(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書では、溶液は、すべての固体が溶解している澄明溶液だけでなく、粒子を含む(particle-laden)溶液も意味すると理解されたい。そうした粒子を含む溶液は、懸濁液とも称される。粒子を含む溶液は、結晶化の間に形成された結晶を含んでよい。結晶化の間、澄明溶液から粒子を含む溶液、すなわち懸濁液への転移が起こる可能性がある。したがって、以下において、溶液及び懸濁液という用語は、同意語として使用される。
【0018】
本明細書の最初にあたって、「溶液」という用語の定義は、多分、この特定の場合における「溶液」という用語が、「澄明(clear)」溶液と粒子を含む溶液(懸濁液)の両方であってよいと説明することの助けにもなるであろう。
【0019】
ここで、検出強度は、溶液中に位置する結晶によって散乱された電磁放射線全体を含まず、この全散乱強度の一部だけ、特にこの散乱強度全体に比例した部分だけしか含まないが、結晶表面における変化は、結晶化プロセスの開始のための温度を調節するために、この強度の測定によって十分に確かめることができる。
【0020】
溶液から分離しようとする物質が非常に複雑な分子構造を有している場合、その物質を得るための結晶化は比較的緩やかにしか起こらないことが分かっている。新たな結晶胚(crystal germ)の形成及び結晶成長は、極端な遅延を伴う場合にだけ起こる。これの尺度は、例えば、結晶化溶液の過冷却度である。複雑な分子構造を有する配位子の場合、これは、例えば最大で50Kであってよく、他方、より簡単な有機分子の溶液の過冷却度は一般に、わずかに1K〜5Kである。
【0021】
驚くべきことに、複雑な分子構造を有する物質の、容易に濾過可能な結晶のサイズ及び形態への結晶化は、特に、その結晶化が非常に正確に測定された種晶量で開始された場合に首尾よくゆくことがここに見出された。次いで、溶液を徐々に冷却することによって、これらの種晶を成長させて、より大きい容易に濾過可能な結晶を得ることができる。さらに、驚くべきことに、種晶の正確な量は狭い間隔の間だけに存在し、通常正確に維持されることになるこの量は、溶液中に位置する結晶により散乱された電磁放射線の強度を検出することによって、比較的容易に確立できることが分かった。その溶液が、過度に播種されている、又は非常にわずかしか播種されていない場合、フィルター抵抗は、一桁以上変化することが見出された。フィルター抵抗と、濾過時間或いは代替えとして利用可能になるフィルター表面の間の直線性のため、結晶化法の開始時点での種晶の正確な測定量が妥当でなかった場合、利用可能な装置での、又は利用できる時間内での濾過は不可能になる。
【0022】
ここで、本発明による方法は、本発明による方法の過程で使用される結晶化法の開始条件を正確に調節できるようにする。これは、結晶化法により結晶を分離するのに理想的な結晶のサイズ及び形態を達成するために、所望量の種晶が、この結晶化法の開始の時点で存在することを意味する。
【0023】
この方法における種晶の安定した生成及び/又は保存は、結晶化されることになる物質の有効濃度(actual concentration)と、関係する飽和温度の間の関連性が正確に分かっていることを前提とする。しかし、先行する反応の正確な条件、この方法において戻ってくる後処理溶媒の実際の組成、及び確認されている溶解及び非溶解二次成分の濃度に応じて、当初チャージされた溶液の飽和温度が、例えば85℃〜115℃の広い範囲で変化することが、この複雑な化学的方法の独特さ(peculiarity)である。他方、結晶化の際に所望の結果を達成するために、種晶が生成する温度を、非常に正確に、例えば1K〜3Kで制御しなければならないことは経験的に公知であるので、これらの条件の自動調整は先験的には不可能である。ここで、本発明による方法は、この方法に由来する不確実性にもかかわらず、正確な播種の簡単で自動化可能な調節を提供できるようにする。
【0024】
正確な播種の問題を回避するための簡単な方法は、結晶化を連続的に実行させることのようである。定常状態とみなされる状態において、高温供給溶液は、連続運転される晶析装置中に送られることになり、その高い結晶含有量は播種を過剰にする。結晶懸濁液を引き抜くことによって、新しい溶液の導入を釣り合わせる。これは、そうした晶析装置が、常に一定の充満レベル及び固形分含量で稼働されることになることを意味する。しかし、複雑な分子構造を有する物質の溶液の極めて著しい過冷却性、及び、非常にゆっくりした結晶化の傾向は、そうした手順を不可能にすることが分かった。高温供給溶液が低温晶析装置に導入されると、そうした高度の過飽和は顕著になり、これは、非常に多くの細かすぎる、したがって濾過するのが困難な結晶の形成をもたらす結果となる。この困難さは、複数の晶析装置がそれぞれの場合にわずかしか違わない温度レベルで稼働される、カスケード化によって軽減させることができる。しかし、多数の温度段階、したがって多数の装置の必要性は、この方法を経済的に不利なものにする。
【0025】
さらに、この物質の有効濃度は、物理的又は化学的方法で測定することができ、飽和温度、したがって最適播種温度をその溶液の組成から誘導することができる。そうした測定はインラインで、例えば分光法で行うことができ、また、化学実験室においてオフラインで行うことができる。しかし、後者の方法は過度に長い時間の消費を意味する。しかし、分光測定のようなものでも、非常に複雑な溶液組成の場合、やはり首尾よく行かない。これは、この組成が、正確な溶解温度に対して影響を及ぼすためである。例えばイソプレゴールなどの溶解度を大幅に増大させることができる、又は、「エステル」と称される物質群のような溶解度を大幅に減少させることができる他のすべての構成要素の、溶液中での正確な濃度を測定する必要がある。さらに、すべての成分の濃度と飽和温度の間の樹立された正確な関係が分からなければならないことになり、これは、複雑な組成を有する媒体については達成することはできない。
【0026】
その濃度と飽和温度の関係の測定による決定が不可能な場合、飽和温度の経験的な決定が1つの解決法である可能性がある。例えば、そうした溶液の飽和温度は、溶液の標的化された過冷却、ある程度の時間(sometimes)の高度な過冷却での強制的な結晶形成、及び、最終的な結晶の溶解温度の決定の際の溶液の再加熱によって決定することができる。この方法は、実験室において、試料について、手間ひまかけて再度行うこともできる。実際の晶析装置のバイパス系における任意の所望測定システムによって自動化されたこの測定を実施することも考えられる。高度に過冷却性の溶液の場合、飽和温度を正確に決定するのに、溶液を非常にゆっくり加温する必要があるため、そうした決定は、少なくとも数時間続くことになり、したがって、経済的に不利である可能性がある。
【0027】
本発明による方法では、最初に利用可能な種晶の量の自動調整のため、この方法の過程で使用される結晶化法のための開始条件の調節と合わせて、光学的測定方法を使用する。ここで、電磁放射線をその溶液中に照射し、存在する任意の結晶によって後方散乱された電磁放射線を検出する。照射された電磁放射線の波長より大幅に大きい結晶のためのこの後方散乱は、懸濁液中に存在する結晶表面の量に比例する第一近似である。本発明による方法では、したがって、それは結晶化プロセスの開始時に確認される結晶の質量ではなく結晶表面である。この結果として、結晶化の成功に重要なのは結晶の質量ではなく、過飽和を受け入れるために提供される結晶表面であるので、結晶を分離するために、さらに良好な結晶成長、したがってさらに高い収率及びより少ない時間消費を達成することができる。このため、結晶化法の開始時点での条件を調節するための電磁放射線による結晶の測定は、特に有利である。
【0028】
検出強度と所望強度の差の量のための限界値は、所望強度からの許容される偏差である。この限界値は、例えば所望強度の5%又は20%であってよい。しかし、限界値は、所望強度からの絶対偏差にもとづいて決定することもできる。目標値が、例えば0.1である場合、0.15〜0.1の目標範囲を選択することができる。一方、目標値が0.5である場合、選択される目標範囲は0.55〜0.5となる。
【0029】
本発明による方法の1つの実施形態によれば、結晶性物質を濾過により分離する。結晶化法の開始条件の調節の際に、濾過に特に好ましい結晶のサイズ及び形態をもたらす結晶表面を提供する所望強度を選択した。このような仕方で、溶液から結晶を分離するために、特に高い収率及びより低い時間消費が達成される。さらに、浮遊、遠心分離又は篩別によって、この結晶性物質を、溶液から単離する、すなわち分離することもできる。
【0030】
本発明による方法の他の実施形態によれば、この所望強度は、参照測定法によって決定される。これらの参照測定法で、溶液についての、この結晶化法の最後での結晶サイズ及び/又は結晶形態と、結晶化法の開始時での検出強度の間の関係を決定する。これにより、選択される所望強度は、所望の結晶サイズ及び/又は結晶形態に割り当てられる強度である。このような仕方で、どんな、後方散乱された電磁放射線の強度が、そのもとで後続する分離のために所望の結晶が成長する結晶化法のための理想的な開始条件に対応するかを、前もって決定することができる。次いで、この方法で決定された所望強度は、溶液ボリューム中での理想的な結晶表面に対応する。次いで、これは、おおよそ1つの結晶濃度に対応する。したがって、後方散乱された電磁放射線のこの所望強度をもとにして、結晶化法の開始のための温度を、本発明による方法において調節することができる。有利なことに、これを、結晶化する物質の濃度、又は、溶解している若しくは溶解していない物質の量の詳細な知見なしで行うことができる。
【0031】
本発明による方法の1つの展開によれば、溶液又は溶液の一部を結晶化容器に導入し、溶液の予測される飽和温度より低い、所定の開始温度値より低い温度にする。次いで、この溶液を、検出強度と所望強度の差の量が限界値未満となるまで加熱する。その物質の多数の結晶が自発的に結晶化するように、この溶液を、特に、予測される飽和温度よりずっと低い温度にもってくる。このような仕方で、種晶が、インサイチュで得られる。本発明による方法のこの実施形態では、したがって、結晶化法についての理想的な開始温度を得るために、溶液の温度を、より低い温度からより高い温度へ調節する。この調節の間、存在する結晶の量は、最初は所望の量より大幅に多い。さらに、その結晶のサイズ及び形態は、所望の結晶のサイズ及び形態と対応しない。調節の間の温度を増大させることによって、次いで、後方散乱された電磁放射線の検出強度が、所望の結晶表面が溶液中に存在することを示すまで、結晶は溶解する。この調節の間に、低過ぎる検出強度が得られた場合、これは、溶液のための温度を低下させることによってこれに対抗することができる。その理由は、次いで結晶表面が再度拡大されるためである。
【0032】
開始温度値は、特に、溶液の予測される飽和温度より少なくとも10K低い値である。他方、開始温度値は、所望強度から決定することもできる。例えば、開始温度値に割り当てられる開始強度は、所望強度のx倍の強度で選択される。ここで、値xは1.2〜10の範囲である。特に、値xは、3〜10の範囲、好ましくは4〜9の範囲、特に好ましくは6〜9の範囲である。次いで、検出強度が開始強度より大きくなるまで、溶液の温度をそうした仕方で調節する。この手順によって、最初に十分に多量の結晶が溶液中に存在し、次いで、これを、所望強度、すなわち結晶化プロセスの開始のための理想的な開始温度が認められるまで調節の間に連続的に減少させるという、非常に簡単な仕方で、これを有利に確実にすることができる。
【0033】
本発明による方法の1つの実施形態によれば、使用される溶液の過冷却度は、5K超、特に10K超又は30K超である。そうした場合、結晶化法の遂行は、後続する濾過に適した結晶の形成に関して、特に重要である。これらの場合、したがって、開始条件、すなわち、特に結晶化法の開始時での結晶表面が、結晶化法の際の結晶成長に理想的であることが特に重要である。本発明による方法によって、電磁放射線の照射及び後方散乱された放射線の強度の測定は、結晶化の開始時点で、理想的な条件が存在するのを確実にすることができる。
【0034】
本発明による方法の1つの実施形態によれば、20nmより広い(例えば740nm〜760nm)1つの波長範囲又は2つ以上の波長範囲の電磁放射線を、20nm超の溶液又は懸濁液中に照射させる。したがって、照射された電磁放射線は、少なくとも20nmの範囲にわたって拡がる異なる波長を含む。したがって、照射されるものは、特に、レーザー照射の際のような単色光又は単色放射線、すなわち非常に狭い周波数範囲の放射線ではなく、異なる波長の光又は放射線である。この波長範囲は、特に、ずっと広くてもよく、50nm、100nm又はそれ以上にわたって拡がってよい。
【0035】
溶液又は懸濁液中に照射される電磁放射線は、ビームの形態を有する。本発明による方法の1つの実施形態によれば、このビームの最小横断面は、0.1mm超、特に0.19mm超、好ましくは0.39mm超である。さらに、このビームは特に発散している、すなわちアパーチャ角を有する。このアパーチャ角は、例えば5°超、特に10°超、好ましくは20°超である。そうした発散的なビームの横断面は放射線の方向で増大するので、そうしたビームの最小横断面は、溶液又は懸濁液に入った時点でのビームの横断面である。
【0036】
照射される電磁放射線は、例えば可視スペクトルの範囲にあってよい。しかし、赤外放射線を溶液中に照射することが好ましい。したがって、赤外放射線の強度が検出される。赤外放射線は、例えば780nm〜1000nmの波長範囲、特に800nm〜900nmの範囲、好ましくは820nm〜880nmの範囲であってよい。ここで、照射される電磁放射線の波長は、検出される後方散乱された放射線の波長に対応する。
【0037】
本発明による方法の好ましい実施形態によれば、散乱光プローブによって、電磁放射線をその溶液中に照射する。同様に、後方散乱された電磁放射線の強度は、散乱光プローブによって検出される。ここで、特に、照射された電磁放射線の入射方向は、後方散乱された電磁放射線の強度が検出される検出方向に対して、本質的に平行である。これは、溶液中に照射された電磁放射線が、この放射線が結晶で散乱されることなく直接検出されるのを防止する。
【0038】
本発明による方法では、特に、溶液又は懸濁液中に位置する結晶によって散乱された電磁放射線の強度の検出を介した散乱光プローブによる、溶液又は懸濁液中への電磁放射線の上記の特徴的な照射の結果として、溶液又は懸濁液中の粒子全体の粒子表面に比例したシグナルを得ることができる。このシグナルによって、この結果として、最初に利用可能な種晶の量を非常に正確に確かめることができるので、特に正確な仕方での結晶化法の開始のための開始温度を調整することができる。
【0039】
ここで、本発明による方法は、例えばFBRM(収束ビーム反射測定)法によっても得られるような粒径分布及び粒子数の測定に比べて基本的な利点を有している。FBRM法では、粒径分布は直接確かめられず、いわゆるコード長分布によって確かめられる。このため、レーザービームを、粒子を有する溶液に照射させる。このレーザービームは、数マイクロメートルの非常に小さい横断面を有している。さらに、これは約2m/sの一定速度で回転する。回転するレーザービームによって影響を受ける粒子を、このやり方でスキャンする。粒子でのレーザービームの反射の結果として、センサーによって検出される電磁放射線が測定される。次いで、そのレーザービームがそれで移動する予め与えられた回転速度、及びパルス時間を使用して、コード長分布を計算する。文献は、コード長分布からの粒径分布の計算は非常に複雑であり、誤差を伴うという事実に言及している。例えば、そばを流れる(streaming by)粒子の相対速度に応じて、コード長分布を計算する際に誤差が生じる。
