特許第6702319号(P6702319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702319
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】インクジェット塗布用膜形成用組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 179/04 20060101AFI20200525BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20200525BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20200525BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20200525BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20200525BHJP
【FI】
   C09D179/04
   C09D7/20
   B41J2/01 501
   B41M5/00 120
   C09D11/30
【請求項の数】16
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-523597(P2017-523597)
(86)(22)【出願日】2016年6月1日
(86)【国際出願番号】JP2016066127
(87)【国際公開番号】WO2016199630
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2019年4月25日
(31)【優先権主張番号】特願2015-116371(P2015-116371)
(32)【優先日】2015年6月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 直也
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/057104(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/168787(WO,A1)
【文献】 特開2013−136784(JP,A)
【文献】 特開2014−177505(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/128661(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
B41J 2/00− 3/60
B41M 5/00− 5/52
G02B 5/00
H01L21/312
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位構造を含むトリアジン環含有重合体と、グリコールジアルキルエーテル系溶媒を65質量%以上の割合で含む有機溶媒と、を含むことを特徴とするインクジェット塗布用膜形成用組成物。
【化1】
{式中、RおよびR′は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表し、
Arは、式(2)で示されるを表す。
【化2】
〔式中、R14は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表す。〕
【請求項2】
前記有機溶媒が、さらにグリコールモノアルキルエーテル系溶媒およびグリコール系溶媒のいずれか一方または双方を含む請求項1記載のインクジェット塗布用膜形成用組成物。
【請求項3】
前記グリコールジアルキルエーテル系溶媒の質量Aと、グリコールモノアルキルエーテル系溶媒およびグリコール系溶媒の総質量Bとの比が、A:B=99:1〜65:35である請求項2記載のインクジェット塗布用膜形成用組成物。
【請求項4】
前記グリコールジアルキルエーテル系溶媒が、ジエチレングリコールジアルキルエーテルである請求項1〜3のいずれか1項記載のインクジェット塗布用膜形成用組成物。
【請求項5】
前記ジエチレングリコールジアルキルエーテルが、ジエチレングリコールジメチルエーテルである請求項4記載のインクジェット塗布用膜形成用組成物。
【請求項6】
前記グリコールモノアルキルエーテル系溶媒が、プロピレングリコールモノアルキルエーテルである請求項2〜5のいずれか1項記載のインクジェット塗布用膜形成用組成物。
【請求項7】
前記プロピレングリコールモノアルキルエーテルが、プロピレングリコールモノメチルエーテルである請求項6記載のインクジェット塗布用膜形成用組成物。
【請求項8】
前記グリコール系溶媒が、ジエチレングリコールである請求項2〜7のいずれか1項記載のインクジェット塗布用膜形成用組成物。
【請求項9】
さらに架橋剤を含む請求項1〜8のいずれか1項記載のインクジェット塗布用膜形成用組成物。
【請求項10】
前記架橋剤が、多官能(メタ)アクリル化合物である請求項9記載のインクジェット塗布用膜形成用組成物。
【請求項11】
表面張力が、25〜35mN/mである請求項1〜10のいずれか1項記載のインクジェット塗布用膜形成用組成物。
【請求項12】
23℃での粘度が、5〜20mPa・sである請求項1〜11のいずれか1項記載のインクジェット塗布用膜形成用組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項記載の膜形成用組成物をインクジェット塗布して薄膜を形成する薄膜形成方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法により得られた薄膜。
【請求項15】
基材と、この基材上に形成された請求項14記載の薄膜とを備える電子デバイス。
【請求項16】
基材と、この基材上に形成された請求項14記載の薄膜とを備える光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット塗布用膜形成用組成物に関し、さらに詳述すると、トリアジン環含有重合体と、所定の有機溶媒とを含むインクジェット塗布用膜形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、タッチパネル、光半導体(LED)素子、固体撮像素子、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、および有機薄膜トランジスタ(TFT)等の電子デバイスを開発する際に、高機能な高分子材料が要求されるようになってきた。
求められる具体的な特性としては、1)耐熱性、2)透明性、3)高屈折率、4)高溶解性、5)低体積収縮率、6)高温高湿耐性、7)高膜硬度などが挙げられる。
この点に鑑み、本発明者らは、トリアジン環および芳香環を有する繰り返し単位を含む重合体が高屈折率を有し、ポリマー単独で高耐熱性、高透明性、高屈折率、高溶解性、低体積収縮を達成でき、電子デバイスを作製する際の膜形成用組成物として好適であることを既に見出している(特許文献1)。
【0003】
ところで、液晶表示素子における、スペーサー、絶縁膜、保護膜などでは、高屈折率材料を有機溶媒に溶かした組成物を用い、塗布法によって薄膜作製が行われる。
この際、目的とする部位にのみパターン状に塗布が可能であることから、インクジェット塗布装置が利用されることがある。
このインクジェット塗布装置のヘッドは、有機溶媒に侵され易いという問題があるため、組成物調製に使用可能な溶媒が限られ、また、塗布の際、ヘッドから微小な液滴として吐出される必要があるため、組成物の粘度や表面張力という点でも制限がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/128661号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、インクジェット塗布装置のヘッドを浸食しにくく、かつ、インクジェット塗布の際に良好に液滴が吐出されるとともに、高屈折率で透明性に優れた薄膜を形成し得るインクジェット塗布用膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、トリアジン環含有重合体を溶かす溶媒としてグリコールジアルキルエーテル系溶媒を所定割合で含む有機溶媒を用いることで、インクジェット塗布装置のヘッドを浸食しにくく、また、ヘッドから良好に液滴が吐出される膜形成用組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
1. 下記式(1)で表される繰り返し単位構造を含むトリアジン環含有重合体と、グリコールジアルキルエーテル系溶媒を50質量%超の割合で含む有機溶媒と、を含むことを特徴とするインクジェット塗布用膜形成用組成物、
【化1】
{式中、RおよびR′は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表し、
Arは、式(2)〜(13)で示される群から選ばれる少なくとも1種を表す。
【化2】
〔式中、R1〜R92は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、
93およびR94は、水素原子または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表し、
1およびW2は、互いに独立して、単結合、CR9596(R95およびR96は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基(ただし、これらは一緒になって環を形成していてもよい。)を表す。)、C=O、O、S、SO、SO2、またはNR97(R97は、水素原子または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表す。)を表し、
1およびX2は、互いに独立して、単結合、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基、または式(14)
【化3】
(式中、R98〜R101は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、
1およびY2は、互いに独立して、単結合または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基を表す。)で示される基を表す。〕}
