(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、車載用の表示装置(車載表示装置)のカバー部材を例に挙げて説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されることはない。本発明の範囲を逸脱することなく、以下の実施形態に種々の変形、および置換を加えることができ、車載用以外の表示装置にも用いることができる。
【0013】
〈車載表示装置〉
図1は、車載表示装置100を示す断面図である。
図1に示す車載表示装置100は、一例として、カーナビゲーション装置である。
車載表示装置100は、各部を収納する筐体106を有する。筐体106の底板である筐体底板107上には、バックライトユニット102および表示パネル104が、この順に配置されている。
表示パネル104は、一例として、液晶パネルであるが、液晶パネルに限定されず、例えば、有機EL(Electro-Luminescence)パネル、PDP(Plasma Display Panel)、電子インク型パネル等であってもよい。
バックライトユニット102および表示パネル104の構成は、特に限定されず、公知の構成を用いることができる。筐体106(筐体底板107を含む)の材質等についても、同様に、特に限定されない。
後述するカバー部材20の端面の外側であって、かつ、筐体106の外周を構成する枠の上面には、筐体端枠110が配置されている。
【0014】
〈カバー部材〉
図2は、車載表示装置100の一部を拡大して示す断面図である。
車載表示装置100においては、表示パネル104上にタッチパネル15が配置され、タッチパネル15上にカバーガラス12が配置されている。
より詳細には、
図1に示すように、表示パネル104の一面側(
図1中、上面側)に、粘着層14aを介して、タッチパネル15が貼合されている。さらに、タッチパネル15の一面側(
図1中、上面側)に、粘着層14bを介して、カバーガラス12が貼合されている。
タッチパネル15およびカバーガラス12は、表示パネル104をカバーするカバー部材20を構成する。カバー部材20は、表示パネル104の保護部材として機能する。
【0015】
本実施形態においては、タッチパネル15は、ガラス板を有し、このガラス板が強化ガラスであり、そして、タッチパネル15の厚さが0.7〜2.0mmであり、かつ、そのサイズが表示パネル104のサイズを超えカバーガラス12のサイズ以下である。
【0016】
カバーガラス12と、強化ガラスであるガラス板を有し、厚さが0.7〜2.0mmであるタッチパネル15とを併用して表示装置のカバー部材20とする。これにより、車両の衝突事故が発生して乗員の頭部がカバー部材20に衝突したときにも、カバーガラス12のみをカバー部材として用いる場合と比べて、カバーガラス12の割れの発生が抑制されて安全性に優れる。これは、カバー部材20が合わせガラスに類似する形態になり、カバーガラス12を単独で用いる場合よりも強度が高くなるためであると考えられる。
【0017】
さらに、タッチパネル15のサイズが、表示パネル104のサイズを超えカバーガラス12のサイズ以下である。このため、カバーガラス12と表示パネル104とが対向していない部位に、乗員の頭部などの剛体が衝突しても、同様に、カバーガラス12の割れの発生が抑制されて安全性に優れる。
【0018】
なお、カバー部材20の形状は、
図2に示すように、一例として、断面視した場合に平板状であるが、一面側が凸状に他面側が凹状に湾曲した湾曲板状であってもよい。
【0019】
《タッチパネル》
タッチパネル15は、ガラス板を有し、このガラス板の少なくとも一方の面に、ITO(Indium Tin Oxide)等からなる図示しない透明導電膜(透明電極ともいう)が設けられる。このタッチパネル15におけるガラス板以外の構成(例えば、透明導電膜など)は、従来公知の構成と変わるところはないため、詳細な説明は省略する。
タッチパネル15は、少なくとも1枚のガラス板を有していればよく、その形態としては、例えば、一面に透明導電膜が設けられた一組のガラス板を有し、透明度電膜どうしが対向する形態;一面に透明導電膜が設けられたガラス板と、一面に透明導電膜が設けられた樹脂フィルムとを有し、透明導電膜どうしが対向する形態;1枚のガラス板の両面に透明導電膜が設けられた形態;等が挙げられる。
【0020】
(強化ガラス)
タッチパネル15を構成するガラス板としては、上述したように、強化ガラスを用いる。強化ガラスとしては、典型的には、化学強化ガラスまたは物理強化ガラスが挙げられる。なかでも、強度、デザイン性、コスト等の観点から、化学強化ガラスが好ましい。