【0040】
粒子速度がゼロに近づくと、実質的にすべての粒子が異なるコード長で複数回測定されるので、粒子計数率(particle counting rate)において、誤差が追加的に生じてくる。さらに、溶液又は懸濁液中に照射されるわずか数マイクロメートルのサイズのレーザービームの回転焦点(rotating focus)と、反射の後で検出器に到達するビームの回転焦点は、センサーヘッドのディスクに非常に近接して置かれる。粒子がさらに除かれると、光学的ビーム経路のため、より低いエッジスティープネスを有する大幅に低い強度シグナルがもたらされるという結果となる。最小のエッジスティープネスに至らなかった場合、必要とされる空間分解能がもはや存在しないので、これらのシグナルは廃棄される。空間体積当たり非常に少ない粒子数で、単位時間当たり非常に少ない粒子しかセンサーヘッドに直接的に留まらず、したがって、レーザービームの回転焦点ポイントによってスキャンすることができるので、この場合も、非常に低い計数率のみが達成される。たとえ、最小エッジスティープネスを、パラメータとして、非常に低い値に設定しても、さらに除かれた粒子を検出することはできない。その理由は、シグナル処理電子機器は、シグナルの高い時間的解像度を確実にするため、高い制限周波数用に設計されているからである。この場合、シグナル処理電子機器は、高い光感度用に設計されてはいない。したがって、FBRM法は、中程度から高い粒子濃度までのために開発されている。
【0041】
FBRM法では、したがって、せいぜい、溶液又は懸濁液中の粒子数を決定することしかできない。この粒径分布がコード長分布から得られるだけであり、この分布の粒径分布への変換は誤差を伴い、且つ仮定がなされるので、粒径分布の信頼性のある測定は不可能である。したがって、例えば、当該粒子の三次元幾何学的形状のモデルをベースとすることが必要となる。
【0042】
照射される電磁放射線が上記の特徴を有する本発明による方法では、この放射線は、特に、いわゆる散乱光プローブによって発生しており、懸濁液中の粒子全体の表面を、空間体積当たり非常に少ない数から非常に多い数の粒子で測定することができる。この関連で、強度、すなわち、特に溶液中に位置する結晶によって散乱された電磁放射線の全強度だけを検出することができる。FBRM法では、直接的な強度測定は行われない。この理由は、この方法では、シグナル処理電子機器の強化(intensification)は、各粒子タイプについて異なって調整され、その結果、過度に高いシグナルも過度に低いシグナルも検出されないためである。これは、FBRM法では、粒子での反射により生じる光パルスの数及び期間だけの問題であり、反射された放射線の強度の問題では全くないためである。
【0043】
特定の粒子表面を得るために、結晶濃度が非常に低い値に調節されることになる溶液又は懸濁液から物質を分離するための本発明による方法では、その測定方法は、上記特徴を有し、より高い感度を有するのでFBRM法より適している、散乱光プローブによるか又は電磁放射線による。さらに、これは、実行するのに非常に費用効率が高い。ただ1つの積分強度シグナルだけを捕捉すればよいので、検出の間に操作しなければならない複雑さは非常に少なくなる。
【0044】
本発明による方法の1つの実施形態によれば、溶液(懸濁液)を、開始温度値より低い温度で結晶化容器に導入する。したがって、導入された溶液は多量の結晶を有する。散乱光プローブが、導入された溶液中に位置する場合、すなわち、その溶液の充満レベルが散乱光プローブを超えるほど結晶化容器が満たされている場合、電磁放射線を、散乱光プローブによって溶液中に照射し、溶液中に位置する結晶によって散乱された電磁放射線の強度を検出する。次いで、結晶化容器中へ溶液がさらに導入されたら、溶液の温度を、検出強度と所望強度の差の量が限界値未満となるように調節する。理想的なケースでは、この手順において、結晶化容器が完全に充満された場合、その検出強度は所望強度と同じであり、これらの強度間の差の量は限界値未満であり、これは、結晶化容器が完全に充満された場合、所望量の種晶が存在することを意味する。
【0045】
このような仕方で、本発明による方法を実行するための消費時間を短縮することができる。結晶化容器が完全に充満された後、検出強度と所望強度の差の量が、なお限界値より高い場合、その量の差が限界値以内になり、結果として所望種晶量が存在するように、温度の微調整を用いて、検出強度が所望強度に近づくようにすることもできる。
【0046】
本明細書では、溶液から物質を分離するための本発明による方法の過程で使用される結晶化法は、検出強度と所望強度の差の量が限界値未満であった場合に開始される方法の一部であるが、その方法の先行する部分においてもやはり結晶は形成されている。
【0047】
溶液から物質を分離するための本発明による方法の過程で使用される結晶化法は、特に、冷却結晶化プロセスである。溶液の温度を、検出強度と所望強度の差の量が限界値未満になるように調節した後、次いで、インサイチュで得られた種晶によって支持されて、より大きい結晶が再び形成されるように、溶液を再度徐々に冷却する。ここで、冷却速度は、最初は比較的小さくし、その後、より大きい結晶がすでに形成されていたら、この方法を促進させるために冷却速度を増大させることもできる。
【0048】
本発明は、さらに、結晶化によって溶液から物質を得る方法であって、その溶液を第1の結晶化容器に導入し、その物質を、上記した方法による第1の結晶化容器中での結晶化によって分離する方法に関する。第1の結晶化容器中で結晶化法を実行しながら、溶液を第2の結晶化容器に導入し、この物質を、上記方法による第2の結晶化容器での結晶化によって分離する。その結果として、例えば冷却結晶化によって第1の結晶化容器で結晶化法を実行しながら、第2の結晶化容器において、初めから同じ方法が開始される。一方の結晶化容器中での結晶化の間、溶液が他方の結晶化容器に導入され、そうしている間、第2の結晶化容器における結晶化法の開始のために所望の結晶表面が確実に存在するようにするために、調節が実行されるので、このような仕方で、溶液から物質を分離するための方法を、本質的に連続運転することができる。任意選択で、他の結晶化容器を並列で連結することもできる。その結晶化容器の数は、例えば、結晶化プロセスのための所望開始条件をもたらすのにどれだけ多くの時間を要するか、次いで、どれだけ長い実際の結晶化プロセスが必要であるかによって支配される。この関連で、結晶化容器の数は、例えば、第1の結晶化容器中での結晶化法が完了し、溶液をこれに再度導入することができるようになるまで、溶液が結晶化容器に導入されるように選択することができる。
【0049】
本発明は、さらに、溶液から物質を分離するためのデバイスに関する。このデバイスは、溶液を導入するための開口部を備えた少なくとも1つの結晶化容器を有する。さらに、このデバイスは、導入されることになる且つ/又は導入された溶液の温度を変えるための加熱デバイスを備える。さらに、温度センサーが、導入されることになる且つ/又は導入された溶液の温度を測定するために提供される。結晶化容器中に配置されるものは、電磁放射線を溶液中に照射することができ、溶液中に存在する結晶によって散乱された電磁放射線の強度を検出することができる散乱光プローブである。このデバイスは、温度センサー、散乱光プローブ及び加熱デバイスとデータ結合された調節ユニットをさらに備える。この調節ユニットを使用して、結晶化容器中の溶液の温度を、検出強度と所望強度の差の量が減少するように調節することができる。検出強度と所望強度の差の量が限界値未満であったら、結晶化プロセスを実行することができる。この物質の結晶は、結晶化法によって得られる。最後に、このデバイスは、得られた結晶を分離するための分離ユニットを備える。
【0050】
この加熱デバイスは、特に、それを介して溶液が結晶化容器に供給されるライン中に配置される。このような仕方で、導入される溶液の温度を調節することができる。
【0051】
温度センサーは、特に、結晶化容器中に位置する溶液の温度が測定されるように、結晶化容器中に配置される。さらに、温度センサーは、それを介して溶液が結晶化容器へ輸送されるライン中にも提供されることが好ましい。
【0052】
散乱光プローブは、特に、赤外放射線のためのエミッターを有する。エミッターによって放たれた放射線は、導波管(waveguide)を介して結晶化容器に導入される。ここで、特定の充満レベルを超える電磁放射線が溶液中に照射されるように、導波管の減結合領域を、結晶化容器の下部に配置する。同様に、散乱光プローブは、特に、結晶化容器中に他の導波管の結合領域を有する。結合領域によって結合された散乱光は、他の導波管を介して、散乱光プローブの検出器に送られる。
【0053】
本発明によるデバイスの1つの実施形態によれば、散乱光プローブによって照射される電磁放射線は、20nmより広い1つの波長範囲又は複数の波長範囲内にある。しかし、この波長範囲又は範囲(複数)は、特に、50nm又は100nmより広くてもよい。本発明によるデバイスの他の実施形態によれば、散乱光プローブによって生成することができるビームは、0.1mm超、特に0.39mm超の最小横断面を有する。さらに、このビームは、5°超、好ましくは10°超、特に20°超のアパーチャ角を有することが好ましい。
【0054】
調節ユニットによって、結晶化プロセスは、特に、溶液が冷却され、その結果、この物質の結晶が得られるような仕方で実施される。得られた結晶を分離するために、分離ユニットは、濾過、浮遊、遠心分離又は篩別によって、結晶を溶液から単離できるように構成される。
【0055】
本発明によるデバイスは、特に、本発明による上記方法を実施するために構成される。したがって、これは、上記方法と同じ利点を有する。
【0056】
本発明によるデバイスの展開によれば、これは、2つの結晶化容器を備える。この場合、両方の結晶化容器について、加熱デバイス、温度センサー及び散乱光プローブが提供される。この場合における調節ユニットは、第1の結晶化容器において結晶化法を実行しながら、溶液を第2の結晶化容器に導入し、その結果、次いで、結晶化法が第2の結晶化容器中においても実行されるような仕方で、溶媒の導入を制御する。
【0057】
本発明は、シトロネラルを環化することによるイソプレゴールの製造によってアルミニウム含有反応生成物を後処理するための方法であって、反応生成物は
i)イソプレゴール、
ii)遊離及び/又は錯体結合形態での少なくとも1つの式(I)の配位子
【0058】
【化2】
(式中、
Ar
1、Ar
2、Ar
3、Ar
4は、互いに独立に、C
6〜C
15-アリール基又はC
2〜C
15-ヘテロアリール基から選択され、
適切な場合、これは、それぞれの場合、C
1〜C
6-アルキル、C
1〜C
6-ペルフルオロアルキル、C
1〜C
6-アルコキシ、C
7〜C
12-アラルキル、ハロゲン、SiR
5aR
6aR
7a、任意選択で置換されたC
6〜C
10-アリール、NR
8aR
9a、SR
10a、NO
2から選択される1〜7個の同じか又は異なる置換基を有することができ、
R
1、R
2、R
3、R
4は、互いに独立に、水素、C
1〜C
6-アルキル、C
1〜C
6-ペルフルオロアルキル、C
1〜C
6-アルコキシ、C
7〜C
12-アラルキル、ハロゲン、SiR
5bR
6bR
7b、任意選択で置換されたC
6〜C
10-アリール、NR
8bR
9b、SR
10b、NO
2から選択され、ここで、
R
1又はR
2及び/又はR
3又はR
4は、Aと一緒になって、芳香環又は非芳香環を形成することができ、
Aは、飽和又はモノ若しくはポリ不飽和及び/又は部分的に芳香族であってよく、適切な場合、O、S、NR
11から選択される1個以上の同じか又は異なるヘテロ原子、及び/又は官能基C(O)、S(O)、S(O)
2から選択される1つ以上の同じか又は異なる官能基を有することができ、適切な場合、置換基C
1〜C
6-アルキル、C
1〜C
6-ペルフルオロアルキル、C
1〜C
6-アルコキシ、C
1〜C
10-アシルオキシ、C
7〜C
12-アラルキル、ハロゲン、-SiR
5cR
6cR
7c、任意選択で置換されたC
6〜C
10-アリール、置換若しくは非置換C
2〜C
10-ヘタリール、NR
8cR
9c、SR
10c、NO
2、C
1〜C
12-アシル、C
1〜C
10-カルボキシルから選択される1つ以上の同じか又は異なる置換基を有することができる1〜25個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状及び/又は環状炭化水素基である、或いは、
適切な場合、それぞれの場合、C
1〜C
6-アルキル、C
1〜C
6-ペルフルオロアルキル、C
1〜C
6-アルコキシ、C
7〜C
12-アラルキル、ハロゲン、SiR
5dR
6dR
7d、置換若しくは非置換C
6〜C
10-アリール、NR
8dR
9d、SR
10d、NO
2から選択される1〜5個の置換基を有することができるC
6〜C
15-アリール基又はC
2〜C
15-ヘテロアリール基である、或いは、
-O-、-S-、-N(R
11)-、-S(O)-、-C(O)-、-S(O)
2-、-P(R
11)-、-(R
11)P(O)-及び-Si(R
12R
13)の群から選択される官能基又はヘテロ原子であり、
基R
5a、R
6a、R
7a、R
8a、R
9a、R
10a〜R
5d、R
6d、R
7d、R
8d、R
9d、R
10d、R
11、R
12及びR
13は、それぞれの場合、互いに独立に、C
1〜C
6-アルキル、C
7〜C
12-アラルキル及び/又は置換若しくは非置換C
6〜C
10-アリールから選択され、
基R
8aとR
9a、R
8bとR
9b、R
8cとR
9c、R
8dとR
9dは、互いに独立に、それぞれの場合、一緒になって、O、S、NR
11aの群から選択される1個以上の同じか又は異なるヘテロ原子を有することができる2〜8個の炭素原子を有する環状炭化水素基を形成していてもよく、R
11aはR
11について与えられた意味を有することができる)
を含み、
a)上記アルミニウム含有反応生成物を蒸留分離にかけて、イソプレゴール豊富な塔頂生成物及びイソプレゴール枯渇塔底生成物を得、
b)上記イソプレゴール枯渇塔底生成物を塩基水溶液と密に接触させて、アルミニウム含有水相及び式(I)の配位子の大部分を含む有機相を得、
c)式(I)の配位子を上記有機相から分離する
方法をさらに提供する。
【0059】
本発明による方法によって得られる式(I)のビス(ジアリールフェノール)配位子は、通常、以下で定義されるように、式(II)又は(III)の対応するアルミニウム化合物での新規のバッチの範囲内で、さらなる精製ステップなしで反応性触媒錯体に転換させることができる。このやり方で回収された触媒錯体で確立されている反応性において、低下はないか又は特にはない。
【0060】
式(I)のビス(ジアリールフェノール)配位子は、それぞれの場合、フェノールヒドロキシ基に対して両方のオルト位で、芳香族又は複素環式芳香族(Ar
1〜Ar
4)によって置換されており、構造要素Aを介して一緒に結合しており、適切な場合、他の置換基(R
1〜R
4)を有することもできる2つのフェノール系を有する。
【0061】
芳香族又は複素環式芳香族置換基Ar
1〜Ar
