(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記卑金属触媒は耐熱性の金属酸化物担体上に分散し、前記卑金属触媒は、均一、ゾーン化または層状から選択された形態である、請求項1から3のいずれか一項に記載の卑金属触媒。
前記卑金属触媒の下流かつ前記粒子フィルタの上流に白金族金属(PGM)酸化触媒をさらに含み、前記卑金属触媒および前記白金族金属(PGM)酸化触媒は単一の基材に位置するか、または前記卑金属触媒および前記白金族金属(PGM)酸化触媒は別個の基材に位置する、請求項5または6のいずれか一項に記載のシステム。
前記卑金属触媒および前記白金族金属は前記基材に積層されるか、または、前記卑金属触媒および前記白金族金属は前記基材に軸方向にゾーン化される、請求項7に記載のシステム。
前記白金族金属(PGM)酸化触媒はアンモニア酸化触媒を含み、前記システムは、前記エンジンの下流かつ前記卑金属触媒の上流に還元剤注入装置をさらに含む、請求項7および8のいずれか一項に記載のシステム。
燃料は前記卑金属触媒の上流に噴射され、前記燃料は、10ppm未満の硫黄または1P.20ppmを超える硫黄を含む、請求項5から10のいずれか一項に記載のシステム。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン排ガスは、一酸化炭素(「CO」)、未燃炭化水素(「HC」)および窒素酸化物(「NO
x」)などのガス状排出物だけでなく、いわゆる微粒子または粒子状物質を構成する凝縮相材料(液体および固体)を含む異種混合物である。多くの場合、組成物が配置される触媒組成物および基材が、特定または全てのこれら排気成分を無害成分に変換するためにディーゼルエンジン排気システムに提供される。例えば、ディーゼル排気システムは、ディーゼル酸化触媒、煤フィルタおよびNO
xの還元用触媒のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0003】
白金族金属を含む酸化触媒は、これら汚染物質の二酸化炭素および水への酸化を介して、HCおよびCOの両方のガス状汚染物質、およびある割合の粒子状物質の変換を促進することで、ディーゼルエンジンの排気の処理を容易にすることが知られている。このような触媒は一般に、ディーゼルエンジンの排気中に配置されるディーゼル用酸化触媒(DOC)と呼ばれる一群に含まれて、大気へ放出される前に排気を処理する。ガス状のHC、CO、および粒子状物質の変換に加えて、(一般に耐熱性の酸化物担体上に分散する)白金族金属を含む酸化触媒は、さらに一酸化窒素(NO)からNO
2への酸化を促進する。
【0004】
ディーゼル排気の全粒子状物質排出物は、3つの主成分からなる。1つの成分は、固体で乾燥した固体炭素質画分または煤画分である。この乾燥炭素質物質は、一般にディーゼル排気に伴う可視の煤排出の一因となる。粒子状物質の第2の成分は可溶性有機成分(「SOF」)である。可溶性有機成分は、本明細書に用いられる用語である揮発性有機成分(「VOF」)と呼ばれる場合もある。VOFは、ディーゼル排気の温度に応じて、蒸気として、またはエアロゾル(液体凝縮物の微細液滴)としてディーゼル排気中に存在してもよい。これは通常、U.S.Heavy Duty Transient Federal Test Procedureなどの標準測定試験によって規定されるように、希釈された排ガス中に52℃の標準微粒子収集温度で濃縮液体として存在する。これらの液体は以下の2つの源から生じる。2つの源は、(1)ピストンが上下するたびにエンジンのシリンダ壁から押し流された潤滑油、および、(2)未燃または部分的に燃焼したディーゼル燃料である。
【0005】
粒子状物質の第3の成分は、いわゆる硫酸画分である。硫酸画分は、ディーゼル燃料および油中に存在する少量の硫黄成分から生成される。少量のSO
3は、ディーゼル燃料の燃焼中に生成され、次に排ガス中の水分と急速に結合して硫酸を生成する。硫酸は、硫酸は、エアロゾルとしての微粒子を含む凝縮相として収集されるか、または他の粒子成分に吸着され、これによりTPMの質量が増大する。
【0006】
高粒子状物質の還元に用いられる1つの重要な後処理技術は、ディーゼル微粒子フィルタである。ディーゼル排気から粒子状物質を除去するのに効果的である多くのフィルタ構造が公知であり、例えば、ハニカムウォールフロー型フィルタ、巻回または充填繊維フィルタ、オープンセル発泡体、焼結金属フィルタなどがある。しかし、以下に説明するセラミックウォールフロー型フィルタが最も注目されている。これらのフィルタは、ディーゼル排気から90%を超える粒子状物質を除去することができる。フィルタは、排ガスから粒子を除去する物理的構造であり、堆積した粒子はエンジンのフィルタに加わる背圧を増大させる。したがって、許容可能な背圧を維持するために、堆積した粒子をフィルタから継続的または定期的に焼出する必要がある。残念なことに、酸素が炭素酸化のために使用される場合に、炭素煤粒子は、酸素豊富(希薄)な排気条件下で燃焼するために500℃を超える温度を必要とする。この温度は、ディーゼル排気中に一般的に存在する温度よりも高い。しかし、煤の酸化のための別の機構は、250から500℃の温度間隔において十分な反応速度で起こるNO
2との反応である。上限境界温度の根拠は、酸素の存在下でのNOとNO
2との間の熱力学平衡であり、温度を上昇させることで低NO
2濃度をもたらす。
【0007】
能動的な再生プロセスは、通常、フィルタの前の温度を、酸素ベースで煤を酸化させるために500から630℃まで上昇させ、かつ、NO
2ベースで煤を酸化させるために300から500℃まで上昇させるように、エンジンの管理を変更することによって開始される。駆動モードによって、再生の間の冷却が十分でない場合(低速/低負荷またはアイドリングモード)には、フィルタ内部で高い発熱が発生する可能性がある。このような発熱は、フィルタ内で800℃を超えるかまたはそれ以上であってもよい。能動的な再生を達成するために開発された1つの一般的な方法は、可燃性材料(例えばディーゼル燃料)を排気中に導入して、フィルタの上流に設けられたフロースルー型ディーゼル酸化触媒(DOC)を横切って燃焼させることである。この補助燃焼による発熱は、好ましい時間(例えば、約2から120分)でフィルタから煤を燃焼させるのに必要な顕熱(例えば約300から700℃)をもたらす。
【0008】
フィルタの受動的な再生を提供するために、煤の燃焼温度を低下させるための規定が一般的に導入される。触媒の存在は煤の燃焼を促進し、これにより、実際の負荷サイクルの下で、ディーゼルエンジンの排気内で到達可能な温度でフィルタを再生する。このようにして、触媒化煤フィルタ(CSF)、または触媒化ディーゼル微粒子フィルタ(CDPF)は、堆積した煤の受動的な燃焼に伴って80%を超える微粒子物質を低減し、これによってフィルタの再生を促進するのに効果的である。
【0009】
世界中で採用されている今後の排出基準は、ディーゼル排気からのNO
x還元にも取り組むであろう。希薄な排気条件の固定汚染源に適用される実証済みのNO
x削減技術は、選択触媒還元(SCR)である。この処理では、一般的に卑金属からなる触媒上で、NO
xはアンモニア(NH
3)で窒素(N
2)に還元される。この技術は、90%を超えるNO
xを還元することが可能であるので、積極的なNO
x還元目標を達成する最良の方法の1つを提示している。SCRは、(一般的に水溶液に含まれる)尿素をアンモニア源として用いる自動車用途用に開発中である。SCRは、排気温度が触媒の活性温度の範囲、つまり動作ウィンドウ内にある限り、NO
