特許第6700619号(P6700619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6700619液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6700619
(24)【登録日】2020年5月8日
(45)【発行日】2020年5月27日
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20200518BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20200518BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20200518BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20200518BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20200518BHJP
   C08J 5/18 20060101ALN20200518BHJP
【FI】
   G02F1/1337 525
   G02F1/13 101
   C08G73/10
   C08L79/08 A
   C08K5/06
   !C08J5/18CFG
【請求項の数】7
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-510019(P2017-510019)
(86)(22)【出願日】2016年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2016060107
(87)【国際公開番号】WO2016158942
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2019年3月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-70077(P2015-70077)
(32)【優先日】2015年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】巴 幸司
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀則
(72)【発明者】
【氏名】結城 達也
(72)【発明者】
【氏名】相馬 早紀
【審査官】 廣田 かおり
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/189128(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/084309(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
G02F 1/13
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に塗布し、加熱処理を施すことでポリイミド膜を形成するのに用いられる液晶配向剤であって、
テトラカルボン酸誘導体と下記式(YA−9)、下記式(YA−10)、下記式(YA−12)及び下記式(YA−13)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンを含有するジアミン成分とを反応させて得られるポリイミド前駆体及びそれをイミド化して得られるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体と、
下記式(1)及び下記式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒と、を含有すること
を特徴とする液晶配向剤。
【化1】
(nは1〜12の整数、Boc(Boc基)は、tert−ブトキシカルボニル基を表している。)
【化2】
【請求項2】
前記溶媒における前記式(1)で表される化合物の含有量は5質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記溶媒における前記式(2)で表される化合物の含有量は10質量%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
前記塗布がインクジェット印刷であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
前記塗布がフレキソ印刷であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の液晶配向剤を基板に塗布し、加熱処理を施すことで得られることを特徴とする液晶配向膜。
【請求項7】
請求項6に記載の液晶配向膜を具備することを特徴とする液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶配向膜は、液晶表示素子や重合性液晶を用いた位相差板等において、液晶分子の配向を一定方向に制御するための膜である。例えば、液晶表示素子は、液晶層をなす液晶分子が、一対の基板のそれぞれの表面に形成された液晶配向膜で挟まれた構造を有する。
【0003】
液晶配向膜は、基板上に高分子膜を形成して構成することができる。高分子膜としては、高耐熱性で高信頼性のポリイミド膜等を使用することができる。
基板上に液晶配向膜となる高分子膜を形成する方法としては、高分子膜形成のため成分を含む液晶配向剤を使用し、基板上にその塗膜を形成して液晶配向膜となる高分子膜を得る方法が知られている。
【0004】
液晶配向膜の作製の工程において、液晶配向剤を基板に塗布する場合、工業的にはフレキソ印刷法やインクジェット印刷法等で行うことが多い。その際、塗布溶液の溶媒として、良溶媒とともに、液晶配向剤を基板に塗布する際の液晶配向剤の塗布性(印刷性)を良好にするため、ブチルセロソルブに代表される貧溶媒が併用されることがある(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−97188号公報
【特許文献2】特開2010−156934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ブチルセロソルブには毒性が指摘されており、使用上あまり好ましくないという問題があった。そのため、高い印刷性を維持しつつ、ブチルセロソルブに代わる、又は併用によりブチルセロソルブの使用量を低減できる他の溶媒を含んだ液晶配向剤が求められていた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、印刷性が高く、使用上の安全性に優れる液晶配向剤及び該液晶配向剤を用いた液晶配向膜及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の1.〜7.を要旨とするものである。
【0009】
1.基板上に塗布し、加熱処理を施すことでポリイミド膜を形成するのに用いられる液晶配向剤であって、テトラカルボン酸誘導体と下記式(YA−1)〜下記式(YA−20)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンを含有するジアミン成分とを反応させて得られるポリイミド前駆体及びそれをイミド化して得られるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体と、下記式(1)及び下記式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒と、を含有することを特徴とする液晶配向剤。尚、式中のBoc(Boc基)は、tert−ブトキシカルボニル基を表している。
【0010】
【化1】
【0011】
【化2】
【0012】
【化3】
【0013】
【化4】
【0014】
2.前記溶媒における前記式(1)で表される化合物の含有量は5質量%以上であることを特徴とする上記の1.に記載の液晶配向剤。
【0015】