4は、互いに独立に、同じであっても異なっていてもよい。それぞれの場合において、フェノール系と結合している2つ置換基(Ar
1及びAr
2又はAr
3及びAr
4)は対として同一であることが好ましい。4つすべての置換基Ar
1〜Ar
4が同一であることが特に好ましい。
【0062】
指定された置換基Ar
1〜Ar
4は、6〜15個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有するアリール基又は芳香族環系中に2〜15個、好ましくは3〜10個の炭素原子を有するヘテロアリール基である。6〜15個の炭素原子を有するアリール基は、例えばフェニル、ナフチル、アントラセニルであり、好ましくはフェニル及びナフチルである。
【0063】
2〜15個の炭素原子を有する指定されたヘテロアリール基は、ヘテロ原子O、S及びNの群から選択される1〜約6個、一般に1〜3個の同じか又は異なっているヘテロ原子を有する。挙げ得るその例は、以下のヘテロアリール基:2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル、5-ピラゾリル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、1,2,4-オキサジアゾール-3-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル、1,2,4-チアジアゾール-3-イル、1,2,4-チアジアゾール-5-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル及び1,3,4-トリアゾール-2-イル、2-ピリジニル、3-ピリジニル、4-ピリジニル、3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、2-ピラジニル、1,3,5-トリアジン-2-イル及び1,2,4-トリアジン-3-イル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル、5-ピラゾリル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、1,2,4-オキサジアゾール-3-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル、1,2,4-チアジアゾール-3-イル、1,2,4-チアジアゾール-5-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル及び1,3,4-トリアゾール-2-イル、2-ピリジニル、3-ピリジニル、4-ピリジニル、3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、2-ピラジニル、1,3,5-トリアジン-2-イル及び1,2,4-トリアジン-3-イル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ベンゾチエニル、インドリル、イソインドリル、カルバゾリル、ピリジル、キノリル、イソキノリル及びピラジルである。好ましいヘテロアリール基は、例えば2-フリル、2-ピリジル、2-イミダゾイルである。
【0064】
Ar
1〜Ar
4について上記に指定されたアリール又はヘテロアリール基は、それぞれの場合互いに独立に、置換されていないか、又は置換基:C
1〜C
6-アルキル、C
1〜C
6-ペルフルオロアルキル、C
1〜C
6-アルコキシ、C
7〜C
12-アラルキル、ハロゲン、-SiR
5aR
6aR
7a、置換若しくは非置換C
6〜C
10-アリール、-NR
8aR
9a、-SR
10a、-NO
2の群から選択される1〜約7個、好ましくは1〜3個、特に1若しくは2個の同じか又は異なる置換基を有していてよく、基R
5a、R
6a、R
7a、R
8a、R
9a、R
10a及びR
11〜R
13は、それぞれの場合互いに独立に、C
1〜C
6-アルキル、C
7〜C
12-アラルキル及び/又は置換若しくは非置換C
6〜C
10-アリールであり、基R
8aとR
9aは、互いに独立に、それぞれの場合、一緒になって、O、S及びNR
11aの群から選択される1個以上の同じか又は異なるヘテロ原子を有することができる2〜8個の炭素原子を有する環状炭化水素基を形成していてもよく、R
11aは、R
11について与えられた意味を有することができる。
【0065】
この関連で、本発明全体の範囲内の指定された置換基は以下の例によって与えられる意味を有する:
例えば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、シクロペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、シクロヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル及び1-エチル-2-メチルプロピルなどのC
1〜C
6-アルキル;
例えば、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヘプタフルオロイソプロピル、ノナフルオロブチルなどのC
1〜C
6-ペルフルオロアルキル;
例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1-メチルエトキシ、ブトキシ、1-メチルプロポキシ、2-メチルプロポキシ及び1,1-ジメチルエトキシ、ペントキシ、1-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、3-メトキシルブトキシ、1,1-ジメチルプロポキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、2,2-ジメチルプロポキシ、1-エチルプロポキシ、ヘキソキシ、1-メチルペントキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、4-メチルペントキシ、1,1-ジメチルブトキシ、1,2-ジメチルブトキシ、1,3-ジメチルブトキシ、2,2-ジメチルブトキシ、2,3-ジメチルブトキシ、3,3-ジメチルブトキシ、1-エチルブトキシ、2-エチルブトキシ、1,1,2-トリメチルプロポキシ、1,2,2-トリメチルプロポキシ、1-エチル-1-メチルプロポキシ及び1-エチル-2-メチルプロポキシなどのC
1〜C
6-アルコキシ;
例えば、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチルなどのC
7〜C
12-アラルキル;
例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシなどのC
1〜C
10-アシルオキシ;
例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニルなどのC
1〜C
10-カルボキシル;
例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニルなどのC
1〜C
10-アシル。
【0066】
本発明の意味における「置換若しくは非置換C
6〜C
10-アリール」という表現は、上記に指定したように、1個以上、一般に1〜約3個の同じか又は異なる置換基を有するアリール基であり、その置換基は、例えばC
1〜C
6-アルキル、C
1〜C
6-ペルフルオロアルキル、C
1〜C
6-アルコキシ、C
7〜C
12-アラルキル、ハロゲン、シリル、ジアルキルアミノ及びニトロから選択することができる。
【0067】
本発明の範囲内で、「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素であり、好ましくはフッ素及び塩素である。
【0068】
本発明の範囲内で、置換基-SiR
5aR
6aR
7a〜-SiR
5dR
6dR
7dは、それぞれの場合、基C
1〜C
6-アルキル、C
7〜C
12-アラルキル及び置換若しくは非置換C
6〜C
10-アリールから選択される3つの同じか又は異なる基を互いに独立にそれぞれ有するシリル置換基を意味するものと理解されたい。例として、ここで、例えばシリル置換基トリメチルシリル、トリエチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル及びtert-ブチルジフェニルシリルを挙げることができる。
【0069】
本発明の範囲内で、置換基-NR
8aR
9a〜-NR
8dR
9dは、それぞれの場合、上記基C
1〜C
6-アルキル、C
7〜C
12-アラルキル及び/又は置換若しくは非置換C
6〜C
10-アリールから選択される2つの同じか又は異なる、好ましくは2つの同じ基をそれぞれの場合互いに独立に有するアミノ置換基である。例として、アミノ置換基:ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジアリルアミノ、ジイソプロピルアミノを挙げることができる。本発明の範囲内で、基R
8aとR
9a〜R
8dとR
9dは、互いに独立にそれぞれの場合、一緒になって、O、S、NR
11aの群から選択される1個以上の同じか又は異なるヘテロ原子を有することができる2〜8個の炭素原子を有する環状炭化水素基を形成することもできる。ここで、この基R
11aは、上記のC
1〜C
6-アルキル、C
7〜C
12-アラルキル及び/又は置換若しくは非置換C
6〜C
10-アリールであってよい。挙げることができるこれらの環状置換基R
8a及びR
9a〜R
8d及びR
9dの例は:ピペリジニル、モルホリニル、N-メチルピペラジニル、N-ベンジルピペラジニルである。
【0070】
置換基-SR
10aにおいて、基R
10aは、上記のC
1〜C
6-アルキル、C
7〜C
12-アラルキル及び/又は置換若しくは非置換C
6〜C
10-アリールであり、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、フェニル、ベンジルである。
【0071】
本発明の範囲内で、好ましい芳香族又は複素環式芳香族置換基Ar
1、Ar
2、Ar
3、Ar
4は、例えばフェニル、4-メチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、ナフチル、2-フルオロフェニル、4-フルオロフェニル、4-クロロフェニル、4-ブロモフェニル、3-フルオロフェニル、3-クロロフェニル、3,5-ジフルオロフェニル、3,5-ジクロロフェニル、2,3,6-トリクロロフェニル、2,4,6-トリクロロフェニル、2-メチルフェニル、4-メチルフェニル、2,4,5-トリメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、2-イソプロピルフェニル、4-イソプロピルフェニル、4-tert-ブチルフェニル、4-n-ブチルフェニル、3-トリフルオロメチルフェニル、4-トリフルオロメチルフェニル、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル、4-アリールフェニル、3-ニトロフェニル、好ましくは4-フルオロフェニル、4-クロロフェニル、3-クロロフェニル、3,5-ジクロロフェニル、3-トリフルオロメチルフェニル、4-トリフルオロメチルフェニルである。好ましい実施形態の範囲内で、基Ar
1、Ar
2、Ar
3、Ar
4は同じであり、好ましくは4-フルオロフェニル、4-クロロフェニル、3-クロロフェニル、3,5-ジクロロフェニル、3-トリフルオロメチルフェニル、4-トリフルオロメチルフェニルであり、特に好ましくはフェニルである。
【0072】
本発明によれば、それぞれのフェノールヒドロキシ基に対してメタ位又はパラ位の置換基R
1、R
2、R
3、R
4は、同じか又は異なってよく好ましくは同じであってよく、それぞれの場合互いに独立に、水素及び/又は上記のC
1〜C
6-アルキル、C
1〜C
6-ペルフルオロアルキル、C
1〜C
6-アルコキシ、C
7〜C
12-アラルキル、ハロゲン、-SiR
5bR
6b、R
7b、置換若しくは非置換C
6〜C
10-アリール、-NR
8bR
9b、-SR
10b及び/又は-NO
2である。
【0073】
挙げることができる好ましい基R
1、R
2、R
3、R
4は:メチル、エチル、イソプロピル、ハロゲン、特にフッ素及び/又は塩素、トリフルオロメチル、フェニル、メトキシ、ニトロである。基R
1、R
2、R
3、R
4は同じであり、特に好ましくは水素であることが好ましい。
【0074】
基R
1又はR
2及び/又はR
3又はR
4は、構造要素Aと一緒になって、環状芳香環又は非芳香環を形成することもできる。これらの場合、本発明によって使用されることになる式(I)のビス(ジアリールフェノール)配位子は、三環式基本構造、例えば式(X)のアントラセン基本構造又はタイプ(XI)の基本構造:
【0076】
これらの三環式基本構造(適切な場合、その基本構造中にヘテロ原子を含むものも)のさらなる構造改変は当業者に公知であり、これは、本発明によって使用できるビス(ジアリールフェノール)配位子の群に属する。
【0077】
式(I)における構造要素Aは、飽和又はモノ若しくはポリ不飽和の通常1〜約6倍の不飽和であってよく、且つ/又は部分的に芳香族であってよい、1〜25個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状及び/又は環状炭化水素基であってよい。指定された炭化水素基は、適切な場合、ヘテロ原子O、S及びNR
11の群から選択される1個以上、一般に1〜3個の同じか又は異なるヘテロ原子、及び/又は官能基C(O)、S(O)及びS(O)
2の群から選択される1つ以上の同じか又は異なる官能基を有することができ、適切な場合、置換基C
1〜C
6-アルキル、C
1〜C
6-ペルフルオロアルキル、C
1〜C
6-アルコキシ、C
1〜C
10-アシルオキシ、C
7〜C
12-アラルキル、ハロゲン、-SiR
5cR
6cR
7c、置換若しくは非置換C
6〜C
10-アリール、置換若しくは非置換C
2〜C
10-ヘタリール、-NR
8cR
9c、-SR
10c、-NO
2、C
1〜C
12-アシル及びC
1〜C
10-カルボキシルの群から選択される1つ以上の同じか又は異なる置換基を有することができる。
【0078】
式(I)における構造要素Aは、飽和若しくはモノ〜トリ不飽和であるか、且つ/又は部分的に芳香族であってよい、1〜25個、好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状及び/又は環状炭化水素基であることが好ましい。好ましい炭化水素基は、適切な場合、ヘテロ原子O、S及びNR
11の群から選択される1個以上、一般に1〜3個の同じか又は異なるヘテロ原子、及び/又は1つ以上のC(O)基を有することができ、適切な場合、置換基C
1〜C
6-アルキル、C
1〜C
6-ペルフルオロアルキル、C
1〜C
6-アルコキシ、C
1〜C
10-アシルオキシ、C
7〜C
12-アラルキル、ハロゲン、置換若しくは非置換C
6〜C
10-アリール、-NO
2、C
1〜C
12-アシル及びC
1〜C
10-カルボキシルの群から選択される1つ以上の同じか又は異なる置換基を有することができる。
【0079】
挙げることができる式(I)における構造要素Aの例は、制限的な文字を含まないで(without any limiting character)、以下の構造要素1〜44である。ここで、それぞれの場合の波線は、本開示全体の範囲内として、特定の配位子構造の残りとの結合部位を示す;