2. 前記有機溶媒が、さらにグリコールモノアルキルエーテル系溶媒およびグリコール系溶媒のいずれか一方または双方を含む1のインクジェット塗布用膜形成用組成物、
3. 前記グリコールジアルキルエーテル系溶媒の質量Aと、グリコールモノアルキルエーテル系溶媒およびグリコール系溶媒の総質量Bとの比が、A:B=99:1〜51:49である2のインクジェット塗布用膜形成用組成物、
4. 前記グリコールジアルキルエーテル系溶媒が、ジエチレングリコールジアルキルエーテルである1〜3のいずれかのインクジェット塗布用膜形成用組成物、
5. 前記ジエチレングリコールジアルキルエーテルが、ジエチレングリコールジメチルエーテルである4のインクジェット塗布用膜形成用組成物、
6. 前記グリコールモノアルキルエーテル系溶媒が、プロピレングリコールモノアルキルエーテルである2〜5のいずれかのインクジェット塗布用膜形成用組成物、
7. 前記プロピレングリコールモノアルキルエーテルが、プロピレングリコールモノメチルエーテルである6のインクジェット塗布用膜形成用組成物、
8. 前記グリコール系溶媒が、ジエチレングリコールである2〜7のいずれかのインクジェット塗布用膜形成用組成物、
9. さらに架橋剤を含む1〜8のいずれかのインクジェット塗布用膜形成用組成物、
10. 前記架橋剤が、多官能(メタ)アクリル化合物である9のインクジェット塗布用膜形成用組成物、
11. 表面張力が、25〜35mN/mである1〜10のいずれかのインクジェット塗布用膜形成用組成物、
12. 23℃での粘度が、5〜20mPa・sである1〜11のいずれかのインクジェット塗布用膜形成用組成物、
13. 1〜12のいずれかの膜形成用組成物をインクジェット塗布して薄膜を形成する薄膜形成方法、
14. 13の方法により得られた薄膜、
15. 基材と、この基材上に形成された14の薄膜とを備える電子デバイス、
16. 基材と、この基材上に形成された14の薄膜とを備える光学部材
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、インクジェット塗布装置のヘッドを浸食しにくく、また、ヘッドからの液滴の吐出が良好なトリアジン環含有重合体を含む膜形成用組成物を提供できる。
この組成物を用いることで、インクジェット塗布装置を用いたパターン印刷により、目的とするパターンに応じた高屈折率膜を容易に作製することができる。
本発明の組成物から作製された薄膜は、高耐熱性、高屈折率、低体積収縮という特性を発揮し得るため、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、タッチパネル、光半導体(LED)素子、固体撮像素子、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜トランジスタ(TFT)、レンズ、プリズム、カメラ、双眼鏡、顕微鏡、半導体露光装置等を作製する際の一部材など、電子デバイスや光学材料の分野に好適に利用できる。
特に、本発明の組成物から作製された薄膜は、透明性が高く、屈折率も高いため、ITOや銀ナノワイヤ等の透明導電膜の視認性を改善することができ、透明導電膜の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るトリアジン環含有重合体は、下記式(1)で表される繰り返し単位構造を含むトリアジン環含有重合体と、グリコールジアルキルエーテル系溶媒を50質量%超の割合で含む有機溶媒と、を含むものである。
【0010】
【化4】
【0011】
上記式中、RおよびR′は、互いに独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラルキル基を表すが、屈折率をより高めるという観点から、ともに水素原子であることが好ましい。
本発明において、アルキル基の炭素数としては特に限定されるものではないが、1〜20が好ましく、ポリマーの耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素数1〜10がより好ましく、1〜3がより一層好ましい。また、その構造は、鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0012】
アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、1−メチル−シクロプロピル、2−メチル−シクロプロピル、n−ペンチル、1−メチル−n−ブチル、2−メチル−n−ブチル、3−メチル−n−ブチル、1,1−ジメチル−n−プロピル、1,2−ジメチル−n−プロピル、2,2−ジメチル−n−プロピル、1−エチル−n−プロピル、シクロペンチル、1−メチル−シクロブチル、2−メチル−シクロブチル、3−メチル−シクロブチル、1,2−ジメチル−シクロプロピル、2,3−ジメチル−シクロプロピル、1−エチル−シクロプロピル、2−エチル−シクロプロピル、n−ヘキシル、1−メチル−n−ペンチル、2−メチル−n−ペンチル、3−メチル−n−ペンチル、4−メチル−n−ペンチル、1,1−ジメチル−n−ブチル、1,2−ジメチル−n−ブチル、1,3−ジメチル−n−ブチル、2,2−ジメチル−n−ブチル、2,3−ジメチル−n−ブチル、3,3−ジメチル−n−ブチル、1−エチル−n−ブチル、2−エチル−n−ブチル、1,1,2−トリメチル−n−プロピル、1,2,2−トリメチル−n−プロピル、1−エチル−1−メチル−n−プロピル、1−エチル−2−メチル−n−プロピル、シクロヘキシル、1−メチル−シクロペンチル、2−メチル−シクロペンチル、3−メチル−シクロペンチル、1−エチル−シクロブチル、2−エチル−シクロブチル、3−エチル−シクロブチル、1,2−ジメチル−シクロブチル、1,3−ジメチル−シクロブチル、2,2−ジメチル−シクロブチル、2,3−ジメチル−シクロブチル、2,4−ジメチル−シクロブチル、3,3−ジメチル−シクロブチル、1−n−プロピル−シクロプロピル、2−n−プロピル−シクロプロピル、1−イソプロピル−シクロプロピル、2−イソプロピル−シクロプロピル、1,2,2−トリメチル−シクロプロピル、1,2,3−トリメチル−シクロプロピル、2,2,3−トリメチル−シクロプロピル、1−エチル−2−メチル−シクロプロピル、2−エチル−1−メチル−シクロプロピル、2−エチル−2−メチル−シクロプロピル、2−エチル−3−メチル−シクロプロピル基等が挙げられる。
【0013】
上記アルコキシ基の炭素数としては特に限定されるものではないが、1〜20が好ましく、ポリマーの耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素数1〜10がより好ましく、1〜3がより一層好ましい。また、そのアルキル部分の構造は、鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0014】
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシ、1−メチル−n−ブトキシ、2−メチル−n−ブトキシ、3−メチル−n−ブトキシ、1,1−ジメチル−n−プロポキシ、1,2−ジメチル−n−プロポキシ、2,2−ジメチル−n−プロポキシ、1−エチル−n−プロポキシ、n−ヘキシルオキシ、1−メチル−n−ペンチルオキシ、2−メチル−n−ペンチルオキシ、3−メチル−n−ペンチルオキシ、4−メチル−n−ペンチルオキシ、1,1−ジメチル−n−ブトキシ、1,2−ジメチル−n−ブトキシ、1,3−ジメチル−n−ブトキシ、2,2−ジメチル−n−ブトキシ、2,3−ジメチル−n−ブトキシ、3,3−ジメチル−n−ブトキシ、1−エチル−n−ブトキシ、2−エチル−n−ブトキシ、1,1,2−トリメチル−n−プロポキシ、1,2,2−トリメチル−n−プロポキシ、1−エチル−1−メチル−n−プロポキシ、1−エチル−2−メチル−n−プロポキシ基等が挙げられる。
【0015】
上記アリール基の炭素数としては特に限定されるものではないが、6〜40が好ましく、ポリマーの耐熱性をより高めることを考慮すると、炭素数6〜16がより好ましく、6〜13がより一層好ましい。
アリール基の具体例としては、フェニル、o−クロルフェニル、m−クロルフェニル、p−クロルフェニル、o−フルオロフェニル、p−フルオロフェニル、o−メトキシフェニル、p−メトキシフェニル、p−ニトロフェニル、p−シアノフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、o−ビフェニリル、m−ビフェニリル、p−ビフェニリル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリル、9−フェナントリル基等が挙げられる。
【0016】
アラルキル基の炭素数としては特に限定されるものではないが、炭素数7〜20が好ましく、そのアルキル部分は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。
その具体例としては、ベンジル、p−メチルフェニルメチル、m−メチルフェニルメチル、o−トリフルオロメチルフェニル、m−トリフルオロメチルフェニル、p−トリフルオロメチルフェニル、o−エチルフェニルメチル、m−エチルフェニルメチル、p−エチルフェニルメチル、2−プロピルフェニルメチル、4−イソプロピルフェニルメチル、4−イソブチルフェニルメチル、α−ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0017】
上記Arは、式(2)〜(13)で示される群から選ばれる少なくとも1種を表す。
【0018】
【化5】
【0019】
上記R1〜R92は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、R93およびR94は、水素原子または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表し、W1およびW2は、互いに独立して、単結合、CR9596(R95およびR96は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基(ただし、これらは一緒になって環を形成していてもよい。)を表す。)、C=O、O、S、SO、SO2、またはNR97(R97は、水素原子または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表す。)を表す。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