3.前記溶媒における前記式(2)で表される化合物の含有量は10質量%以上であることを特徴とする上記の1.又は2.に記載の液晶配向剤。
【0016】
4.前記塗布がインクジェット印刷であることを特徴とする上記の1.〜3.の何れか一つに記載の液晶配向剤。
【0017】
5.前記塗布がフレキソ印刷であることを特徴とする上記の1.〜3.の何れか一つに記載の液晶配向剤。
【0018】
6.上記の1.〜5.の何れか一つに記載の液晶配向剤を基板に塗布し、加熱処理を施すことで得られることを特徴とする液晶配向膜。
【0019】
7.上記の6.に記載の液晶配向膜を具備することを特徴とする液晶表示素子。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、印刷性が高く、使用上の安全性に優れた液晶配向剤及び該液晶配向剤を用いた液晶配向膜及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の液晶配向剤は、テトラカルボン酸誘導体と特定のジアミン(後述する式(YA−1)〜式(YA−20)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミン)を含有するジアミン成分とを反応させて得られるポリイミド前駆体及びそれをイミド化して得られるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体を含有する。ポリイミド前駆体としては、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル等が含まれる。そして、本発明の液晶配向剤は、下記式(1)及び下記式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の溶媒を含有する。
【0022】
【化5】
【0023】
以下では、本発明の液晶配向剤に含有可能な成分である、ポリイミド前駆体、ポリイミド、その重合に必須な特定構造のジアミン化合物及び溶媒について説明をする。そして、それらを含有して構成される本発明の液晶配向剤について説明する。
【0024】
<ポリイミド前駆体>
本発明の液晶配向剤に含有されるポリイミド前駆体は、ポリアミック酸及びポリアミック酸エステルを指し、下記式(3)で表される構造単位を有する。
【0025】
【化6】
【0026】
上記式(3)において、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、A、Aは、各々独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基若しくは炭素数2〜10のアルキニル基である。
【0027】
上記式(3)において、Rは、水素原子又は炭素数1〜5、好ましくは1〜2のアルキル基である。ポリアミック酸エステルは、アルキル基における炭素数が増えるに従ってイミド化が進行する温度が高くなる。そのため、Rは、熱によるイミド化のしやすさの観点から、メチル基が特に好ましい。
【0028】
上記式(3)において、A及びAは、各々独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基若しくは炭素数2〜10のアルキニル基が挙げられる。上記炭素数1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロヘキシル基等が挙げられる。上記炭素数2〜10のアルケニル基としては、上記のアルキル基に存在する1つ以上のCH−CH構造を、C=C構造に置き換えたものが挙げられ、具体的には、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。上記炭素数2〜10のアルキニル基としては、前記のアルキル基に存在する1つ以上のCH−CH構造をC≡C構造に置き換えたものが挙げられ、具体的には、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基等が挙げられる。
【0029】
上記の炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び炭素数2〜10のアルキニル基は置換基を有していてもよく、更には置換基によって環構造を形成してもよい。尚、置換基によって環構造を形成するとは、置換基同士又は置換基と母骨格の一部とが結合して環構造となることを意味する。
【0030】
この置換基の例としては、ハロゲン基、水酸基、チオール基、ニトロ基、アリール基、オルガノオキシ基、オルガノチオ基、オルガノシリル基、アシル基、エステル基、チオエステル基、リン酸エステル基、アミド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基を挙げることができる。
【0031】
置換基であるハロゲン基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。置換基であるアリール基としては、フェニル基が挙げられる。このアリール基には前述の他の置換基が更に置換していてもよい。
【0032】
置換基であるオルガノオキシ基としては、O−Rで表される構造を示すことができる。このRは同一でも異なってもよく、前述のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等を例示することができる。これらのRには前述の置換基が更に置換していてもよい。オルガノオキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。
【0033】
置換基であるオルガノチオ基としては、−S−Rで表される構造を示すことができる。このRとしては、前述のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等を例示することができる。これらのRには前述の置換基が更に置換していてもよい。オルガノチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基等が挙げられる。
【0034】
置換基であるオルガノシリル基としては、−Si−(R)で表される構造を示すことができる。このRは同一でも異なってもよく、前述のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等も例示できる。これらのRには前述の置換基が更に置換していてもよい。オルガノシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリペンチルシリル基、トリヘキシルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0035】
置換基であるアシル基としては、−C(O)−Rで表される構造を示すことができる。このRとしては、前述のアルキル基、アルケニル基、アリール基等を例示することができる。これらのRには前述の置換基が更に置換していてもよい。アシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0036】
置換基であるエステル基としては、−C(O)O−R、又はOC(O)−Rで表される構造を示すことができる。このRとしては、前述のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等を例示することができる。これらのRには前述の置換基が更に置換していてもよい。
置換基であるチオエステル基としては、−C(S)O−R、又はOC(S)−Rで表される構造を示すことができる。このRとしては、前述のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等を例示することができる。これらのRには前述の置換基が更に置換していてもよい。
【0037】
置換基であるリン酸エステル基としては、−OP(O)−(OR)で表される構造を示すことができる。このRは同一でも異なってもよく、前述のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等を例示することができる。これらのRには前述の置換基が更に置換していてもよい。
