(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、本実施形態に係る磁気センサ10の概略構成を示す。磁気センサ10は、直交する3方向をそれぞれ向く磁場が混在した(合成された)磁気信号を検出する。
図1は、直交する3方向を第1軸(X軸)、第2軸(Y軸)、第3軸(Z軸)で示す。磁気センサ10は、磁気収束部100と、複数の磁気検知部110と、を備える。
【0009】
磁気収束部100は、第1軸および第2軸と略平行な第1平面に配置される。
図1は、磁気収束部100がXY平面と略平行な面に形成された例を示す。磁気収束部100は、パーマロイ等の磁性材料で形成され、当該磁気収束部の近傍の磁力線の向きを変化させる。例えば、磁気収束部100は、NiFe、NiFeB、NiFeCo、およびCoFe等の軟磁性材料で形成されることが望ましい。
【0010】
磁気収束部100は、一例として、直方体の形状を有する。この場合、磁気収束部100は、第1平面と平行な平面視(Z方向から見た平面視)において、4つの角が略等しい長方形の形状を有してよい。
図1は、磁気収束部100が、4つの角が略等しく、かつ、4つの辺の長さが略等しい正方形の形状を有する例を示す。
【0011】
磁気検知部110は、磁気収束部100の周囲に配置される。磁気検知部110は、予め定められた方向に感磁軸を有し、当該の予め定められた方向に入力する磁場を検出する。磁気検知部110は、1軸方向の磁場のみを検出して抵抗値を変化させる素子でよい。磁気検知部110は、巨大磁気抵抗(GMR)素子、トンネル磁気抵抗(TMR)素子、および異方性磁気抵抗(AMR)素子等のいずれであってもよい。
【0012】
磁気検知部110は、感磁軸の正の方向を+X方向とした場合、+X方向の磁場が入力すると抵抗値が増加し、−X方向の磁場が入力すると抵抗値が減少するように形成されてよい。また、磁気検知部110は、感磁軸の正の方向を−X方向としたとき、+X方向の磁場が入力すると抵抗値が減少し、−X方向の磁場が入力すると抵抗値が増加するように形成されてもよい。
【0013】
したがって、磁気検知部110の抵抗値の変化を観測することにより、当該磁気検知部110に入力する一方向の磁場の大きさを検出することができる。例えば、磁気検知部110に一定電圧または一定電流を供給し、磁気検知部110による電圧降下の変動を観測することにより、抵抗値の変化を観測することができるので、対応する入力磁場の大きさを検出することができる。
【0014】
図1の例において、第1軸から第3軸方向は、それぞれ互いに直交している例を示すが、これに代えて、互いの方向が異なっていればよい。つまり、それぞれが略直交となっていてもよいし、互いに屈曲していてもよい。
【0015】
また、磁気検知部110は、平板状であることが好ましい。磁気検知部110のそれぞれの形状は、Z方向から見た平面視で、矩形がより好ましい形状であるが、四角形、正方形、平行四辺形、台形、三角形、多角形、円形、及び楕円形等のいずれであってもよい。また、磁気検知部110は、小分けに分割区分された複数の磁気検知部を有してよい。この場合、分割区分された複数の磁気検知部は、1かたまりの磁気検知部として機能するように電気的に接続されてよい。即ち、磁気検知部110は、単一の磁気検知部に限定されず、2以上の磁気検知部を接続して形成されてもよい。
【0016】
図2は、本実施形態に係る磁気センサ10の第1構成例を示す。
図2は、第1構成の磁気センサ10のZ方向から見た平面視、即ち、第1平面の一例を示す。
図2は、例えば、基板等の一方の面に磁気センサ10が形成された場合の上面図を示す。
図2は、第1平面における磁気収束部100の重心109を原点として、第1軸に沿った方向のうち一方の方向(一例として+X方向)を第1軸の正の方向、他方の方向(一例として−X方向)を第1軸の負の方向とし、第2軸に沿った方向のうち一方の方向(一例として+Y方向)を第2軸の正の方向、他方の方向(一例として−Y方向)を第2軸の負の方向とする。
【0017】
また、第1軸の正の方向で、かつ、第2軸の正の方向の領域を第1象限とする。また、第1軸の負の方向で、かつ、第2軸の正の方向の領域を第2象限とする。また、第1軸の負の方向で、かつ、第2軸の負の方向の領域を第3象限とする。また、第1軸の正の方向で、かつ、第2軸の負の方向の領域を第4象限とする。
【0018】
磁気収束部100は、第1軸方向および第2軸方向において少なくとも1つの辺をそれぞれ有する。
図2は、磁気収束部100が当該平面視において正方形の形状である例を示す。即ち、磁気収束部100は、第1軸方向において平行な2つの辺を有し、また、第2軸方向において平行な2つの辺を有する。なお、磁気収束部100は、正方形に限定されることはなく、四角形、平行四辺形、多角形、および台形のいずれであってもよい。
【0019】
磁気センサ10は、このような磁気収束部100の周囲に、
図1で説明した磁気検知部110を複数備える。磁気センサ10は、例えば、第1位置101、第2位置102、第3位置103、第4位置104、第5位置105、第6位置106、第7位置107、および第8位置108に、磁気検知部110を配置する。第1構成の磁気センサ10は、第1位置101および第5位置105に、磁気検知部110を備える例を示す。
【0020】
本実施形態において、各位置を点線の四角形で示すが、当該四角形の形状は位置の指標を示すものであり、磁気検知部110が当該四角形の形状で形成されることを限定するものではない。即ち、磁気検知部110は、当該四角形の一部または全部を含んで形成されてよく、当該四角形の外部の領域を含んで形成されてもよい。なお、本実施形態において、特定の磁気検知部110に対しては、第n磁気検知部とする。例えば、
図2において、第1位置101の磁気検知部110を第1磁気検知部111とし、第5位置105の磁気検知部110を第2磁気検知部124とした。
【0021】
第1磁気検知部111は、第1平面と平行な第1軸に沿った方向の感磁軸を有し、磁気収束部100によって収束された磁場における第1軸方向の成分を検出する。第1磁気検知部111は、+X方向または−X方向に感磁軸を有し、入力する磁場の+X方向および−X方向の成分を検出する。ここで、第1磁気検知部111は、
図2の矢印で示すように、感磁軸の正の方向を+X方向とする例を説明する。
【0022】
第1磁気検知部111は、磁気収束部100の第2軸方向の辺に沿って配置される。第1磁気検知部111は、例えば、第1位置101、第2位置102、第3位置103、および第4位置104のうち1または複数個所に配置される。
図2は、第1磁気検知部111が磁気収束部100の+X方向側の辺に沿った第1位置101に配置される例を示す。第1磁気検知部111は、第1平面と平行な平面視において、磁気収束部100と隣接して配置されてよく、これに代えて、磁気収束部100と離間して配置されてもよい。また、第1磁気検知部111は、一部が磁気収束部100と重なってもよい。
【0023】
第1磁気検知部111は、第2軸方向に延伸し、第2軸方向に予め定められた長さを有する。−X方向から+X方向に向かう磁場Bxは、磁気収束部100に収束されて曲げられるので、当該磁気収束部100の内部および周辺において、+Y方向および−Y方向の成分を発生させる。なお、磁気収束部100は、磁場Bxを完全に第2軸方向に曲げることはなく、+X方向の磁場成分を残すので、第1磁気検知部111は、当該+X方向の磁場成分を検出できる。即ち、磁気収束部100の周囲に配置された磁気検知部110は、第1軸方向に感磁軸を有することで、磁気センサ10に入力する磁場Bxを検出することができる。
【0024】
また、
図2に示すように、−Y方向から+Y方向に向かう磁場Byは、磁気収束部100に収束されて向きを変えるので、+X方向および−X方向の成分を発生させる。磁場Byは、例えば、第4象限において磁気収束部100の重心109の方向に曲げられ、−X方向の成分を発生させる。この場合、磁場Byは、第1象限において磁気収束部100の重心109から遠ざかるように曲げられ、+X方向の成分を発生させる。即ち、磁気収束部100の周囲に配置された磁気検知部110は、第1軸方向に感磁軸を有しても、磁気センサ10に入力する磁場Byを検出することができる。
【0025】
ここで、第1位置101に配置される第1磁気検知部111は、全部が第1象限に配置されることにより、磁場Byが曲げられて発生する+X方向の成分を、効率よく検出することができる。また、第1磁気検知部111は、一部が第4象限に配置されると、−X方向の磁場成分が入力して、入力した当該−X方向の磁場成分と同量の+X方向の磁場成分を相殺する。しかし、第1磁気検知部111の重心が第1象限に含まれるように配置されることにより、相殺した残りの+X方向の成分を検出することができる。