なお、アルキル基、アルコキシ基としては上記と同様のものが挙げられる。
また、X1およびX2は、互いに独立して、単結合、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基、または式(14)で示される基を表す。
【0020】
【化6】
【0021】
上記R98〜R101は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、Y1およびY2は、互いに独立して、単結合または炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基を表す。これらハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基としては上記と同様のものが挙げられる。
炭素数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン基等が挙げられる。
【0022】
これらの中でも、R1〜R92およびR98〜R101としては、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0023】
特に、Arとしては、式(2)、(5)〜(13)で示される少なくとも1種が好ましく、式(2)、(5)、(7)、(8)、(11)〜(13)で示される少なくとも1種がより好ましい。上記式(2)〜(13)で表されるアリール基の具体例としては、下記式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
【化7】
【0025】
これらの中でも、より高い屈折率のポリマーが得られることから、下記式で示されるアリール基がより好ましい。
【0026】
【化8】
【0027】
特に、低極性溶剤等の有機溶媒に対するトリアジン環含有重合体の溶解性をより高めることを考慮すると、Arとしては、式(15)で示されるm−フェニレン基が好ましい。
【0028】
【化9】
【0029】
本発明で用いるトリアジン環含有重合体としては、式(16)で示される繰り返し単位構造を有するものが好ましく、式(17)で示される繰り返し単位構造を有するものがより好ましい。
【0030】
【化10】
(式中、R、R′およびR1〜R4は、上記と同じ意味を表す。)
【0031】
【化11】
(式中、RおよびR′は、上記と同じ意味を表す。)
【0032】
本発明で用いるトリアジン環含有重合体としては、式(18)で示される高分岐重合体(ハイパーブランチポリマー)が最適である。
【0033】
【化12】
【0034】
本発明における重合体の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、500〜500,000が好ましく、さらに500〜100,000が好ましく、より耐熱性を向上させるとともに、収縮率を低くするという点から、2,000以上が好ましく、より溶解性を高め、得られた溶液の粘度を低下させるという点から、50,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、さらに10,000以下が好ましい。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCという)分析による標準ポリスチレン換算で得られる平均分子量である。
【0035】
本発明で用いるトリアジン環含有重合体(ハイパーブランチポリマー)は、上述した特許文献1に開示された手法に準じて製造することができる。
例えば、下記スキーム1に示されるように、繰り返し構造(21)を有する高分岐重合体(ハイパーブランチポリマー)は、ハロゲン化シアヌル(19)およびm−フェニレンジアミン化合物(20)を適当な有機溶媒中で反応させて得ることができる。
【0036】
【化13】
(式中、Xは、互いに独立してハロゲン原子を表す。Rは上記と同じ意味を表す。)
【0037】
下記スキーム2に示されるように、繰り返し構造(21)を有する高分岐重合体(ハイパーブランチポリマー)は、ハロゲン化シアヌル(19)およびm−フェニレンジアミン化合物(20)を適当な有機溶媒中で等量用いて反応させて得られる化合物(22)より合成することもできる。
【0038】
【化14】
(式中、Xは、互いに独立してハロゲン原子を表す。Rは上記と同じ意味を表す。)
【0039】
スキーム1および2の方法の場合、各原料の仕込み量としては、目的とする重合体が得られる限りにおいて任意であるが、ハロゲン化シアヌル(19)1当量に対し、ジアミノ化合物(20)0.01〜10当量が好ましい。
特に、スキーム1の方法の場合、ハロゲン化シアヌル(19)2当量に対して、ジアミノ化合物(20)を3当量用いることを避けることが好ましい。官能基の当量をずらすことで、ゲル化物の生成を防ぐことができる。
種々の分子量のトリアジン環末端を多く有する高分岐重合体(ハイパーブランチポリマー)を得るために、ハロゲン化シアヌル(19)2当量に対して、ジアミノ化合物(20)を3当量未満の量で用いることが好ましい。
一方、種々の分子量のアミン末端を多く有する高分岐重合体(ハイパーブランチポリマー)を得るために、ジアミノ化合物(20)3当量に対して、ハロゲン化シアヌル(19)を2当量未満の量で用いることが好ましい。
このように、ジアミノ化合物(20)やハロゲン化シアヌル(19)の量を適宜調節することで、得られる高分岐重合体(ハイパーブランチポリマー)の分子量を容易に調節することができる。
なお、高分岐重合体(ハイパーブランチポリマー)の分子量を調節する手法としては、有機溶媒中の濃度制御によっても可能であり、その場合の反応濃度(固形分濃度)は、1〜100質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜25質量%がより一層好ましい。
【0040】
上記有機溶媒としては、この種の反応において通常用いられる種々の溶媒を用いることができ、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピペリドン、N,N−ジメチルエチレン尿素、N,N,N’,N’−テトラメチルマロン酸アミド、N−メチルカプロラクタム、N−アセチルピロリジン、N,N−ジエチルアセトアミド、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルプロピオン酸アミド、N,N−ジメチルイソブチルアミド、N−メチルホルムアミド、N,N’−ジメチルプロピレン尿素等のアミド系溶媒、およびそれらの混合溶媒が挙げられる。
中でもN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、およびそれらの混合系が好ましく、特に、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが好適である。
【0041】
スキーム1およびスキーム2の第2段階の反応において、反応温度は、用いる溶媒の融点から沸点までの範囲で適宜設定すればよいが、特に、0〜150℃程度が好ましく、60〜100℃がより好ましい。
特にスキーム1の反応では、リニア性を抑え、分岐度を高めるという点から、反応温度は60〜150℃が好ましく、80〜150℃がより好ましく、80〜120℃がより一層好ましい。
ただし、上述した重量平均分子量の重合体を得るという観点から、ハロゲン化シアヌル(19)、ジアミノ化合物(20)の混合は、低温下で行うことが好ましく、その場合の温度としては、−50〜50℃程度が好ましく、−20〜50℃程度がより好ましく、−20〜10℃がより一層好ましい。低温仕込み後は、その温度で所定時間反応させた後、重合させる温度まで一気に(一段階で)昇温して反応を行うことが好ましい。
スキーム2の第1段階の方法において、反応温度は、用いる溶媒の融点から溶媒の沸点までの範囲で適宜設定すればよいが、特に、−50〜50℃程度が好ましく、−20〜50℃程度がより好ましく、−10〜50℃程度がより一層好ましく、−10〜10℃がさらに好ましい。
特にスキーム2の方法では、−50〜50℃で反応させる第1工程と、この工程に続いて60〜150℃で反応させる第2工程とからなる2段階工程を採用することが好ましい。
【0042】
上記各反応において、各成分の配合順序は任意であるが、スキーム1の反応においては、ハロゲン化シアヌル(19)またはジアミノ化合物(20)および有機溶媒を含む溶液を冷却し、当該溶液中に、ジアミノ化合物(20)またはハロゲン化シアヌル(19)を加える方法が好ましい。
両化合物の混合後は、上記低温下で0.5〜3時間程度反応させた後、60〜150℃に一気に加熱して重合させることが好ましい。
【0043】
また、スキーム2の反応において、予め溶媒に溶かしておく成分および後から加える成分はどちらでもよいが、ハロゲン化シアヌル(19)の冷却溶液中に、ジアミノ化合物(20)を添加する手法が好ましい。なお、添加は、滴下等によって徐々に加えても、全量一括して加えてもよい。
後から加える成分は、ニートで加えても、上述したような有機溶媒に溶かした溶液で加えてもよいが、操作の容易さや反応のコントロールのし易さなどを考慮すると、後者の手法が好適である。
【0044】
また、上記スキーム1およびスキーム2の第2段階の反応では、重合時または重合後に通常用いられる種々の塩基を添加してもよい。
この塩基の具体例としては、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウムエトキシド、酢酸ナトリウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、酸化リチウム、酢酸カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化バリウム、リン酸三リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、フッ化セシウム、酸化アルミニウム、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N−メチルモルホリン等が挙げられる。