【0081】
示されている構造要素1〜44は、それぞれの場合、上記に参照した置換基を有することもでき、適切な場合、さらに、通常1又は2個のエチレン二重結合を有することができる。
【0082】
構造要素Aは、6〜15個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有するアリール基、具体的にはフェニレン、ナフチレン若しくはアントラセニレン基、又は2〜15個、好ましくは3〜10個の炭素原子を有する上記に定義したようなヘテロアリール基であってもよい。
【0083】
指定されたアリール及びヘテロアリール基は、適切な場合、それぞれの場合、上記置換基C
1〜C
6-アルキル、C
1〜C
6-ペルフルオロアルキル、C
1〜C
6-アルコキシ、C
7〜C
12-アラルキル、ハロゲン、-SiR
5dR
6d、R
7d、置換若しくは非置換C
6〜C
10-アリール、-NR
8dR
9d、SR
10d及びNO
2の群から選択される1〜5個の置換基を有することができる。
【0084】
さらに、構造要素Aは、-O-、-S-、-N(R
11)-、-S(O)-、-C(O)-、-S(O)
2-、-P(R
11)-、-(R
11)P(O)-、-OP(O)O-、-OP(O)
2O-及び-Si(R
12)(R
13)-の群から選択される官能基又はヘテロ原子であってもよく、基R
11、R
12、R
13は、互いに独立に、それぞれの場合、上記のC
1〜C
6-アルキル、C
7〜C
12-アラルキル及び/又は置換若しくは非置換C
6〜C
10-アリールである。この群の中で、構造要素Aは、好ましくは-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)
2-又は-Si(R
12)(R
13)-である。
【0085】
本発明の範囲内で、「遊離又は錯体結合形態の配位子」という用語は、遊離形態の配位子と、プロセス条件下で遊離形態に転換させることができると考えられるすべての形態の両方を含む。挙げることができるその例は、塩基性加水分解によって遊離形態の配位子に転換される配位子のアルコキシドである。
【0086】
本発明の範囲内で、「塩基水溶液」という表現は、一般に、そのpHが7超である水溶液を含む。特に、これらは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液、特に、KOH及びNaOHの水溶液である。
【0087】
本発明の範囲内で、「アルミニウム含有反応生成物」という表現は、イオン性の共有結合又は錯体結合形態のアルミニウムを含む少なくとも1つの化合物を含む反応生成物である。これらは、シトロネラルの環化において使用される、以下で定義するような式(R
14)
3-pAlH
p(II)又はMAlH
4(III)の化合物からの本発明による方法の条件下での結果としてのアルミニウムの化合物である。
【0088】
本発明の範囲内で、「大部分(majority)」という表現は、50%超、好ましくは80%超、特に好ましくは90%超である、存在する化合物の全量の百分率割合を意味すると理解すべきである。
【0089】
ステップa):
本発明による方法のステップa)において、シトロネラルの環化によるイソプレゴールの製造からのアルミニウム含有反応生成物を蒸留分離にかけて、イソプレゴール豊富な塔頂生成物及びイソプレゴール枯渇塔底生成物を得る。
【0090】
特定の実施形態では、ステップa)は、イソプレゴールの沸点より高い沸点を有する溶媒を使用する。このような仕方で、塔底内容物の望ましくない熱応力を回避することができる。特に、そこに存在する式(I)の配位子は、イソプレゴールを分離している間、溶媒から遊離した形態ではない。蒸留分離の前及び/又はその間に、高沸点溶媒をアルミニウム含有反応生成物に添加することができる。蒸留条件下でのその沸点がイソプレゴールの沸点を上回る高沸点溶媒を使用することが好ましい。蒸留条件下で導入される溶媒の沸点は、イソプレゴールの沸点を少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃、特に少なくとも20℃上回ることが好ましい。
【0091】
そうした沸点を有する好ましい高沸点溶媒は、例えば炭化水素、例えばフェニルシクロヘキサン、ベンジルトルエン、ジベンジルトルエン、1-メチルナフタレン及びトリデカン、1-デカノール、炭酸1,2-プロピレン、エーテル、例えばジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル及びジベンジルエーテル並びにこれらの溶媒の工業用グレード(technical-grade)の混合物である。主成分としてフェニルシクロヘキサンを含む混合物が特に好ましい。
【0092】
少なくとも1つの高沸点溶媒を使用する場合、得られるステップa)におけるイソプレゴール枯渇塔底生成物は、高沸点溶媒、式(I)の配位子の大部分、及び、適切な場合、少なくとも1つのアルミニウム含有化合物を含む有機相である。
【0093】
ステップa)におけるイソプレゴールの蒸留分離は、好ましくは250℃以下、好ましくは150℃以下、特に好ましくは100℃以下の塔底温度で行うことが好ましい。より低い塔底温度は、通常クリティカルではなく(uncritical)、一般に少なくとも0℃、好ましくは少なくとも20℃である。これらの最高温度を維持するために、望むなら、蒸留を適切な真空下で実施することができる。
【0094】
本発明による方法のステップa)における圧力は、特定の実施形態に関係なく、一般に、0.1〜1500ミリバールの範囲、好ましくは1〜500ミリバールの範囲、特に好ましくは5〜100ミリバールの範囲である。
【0095】
シトロネラルの環化によるアルミニウム含有反応生成物の組成、及び高沸点溶媒の使用に関係なく、イソプレゴールの蒸留分離は、連続式又は回分式、好ましくは連続式で行うことができる。1つの適切な手順では、高沸点溶媒を、蒸留分離の前に、シトロネラルの環化による反応生成物に添加し、続いて、蒸留の過程において、塔底中に存在する高沸点溶媒の量を一定に保持する。
【0096】
ステップa)における蒸留分離のために、当業者に公知の慣用的なデバイスを使用することができる(例えばSattler, Thermische Trennverfahren [Thermal separation methods], 2nd Edition 1995, Weinheim, p.135ff; Perry's Chemical Engineers Handbook, 7th Edition 1997, New York, Section 13)を参照されたい。これらは、充填物(packing)、インターナル等が備わっていてよい蒸留塔を含む。使用される蒸留塔は、分離トレイ、例えば多孔トレイ、バブルキャップトレイ又はバルブトレイ、配列された(arranged)充填物、例えばシートメタル若しくはファブリック充填物又は充填物のランダムベッドなどの分離に効果的なインターナルを備えることができる。使用される塔において要求される段数(number of plate)、及び還流比(reflex ratio)は、本質的には、シトロネラルの環化によるイソプレゴールの製造からのアルミニウム含有反応生成物中の構成要素及び高沸点溶媒の要求純度及び相対的沸騰位置によって支配され、当業者は、公知の方法によって、その具体的な設計及び稼働データを確かめることができる。蒸留分離は、例えば、1つ以上の一緒に連結された蒸留塔で行うことができる。
【0097】
ステップa)における蒸留分離に同様に適しているものは、慣用的な蒸発器、好ましくは強制循環を備えた蒸発器、特に好ましくは流下薄膜式蒸発器である。
【0098】
適切な場合、シトロネラルの環化によるアルミニウム含有反応生成物中に存在し得る追加の成分に応じて、蒸留分離の間に得られる塔頂生成物の組成によっては、前記生成物を、適切な場合、さらなる後処理ステップにかけることが必要となる可能性がある。
【0099】
シトロネラルを環化することによるイソプレゴールの製造からのアルミニウム含有反応生成物の後処理のための本発明による方法の特定の実施形態では、反応生成物は、低沸点溶媒(iii)を追加的に含む。
【0100】
本発明の範囲内で、「低沸点溶媒(iii)」という表現は、イソプレゴールの沸点を指す。ここで、特に適しているものは、蒸留分離の条件下で、それぞれの条件下でのイソプレゴールのそれを少なくとも5℃、好ましくは10℃、特に20℃下回る沸点を有する溶媒又は溶媒混合物である。
【0101】
本発明の範囲内で、そうした沸点を有する好ましい溶媒は、例えば、芳香族溶媒、例えばトルエン、エチルベンゼン又はキシレン、ハロゲン化溶媒、例えばジクロロメタン、ジクロロエタン又はクロロベンゼン、脂肪族溶媒、例えばペンタン、ヘキサン又はシクロヘキサン、エーテル、例えばテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、エステル、例えば酢酸エチル又はジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの不活性有機溶媒又はその混合物である。特に好ましいのはトルエンである。
【0102】
後処理することになるアルミニウム含有反応生成物がそうした低沸点溶媒を含む場合、適切な実施形態では、次いでこれを、イソプレゴールを蒸留分離する前に、少なくとも部分的に反応生成物から除去する。この低沸点溶媒は、同様に蒸留により分離することが好ましい。低沸点溶媒の沸点に応じて、慣用的な上記の蒸留デバイスを使用することができる。
【0103】
さらに適切な実施形態では、ステップa)におけるアルミニウム含有反応生成物の蒸留分離を行って、低沸点溶媒の少なくとも一部、好ましくはその大部分を同時に含むイソプレゴール豊富な塔頂生成物を得る。この場合、塔頂生成物を、さらなる分離、好ましくは同様に蒸留による分離にかけることができる。
【0104】
分離された低沸点溶媒を、それを溶媒として使用することによって、シトロネラルの環化へ戻すことが有利である。このような仕方で、本発明による方法は、(不可避的な損失の結果として必要となる補給分(top-ups)は別として)ある量の低沸点溶媒のただ一回の供給だけしか必要としない。
【0105】
シトロネラルを環化することによるイソプレゴールの製造からのアルミニウム含有反応生成物を後処理するための本発明による方法の特定の実施形態では、反応生成物は追加的に補助剤(iv)を含む。
【0106】
本発明の範囲内で、「補助剤(iv)」という用語は、望ましくない二次反応を抑えるために、シトロネラルの環化の際に添加される化合物を指す。好ましくは、補助剤(iv)は、有機酸、カルボン酸無水物、アルデヒド、ケトン及びビニルエーテルから選択される。
【0107】
特に、補助剤(iv)は、酸、好ましくは有機酸から選択される。例として、挙げることができる有機酸は:酢酸、プロピオン酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸であり、好ましくは酢酸である。
【0108】
本発明の他の特定の実施形態では、補助剤(iv)は、カルボン酸無水物、アルデヒド、ケトン及びビニルエーテルから選択される。
【0109】
前記物質の部類の補助剤(iv)は、それぞれの場合、個別的に、又は後処理しようとする反応生成物中の混合物の形態で存在することができる。好ましい混合物は、物質の1つの部類の化合物からなるものである。反応生成物は、単一の補助剤を含むことが特に好ましい。
【0110】
シトロネラルの環化による反応生成物中に存在する補助剤(iv)は、同様に、少なくとも部分的に取り出され、できる限りシトロネラルの環化へ戻されることが好ましい。
【0111】
蒸留条件下で、補助剤(iv)が、イソプレゴールの沸点を下回るか、又はわずかだけ、すなわち30℃未満それを上回る沸点を有する場合、これらは、適切な場合、それ自体が反応しない程度の蒸留によって、十分に反応した混合物から大部分を回収することができる。補助剤の沸点に応じて、慣用的な上記の蒸留デバイスを使用することができる。
【0112】
蒸留条件下で、補助剤(iv)が、イソプレゴールの沸点を相当上回る、すなわち少なくとも30℃上回る沸点を有する場合、これらは、塔底生成物中に留まり、適切な場合、それらの物理的特性がこれを許容するなら、本発明による方法のステップb)において取り出される。
【0113】
さらに適切な実施形態では、ステップa)における反応生成物の蒸留分離は、その補助剤(iv)の少なくとも一部、好ましくは大部分を同時に含むイソプレゴール豊富な塔頂生成物が得られるように行われる。適切な場合、この主生成物は、上記に説明したような低沸点溶媒を含むことができる。この場合、塔頂生成物を、さらなる分離、好ましくは同様に蒸留による分離にかけることができる。分離された補助剤(iv)は、適切な場合、低沸点溶媒と一緒に、有利にはシトロネラルの環化に戻され、これは、例えば望ましくない二次反応を抑えるために使用される。このような仕方で、本発明による方法は、(不可避的な損失の結果として必要となる補給分は別として)ある量の補助剤(iv)のただ一回の供給だけしか必要としない。
【0114】
イソプレゴールの分離、高沸点溶媒の導入、及び、適切な場合、低沸点成分の分離、すなわち存在する任意の溶媒及びシトロネラルの環化からの揮発性補助剤の分離は、様々な仕方で組み合わせることができる。
【0115】
1つの適切な実施形態では、いわゆる隔壁塔(dividing wall column)を蒸留のために使用する。すなわち供給口及び側部取り出し口(side take-off)が、その長手方向に延びる塔の断面に沿って延在する隔壁の両側に位置している。隔壁を備えるそうした蒸留塔は、それ自体当業者に公知である。側部取り出し口及び供給口が隔壁の領域内にある場合、Brugma又はPetlyuk型の連結(connection)と類似した連結がもたらされる。隔壁塔を使用するそうした蒸留は、ドイツ特許第A-3302525号及び欧州特許第A-0804951号に記載されている。そのすべての範囲を本明細書で参照する。この場合、低沸点成分が豊富な画分を、塔頂生成物として取り出すことができ、イソプレゴールの大部分を含むストリームを、例えば側部取り出しとして抜き出すことができる。高沸点溶媒を、供給口の下の方、好ましくは塔底に、又は塔底のすぐ上に導入する。高沸点溶媒中の式(I)の配位子の大部分の溶液を、塔底生成物として生成する。
【0116】
代替的な実施形態では、連結された塔を蒸留のために使用する。シトロネラルの環化の反応生成物が、以下でより詳細に説明するような、溶媒及び/又は揮発性補助剤を含む場合、この実施形態は有利である可能性がある。
【0117】
この場合、イソプレゴール及び低沸点又はやや高沸点の溶媒及び/又は補助剤(iv)の混合物は、第1塔の塔頂生成物を生成し、第2塔において、これを分離にかけて、イソプレゴールの少なくとも大部分を含むストリーム、及び環化の低沸点溶媒及び/又は補助剤を含むイソプレゴール枯渇ストリームを得ることができる。
【0118】
環化の低沸点溶媒(iii)及び補助剤(iv)を含むストリームは、通常、さらに分離することなく環化へ戻すことができる。
【0119】
式(I)の配位子は、適切な場合、それらの錯体又は他の誘導体の形態で、第1塔の塔底生成物として生成される。
【0120】
ステップb):
本発明による方法のステップb)において、イソプレゴール枯渇塔底生成物を、塩基水溶液と密に接触させて、アルミニウム含有水相、及び式(I)の配位子の大部分を含む有機相を得る。好ましい塩基水溶液は上記に与えられている。
【0121】