【0038】
置換基であるアミド基としては、−C(O)NH、−C(O)NHR、−NHC(O)R、−C(O)N(R)、又は−NRC(O)Rで表される構造を示すことができる。Rは同一でも異なってもよく、前述のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等を例示できる。これらのRには前述の置換基が更に置換していてもよい。
【0039】
置換基であるアリール基としては、前述のアリール基と同じものを挙げることができる。このアリール基には前述の他の置換基が更に置換していてもよい。置換基であるアルキル基としては、前述のアルキル基と同じものを挙げることができる。このアルキル基には前述の他の置換基が更に置換していてもよい。置換基であるアルケニル基としては、前述のアルケニル基と同じものを挙げることができる。このアルケニル基には前述の他の置換基が更に置換していてもよい。置換基であるアルキニル基としては、前述のアルキニル基と同じものを挙げることができる。このアルキニル基には前述の他の置換基が更に置換していてもよい。
【0040】
一般に、嵩高い構造を導入すると、アミノ基の反応性や液晶配向性を低下させる可能性があるため、A及びAとしては、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0041】
上記式(3)において、Xは、4価の有機基であれば、その構造は特に限定されるものではなく、2種類以上が混在していてもよい。Xの具体例を示すならば、以下に示すX−1〜X−47が挙げられる。なかでも、モノマーの入手性から、Xは、X−1、X−2、X−3、X−4、X−5、X−6、X−8、X−16、X−19、X−21、X−25、X−26、X−27、X−28、X−32又はX−47が好ましい。
【0042】
【化7】
【0043】
【化8】
【0044】
【化9】
【0045】
【化10】
【0046】
上記式(3)において、Yは、本発明で使用されるジアミン成分の構造に対応する。本発明で使用されるジアミン成分は、特定のジアミン(後述する式(YA−1)〜式(YA−20)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミン)を含有しているので、Yは、当該特定のジアミンに対応した構造となる。ただし、Yの全てが、当該特定のジアミンに対応した構造となっている必要は必ずしもない。Yの一部に、当該特定のジアミン以外のジアミン(その他のジアミン)に対応した構造が含まれていてもよい。その他のジアミンを併用した場合も含め、Yの具体例としては、下記のY−1〜Y−108が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、Yの具体例としては、ジアミンの反応性及びポリマーの溶解性の観点から、Y−7、Y−8、Y−13、Y−18、Y−19、Y−42,Y−43、Y−45、Y−55、Y−59、Y−74、Y−78、Y−79、Y−80、Y−81、又はY−82が好ましく、Y−19(例えば、後述のジアミン(YA−8)に対応)、Y−42(例えば、後述のジアミン(YA−5)に対応)、Y−43(例えば、後述のジアミン(YA−1)に対応)、Y−45(例えば、後述のジアミン(YA−2)に対応)、Y−74(例えば、後述のジアミン(YA−9)に対応)、Y−81(例えば、後述のジアミン(YA−12)に対応)又はY−82(例えば、後述のジアミン(YA−3)に対応)がより好ましい。
【0047】
【化11】
【0048】
【化12】
【0049】
【化13】
【0050】
【化14】
【0051】
【化15】
【0052】
【化16】
【0053】
【化17】
【0054】
【化18】
【0055】
【化19】
【0056】
【化20】
【0057】
【化21】
【0058】
【化22】
【0059】
【化23】
【0060】
【化24】
【0061】
そして、本発明で使用されるジアミン成分は、下記式(YA−1)〜下記式(YA−20)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンを含有する。上記の通り、Yの一部に、その他のジアミンに対応した構造が含まれていてもよく、すなわち、本発明で使用されるジアミン成分には、その他のジアミンが含まれていてもよい。Y−1〜Y−108以外のYを与えるジアミンも、本発明の範囲内で、その他のジアミンとして使用可能である。その他のジアミンの具体例を下記に例示する(YB−1〜YB−7)。その他のジアミンは、下記に限定されない。
【0062】
【化25】
【0063】
【化26】
【0064】
【化27】
【0065】
【化28】
【0066】
本発明の液晶配向剤に含まれるポリイミド前駆体としては、一級アミン、二級アミン、カルボン酸及びウレア基のうちの少なくとも一つを有するポリイミド前駆体が好ましく、一級アミン、ウレア基のうち少なくとも一つを有するポリイミド前駆体がより好ましい。
【0067】
<ポリイミド前駆体の製造方法―ポリアミック酸の製造>
上記式(3)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体であるポリアミック酸は、テトラカルボン酸誘導体であるテトラカルボン酸二無水物とジアミン成分との反応により得られる。
【0068】
テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分との反応により、ポリアミック酸を得るにあたっては、公知の合成方法を用いることができる。その合成方法は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを有機溶媒中で反応させる方法である。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、有機溶媒中で比較的容易に進行し、かつ副生成物が発生しない点で有利である。
【0069】
テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分との反応に用いる有機溶媒としては、生成したポリアミック酸が溶解するものであれば特に限定されない。ここでの有機溶媒は、上記式(1)及び上記式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を含んでいてもよい。使用可能な有機溶媒の具体例を以下に挙げる。
【0070】
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n−へキサン、n−ペンタン、n−オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−エトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド等が挙げられる。
【0071】
これら例示された溶媒は、単独で使用しても、混合して使用してもよい。更に、ポリアミック酸を溶解させない溶媒であっても、生成したポリアミック酸が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。
【0072】
有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、更には生成したポリアミック酸を加水分解させる原因となるので、有機溶媒はなるべく脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0073】
テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを有機溶媒中で反応させる際には、ジアミン成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液を攪拌させ、テトラカルボン酸二無水物をそのまま、又は有機溶媒に分散あるいは溶解させて添加する方法、逆にテトラカルボン酸二無水物を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液にジアミン成分を添加する方法、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを交互に添加する方法等が挙げられ、これらの何れの方法を用いてもよい。テトラカルボン酸二無水物又はジアミン成分が複数種の化合物からなる場合は、あらかじめ混合した状態で反応させてもよく、個別に順次反応させてもよく、更に個別に反応させた低分子量体を混合反応させ高分子量体としてもよい。