【0021】
強化ガラスの表面には、圧縮応力層が形成される。圧縮応力層の厚さ(DOL)は、例えば10μm以上であり、傷に対する耐久性等の観点から、好ましくは15μm以上、より好ましくは25μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。
強化ガラスの圧縮応力層における表面圧縮応力(CS)は、例えば、500MPa以上であり、650MPa以上が好ましく、750MPa以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、例えば、1200MPa以下である。
【0022】
ガラスに化学強化処理を施して強化ガラス(化学強化ガラス)を得る方法は、典型的には、ガラスをKNO
3溶融塩に浸漬し、イオン交換処理した後、室温付近まで冷却する方法が挙げられる。KNO
3溶融塩の温度や浸漬時間などの処理条件は、表面圧縮応力及び圧縮応力層の厚さが所望の値となるように設定すればよい。
【0023】
ところで、タッチパネル15の形状は、直方体状であることが好ましく、平板状(薄い直方体状)であることがより好ましい。この場合、タッチパネル15は、6面体であり、一対の主面(2面)と、一対の主面に接続する4つの端面(4面)とを有する。
本明細書においては、ガラス板の主面(2面)だけに化学強化処理が施されて圧縮応力層を有する化学強化ガラスを「2面強化ガラス」と呼び、ガラス板の全面(ガラス板が直方体状であれば6面すべて)に化学強化処理が施されて圧縮応力層を有する化学強化ガラスを「6面強化ガラス」と呼ぶ。
2面強化ガラスは、大型のガラス板に化学強化処理を施した後、所望のサイズに切断することにより得られる。一方、6面強化ガラスは、所望のサイズに切断した後のガラス板に化学強化処理を施すことによって得られる。
【0024】
タッチパネル15を構成するガラス板は、安全性がより優れるという理由から、2面強化ガラスよりも、6面強化ガラスであることが好ましい。
【0025】
ガラス種としては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス(SiO
2−Al
2O
3−Na
2O系ガラス)等が挙げられる。なかでも、強度の観点からは、アルミノシリケートガラスが好ましい。
ガラス材料としては、例えば、モル%表示で、SiO
2を50〜80%、Al
2O
3を1〜20%、Na
2Oを6〜20%、K
2Oを0〜11%、MgOを0〜15%、CaOを0〜6%およびZrO
2を0〜5%含有するガラス材料が挙げられる。
アルミノシリケートガラスをベースとする化学強化用ガラス(例えば、旭硝子社製「ドラゴントレイル(登録商標)」)も好適に用いられる。
【0026】
更に、化学強化処理を施したガラス板に対して、酸処理およびアルカリ処理を含む処理を施してもよい。
【0027】
酸処理は、酸性溶液中に化学強化ガラスを浸漬させることによって行なう。これにより、化学強化ガラス表面のNaおよび/またはKがHに置換され、低密度層が形成される。
酸性溶液に用いる酸は、弱酸であっても強酸であってもよく、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、炭酸およびクエン酸などの酸が好適に挙げられる。これらの酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸性溶液の濃度は、容器腐食の懸念が少ない濃度が好ましく、具体的には、1〜20質量%が好ましい。
酸処理を行なう温度は、100℃以下が好ましい。
酸処理を行なう時間は、生産性の観点から、10秒間〜5時間が好ましく、1分間〜2時間がより好ましい。
【0028】
アルカリ処理は、塩基性溶液中に、酸処理を経た化学強化ガラスを浸漬させることによって行なう。これにより、酸処理で形成された低密度層の一部または全部が除去される。低密度層が除去されることにより、化学強化ガラスの面強度向上等の効果が期待できる。
塩基性溶液に用いる塩基は、弱塩基であっても強塩基であってもよく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの塩基が好適に挙げられる。これらの塩基は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
塩基性溶液の濃度は、1〜20質量%が好ましい。
アルカリ処理を行なう温度は、ガラスが腐食するおそれがないという理由から、0〜100℃が好ましく、10〜80℃がより好ましく、20〜60℃が更に好ましい。