【0026】
したがって、第1磁気検知部111は、一部が第4象限に配置されてもよいが、重心を含む大部分または全部が第1象限に配置されることが望ましい。即ち、第1磁気検知部111は、第1平面と平行な平面視において、当該第1磁気検知部111の重心を通過し、第1軸と平行な直線上には、磁気収束部100の重心109から離れた部分が位置するように配置される。
【0027】
以上のように、第1磁気検知部111は、磁気センサ10に入力する磁場Bxおよび磁場Byを検出できる。なお、+X方向から−X方向に向かう磁場−Bxは、磁気収束部100によって、磁場Bxの軌跡とは反対向きに曲げられる。また、+Y方向から−Y方向に向かう磁場−Byも、磁気収束部100によって、磁場Byの軌跡とは反対向きに曲げられる。したがって、上記の説明と同様に、第1磁気検知部111は、磁気センサ10に入力する磁場−Bxおよび磁場−Byを検出できる。即ち、第1磁気検知部111は、磁気センサ10に入力する第1平面と平行な磁場を検出できる。
【0028】
第2磁気検知部124は、第1平面と平行で、かつ、第1軸方向とは平行でない第2軸に沿った方向の感磁軸を有し、磁気収束部100によって収束された磁場における、第2軸方向の成分を検出する。ここで、第2軸方向は、第1軸方向と平行ではない方向である。一例として、第1軸方向および第2軸方向は、第1平面において直交する。第2磁気検知部124は、+Y方向または−Y方向に感磁軸を有し、入力する磁場の+Y方向および−Y方向の成分を検出する。ここで、第2磁気検知部124は、
図2の矢印で示すように、感磁軸の正の方向を+Y方向とする例を説明する。
【0029】
第2磁気検知部124は、磁気収束部100の第1軸方向の辺に沿って配置される。第2磁気検知部124は、例えば、第5位置105、第6位置106、第7位置107、および第8位置108のうち1または複数個所に配置される。
図2は、第2磁気検知部124が磁気収束部100の−Y方向側の辺に沿った第5位置105に配置される例を示す。第2磁気検知部124は、第1平面と平行な平面視において、磁気収束部100と隣接して配置されてよく、これに代えて、磁気収束部100と離間して配置されてもよい。また、第2磁気検知部124は、一部が磁気収束部100と重なってもよい。
【0030】
第2磁気検知部124は、第1軸方向に延伸し、第1軸方向に予め定められた長さを有する。−Y方向から+Y方向に向かう磁場Byは、磁気収束部100に収束されて向きを変えるが、+Y方向の成分の磁場成分を残すので、第2磁気検知部124は、当該+Y方向の磁場成分を検出できる。即ち、磁気収束部100の周囲に配置された磁気検知部110は、第2軸方向に感磁軸を有することで、磁気センサ10に入力する磁場Byを検出することができる。
【0031】
また、−X方向から+X方向に向かう磁場Bxは、磁気収束部100に収束されて曲げられるので、当該磁気収束部100の内部および周辺において、+Y方向および−Y方向の成分を発生させる。磁場Bxは、例えば、第3象限において磁気収束部100の重心109の方向に曲げられ、+Y方向の成分を発生させる。この場合、磁場Bxは、第4象限において磁気収束部100の重心109から遠ざかるように曲げられ、−Y方向の成分を発生させる。即ち、磁気収束部100の周囲に配置された磁気検知部110は、第2軸方向に感磁軸を有しても、磁気センサ10に入力する磁場Bxを検出することができる。
【0032】
ここで、第5位置105に配置される第2磁気検知部124は、全部が第4象限に配置されることにより、磁場Bxが曲げられて発生する−Y方向の成分を、効率よく検出することができる。また、第2磁気検知部124は、一部が第3象限に配置されると、+Y方向の磁場成分が入力して、入力した当該+Y方向の磁場成分と同量の−Y方向の磁場成分を相殺する。しかし、第2磁気検知部124の重心が第4象限に含まれるように配置されることにより、相殺した残りの−Y方向の成分を検出することができる。
【0033】
したがって、第2磁気検知部124は、一部が第3象限に配置されてもよいが、重心を含む大部分または全部が第4象限に配置されることが望ましい。即ち、第2磁気検知部124は、第1平面と平行な平面視において、当該第2磁気検知部124の重心を通過し、第2軸と平行な直線上には、磁気収束部100の重心109から離れた部分が位置するように配置される。
【0034】
以上のように、第2磁気検知部124は、磁気センサ10に入力する磁場Bxおよび磁場Byを検出できる。また、第2磁気検知部124は、第1磁気検知部111と同様に、磁気センサ10に入力する磁場−Bxおよび磁場−Byを検出できる。即ち、第2磁気検知部124は、磁気センサ10に入力する第1平面と平行な磁場を検出できる。
【0035】
図3は、本実施形態に係る第1構成例の磁気センサ10の透視図の一例を示す。
図3は、第1構成の磁気センサ10のY方向から見た透視図の一例を示す。
図3は、基板20の基板表面に形成された磁気センサ10の一例を示す。ここで、基板表面は、XY平面に略平行な面として形成される。
【0036】
基板20は、シリコン基板、化合物半導体基板、およびセラミック基板等のいずれであってもよい。また、基板20は、IC等の電子回路を搭載した基板であってもよい。基板20の基板表面には、絶縁層30等が形成されてよい。
【0037】
絶縁層30は、複数の層状に形成されてよい。即ち、絶縁層30が形成される過程において、XY平面に略平行な複数の面が形成されてよい。磁気センサ10の少なくとも一部は、このように形成された基板表面および絶縁層30の内部に形成されてよい。例えば、磁気センサ10の磁気検知部110は、基板表面および絶縁層30の内部に形成される。ここで、基板表面を第1面41、絶縁層30の内部の平面を基板20に近い側から第2面42、第3面43、および第4面44とする。また、絶縁層30の表面を絶縁層表面32とする。
【0038】
図3は、第1面41に第1磁気検知部111が形成され、第2面42に第2磁気検知部124が形成された例を示す。即ち、第1磁気検知部111および第2磁気検知部124は、基板20上の互いに異なる平面に位置する。なお、本実施形態において、第1面41の各位置に配置される磁気検知部110を第1磁気検知部とし、第2面42の各位置に配置される磁気検知部110を第2磁気検知部とする。また、第3面43および第4面44の各位置に配置される磁気検知部110も同様とする。
【0039】
図3は、磁気収束部100が絶縁層表面32に形成された例を示す。即ち、磁気収束部100は、基板20上の第1平面に位置する。この場合、−Z方向から+Z方向に向かう磁場Bzは、磁気収束部100に収束されて磁気収束部100の重心109に向かう方向に曲げられるので、当該磁気収束部100の内部および周辺において、±X方向および±Y方向の成分を発生させる。
【0040】
例えば、磁気センサ10の第1象限に入力する磁場Bzは、−X方向および−Y方向の磁場成分を発生させるので、第1磁気検知部111は、発生した−X方向の磁場を検出する。同様に、磁気センサ10の第4象限に入力する磁場Bzは、−X方向および+Y方向の磁場成分を発生させるので、第2磁気検知部124は、発生した+Y方向の磁場を検出する。即ち、磁気収束部100の周囲に配置された磁気検知部110は、第1軸方向または第2軸方向に感磁軸を有することで、磁気センサ10に入力する磁場Bzを検出することができる。
【0041】
ここで、第1磁気検知部111および第2磁気検知部124は、延伸方向は異なっても、略同一の材料で、略同一の形状に形成されることが望ましい。これにより、第1磁気検知部111および第2磁気検知部124は、磁場に依存しない抵抗値R
0と、磁気感度δRとをそれぞれ略同一の値にすることができる。即ち、第1磁気検知部111の抵抗値R
1および第2磁気検知部124の抵抗値R
5は、次式のように示すことができる。ここで、抵抗値Rの添え字は、磁気検知部の位置に応じた数字を示す。
(数1)
R
1=R
0+δR・(+αBx+βBy−γBz)
R
5=R
0+δR・(−βBx+αBy+γBz)
【0042】
ここで、α、β、およびγは、入力磁場Bx、By、およびBzに対して、磁気収束部100が入力する磁場を収束させて、磁気検知部110の感磁軸方向の磁場成分に変換する割合(磁場変換係数)を示す。例えば、+X方向に向かう磁場Bxが、磁気収束部100によって収束されて第1磁気検知部111および第2磁気検知部124に入力する場合を考える。ここで、第1磁気検知部111においては、感磁軸の正の方向(すなわち+X方向)に磁場αBxが入力し、また第2磁気検知部124においては、感磁軸の負の方向(すなわち−Y方向)に磁場βBxが入力するとした。即ち、第1磁気検知部111は、+X方向の入力磁場Bxに応じて、δR・αBxだけ抵抗値が増加し、第2磁気検知部124は、+X方向の入力磁場Bxに応じて、δR・βBxだけ抵抗値が減少することになる。