xの効率的な物質変換を提供する。
【0010】
世界各国のディーゼルエンジンについての新たな排ガス規制は、より先進的な排出制御システムの使用を強いている。これらのシステムは、全粒子状物質およびNO
xの両方を、約95パーセント削減する必要がある。エンジン製造業者は、新たな規制に対応する複数の排出システムの選択肢を有するが、一つの選択肢は、微粒子を低減するための能動的フィルタシステムと選択触媒還元システムとの組み合わせである。
【0011】
文献に提案されている1つのシステム構成は、エンジンの下流に位置するディーゼル酸化触媒(DOC)と、DOCの下流に位置する触媒化煤フィルタ(CSF)と、CSFの下流に位置する還元剤注入システムと、還元剤注入システムの下流に位置する選択触媒還元(SCR)触媒と、SCR触媒の下流に位置する任意のアンモニア酸化(AMOX)触媒とを含む。システムはまた、一般的に、エンジンの下流に位置し、かつDOCの上流に位置する炭化水素注入システムを含む。
【0012】
このシステム構成は、システム全体の機能性にいくつかの利点を提供する。DOCを第1の位置に配置することによって、エンジンに可能な限り近接して配置することが可能になり、冷間始動HCおよびCOの排出物のための急速加熱、および能動的なフィルタ再生のための最大DOC入口温度を保証する。SCRの前に存在するCSFは、微粒子、油灰および他の望ましくない物質がSCR触媒上に堆積することを防ぎ、したがってその耐久性および性能を改善する。SCRの前に白金族金属酸化触媒を有することによって、適切に制御された場合にSCR内で発生するNO
x還元の反応速度を上昇させることが知られている、SCRに入るNO
2対NO(またはNO
2対NO
x)比を増加させることが可能になる。このようなシステムの一例は、米国特許第7,264,785号明細書に記載されている。
【0013】
しかし、このシステム構成もまた、多くの場合DOCが、耐熱性金属酸化物担体に分散した白金族金属(PGM)を含むために問題がある。使用されるPGMの量が多いため、これらの触媒は比較的高価である。さらに、新興国および途上国の燃料など硫黄含有量が高い燃料では、硫黄が反応して、DOCにとって害となるSO
3を生成する。したがって、DOCの活性は悪影響を受け、フィルタ再生を十分な形態で維持することができない。
【0014】
したがって、特に硫黄濃度が高い燃料のために、NO
xおよび粒子状物質を含む排気ガス流の処理を改善するための代替システム戦略を調査し、提供することが継続的に必要である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明のいくつかの例示的実施形態を説明する前に、これらの実施形態は、本発明の原理および用途の例示にすぎないということが理解されるものとする。したがって、例示的な実施形態に対して多くの変更を行うことができ、開示された本発明の精神および範囲から逸脱することなく、他の構成を考案することができることが理解されるものとする。
【0048】
世界中の今後の排ガス規制を満たすために、微粒子を削減しNO
xを還元する排ガス制御システムを活用することが必要であろう。1つの方法は、活性粒子フィルタシステムに加えて選択触媒還元システムの利用である。このシステムは様々な方法で構成することができるが、ディーゼル白金族金属酸化触媒(DOC)−触媒化煤フィルタ(CSF)−尿素注入−選択触媒還元触媒(SCR)−の順序での構成は、アンモニア酸化触媒(AMOX)の有無にかかわらず、魅力ある設計上の利点を提供すると思われる。しかし、燃料の硫黄含有量が高い状況では、硫黄は従来のDOCを汚染することがあり、CSFの再生を十分な形態で維持することができない。したがって、触媒は、硫黄濃度が高い燃料で動作させる場合であっても汚染されないことが望ましい。
【0049】
本発明の実施形態は、白金族金属を実質的に含まない卑金属触媒に関し、この卑金属触媒は、硫黄含有量が高い燃料であっても、炭化水素を酸化させるために粒子フィルタおよびSCR触媒の上流で使用することができる。1つ以上の実施形態の卑金属触媒は、外に出るNO
2が粒子フィルタ内の粒子酸化に及ぼす影響はわずかであるかまたは全くないような、卑金属触媒を横切るNO
2の生成が最小限であるか全くない排気中のエンジン内の筒内噴射または後噴射の燃料噴射によって、フィルタを能動的に再生するために燃料を燃焼させるように設計される。換言すれば、1つ以上の実施形態の卑金属触媒は、卑金属触媒の相当なNOの酸化活性を伴わずに下流の粒子フィルタによって捕集された煤を燃焼させるように設計される。下流の粒子フィルタは、フィルタのNO/NO
2比を最適化して、SCRシステムにわたって最適なNO
x還元を容易にし、フィルタ内の煤の酸化に必要なNO
2を提供するように設計することができる。
【0050】
本開示において使用される用語に関して、以下の通り定義する。
【0051】
本明細書では、「触媒」、「触媒組成物」または「触媒材料」という用語は、反応を促進する材料を指すように使用される。
【0052】
本明細書では、「選択触媒還元」(SCR)という用語は、窒素還元剤を用いて窒素の酸化物を二窒素(N
2)に還元する触媒プロセスを指すように使用される。
【0053】
本明細書では、「活性アルミナ」という用語は、ガンマアルミナ、シータアルミナおよびデルタアルミナの1つ以上を含む高BET表面積アルミナで通常用いられるのと同じ意味を持つように使用される。
【0054】
本明細書では、「BET表面積」という用語は、N
2の吸着によって表面積を決定するBrunauer、Emmett、Teller法を参照して通常用いられるのと同じ意味を持つように使用される。特に明記しない限り、触媒担体成分またはその他の触媒成分の表面積に対する全ての言及はBET表面積を意味する。
【0055】
本明細書では、「バルク状」という用語は、材料(例えばセリア)の物理的形態を説明するために使用される場合、材料が、ガンマアルミナなどの別の材料上の溶液中に分散されているのとは対照的に、直径が1から15ミクロン以下である個別の粒子として存在することを意味するように使用される。例として、本発明のいくつかの実施形態では、セリアの粒子はガンマアルミナの粒子と混合され、これにより、セリアはバルク状に存在し、これは、例えば、焼成の際にアルミナ粒子に配置されたセリアに変換されるセリア前駆体の水溶液に、アルミナ粒子を含浸させるのとは対照的である。
【0056】
触媒に存在する場合、「セリウム成分」は、1つ以上のセリウムの酸化物(例えばCeO
2)を意味する。
【0057】
本明細書では、「下流」および「上流」という用語は、物品、触媒の基材またはゾーンを説明するために使用される場合、排気ガス流の流れの方向に感知される排気システム内の相対位置を指すように使用される。触媒または触媒ゾーンが、別の触媒またはゾーンより「下流」または「上流」である場合、異なる基材またはブリック上に存在してもよく、または、同一の基材またはブリックの異なる領域に存在してもよい。
【0058】
本明細書では、「高面積担体」という用語は、約10m
2/gを超える、例えば150m
2/gを超えるBET表面積の担体材料を指すように使用される。
【0059】
本明細書では、「白金族金属」または「PGM」の用語は、白金族金属またはその酸化物を指すように使用される。白金族金属は、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウムおよびイリジウムを含む。