アルカリ処理を行なう時聞は、生産性の観点から、10秒間〜5時間が好ましく、1分間〜2時間がより好ましい。
【0029】
(厚さ)
タッチパネル15の厚さは、上述したように、0.7〜2.0mmであり、1.0〜2.0mmが好ましく、1.3〜2.0mmがより好ましい。
なお、タッチパネル15が有するガラス板の厚さが、実質的に、タッチパネル15の厚さに相当する。
【0030】
(形状)
上述したように、タッチパネル15の形状は、直方体状であることが好ましく、平板状(薄い直方体状)であることがより好ましい。
タッチパネル15を構成するガラス板の端面には、面取り加工が施されていてもよい。この加工によって形成される面取り部は、C面取り部であってもよく、R面取り部であってもよい。C面取り部とは、面取り加工によって形成される面が平面または略平面である面取り部である。一方、R面取り部とは、面取り加工によって形成される面が曲面である面取り部である。
【0031】
(サイズ)
タッチパネル15のサイズ(端面の位置)Zは、上述したように、表示パネル104のサイズ(端面の位置)Z
1を超え、カバーガラス12のサイズ(端面の位置)Z
2以下である(
図2を参照)。
カバー部材20の端部(すなわち、カバーガラス12と表示パネル104とが対向していない部位)に乗員の頭部などの剛体が衝突した場合に、カバーガラス12の割れがより抑制されて、安全性がより優れるという理由から、タッチパネル15のサイズZは、
図2に示すように、カバーガラス12のサイズZ
2と等しいことが好ましい。
【0032】
タッチパネル15のサイズの一例としては、例えばカバーガラス12のサイズと等しい場合には、長手方向:100〜900mm、短手方向:40〜500mmが挙げられ、長手方向:100〜800mm、短手方向:40〜300mmが好ましい。
タッチパネル15のサイズは、例えば、5〜20インチが好ましい。
【0033】
《カバーガラス》
カバーガラス12は、タッチパネル15の保護部材として機能する。
【0034】
(強化ガラス)
カバーガラス12は、タッチパネル15を構成するガラス板と同様に、強化ガラスであることが好ましく、化学強化ガラスであることがより好ましく、6面強化ガラスであることがさらに好ましい。圧縮応力層の厚さ(DOL)および表面圧縮応力(CS)の好適範囲も、タッチパネル15を構成するガラス板と同様である。
また、カバーガラス12として好ましいガラス種(ガラス材料)も、タッチパネル15を構成するガラス板と同様である。
更に、化学強化処理を施したガラス板に対して、酸処理およびアルカリ処理を含む処理を施してもよい。酸処理およびアルカリ処理の方法は、上述したとおりである。
【0035】
(板厚、形状およびサイズ)
カバーガラス12の板厚は、0.5〜2.5mmが好ましく、0.7〜2.0mmがより好ましく、1.3〜2.0mmがさらに好ましい。
カバーガラス12の形状は、直方体状であることが好ましく、平板状(薄い直方体状)であることがより好ましい。カバーガラス12の端部には、面取り加工が施され、C面取り部またはR面取り部が形成されていてもよい。
カバーガラス12のサイズの一例としては、長手方向:100〜900mm、短手方向:40〜500mmが挙げられ、長手方向:100〜800mm、短手方向:40〜300mmが好ましい。カバーガラス12のサイズは、例えば、5〜20インチが好ましい。
【0036】
(反射防止膜)
カバーガラス12の表面12dには、反射防止膜を設けることが好ましい。これにより、表示パネル104の表示画像を鮮明にできる。
反射防止膜の材料は特に限定されず、光の反射を抑制できる材料であれば各種材料を利用でき、例えば、高屈折率層と低屈折率層とを積層した構成としてもよい。ここでいう高屈折率層とは、波長550nmでの屈折率が1.9以上の層であり、低屈折率層とは、波長550nmでの屈折率が1.6以下の層である。
高屈折率層と低屈折率層とは、それぞれ1層ずつ含む形態であってもよいが、それぞれ2層以上含む構成であってもよい。高屈折率層と低屈折率層とをそれぞれ2層以上含む場合には、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した形態であることが好ましい。
高屈折率層、低屈折率層の材料は特に限定されず、要求される反射防止の程度や生産性等を考慮して選択できる。
高屈折率層を構成する材料としては、例えば、ニオブ、チタン、ジルコニウム、タンタルおよびシリコンからなる群から選択される1種以上含む材料を好ましく利用できる。具体的には、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、酸化チタン(TiO
