる。
【0071】
図6は、この発明による流体継手の第4実施形態を示しており、流体継手(91)は、互いに連通する流体通路を有している第1および第2の継手部材(92)(93)と、両継手部材(92)(93)間に介在させられた円環状ガスケット(4)と、両継手部材(92)(93)を結合する複数(1または複数)のボルト(94)とを備えている。
【0072】
ガスケット(4)は、第1実施形態のものと同じものとされている。
【0073】
各継手部材(92)(93)は、内周が流体通路となる円筒状のスリーブ(95)と、これとは別部材のフランジ(96)とからなり、突き合わされるスリーブ(95)同士およびフランジ(96)同士がいずれも同一形状とされている。
【0074】
各ボルト(94)は、六角孔が形成された頭部(97)と、軸部(98)とからなり、軸部(98)は、先端部分におねじ(98a)が形成されて残りの部分(98b)にはおねじが形成されていないものとされている。
【0075】
各継手部材(92)(93)のスリーブ(95)は、互いに突き合わされており、その突き合わせ端部の外周には、フランジ部(95a)が設けられ、突き合わせ端面には、ガスケット(4)を収容するための凹所(7)が形成されている。
【0076】
ガスケット(4)を収容するための凹所(7)は、ガスケット(4)が第1実施形態のものと同じものとされていることに伴い、第1実施形態のものと同じものとされている。
【0077】
すなわち、ガスケット(4)は、断面がT字形とされており、第1の面シールを行う径方向外側の断面略方形の厚肉部(21)と、第2の面シールを行う径方向内側の断面略方形の薄肉部(22)とを備えている。ガスケット(4)の形状に対応して、ガスケット収納用凹所(7)は、径方向外側の断面略方形の幅広部(23)と、径方向内側の断面略方形の幅狭部(24)とを備えている。そして、ガスケット(4)の厚肉部(21)は、そのほぼ全面でガスケット収納用凹所(7)の幅広部(23)の内面に密着し、ガスケット(4)の薄肉部(22)は、そのほぼ全面でガスケット収納用凹所(7)の幅狭部(24)の内面に密着している。
【0078】
各継手部材(92)(93)のフランジ(96)は、スリーブ(95)に挿通される貫通孔(96a)を有し、スリーブ(95)に嵌め合わされた状態で互いに突き合わされている。フランジ(96)の突き合わせ端部の内周には、スリーブ(95)のフランジ部(95a)が嵌め入れられている凹所(96b)が形成されている。
【0079】
フランジ(96)には、ボルト(94)が挿入される孔として、突き合わせ端面側の軸挿通孔(99)およびこれに連なって反突き合わせ端面までのびるねじ孔(100)が形成されている。
【0080】
1対のフランジ(96)は、突き合わせ端面側に軸挿通孔(99)が反突き合わせ端面側にねじ孔(100)がある対向状の配置とされている。
【0081】
上記第4実施形態の流体継手(91)によると、シール部分が第1実施形態の流体継手(1)と同じにされているので、第1実施形態のものと同様に、優れたシール性を得ることができる。
【0082】
なお、上記第4実施形態において、各継手部材(92)(93)は、スリーブ(95)およびフランジ(96)からなるものとされているが、継手部材の構成は、これに限定されるものではない。各継手部材は、例えば、1つの部材とされてもよく、3以上の部材から構成されてもよく、各部材の形状についても、種々変更が可能である。
【0083】
また、上記第1から第4までの各実施形態は、管継手とされているが、上記のガスケット(4)(34)(64)(65)を使用したシール構成は、管継手以外の流体継手として、各種装置の継手部分に適用することができる。その1例として、図7に流体継手の第5実施形態を示す。
【0084】
図7において、流体継手(101)は、互いに連通する流体通路を有している第1および第2の部材(92)(102)と、両部材(92)(102)間に介在させられた円環状ガスケット(4)と、両継手部材(92)(102)を結合する複数(1または複数)のボルト(94)とを備えている。第1の部材(92)は、第4実施形態の一方の継手部材(92)と同じ管状継手部材であり、第2の部材(102)は、半導体製造装置のガス供給部において使用されるアルミニウム製のチャンバの部分である。
【0085】
第1の部材(92)については、第4実施形態のものと同じ符号を付し、その説明を省略する。第2の部材(102)には、めねじ部(103a)を有する接続部(103)が設けられている。
【0086】
ガスケット(4)およびこれを収容するための凹所(7)は、第4実施形態のものとほぼ同じとされている。
【0087】
すなわち、ガスケット(4)は、断面がT字形とされており、第1の面シールを行う径方向外側の断面略方形の厚肉部(21)と、第2の面シールを行う径方向内側の断面略方形の薄肉部(22)とを備えている。ガスケット(4)の形状に対応して、ガスケット収納用凹所(7)は、径方向外側の断面略方形の幅広部(23)と、径方向内側の断面略方形の幅狭部(24)とを備えている。そして、ガスケット(4)の厚肉部(21)は、そのほぼ全面でガスケット収納用凹所(7)の幅広部(23)の内面に密着し、ガスケット(4)の薄肉部(22)は、そのほぼ全面でガスケット収納用凹所(7)の幅狭部(24)の内面に密着している。
【0088】
なお、図7に示す実施形態では、凹所(7)は、径方向内側に開口した形状とされている。
【0089】
上記第5実施形態の流体継手(101)によると、シール部分が第1実施形態の流体継手(1)と同じにされているので、第1実施形態のものと同様に、優れたシール性を得ることができる。
【符号の説明】
【0090】
(1)(31)(61)(91)(101) 流体継手
(2)(32)(62)(92) 継手部材(第1の部材)
(3)(33)(63)(93) 継手部材(第2の部材)
(4)(34)(64)(65) ガスケット
(5)(35)(66) おねじ部材(ねじ手段)
(6)(36)(67) めねじ部材(ねじ手段)
(7)(37)(68) ガスケット収納用凹所
(21)(51)(81) 厚肉部
(22)(52)(82) 薄肉部
(23)(53)(83) 幅広部
(24)(54)(84) 幅狭部
(25) リップ(環状の突起)
(94) ボルト(ねじ手段)
(96) フランジ
(99) 軸挿通孔(ボルト挿通孔)
(100) ねじ孔 (ボルト挿通孔)
(102) 第2の部材
(103a) めねじ部(ねじ手段)
(103) 接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7