【0060】
本明細書では、「酸化触媒」の用語は、ディーゼル微粒子の有機成分、気相炭化水素、および/または一酸化炭素の排出を低減するためにディーゼル排気中で酸化プロセスを促進する触媒を指すように使用される。
【0061】
本明細書では、「硫黄含有量」という用語は、燃料中に存在する硫黄の量を指すように使用される。低硫黄ディーゼルは、硫黄含有量が実質的に低下したディーゼル燃料を定義するための基準である。2006年現在、英国、ヨーロッパおよび北米で入手可能な石油系ディーゼル燃料は、低硫黄ディーゼル系である。本明細書では、「低硫黄燃料」という用語は、9未満、8未満、7未満、6未満、5未満、4未満、3未満、2未満、および1ppm未満の硫黄を含む、10ppm未満の硫黄を含む燃料を指すように使用される。1つ以上の実施形態では、低硫黄燃料は、0ppmの硫黄を含み、合成燃料を含むことがある。世界の他の地域、特に発展途上国では、燃料に含まれる硫黄の量はかなり多い。さらに、舶用燃料は、非常に多量の硫黄を含む。いくつかの場合、外洋での燃料の硫黄含有量は35,000ppmにまで上昇することがある。しかし、海洋規制では、沿岸水域に特別な排出規制海域(ECA域)があり、燃料の最大許容濃度は10,000ppmであり、新たな規制の下で1000ppmまで低減される。船は、外洋およびECA域において異なる燃料で航走する。本明細書では、「高硫黄燃料」の用語は、10ppmを超える硫黄を含む燃料を指しており、50を超え、100を超え、150を超え、200を超え、250を超え、300を超え、350を超え、500を超え、1000を超え、1500を超え、2000を超え、2500を超え、3000ppmを超え、5000を超え、10,000を超え、20,000を超え、30,000を超え、そして35,000ppmを超える硫黄を含むように使用される。
【0062】
本明細書では、「能動的な再生」という用語は、可燃性材料(例えばディーゼル燃料)を排気中に導入して、フィルタからの煤などの粒子状物質を燃焼するために必要な熱(例えば約300〜700℃)をもたらす発熱を生じさせる触媒を横切って燃焼させることを指すように使用される。能動的な再生プロセスは一般に、堆積した粒子状物質を除去し、粒子フィルタ内の許容背圧を回復させるために必要である。粒子状物質の煤画分は一般に、酸素が炭素酸化のために使用される場合に、酸素豊富(希薄)な条件下で燃焼するために500℃を超える温度を必要とする。この温度は、ディーゼル排気中に一般的に存在する温度よりも高い。煤の酸化のための別の機構は、250から500℃の温度間隔において十分な反応速度で起こるNO
2との反応である。上限境界温度の根拠は、酸素の存在下でのNOとNO
2との間の熱力学平衡であり、温度を上昇させることで低NO
2濃度をもたらす。
【0063】
本明細書では、「アンモニア破壊触媒」または「アンモニア酸化触媒(AMOX)」という用語は、NH
3の酸化を促進する触媒を指すように使用される。
【0064】
本明細書では、「粒子フィルタ」または「煤フィルタ」という用語は、粒子状物質を煤などの排気ガス流から除去するように設計されたフィルタを指すように使用される。粒子フィルタは、ハニカムウォールフロー型フィルタ、部分ろ過フィルタ、金網フィルタ、卷回繊維フィルタ、焼結金属フィルタ、および発泡フィルタを含むが、これらに限定されない。
【0065】
本明細書では、「動作ウィンドウ」という用語は、エンジンの動作中に触媒成分が直面する温度および空間速度値に言及しているように使用される。動作ウィンドウの温度は、0℃から800℃の間で変化することがあり、空間速度は、0から1,000,000/時間の間で変化することがある。
【0066】
本明細書では、「耐熱性金属酸化物担体」および「担体」という用語は、追加の化学化合物または元素が担持される下地の高表面積材料を指すように使用される。担体粒子は、20Åよりも大きい細孔を有し、かつ広い細孔分布を有する。本明細書で定義されるように、このような金属酸化物担体は、分子ふるい、具体的にはゼオライトを排除する。特定の実施形態では、例えば「ガンマアルミナ」または「活性アルミナ」とも呼ばれるアルミナ担体材料などの高表面積の耐熱性金属酸化物担体を利用することができ、この耐熱性金属酸化物担体は、1グラム当たり60平方メートル(「m
2/g」)を超え、多くの場合約200m
2/g以上であるBET表面積を一般的に示す。このような活性アルミナは通常、アルミナのガンマ相およびデルタ相の混合物であるが、アルミナのイータ相、カッパ相およびシータ相を実質量含んでもよい。活性アルミナ以外の耐火性金属酸化物を、所定の触媒中の少なくともいくつかの触媒成分の担体として使用してもよい。例えば、バルク状のセリア、ジルコニア、アルファアルミナ、シリカ、チタニア、およびその他の材料がこのような用途で知られている。本発明の1つ以上の実施形態は耐熱性金属酸化物担体を含み、この金属酸化物担体は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、セリア、シリカ−アルミナ、ジルコニア−アルミナ、チタニア−アルミナ、ランタナ−アルミナ、ランタナ−ジルコニア−アルミナ、バリア−アルミナ、バリア−ランタナ−アルミナ、バリア−ランタナ−ネオジミア−アルミナ、ジルコニア−シリカ、チタニア−シリカまたはジルコニア−チタニア、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される活性化化合物を含む。これらの材料の多くは、活性アルミナよりも大幅に低いBET表面積を有しているという欠点を抱えているが、その欠点は、得られる触媒の耐久性および性能をより一層高めることで相殺される傾向にある。
【0067】
本明細書では、「卑金属」という用語は、一般に、空気および湿気に曝されたときに比較的容易に酸化または腐食する金属を指すように使用される。1つ以上の実施形態では、卑金属触媒は、300℃から550℃の温度範囲にわたって発熱を生じさせるのに有効な量の卑金属材料を含む。1つ以上の実施形態では、卑金属材料は、バナジウム(V)、タングステン(W)、チタン(Ti)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ネオジム(Nd)、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、錫(Sn)、タンタル(Ta)、セリウム(Ce)、およびストロンチウム(Sr)、またはこれらの組み合わせから選択される1つ以上の卑金属酸化物を含むことができる。特定の実施形態では、卑金属材料は、バナジウム(V)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、銅(Cu)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)およびチタン(Ti)のうち1つ以上を含む。
【0068】
1つ以上の実施形態では、卑金属触媒は白金族金属を実質的に含まない。本明細書では、「白金族金属を実質的に含まない」という用語は、白金族金属は卑金属触媒に意図的に添加されないことを意味し、卑金属触媒中に重量約5g/ft
3未満の白金族金属が存在することを意味するように使用される。特定の実施形態では、重量が約5g/ft
3未満の白金族金属が存在し、卑金属触媒中に重量約4、3、2および1g/ft