塩基の添加量は、ハロゲン化シアヌル(19)1当量に対して1〜100当量が好ましく、1〜10当量がより好ましい。なお、これらの塩基は水溶液にして用いてもよい。
いずれのスキームの方法においても、反応終了後、生成物は再沈法等によって容易に精製できる。
【0045】
なお、本発明においては、少なくとも1つの末端トリアジン環のハロゲン原子の一部を、アルキル、アラルキル、アリール、アルキルアミノ、アルコキシシリル基含有アルキルアミノ、アラルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アラルキルオキシ、アリールオキシ、エステル基等でキャップしてもよい。
これらの中でも、アルキルアミノ、アルコキシシリル基含有アルキルアミノ、アラルキルアミノ、アリールアミノ基が好ましく、アルキルアミノ、アリールアミノ基がより好ましく、アリールアミノ基がさらに好ましい。
上記アルキル基、アルコキシ基としては上記と同様のものが挙げられる。
【0046】
エステル基の具体例としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル、o−クロルフェニル、m−クロルフェニル、p−クロルフェニル、o−フルオロフェニル、p−フルオロフェニル、o−メトキシフェニル、p−メトキシフェニル、p−ニトロフェニル、p−シアノフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、o−ビフェニリル、m−ビフェニリル、p−ビフェニリル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリル、9−フェナントリル基等が挙げられる。
アラルキル基の具体例としては、ベンジル、p−メチルフェニルメチル、m−メチルフェニルメチル、o−エチルフェニルメチル、m−エチルフェニルメチル、p−エチルフェニルメチル、2−プロピルフェニルメチル、4−イソプロピルフェニルメチル、4−イソブチルフェニルメチル、α−ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0047】
アルキルアミノ基の具体例としては、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n−ブチルアミノ、イソブチルアミノ、s−ブチルアミノ、t−ブチルアミノ、n−ペンチルアミノ、1−メチル−n−ブチルアミノ、2−メチル−n−ブチルアミノ、3−メチル−n−ブチルアミノ、1,1−ジメチル−n−プロピルアミノ、1,2−ジメチル−n−プロピルアミノ、2,2−ジメチル−n−プロピルアミノ、1−エチル−n−プロピルアミノ、n−ヘキシルアミノ、1−メチル−n−ペンチルアミノ、2−メチル−n−ペンチルアミノ、3−メチル−n−ペンチルアミノ、4−メチル−n−ペンチルアミノ、1,1−ジメチル−n−ブチルアミノ、1,2−ジメチル−n−ブチルアミノ、1,3−ジメチル−n−ブチルアミノ、2,2−ジメチル−n−ブチルアミノ、2,3−ジメチル−n−ブチルアミノ、3,3−ジメチル−n−ブチルアミノ、1−エチル−n−ブチルアミノ、2−エチル−n−ブチルアミノ、1,1,2−トリメチル−n−プロピルアミノ、1,2,2−トリメチル−n−プロピルアミノ、1−エチル−1−メチル−n−プロピルアミノ、1−エチル−2−メチル−n−プロピルアミノ基等が挙げられる。
【0048】
アラルキルアミノ基の具体例としては、ベンジルアミノ、メトキシカルボニルフェニルメチルアミノ、エトキシカルボニルフェニルメチルアミノ、p−メチルフェニルメチルアミノ、m−メチルフェニルメチルアミノ、o−エチルフェニルメチルアミノ、m−エチルフェニルメチルアミノ、p−エチルフェニルメチルアミノ、2−プロピルフェニルメチルアミノ、4−イソプロピルフェニルメチルアミノ、4−イソブチルフェニルメチルアミノ、ナフチルメチルアミノ、メトキシカルボニルナフチルメチルアミノ、エトキシカルボニルナフチルメチルアミノ基等が挙げられる。
アリールアミノ基の具体例としては、フェニルアミノ、メトキシカルボニルフェニルアミノ、エトキシカルボニルフェニルアミノ、ナフチルアミノ、メトキシカルボニルナフチルアミノ、エトキシカルボニルナフチルアミノ、アントラニルアミノ、ピレニルアミノ、ビフェニルアミノ、ターフェニルアミノ、フルオレニルアミノ基等が挙げられる。
【0049】
アルコキシシリル基含有アルキルアミノ基としては、モノアルコキシシリル基含有アルキルアミノ、ジアルコキシシリル基含有アルキルアミノ、トリアルコキシシリル基含有アルキルアミノ基のいずれでもよく、その具体例としては、3−トリメトキシシリルプロピルアミノ、3−トリエトキシシリルプロピルアミノ、3−ジメチルエトキシシリルプロピルアミノ、3−メチルジエトキシシリルプロピルアミノ、N−(2−アミノエチル)−3−ジメチルメトキシシリルプロピルアミノ、N−(2−アミノエチル)−3−メチルジメトキシシリルプロピルアミノ、N−(2−アミノエチル)−3−トリメトキシシリルプロピルアミノ基等が挙げられる。
【0050】
アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ、ナフトキシ、アントラニルオキシ、ピレニルオキシ、ビフェニルオキシ、ターフェニルオキシ、フルオレニルオキシ基等が挙げられる。
アラルキルオキシ基の具体例としては、ベンジルオキシ、p−メチルフェニルメチルオキシ、m−メチルフェニルメチルオキシ、o−エチルフェニルメチルオキシ、m−エチルフェニルメチルオキシ、p−エチルフェニルメチルオキシ、2−プロピルフェニルメチルオキシ、4−イソプロピルフェニルメチルオキシ、4−イソブチルフェニルメチルオキシ、α−ナフチルメチルオキシ基等が挙げられる。
【0051】
これらの基は、トリアジン環上のハロゲン原子を対応する置換基を与える化合物で置換することで容易に導入することができ、例えば、下記式スキーム3に示されるように、アニリン誘導体を加えて反応させることで、少なくとも1つの末端にフェニルアミノ基を有する高分岐重合体(23)が得られる。
【0052】
【化15】
(式中、XおよびRは上記と同じ意味を表す。)
【0053】
この際、有機モノアミンの同時仕込みを行う、すなわち、有機モノアミンの存在下で、ハロゲン化シアヌル化合物と、ジアミノアリール化合物とを反応させることで、ハイパーブランチポリマーの剛直性が緩和された、分岐度の低い柔らかいハイパーブランチポリマーを得ることができる。
この手法によって得られたハイパーブランチポリマーは、溶媒への溶解性(凝集抑制)や、架橋性に優れたものとなる。
ここで、有機モノアミンとしては、アルキルモノアミン、アラルキルモノアミン、アリールモノアミンのいずれを用いることもできる。
【0054】
アルキルモノアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、1−メチル−n−ブチルアミン、2−メチル−n−ブチルアミン、3−メチル−n−ブチルアミン、1,1−ジメチル−n−プロピルアミン、1,2−ジメチル−n−プロピルアミン、2,2−ジメチル−n−プロピルアミン、1−エチル−n−プロピルアミン、n−ヘキシルアミン、1−メチル−n−ペンチルアミン、2−メチル−n−ペンチルアミン、3−メチル−n−ペンチルアミン、4−メチル−n−ペンチルアミン、1,1−ジメチル−n−ブチルアミン、1,2−ジメチル−n−ブチルアミン、1,3−ジメチル−n−ブチルアミン、2,2−ジメチル−n−ブチルアミン、2,3−ジメチル−n−ブチルアミン、3,3−ジメチル−n−ブチルアミン、1−エチル−n−ブチルアミン、2−エチル−n−ブチルアミン、1,1,2−トリメチル−n−プロピルアミン、1,2,2−トリメチル−n−プロピルアミン、1−エチル−1−メチル−n−プロピルアミン、1−エチル−2−メチル−n−プロピルアミン、2−エチルヘキシルアミン等が挙げられる。
【0055】
アラルキルモノアミンの具体例としては、ベンジルアミン、p−メトキシカルボニルベンジルアミン、p−エトキシカルボニルフェニルベンジル、p−メチルベンジルアミン、m−メチルベンジルアミン、o−メトキシベンジルアミン等が挙げられる。
アリールモノアミンの具体例としては、アニリン、p−メトキシカルボニルアニリン、p−エトキシカルボニルアニリン、p−メトキシアニリン、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、アントラニルアミン、1−アミノピレン、4−ビフェニリルアミン、o−フェニルアニリン、4−アミノ−p−ターフェニル、2−アミノフルオレン等が挙げられる。
【0056】
この場合、有機モノアミンの使用量は、ハロゲン化シアヌル化合物に対して、0.05〜500当量とすることが好ましく、0.05〜120当量がより好ましく、0.05〜50当量がより一層好ましい。
この場合の反応温度は、リニア性を抑え、分岐度を高めるという点から、反応温度は60〜150℃が好ましく、80〜150℃がより好ましく、80〜120℃がより一層好ましい。
ただし、上述のとおり、有機モノアミン、ハロゲン化シアヌル化合物、ジアミノアリール化合物の3成分の混合は、上述した低温下で行うことが好ましく、また、低温仕込み後は、重合させる温度まで一気に(一段階で)昇温して反応を行うことが好ましい。
また、ハロゲン化シアヌル化合物とジアミノアリール化合物の2成分の混合を上述した低温下で行った後、当該低温下で、有機モノアミンを加え、重合させる温度まで一気に(一段階で)昇温して反応を行ってもよい。
また、このような有機モノアミンの存在下で、ハロゲン化シアヌル化合物と、ジアミノアリール化合物とを反応させる反応は、上述と同様の有機溶媒を用いて行ってもよい。
【0057】
本発明の膜形成用組成物は、上記トリアジン環含有重合体を、グリコールジアルキルエーテル系溶媒を50質量%超の割合で含む有機溶媒に溶かして調製される。
グリコールジアルキルエーテル系溶媒の具体例としては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられ、中でも、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテルが好ましく、ジエチレングリコールジメチルエーテルがより好ましい。これらのグリコールジアルキルエーテル系溶媒は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明において、グリコールジアルキルエーテル系溶媒の使用量は、組成物に用いられる有機溶媒中50質量%超とされるが、組成物の粘度や表面張力をインクジェット塗布装置に適した範囲とするという観点から、55質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、65質量%以上がより一層好ましい。