2)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化タンタル(Ta
2O
5)、窒化シリコン等が挙げられる。
低屈折率層を構成する材料としては、例えば、ケイ素を含有する材料を好ましく利用できる。具体的には、酸化ケイ素(SiO
2)、SiとSnとの混合酸化物を含む材料、SiとZrとの混合酸化物を含む材料、SiとAlとの混合酸化物を含む材料等が挙げられる。
反射防止膜を成膜する方法は特に限定されず、各種成膜方法を利用可能である。特に、パルススパッタ、ACスパッタ、デジタルスパッタ等の方法により成膜を行なうことが好ましい。
例えばパルススパッタにより成膜する際は、不活性ガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気のチャンバ内にガラス板を配置し、これに対して、所望の組成となるようにターゲットを選択し、成膜できる。
反射防止膜の膜厚は、例えば、100〜300nm程度である。
【0037】
(機能層)
カバーガラス12の表面12dおよび裏面12cには、機能層が形成されていることが好ましい。これにより、表示パネル104の表示画像をより鮮明に見ることができる。
上記機能層は、カバーガラス12の表層を処理して形成してもよく、カバーガラス12の表面に他の層を積層して形成してもよい。
上記機能層としては、例えば、アンチグレア層(AG層)が挙げられる。カバーガラス12の表面12dにAG層を設けると、表示パネル104の表示画像を見る際に、外光のぎらつきを低減できるので、表示画像を鮮明に見ることができる。AG層を形成する手法は、特に限定されず、例えば、カバーガラス12の表層をエッチングする方法;カバーガラス12の表面に微粒子とマトリックスとを含むコーティング液を塗布し、マトリックスを硬化する方法;等が挙げられる。
上記機能層としては、その他に、アンチフィンガープリント層(AFP層)が挙げられる。カバーガラス12の表面12dにAFP層を設けると、カバーガラス12の表面12dを触っても、表面12dに指紋が残らず、表面12dを清浄に保つことができる。そのため、表示パネル104の表示画像を見る際に、表示画像を鮮明に見ることができる。
上記機能層としては、その他に、遮光層が挙げられる。遮光層は、好ましくは、カバーガラス12の裏面12cに設けられる。遮光層を形成することによって、表示パネル104の配線や、カバーガラス12と表示パネル104との接合部を隠すことができ、表示装置の意匠性を高くできる。上記遮光層は、例えば、印刷塗料をスクリーン印刷法などの方法を用いてカバーガラス12の裏面12cの周縁に塗布し、乾燥することによって形成できる。
カバーガラス12の表面12dおよび裏面12cの一部には、スクリーン印刷などが施されてもよい。
【0038】
《粘着層》
粘着層14aおよび粘着層14bをまとめて「粘着層14」とも呼ぶ。
粘着層14は、カバーガラス12およびタッチパネル15と同じく透明であって、カバーガラス12またはタッチパネル15と粘着層14との屈折率差は小さいことが好ましい。
粘着層14としては、例えば、液状の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる透明樹脂からなる層が挙げられる。また、粘着層14は、OCA(Optical Clear Adhesive)フィルムまたはテープであってもよい。粘着層14の厚さは、例えば、5〜400μmであり、50〜200μmが好ましい。
【0039】
〈カバー部材の製造方法〉
カバー部材20を製造する方法は、一例として、以下のとおりである。
まず、上述したタッチパネル15およびカバーガラス12を準備する。次に、タッチパネル15と、カバーガラス12とを、粘着層14bを介して、貼り合わせる。こうして、タッチパネル15およびカバーガラス12を有するカバー部材20が得られる。
【0040】
〈車載表示装置の製造方法〉
このようにして得られたカバー部材20のタッチパネル15と、筐体106に収容された表示パネル104とを、粘着層14aを介して貼り合わせる。こうして、カバー部材20を有する車載表示装置100が得られる。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例等により本発明の実施形態を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの例によって限定されない。
【0042】
〈実施例1〉
《カバーガラスの準備》