【0043】
また、+Y方向に向かう磁場Byが、磁気収束部100によって収束されて第1磁気検知部111および第2磁気検知部124に入力する場合を考える。この場合、第1磁気検知部111においては、感磁軸の正の方向(すなわち+X方向)に磁場βByが入力し、また第2磁気検知部124においては、感磁軸の正の方向(すなわち+Y方向)に磁場αByが入力するとした。なお、第1構成例における磁気収束部100は、Z方向からの平面視において正方形であるので、磁場変換係数αおよびβは、上述の、+X方向に向かう磁場Bxが第1磁気検知部111および第2磁気検知部124に入力する場合に用いた磁場変換係数αおよびβと、同一のものとしてよい。即ち、第1磁気検知部111は、+Y方向の入力磁場Byに応じて、δR・βByだけ抵抗値が増加し、第2磁気検知部124は、+Y方向の入力磁場Byに応じて、δR・αByだけ抵抗値が増加することになる。
【0044】
同様に、+Z方向に向かう入力磁場Bzに応じて、第1磁気検知部111は、δR・γBzだけ抵抗値が減少し、第2磁気検知部124は、δR・γBzだけ抵抗値が増加することになる。このように、直交する3方向の磁場Bx、By、およびBzの入力に対して、それぞれの磁気検知部110は、磁気増幅率α、β、およびγを用いて抵抗値の変化を算出することができる。なお、抵抗値の増減は、それぞれの磁気検知部110の感磁軸の正負の向きによって決まる。
【0045】
(数1)式から、次式を算出できる。
(数2)
R
1−R
5=δR・{(α+β)・Bx+(β−α)・By−2γ・Bz}
R
1+R
5=δR・{(α−β)・Bx+(α+β)・By}+2R
0
【0046】
ここで、磁場変換係数α=βの場合、
(数2)式は次式のようになる。
(数2')
R
1−R
5=δR・(α+β)・Bx−2δR・γBz
R
1+R
5−2R
0=δR・(α+β)・By
【0047】
(数2')式より、第1構成例の磁気センサ10は、磁場に依存しない抵抗値R
0が既知であれば、直交する3方向の磁場を含む磁場B(Bx,By,Bz)が入力しても、Y方向の磁場成分Byによる抵抗値の変化を分離して検出できることがわかる。また、第1構成例の磁気センサ10は、直交する2方向の磁場を含む磁場B(Bx,By)、または、B(By,Bz)が入力しても、それぞれの磁場成分における抵抗値の変化を分離して検出できることがわかる。即ち、第1構成例の磁気センサ10は、互いに平行でない2方向の磁場を検出する磁気センサ、即ち、2軸の磁気センサとして動作できる。以上のように、磁気センサ10は、互いに平行ではない複数の感磁軸を有することにより、互いに平行でない2方向の磁場を効率よく検出することができる。
【0048】
ここで、磁場に依存しない抵抗値R
0は、磁気センサ10が第1磁気検知部111および第2磁気検知部124と比較して、磁場に対する感度を抑制した参照用磁気検知部を備えることで、検出できる。参照用磁気検知部は、抵抗値がR
0と略等しい抵抗値を有する素子でよい。また、参照用磁気検知部は、磁気センサ10に磁場B(Bx,By,Bz)が入力しても、抵抗値R
0が変化しないように配置されてよい。例えば、参照用磁気検知部は、周囲に磁気収束部が設けられ、当該磁気収束部によって外部からの磁場の入力が低減するように配置される。また、参照用磁気検知部は、磁気収束部100の重心109の直下(−Z方向)に配置されてもよい。
【0049】
なお、出荷段階等における磁場の入力がない状態の磁気検知部110の抵抗値の測定結果を保持し、当該測定結果を磁場に依存しない抵抗値R
0として用いてもよい。磁気センサ10の制御回路等は、このような測定結果を記憶して、磁場の検出結果を算出してよい。
【0050】
以上の本実施形態に係る第1構成例の磁気センサ10は、磁気収束部100の周囲の第1象限および第4象限に磁気検知部110を配置させて、2軸の磁気センサとして動作できることを説明した。なお、第1構成例の磁気センサ10において、磁気検知部110の配置が
図2に示す構成例に限定されるものではない。2つの磁気検知部110は、抵抗値の和および差によって、入力する磁場成分に応じた変化が検出できればよい。即ち、2つの磁気検知部110は、入力する磁場に応じてそれぞれ異なる抵抗値の変化となるように、磁気収束部100の周囲の第1位置101から第8位置108のいずれかに配置されてよい。
【0051】
例えば、
図2に示すように、第1磁気検知部111が第1象限の第1位置101に配置された場合、第2磁気検知部124は、第5位置105の他に、第7位置107および第8位置108に配置されてもよい。このように、第1磁気検知部111が磁気収束部100の第2軸方向の辺に沿って配置され、第2磁気検知部124が磁気収束部100の第1軸方向の辺に沿って配置されることにより、磁気センサ10は、2軸の磁気センサとして動作できる。
【0052】
なお、第1磁気検知部111および第2磁気検知部124が同一象限となった場合、例えば、第2磁気検知部124が第6位置106に配置された場合、(数1)式は次式のようになる。
(数3)
R
1=R
0+δR・(+αBx+βBy−γBz)
R
5=R
0+δR・(+βBx+αBy−γBz)
【0053】
(数3)式より、2つの磁気検知部の抵抗値の和および差を算出しても、それぞれの磁場成分における抵抗値の変化を分離して検出できなくなってしまうことがわかる。したがって、磁気センサ10は、第1磁気検知部111の重心と第2磁気検知部124の重心が、同一象限に位置しないことにより、2軸の磁気センサとして動作できる。
【0054】
図4は、本実施形態に係る磁気センサ10の第2構成例を示す。第2構成例の磁気センサ10において、
図2および
図3に示された本実施形態に係る磁気センサ10の第1構成例の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第2構成例の磁気センサ10は、第1磁気検知部111および第2磁気検知部124に加えて、第5磁気検知部135を備える。即ち、第2構成例の磁気センサ10は、合計3つの磁気検知部110を備える。
【0055】
第5磁気検知部135は、第1磁気検知部111の感磁軸と同一方向の感磁軸を有し、磁気収束部100によって収束された磁場における第1軸方向の成分を検出する。即ち、第2構成例の磁気センサ10は、第5磁気検知部135の感磁軸の正の方向を+X方向とする。第5磁気検知部135は、磁気収束部100の第2軸方向の平行な2つの辺のいずれか一方の辺に沿って配置される。第5磁気検知部135は、例えば、第1位置101、第2位置102、第3位置103、および第4位置104のうち1または複数個所に配置される。また、第1、第2、および第5磁気検知部135の重心は、同一象限には位置しないように、配置される。
【0056】
例えば、第2構成例の磁気センサ10は、Z方向からの平面視で、第1磁気検知部111および第5磁気検知部135が磁気収束部100を挟んで配置されてよい。また、第2構成例の磁気センサ10は、第1磁気検知部111および第5磁気検知部135が磁気収束部100の第2軸方向の1つの辺に並んで配置されてもよい。
【0057】
一例として、第1磁気検知部111が第1位置101に配置された場合、第5磁気検知部135は、第2位置102、第3位置103、および第4位置104のいずれかに配置される。即ち、第5磁気検知部135は、当該第5磁気検知部135の重心を通過し、第1軸と平行な直線上には、磁気収束部100の重心109から離れた部分が位置するように配置される。
【0058】
第5磁気検知部135は、第1磁気検知部111と同様に、磁気収束部100と隣接しても、離間しても、また、一部が磁気収束部100と重なってもよい。また、第5磁気検知部135は、全部が対応する1つの象限に配置されることが望ましく、また、一部が異なる象限に配置された場合でも、重心を含む大部分が当該1つの象限に配置されることが望ましい。
図4は、第5磁気検知部135が第3象限の第3位置103に配置された例を示す。
【0059】
図4のように、第5磁気検知部135が第3位置103に配置された場合、(数1)式は、次式のように、第5磁気検知部135の抵抗値R
3に対応する式が加わる。
(数4)
R
1=R
0+δR・(+αBx+βBy−γBz)
R
3=R
0+δR・(+αBx+βBy+γBz)