【0058】
また、膜形成用組成物の粘度や表面張力をインクジェット塗布装置により適した範囲とすることを考慮すると、上記グリコールジアルキルエーテル系溶媒に加え、さらにグリコールモノアルキルエーテル系溶媒およびグリコール系溶媒のいずれか一方または双方を用いることが好ましく、いずれか一方をグリコールジアルキルエーテル系溶媒と併用することがより好ましい。
グリコールモノアルキルエーテル系溶媒の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられ、中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。これらのグリコールモノアルキルエーテル系溶媒は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
グリコール系溶媒の具体例としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられ、中でも、ジエチレングリコールが好ましい。これらのグリコール系溶媒は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0059】
上記グリコールモノアルキルエーテル系溶媒および/またはグリコール系溶媒を併用する場合、その使用量としては特に限定されるものではないが、得られる膜形成用組成物のインクジェット塗布適性を考慮すると、グリコールジアルキルエーテル系溶媒の質量を「A」とし、グリコールモノアルキルエーテル系溶媒およびグリコール系溶媒の総質量を「B」とした場合に、A:B=99:1〜51:49程度が好ましく、90:10〜60:40程度がより好ましく、80:20〜65:35程度がより一層好ましい。
【0060】
本発明の膜形成用組成物では、有機溶媒として、上記グリコールジアルキルエーテル系溶媒と、グリコールモノアルキルエーテル系溶媒および/またはグリコール系溶媒と、のみからなるものを用いてもよいが、必要に応じてその他の有機溶媒を添加してもよい。
そのような有機溶媒としては、例えば、トルエン、p−キシレン、o−キシレン、m−キシレン、エチルベンゼン、スチレン、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1−オクタノール、1−メトキシ−2−ブタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ベンジルアルコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルノーマルブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノーマルプロピル、酢酸イソブチル、酢酸ノーマルブチル、乳酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、アリルアルコール、ノーマルプロパノール、2−メチル−2−ブタノール、イソブタノール、ノーマルブタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−エチルヘキサノール、1−メトキシ−2−プロパノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、N−シクロヘキシル−2−ピロリジノン等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
これらのその他の有機溶媒を用いる場合、その使用量は、組成物調製に用いる有機溶媒中、10質量%以下とすることが好ましく、5質量%以下とすることがより好ましい。
【0061】
さらに、本発明の膜形成用組成物には、必要に応じて架橋剤を添加してもよい。
架橋剤としては、上述したトリアジン環含有重合体と反応し得る置換基を有する化合物であれば特に限定されるものではない。
そのような化合物としては、メチロール基、メトキシメチル基などの架橋形成置換基を有するメラミン系化合物、置換尿素系化合物、エポキシ基またはオキセタン基などの架橋形成置換基を含有する化合物、ブロック化イソシアナートを含有する化合物、酸無水物を有する化合物、(メタ)アクリル基を有する化合物、フェノプラスト化合物等が挙げられるが、耐熱性や保存安定性の観点からエポキシ基、ブロックイソシアネート基、(メタ)アクリル基を含有する化合物が好ましく、特に、ブロックイソシアネート基を有する化合物や、開始剤を用いなくとも光硬化可能な組成物を与える多官能エポキシ化合物および/または多官能(メタ)アクリル化合物が好ましい。
なお、これらの化合物は、重合体の末端処理に用いる場合は少なくとも1個の架橋形成置換基を有していればよく、重合体同士の架橋処理に用いる場合は少なくとも2個の架橋形成置換基を有する必要がある。
【0062】
多官能エポキシ化合物としては、エポキシ基を一分子中2個以上有するものであれば特に限定されるものではない。
その具体例としては、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−4−(エポキシエチル)シクロヘキサン、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、2,6−ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル、1,1,3−トリス[p−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、4,4’−メチレンビス(N,N−ジグリシジルアニリン)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0063】
また、市販品として、少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂である、YH−434、YH434L(東都化成(株)製)、シクロヘキセンオキサイド構造を有するエポキシ樹脂である、エポリードGT−401、同GT−403、同GT−301、同GT−302、セロキサイド2021、同3000(ダイセル化学工業(株)製)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である、エピコート(現、jER)1001、同1002、同1003、同1004、同1007、同1009、同1010、同828(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂である、エピコート(現、jER)807(ジャパンエポキシレジン(株)製)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂である、エピコート(現、jER)152、同154(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPPN201、同202(以上、日本化薬(株)製)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂である、EOCN−102、同103S、同104S、同1020、同1025、同1027(以上、日本化薬(株)製)、エピコート(現、jER)180S75(ジャパンエポキシレジン(株)製)、脂環式エポキシ樹脂である、デナコールEX−252(ナガセケムテックス(株)製)、CY175、CY177、CY179(以上、CIBA−GEIGY A.G製)、アラルダイトCY−182、同CY−192、同CY−184(以上、CIBA−GEIGY A.G製)、エピクロン200、同400(以上、DIC(株)製)、エピコート(現、jER)871、同872(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、ED−5661、ED−5662(以上、セラニーズコーティング(株)製)、脂肪族ポリグリシジルエーテルである、デナコールEX−611、同EX−612、同EX−614、同EX−622、同EX−411、同EX−512、同EX−522、同EX−421、同EX−313、同EX−314、同EX−321(ナガセケムテックス(株)製)等を用いることもできる。
【0064】
多官能(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリル基を一分子中2個以上有するものであれば特に限定されるものではない。
その具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化グリセリントリメタクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリグリセリンモノエチレンオキサイドポリアクリレート、ポリグリセリンポリエチレングリコールポリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、多塩基酸変性アクリルオリゴマー等が挙げられる。
【0065】
また、多官能(メタ)アクリル化合物は、市販品として入手が可能であり、その具体例としては、NKエステルA−200、同A−400、同A−600、同A−1000、同A−9300(イソシアヌル酸トリス(2−アクリロイルオキシエチル))、同A−9300−1CL、同A−TMPT、同UA−53H、同1G、同2G、同3G、同4G、同9G、同14G、同23G、同ABE−300、同A−BPE−4、同A−BPE−6、同A−BPE−10、同A−BPE−20、同A−BPE−30、同BPE−80N、同BPE−100N、同BPE−200、同BPE−500、同BPE−900、同BPE−1300N、同A−GLY−3E、同A−GLY−9E、同A−GLY−20E、同A−TMPT−3EO、同A−TMPT−9EO、同AT−20E、同ATM−4E、同ATM−35E(以上、新中村化学工業(株)製)、KAYARAD(登録商標)DPEA−12、同PEG400DA、同THE−330、同RP−1040(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−210、M−350(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD(登録商標)DPHA、同NPGDA、同PET30(以上、日本化薬(株)製)、NKエステル A−DPH、同A−TMPT、同A−DCP、同A−HD−N、同TMPT、同DCP、同NPG、同HD−N(以上、新中村化学工業(株)製)、NKオリゴ U−15HA(新中村化学工業(株)製)、NKポリマー バナレジンGH−1203(新中村化学工業(株)製)、DN−0075(日本化薬(株)製)等が挙げられる。