式(I)の遊離又は錯体結合形態の配位子の他に、ステップa)において得られるイソプレゴール枯渇塔底生成物は、少なくとも1つの他の低揮発性成分を含むことができる。これらは、例えば、ステップa)で加えられた高沸点溶媒、シトロネラルのイソプレゴールへの環化のために使用されたアルミニウム含有化合物の反応生成物、及び適切な場合、ステップa)において分離されなかった補助剤(iv)を含む。アルミニウム含有成分及び/又は補助剤(iv)は、特に連続法の場合蓄積し、特に、ステップc)における分離の収率及び純度に悪影響を及ぼすので、これらの化合物をできるだけ完全に除去することが有利である。これは、特にアルミニウム含有化合物に当てはまる。
【0122】
ステップb)において接触させるステップは、好ましくは抽出によって行う。抽出段の数は、好ましくは1〜20段の範囲である。
【0123】
使用される抽出剤は上記の塩基水溶液である。したがって、これらの表現は、本発明の範囲内で、同意語として使用される。
【0124】
抽出のため、ステップa)からのイソプレゴール枯渇塔底生成物を、塩基水溶液と密に接触させる。相の分離によって、式(I)の配位子の大部分を含む相と、アルミニウム含有化合物が豊富な水相が得られる。次いで、水相を除去する。接触させるステップは連続式又は回分式で行うことができる。
【0125】
回分式手順のため、ステップa)からのイソプレゴール枯渇塔底生成物と抽出剤水溶液を、適切な容器中での機械的かき混ぜで、例えば撹拌により接触させ、その混合物を相分離のために静置させ、容器の塔底のより密度の高い相を適切に取り出すことによって、これらの相の1つを取り出す。
【0126】
複数の回分式分離操作を、カスケード式のやり方で順次実施することができる。この場合、水相から分離された式(I)の配位子の大部分を含む相を、それぞれの場合、新鮮な分の抽出剤水溶液と接触させ、且つ/又はその抽出剤水溶液を向流的に通過させる。
【0127】
抽出は、連続的に行うことが好ましい。連続抽出手順のため、抽出剤水溶液、及びステップa)からのイソプレゴール枯渇塔底生成物のストリームを、回分式変形法(variant)と類似した仕方で、適切な装置中に連続的に導入する。同時に、式(I)の配位子の大部分を含む相の排出物、及びアルミニウム含有化合物が豊富な水相の排出物を、相の分離をそこで行う装置から連続的に取り出す。
【0128】
抽出は、少なくとも一段階で、例えば混合器-分離器の組合せで行う。適切な混合器は、動的混合器か又は静的混合器である。複数段での抽出は、例えば複数の混合器-分離器又は抽出塔において行う。
【0129】
1つの適切な実施形態では、少なくとも1つの凝集デバイス(coalescing device)を、相分離を改善するために使用する。これは、凝集フィルター、電気凝集装置(electrocoalescer)及びその組合せから選択されることが好ましい。抽出のために混合器-分離器デバイスを使用する場合、キャンドルフィルター又はサンドフィルターなどの凝集フィルターの使用は、相分離を改善するために有利であることが証明されている。ここで、フィルターは、混合器(撹拌容器)の後に直接設置するか、且つ/又は分離器からの有機流出部(organic run-off)中に設置することができる。相分離を改善するために、電気凝集装置を使用することも好ましい。これらは、最大で5質量%の水性異物相(foreign phase)を分離するのに有用であることが証明されている。凝集デバイスの使用は、式(I)の配位子の大部分を含む抽出塔の有機排出物からの微細に分散した水相を分離するために、有利なことに、本発明による方法においても適している。
【0130】
1つの適切な実施形態では、抽出を、ステップa)によるイソプレゴール枯渇塔底生成物からのアルミニウム含有成分の抽出のために、少なくとも1つの混合器-分離器の組合せにおいて行う。さらなる混合器-分離器の組合せの使用は、続いて再抽出し、式(I)の配位子のプロセス画分、又は、適切な場合、分離されることになるアルミニウム含有化合物と適切な場合一緒に、部分的に抽出剤に入ってくる高沸点溶媒のプロセス画分へ戻すために特に有利である。
【0131】
この抽出は、2つの直列に連結された加熱可能な混合器中で連続的に実施することが好ましく、その塩基水溶液を、ステップa)からのイソプレゴール枯渇塔底生成物と一緒に第1の撹拌装置に送り、得られた混合物を第2の撹拌装置に移送する。次いで、この第2の撹拌装置から、混合物を分離器に供給し、そこで、比較的重い水相と比較的軽い有機相への相分離が起こる。混合器のこのカスケード化の結果として、アルミニウム含有化合物のより完全な加水分解及び/又は抽出が遂行される。使用される撹拌装置は、撹拌機を備えており蒸気及び/又は温水で加熱可能な当業者に公知の容器(撹拌槽型反応器)である。使用される相分離容器は、個々の相から固形物が析出してこないように加熱されている加熱可能な容器と同様に、水平に設置することが有利である。
【0132】
特定の状況下で、式(I)の配位子の大部分を含む有機相を、ステップc)における配位子の分離の前又はそれを分離した後、乾燥ステップにかけることが有利であり得る。適切な乾燥方法は、当業者に公知の慣用的なもの、特に、例えばゼオライトモレキュラーシーブを使用した脱水剤への吸着である。
【0133】
本発明による方法の代替的な実施形態では、イソプレゴール枯渇塔底生成物を塩基水溶液と接触させた後、水を、完全に又は少なくとも部分的に蒸留により除去する。
【0134】
式(I)の配位子が、特に結晶化によって時期尚早に分離するのを防止するため、ステップb)の間いずれのポイントにおいても、有機相中の配位子の濃度がその溶解度を超えないようにしなければならない。これは、適切な場合、温度、及び/又は添加される溶媒の量及び種類の適切な選択によって実行することができる。
【0135】
結果として、本発明による方法の好ましい実施形態では、ステップa)からの加熱された塔底生成物の排出物を、加熱された塩基水溶液と密に接触させる。
【0136】
本発明の範囲内で、「加熱されている(heated)」という表現は、室温より高く、当該反応条件下での水溶液又は有機溶液のそれぞれの沸点温度より低い温度を指す。特に、加熱されているとは、25℃〜150℃の範囲、特に70℃〜100℃の範囲の温度を指す。
【0137】
適切な場合、シトロネラルの環化において使用される補助剤に応じて、イソプレゴール枯渇塔底生成物は、適切な場合、ステップa)において分離されなかった他の成分を含むことができる。これらは、ステップb)において分離されることが好ましい。この場合、これらの成分、例えば補助剤(iv)を回収するために、得られた水相を、適切な分離プロセスにかけることができる。
【0138】
ステップc):
本発明による方法のステップc)において、ステップb)で得られた配位子の大部分を含む有機相からの式(I)の上記配位子を、溶液から物質を分離するための上記方法によって有機相から分離する。上記したように、この方法では、電磁放射線をその溶液中に照射し、溶液中に位置する結晶によって散乱された電磁放射線の強度を検出する。この場合、これらは配位子の結晶である。次いで、検出強度を所望強度と比較し、溶液の温度を、この差が減少するような仕方で、検出強度と所望強度の差に応じて調節する。最終的に、検出強度と所望強度の差の量が限界値未満になったら、結晶化法、特に冷却結晶化を開始させる。次いで、得られた配位子の結晶を分離する。
【0139】
本発明による方法では、特に、立体的に非常に厳しい(demanding)配位子を有する以下のアルミニウムフェノラート触媒を使用する:
【0141】
フェニルシクロヘキサン中の溶液からの冷却結晶化によるこの配位子の回収の際、この分子の複雑な構造のため、結晶形成は比較的緩やかに起こる。結晶化溶液の過冷却は、この配位子について最大で50Kであってよい。したがって、容易に濾過可能な結晶のサイズ及び形態で、配位子の結晶化に到達するのは特に困難である。これの尺度は、容易に濾過可能な生成物について5
*10
13mPasm
-2のフィルター抵抗の獲得である。その溶液が、過度に播種されている、又は非常にわずかしか播種されていない場合、フィルター抵抗は、一桁超〜10
15mPasm
-2超まで変化する。
【0142】
上記配位子を溶液から分離しようとする場合、その溶液、又は溶液の一部を、結晶化容器中で好ましくは95℃より低い、特に90℃より低い温度にする。次いで、散乱された電磁放射線の検出強度が、説明したように所望強度に近接してくるまで、温度を増大させる。次いで、冷却結晶化のために温度を再度低下させる。開始時の冷却速度は1K/h〜5K/hの範囲である。
【0143】
本発明による方法のおかげで、正確に測定された種晶量が、結晶化法の開始時に提供される。これは、配位子の複雑な分子構造にもかかわらず、それを、高い収率で短時間に回収できることを意味する。
【0144】
この結晶化法では、説明した冷却結晶化法の他に、さらに、それは蒸発結晶化法、真空結晶化法、及び結晶化シュート又はジェット晶析装置を使用する方法であってもよい。
【0145】
一般に、結晶化は、-50℃〜150℃の範囲、好ましくは0℃〜120℃の範囲、特に30℃〜110℃の範囲の温度で行う。
【0146】
式(I)の結晶性配位子を、例えば濾過、浮遊、遠心分離又は篩別によって溶液から単離することができる。
【0147】
この仕方で確保された式(I)の配位子は、適切な場合、適切な乾燥方法により乾燥することができる。このための方法は、当業者に公知である。例えば、この方法の技術的構成(technical configuration)のためには、慣用的なローラー乾燥機、ディスク乾燥機、チャンバー乾燥機、流動床乾燥機又は赤外線乾燥機(radiation dryer)が適している可能性がある。
【0148】
式(I)の配位子が枯渇している有機相を、ステップa)の前か又はその間に、再度プロセスに加えることができる。
【0149】
イソプレゴールの製造からの反応生成物の後処理のための方法の好ましい実施形態では、式(I)の配位子は、式(I.a)のビス(ジアリールフェノール)配位子
【0150】
【化6】
(式中、Ar
1、Ar
2、Ar
3、Ar
4、R
1、R
2、R
3、R
4及びAは上記に示した意味を有する)
から選択される。
【0151】
式(I.a)の配位子は、同様に、それぞれの場合、フェノールヒドロキシ基に対して両方のオルト位で、芳香族又は複素環式芳香族(Ar
1〜Ar
4)によって置換されており、構造要素Aを介して一緒に結合しており、且つ、適切な場合、他の置換基(R
1〜R
4)を有することもできる2つのフェノール系を有している。この構造要素Aは、それぞれの場合、フェノールヒドロキシ基に対してパラ位で2つのフェノール系と結合している。ここで、基Ar
1、Ar
2、Ar
3、Ar
4、基R
1、R
2、R
3、R
4及び構造要素Aは、式(I)について上記で指定したのと同じ意味を有することができる。
【0152】
本発明によれば、特に好ましい配位子は、アリール基Ar
1、Ar
2、Ar
3及びAr
4が、同じであり、式(I)について上記に示した好ましい意味を有するものである。特に好ましいアリール基Ar
1〜Ar
4は、フェニル、ナフチル、4-フルオロフェニル、4-クロロフェニル、3-クロロフェニル、3,5-ジクロロフェニル、4-メチルフェニル、3-トリフルオロメチルフェニル、4-トリフルオロメチルフェニルであり、非常に好ましくはフェニルである。
【0153】
本発明による好ましい式(I.a)の配位子では、基R
1、R
2、R
3、R
4は、同じか又は異なっており、好ましくは同じであり、好ましくは:水素、ハロゲン、特にフッ素又は塩素、メチル、トリフルオロメチル、イソプロピル、tert-ブチル、フェニル、ニトロである。
【0154】
式(I.a)における構造要素Aは、式(I)について上記に示した意味を有する。式(I.a)における好ましい構造要素Aは、特に、指定された仕方で置換されていてよい構造要素1〜44であってもよい。
【0155】
特に好ましい配位子は式(I.a
1)〜(I.a
3)のものであり、この指定された基Ar
1〜Ar
4、R
1〜R
4及びR
15〜R
18は、以下の表における例によって挙げられている意味を有することが好ましい。
【0162】
ここで、表1〜3において、Phはフェニル基であり、C(O)は本発明の範囲内のカルボニル基である。一般に、基R
15、R
16及びR
17は、互いに独立に、上記のC
1〜C
6-アルキル、C
1〜C
10-アシル、C
1〜C
10-カルボキシル又はC
6〜C
10-アリールであってよく、指定された基は、1つ以上の同じか又は異なるハロゲン及び/又はNO
2置換基を有することができ、基R
16及びR
17は、一緒になって、環状構造要素、好ましくはアルキレン橋かけを形成することもできる。
【0163】
溶液から物質を分離するための上記方法の好ましい実施形態では、その物質は、上記式(I.a)のビス(ジアリールフェノール)配位子から選択される式(I)の配位子である。特に好ましい配位子は上記式(I.a
1)〜(I.a
3)のものであり、指定された基Ar
1〜Ar
4、R
1〜R
4及びR
15〜R
18は、好ましくは、例により表で上記に挙げた意味に帰する。
【0164】
本発明は、式(IV)のイソプレゴール
【0165】
【化10】
を製造するための方法であって、
α)請求項1及び/又は10で定義されるような式(I)のビス(ジアリールフェノール)配位子を、式(II)のアルミニウム化合物
(R
14)
3-pAlH
p (II)
(式中、
Alはアルミニウムであり、
R
14は、1〜5個の炭素原子を有する分枝状又は非分枝状アルキル基であり、
pは0又は1〜3の整数である)
及び/又は
式(III)のアルミニウム化合物、
MAlH
4 (III)
(式中、
Alはアルミニウムであり、
Mはリチウム、ナトリウム又はカリウムである)
と反応させることによって得られる触媒の存在下での式(V)のシトロネラル
【0166】
【化11】
を環化するステップ、
β)反応を、
a)ステップα)で得られたアルミニウム含有反応生成物を蒸留分離にかけて、イソプレゴール豊富な塔頂生成物及びイソプレゴール枯渇塔底生成物を得るステップ、
b)イソプレゴール枯渇塔底生成物を塩基水溶液と密に接触させて、アルミニウム含有水相、及び式(I)の配位子の大部分を含む有機相を得るステップ、
並びに、
c)式(I)の配位子を有機相から分離するステップ
によって行った後に式(I)のビス(ジアリールフェノール)配位子を回収するステップ
を含む方法をさらに提供する。
【0167】
ここで、式(I)の配位子の分離は、結晶化によって、特に、溶液から物質を分離するための上記方法の過程で行う。
【0168】
シトロネラルの環化によるイソプレゴールの製造からの反応生成物の後処理のため、及び、式(I)の好ましい配位子のための本発明による方法の好ましい実施形態に関して、上記好ましい形態を、それら全体において参照する。
【0169】
本発明によって使用されるビス(ジアリールフェノキシ)アルミニウム化合物を製造するために使用できる式(I)及び(I.a)のビス(ジアリールフェノール)配位子は、当業者にそれ自体公知の方法によって容易に調製することができる。構造型(I.a
1)の化合物は、例えば、とりわけ、Z.Y. Wang, A.S.HayによるSynthesis 1989, 471-472又は米国特許第3,739,035号に記載されているように、ルイス酸、例えばAlCl
3の存在下で、対応するビス-オルト-アリールフェノールをアルデヒドR
15CHOと反応させることによって得られる。構造型(I.a