ガラス板として、アルミノシリケートガラスをベースとする化学強化用ガラス(旭硝子社製「ドラゴントレイル」、板厚:1.5mm)を準備した。
準備したガラス板に対して、化学強化処理、酸処理およびアルカリ処理をこの順で行なうことにより、カバーガラス12を得た。より詳細には、以下のとおりである。
【0043】
まず、ガラス板に対して、化学強化処理を施した。化学強化処理は、圧縮応力層の厚さ(DOL):35μm、圧縮応力層における表面圧縮応力(CS):750MPaとなるように、ガラス板全体をKNO
3溶融塩中に浸漬することにより行なった。こうして、6面強化ガラスが得られた。
次いで、上記化学強化処理を施したガラス板(6面強化ガラス)を、塩酸中に120秒間浸漬させることによって酸処理を行ない、その後、純水で複数回洗浄してから、エアブローにより乾燥した。上記塩酸は、13.4質量%の塩酸(関東化学社製)をビーカに用意し、ウォーターバスを用いて40℃に温度調整したものを使用した。
次に、上記酸処理を施したガラス板を、水酸化ナトリウム水溶液中に120秒間浸漬させることによってアルカリ処理を行ない、その後、純水で数回洗浄してから、エアブローにより乾燥した。上記水酸化ナトリウム水溶液は、4.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液をビーカに用意し、ウォーターバスを用いて40℃に温度調整したものを使用した。
これにより、カバーガラス12を得た。
【0044】
《タッチパネルの準備》
本実施例においては、タッチパネルの代替としてガラス板を使用した。タッチパネル代替のガラス板として、アルミノシリケートガラスをベースとする化学強化用ガラス(旭硝子社製「ドラゴントレイル」、板厚:2.0mm)を準備した。このガラス板のサイズは、カバーガラス12と等しいサイズとした。
準備したガラス板に対して、化学強化処理、酸処理およびアルカリ処理をこの順で行なった。より詳細には、以下のとおりである。
【0045】
まず、ガラス板に対して、化学強化処理を施した。化学強化処理は、圧縮応力層の厚さ(DOL):35μm、圧縮応力層における表面圧縮応力(CS):750MPaとなるように、ガラス板全体をKNO
3溶融塩中に浸漬することにより行なった。こうして、6面強化ガラスが得られた。
次いで、上記化学強化処理を施したガラス板(6面強化ガラス)を、塩酸中に120秒間浸漬させることによって酸処理を行ない、その後、純水で複数回洗浄してから、エアブローにより乾燥した。上記塩酸は、13.4質量%の塩酸(関東化学社製)をビーカに用意し、ウォーターバスを用いて40℃に温度調整したものを使用した。
次に、上記酸処理を施したガラス板を、水酸化ナトリウム水溶液中に120秒間浸漬させることによってアルカリ処理を行ない、その後、純水で数回洗浄してから、エアブローにより乾燥した。上記水酸化ナトリウム水溶液は、4.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液をビーカに用意し、ウォーターバスを用いて40℃に温度調整したものを使用した。
これにより、タッチパネル15代替のガラス板を得た。
【0046】
なお、実際の車載表示装置100に用いる場合は、タッチパネルのガラス板には透明導電膜が設けられるが、ここでは、後述する試験体200に用いるため、タッチパネル15代替のガラス板に透明導電膜を設けなかった。
【0047】
《カバー部材の作製》
互いにサイズが等しいカバーガラス12とタッチパネル15代替のガラス板とを、中心位置を同じにして、粘着層14bを介して、貼り合わせて、カバー部材20を作製した。粘着層14bとしては、OCA(日栄化工社製「MHM−FWD」、厚さ:150μm)を用いた。
【0048】
〈実施例2〉
タッチパネル15代替のガラス板の板厚を1.5mmにした以外は、実施例1と同様にして、カバー部材20を作製した。
【0049】
〈実施例3〉
カバーガラス12となるガラス板の板厚を1.3mmにした以外は、実施例1と同様にして、カバー部材20を作製した。
【0050】
〈実施例4〉
タッチパネル15代替のガラス板の板厚を1.3mmにした以外は、実施例1と同様にして、カバー部材20を作製した。
【0051】
〈実施例5〉
タッチパネル15代替のガラス板の板厚を0.7mmにした以外は、実施例1と同様にして、カバー部材20を作製した。
【0052】
〈実施例6〉
タッチパネル15代替のガラス板を2面強化ガラスにした以外は、実施例1と同様にして、カバー部材20を作製した。
なお、2面強化ガラスであるタッチパネル15代替のガラス板は、切断前のガラス板に対して、化学強化処理、酸処理およびアルカリ処理をこの順で行なった後、所望のサイズに切断することによって、得た。