上記多塩基酸変性アクリルオリゴマーも市販品として入手が可能であり、その具体例としては、アロニックスM−510,520(以上、東亞合成(株)製)等が挙げられる。
【0066】
酸無水物化合物としては、2分子のカルボン酸を脱水縮合させたカルボン酸無水物であれば、特に限定されるものではなく、その具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、オクチル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸等の分子内に1個の酸無水物基を有するもの;1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等の分子内に2個の酸無水物基を有するもの等が挙げられる。
【0067】
ブロック化イソシアネートを含有する化合物としては、イソシアネート基(−NCO)が適当な保護基によりブロックされたブロック化イソシアネート基を一分子中2個以上有し、熱硬化の際の高温に曝されると、保護基(ブロック部分)が熱解離して外れ、生じたイソシアネート基が樹脂との間で架橋反応を起こすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、下記式で示される基を一分子中2個以上(なお、これらの基は同一のものでも、また各々異なっているものでもよい)有する化合物が挙げられる。
【0068】
【化16】
(式中、Rbはブロック部の有機基を表す。)
【0069】
このような化合物は、例えば、一分子中2個以上のイソシアネート基を有する化合物に対して適当なブロック剤を反応させて得ることができる。
一分子中2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネートや、これらの二量体、三量体、および、これらとジオール類、トリオール類、ジアミン類、またはトリアミン類との反応物などが挙げられる。
ブロック剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−エトキシヘキサノール、2−N,N−ジメチルアミノエタノール、2−エトキシエタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;フェノール、o−ニトロフェノール、p−クロロフェノール、o−、m−またはp−クレゾール等のフェノール類;ε−カプロラクタム等のラクタム類、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム類;ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール等のピラゾール類;ドデカンチオール、ベンゼンチオール等のチオール類などが挙げられる。
【0070】
ブロック化イソシアネートを含有する化合物は、市販品としても入手が可能であり、その具体例としては、B−830、B−815N、B−842N、B−870N、B−874N、B−882N、B−7005、B−7030、B−7075、B−5010(以上、三井化学ポリウレタン(株)製)、デュラネート(登録商標)17B−60PX、同TPA−B80E、同MF−B60X、同MF−K60X、同E402−B80T(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、カレンズMOI−BM(登録商標)(以上、昭和電工(株)製)等が挙げられる。
【0071】
アミノプラスト化合物としては、メトキシメチレン基を一分子中2個以上有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン CYMEL(登録商標)303、テトラブトキシメチルグリコールウリル 同1170、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン 同1123(以上、日本サイテックインダストリーズ(株)製)等のサイメルシリーズ、メチル化メラミン樹脂であるニカラック(登録商標)MW−30HM、同MW−390、同MW−100LM、同MX−750LM、メチル化尿素樹脂である同MX−270、同MX−280同MX−290(以上、(株)三和ケミカル製)等のニカラックシリーズ等のメラミン系化合物が挙げられる。
オキセタン化合物としては、オキセタニル基を一分子中2個以上有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、オキセタニル基を含有するOXT−221、OX−SQ−H、OX−SC(以上、東亜合成(株)製)等が挙げられる。
【0072】
フェノプラスト化合物は、ヒドロキシメチレン基を一分子中2個以上有し、そして熱硬化の際の高温に曝されると、本発明の重合体との間で脱水縮合反応により架橋反応が進行するものである。
フェノプラスト化合物としては、例えば、2,6−ジヒドロキシメチル−4−メチルフェノール、2,4−ジヒドロキシメチル−6−メチルフェノール、ビス(2−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−5−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジヒドロキシメチルフェニル)プロパン、ビス(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)ホルミルメタン、α,α−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ホルミルトルエン等が挙げられる。
フェノプラスト化合物は、市販品としても入手が可能であり、その具体例としては、26DMPC、46DMOC、DM−BIPC−F、DM−BIOC−F、TM−BIP−A、BISA−F、BI25X−DF、BI25X−TPA(以上、旭有機材工業(株)製)等が挙げられる。
【0073】
これらの中でも、架橋剤配合による屈折率低下を抑制し得るとともに、硬化反応が速やかに進行するという点から、多官能(メタ)アクリル化合物が好適であり、その中でも、トリアジン環含有重合体との相溶性に優れていることから、下記イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリル化合物がより好ましい。
このような骨格を有する多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、NKエステルA−9300、同A−9300−1CL(いずれも、新中村化学工業(株)製)が挙げられる。
【0074】
【化17】
(式中、R111〜R113は、互いに独立して、末端に少なくとも1つの(メタ)アクリル基を有する一価の有機基である。)
【0075】
また、硬化速度をより向上させるとともに、得られる硬化膜の耐溶剤性および耐酸性、耐アルカリ性を高めるという観点から、25℃で液体であり、かつ、その粘度が5000mPa・s以下、好ましくは1〜3000mPa・s、より好ましくは1〜1000mPa・s、より一層好ましくは1〜500mPa・sの多官能(メタ)アクリル化合物(以下、低粘度架橋剤という)を、単独もしくは2種以上組み合わせて、または、上記イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリル化合物と組み合わせて用いることが好適である。
このような低粘度架橋剤も市販品として入手可能であり、例えば、上述した多官能(メタ)アクリル化合物のうち、NKエステルA−GLY−3E(85mPa・s,25℃)、同A−GLY−9E(95mPa・s,25℃)、同A−GLY−20E(200mPa・s,25℃)、同A−TMPT−3EO(60mPa・s,25℃)、同A−TMPT−9EO、同ATM−4E(150mPa・s,25℃)、同ATM−35E(350mPa・s,25℃)(以上、新中村化学工業(株)製)等の、(メタ)アクリル基間の鎖長が比較的長い架橋剤が挙げられる。
【0076】
さらに、得られる硬化膜の耐アルカリ性をも向上させることを考慮すると、NKエステルA−GLY−20E(新中村化学工業(株)製)、および同ATM−35E(新中村化学工業(株)製)の少なくとも一方と、上記イソシアヌル酸骨格を有する多官能(メタ)アクリル化合物とを組み合わせて用いることが好適である。
【0077】
また、PETやポリオレフィンフィルム等の保護フィルムに本発明のトリアジン環含有重合体からなる薄膜を積層し、保護フィルムを介して光照射する場合、薄膜積層フィルムにおいても酸素阻害を受けることなく良好な硬化性を得ることができる。この場合、保護フィルムは硬化後に剥離する必要があるため、剥離性の良好な薄膜を与える多塩基酸変性アクリルオリゴマーを用いることが好ましい。
【0078】
上述した架橋剤は単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。架橋剤の使用量は、トリアジン環含有重合体100質量部に対して、1〜100質量部が好ましいが、溶剤耐性を考慮すると、その下限は、好ましくは2質量部、より好ましくは5質量部であり、さらには、屈折率をコントロールすることを考慮すると、その上限は好ましくは20質量部、より好ましくは15質量部である。
【0079】
本発明の組成物には、それぞれの架橋剤に応じた開始剤を配合することもできる。なお、上述のとおり、架橋剤として多官能エポキシ化合物および/または多官能(メタ)アクリル化合物を用いる場合、開始剤を使用せずとも光硬化が進行して硬化膜を与えるものであるが、その場合に開始剤を使用しても差し支えない。
【0080】
多官能エポキシ化合物を架橋剤として用いる場合には、光酸発生剤や光塩基発生剤を用いることができる。