R
5=R
0+δR・(−βBx+αBy+γBz)
【0060】
(数4)式から、次式を算出できる。
(数5)
R
3−R
5=δR・(α+β)・Bx+δR・(β−α)・By
R
1+R
5−2R
0=δR・(α+β)・By+δR・(α−β)・Bx
R
3−R
1=2δR・γBz
【0061】
(数5)式より、第2構成例の磁気センサ10は、直交する3方向の磁場を含む磁場B(Bx,By,Bz)が入力しても、Z方向の磁場成分Bzによる抵抗値の変化を分離して検出できることがわかる。また、磁気センサ10は、磁場変換係数α=βの場合、(数5)式の第1式および第2式の右辺第2項は零となる。
【0062】
この場合、磁気センサ10は、直交する3方向の磁場を含む磁場B(Bx,By,Bz)が入力しても、それぞれの磁場成分における抵抗値の変化を分離して検出できることがわかる。即ち、第2構成例の磁気センサ10は、互いに平行でない3方向の磁場を検出する磁気センサ、すなわち3軸の磁気センサとして動作できる。なお、ここで、磁場に依存しない抵抗値R
0が既知であるとした。
【0063】
以上の本実施形態に係る第2構成例の磁気センサ10は、磁気収束部100の周囲の第1、第3および第4象限にそれぞれ1つの磁気検知部110を配置させて、3軸の磁気センサとして動作できることを説明した。なお、第2構成例の磁気センサ10において、磁気検知部110の配置はこれに限定されるものではない。
【0064】
図4に示すように、第1磁気検知部111が第1位置101に、第2磁気検知部124が第5位置105に配置された場合、第5磁気検知部135は、第3位置103の他に、第2位置102に配置されてもよい。また、第1磁気検知部111が第1位置101に、第2磁気検知部124が第7位置107に配置された場合、第5磁気検知部135は、第3位置103または第4位置104に配置されてもよい。また、第1磁気検知部111が第1位置101に、第2磁気検知部124が第8位置108に配置された場合、第5磁気検知部135は、第2位置102または第4位置104に配置されてもよい。
【0065】
以上のように、本実施形態に係る第2構成例の磁気センサ10は、互いに異なる3つの象限に配置した3つの磁気検知部110と、参照用磁気検知部と、を備えることにより、3軸の磁気センサとして動作できる。なお、3つの磁気検知部110を備える磁気センサ10の他の例について次に説明する。
【0066】
図5は、本実施形態に係る磁気センサ10の第3構成例を示す。第3構成例の磁気センサ10において、
図2および
図3に示された本実施形態に係る磁気センサ10の第1構成例の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第3構成例の磁気センサ10は、第1磁気検知部111および第2磁気検知部124に加えて、第3磁気検知部133を備える。即ち、第2構成例の磁気センサ10は、合計3つの磁気検知部110を備える。
【0067】
第3磁気検知部133は、
図4で説明した第5磁気検知部135と異なり、第1磁気検知部111の感磁軸とは反対方向の感磁軸を有し、すなわち、感磁軸の正の方向を−X方向とし、磁気収束部100によって収束された磁場における第1軸方向の成分を検出する。第3磁気検知部133は、磁気収束部100の第2軸方向の平行な2つの辺のいずれか一方の辺に沿って配置される。
【0068】
第3磁気検知部133は、例えば、第1位置101、第2位置102、第3位置103、および第4位置104のうち1または複数個所に配置される。また、第1から第3磁気検知部133の重心は、同一象限には位置しないように、配置される。また、第3磁気検知部133の重心を通過し、第1軸と平行な直線上には、磁気収束部100の重心109から離れた部分が位置する。
【0069】
第3磁気検知部133は、第1磁気検知部111と同様に、磁気収束部100と隣接しても、離間しても、また、一部が磁気収束部100と重なってもよい。また、第3磁気検知部133は、全部が対応する1つの象限に配置されることが望ましく、また、一部が異なる象限に配置された場合でも、重心を含む大部分が当該1つの象限に配置されることが望ましい。
図5は、第3磁気検知部133が第3象限の第3位置103に配置された例を示す。
【0070】
図5のように、第3磁気検知部133が第3位置103に配置された場合、(数1)式は、次式のように、第3磁気検知部133の抵抗値R
3に対応する式が加わる。
(数6)
R
1=R
0+δR・(+αBx+βBy−γBz)
R
3=R
0+δR・(−αBx−βBy−γBz)
R
5=R
0+δR・(−βBx+αBy+γBz)
【0071】
第3磁気検知部133の感磁軸は、
図4に示した第5磁気検知部135の感磁軸とは正負の向きが反対なので、(数6)式の第2式は、(数4)式の第2式の磁場に依存する項の符号が反転した式となる。(数6)式から、次式を算出できる。
(数7)
−R
3−R
5+2R
0=δR・(α+β)・Bx+δR・(β−α)・By
+R
1+R
5−2R
0=δR・(α+β)・By+δR・(α−β)・Bx
−R
3−R
1+2R
0=2δR・γBz
【0072】
(数7)式より、第3構成例の磁気センサ10は、直交する3方向の磁場を含む磁場B(Bx,By,Bz)が入力しても、Z方向の磁場成分Bzによる抵抗値の変化を分離して検出できることがわかる。また、磁気センサ10は、磁場変換係数α=βの場合、(数7)式の第1式および第2式の右辺第2項は零となる。
【0073】
この場合、磁気センサ10は、直交する3方向の磁場を含む磁場B(Bx,By,Bz)が入力しても、それぞれの磁場成分における抵抗値の変化を分離して検出できることがわかる。即ち、第3構成例の磁気センサ10は、3軸の磁気センサとして動作できる。なお、ここで、磁場に依存しない抵抗値R
0が既知であるとした。
【0074】
以上の本実施形態に係る第3構成例の磁気センサ10は、磁気収束部100の周囲の第1、第3および第4象限にそれぞれ1つの磁気検知部110を配置させて、3軸の磁気センサとして動作できることを説明した。なお、第3構成例の磁気センサ10において、磁気検知部110の配置はこれに限定されるものではない。
【0075】
例えば、
図5に示すように、第1磁気検知部111が第1位置101に、第2磁気検知部124が第5位置105に配置された場合、第3磁気検知部133は、第3位置103の他に、第2位置102に配置されてもよい。また、第1磁気検知部111が第1位置101に、第2磁気検知部124が第7位置107に配置された場合、第3磁気検知部133は、第3位置103または第4位置104に配置されてもよい。また、第1磁気検知部111が第1位置101に、第2磁気検知部124が第8位置108に配置された場合、第3磁気検知部133は、第2位置102または第4位置104に配置されてもよい。
【0076】
以上のように、本実施形態に係る第3構成例の磁気センサ10は、互いに異なる3つの象限に配置した3つの磁気検知部110と、参照用磁気検知部と、を備えることにより、3軸の磁気センサとして動作できる。
【0077】
図6は、本実施形態に係る磁気センサ10の第4構成例を示す。第4構成例の磁気センサ10において、
図2、
図3、および
図5に示された本実施形態に係る磁気センサ10の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第4構成例の磁気センサ10は、第1から第3磁気検知部133に加えて、第4磁気検知部142を備える。即ち、第4構成例の磁気センサ10は、合計4つの磁気検知部110を備える。
【0078】
第4磁気検知部142は、第2磁気検知部124の感磁軸とは反対方向の感磁軸を有し、すなわち、感磁軸の正の方向を−Y方向とし、磁気収束部100によって収束された磁場における第2軸方向の成分を検出する。第4磁気検知部142は、第2磁気検知部124が配置される磁気収束部100の第1軸方向の一方の辺とは異なる第1軸方向の他方の辺に沿って配置される。
【0079】
第4磁気検知部142は、例えば、第5位置105、第6位置106、第7位置107、および第8位置108のうち1または複数個所に配置される。また、第1磁気検知部111から第4磁気検知部142の重心は、同一象限には位置しないように、配置される。また、第4磁気検知部142の重心を通過し、第1軸と平行な直線上には、磁気収束部100の重心109から離れた部分が位置する。
【0080】
第4磁気検知部142は、第2磁気検知部124と同様に、磁気収束部100と隣接しても、離間しても、また、一部が磁気収束部100と重なってもよい。また、第4磁気検知部142は、全部が対応する1つの象限に配置されることが望ましく、また、一部が異なる象限に配置された場合でも、重心を含む大部分が当該1つの象限に配置されることが望ましい。