【0053】
〈比較例1〉
比較例1では、タッチパネル15代替のガラス板を用いずに、カバーガラス12だけでカバー部材20とした。
【0054】
〈比較例2〉
比較例2では、準備したガラス板(化学強化用ガラス)を、化学強化処理、酸処理およびアルカリ処理を経ずに、そのまま、タッチパネル15代替のガラス板とした。それ以外の点は、実施例1と同様にして、カバー部材20を作製した。
【0055】
〈比較例3〉
タッチパネル15代替のガラス板のサイズを、後述する表示パネル104と等しいサイズにした以外は、実施例1と同様にして、カバー部材20を作製した。
【0056】
〈比較例4〉
タッチパネル15代替のとなるガラス板の板厚を0.5mmにした以外は、実施例1と同様にして、カバー部材20を作製した。
【0057】
〈試験体の作製〉
剛体模型を衝突させる試験(「ヘッドインパクト試験」ともいう)を行なうため、各例のカバー部材20を用いて、車載表示装置の試験体200を作製した。
図3〜
図5に基づいて試験体200を説明する。
図3〜
図5においては、
図1の車載表示装置100と同一の(または対応する)部分は同じ符号を用い、説明を省略する場合がある。
【0058】
図3は、試験体200を示す斜視図である。
図4は、
図3のA−A線断面図である。
図5は、試験体200を示す平面図である。
【0059】
図3および
図4に示すように、試験体200は、筐体底板107を有し、筐体底板107の周縁部上には、内部にリブが付いた筐体枠109が4つ配置されている。筐体底板107と4つの筐体枠109とによって、中央領域に矩形の凹部を有する筐体106が形成され、この筐体106の中に、バックライトユニット102と表示パネル104とが配置されている。
【0060】
図4に示すように、バックライトユニット102の上面側の端部は、断面L字状のL字部材208により覆われている。L字部材208の上面と表示パネル104の下面側の端部とは、両面テープ207によって接着されている。このため、表示パネル104とバックライトユニット102との間には、L字部材208および両面テープ207の厚さ分だけ、エアギャップ(1.5mm)が存在している。表示パネル104の上面には、粘着層14aによって、カバー部材20のタッチパネル15代替のガラス板が貼合されている。タッチパネル15代替のガラス板の下面と筐体枠109の上面とは、両面テープ115で貼合されている。ただし、比較例1では、表示パネル104の上面には、粘着層14aによって、カバーガラス12を貼合した。
カバー部材20の端面の外側であってかつ筐体枠109の上面には、筐体端枠110が配置されている。筐体端枠110も、両面テープ115によって筐体枠109に貼合されている。
【0061】
図3および
図4に示すように、筐体底板107の4辺には、筐体底板107に連続して、板状の筐体突出部111が設けられている。筐体底板107と4つの筐体突出部111とによって、筐体底板107の裏面側(バックライトユニット102側とは反対側)には、凹部が形成されている。この凹部内には、クッション材321の一部が入り込んでいる。なお、筐体底板107のクッション材321側の面には、図示しないプレート(材質:鉄(SS400)、板厚1.5mm)が貼り付けられている。クッション材321は、平板である支持板215上に配置されており、クッション材321によって、筐体106が支持されている。ケー・シー・シー商会社製「CF45」(厚さ:25.4mm)を2枚重ねてクッション材321とした。筐体106がクッション材321に支持された状態において、向かい合う一対の筐体突出部111には、固定部301の一端側がボルト311によって接合されている。固定部301の他端側は、ボルト311によって、支持板215に接合されている。こうして、筐体突出部111を含む筐体106は、固定部301によって位置固定される。
断面L字状の板状部材である固定部301について、
図3中にL
1〜L
4で示すサイズは、L
1:20mm、L
2:50mm、L
3:100mm、L
4:20mmとした。
【0062】
図5中にH
1〜H
3およびW
1〜W
3で示すサイズは、H
1:120mm、H
2:150mm、H
3:250mm、W
1:173mm、W
2:250mm、W
3:350mm、とした。
【0063】
その他の各部は以下のようにした。
・粘着層14a…OCA(日栄化工社製「MHM−FWD」、厚さ:150μm)
・表示パネル104…ソーダライムガラス(板厚1.1mm、サイズ:173mm×120mm)の両面に偏光板(材質:TAC)を貼合した代替品を用いた。