3未満の白金族金属を含む。1つ以上の実施形態では、卑金属触媒には白金族金属が添加されず、触媒は白金族金属を含まない。1つ以上の実施形態では、白金族金属酸化触媒は卑金属触媒の上流に存在しない。1つ以上の実施形態では、白金族金属酸化触媒は卑金属触媒の下流に位置する。その他の実施形態では、白金族金属酸化触媒は、SCR触媒の上流および/または卑金属触媒の下流に存在しない。理論に制約されることを意図するわけではないが、白金族金属酸化触媒は、NO、CO、NH
3およびHCの酸化のうち1つ以上を容易にすると考えられる。必要に応じて、かつ卑金属触媒からのHCのスリップに応じて、HCの酸化は、比較的高いHC濃度であっても、白金族金属酸化触媒にわたって追加の発熱(5℃から450℃までの温度上昇)を生じさせるために起こり得る。
【0069】
1つ以上の実施形態では、卑金属触媒は分子ふるい材料をさらに含む。本明細書では、ゼオライトおよびその他のゼオライト骨格材料などの「分子ふるい」という用語は、粒子状で貴金属触媒を担持することができる材料を指すように使用される。分子ふるいは、通常は四面体型サイトを含み、かつ実質的に均一な細孔分布を有する、酸素イオンの広範な三次元ネットワークに基づく材料であり、平均細孔径は20Å以下である。細孔径は環サイズによって定義される。本明細書では、「ゼオライト」という用語は、ケイ素原子およびアルミニウム原子をさらに含む分子ふるいの特定の例を指すように使用される。
【0070】
一般に、ゼオライトは、角共有のTO
4四面体からなる連通型三次元骨格構造を有するアルミノシリケートとして定義され、ここで、TはAlまたはSiである。アニオン性骨格の電荷を均衡させるカチオンは骨格酸素と緩やかに相関しており、残りの細孔容積は水分子で満たされる。非骨格カチオンは一般に交換可能であり、水分子は除去可能である。
【0071】
1つ以上の実施形態によれば、ゼオライトの分類は、骨格が同定される空間的骨格構造に基づくことができる。一般的に、ゼオライト/アルミノシリケートの任意の構造型を使用することができ、例えば、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、SCO、CFI、SGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IHW、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SGT、SOD、SOS、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WIE、WEN、YUG、ZON、またはこれらの組み合わせの構造型を使用することができる。
【0072】
いくつかの実施例では、ゼオライトは、例えば、フォージャサイト、チャバサイト、クリノプチロライト、モルデナイト、シリカライト、ゼオライトX、ゼオライトY、超安定型ゼオライトY、ZSM−5、ZSM−12、SSZ−3、SAPO 5、オフレタイト、またはベータゼオライトなどの天然または合成のゼオライトであってもよい。
【0073】
ゼオライトは、二次構造単位(SBU)および合成構造単位(CBU)から構成され、多くの異なる骨格構造に現れる。二次構造単位は、16個までの四面体原子を含み、非キラルである。合成構造単位はアキラルである必要はなく、骨格全体を構築するために必ずしも使用されるとは限らない。例えば、一群のゼオライトは、その骨格構造中に単一4環(s4r)合成構造単位を有する。4環において、「4」は、四面体のケイ素原子およびアルミニウム原子の位置を表し、酸素原子は四面体原子の間に位置する。その他の合成構造単位は、例えば、単一6環(s6r)単位、二重4環(d4r)単位、および二重6環(d6r)単位を含む。d4r単位は、2つのs4r単位を結合することで作られる。d6r単位は、2つのs6r単位を結合することで作られる。d6r単位では、12個の四面体原子が存在する。d6r二次構造単位を有するゼオライト構造型は、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、EMT、ERI、FAU、GME、JSR、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TSC、およびWENを含む。
【0074】
1つ以上の実施形態では、分子ふるい材料は、d6r単位を含むゼオライトを含む。特定の実施形態では、分子ふるいは、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、EMT、ERI、FAU、GME、JSR、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TSC、WEN、およびこれらの組み合わせからなる構造型を有するゼオライトである。
【0075】
その他の特定の実施形態では、分子ふるいは、CHA、AEI、AFX、ERI、KFI、LEV、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される構造型を有するゼオライトである。極めて特定の実施形態では、ゼオライトは、CHA、AEIおよびAFXから選択される構造型を有する。さらに特定の実施形態では、ゼオライトはCHA構造型を有する。
【0076】
アルミノシリケート分子ふるい成分のアルミナに対するシリカの比は、広範囲にわたって変化することがある。1つ以上の実施形態では、分子ふるい成分は、5から250、5から200、5から100、および5から50を含む2から300の範囲のシリカ対アルミナのモル比(SAR)を有する。1つ以上の特定の実施形態では、分子ふるい成分は、10から200、10から100、10から75、10から60、および10から50、15から100、15から75、15から60、および15から50、20から100、20から75、20から60、および20から50の範囲のシリカ対アルミナのモル比(SAR)を有する。
【0077】
1つ以上の実施形態では、卑金属触媒は、卑金属材料および分子ふるいを含む結晶性材料である。分子ふるいの合成は構造型に応じて異なるが、通常は、ゼオライトなどの分子ふるいは構造指向剤(SDA)を使用して合成され、構造指向剤は、シリカ源およびアルミナ源とともにテンプレート(または有機テンプレート)と呼ばれることもある。構造指向剤は、有機物、すなわち水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAOH)または無機カチオン、すなわちNa
+またはK
+の形態であってもよい。結晶化の間、四面体単位は、SDAの周囲を組織化して所望の骨格を形成し、多くの場合、SDAはゼオライト結晶の細孔構造内に埋め込まれる。1つ以上の実施形態では、ゼオライトの結晶化は、構造指向剤/テンプレート、結晶核または結晶成分を添加することで得ることができる。
【0078】
本明細書では、「促進される」とは、分子ふるいに固有の不純物とは対照的に、分子ふるいに意図的に添加される成分に言及するように使用される。したがって、促進剤は、促進剤が意図的に添加されていない触媒と比較して、触媒の活性を高めるために意図的に添加される。1つ以上の実施形態では、卑金属材料は、促進剤としてゼオライトに交換される。1つ以上の実施形態によれば、卑金属材料は、Cu、Fe、Co、Ni、La、Ce、Mn、およびこれらの組み合わせから選択され、卑金属材料は、促進剤としてゼオライトに交換される。特定の実施形態では、卑金属材料は、Cu、Fe、およびこれらの組み合わせから選択される。
【0079】