図6は、第4磁気検知部142が第2象限の第7位置107に配置された例を示す。
【0081】
図6のように、第4磁気検知部142が第7位置107に配置された場合、(数6)式は、次式のように、第4磁気検知部142の抵抗値R
7に対応する式が加わる。
(数8)
R
1=R
0+δR・(+αBx+βBy−γBz)
R
3=R
0+δR・(−αBx−βBy−γBz)
R
5=R
0+δR・(−βBx+αBy+γBz)
R
7=R
0+δR・(+βBx−αBy+γBz)
【0082】
(数8)式から、次式を算出できる。
(数9)
+R
1−R
3−R
5+R
7=2δR・(α+β)・Bx+2δR・(β−α)・By
+R
1−R
3+R
5−R
7=2δR・(α+β)・By+2δR・(α−β)・Bx
−R
1−R
3+R
5+R
7=4δR・γBz
【0083】
(数9)式より、第4構成例の磁気センサ10は、直交する3方向の磁場を含む磁場B(Bx,By,Bz)が入力しても、Z方向の磁場成分Bzによる抵抗値の変化を分離して検出できることがわかる。また、磁気センサ10は、磁場変換係数α=βの場合、(数9)式の第1式および第2式の右辺第2項は零となる。
【0084】
この場合、磁気センサ10は、直交する3方向の磁場を含む磁場B(Bx,By,Bz)が入力しても、それぞれの磁場成分における抵抗値の変化を分離して検出できることがわかる。即ち、第3構成例の磁気センサ10は、3軸の磁気センサとして動作できる。なお、(数9)式には、磁場に依存しない抵抗値R
0の項が含まれないので、
図6に示す磁気センサ10は、参照用磁気検知部を備えなくても3軸の磁気センサとして動作できる。
【0085】
また、(数9)式に示す通り、磁場BxおよびByの係数は、いずれも2δR・(α+β)となることから、第4構成例の磁気センサ10は、直交する2方向の磁場B(Bx,By)を略同一の感度で検出することができる。
【0086】
以上の本実施形態に係る第4構成例の磁気センサ10は、磁気収束部100の周囲の第1から第4象限にそれぞれ1つの磁気検知部110を配置させて、3軸の磁気センサとして動作できることを説明した。なお、第4構成例の磁気センサ10において、磁気検知部110の配置はこれに限定されるものではない。
【0087】
図6に示すように、第1磁気検知部111が第1位置101に、第3磁気検知部133が第3位置103に配置された場合、第2磁気検知部124は、第5位置105に代えて、第7位置107に、第4磁気検知部142は、第7位置107に代えて、第5位置105に、配置されてもよい。なお、このような構成の磁気センサ10は、(数9)式に対応する式を算出すると、磁場に依存しない抵抗値R
0の項が含まれることになるので、参照用磁気検知部を更に備えてよい。以上のように、本実施形態に係る第4構成例の磁気センサ10は、互いに異なる4つの象限に配置した4つの磁気検知部110により、3軸の磁気センサとして動作できる。
【0088】
以上の本実施形態に係る磁気センサ10は、基板20上に1つのセンサ素子が形成された例を説明したが、基板20上に複数のセンサ素子が形成されてもよい。磁気センサ10は、より多くのセンサ素子が形成されることにより、より大きな検出信号を出力することができる。また、磁気センサ10は、異なる配置のセンサ素子が複数形成されてもよい。異なる配置のセンサ素子が組み合わされて形成された磁気センサ10について、次に説明する。
【0089】
図7は、本実施形態に係る磁気センサ10の第5構成例を示す。第5構成例の磁気センサ10は、第4構成例の磁気センサを複数備える磁気センサ10である。第5構成例の磁気センサ10は、一例として、第1センサ素子12および第2センサ素子14を備える。
図7は、線分A−A'よりも−X側(即ち、左側)に、
図6で示した第4構成例の磁気センサ10を第1センサ素子12として配置した例を示す。第1センサ素子12については
図6で説明したので、ここでは説明を省略する。
【0090】
また、
図7は、線分A−A'よりも+X側(即ち、右側)に、
図6とは異なる配置の第4構成例の磁気センサ10を第2センサ素子14として配置した例を示す。第2センサ素子14は、第1センサ素子12に対応して、磁気収束部200と、複数の磁気検知部110とを有する。なお、第1センサ素子12の第1位置101から第8位置108の磁気検知部110に対応して、第2センサ素子14は、重心209を中心とした磁気収束部200の周囲に、第1位置201、第2位置202、第3位置203、第4位置204、第5位置205、第6位置206、第7位置207、および第8位置208に、磁気検知部110が配置される。
【0091】
第5構成例の第2センサ素子14は、第1センサ素子12の磁気検知部110の位置に対応する位置に、磁気検知部110が位置しない。例えば、第1センサ素子12の、第1位置101、第3位置103、第5位置105、および第7位置107に、それぞれ磁気検知部110が位置することに応じて、第2センサ素子14の、第2位置202、第4位置204、第6位置206、および第8位置208に、磁気検知部110がそれぞれ位置する。
【0092】
また、第2センサ素子14は、第1センサ素子12が磁気検知部110を位置する辺に対応する辺には、感磁軸の方向を反対にした磁気検知部110が位置する。例えば、第1センサ素子12の第3位置103に、感磁軸の正の方向を−X方向とした第3磁気検知部133が位置することに対応して、第2センサ素子14の第2位置202に、感磁軸の正の方向を+X方向とした第1磁気検知部112が位置する。同様に、第1センサ素子12の、第7位置107に感磁軸の正の方向を−Y方向とした第4磁気検知部142が位置することに対応して、第2センサ素子14の第6位置206に、感磁軸の正の方向を+Y方向とした第2磁気検知部121が位置する。
【0093】
また、第1センサ素子12の第1位置101に、感磁軸の正の方向を+X方向とした第1磁気検知部111が位置することに対応して、第2センサ素子14の第4位置204に、感磁軸の正の方向を−X方向とした第3磁気検知部134が位置する。また、第1センサ素子12の第5位置105に、感磁軸の正の方向を+Y方向とした第2磁気検知部124が位置することに対応して、第2センサ素子14の第8位置208に、感磁軸の正の方向を−Y方向とした第4磁気検知部143が位置する。
【0094】
以上のように磁気センサ10が配置された場合、(数8)式は、次式のように、第2センサ素子14の第1磁気検知部112の抵抗値R
2、第2磁気検知部121の抵抗値R
6、第3磁気検知部134の抵抗値R
4、および第4磁気検知部143の抵抗値R
8、に対応する式が加わる。
(数10)
R
1=R
0+δR・(+αBx+βBy−γBz)
R
2=R
0+δR・(+αBx−βBy+γBz)
R
3=R
0+δR・(−αBx−βBy−γBz)
R
4=R
0+δR・(−αBx+βBy+γBz)
R
5=R
0+δR・(−βBx+αBy+γBz)
R
6=R
0+δR・(+βBx+αBy−γBz)
R
7=R
0+δR・(+βBx−αBy+γBz)
R
8=R
0+δR・(−βBx−αBy−γBz)
【0095】
(数10)式から、次式を算出できる。
(数11)
+(+R
1+R
2)−(+R
3+R
4)+(−R
5+R
6)−(−R
7+R
8)
=4δR・(α+β)・Bx
−(−R
1+R
2)+(−R
3+R
4)+(+R
5+R
6)−(+R
7+R
8)
=4δR・(α+β)・By
−(+R
1−R
2)+(−R
3+R
4)+(+R
5−R
6)−(−R
7+R
8)
=8δR・γBz
【0096】
(数11)式より、第5構成例の磁気センサ10は、直交する3方向の磁場を含む磁場B(Bx,By,Bz)が入力しても、それぞれの磁場成分における抵抗値の変化を分離して検出できることがわかる。即ち、第5構成例の磁気センサ10は、3軸の磁気センサとして動作できる。
【0097】
また、(数11)式には、磁場に依存しない抵抗値R
0の項が含まれないので、
図7に示す磁気センサ10は、参照用磁気検知部を備えなくても3軸の磁気センサとして動作できる。また、(数11)式に示す通り、磁場BxおよびByの係数は、いずれも4δR・(α+β)となることから、磁気センサ10は、直交する2方向の磁場B(Bx,By)を略同一の感度で検出することができる。また、磁気感度の絶対値|4δR・(α+β)|は、
図6で説明した第4構成例の磁気センサ10の磁気感度の絶対値|2δR・(α+β)|の略2倍とすることができる。
【0098】