2)の配位子は、例えば、米国特許第3,739,035号に記載されているように、例えば対応するビス-オルト-アリールフェノールを、式R
16C(O)R
17の適切なケトンと反応させることによって到達できる。構造型(I.a
3)の配位子は、例えば、F.F.BlickeらのJ. Am. Chem. Soc. 1938, 60, 2283-2285;CH350461又はG.MaierらによるChem.Ber.1985, 118, 704-721などに記載されているように、ジカルボン酸クロリドを用いた、対応するフェノール又はO-保護フェノールのフリーデル・クラフツアシル化によって到達できる。構造型(Ia
3)の配位子を製造する別の方法は、例えばドイツ特許第A2534558号に記載されているような三級ジオールを用いるか、又は、例えばJ.ZavadaによるCollect. Czech. Chem. Commun., 1976, 41, 1777-1790に記載されているようなジハライドを用いた、対応するフェノールのフリーデル・クラフツアルキル化にもある。
【0170】
本発明によって使用されるビス(ジアリールフェノキシ)アルミニウム化合物は、例えば、式(I)又は(I.a)の上記ビス(ジアリールフェノール)配位子を式(II)のアルミニウム化合物
(R
14)
3-pAlH
p (II)
と反応させることによって得られる。
【0171】
ここで、R
14は、1〜5個の炭素原子を有する分枝状若しくは非分枝状アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル又はネオペンチルなどである。添え字pは0又は1〜3の整数である。好ましくは、添え字pは1又は0であり、特に好ましくは0である。好ましい式(II)の化合物は、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリドであり、特に好ましくはトリメチルアルミニウム及びトリエチルアルミニウムである。
【0172】
これに代わって、本発明によって使用されるビス(ジアリールフェノキシ)アルミニウム化合物は、式(I)又は(I.a)の上記ビス(ジアリールフェノール)配位子を式(III)のアルミニウム化合物
MAlH
4 (III)
(式中、Mはリチウム、ナトリウム又はカリウムである)
と反応させることによっても得られる。結果として、式(I)又は(I.a)の上記ビス(ジアリールフェノール)配位子を反応させることによって、本発明によって使用されるビス(ジアリールフェノキシ)アルミニウム化合物を製造するのに適したものは、リチウムアルミニウムヒドリド、ナトリウムアルミニウムヒドリド及びカリウムアルミニウムヒドリド及びその混合物でもある。さらに、式(II)及び(III)の指定された化合物の混合物も、式(I)又は(I.a)の上記ビス(ジアリールフェノール)配位子と反応させることによって、本発明によって使用されるビス(ジアリールフェノキシ)アルミニウム化合物を製造するのに適している。
【0173】
反応は、上記の式(I)又は(I.a)のビス(ジアリールフェノール)配位子の1つが式(II)又は(III)の化合物と接触するように実施することが有利である。反応は、例えばトルエン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、酢酸エチル、ペンタン、ヘキサン、ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの不活性有機溶媒中で実施することが有利であり、それに加えて、予備乾燥された溶媒か又は無水の溶媒の使用は特に有利であるとみなされる。反応は、通常、約-100℃〜約100℃、好ましくは約-50℃〜約50℃、特に好ましくは約-30℃〜約30℃の範囲の温度で実施する。
【0174】
本発明によるビス(ジアリールフェノキシ)アルミニウム化合物の製造の間、使用される式(I)又は(I.a)のビス(ジアリールフェノール)配位子のフェノールヒドロキシ基は、式(II)及び(III)の1つ以上の化合物と反応する。理論的に、各アルミニウム原子は、1〜3個のフェノールヒドロキシ基と反応することができる。使用される式(I)又は(I.a)のビス(ジアリールフェノール)配位子の立体的特性又は要求のため、これは、直線構造又は網状構造(network)などのより大きい分子量の構造の形成をもたらす。
【0175】
ここで、使用される式(I)又は(I.a)のビス(ジアリールフェノール)配位子と使用される式(II)及び/又は(III)の化合物のモル比は、不完全に反応した式(II)及び/又は(III)の化合物の量をできるだけ少なくするように選択することが有利である。指定される比は、式(I)又は(I.a)のビス(ジアリールフェノール)配位子を式(II)及び(III)の1つ以上の化合物と接触させた後、式(II)及び/又は(III)のいずれの未反応化合物がもはや存在しないように選択されることが好ましい。コスト面を考慮して、使用する式(I)又は(I.a)の配位子の過剰度を低く保つことが望ましい。式(I)又は(I.a)のビス(ジアリールフェノール)配位子と式(II)及び/又は(III)の化合物を、約4:1〜約1:1のモル比、非常に好ましくは約3:1〜約1.5:1、最も好ましくは約1.5:1のモル比で使用することが特に好ましい。
【0176】
本発明の好ましい実施形態の範囲内で、本発明によって使用されるビス(ジアリールフェノキシ)アルミニウム化合物の製造は、最初に、溶解度に応じて、選択された式(I)又は(I.a)の配位子の約0.001〜約1モル溶液を、約-10〜約30℃の温度で、適切な有機溶媒、例えばトルエン中に導入するステップ、及び、式(II)及び/又は(III)のアルミニウム化合物を、好ましくは溶液、例えばトルエン中のトリメチル-又はトリエチルアルミニウムの溶液の形態で添加するステップを含む。
【0177】
使用される式(I)又は(I.a)の配位子と式(II)及び/又は(III)のアルミニウム化合物の反応は、通常急速に起こり、選択された反応条件に応じて、約10min〜約2h後、しばしば約1h後にはほとんど完了している。より多くの非反応性反応物を使用する場合、反応混合物の温度を一時的に上昇させることが有利であり得る。
【0178】
特に、選択された溶媒中における、反応させることになる式(I)又は(I.a)の配位子、及び式(II)及び/又は(III)のアルミニウム化合物の溶解度、濃度及び反応温度に関して、選択される反応条件に応じて、本発明によるビス(ジアリールフェノキシ)アルミニウム化合物は、使用される溶媒又は溶媒混合物中の固体、懸濁液又は溶液の形態で得られる。このやり方で得られた本発明によって使用されるビス(ジアリールフェノキシ)アルミニウム化合物は、それぞれの場合、得られた形態でさらに使用することができる、又は、分離し、使用される溶媒から解放することができる。
【0179】
ここで、単離は、有利そうであり、当業者に公知である方法で行うことができる。本発明によって使用されるビス(ジアリールフェノキシ)アルミニウム化合物の単離、貯蔵及びさらなる処理は、酸素及び水分の広範な排除のもとで実施することが好ましい。
【0180】
イソプレゴールを製造するのに本発明による方法を実施するため、この手順は、最初に、上記したような適切な溶媒中の本発明によって使用されるビス(ジアリールフェノキシ)アルミニウム化合物の溶液を調製するステップを含むことが有利である。次いで、環化させようとするラセミ又は非ラセミシトロネラルを、本発明にしたがってこの溶液に加える。ここで、シトロネラルは、そのままで加えても、また、有利には上記適切な溶媒のうちの1つの溶液の形態で加えてもよい。本発明による方法の好ましい実施形態の範囲内で、式(I)又は(I.a)の選択された配位子のトルエン溶液を最初に調製し、次いで、有利には撹拌しながら、トルエン溶液中の式(II)及び/又は(III)の選択されたアルミニウム化合物、好ましくはトリメチルアルミニウム又はトリエチルアルミニウムを加える。
【0181】
本発明による環化方法を実施するための適切な出発原料は、任意の方法で製造できるシトロネラルである。約90〜約99.9重量%、特に好ましくは約95〜約99.9重量%の純度を有するシトロネラルを使用することが好ましい。
【0182】
環化させようとするシトロネラルの添加は、約-40℃〜約40℃の範囲、好ましくは約-20℃〜約20℃の範囲の温度で行うことが有利である。このため、本発明によって使用されるビス(ジアリールフェノキシ)アルミニウム化合物の調製溶液は、この範囲の温度、例えば-10℃〜10℃の範囲の温度に冷却することが有利であり、予冷されたシトロネラル又は予冷されたシトロネラルの溶液を加える。
【0183】
シトロネラル又はその溶液の添加は、調製された触媒溶液に、全量が一括して添加されるか、又はそれが分割して或いは連続的に添加されるように行うことができる。適切な溶媒は上記溶媒、特にトルエンである。環化させようとするシトロネラルは、そのままで、すなわち、溶媒をさらに添加することなく使用することが好ましい。溶媒を使用する場合、溶媒(触媒製造のため、及び環化反応を実行するための)の全量は、反応させようとするシトロネラルと溶媒の体積ベースの比が、約2:1〜約1:20、好ましくは約1.5:1〜約1:10となるように選択することが有利である。
【0184】
反応させようとするシトロネラルと本発明によって用いられる使用ビス(ジアリールフェノキシ)アルミニウム化合物の量比は、それを製造するために使用される、式(I)又は(I.a)の化合物及び式(II)及び/又は(III)の化合物の量によって、すなわち、使用される配位子と使用される式(II)及び/又は(III)のアルミニウム化合物の量比によって決定される。
【0185】
本発明によれば、使用される式(II)及び/又は(III)のアルミニウム化合物の量に対する、反応させようとするシトロネラルの量は、そのモル比が約5:1〜約1000:1、好ましくは約10:1〜約500:1、特に好ましくは約50:1〜約200:1となるように選択される。
【0186】
これに関係なく、使用される式(I)又は(I.a)の配位子と使用される式(II)及び/又は(III)のアルミニウム化合物の比は、本発明によるビス(ジアリールフェノキシ)アルミニウム化合物を製造するために上記に指定された限界内で変化させることができる。
【0187】
イソプレゴールへのシトロネラルの環化は、一般に、反応物及び反応条件の選択に応じて、急速に起こり、通常、これは、約0.5〜約10h後、しばしば約5h後にはほぼ完了する。反応の進行は、当業者にそれ自体公知の方法によって、例えばクロマトグラフィー、特にガスクロマトグラフィー法或いはHPLC法で容易に監視することができる。
【0188】
本発明による方法の好ましい実施形態の範囲内で、シトロネラルのイソプレゴールへの環化は、補助剤(iv)、例えば酸、好ましくは有機酸の存在下で実施される。例として、有利に使用することができる有機酸は:酢酸、プロピオン酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸であり、好ましくは酢酸である。指定された酸は、反応させようとするシトロネラルの量に対して約0.5〜約10重量%の量で有利に使用される。それらは、例えば混合物の形態でシトロネラルと一緒に反応混合物に加えることが有利である。
【0189】
特に好ましい形態では、シトロネラルを環化することによるイソプレゴールの製造のための本発明による方法は、カルボン酸無水物、アルデヒド、ケトン及びビニルエーテルから選択される少なくとも1つの補助剤(iv)の存在下で実施される。
【0190】
指定された物質の部類の補助剤(iv)は、それぞれの場合、個別にか、又はお互いの混合物の形態で使用することができる。混合物の場合、1つの部類の物質の化合物からなるものを使用することが好ましい。個別的な化合物を使用することが特に好ましい。以下で説明する指定された化合物を使用することによって、一般に、望ましくない副生成物の形成をほぼ抑制することが可能である。
【0191】
好ましい実施形態の範囲内で、シトロネラルの環化を、式(VI)のカルボン酸無水物
【0192】
【化12】
(式中、基R
20及びR
20'は、同じか又は異なっていてよく、好ましくは同じであってよく、分枝状若しくは非分枝状C
1〜C
12-アルキル基又はC
7〜C
12-アラルキル基又はC
6〜C
10-アリール基であり、指定された基は、それぞれの場合、OR
10e、SR
10fNR
8eR
9e及びハロゲンの群から選択される1個以上、一般に1〜約3個の同じか又は異なる置換基を有することができ、R
20とR
20'は、一緒になって、1つ以上のエチレン二重結合及びO、S及びNR
11bの群から選択される1個以上の同じか又は異なるヘテロ原子を有することができる5〜8員環を形成することもでき、R
10e、R
10f、R
8e、R
9e及びR
11bは、R
11について上記に示した意味を有することができる)
の存在下で実施する。
【0193】
さらに好ましい実施形態の範囲内で、シトロネラルの環化を、式(VII)のアルデヒド
【0194】
【化13】
(式中、基R
21は、分枝状若しくは非分枝状C
1〜C
12-アルキル基又はC
7〜C
12-アラルキル基又はC
6〜C
10-アリール基であり、指定された基は、それぞれの場合、OR
10e、SR
10fNR
8eR
9e及びハロゲンの群から選択される1個以上、好ましくは1〜3個の同じか又は異なる置換基を有することができ、R
10e、R
10f、R
8e及びR
9eは、R
11について上記に示した意味を有することができる)
の存在下で実施する。
【0195】
さらに好ましい実施形態の範囲内で、シトロネラルの環化を、式(VIII)のケトン
【0196】
【化14】
(式中、基R
22及びR
23は、それぞれの場合、同じか又は異なっていてよく、分枝状若しくは非分枝状C
1〜C
12-アルキル基又はC
7〜C
12-アラルキル基又はC
6〜C
10-アリール基又はC
1〜C
6-アルコキシカルボニル基であり、指定された基は、それぞれの場合、OR
10e、SR
10fNR
8eR
9e及びハロゲンの群から選択される1個以上、好ましくは1〜3個の同じか又は異なる置換基を有することができ、R
22とR
23は、一緒になって、1つ以上のエチレン二重結合及びO、S、NR
11bの群から選択される1個以上の同じか又は異なるヘテロ原子を有することができる5〜8員環を形成することもでき、R
10e、R
10f、R
8e、R
9e及びR
11bは、R
11について上記に示した意味を有することができる)
の存在下で実施する。
【0197】
上記カルボニル化合物の代わりとして、本発明による方法の範囲内で、一般式(IX)のビニルエーテル
【0198】
【化15】
(式中、基R
24、R
25、R
26及びR
27は、互いに独立に、それぞれの場合、同じか又は異なっていてよく、分枝状若しくは非分枝状C
1〜C
12-アルキル基又はC
7〜C
12-アラルキル基又はC
6〜C
10-アリール基であり、指定された基は、それぞれの場合、オキソ、OR
10e、SR
10fNR
8eR
9e及びハロゲンから選択される1個以上、好ましくは1〜3個の同じか又は異なる置換基を有することができ、R
25とR
26は、一緒になって、1つ以上のエチレン二重結合及びO、S、NR
11bの群から選択される1個以上、通常1又は2個の同じか又は異なるヘテロ原子を有することができる5〜8員環を形成することもでき、R
10e、R
10f、R
8e、R
9e及びR
11bは、R
11について上記に示した意味を有することができる)
を使用することも可能である。