酸化物として算出される卑金属触媒の卑金属含有量は、1つ以上の実施形態では、基材に塗布されたウォッシュコート全体に基づいて揮発性物質を含まない主成分について、少なくとも約0.1重量%であると報告されている。1つ以上の特定の実施形態では、卑金属材料は、V、W、Ti、Cu、Fe、およびこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む。卑金属材料がV(V
2O
5)を含む場合、卑金属は、約0.1重量%から10重量%の範囲の量で存在し、これは、基材に塗布されたウォッシュコート全体に基づいており、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10重量%を含む。卑金属材料がW(WO
3)を含む場合、卑金属は、基材に塗布されたウォッシュコート全体に基づいて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20重量%を含む1重量%から20重量%の範囲の量で存在する。1つ以上の実施形態では、Tiは、基材に塗布されたウォッシュコート全体に基づいて、99.9重量%までの量で酸化物の形態TiO
2で存在する。その他の実施形態では、卑金属はCuを含み、CuOとして算出されるCuの含有量は、9、8、7、6、5、4、3、2および1重量%を含む約10重量%までの範囲であり、それぞれの場合において、揮発性物質を含まない主成分について報告された焼成された触媒の総量に基づく。極めて特定の実施形態では、CuOとして算出されるCuの含有量は、約2から約5重量%の範囲である。1つ以上の実施形態では、卑金属材料はFeを含み、Fe
2O
3として算出されるFeの含有量は、9、8、7、6、5、4、3、2および1重量%を含む約10重量%までの範囲であり、それぞれの場合において、揮発性を含まないことを条件として報告された焼成された触媒の総量に基づく。1つ以上の実施形態では、卑金属材料はFeVO
4を含み、FeVO
4として算出されるFeVO
4の含有量は、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2および1重量%を含む約16重量%までの範囲であり、それぞれの場合において、揮発性物質を含まない主成分について報告された焼成された触媒の総量に基づく。
【0080】
1つ以上の実施形態では、卑金属触媒はフロースルー型基材に配置される。
図1および
図2は、本発明の実施形態によって使用することができるハニカムフロースルー型基材を示している。卑金属触媒は、外面12と、入口端14と、出口端14’とを有する基材10を含む。壁要素18は、複数の並列流路16を画定する。各流路16は対応する入口および出口を有する。卑金属触媒は、流路16を流れるガスが卑金属触媒に接触するように壁要素18と連結している。1つ以上の実施形態によれば、卑金属触媒は、ウォッシュコートとして、および押出物として任意の形態で存在してもよいが、これらに限定されない。1つ以上の実施形態によれば、卑金属触媒は、基材10上にウォッシュコートされる。卑金属触媒は、基材上にウォッシュコートされた単一の層であってもよく、または、複数の卑金属触媒層であってもよい。その他の実施形態では、卑金属触媒は第2の卑金属触媒と結合されてもよい。2つの卑金属触媒が存在する実施例では、第1の卑金属触媒が基材上にコーティングされ、第2の卑金属触媒が第1の卑金属触媒の上にコーティングされる。その他の実施形態では、第1および第2の卑金属触媒はゾーン化された構成で配置される。1つ以上の実施形態では、第1および第2の卑金属触媒は、軸方向にゾーン化された構成で配置され、第1の卑金属触媒は第2の卑金属触媒の上流に存在する。本明細書では、「軸方向にゾーン化された」という用語は、互いに対する第1および第2の卑金属触媒の位置に言及するように使用される。軸方向とは、第1および第2の卑金属触媒が互いに隣接して位置するように並んでいることを意味する。本明細書では、「上流」および「下流」という用語は、エンジンから排気管に向かうエンジンの排気ガス流の流れによる相対方向を指すように使用され、ここで、エンジンは上流に位置し、排気管、およびフィルタおよび触媒などの任意の汚染対策品はエンジンの下流に位置する。1つ以上の実施形態によれば、軸方向にゾーン化された第1および第2卑金属触媒は、同一または共通の基材に配置されてもよく、または、互いに分離された異なる基材に配置されてもよい。
【0081】
1つ以上の実施形態によれば、白金族金属酸化触媒は卑金属触媒の上流に存在しない。その他の実施形態では、卑金属触媒は白金族金属酸化触媒と結合されてもよい。卑金属触媒および白金族金属酸化触媒の両方が存在する実施例では、卑金属触媒および白金族金属酸化触媒は同一または共通の基材上に存在してもよく、または、互いに分離された異なる基材上に存在してもよい。
図3に示すように、層状物品30の場合、基材32は白金族金属酸化触媒でウォッシュコートされて第1層(またはボトムコート)34を形成し、かつ卑金属触媒は第1層の上部にウォッシュコートされて第2層(またはトップコート)36を形成する。トップコート/第2層が上流域であり、ボトムコート/第1層が下流域であるように、トップコート/第2層はボトムコート/第1層の上流に存在することは当業者は理解するであろう。
【0082】
図4を参照して、軸方向にゾーン化されたシステムの例示的な実施形態を示す。触媒物品40は軸方向にゾーン化された配置で示され、ここで、卑金属触媒38は、共通基材42上の白金族金属酸化触媒46の上流に位置する。基材42は、入口端48と出口端47とを有し、軸長Lを画定する。1つ以上の実施形態では、基材42は一般に、ハニカム基材の複数のチャネル44を含み、明示のためにそのうち1つのチャネルのみが断面図で示されている。卑金属触媒38は、基材42の入口端48から、基材42の軸長Lの全長よりも短い長さで延びている。卑金属触媒38の長さは、
図4の第1ゾーン38aとして示される。白金族金属酸化触媒38は、基材42の出口端47から、基材42の軸長Lの全長よりも短い長さで延びている。白金族金属酸化触媒の長さは、
図4の第2ゾーン46aとして示される。
【0083】
1つ以上の実施形態では、
図4に示すように、卑金属触媒を含む上流域38は、白金族金属触媒を含む下流域46に直接隣接している。その他の実施形態では、卑金属触媒を含む上流域38は、溝(図示せず)によって白金族金属酸化触媒を含む下流域46から分離されている。
【0084】
上流域38および下流域46の長さは可変であることが理解される。1つ以上の実施形態では、上流域38および下流域46の長さは等しくてもよい。その他の実施形態では、上流域38は、基材42の長さLの20%、25%、35%または40%、60%、65%、75%または80%であってもよく、
図4に示すように、下流域46はそれぞれ、基材の長さLの残りの部分を覆う。その他の実施形態では、上流域38は、基材42の長さLの20%、25%、35%または40%、60%、65%、75%または80%であってもよく、下流域46はそれぞれ、溝(図示せず)を含む基材の長さLの残りの部分を覆う。
【0085】
上流域および下流域は少なくとも部分的に重なっていてもよいこともまた、当業者に理解されるであろう。1つ以上の実施形態では、卑金属触媒を含む上流域は、白金族金属酸化触媒を含む下流域と少なくとも部分的に重なっている。