以上の本実施形態に係る第5構成例の磁気センサ10は、互いに異なる磁気検知部110の配置となる複数の第4構成例の磁気センサ10を備えることを説明した。なお、第5構成例の磁気センサ10において、一方のセンサ素子の磁気検知部110の配置位置に対応する位置には、他方のセンサ素子は磁気検知部110を配置しない。また、一方のセンサ素子が磁気検知部110を配置しない位置に対応する位置に、他方のセンサ素子は、磁気検知部110を配置する。したがって、第5構成例の磁気センサ10が有する第1センサ素子12および第2センサ素子14は、1つのセンサ素子として一体に形成することができる。このような磁気センサ10について、次に説明する。
【0099】
図8は、本実施形態に係る磁気センサ10の第6構成例を示す。第6構成例の磁気センサ10は、第5構成例の磁気センサ10が有する第1センサ素子12および第2センサ素子14を一体にした磁気センサ10である。磁気センサ10は、例えば、第1磁気検知部111、第1磁気検知部112、第2磁気検知部121、第2磁気検知部124、第3磁気検知部133、第3磁気検知部134、第4磁気検知部142、および第4磁気検知部143を備える。
【0100】
即ち、第6構成例の磁気センサ10は、第1から第4磁気検知部をそれぞれ2つ有する。また、磁気センサ10は、第1から第4磁気検知部の8つの磁気検知部110のうち、同一の磁気検知部110は同一の辺には配置されない。ここで、同一の磁気検知部110は、感磁軸が略同一の方向である磁気検知部110とする。一例として、感磁軸が略同一方向の第1磁気検知部111および第1磁気検知部112は、同一の辺には配置されないが、感磁軸が異なる第1磁気検知部111および第3磁気検知部134は、同一の辺に配置されてよい。
【0101】
なお、感磁軸が略同一となる磁気検知部110は、略同一の製造プロセスで形成されることが望ましく、これにより、効率的に磁気センサ10を製造することができる。一方、感磁軸が異なる磁気検知部110は、異なる製造プロセスで形成されてよい。したがって、第1から第4磁気検知部は、磁気収束部100が配置される第1平面と平行で、第1平面とは異なる平面にそれぞれ位置する。そして、第1から第4磁気検知部は、基板20上の互いに異なる平面に位置する。
【0102】
本実施形態の磁気センサ10は、第1磁気検知部111および第1磁気検知部112が第1面41に位置し、第2磁気検知部121および第2磁気検知部124が第2面42に位置し、第3磁気検知部133および第3磁気検知部134が第3面43に位置し、第4磁気検知部142および第4磁気検知部143が第4面44に位置する例を示す。これにより、磁気センサ10は、基板20上の異なる面に、感磁軸の方向毎に磁気検知部110を順次形成して製造することができる。また、複数のセンサ素子を一体にして、磁気センサ10の大きさを小型化することができる。
【0103】
第6構成例の磁気センサ10は、第5構成例の第1センサ素子12および第2センサ素子14を一体化したものであるから、複数の磁気検知部110の抵抗値の値等は、(数10)および(数11)式と略同一となる。即ち、第6構成例の磁気センサ10は、第5構成例の磁気センサ10と同様に、3軸の磁気センサとして動作できる。なお、第6構成例の磁気センサ10が、基板20上に更に複数形成されてもよい。このような磁気センサ10について、次に説明する。
【0104】
図9は、本実施形態に係る磁気センサ10の第7構成例を示す。第7構成例の磁気センサ10は、第6構成例の磁気センサを少なくとも2つ備える磁気センサ10である。第7構成例の磁気センサ10は、一例として、第3センサ素子16および第4センサ素子18を備える。
図9は、線分A−A'よりも−X側(即ち、左側)に、
図8で示した第6構成例の磁気センサ10を第3センサ素子16として配置した例を示す。第3センサ素子16については
図7および
図8で説明したので、ここでは説明を省略する。
【0105】
また、
図9は、線分A−A'よりも+X側(即ち、右側)に、
図8とは異なる配置の第5構成例の磁気センサ10を第4センサ素子18として配置した例を示す。第4センサ素子18は、第3センサ素子16に対応して、複数の磁気検知部110が配置される。即ち、第4センサ素子18は、第3センサ素子16の磁気検知部110の位置に対応する位置に、感磁軸が異なる磁気検知部110が位置する。
【0106】
例えば、第3センサ素子16の、感磁軸の正の方向を−X方向とした第3磁気検知部133の位置に対応する第4センサ素子18の位置に、感磁軸の正の方向を+X方向とした第1磁気検知部113が位置する。同様に、第3センサ素子16の第3磁気検知部134に対応する第4センサ素子18の位置に、第1磁気検知部114が位置する。また、例えば、第3センサ素子16の、感磁軸の正の方向を−Y方向とした第4磁気検知部142の位置に対応する第4センサ素子18の位置に、感磁軸の正の方向を+Y方向とした第2磁気検知部122が位置する。同様に、第3センサ素子16の第4磁気検知部143に対応する第4センサ素子18の位置に、第2磁気検知部123が位置する。
【0107】
また、例えば、第3センサ素子16の、感磁軸の正の方向を+X方向とした第1磁気検知部111の位置に対応する第4センサ素子18の位置に、感磁軸の正の方向を−X方向とした第3磁気検知部131が位置する。同様に、第3センサ素子16の第1磁気検知部112に対応する第4センサ素子18の位置に、第3磁気検知部132が位置する。また、例えば、第3センサ素子16の、感磁軸の正の方向を+Y方向とした第2磁気検知部121の位置に対応する第4センサ素子18の位置に、感磁軸の正の方向を−Y方向とした第4磁気検知部141が位置する。同様に、第3センサ素子16の第2磁気検知部124に対応する第4センサ素子18の位置に、第4磁気検知部144が位置する。
【0108】
このように、第7構成例の磁気センサ10は、磁気収束部を2つ、第1から第4磁気検知部をそれぞれ4つ有する。そして、第3センサ素子16の第1から第4磁気検知部、および、第4センサ素子18の第1から第4磁気検知部の合計16の磁気検知部のうち、対応する磁気検知部の重心が、対応する同一の象限には位置しないように、配置される。
【0109】
即ち、例えば、第3センサ素子16および第4センサ素子18の第1象限には、第1から第4磁気検知部の合計4つの磁気検知部のいずれかが配置される。同様に、第3センサ素子16および第4センサ素子18の第2から第4象限のそれぞれも、同一方向の感磁軸を有する磁気検知部は位置せず、第1から第4磁気検知部の合計4つの磁気検知部のいずれかが配置される。
【0110】
以上のように磁気センサ10が配置された場合、(数10)式は、次式のように示される。なお、第3センサ素子16の第1から第4磁気検知部の抵抗値R
1からR
8は、(数10)式と略同一の式となる。
(数12)
R
1=R
0+δR・(+αBx+βBy−γBz)
R
2=R
0+δR・(+αBx−βBy+γBz)
R
3=R
0+δR・(−αBx−βBy−γBz)
R
4=R
0+δR・(−αBx+βBy+γBz)
R
5=R
0+δR・(−βBx+αBy+γBz)
R
6=R
0+δR・(+βBx+αBy−γBz)
R
7=R
0+δR・(+βBx−αBy+γBz)
R
8=R
0+δR・(−βBx−αBy−γBz)
R
1'=R
0+δR・(−αBx−βBy+γBz)
R
2'=R
0+δR・(−αBx+βBy−γBz)
R
3'=R
0+δR・(+αBx+βBy+γBz)
R
4'=R
0+δR・(+αBx−βBy−γBz)
R
5'=R
0+δR・(+βBx−αBy−γBz)
R
6'=R
0+δR・(−βBx−αBy+γBz)
R
7'=R
0+δR・(−βBx+αBy−γBz)
R
8'=R
0+δR・(+βBx+αBy+γBz)
【0111】
なお、第4センサ素子18において、第1磁気検知部113および第1磁気検知部114の抵抗値を、それぞれR
3'およびR
4'とした。また、第2磁気検知部122および第2磁気検知部123の抵抗値を、それぞれR
7'およびR
8'とした。また、第3磁気検知部131および第3磁気検知部132の抵抗値を、それぞれR
1'およびR
2'とした。また、第4磁気検知部141および第4磁気検知部144の抵抗値を、それぞれR
5'およびR
6'とした。
【0112】
(数12)式から、次式を算出できる。
(数13)
+(+R
1+R
2+R
3'+R
4')−(+R
1'+R
2'+R
3+R
4)
+(−R
5+R
6−R
7'+R
8')−(−R
5'+R
6'−R
7+R
8)
=8δR・(α+β)・Bx
−(−R
1+R
2−R
3'+R
4')+(−R