【0074】
その際の重合温度は−20℃〜150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは−5℃〜100℃の範囲である。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となるので、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分の反応溶液中での合計濃度は、好ましくは1質量%〜50質量%、より好ましくは5質量%〜30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加することができる。
【0075】
ポリアミック酸の重合反応においては、テトラカルボン酸二無水物の合計モル数と、ジアミン成分の合計モル数の比は0.8〜1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応同様、このモル比が1.0に近いほど生成するポリアミック酸の分子量は大きくなる。
【0076】
<ポリイミド前駆体の製造方法―ポリアミック酸エステルの製造>
上記式(3)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体であるポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸誘導体及びジアミン化合物を用いて、次に示す(A)、(B)又は(C)の方法で製造することができる。
【0077】
(A)ポリアミック酸から製造する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンから得られるポリアミック酸をエステル化することによって製造することができる。
具体的には、ポリアミック酸とエステル化剤を有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1時間〜4時間反応させることによって製造することができる。
【0078】
エステル化剤としては、精製によって容易に除去できるものが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジプロピルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジネオペンチルブチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジ−t−ブチルアセタール、1−メチル−3−p−トリルトリアゼン、1−エチル−3−p−トリルトリアゼン、1−プロピル−3−p−トリルトリアゼン、4−(4,6−ジメトキシー1,3,5−トリアジンー2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド等が挙げられる。エステル化剤の添加量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して、2モル当量〜6モル当量が好ましい。
【0079】
上記の反応に用いる溶媒は、ポリマーの溶解性からN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、又はγ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。製造時の濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。
【0080】
(B)テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとの反応により製造する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンから製造することができる。
【0081】
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとを塩基と有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって製造することができる。
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン等が使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、2モル倍〜4モル倍であることが好ましい。
【0082】
上記の反応に用いる溶媒は、モノマー及びポリマーの溶解性からN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。製造時のポリマー濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの製造に用いる溶媒はできるだけ脱水されていることが好ましく、窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
【0083】
(C)テトラカルボン酸ジエステルとジアミンから製造する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを重縮合することにより製造することができる。
【0084】
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを縮合剤、塩基、及び有機溶剤の存在下で0℃〜150℃、好ましくは0℃〜100℃において、30分〜24時間、好ましくは3時間〜15時間反応させることによって製造することができる。
【0085】
前記縮合剤には、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ−1,3,5−トリアジニルメチルモルホリニウム、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(2,3−ジヒドロ−2−チオキソ−3−ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニル等が使用できる。縮合剤の添加量は、テトラカルボン酸ジエステルに対して2モル倍〜3モル倍であることが好ましい。
【0086】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミン等の3級アミンが使用できる。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、ジアミン成分に対して2モル倍〜4モル倍が好ましい。
【0087】
また、上記反応において、ルイス酸を添加剤として加えることで反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウム等のハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量はジアミン成分に対して0モル倍〜1.0モル倍が好ましい。
【0088】
上記の3つのポリアミック酸エステルの製造方法の中でも、高分子量のポリアミック酸エステルを再現性よく得るため、上記(C)の製造方法が特に好ましい。上記のようにして得られるポリアミック酸エステルの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温又は加熱乾燥して精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。
【0089】
<ポリイミド>
本発明に用いられるポリイミドは、ポリイミド前駆体である、前記したポリアミック酸エステル又はポリアミック酸をイミド化することによって製造することができる。ポリイミド前駆体を脱水閉環させるイミド化反応は、熱イミド化又は化学的イミド化が一般的であるが、比較的低温でイミド化反応が進行する化学的イミド化が、得られるポリイミドの分子量低下が起こりにくく好ましい。