・バックライトユニット102…板状体102a(材質:PC、板厚:4mm、サイズ:117mm×170mm)の底面および4つの側面を凹状体102b(材質:アルミニウム、板厚:1mm)で覆った代替品を用いた。
・両面テープ207…材質:PET、テープ幅:5mm、テープ厚:0.5mm
・L字部材208…材質:PVC、板厚:1mm、L字1辺の長さ:5mm
・筐体枠109…材質:ABS、板厚:2mm
・筐体端枠110…材質:ABS、板厚:2.5mm、板幅:5mm
・両面テープ115…材質:PET、テープ厚:0.5mm
・固定部301…材質:鉄(SS400)、板厚:1.0mm
・ボルト311…材質:鉄
・支持板215…材質:鉄、板厚:9mm
・筐体底板107および筐体突出部111…材質:鉄、板厚:1.15mm
【0064】
〈ヘッドインパクト試験〉
作製した試験体200を用いて、次のように、ヘッドインパクト試験を行なった。
試験体200の支持板215を水平面に設置し、カバーガラス12上の衝突位置P
1〜P
3(
図5参照)のそれぞれに、図示しない球状の剛体模型(材質:鉄、直径:165mm、質量:19.6kg)を、衝突時のエネルギーが152.4Jになるように、衝突速度3.944m/sで793mmの高さから落下させて衝突させた。
【0065】
試験方法は、国土交通省が示す「道路運送車両の保安基準」の「第20条 乗車装置」の「別紙28 インストルメントパネルの衝撃吸収の技術基準」(以下、単に「基準」という)を参照した。この「基準」では、球状の剛体模型(材質:鉄、直径:165mm、質量:6.8kg)を、衝突速度6.7m/sで射出して衝突させ、衝突時のエネルギーが152.4Jになるようにしている。
すなわち、試験体200を用いたヘッドインパクト試験では、衝突時のエネルギーが「基準」と同等になるようにした。
剛体模型の減速度に関しては、3ms(ミリ秒)以上連続して784m/s
2(80G)を超えないことが規定されているが、今回行なった試験においては、全てこの規定を満たしていたことを確認している。
【0066】
〈評価〉
各例のカバー部材20を用いて作製した試験体200を用いて、ヘッドインパクト試験を行なった。ヘッドインパクト試験において、剛体模型を衝突させるカバーガラス12上の衝突位置P
1〜P
3(
図5参照)は、いずれも、試験体200を上面から見て、中心位置よりも一方の固定部301側に寄せた位置であり、より詳細には、次のようにした。
衝突位置P
1は、表示パネル104の端面から10mm内側とした。
衝突位置P
2は、表示パネル104の端面から5mm外側とした。
衝突位置P
3は、カバーガラス12の端面から1mm内側とした。
【0067】
ヘッドインパクト試験の結果、カバーガラス12が割れなかった場合には「A」を、カバーガラス12が割れた場合には「B」を、下記表1に記載した。
衝突位置P
1およびP
2における結果が両方とも「A」である場合には、安全性に優れるものとして評価できる。さらに、衝突位置P
3における結果も「A」である場合には、安全性がより優れるものとして評価できる。
【0068】
【表1】
【0069】
上記表1に示すように、タッチパネル15代替のガラス板(以下、単に「タッチパネル15」ともいう)が、化学強化ガラスであり、その板厚が0.7〜2.0mmの範囲内であり、かつ、そのサイズがカバーガラス12のサイズである実施例1〜6は、衝突位置P
1およびP
2の結果がいずれも「A」であり、安全性に優れていた。
なお、実施例1〜5と実施例6とを対比すると、タッチパネル15が6面強化ガラスである実施例1〜5は、衝突位置P
3の結果も「A」であり、タッチパネル15が2面強化ガラスである実施例6と比べて、より安全性に優れていた。
【0070】
これに対して、タッチパネル15を使用しなかった比較例1、および、タッチパネル15として未強化のガラス板を使用した比較例2は、衝突位置P
1およびP
2の結果がいずれも「B」であり、安全性が不十分であった。
【0071】
また、タッチパネル15のサイズが、表示パネル104のサイズであった比較例3は、衝突位置P
1の結果は「A」であったが、衝突位置P
2の結果は「B」であり、安全性が不十分であった。
【0072】
また、タッチパネル15の板厚が0.5mmであった比較例5は、衝突位置P
1およびP
2の結果がいずれも「B」であり、安全性が不十分であった。
【0073】
実施例1〜6においては、いずれも、タッチパネルの代替としてガラス板を使用した。実際のタッチパネルは、ガラス板の表面に透明導電膜を有するが、透明導電膜がガラス板の強度に与える影響は小さいので、同様の結果が得られる。