図5を参照して、軸方向にゾーン化されたシステムの例示的な実施形態を示す。触媒物品50は軸方向にゾーン化された配置で示され、ここで、卑金属触媒49は、共通基材52上の白金族金属酸化触媒58の上流に位置する。基材52は、入口端56と出口端54とを有し、軸長L1を画定する。1つ以上の実施形態では、基材52は一般に、ハニカム基材の複数のチャネル60を含み、明示のためにそのうち1つのチャネルのみが断面図で示されている。卑金属触媒49は、基材52の入口端56から基材52の軸長L1の全長よりも短い長さで延び、白金族金属酸化触媒58を含む下流域と少なくとも部分的に重なっている。卑金属触媒58の長さは、
図5の第1ゾーン49aとして示される。白金族金属酸化触媒58は、基材52の出口端54から、基材52の軸長L1の全長よりも短い長さで延びている。白金族金属酸化触媒の長さは、
図5の第2ゾーン58aとして示される。少なくとも部分的に重なっている部分の長さは、
図5のL2として示される。1つ以上の実施形態では、卑金属触媒49は、白金族金属酸化触媒58と完全に重なっている。
【0086】
その他の実施形態では、白金族金属酸化触媒を含む下流域は、卑金属触媒を含む上流域と少なくとも部分的に重なっている。
図6を参照して、軸方向にゾーン化されたシステムの例示的な実施形態を示す。触媒物品70は軸方向にゾーン化された配置で示され、ここで、卑金属触媒78は、共通基材72上の白金族金属酸化触媒80の上流に位置する。基材72は、入口端82と出口端84とを有し、軸長L3を画定する。1つ以上の実施形態では、基材72は一般に、ハニカム基材の複数のチャネル74を含み、明示のためにそのうち1つのチャネルのみが断面図で示されている。卑金属触媒78は、基材72の入口端82から、基材72の軸長L3の全長よりも短い長さで延びている。卑金属触媒78の長さは、
図6の第1ゾーン78aとして示される。白金族金属酸化触媒80は、基材72の出口端84から基材72の軸長L3の全長よりも短い長さで延び、卑金属触媒78を含む上流域と少なくとも部分的に重なっている。白金族金属触媒の長さは、
図6の第2ゾーン80aとして示される。少なくとも部分的に重なっている部分の長さは、
図6のL4として示される。1つ以上の実施形態では、白金族金属酸化触媒80は、卑金属触媒78と完全に重なっている。
【0087】
図7を参照して、軸方向にゾーン化された触媒物品110の別の実施形態を示す。触媒物品110は軸方向にゾーン化された配置で示され、ここで、卑金属触媒118は、別々の基材である第1基材112および第2基材113上の白金族金属酸化触媒120の上流に位置する。卑金属触媒118は第1基材112上に配置され、白金族金属酸化触媒は、別個の第2基材113上に配置される。第1および第2の基材112および113は、同一の材料からなってもよく、異なる材料からなってもよい。第1基材112は、入口端122aと出口端124aとを有し、軸長L5を画定する。第2基材113は、入口端122bと出口端124bとを有し、軸長L6を画定する。1つ以上の実施形態では、第1および第2の基材112および113は一般に、ハニカム基材の複数のチャネル114を含み、明示のためにそのうち1つのチャネルのみが断面図で示されている。鉄で促進した第1分子ふるい118は、第1基材112の入口端122aから出口端124aまで第1基材112の軸長L1の全長に延びる。卑金属触媒118の長さは、
図7の第1ゾーン118aとして示される。白金族金属酸化触媒120は、第2基材113の出口端124bから入口端122bまで第2基材113の軸長L6の全長に延びる。白金族金属酸化触媒120は第2ゾーン120aを画定する。白金族金属酸化触媒の長さは、
図7の第2ゾーン20bとして示される。ゾーン118aおよび120aの長さは、
図4に関して説明したように可変である。
【0088】
1つ以上の実施形態では、卑金属触媒は、
図1および
図2に示したようなフロースルー型基材に配置される。その他の実施形態では、卑金属触媒は、粒子フィルタなどの追加の構成要素と一体化される。
【0089】
その他の態様は、卑金属触媒を製造する方法に関する。卑金属材料を含むスラリーが調製される。基材は、スラリーでウォッシュコートされて充填される。1つ以上の実施形態では、充填量は、0.5から10g/in
3の範囲であり、1、2、3、4、5、6、7、8、9g/in
3を含む。
【0090】
基材
1つ以上の実施形態では、卑金属触媒をウォッシュコートとして基材に塗布することができる。本明細書では、「基材」という用語は、典型的にウォッシュコートの形態で卑金属触媒が配置されるモノリス材料を指すように使用される。ウォッシュコートは、液体溶媒中の卑金属触媒の特定の固形分(例えば30から90重量%)を含むスラリーを調製することで形成され、その後に基材にコーティングされかつ乾燥されてウォッシュコート層を提供する。
【0091】
本明細書では、「ウォッシュコート」という用語は、触媒またはその他の材料に塗布されたハニカム型担持部材などの基板材料への薄く粘着性のあるコーティング技術であって、これらの材料が、ガス流の流路を許容するように十分に多孔質に処理される技術で通常用いられるのと同じ意味を持つように使用される。
【0092】
1つ以上の実施形態では、基材は、ハニカム構造を有するセラミックまたは金属である。モノリス担体などの任意の適切な基材を使用してもよく、この担体は、通過する流体流れに対して流路が開放されているような、基材の入口面または出口面を通って延びる微細で並列したガス流路の類である。流路は、流体入口から流体出口までの本質的に直線状経路であり、触流路を流れるガスが触媒材料に接触するように、媒材料がウォッシュコートとしてコーティングされる壁によって画成される。モノリス担体の流路は薄壁チャネルであり、台形、長方形、正方形、正弦波状、六角形、楕円形、円形などの任意の適切な断面形状および大きさであってもよい。このような構造は、断面の1平方インチ当たり約60から約900またはそれ以上のガス導入口(つまりセル)を含んでもよい。
【0093】
セラミック基材は、耐熱材料,例えば、コージライト、コージライト−α−アルミナ、シリコンナイトライド、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ−シリカ−マグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、ペタライト、α−アルミナ、アルミノシリケートなどの任意の適切な耐熱材料から形成することができる。
【0094】
本発明の実施形態の卑金属触媒に有用な基材はまた、本質的に金属製で、1つ以上の金属または金属合金からなってもよい。ペレット、波板またはモノリス形状などの様々な形状の金属基材を使用してもよい。金属基材の特定の例は、鉄が実質的または主要な成分である耐熱性の卑金属合金を含む。このような合金は、ニッケル、クロムおよびアルミニウムのうちの1つ以上を含んでもよく、これらの金属の合計は、少なくとも約15重量%の合金を有利に含むことができ、例えば、約10から25重量%のクロム、約1から8重量%のアルミニウム、および約0から20重量%のニッケルを含むことができる。
【0095】
卑金属触媒および記載の任意の排気成分においても有用である基材は、オープンセル発泡フィルタおよびウォールフロー型フィルタである。オープンセル発泡基材は複数の細孔を含む。発泡体はオープンセル発泡体であり、触媒コーティングがセルの壁に堆積する。発泡体のオープンセル構造は、体積当たりの触媒の表面積が高いコーティングされた基材を提供する。基材の入口端から出口端まで基材を通過する排気流は、発泡体の壁によって画定される複数のセルを通って流れて、セルの壁に堆積した触媒層と接触する。
【0096】