【0090】
化学的イミド化は、ポリイミド前駆体を有機溶媒中において、塩基性触媒と酸無水物の存在下で攪拌することにより行うことができる。このときの反応温度は−20〜250℃、好ましくは0〜180℃であり、反応時間は1〜100時間で行うことができる。塩基性触媒の量はポリイミド前駆体の0.5〜30モル倍、好ましくは2〜20モル倍であり、酸無水物の量はポリイミド前駆体の1〜50モル倍、好ましくは3〜30モル倍である。塩基性触媒や酸無水物の量が少ないと反応が十分に進行せず、また多すぎると反応終了後に完全に除去することが困難となる。
【0091】
イミド化に用いる塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。
【0092】
また、酸無水物としては無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等を挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。有機溶媒としては前述のポリアミック酸重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。化学的イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0093】
このようにして得られたポリイミド溶液は、添加した触媒が溶液内に残存しているので、本発明の液晶配向剤に用いるためには、このポリイミド溶液を、攪拌している貧溶媒に投入し、ポリイミドを沈殿回収して使用するのが好ましい。ポリイミドの沈殿回収に用いる貧溶媒としては特に限定されないが、メタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン等が例示できる。貧溶媒に投入することにより沈殿したポリイミドは濾過・洗浄して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱乾燥してパウダーとすることができる。このパウダーを更に良溶媒に溶解して、再沈殿する操作を2〜10回繰り返すと、ポリイミドを精製することもできる。一度の沈殿回収操作では不純物が除ききれないときは、この精製工程を繰り返し行うことが好ましい。繰り返し精製工程を行う際の貧溶媒として例えばアルコール類、ケトン類、炭化水素類等の3種類以上の貧溶媒を混合もしくは順次用いることで、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0094】
本発明の液晶配向剤に含有されるポリイミドのイミド化率は特に限定されない。ポリイミドの溶解性を考慮し任意の値に設定すればよい。本発明の液晶配向剤に含有されるポリイミドの分子量は特に限定されないが、ポリイミドの分子量は小さ過ぎると、得られる塗膜の強度が不十分となる場合があり、逆にポリイミドの分子量が大き過ぎると、製造される液晶配向剤の粘度が高くなり過ぎて、塗膜形成時の作業性、塗膜の均一性が悪くなる場合がある。従って、本発明の液晶配向剤に用いるポリイミドの重量平均分子量は2,000〜500,000が好ましく、より好ましくは5,000〜300,000である。
【0095】
<その他の化合物>
本発明の液晶配向剤には、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、上記以外の化合物(その他の化合物)を添加してもよい。例えば、液晶配向膜の誘電率や導電性等の電気特性を変化させる目的で、誘電体や導電物質、更には、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物を添加してもよい。
【0096】
その他の化合物としては、例えば、特願2014−053902号に記載のブロックイソシアネート基を有する化合物が挙げられる。ブロックイソシアネート基を有する化合物は、イソシアネート基(−NCO)が保護基によりブロックされたブロックイソシアネート基を分子中に有し、液晶配向膜形成時の加熱焼成に際して高温に曝されると保護基(ブロック部分)が熱解離して外れ、生じたイソシアネート基を介して、液晶配向膜を構成するポリイミド等の重合体との間で架橋反応が進行するものである。例えば、式(4)で表される基を分子中に有する化合物が挙げられる。
【0097】
【化29】
(式(4)中、Rはブロック部の有機基を表す。)
【0098】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、液晶配向膜を形成するための塗布液であり、樹脂被膜を形成するための樹脂成分が有機溶媒に溶解した溶液である。ここで、前記の樹脂成分は、上記のポリイミド前駆体及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体を含む樹脂成分である。樹脂成分の液晶配向剤中の含有量は、1質量%〜20質量%が好ましく、より好ましくは3質量%〜15質量%、更に好ましくは3質量%〜10質量%である。
【0099】
尚、本発明において、前記の樹脂成分は、全てが上記の重合体であってもよく、それ以外の他の重合体が混合されていてもよい。その際、樹脂成分中における上記の重合体以外の他の重合体の含有量は0.5質量%〜15質量%、好ましくは1質量%〜10質量%である。
【0100】
本発明の液晶配向剤に用いる有機溶媒は、上記式(1)及び上記式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を含む。これによれば、毒性が指摘されているブチルセロソルブを使用せず、又はブチルセロソルブの使用量を低減して、液晶配向剤を構成することができる。従って、安全性に優れた液晶配向剤となる。その上、上記式(1)及び上記式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を含む本発明の液晶配向剤は、後述の実施例でも確かめられているように、高い印刷性も有している。
【0101】
ここで、有機溶媒(液晶配向剤に用いる有機溶媒)における上記式(1)で表される化合物の含有量は5質量%以上であることが好ましい。この場合、例えばインクジェット印刷により、基板上に塗膜を好適に形成しやすくなる。逆に言えば、インクジェット印刷によって塗膜を形成する場合には、有機溶媒(液晶配向剤に用いる有機溶媒)における上記式(1)で表される化合物が5質量%以上である液晶配向剤を構成することが好ましい。
【0102】
上記式(1)で表される化合物は、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等と称される。上記式(1)で表される化合物は比較的単純な構造を有しており、入手も容易である。
【0103】
上記式(2)で表される化合物は、プロピレングリコールモノブチルエーテル等と称される。有機溶媒(液晶配向剤に用いる有機溶媒)における上記式(2)で表される化合物の含有量は10質量%以上であることが好ましい。この場合、例えばインクジェット印刷やフレキソ印刷により、基板上に塗膜を好適に形成しやすくなる。逆に言えば、インクジェット印刷は勿論、フレキソ印刷によって塗膜を形成する場合には、有機溶媒(液晶配向剤に用いる有機溶媒)における上記式(2)で表される化合物が10質量%以上である液晶配向剤を構成することが好ましい。
【0104】
液晶配向剤に用いる有機溶媒は、上記式(1)及び上記式(2)で表される溶媒以外の溶媒(その他の溶媒)を含んでいてもよい。その他の溶媒の具体例を以下に挙げる。
【0105】
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−エトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等が挙げられる。これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0106】