1'+R
2'−R
3+R
4)
+(+R
5+R
6+R
7'+R
8')−(+R
5'+R
6'+R
7+R
8)
=8δR・(α+β)・By
−(+R
1−R
2−R
3'+R
4')+(+R
1'−R
2'−R
3+R
4)
+(+R
5−R
6−R
7'+R
8')−(+R
5'−R
6'−R
7+R
8)
=16δR・γBz
【0113】
(数13)式より、第6構成例の磁気センサ10は、直交する3方向の磁場を含む磁場B(Bx,By,Bz)が入力しても、それぞれの磁場成分における抵抗値の変化を分離して検出できることがわかる。即ち、第6構成例の磁気センサ10は、3軸の磁気センサとして動作できる。
【0114】
また、(数13)式には、磁場に依存しない抵抗値R
0の項が含まれないので、
図9に示す磁気センサ10は、参照用磁気検知部を備えなくても3軸の磁気センサとして動作できる。また、(数13)式に示す通り、磁場BxおよびByの係数は、いずれも8δR・(α+β)となることから、磁気センサ10は、直交する2方向の磁場B(Bx,By)を略同一の感度で検出することができる。また、磁気感度の絶対値|8δR・(α+β)|は、
図6で説明した第4構成例の磁気センサ10の磁気感度の絶対値|2δR・(α+β)|の略4倍とすることができる。
【0115】
以上の本実施形態に係る第7構成例の磁気センサ10は、互いに異なる磁気検知部110の配置となる複数の第6構成例の磁気センサ10を備える例を説明した。ここで、複数の磁気検知部110の配置は、
図9に示す配置に限定されるものではない。第7構成例の磁気センサ10の別の構成について、次に説明する。
【0116】
図10は、本実施形態に係る第7構成例の磁気センサ10の変形例を示す。本変形例の磁気センサ10は、第6構成例の磁気センサを少なくとも2つ備え、磁気検知部110の配置が
図9とは異なる磁気センサ10である。
図10は、線分A−A'よりも−X側(即ち、左側)の第3センサ素子16が、第1磁気検知部111、第1磁気検知部112、第1磁気検知部113、第1磁気検知部114、第2磁気検知部121、第2磁気検知部122、第2磁気検知部123、および第2磁気検知部124を有する例を示す。
【0117】
即ち、本変形例の第3センサ素子16は、第1磁気検知部を4つ有し、磁気収束部100の第1軸方向に平行な2つの辺のそれぞれに沿って、1つの辺に対して当該第1磁気検知部が2つずつ設けられる。また、第3センサ素子16は、第2磁気検知部を4つ有し、磁気収束部100の第2軸方向に平行な2つの辺のそれぞれに沿って、1つの辺に対して当該第2磁気検知部が2つずつ設けられる。また、第1磁気検知部および第2磁気検知部の重心のそれぞれは、互いに同一象限には位置しない。即ち、第3センサ素子16の第1から第4象限は、それぞれ第1磁気検知部および第2磁気検知部が1つずつ設けられる。
【0118】
また、
図10は、線分A−A'よりも+X側(即ち、右側)の第4センサ素子18が、第3磁気検知部131、第3磁気検知部132、第3磁気検知部133、第3磁気検知部134、第4磁気検知部141、第4磁気検知部142、第4磁気検知部143、および第4磁気検知部144を有する例を示す。
【0119】
即ち、本変形例の第4センサ素子18は、第3磁気検知部を4つ有し、磁気収束部100の第1軸方向に平行な2つの辺のそれぞれに沿って、1つの辺に対して当該第3磁気検知部が2つずつ設けられる。また、第4センサ素子18は、第4磁気検知部を4つ有し、磁気収束部100の第2軸方向に平行な2つの辺のそれぞれに沿って、1つの辺に対して当該第4磁気検知部が2つずつ設けられる。また、第3磁気検知部および第4磁気検知部の重心のそれぞれは、互いに同一象限には位置しない。即ち、第4センサ素子18の第1から第4象限は、それぞれ第3磁気検知部および第4磁気検知部が1つずつ設けられる。
【0120】
また、第4センサ素子18は、別の言い方をすると、第3センサ素子16を回転させた配置にしたセンサ素子である。即ち、第3センサ素子16において、第1磁気検知部および第2磁気検知部を、磁気収束部100の重心を中心として180度回転させた位置にした配置が、第4センサ素子18の第3磁気検知部および第4磁気検知部の配置となる。以上のように複数の磁気検知部110が配置された磁気センサ10は、
図9に示す磁気センサ10と同様に、直交する3方向の磁場を含む磁場B(Bx,By,Bz)が入力しても、それぞれの磁場成分における抵抗値の変化を分離して検出できる。
【0121】
以上の、第7構成例の磁気センサ10は、一方のセンサ素子の磁気検知部110の配置位置に対応する他方のセンサ素子の配置位置には、異なる感磁軸の磁気検知部110が設けられる。即ち、2つのセンサ素子の対応する位置に配置される2つの磁気検知部110は、互いに異なる層に形成することができる。したがって、第7構成例の磁気センサ10が有する第3センサ素子16および第4センサ素子18は、1つのセンサ素子として一体に形成することができる。このような磁気センサ10について、次に説明する。
【0122】
図11は、本実施形態に係る磁気センサ10の第8構成例を示す。第8構成例の磁気センサ10は、第7構成例の磁気センサ10が有する第3センサ素子16および第4センサ素子18を一体にした磁気センサ10である。磁気センサ10は、例えば、第1磁気検知部111、第1磁気検知部112、第1磁気検知部113、第1磁気検知部114、第2磁気検知部121、第2磁気検知部122、第2磁気検知部123、第2磁気検知部124、第3磁気検知部131、第3磁気検知部132、第3磁気検知部133、第3磁気検知部134、第4磁気検知部141、第4磁気検知部142、第4磁気検知部143、および第4磁気検知部144を備える。
【0123】
即ち、第8構成例の磁気センサ10は、第1から第4磁気検知部をそれぞれ4つ有する。また、磁気センサ10は、第1から第4磁気検知部の16の磁気検知部110のうち、同一の磁気検知部110の重心は、同一象限には位置しない。即ち、磁気センサ10の第1から第4象限のそれぞれは、第1から第4磁気検知部が1つずつ設けられる。
【0124】
第8構成例の磁気センサ10は、第7構成例の第3センサ素子16および第4センサ素子18を一体化したものであるから、複数の磁気検知部110の抵抗値の値等は、(数12)および(数13)式と略同一となる。即ち、第8構成例の磁気センサ10は、第7構成例の磁気センサ10と同様に、3軸の磁気センサとして動作できる。なお、第8構成例の磁気センサ10が、基板20上に更に複数形成されてもよい。
【0125】
なお、
図11は、複数の磁気検知部を互いに重ならないように示したが、これは複数の磁気検知部の大きさを他の構成例と比較して小さくすることを意味するものではない。それぞれの磁気検知部は、他の構成例と同様に、Z方向から見た平面視において、互いに重なるように設けられることが好ましい。即ち、各位置に設けられる磁気検知部は、それぞれ一部または全部が重なるように配置されてよい。一例として、第1位置101において、第1磁気検知部111および第3磁気検知部131は、一部または全部が重なるように配置されてよい。各位置において磁気検知部の全部が重なるように設けられた例を次に説明する。
【0126】
図12は、本実施形態に係る第8構成例の磁気センサ10の透視図の一例を示す。
図12は、第8構成の磁気センサ10のY方向から見た透視図の一例を示す。
図12は、基板20の基板表面に形成された磁気センサ10の一例を示す。ここで、基板表面は、XY平面に略平行な面として形成される。
図12は、
図3と同様に、第1平面を絶縁層表面32とし、基板表面を第1面41、絶縁層30の内部の平面を基板20に近い側から第2面42、第3面43、および第4面44とした。
【0127】
即ち、第1から第4磁気検知部は、磁気収束部100が配置される第1平面と平行で、第1平面とは異なる平面に位置する。例えば、磁気収束部100は、基板20上の第1平面に位置し、第1から第4磁気検知部は、基板20上の互いに異なる平面に位置する。より具体的には、第1磁気検知部111、第1磁気検知部112、第1磁気検知部113、および第1磁気検知部114は、第1面41に設けられる。また、第2磁気検知部121、第2磁気検知部122、第2磁気検知部123、および第2磁気検知部124は、第2面42に設けられる。
【0128】
同様に、第3磁気検知部131、第3磁気検知部132、第3磁気検知部133、および第3磁気検知部134は、第3面43に設けられ、第4磁気検知部141、第4磁気検知部142、第4磁気検知部143、および第4磁気検知部144は、第4面44に設けられる。これにより、磁気センサ10は、基板20上の異なる面に、感磁軸の方向毎に磁気検知部110を順次形成して製造することができる。また、複数のセンサ素子を一体にして、磁気センサ10の大きさを小型化することができる。