光酸発生剤としては、公知のものから適宜選択して用いればよく、例えば、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩やヨードニウム塩などのオニウム塩誘導体を用いることができる。
その具体例としては、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メトキシフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート等のアリールジアゾニウム塩;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等のジアリールヨードニウム塩;トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4′−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4′−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビスヘキサフルオロホスフェート、4,4′−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4′−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4−[4′−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ジ(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4′−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ジ(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のトリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。
【0081】
これらのオニウム塩は市販品を用いてもよく、その具体例としては、サンエイドSI−60、SI−80、SI−100、SI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−L145、SI−L150、SI−L160、SI−L110、SI−L147(以上、三新化学工業(株)製)、UVI−6950、UVI−6970、UVI−6974、UVI−6990、UVI−6992(以上、ユニオンカーバイド社製)、CPI−100P、CPI−100A、CPI−200K、CPI−200S(以上、サンアプロ(株)製)、アデカオプトマーSP−150、SP−151、SP−170、SP−171(以上、旭電化工業(株)製)、イルガキュア 261(BASF社製)、CI−2481、CI−2624、CI−2639、CI−2064(以上、日本曹達(株)製)、CD−1010、CD−1011、CD−1012(以上、サートマー社製)、DS−100、DS−101、DAM−101、DAM−102、DAM−105、DAM−201、DSM−301、NAI−100、NAI−101、NAI−105、NAI−106、SI−100、SI−101、SI−105、SI−106、PI−105、NDI−105、BENZOIN TOSYLATE、MBZ−101、MBZ−301、PYR−100、PYR−200、DNB−101、NB−101、NB−201、BBI−101、BBI−102、BBI−103、BBI−109(以上、ミドリ化学(株)製)、PCI−061T、PCI−062T、PCI−020T、PCI−022T(以上、日本化薬(株)製)、IBPF、IBCF(三和ケミカル(株)製)等を挙げることができる。
【0082】
一方、光塩基発生剤としても、公知のものから適宜選択して用いればよく、例えば、Co−アミン錯体系、オキシムカルボン酸エステル系、カルバミン酸エステル系、四級アンモニウム塩系光塩基発生剤などを用いることができる。
その具体例としては、2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、O−カルバモイルヒドロキシルアミド、O−カルバモイルオキシム、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン1,6−ジアミン、4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン、N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2’−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2’,4’−ジニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン等が挙げられる。
また、光塩基発生剤は市販品を用いてもよく、その具体例としては、TPS−OH、NBC−101、ANC−101(いずれも製品名、みどり化学(株)製)等が挙げられる。
【0083】
光酸または塩基発生剤を用いる場合、多官能エポキシ化合物100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
なお、必要に応じてエポキシ樹脂硬化剤を、多官能エポキシ化合物100質量部に対して、1〜100質量部の量で配合してもよい。
【0084】
一方、多官能(メタ)アクリル化合物を用いる場合には、光ラジカル重合開始剤を用いることができる。
光ラジカル重合開始剤としても、公知のものから適宜選択して用いればよく、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのベンゾイルベンゾエート、アミロキシムエステル、オキシムエステル類、テトラメチルチウラムモノサルファイドおよびチオキサントン類等が挙げられる。
特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。光開裂型の光ラジカル重合開始剤については、最新UV硬化技術(159頁、発行人:高薄一弘、発行所:(株)技術情報協会、1991年発行)に記載されている。
市販の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、BASF社製 商品名:イルガキュア 127、184、369、379、379EG、651、500、754、819、903、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61、OXE01、OXE02、ダロキュア 1116、1173、MBF、BASF社製 商品名:ルシリン TPO、UCB社製 商品名:ユベクリル P36、フラテツリ・ランベルティ社製 商品名:エザキュアー KIP150、KIP65LT、KIP100F、KT37、KT55、KTO46、KIP75/B等が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤を用いる場合、多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対して、0.1〜200質量部の範囲で使用することが好ましく、1〜150質量部の範囲で使用することがより好ましい。
【0085】
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、トリアジン環含有重合体、架橋剤および溶媒以外のその他の成分、例えば、レベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、無機微粒子などの添加剤が含まれていてもよい。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、商品名エフトップEF301、EF303、EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製(旧(株)ジェムコ製))、商品名メガファックF171、F173、R−08、R−30、R−40、F−553、F−554、RS−75、RS−72−K(DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、商品名アサヒガードAG710,サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、BYK−302、BYK−307、BYK−322、BYK−323、BYK−330、BYK−333、BYK−370、BYK−375、BYK−378(ビックケミー・ジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0086】
これらの界面活性剤は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の使用量は、トリアジン環含有重合体100質量部に対して0.0001〜5質量部が好ましく、0.001〜1質量部がより好ましく、0.01〜0.5質量部がより一層好ましい。
【0087】
無機微粒子としては、例えば、Be,Al,Si,Ti,V,Fe,Cu,Zn,Y,Zr,Nb,Mo,In,Sn,Sb,Ta,W,Pb,BiおよびCeからなる群から選ばれる1種または2種以上の金属の酸化物、硫化物または窒化物が挙げられ、特に、これらの金属酸化物が好適である。なお、無機微粒子は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
金属酸化物の具体例としては、Al23、ZnO、TiO2、ZrO2、Fe23、Sb25、BeO、ZnO、SnO2、CeO2、SiO2、WO3などが挙げられる。
また、複数の金属酸化物を複合酸化物として用いることも有効である。複合酸化物とは、微粒子の製造段階で2種以上の無機酸化物を混合させたものである。例えば、TiO2とZrO2、TiO2とZrO2とSnO2、ZrO2とSnO2との複合酸化物などが挙げられる。
さらに、上記金属の化合物であってもよい。例えば、ZnSb26、BaTiO3、SrTiO3、SrSnO3などが挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができ、さらに上記の酸化物と混合して用いてもよい。
なお、上記その他の成分は、本発明の組成物を調製する際の任意の工程で添加することができる。