使用上あまり好ましくはないが、液晶配向剤は、ブチルセロソルブを含んでいてもよい。液晶配向剤がブチルセロソルブを含んでいたとしても、上記式(1)及び上記式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を含む分、該ブチルセロソルブの使用量を低減できる。
【0107】
本発明の液晶配向剤は、上記以外の成分を含有してもよい。その例としては、液晶配向剤を塗布した際の膜厚均一性や表面平滑性を向上させる溶媒や化合物、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物等である。
【0108】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒)の具体例としては、例えば、特願2014−053902号に記載のものが挙げられる。
【0109】
貧溶媒は1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。上記のような溶媒を用いる場合、その含有量は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の5質量%〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは20質量%〜60質量%である。
【0110】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、例えば、特願2014−053902号に記載のフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤等が挙げられる。
【0111】
界面活性剤の使用割合は、液晶配向剤に含有される樹脂成分の100質量部に対して、好ましくは0.01質量部から2質量部、より好ましくは0.01質量部から1質量部である。
【0112】
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、例えば、特願2014−053902号に記載の官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物等が挙げられる。
【0113】
基板との密着性を向上させる化合物を使用する場合、その使用量は、液晶配向剤に含有される樹脂成分の100質量部に対して0.1質量部から30質量部であることが好ましく、より好ましくは1質量部から20質量部である。使用量が0.1質量部未満であると密着性向上の効果は期待できず、30質量部よりも多くなると形成される液晶配向膜の液晶配向性が低下する場合がある。
【0114】
本発明の液晶配向剤には、上記の他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、液晶配向膜の誘電率や導電性等の電気特性を変化させる目的で、誘電体や導電物質、更には、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物を添加してもよい。
【0115】
以上を踏まえ、本発明の液晶配向剤で使用可能な溶媒及びその組成比の一例を挙げると、例えば、下表の通りとなる。勿論、本発明の液晶配向剤で使用可能な溶媒及びその組成比は、下表に限定されない。
【0116】
【表1】
【0117】
(良溶媒)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
GBL:γ−ブチロラクトン
(貧溶媒)
BCS:ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)
DPM:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(上記式(1))
PB:プロピレングリコールモノブチルエーテル(上記式(2))
【0118】
<液晶配向膜>
本発明の液晶配向剤は、好ましくは、基板に塗布する前に濾過した後、基板に塗布し、プリベークによる乾燥、次いで、加熱焼成をすることで塗膜とすることができる。そして、この塗膜面をラビング処理することにより、液晶配向膜を形成することができる。
【0119】
本発明の液晶配向剤を基板に塗布する場合、使用する基板としては、透明性の高い基板を使用することができる。そうした基板としては、例えば、ガラス基板の他、アクリル基板やポリカーボネート基板等のプラスチック基板を用いることができる。液晶表示素子の製造において本発明の液晶配向剤を用いる場合、液晶駆動のためのITO(Indium Tin Oxide)電極等が形成された基板を用い、液晶配向膜を形成することが好ましい。また、反射型の液晶表示素子を製造する場合は、片側の基板のみにならばシリコンウエハ等の不透明な基板でも使用でき、この場合の電極はアルミニウム等の光を反射する材料を使用することもできる。
【0120】
本発明の液晶配向剤を基板上に塗布する方法としては、例えば、インクジェット印刷法又はフレキソ印刷法が挙げられる。上記のように、インクジェット印刷法を用いて基板上に塗膜を形成する場合には、液晶配向剤が少なくとも上記式(1)で表される溶媒を含有することが好ましい。また、フレキソ印刷法を用いて基板上に塗膜を形成する場合には、液晶配向剤が少なくとも上記式(2)で表される溶媒を含有することが好ましい。その他、本発明の塗布方法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法又はスプレー法等があり、目的に応じてこれらを用いてもよい。
【0121】
液晶配向剤を塗布した後のプリベークによる乾燥の工程は、必ずしも必要とされないが、塗布後から加熱焼成までの時間が基板ごとに一定していない場合や、塗布後ただちに加熱焼成されない場合には、乾燥工程を含める方が好ましい。このプリベークによる乾燥は、基板の搬送等により塗膜形状が変形しない程度に溶媒が蒸発していればよい。
【0122】
乾燥手段については特に限定されない。具体例を挙げるならば、50℃〜120℃、好ましくは80℃〜120℃のホットプレート上で、0.5分〜30分、好ましくは1分〜5分乾燥させる方法が好ましい。
【0123】
液晶配向剤を塗布した基板の焼成は、ホットプレート、熱循環型オーブン又はIR(赤外線)型オーブン等の加熱手段により、120℃〜350℃の温度で行うことができる。ただし、液晶表示素子の製造工程で必要とされる、シール剤硬化等の熱処理温度より、10℃以上高い温度で焼成することが好ましい。
【0124】
焼成後の塗膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは10nm〜200nm、より好ましくは50nm〜100nmである。
【0125】
上記のようにして基板上に形成された塗膜面のラビング処理は、既存のラビング装置を使用することができる。この際のラビング布の材質としては、コットン、レーヨン、ナイロン等が挙げられる。ラビング処理の条件としては、一般的に、回転速度300〜2000rpm、送り速度5〜100mm/s、押し込み量0.1〜1.0mmという条件が用いられる。その後、純水やアルコール等を用いて超音波洗浄によりラビングにより生じた残渣が除去される。
【0126】
本発明の液晶配向剤は、上記した方法により基板上に液晶配向膜を形成した後は、その液晶配向膜付き基板を用い、公知の方法で液晶表示を製造することができる。
【0127】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、上記した手法により本発明の液晶配向剤から液晶配向膜付き基板を得た後、公知の方法で液晶セルを作製し、液晶表示素子としたものである。
液晶表示素子の作製方法の一例は、以下の通りである。まず、液晶配向膜の形成された1対の基板を用意し、それらを、好ましくは1μm〜30μm、より好ましくは2μm〜10μmのスペーサーを挟んで、ラビング方向が0°〜270°の任意の角度となるように設置して周囲をシール剤で固定する。次いで、基板間に液晶を注入して封止する。液晶封入の方法については特に制限されず、作製した液晶セル内を減圧にした後に液晶を注入する真空法、液晶を滴下した後に封止を行う滴下法等が例示できる。
【実施例】
【0128】