【0199】
ここで、C
1〜C
12-アルキルは、上記したようなC
1〜C
6-アルキルであり、さらには、例えばヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル又はドデシルである。2つのアルキル基が一緒になって環を形成している場合、アルキル基は、アルキレニル基を意味するとも理解される。C
7〜C
12-アラルキル基及びC
6〜C
10-アリール基は、例として、上記に示した意味を有することができる。例として、挙げることができるC
1〜C
6-アルコキシカルボニル基は:メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル及びイソプロポキシカルボニルであり、好ましくはメトキシカルボニル及びエトキシカルボニルである。
【0200】
本発明による方法の好ましい実施形態の範囲内で、シトロネラルの環化は式(VI)のカルボン酸無水物の存在下で実施され、基R
20とR
20'は、同じであり、分枝状若しくは非分枝状C
1〜C
12-アルキル基又はC
7〜C
12-アラルキル基又はC
6〜C
10-アリール基であり、R
20とR
20'は、一緒になって、1つ以上のエチレン二重結合、及びOR
10e、SR
10f、NR
11bの群から選択される1個以上の同じか又は異なるヘテロ原子を有することができる5〜8員環を形成することもでき、R
10e、R
10f及びR
11bは、互いに独立に、R
11について上記に示した意味を有することができる。
【0201】
基R
20とR
20'が同じであり、分枝状若しくは非分枝状C
1〜C
12-アルキル基又はC
6〜C
10-アリール基であるそうしたカルボン酸無水物を使用することが特に好ましい。例として、本発明によって特に好ましく使用されることになるカルボン酸無水物は:無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ピバル酸及び無水安息香酸である。
【0202】
同様に、本発明によって好ましく使用され得る式(VII)のアルデヒドは、例として、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド及びクロラール(トリクロロアセトアルデヒド)である。
【0203】
さらに好ましい実施形態の範囲内で、シトロネラルの環化を、式(VIII)のケトンの存在下で実施する場合、活性化されている、すなわち電子不足のカルボニル官能基を有するものを使用することが有利である。例として、本発明による方法の範囲内で使用するのに特に適している以下のケトン:1,1,1-トリフルオロアセトン、1,1,1-トリフルオロアセトフェノン、ヘキサフルオロアセトン、ピルビン酸メチル及びピルビン酸エチルを挙げることができる。
【0204】
本発明によって同様に好ましくは使用できる式(IX)のビニルエーテルは、例えば:メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル及び3,4-ジヒドロ-2H-ピランである。
【0205】
指定された部類の化合物を、本発明による方法のこの好ましい実施形態の範囲内で、同等に、非常に首尾よく使用することができる。例えば、より高い反応速度などの実際的な側面に関して、アルデヒド及び/又は電子不足ケトンの使用が有利であることが証明されている。
【0206】
本発明によって使用されることになるカルボン酸無水物、アルデヒド、ケトン及び/又はビニルエーテルの量は、広い限度内で変化してよく、それは、使用される物質の種類、純度、又は、まだそれほど正確には特定されていない不純物の存在によって支配される。通常、指定された化合物及びその混合物は、使用されるシトロネラルに対して、約0.01mol%〜約5mol%、好ましくは約0.1mol%〜約2mol%の量で使用される。
【0207】
この手順の種類及び方法、例えば反応器の構成又は個々の反応物を加える順番は、特定の要件の支配を受けることはない。但し、広範にわたる酸素及び水分の排除する手順は確実に行われるものとする。
【0208】
この好ましい実施形態の範囲内で本発明による方法を実施するために、その手順は、最初に、上記したような適切な溶媒中の本発明によって使用されることになるビス(ジアリールフェノキシ)アルミニウム化合物の溶液を提供するステップを含むことが有利である。次いで、本発明によれば、環化させようとするラセミ又は非ラセミシトロネラルと、選択されたカルボン酸無水物、アルデヒド、活性化されたケトン及び/又はビニルエーテルとの混合物を、好ましくはこの溶液に添加する。それに代わって、例えば、本発明によって使用されることになるビス(ジアリールフェノキシ)アルミニウム化合物の溶液を、最初に、カルボン酸無水物、適切な場合それぞれにおいて選択されるアルデヒド、ケトン及び/又はビニルエーテルと混合し、続いて、環化させようとするシトロネラルをそれに加えることもできる。
【0209】
シトロネラル又はシトロネラルの選択された化合物との混合物を、約30min〜約6h、好ましくは約2h〜約4hの期間内で、触媒溶液又は反応混合物に測り込むことが有利であることが証明されている。ここで、シトロネラルはそのままで加えることも、また、有利には上記適切な溶媒の1つの中の溶液の形態で加えることもできる。本発明による方法のやはり好ましい実施形態の範囲内で、選択された式(I)又は(I.a)の配位子のトルエン中の溶液を最初に提供し、次いで、トルエン溶液中の選択された式(II)及び/又は(III)のアルミニウム化合物、好ましくはトリメチルアルミニウム又はトリエチルアルミニウムを、適宜撹拌しながら加える。
【0210】
環化させようとするシトロネラル、又はシトロネラルと選択されたカルボン酸無水物、アルデヒド、活性化されたケトン及び/又はビニルエーテルの混合物の添加は、この実施形態の範囲内で、約-40℃〜約40℃の範囲、好ましくは約-20℃〜約20℃の範囲の温度で行うことが有利である。このために、本発明によるビス(ジアリールフェノキシ)アルミニウム化合物の調製された溶液又は懸濁液を、この範囲内の温度、例えば-10℃〜10℃の範囲の温度に冷却することが有利であり、他の反応物は予冷した形態で添加する。
【0211】
シトロネラルと選択された他の化合物の混合物の添加は、シトロネラルの全量が、調製された触媒溶液に、一括添加されるか、又はそれが分割して若しくは連続して添加されるように行うことができる。適切な溶媒は、好ましくは上記溶媒であり、特にトルエンである。環化させようとするシトロネラルを、さらなる溶媒の添加なしで、選択されたカルボン酸無水物、アルデヒド、活性化されたケトン及び/又はビニルエーテルとの混合物の形態で使用することが好ましい。溶媒を使用する場合、溶媒の全量は、反応させようとするシトロネラルと溶媒の体積ベースの比が約1:1〜約1:20、好ましくは約1:1〜約1:10となるように選択することが有利である。
【0212】
触媒錯体の一部は通常、反応の間に不活性化されることが分かっている。これは、とりわけ、使用されるビス(ジアリールフェノキシ)アルミニウム化合物のそれぞれの場合に使用される式のビス(ジアリールフェノール)配位子と、環化の結果として形成するイソプレゴールの間の配位子交換プロセスに帰する。不活性化された形態の触媒は、一般に、活性なポリマー触媒とは対照的に、使用される溶媒の選択に応じて、反応混合物中に可溶性である。
【0213】
1つの好ましい実施形態では、触媒の不活性化された部分は、簡単な物理的分離方法によって(例えば、依然として活性な触媒を濾別する、又は遠心分離にかけることによって)、他の反応混合物と一緒に分離することができる。保持されているなお活性な触媒の部分を、望むなら、新鮮な触媒で補充し、好ましくは、シトロネラルのイソプレゴールへの本発明によるさらなる環化反応の範囲内で、活性のそれほどの損失なしで再使用することができる。
【0214】
或いは、使用される触媒の量は、使用される全触媒錯体が不活性化され、したがって、本発明による環化反応の過程で又はその最後に可溶性である(そのいくらかは、澄明な反応混合物により確認できる)ように選択することができる。ここで、この場合、上記配位子交換プロセスのため、使用される式(I)のビス(ジアリールフェノール)配位子が、それぞれの場合、別個の加水分解が行われることなく放出されることが著しく有利である。
【0215】
驚くべきことに、それぞれの場合、触媒として使用されるビス(ジアリールフェノキシ)アルミニウム化合物を先行して加水分解させることなく、イソプレゴールを、高純度で、シトロネラルの環化のアルミニウム含有反応生成物から留去させる(適切な場合、使用された溶媒及び/又は追加的に使用された補助剤の蒸留除去に続いて)ことができることが見出された。一般に、確認できるほどの望ましくない又は厄介な副生成物が、ここで蒸留塔底において形成されることはない。特定の実施形態では、適切で不活性な高沸点溶媒を、ステップa)における蒸留分離の前か又はその間に加える。次いで、それぞれの場合、使用される加熱高沸点成分中の式(I)の配位子の溶液が、蒸留塔底において得られる。
【0216】
すでに述べたように、本発明による方法は、ラセミ及び非ラセミ型、すなわち光学的に活性なシトロネラルを環化してラセミ及び非ラセミイソプレゴールを得るのに同等に適している。
【0217】
好ましい実施形態では、したがって、本発明による方法は、光学的に活性な式(IV.a)のイソプレゴール
【0218】
【化16】
を、式(V.a)の活性なシトロネラル
【0219】
【化17】
の環化によって製造するための助けとなる。ここで、(
*)は、それぞれの場合、不斉炭素原子を指す。
【0220】
本発明による方法は、特に、D-(+)-シトロネラルの環化によるL-(-)-イソプレゴールの製造のための助けとなる。
【0221】
この様式で製造されるラセミ又は非ラセミイソプレゴールは、世界的に最も重要な香料又は芳香剤(aroma)の1つである、ラセミ又は非ラセミメントールを製造するための価値の高い中間体である。メントールは、当業者にそれ自体公知の水素化法、特に、例えばPickardら., J. Chem. Soc. 1920, 1253; Ohloffら、Chem. Ber. 1962, 95, 1400; Paviaら、Bull. Soc. Chim. Fr. 1981, 24, Otsukaら、Synthesis 1991, 665又は欧州特許第1053974A号に記載されているような適切な遷移金属触媒を用いた触媒水素化によって、イソプレゴールから得ることができる。ここで、選択された反応条件が適切な場合、使用されるイソプレゴールの相対的又は絶対的構造は、概ね保持され、多くの場合、完全に保持される。
【0222】
したがって、本発明は:
A)本発明による方法にしたがって式(IV)のイソプレゴールを製造するステップ、及び、
B)この仕方で得られたイソプレゴールのエチレン二重結合を水素化するステップ
を含むメントールの製造の方法をさらに提供する。
【0223】
好ましい実施形態では、この方法は、光学的に活性なメントールを製造するため、特に光学的に活性なL-(-)-イソプレゴールからL-(-)-メントールを製造するための助けとなる。
【0224】
イソプレゴールを製造するための本発明による方法の好ましい実施形態に関して、上記に挙げた好ましいものを、それらの全体において参照する。
【0225】
本発明の実施形態を、図面を参照して以下に例示する。
【0226】
図1を参照すると、溶液から物質を分離するための本発明によるデバイスの第1の実施形態が説明されている:
【0227】
デバイスは、供給ライン2及び排出ライン3を有する結晶化容器1を備える。溶液を、供給ライン2を介して結晶化容器1に導入する。導入される溶液がまず結晶化容器1の中に留まるように、電子制御可能な弁4が排出ライン3中に提供されている。この弁は当初は閉じられている。結晶化容器1において結晶化法が実行された後、結晶を有する懸濁液を、結晶化容器1から排出ライン3を介して排出する。
【0228】
加熱デバイス5は、供給ライン2或いは代替え的に貯蔵容器に提供される。この加熱デバイス5によって、供給ライン2を介して結晶化容器1に導入される溶液の温度を調節することができる。温度調節のため、温度センサー6を、さらに供給ライン2に提供する。さらに、それによって、結晶化容器1中に位置する溶液の温度を測定し調節する加熱デバイス7及び温度センサー8も結晶化容器1に提供する。
【0229】
最後に、後で詳細に説明される散乱光プローブ9を、結晶化容器1中に位置させる。弁4、加熱デバイス5及び7、温度センサー6及び8並びに散乱光プローブ9は、調節ユニット10でデータ結合されている。このような仕方で、温度センサー6及び8の測定値並びに散乱光プローブ9の測定値を調節ユニット10に送る。さらに、調節ユニット10は、後で説明するように、散乱光プローブ9の光の放射、並びに加熱デバイス5及び7の加熱及び冷却出力を制御する。さらに、調節ユニット10によって、弁4を開閉することができる。
【0230】
それを通して結晶化容器1から懸濁液を取り出す排出ライン3は、分離ユニット11と連結されている。この分離ユニット11は、それ自体公知のフィルターデバイスとして構成させることができる。
【0231】
図2を参照して、散乱光プローブ9を以下に詳細に説明する:
散乱光プローブ9は、その中に導波管L1及びL3が位置するチューブ12を備える。結晶化容器1中に浸漬しているチューブ12の末端に、導波管L1は減結合領域を有し、導波管L3は結合領域を有する。
【0232】
散乱光プローブ9において、電磁放射線のための放射線源14又はエミッターが提供される。放射線源14によって放射される電磁放射線は、導波管L1中の結合領域を介して結合しており、それによって、電磁放射線は、導波管L1の減結合領域へ送られる。したがって、放射線源14によって発生した電磁放射線は、放射線S1として、結晶化容器1中に位置する溶液に照射される。
【0233】
放射線S1によって発生したビームは、溶液又は懸濁液に入ったとき、0.39mm超の横断面を有する。さらに、約+/-12°の角度を有するビームは発散的である、すなわちビームのアパーチャ角は24°である。
【0234】
導波管L1及びL3は、平行に且つ液密の仕方で散乱光プローブ9の開口部13を通過する。これらは、特に、溶液又は懸濁液中に照射される放射線S1の方向が、結晶で散乱されており導波管L3中に結合される放射線S2のための検出方向と平行になるように構成されている。散乱光プローブ9のチューブ12は、溶液中に結晶がそのために存在しない澄明溶液の場合に、放射線が導波管L1を介して澄明溶液中に放射された場合、そこで放射線源14が放射線を放射する波長を有する放射線が導波管L3中に到達しないように、結晶化容器1中に浸漬されている。
【0235】
導波管L3に入る入射放射線S2のビームもやはり、同じアパ-チャ角で発散的である。これは、散乱光プローブ9の放射及び受入範囲が空間的に重なっていることを意味する。これは、空間で交差する2つの隣接円錐部(adjoining cone)をもたらす。これは、非常に低い粒子濃度の場合に特に重要な非常に大きな測定ボリュームをもたらす。
【0236】
散乱光プローブ9は、一方の導波管L1及びL3と他方の溶液又は懸濁液との間の末端部としてのディスクをもたない。したがって、散乱光プローブ9の光学オフセットはゼロに近くなる。
【0237】
ここで説明する実施形態では、放射線源14は、800nm〜900nmの波長範囲で赤外放射線を発生する。溶液中に照射される電磁放射線は、溶液中に位置する結晶の表面上に散乱される。結晶で後方散乱された電磁放射線S2の一部は、これから、導波管L3の結合領域を通って検出器15へ送られる。この検出器15は、放射線源14が電磁放射線を放射する波長範囲における電磁放射線の強度を測定することができるように構成される。