【0088】
本発明の膜形成用組成物中の固形分濃度は、インクジェット塗布性に影響を与えない範囲であれば特に限定されず、使用するインクジェット塗布装置や目的とする膜の厚み等に応じて適宜設定すればよい。具体的には、固形分濃度1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、10〜25質量%がより一層好ましい。
また、膜形成用組成物の粘度は、インクジェット塗布適性という点から、23℃で5〜35mPa・sが好ましく、5〜25mPa・sがより好ましく、5〜20mPa・sがより一層好ましい。
さらに、膜形成用組成物の表面張力は、インクジェット塗布適性という点から、15〜40mN/mが好ましく、20〜35mN/mがより好ましい。
【0089】
本発明の膜形成用組成物は、インクジェット塗布装置を用いたインクジェット法により基材に塗布し、その後、必要に応じて加熱して溶剤を蒸発させた後、加熱または光照射して所望の薄膜または硬化膜とすることができる。
インクジェット塗布装置としては、特に制限はなく、従来公知のインクジェット塗布装置から適宜選択して用いればよい。
【0090】
基材としては、シリコン、インジウム錫酸化物(ITO)が成膜されたガラス、インジウム亜鉛酸化物(IZO)が成膜されたガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、プラスチック、ガラス、石英、セラミックス等からなる基材等が挙げられ、可撓性を有するフレキシブル基材を用いることもできる。
焼成温度は、溶媒を蒸発させる目的では特に限定されず、例えば110〜400℃で行うことができる。
焼成方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレートやオーブンを用いて、大気、窒素等の不活性ガス、真空中等の適切な雰囲気下で蒸発させればよい。
焼成温度および焼成時間は、目的とする電子デバイスのプロセス工程に適合した条件を選択すればよく、得られる膜の物性値が電子デバイスの要求特性に適合するような焼成条件を選択すればよい。
光照射する場合の条件も特に限定されるものではなく、用いるトリアジン環含有重合体および架橋剤に応じて、適宜な照射エネルギーおよび時間を採用すればよい。
【0091】
以上のようにして得られた本発明の薄膜や硬化膜は、高耐熱性、高屈折率、および低体積収縮を達成できるため、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、タッチパネル、光半導体(LED)素子、固体撮像素子、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜トランジスタ(TFT)、レンズ、プリズムカメラ、双眼鏡、顕微鏡、半導体露光装置などを作製する際の一部材など、電子デバイスや光学材料分野に好適に利用できる。
特に、本発明の組成物から作製された薄膜や硬化膜は、透明性が高く、屈折率も高いため、ITOや銀ナノワイヤ等の透明導電膜の視認性を改善することができ、透明導電膜の劣化を抑制することができる。
透明導電膜としては、ITOフィルム、IZOフィルム、金属ナノ粒子、金属ナノワイヤ、金属ナノメッシュ等の導電性ナノ構造を有する透明導電膜が好ましく、導電性ナノ構造を有する透明導電膜がより好ましい。導電性ナノ構造を構成する金属は特に限定されないが、銀、金、銅、ニッケル、白金、コバルト、鉄、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドミウム、オスミウム、イリジウム、これらの合金等が挙げられる。すなわち、銀ナノ粒子、銀ナノワイヤ、銀ナノメッシュ、金ナノ粒子、金ナノワイヤ、金ナノメッシュ、銅ナノ粒子、銅ナノワイヤ、銅ナノメッシュ等を有する透明導電膜が好ましく、特に銀ナノワイヤを有する透明導電膜が好ましい。
【実施例】
【0092】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた各測定装置は以下のとおりである。
[GPC]
装置:東ソー(株)製 HLC−8200 GPC
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標) GPC KF−804L +KF−805L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
検出器:UV(254nm)
検量線:標準ポリスチレン
[エリプソメーター]
装置:ジェー・エー・ウーラム・ジャパン製 多入射角分光エリプソメーターVASE
[示差熱天秤(TG−DTA)]
装置:(株)リガク製 TG−8120
昇温速度:10℃/分
測定温度:25℃−750℃
[インクジェットシステム]
装置:クラスターテクノロジー(株)製 Inkjet Designer
ドライバー:クラスターテクノロジー(株)製 Wave Builder32(登録商標) PIJD−1SET
ヘッド:クラスターテクノロジー(株)製 Pulse Injector(登録商標) PIJ−60ASET(ノズル径:60μm)
[粘度]
装置:E型粘度計(東機産業(株)製、Viscometer TV−22)
[表面張力]
装置:協和界面科学(株)製、自動表面張力計CBVP−Z
【0093】
[1]トリアジン環含有重合体の合成
[合成例1]高分子化合物[3]の合成
【化18】
【0094】
窒素下、1000mL四口フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)456.02gを加え、アセトン−ドライアイス浴により−10℃まで冷却し、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン(84.83g、0.460mol、エポニックデグザ社製)を加え溶解した。その後、DMAc304.01gに溶解したm−フェニレンジアミン(62.18g、0.575mol)、およびアニリン(14.57g、0.156mol)を滴下した。滴下後30分撹拌し、この反応溶液を、予め2000mL四口フラスコにDMAc621.85gを加えてオイルバスで85℃に加熱してある槽へ送液ポンプにより1時間かけて滴下し、1時間撹拌して重合した。
その後、アニリン(113.95g、1.224mol)を加え、1時間撹拌して反応を終了した。氷浴により室温まで冷却後、トリエチルアミン(116.36g、1.15mol)を滴下し、30分撹拌して塩酸をクエンチした。その後、析出した塩酸塩をろ過除去した。ろ過した反応溶液を28%アンモニア水溶液(279.29g)とイオン交換水8820gの混合溶液に再沈殿させた。沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で150℃、8時間乾燥後、THF833.1gに再溶解させ、イオン交換水6665gに再沈殿した。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で150℃、25時間乾燥し、目的とする高分子化合物[3](以下、HB−TmDA40と略す)118.0gを得た。
HB−TmDAのGPC(溶媒THF)によるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは4300、多分散度Mw/Mnは3.44であった。
【0095】
(1)耐熱性試験
合成例1で得られたHB−TmDA40について、TG−DTA測定を行ったところ、5%重量減少は419℃であった。
(2)屈折率測定
合成例1で得られたHB−TmDA40(0.5g)を、シクロヘキサノン(4.5g)に溶解し、薄黄色透明溶液を得た。得られたポリマーワニスをガラス基板上にスピンコーターを用いて200rpmで5秒間、2000rpmで30秒間スピンコートし、150℃で1分、250℃で5分間加熱して溶媒を除去し、被膜を得た。得られた被膜の屈折率を測定したところ、550nmにおける屈折率は1.790であった。
【0096】
合成例1で得られたHB−TmDA40(30g)を、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME)単独溶媒、DEGDME/ジエチレングリコール(DEG)=70/30(質量比)の混合溶媒、DEGDME/プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)=70/30(質量比)の混合溶媒それぞれ70gに加えて撹拌し、均一透明溶液を得た。各溶媒に対する溶解性、並びに各溶液の23℃での粘度および表面張力を測定した結果を表1に示す。なお、溶解性の評価基準は以下のとおりである。
◎:溶解性良好
○:長時間撹拌で溶解
【0097】
【表1】
【0098】
[2]インクジェット塗布用膜形成用組成物の調製
[実施例1−1]
HB−TmDA40(30g)をDEGDME70gに溶解させた溶液12.39g、多官能アクリレート(AT−20E、新中村化学工業(株)製)0.37g、多官能アクリレート(ATM−35E、新中村化学工業(株)製)0.11g、光ラジカル開始剤(イルガキュア184、BASF社製)0.30g、および予め調製した界面活性剤(メガファックR−40、DIC(株)製)の1質量%DEGDME溶液0.372gを加えて撹拌した後、DEGDME8.81gおよびDEG7.65gを加え、目視で溶解したことを確認し、固形分濃度15質量%のワニスを調製した(以下、HB−TmDA40V1と略す)。
HB−TmDA40V1の23℃での粘度は13.3mPa・s、表面張力は30.5mN/mであった。
【0099】
HB−TmDA40V1をソーダライムガラス基板上にスピンコーターを用いて200rpmで5秒、1000rpmで30秒スピンコートし、ホットプレートを用いて120℃で3分間焼成した。その後、高圧水銀ランプを用い、大気圧下で、積算露光量200mJ/cm2で硬化させ、膜厚645nmの硬化膜を作製した。得られた硬化膜の550nmにおける屈折率は1.752であった。
【0100】
HB−TmDA40V1を、インクジェットシステムを用い、駆動波形:C、繰り返し周波数:1kHzの条件でソーダライムガラス上に吐出したところ、液滴の良好な吐出が観察され、また使用した溶媒によるヘッドの浸食や劣化は観察されなかった。なお、駆動電圧は、液滴の飛翔を観察しながら、液滴曲がりが起きないように調整した。