以下に、本発明について実施例等を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。尚、化合物、溶媒の略号は、以下のとおりである。
【0129】
(良溶媒)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
GBL:γ−ブチロラクトン
(貧溶媒)
PB:プロピレングリコールモノブチルエーテル(上記式(2))
BCS:ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)
DPM:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(上記式(1))
【0130】
(ジアミン)
DA−1:1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン(式(YA−9:n=5))
DA−2:4,4’−ジアミノジフェニルアミン(式(YA−2))
DA−3:4,4’−ジアミノジフェニルメタン(式(YA−5))
DA−4:1,3−ジアミノ−4−〔4−(トランス−4−n−ヘプチルシクロへキシル)フェノキシ〕ベンゼン(式(Y−86:n=6)に対応するジアミン)
DA−5:3,5−ジアミノ安息香酸(式(YA−19))
DA−6:p−フェニレンジアミン(式(YA−7))
DA−7:N,N−ジアリルアミノ−2,4−ジアミノベンゼン(式(Y−15)に対応するジアミン)
DA−8:1,3−ジアミノ−4−〔4−(トランス−4−n−ヘプチルシクロへキシル)フェノキシメチル〕ベンゼン(式(Y−92:n=6)に対応するジアミン)
【0131】
(テトラカルボン酸二水和物)
CA−1:ピロメリット酸二無水物
CA−2:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
CA−3:3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物
CA−4:ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物
【0132】
[ポリイミドのイミド化率の測定]
合成例におけるポリイミドのイミド化率は次のようにして測定した。ポリイミド粉末20mgをNMR(核磁気共鳴)サンプル管(NMRサンプリングチューブスタンダード,φ5(草野科学社製))に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6,0.05質量%TMS(テトラメチルシラン)混合品)(0.53ml)を添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液をNMR測定機(JNW−ECA500)(日本電子データム社製)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5ppm〜10.0ppm付近に現れるアミド酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い以下の式によって求めた。
イミド化率(%)=(1−α・x/y)×100
【0133】
上記式において、xはアミド酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミド酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミド酸のNH基プロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。
【0134】
(合成例1)
撹拌装置及び窒素導入管付きの200mLの四つ口フラスコに、DA−1を17.7g(62.0mmol)量り取り、NMPを139g加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA−1を12.9g(59.2mmol)添加し、更に固形分濃度が12質量%になるようにNMPを加え、窒素雰囲気下、50℃で20時間撹拌して、ポリアミック酸溶液(PAA−1)を得た。
【0135】
(合成例2)
撹拌装置及び窒素導入管付きの200mLの四つ口フラスコに、DA−2を7.97g(40.0mmol)量り取り、NMPを98.6g加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA−2を6.96g(35.5mmol)添加し、更にNMPを35.9g加えて、窒素を送りながら水冷下で3時間撹拌した。次に、DA−3を1.98g(10.0mmol)、NMPを17.9g加えて攪拌し溶解させた後、CA−3を3.00g(10.0mmol)、NMPを26.9g加えて、窒素を送りながら水冷下で3時間撹拌し、ポリアミック酸溶液(PAA−2)を得た。
【0136】
(実施例1)
撹拌子の入った200mL三角フラスコに、合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA−1)を50.0g分取し、NMPを19.1g、3−アミノプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を5.60g、PBを18.6g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、濃度が6.0質量%の液晶配向剤(A−1)を得た。
【0137】
撹拌子の入った200mL三角フラスコに、合成例2で得られたポリアミック酸溶液(PAA−2)を50.0g分取し、NMPを10.5g、3−アミノプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を4.90g、PBを16.3g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、濃度が6.0質量%の液晶配向剤(B−1)を得た。
【0138】
この液晶配向剤(A−1)と液晶配向剤(B−1)を質量比が20:80となる分量で混合し、濃度が6.0質量%の液晶配向剤(C−1)を得た。
【0139】
(実施例2)
撹拌子の入った200mL三角フラスコに、合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA−1)を50.0g分取し、NMPを19.1g、3−アミノプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を5.60g、PBを9.30g、BCSを9.30加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、濃度が6.0質量%の液晶配向剤(A−2)を得た。
【0140】
撹拌子の入った200mL三角フラスコに、合成例2で得られたポリアミック酸溶液(PAA−2)を50.0g分取し、NMPを10.5g、3−アミノプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を4.90g、PBを8.18g、BCSを8.18g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、濃度が6.0質量%の液晶配向剤(B−2)を得た。
【0141】
この液晶配向剤(A−2)と液晶配向剤(B−2)を質量比が20:80となる分量で混合し、濃度が6.0質量%の液晶配向剤(C−2)を得た。
【0142】
(実施例3)
撹拌子の入った200mL三角フラスコに、実施例1で得られた液晶配向剤(C−1)を50.0g分取し、NMPを28.5g、PBを7.14g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、濃度が3.5質量%の液晶配向剤(C−3)を得た。
【0143】
(実施例4)
撹拌子の入った200mL三角フラスコに、合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA−1)を50.0g分取し、NMPを48.0g、GBLを24.4g、3−アミノプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を5.60g、BCSを24.0g、DPMを8.00g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、濃度が3.5質量%の液晶配向剤(A−3)を得た。