発泡体基材は、金属材料またはセラミック材料からなってもよい。セラミック発泡体の例は、米国特許第6,077,600号明細書に開示されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。セラミック発泡体担体は、セラミック材料でコーティングされた繊維から形成された壁を有する。金属発泡体の形態の基材は、先行技術において周知であり、例えば米国特許第3,111,396号を参照するが、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0097】
他の代替的な基材は、触媒組成物を担持するのに有用なウォールフロー型基材であり、基材の長手方向軸に沿って延びる複数の微細で略並列したガス流路を有する。一般的には、各流路は基材本体の一方の端で閉鎖され、代替的な流路は反対の端面で閉鎖される。このようなモノリス担体は、断面の立方インチ当たり約700またはそれ以上の流路(または「セル」)を含んでもよいが、はるかに少ないものが使用されてもよい。例えば、担体は、約7から600、より一般的には約100から400の立方インチ当たりのセル(「cpsi」)を有してもよい。セルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、または他の多角形の断面を有してもよい。ウォールフロー型基材は、一般に0.002から0.1インチの間の壁厚を有する。適切なウォールフロー型基材の一例は、約0.002から0.015インチの間の壁厚を有する。
【0098】
適切なウォールフロー型フィルタ基材は、コージライト、α−アルミナ、シリコンカーバイド、シリコンナイトライド、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ−シリカ−マグネシア、アルミニウムチタネート、またはジルコニウムシリケート、または任意のその他の適切な多孔質の耐熱性金属などのセラミック様の材料からなる。ウォールフロー型基材はまた、セラミック繊維複合材料から形成されてもよい。適切なウォールフロー型基材は、コージライトおよびシリコンカーバイドから形成されてもよい。このような材料は、排気流の処理において直面する環境、特に高温に耐えることができる。
【0099】
本発明において使用するために適切なウォールフロー型基材は、背圧または物品全域の圧力を過度に上昇させることなく流体流が通過する、薄い多孔質壁ハニカム(モノリス)を含む。通常、汚染されていない壁流の物品が存在すると、1インチの水柱に10psigまでの背圧が生じる。本システムで使用されるセラミックウォールフロー型基材は、少なくとも5ミクロン(例えば、5から30ミクロン)の平均細孔径を有し、少なくとも50%(例えば、50から75%)の多孔率を有する材料で形成されてもよい。これらの多孔率およびこれらの平均細孔径を有する基材が以下に説明する技術でコーティングされる場合、優良なNO
x変換効率を達成するために、適正水準のSCR触媒組成物を基材上に充填することができる。これらの基材は、SCR触媒の充填にもかかわらず、依然として適正な排気流特性、すなわち、許容背圧を保持することができる。適切なウォールフロー型基材の開示に関して、米国特許第4,329,162号明細書が参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
適切なウォールフロー型フィルタは、本発明において使用されるウォールフロー型フィルタより低い壁の多孔率、例えば、約35%から50%の多孔率で形成されてもよい。一般に、適切な商用ウォールフロー型フィルタの細孔径の分布は非常に広範であり、平均細孔径は17ミクロンより小さい。
【0101】
本発明の実施形態によって使用される多孔質ウォールフロー型フィルタは、1つ以上の触媒材料が前記要素の壁の上に存在するか、または前記要素の壁の中に含まれることで触媒化される。触媒材料は、要素壁の入口側のみ、出口側のみに存在してもよく、入口側および出口側の両方に存在してもよく、または、壁自体が触媒材料の全部または一部から構成されてもよい。本発明は、要素の入口壁および/または出口壁における、触媒材料の1つ以上の層および触媒材料の1つ以上の層の組み合わせの使用を含む。
【0102】
ウォールフロー型基材を触媒組成物でコーティングするために、基材は、基材の上部がスラリーの表面の真上に位置するように、触媒スラリーの一部分に垂直に浸漬される。このように、スラリーは、各ハニカム壁の入口面と接触するが、各壁の出口面との接触は妨げられる。試料はスラリーに約30秒間留置される。基材はスラリーから除去され、余分なスラリーは、まずチャネルから流出させることにより、次に(スラリー浸透方向とは逆に)圧縮空気を吹き込むことにより、そしてスラリーの浸透方向から真空に引くことにより、ウォールフロー型基材から除去される。この技術を使用することによって、触媒スラリーは一般に、基材の壁に浸透するが、細孔は、完成した基材に過度の背圧が蓄積する程度までは閉塞されない。本明細書では、「浸透」という用語は、基材上の触媒スラリーの分散を説明するために使用される場合、触媒組成物が基材の壁の全体に分散することを意味するように使用される。
【0103】
コーティングされた基材は、一般的に約100℃で乾燥され、より高い温度(例えば300から600℃)で焼成される。焼成後、基材のコーティングされた量およびコーティングされていない量を算出することにより、触媒充填量を求めることができる。当業者には明らかであるように、コーティングスラリーの固形分を変更することによって触媒充填量を変更することができる。または、基材のコーティングスラリー中で反復的な浸漬を行い、続いて前述の余分なスラリーを除去することができる。
【0104】
排気ガス処理システム
本発明のさらなる態様は、粒子状物質、NO
xおよびディーゼルエンジン排気の他のガス状成分の同時処理を有効に提供する排気処理システムに関する。1つ以上の実施形態では、最新技術または高硫黄燃料を用いてディーゼルエンジンを運転することができる。システムに実装される触媒組成物の選択により、様々な温度の排気流に対して効果的な汚染物質の削減が提供される。この特徴は、このような車両のエンジンから排出される排気温度に著しく影響を与えるような、様々な荷重および車両速度下でのディーゼル車両の運転に有利である。
【0105】
本発明の排気処理システム200の一実施形態を、
図8に概略的に示す。
図8から分かるように、排気は、(未燃炭化水素、一酸化炭素およびNO
xを含む)ガス状汚染物質を含み、粒子状物質は、エンジン205から排気ガス導管210を通って卑金属触媒215へ搬送される。卑金属触媒215では、未燃ガス状かつ非揮発性の炭化水素(すなわちVOF)および一酸化炭素が大幅に燃焼されて二酸化炭素および水を形成する。卑金属触媒215上で必要かつ望ましい温度上昇のための追加の炭化水素は、エンジンのシリンダへの後噴射を介して、または卑金属触媒215の前の燃料注入装置を介して注入されてもよい。特に、卑金属触媒を使用したかなりの割合のVOFの除去は、粒子状物質がシステム内の下流に位置する煤フィルタ225上に過度に多量に堆積すること(すなわち、目詰まり)を防止するために役立つ。さらに、実質的には、NO
2は卑金属触媒内に生成されない。例えば、卑金属触媒に入るNO
2の量は、卑金属触媒を出ていく量と実質的に同一であるか、またはそれよりも少ない。卑金属触媒が選択触媒還元(SCR)活性するように設計される場合、還元剤(例えば、尿素溶液注入によるアンモニア)を必要に応じて導入することで、卑金属触媒215を横切るNO
xを還元する。
【0106】
したがって、1つ以上の実施形態は、エンジンからのNO