【0238】
検出器15は、2mW/V〜20ピコW/Vの非常に広い増感範囲(intensification range)を許容する受入電子ユニットを有する。これは、受入電子ユニットが、20ピコWの入射光強度について、すなわち約150μルクス/cm
2の光強度で1Vの電圧をもたらすことを意味する。結果として、検出器15は極めて感度が高い。
【0239】
導波管L1において方向転換(diversion)も提供される。放射線源14により発生し、導波管L1において結合した放射線の一部は、導波管L2の方へ方向転換され、検出器15へ送られる。導波管L2を介して方向転換され、検出器15へ送られる放射線は、参照放射線としての役目を果たす。
【0240】
検出器15において、溶液中の結晶によって後方散乱された光強度と直接関係した電圧レベルがもたらされる。ここで、参照放射線によって引き起こされた、検出器15によってもたらされる参照電圧レベルは、溶液中に照射される放射線S1の強度を考慮に入れる。検出器15の電圧レベルは、検出器15の参照電圧レベルを考慮に入れて、評価ユニットにおいて補正され、調節ユニット10に送られる。
【0241】
使用される散乱光プローブ9は、例えば欧州特許第0472899A1号に記載されているような光度測定(photometric measuring)デバイスを変形したものであってよい。この明細書に記載されている散乱光プローブは、透過測定と後方散乱測定の両方のために使用することができる。ここでの場合、後方散乱測定が考慮されることになる。
【0242】
さらなる変形体では、散乱光プローブ9は、結晶化容器1中に浸漬されたロッドプローブを備える。次いで、検出器15を、導波管を介してロッドプローブと連結し、結晶化容器1の外側に配置する。
【0243】
さらに、測定は、放射線源14を参照しないで、検出器15で実施することもできる。しかし、測定の長期的な安定性のため、第2の検出器で参照することが有利である。次いで、検出器15で検出された散乱シグナルの補正を、評価ユニット中の他の検出器で検出された参照シグナルを参照することによって行い、次いで、これは補正された散乱シグナルを作り出し、それを調節ユニット10へ送る。
【0244】
1つか1つ以上の導波管は、ロッドプローブにおけるエミッター及びレシーバーとしての役目を果たすことができる。ファイバーの形状は、必ずしも平行な放射及び受入ファイバーで実現されなければならないというわけではないが、やはりこれが好ましい。さらに、ファイバーが偏差のある形状で終わる前でのディスクによる解決法を用いる可能性もあるが、その場合、内部反射のため、これは、相当に高いシグナルオフセットをもたらし、特に非常に低い粒子濃度の場合において、相当低い感度の測定システムをもたらす結果となる。
【0245】
散乱光プローブ9は、散乱放射線全部は検出しない。多重の散乱、透過(transmission)及び吸収のため、且つ空間的に限られた受入円錐部(アパーチャ)のため、散乱光プローブ9は、粒子表面に比例した散乱放射線のほんの一部しか検出しない。
【0246】
本発明によるデバイスのさらなる詳細並びに本発明による方法の実施形態を、以下で詳細に説明する:
説明されている実施形態では、その目的は、フェニルシクロヘキサン中に溶解している、最初に説明した配位子Ia
2-3を分離することである。この溶液は、(ビス(ジアリールフェノキシ))アルミニウム触媒の存在下でのシトロネラルの環化による塔底生成物として得られた。この溶液は、その前に実行された複雑な化学的方法が溶液の精密な組成をもたらし、溶解及び非溶解二次成分の確実な濃度が正確には分からないという問題を引き起こし、したがって、配位子が結晶化する飽和温度が大きく変動する恐れがある。
【0247】
本発明によれば、したがって、参照測定を予め実施する。この参照測定は、実験室において有利に実行することもできる。ここで、溶液を、予測される飽和温度より数10K低い温度で、結晶化容器1に導入する。例えば、溶液を80℃の温度で導入する。この温度を、調節ユニット10、加熱デバイス5及び7並びに温度センサー6及び8で調整する。この温度で、非常に多量の配位子の結晶が溶液中に存在する。しかし、結晶の結晶のサイズ及び形態は、後続する分離ユニット11における濾過には適していない。結晶化容器1に導入された溶液の温度を、ここで、加熱デバイス5によって上昇させる。同時に、散乱光プローブ9によって、電磁放射線がその溶液中に照射される。次いで、溶液の温度を、温度センサー8により、調節ユニット10によって連続的に決定する。さらに、後方散乱された電磁放射線の強度を、評価ユニットによって送られた電圧レベルを参照して確かめる。温度を上昇させている間、結晶が溶解し、後方散乱に利用できる結晶表面がそれによって減少するので、後方散乱された電磁放射線の強度についてのシグナルは減少する。
【0248】
参照測定の結果として、溶液が再度冷却され、後続の分離のために理想的な結晶のサイズ及び形態を有する結晶が形成されると推定される結晶化法を続いて実行するのに理想的な、配位子の種晶の量又はこの種晶の結晶表面がそこに存在する、検出される電磁放射線の強度が決定される。参照測定の場合、したがって、後方散乱された電磁放射線の強度が特定の値に低下するまで、溶液の温度を上昇させる。結果として、冷却結晶化法はそれ自体公知の仕方で開始される。ここで、特定の冷却曲線で、溶液は再度冷却され、その結果、配位子の結晶が形成される。次いで、結晶を分離ユニット11において濾過し、これらの結晶のサイズ及び形態が究明される。
【0249】
ここで、参照測定が多数の強度のために実施される。そのため、続く結晶化法は常に同じ仕方で実施される。次いで、そこで分離に理想的な結晶のサイズ及び形態がもたらされる参照測定値が決定される。この参照測定の結晶化法の開始時での後方散乱された電磁放射線の強度、すなわち、この参照測定での後方散乱された電磁放射線の最小強度は、所望強度I
Sとして定義される。この所望強度I
Sで、配位子の種晶によって形成される結晶領域のサイズは、後で実施される結晶化法に理想的である。
【0250】
さらに、この方法の開始の時点で、結晶化容器1にその溶液を導入する開始温度値T
Aを予め定める。この開始温度値T
Aは、所望強度I
Sに対応する温度値T
K、すなわち結晶化法のための開始温度より明らかに低い。本発明の例では、開始温度値T
Aは約90℃である。さらに、後方散乱された電磁放射線のために開始温度値T
Aに割り当てられた開始強度I
Aを所望強度I
Sのx倍の強度として選択することによって、この開始温度値T
Aを所望強度I
Sから決定することもできる。ここで、値xは1.2〜10の範囲であってよい。本発明の場合、値xは6.5である。
【0251】
次いで、供給ライン2を介して導入された溶液から配位子を分離するための方法を、所望強度及び開始温度値の決定に続いて、以下のようにして実行する:
【0252】
溶液を、供給ライン2を介して開始温度値T
Aで導入する。十分な溶液が結晶化容器1に導入されたらすぐに、散乱光プローブ9をその溶液中に位置させ、結晶で後方散乱された電磁放射線の強度Iを、調節ユニット10によって決定する。
【0253】
図3において、後方散乱された電磁放射線の強度Iと相関する散乱光プローブ9のシグナルIの経時的過程(course over time)、並びに溶液の温度Tの関連する経時的過程が示されている。この場合、開始温度値T
Aは89.13℃である。散乱光プローブ9の関連するシグナルI
Aは0.85Vである。概念的には、これらは直接関係しているので、以下において、散乱光プローブ9のシグナルIと後方散乱された電磁放射線の強度Iとの間の区別はしない。
【0254】
供給ライン2を介して結晶化容器1に導入された溶液の温度を、ここで、調節ユニット10によって増大させる。
図3から明らかなように、結晶化容器1内の溶液の温度もやはり増大する。同時に、配位子の結晶が溶解するので、散乱光プローブ9のシグナルIは低下する。散乱光プローブ9のシグナルIが所望強度I
S周りの許容差範囲内になるまで、導入される溶液の温度を上昇させる。言い換えれば、これは、検出強度Iと所望強度I
Sの差の量が限界値未満であることを意味する。この限界値は、例えば所望強度I
Sの10%であってよい。
【0255】
理想的なケースでは、結晶化容器1が完全に充満されている場合、検出強度Iと所望強度I
Sの差の量はこの限界値未満である。これがそうでない場合、結晶化容器1内に位置する溶液の温度も、やはり、この差の量がこの限界値より小さくなるまで、加熱デバイス7及び調節ユニット10によって細かく調整される。
【0256】
結晶化容器1中に位置する溶液のこの状態では、参照測定において決定される配位子の理想的な種晶の量は、理想的な結晶表面で存在する。ここで、実際の冷却結晶化法は開始される。調節ユニット10によって調節されて、溶液は、最初、約3K/hの低い冷却速度で冷却される。ある時間が過ぎた後、すなわち、特定の量の特定のサイズの結晶が存在している場合、冷却速度を、例えば約20K/hに増大させることができる。このような仕方で、続く分離に理想的な結晶のサイズ及び形態を有する配位子の結晶が、可能な最も短い時間内に形成される。次いで、弁4を開くことによって、結晶を有する懸濁液を、排出ライン3を介して分離ユニット11に供給し、そこで懸濁液を濾過し、式Ia
2-3の配位子を、白色固体として得ることができる。
【0257】
図4は、特に
図3で示した測定値ついて、結晶で散乱された電磁放射線の検出強度Iと温度Tの関係を示す図である。矢印Aについての測定値は、この方法開始時、すなわち実際の結晶化法の前での結晶の溶解を示し、矢印Kに沿った測定値は、強度I
S及び温度T
Kで開始された結晶化法の間の結晶化を示す。
【0258】
溶解、すなわち温度を所望強度I
Sへ上げている間についての曲線と、続く結晶化、すなわち温度値T
Kで開始されて温度を下げている間についての曲線の場合において明らかな差が生じている。同じ温度で、溶解の間に、散乱光プローブ9によって測定される強度は、結晶化の間より実質的に高い。したがって、溶解の間、配位子の結晶はより大きい比表面積を有する。これは、それらが、非常に微細に分割されていることを意味する。したがって、これらは小さい結晶である。これは、その後での結晶の分離には望ましくない。続く結晶化の間、散乱光プローブ9によって測定されるシグナルの強度は、それに反して、2〜3倍小さい(smaller by a factor of)。しかし、特定の温度では、同じ質量の結晶が溶液中にある。したがって、後方散乱された放射線のより低い強度は、結晶の比表面積がより小さいことを表している。これから、続く結晶の分離に望ましいことであるが、結晶がより大きいことは明らかである。
【0259】
本発明によるデバイス及び本発明による方法の第2の実施形態を、
図5を参照して以下で説明する:
第2の実施形態のデバイスは、
図1に示した第1の実施形態のデバイスを備える。したがって、同じ部分は同じ参照数字で標識付けされている。そのため、これらの部分の上記説明を参照されたい。しかし、
図5に示す第2の実施形態のデバイスは、さらなる結晶化容器1'を有する。第1の結晶化容器1と同様に、第2の結晶化容器1'は、供給ライン2'、弁4'を有する排出ライン3'を備える。供給ライン2'に提供されているのは、第2の結晶化容器1'に導入された溶液の温度を調節するための、加熱デバイス5'及び温度センサー6'である。第2の結晶化容器1'に提供されているのは、加熱デバイス7'及び温度センサー8'並びにさらなる散乱光プローブ9'である。弁4'、加熱デバイス5'及び7'、温度センサー6'及び8'並びに散乱光プローブ9'は、調節ユニット10とデータ結合されている。
【0260】
さらに、電子的に制御される弁16が、第1の結晶化容器1のための供給ライン2中に配置され、同様に、電子制御可能な弁17が第2の結晶化容器1'のための供給ライン2'中に配置される。弁16及び17も調節ユニット10とデータ結合されている。
【0261】
本発明による方法の第2の実施形態によれば、
図5に示したデバイスは、以下のように稼働される:
図1〜3を参照して説明されているように、溶液は、供給ライン2を介して第1の結晶化容器1に導入される。この場合、弁16は開かれ、弁17は閉じられる。これは、溶液は、第2の結晶化容器1'に送られないことを意味する。溶液が導入されたら、第1の結晶化容器1(これが完全に満たされている場合)中の溶液の温度が、そこで所望の種晶量が存在する所望強度I
Sに割り当てられた温度値T
Kに対応するように、温度を、上記で説明した通り調節する。
【0262】
次いで、第1の結晶化容器1中の弁16を閉じ、冷却結晶化を開始し、そこで、第1の結晶化容器1中の溶液の温度を低下させる。同時に、加熱デバイス5及び温度センサー6によって、導入されることになる溶液の温度を、再度開始温度値T
Aにする。次いで、弁17を開いて、溶液を第2の結晶化容器1'に移送する。加熱デバイス5'及び温度センサー6'によって、次いで、第2の結晶化容器1'に移送される溶液の温度を、第1の結晶化容器1についてすでに上記で説明したように、散乱光プローブ9'によって測定された後方散乱された放射線の強度が、所望強度I
Sに近接するように調節する。検出強度と所望強度I
Sの差の量が限界値未満になったらすぐに、第2の結晶化容器1'中の弁17を閉じ、上記したように冷却結晶化法を実施し、そこで、配位子の結晶が形成されるように、溶液の温度を低下させる。第2の結晶化容器1'における結晶化プロセスを実行している間、第1の結晶化容器1における結晶化プロセスは完了し、弁4を開き、それによって、排出ライン3を介して懸濁液を分離ユニット11に供給する。配位子の結晶を分離ユニット11において単離する。この間、弁4を再度閉じることができ、溶液を再度、第1の結晶化容器1へ送る。
【0263】
結晶化プロセスが、第2の結晶化容器1'において実行されたら、排出ライン3を介して分離ユニット11に供給された結晶は、第1の結晶化容器1の懸濁液からすでに単離されている。ここで、弁4'を開くことができ、それによって、配位子の結晶を有する懸濁液を、第2の結晶化容器1'から、排出ライン3'を介して分離ユニット11へ供給することができる。そこで、次いで配位子の結晶を濾別する。
【0264】
このような仕方で、
図5に示したデバイスを、
図1を参照して上記で説明した方法を、2つの結晶化容器1及び1'を交互に実施するために使用することができる。
【0265】
シトロネラルを環化することによるイソプレゴールの調製からアルミニウム含有反応生成物を後処理するための方法の実施形態を、以下で説明する:
WO2008/025852A1に記載されているようにして、アルミニウム含有反応生成物を後処理する。最後の方法ステップにおいて、
図1〜5を参照して上記に説明したようにして、式Ia
2-3の配位子が得られる。
【0266】
本発明の他の実施形態は、イソプレゴールを製造するための方法に関する。この実施形態では、イソプレゴールを、WO2008/025852A1に記載されているようにして調製する。しかし、本明細書で説明した方法とは対照的に、
図1〜5を参照して上記で説明されているように、配位子は実施形態による有機相から分離される。
【0267】
さらに他の実施形態は、メントールを製造する方法に関する。この場合、イソプレゴールは上記したようにして調製される。次いで、メントールを、この仕方で得られたイソプレゴールのエチレン二重結合の水素化によって調製する。