【0144】
撹拌子の入った200mL三角フラスコに、合成例2で得られたポリアミック酸溶液(PAA−2)を50.0g分取し、NMPを42.0g、GBLを15.1g、3−アミノプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を4.90g、BCSを21.0g、DPMを7.00g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、濃度が3.5質量%の液晶配向剤(B−3)を得た。
【0145】
この液晶配向剤(A−3)と液晶配向剤(B−3)を質量比が20:80となる分量で混合し、濃度が3.5質量%の液晶配向剤(C−4)を得た。
【0146】
(実施例5)
撹拌子の入った200mL三角フラスコに、合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA−1)を50.0g分取し、NMPを48.0g、GBLを8.40g、3−アミノプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を5.60g、BCSを33.6g、DPMを14.4g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、濃度が3.5質量%の液晶配向剤(A−4)を得た。
【0147】
撹拌子の入った200mL三角フラスコに、合成例2で得られたポリアミック酸溶液(PAA−2)を50.0g分取し、NMPを42.0g、GBLを1.10g、3−アミノプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を4.90g、BCSを29.4g、DPMを12.6g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、濃度が3.5質量%の液晶配向剤(B−4)を得た。
【0148】
この液晶配向剤(A−4)と液晶配向剤(B−4)を質量比が20:80となる分量で混合し、濃度が3.5質量%の液晶配向剤(C−5)を得た。
【0149】
(実施例6)
実施例5で得られた液晶配向剤(A−4)と液晶配向剤(B−4)を質量比が30:70となる分量で混合し、濃度が3.5質量%の液晶配向剤(C−6)を得た。
【0150】
(比較例1)
撹拌装置及び窒素導入管付きの100mLの四つ口フラスコに、DA−4を6.79g(17.8mmol)、DA−5を2.17g(14.3mmol)、DA−6を0.39g(3.61mmol)量り取り、NMPを29.2g加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、CA−4を6.25g(25.0mmol)添加した後、窒素雰囲気下、80℃で5時間撹拌させた。次に、CA−2を2.10g(10.7mmol)、NMPを23.9g加えて、窒素を送りながら40℃で6時間撹拌し、ポリアミック酸溶液(PAA−3)を得た。
【0151】
撹拌子の入った200mL三角フラスコに、このポリアミック酸溶液(PAA−3)を30.0g分取し、NMPを68.0g、PBを24.5g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、濃度が6.0質量%の液晶配向剤(C−7)を得た。
【0152】
(合成例3)
撹拌装置及び窒素導入管付きの100mLの四つ口フラスコに、DA−5を2.11g(13.9mmol)、DA−7を1.41g(6.94mmol)、DA−8を5.47g(13.9mmol)量り取り、NMPを27.6g加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、CA−4を4.34g(17.3mmol)添加した後、窒素雰囲気下、80℃で5時間撹拌させた。次に、CA−2を3.40g(17.3mmol)、NMPを22.6g加えて、窒素を送りながら40℃で6時間撹拌し、ポリアミック酸溶液(PAA−4)を得た。
【0153】
撹拌子の入った200mL三角フラスコに、このポリアミック酸溶液(PAA−4)を40.0g分取し、無水酢酸を8.85g、ピリジンを6.25g加え、90℃で3.5時間反応させた。この反応溶液を1000mlのメタノール中に投入し、得られた沈殿物を濾別しメタノールで洗浄した後、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(PI−1)を得た。このポリイミド粉末(PI−1)のイミド化率は78%であった。
【0154】
撹拌子の入った100mL三角フラスコに、このポリイミド粉末(PI−1)を2.56g分取し、NMPを18.7g加えて、70℃にて24時間攪拌して溶解させ、ポリイミド溶液(PI−2)を得た。
【0155】
(比較例2)
撹拌子の入った100mL三角フラスコに、合成例3で得られたポリイミド溶液(PI−2)を15.0g分取し、NMPを9.00g、PBを6.00g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、濃度が6.0質量%の液晶配向剤(C−8)を得た。
【0156】
(比較例3)
撹拌子の入った100mL三角フラスコに、比較例2で得られた液晶配向剤(C−8)を15.0g分取し、NMPを8.57g、PBを2.14g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、濃度が3.5質量%の液晶配向剤(C−9)を得た。
【0157】
(比較例4)
撹拌子の入った100mL三角フラスコに、合成例3で得られたポリイミド溶液(PI−2)を15.0g分取し、NMPを15.4g、GBLを10.7g、BCSを7.71g、DPMを2.57g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、濃度が3.5質量%の液晶配向剤(C−10)を得た。
【0158】
[印刷性の評価]
本発明の実施例及び比較例で得られた液晶配向剤を細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、簡易印刷機S15型(日本写真印刷製)を用いて、クロムが付いたガラス基板のクロム面に塗布した。その後、80℃のホットプレート上で1分間加熱して溶媒を除去した後、230℃のIR式オーブンで20分間焼成を行った。
【0159】
この塗膜をナトリウムランプの下で目視観察し、印刷ムラがほとんど観察されなかった場合を「良好(○印)」、印刷ムラが観察された場合を「不良(×印)」として評価した。
【0160】
[インクジェット塗布性の評価]
本発明の実施例及び比較例で得られた液晶配向剤を細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、HIS−200(日立プラントテクノロジー社製)を用いて、ITO電極が付いたガラス基板のITO面に塗布した。その後、80℃のホットプレート上で1分間加熱して溶媒を除去した後、230℃のIR式オーブンで20分間焼成を行った。
【0161】
この塗膜を倍率5倍の顕微鏡で観察し、塗布ムラがほとんど観察されなかった場合を「良好(○印)」、塗布ムラが観察された場合を「不良(×印)」として評価した。
【0162】
表2に、実施例及び比較例で得られた液晶配向剤を用いた際の、印刷性の評価及びインクジェット塗布性の評価の結果を示す。
【0163】
【表2】
【0164】
本発明の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜は、毒性が指摘されているブチルセロソルブを使用せず、又はブチルセロソルブの使用量を低減している。従って、安全性に優れた液晶配向剤となっている。その上、本発明の液晶配向剤は、上記の実施例でも確かめられているように、高い印刷性及びインクジェット塗布性も有している。