【0129】
このような磁気センサ10は、基板20上に複数の層を設け、感磁軸の方向毎に磁気検知部110を形成してよい。例えば、まず、基板20の表面である第1面41に、感磁軸の正の方向を第1軸と平行な第1方向とした、1または複数の第1磁気検知部を形成する。次に、1または複数の第1磁気検知部が形成された第1面41に、第1絶縁層を形成する。次に、第1絶縁層の表面である第2面42に、感磁軸の正の方向を第2軸と平行な第2方向とした、1または複数の第2磁気検知部を形成する。次に、1または複数の第2磁気検知部が形成された第2面42に、第2絶縁層を形成する。
【0130】
次に、第2絶縁層の表面である第3面43に、感磁軸の正の方向を第1軸と平行で第1方向とは逆向きとした、1または複数の第3磁気検知部を形成する。次に、1または複数の第3磁気検知部が形成された第3面43に、第3絶縁層を形成する。次に、第3絶縁層の表面である第4面44に、感磁軸の正の方向を第2軸と平行で第2方向とは逆向きとした、1または複数の第4磁気検知部を形成する。次に、1または複数の第4磁気検知部が形成された第4面44に、第4絶縁層を形成する。
【0131】
第1絶縁層から第4絶縁層の形成により、基板20上に絶縁層30が形成されることになる。即ち、第4絶縁層の基板20とは反対側の絶縁層表面32が、絶縁層30の表面となり、当該絶縁層表面32に、磁気収束部100が形成される。このようなプロセスを繰り返すことにより、磁気センサ10が形成することができる。
【0132】
なお、本実施形態に係る本実施形態に係る第8構成例の磁気センサ10において、基板上に形成される磁気検知部の順番を、第1磁気検知部から第4磁気検知部とした例を説明したが、磁気検知部が形成される順番はこれに限定されることはない。例えば、第3磁気検知部の後に第4磁気検知部を形成することに代えて、第4磁気検知部を形成してから第3磁気検知部を形成してもよい。
【0133】
この場合、第2絶縁層の表面である第3面43に、感磁軸の正の方向を第2軸と平行で第2方向とは逆向きとした、1または複数の第4磁気検知部を形成することになる。そして、1または複数の第4磁気検知部が形成された第3面43に、第3絶縁層を形成する。次に、第3絶縁層の表面である第4面44に、感磁軸の正の方向を第1軸と平行で第1方向とは逆向きとした、1または複数の第3磁気検知部を形成する。次に、1または複数の第3磁気検知部が形成された第4面44に、第4絶縁層を形成する。このような磁気検知部の配置であっても、第8構成例の磁気センサ10として動作することができる。
【0134】
以上の本実施形態に係る磁気センサ10は、第1平面と平行な平面視において、長方形または多角形の磁気収束部100を備える例を説明したが、磁気収束部100の形状はこれに限定されることはない。磁気収束部100は、第1平面と平行な平面視において、円形、長円形、および楕円形のいずれかの形状を有してもよい。磁気収束部100が第1平面と平行な平面視において円形形状を有する例について、次に説明する。
【0135】
図13は、本実施形態に係る磁気センサ10の第9構成例を示す。
図13は、
図2および
図3で説明した第1構成例の磁気センサ10と同様に、磁気検知部110を2つ備える磁気センサ10の構成例を示す。即ち、第9構成例の磁気センサ10は、第1平面と平行な平面視において略円形の磁気収束部100と、第1磁気検知部111と、第2磁気検知部124と、を備える。
【0136】
第9構成例の磁気センサ10においても、磁気収束部100の重心109を原点として、第1平面を第1象限から第4象限に分割してよい。また、第1平面と平行な平面視において、磁気収束部100の重心109を原点とし、第1軸から反時計回りに略45度の角度を有する軸を第3軸とする。同様に、第1平面と平行な平面視において、磁気収束部100の重心109を原点とし、第2軸から反時計回りに略45度の角度を有する軸を第4軸とする。
【0137】
第1磁気検知部の重心は、第1軸を含み、第3軸および第4軸で分割される、第1領域および/または第3領域に位置する。また、第2磁気検知部の重心は、第2軸を含み、第3軸および第4軸で分割される、第2領域および/または第4領域に位置する。
図12は、第1磁気検知部111が第1領域に、第2磁気検知部124が第4領域に、それぞれ設けられた例を示す。なお、磁気検知部のそれぞれは第1平面と平行な平面視において、原点を中心とした環状の形状を有してよく、これに代えて、長方形の形状を有してもよい。
【0138】
このように、磁気収束部100の形状が異なっても、第1平面と平行な平面視において、第1磁気検知部の重心から第2軸までの距離は、第1磁気検知部の重心から第1軸までの距離と比較して長く設けられる。また、第2磁気検知部の重心から第2軸までの距離は、第2磁気検知部の重心から第1軸までの距離と比較して短く設けられる。これにより、磁気センサ10は、
図2および
図3で説明したように、磁場成分における抵抗値の変化を分離して検出できる。また、
図13に示す各位置に、更に磁気検知部110を配置することで、
図4から
図12で説明した磁気センサと同様に、3軸の磁気センサとして動作でき、より磁気感度の大きな磁気センサを提供することができる。
【0139】
以上の本実施形態に係る磁気センサ10は、磁気収束部100の周囲に複数の磁気検知部を設け、当該複数の磁気検知部の感磁軸の方向を第1軸方向と、第1軸方向とは平行ではない第2軸方向にする。これにより、第1軸方向および第2軸方向に略平行に入力する磁場に対して、略同一の感度で検出することができる。また、このような磁気検知部をより多く設けることで、磁気感度(即ち、SN)を向上させることができる。また、感磁軸毎に、異なる面に磁気検知部を形成することで、磁気センサ10を小型化することができる。
【0140】
図14は、本実施形態に係る磁気検知部110の構成例を示す。
図14は、GMR素子で形成された磁気検知部110の一例を示す。GMR素子は、磁性材料の磁化の向きで電子のスピン散乱が変化して、当該素子の抵抗値が変わる。磁気検知部110は、ピニング層212、ピンド層214、スペーサ層216、およびフリー層218を備える。
【0141】
ピニング層212は、当該ピニング層212に積層されるピンド層214の磁化の向きを固定する。ピニング層212は、PtMnまたはIrMnなどの反強磁性体で形成されてよい。
【0142】
ピンド層214は、ピニング層212の上面に積層され、ピニング層212との磁気結合により磁気モーメントの方向が固定される。なお、ピンド層214は、ピニング層212を用いずにセルフバイアス構造を用いてもよい。ピンド層214の磁化が固定される方向は、本実施形態において、感磁軸とした。
図14は、感磁軸の負の方向を−X方向とした例を示す。ピンド層214は、CoFeなどの強磁性体またはCoFe/Ru/CoFeなどの強磁性体を含む積層構造で形成されてよい。
【0143】
スペーサ層216は、電流を流すとスピン散乱が生じる導電層である。スペーサ層216は、一例として、ピンド層214およびフリー層218の間に設けられる。スペーサ層216は、Cu等の非磁性体で形成されてよい。
図14は、スペーサ層216に+Y方向の電流が流れる例を示す。
【0144】
フリー層218は、スペーサ層216の上面に積層され、外部から入力する磁場Bに応じて磁化の向きが自由に回転する。フリー層218は、NiFeなどの強磁性体またはCoFe/NiFeなどの強磁性体を含む積層構造で形成されてよい。
図12は、フリー層218の磁化容易軸が、ピンド層214の感磁軸と略垂直な+Y方向を向く例を示す。フリー層218は、外部磁場Bに応じた角度θ(B)に磁化の向きが回転する。このような、フリー層218の磁気モーメントの方向の変化に伴い、スペーサ層216に流れる電流の経路が曲げられるので、磁気検知部110の抵抗値が変化することになる。
【0145】
このような磁気検知部110の抵抗値の変化を検出することにより、外部磁場Bの大きさを取得することができる。例えば、抵抗値の変化量は、ΔR=(R
AP−R
P)/R
Pで表される。ここで、R
APは、ピンド層214とフリー層218の磁化の向きが反平行のときの抵抗値、R
Pは、ピンド層214とフリー層218の磁化の向きが平行のときの抵抗値を示す。
【0146】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0147】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。