xを含む排気流を処理するシステムに関する。先に説明した通り、システムは、エンジンの下流に位置する卑金属触媒を含む。当業者が理解するように、提供される正確な触媒組成物、および卑金属触媒を出ていくNO
2の量を規制する充填量は、およびエンジンが高負荷ディーゼルエンジンであるかまたは低負荷ディーゼルエンジンであるか、運転温度、空間速度、燃料の硫黄含有量などの特定の用途および要因、およびその他の要因に依存する。当該技術分野で知られる耐熱性金属またはセラミック発泡体基材から形成されたハニカムフロースルー型モノリス基材上に、卑金属触媒をコーティングすることができる。卑金属触媒は、コーティングされている基材(例えば、オープンセルセラミック発泡体)により、および/または固有の触媒活性により、ある程度の微粒子除去を提供する。フィルタ上の微粒子質量の減少が、強制再生前の時間を潜在的に延長するため、卑金属触媒は、いくつかの粒子状物質をフィルタ上流の排気流から除去することができる。
【0107】
1つ以上の実施形態では、排気処理システム内で使用することができる卑金属触媒は、高表面積の耐熱性の酸化物担体(例えば、チタニア)に分散したV、Ti、W、Fe、Cu、およびこれらの組み合わせから選択される卑金属材料を含む。その他の実施形態では、卑金属触媒は、ゼオライト成分(例えば、チャバサイト)と結合される高表面積の耐熱性の酸化物担体に分散したV、Ti、W、Fe、Cu、およびこれらの組み合わせから選択される卑金属材料を含む。さらなる実施形態では、卑金属触媒は、バナジウム酸鉄、酸化セリウム、酸化鉄、またはそれらの組み合わせなどの金属酸化物触媒を含むことができる。
【0108】
図8を参照して、1つ以上の実施形態では、排気処理システム200は、卑金属触媒215の下流に配置された触媒化煤フィルタ225を含む。排気ガスは、排気ガス導管220を介して卑金属触媒215から触媒化煤フィルタ225へ流れる。特定の実施形態では、触媒化煤フィルタ225は、長手方向に延びる壁によって境界付けられた複数の長手方向に延びる流路を有してもよい。流路は、開口入口端および閉鎖出口端を有する入口流路と、閉鎖入口端および開口出口端を有する出口流路とを含む。触媒化煤フィルタ225は、壁上に触媒組成物を含み、フィルタを出ていくNO対NO
2の比を最適化するのに有効である。
【0109】
排気流は煤フィルタ225に搬送され、煤フィルタ225は、コーティングされていてもされていなくてもよい。煤フィルタ225を通過すると、粒子状物質はろ過され、ガス中のNO対NO
2の比は一定である。煤画分およびVOFを含む粒子状物質はまた、煤フィルタ225によって(80%を超えて)大幅に除去される。煤フィルタ225に堆積した粒子状物質はフィルタの再生によって燃焼され、粒子状物質の煤画分が燃焼する温度は、煤フィルタに堆積した触媒組成物の存在によって低下する。
【0110】
図8に示すように、例えばアンモニアなどの任意の還元剤は、注入装置232およびノズル(図示せず)を介して、煤フィルタ225の下流の排気流へ、および排気ガス導管230へ噴霧として噴射される。尿素水は、混合ステーション245内で空気と混合され得るアンモニア前駆体として作用することができる。弁240は、排気流中でアンモニアに変換される正確な量の尿素水を計量するために使用される。1つ以上の実施形態では、煤フィルタ225の下流は選択触媒還元触媒235である。NOおよびNO
2を含む排気ガスは、SCR235中でN
2に還元される。
【0111】
図8の排気処理システムはいくつかの利点を有する。第1に、卑金属触媒215がエンジン205の直下流に位置することによって、エンジン205に可能な限り近接して配置することが可能になり、冷間始動HCおよびCOの排出物のための急速加熱、および能動的なフィルタ再生のための最大入口温度を保証する。第2に、CSF225は、コーティングされていてもされていなくてもよいが、SCR235の上流に位置し、微粒子、油灰および他の望ましくない物質がSCR触媒上に堆積することを防ぎ、したがってその耐久性および性能を改善する。
【0112】
本発明の排気処理システム300の別の実施形態を、
図9に概略的に示す。
図9から分かるように、排気は、(未燃炭化水素、一酸化炭素およびNO
xを含む)ガス状汚染物質を含み、粒子状物質は、エンジン305から排気ガス導管310を通って卑金属触媒315へ搬送される。卑金属触媒315では、未燃ガス状かつ非揮発性の炭化水素(すなわちVOF)および一酸化炭素が大幅に燃焼されて二酸化炭素および水を形成する。特に、卑金属触媒を使用したかなりの割合のVOFの除去は、粒子状物質がシステム内の下流に位置する煤フィルタ325上に過度に多量に堆積すること(すなわち、目詰まり)を防止するために役立つ。さらに、実質的には、NO
2は卑金属触媒内に生成されない。例えば、卑金属触媒に入るNO
2の量は、卑金属触媒を出ていく量と実質的に同一であるか、またはそれよりも少ない。
【0113】
1つ以上の実施形態では、排気処理システム300は煤フィルタ325を含み、これは、例えば卑金属触媒315の下流に配置されたアンモニアなどの還元剤による、NO
xの選択触媒還元に有効な材料(本明細書ではフィルタ上のSCR)でコーティングされる。排気ガスは、排気ガス導管320を介して卑金属触媒315から煤フィルタ325へ流れる。特定の実施形態では、フィルタ325上のSCRは、複数の長手方向に延びる流路を有し、この流路は、前記流路によって境界付けし、かつ画定する、長手方向に延びる壁によって形成される。流路は、開口入口端および閉鎖出口端を有する入口流路と、閉鎖入口端および開口出口端を有する出口流路とを含む。ウォールフロー型モノリスは、少なくとも1.3g/in
3(より具体的には1.6から2.4g/in
3)の濃度で壁に浸透するSCR触媒組成物を含む。ウォールフロー型モノリスは、少なくとも50%の壁多孔率を有し、その平均細孔径は少なくとも5ミクロンである。1つ以上の実施形態では、SCR触媒組成物は、壁が50から75%の壁多孔率を有し、その平均細孔径が5から30ミクロンとなるように、ウォールフロー型モノリスの壁に浸透する。いくつかの実施例では、フィルタ上にコーティングされるSCR触媒は、白金族金属を含む。その他の実施形態では、フィルタ上にコーティングされるSCR触媒は、白金族金属を実質的に含まない。
【0114】
排気流は、フィルタ325上のSCRに搬送される。フィルタ325上のSCRを通過すると、NO
x成分は、アンモニアを用いたNO
xの選択触媒還元によって窒素に変換される。
【0115】
NO
xの除去の所望のレベルに応じて、追加のSCR触媒64をフィルタ325上のSCRの下流に配置することができる。例えば、追加のSCR触媒は、フィルタ325上のSCRの下流の、モノリス型でハニカムフロースルー型の基材またはセラミック発泡体基材に配置されてもよい。これらの実施形態では、コーティングされたSCR煤フィルタの使用は、NO
xの還元目標を満たすために必要な触媒の総体積の低減を依然として達成する。
【0116】
煤画分およびVOFを含む粒子状物質はまた、フィルタ325上のSCRによって(80%を超えて)大幅に除去される。フィルタ325上のSCRに堆積した粒子状物質はフィルタの再生によって燃焼され、このプロセスはまた、SCR触媒組成物の存在によって助長される。粒子状物質の煤画分が燃焼する温度は、煤フィルタに位置する触媒組成物の存在によって低下する。
【0117】
図9に示すように、例えばアンモニアなどの任意の還元剤は、注入装置332およびノズル(図示せず)を介して、フィルタ325上のSCRの下流の排気ガス導管330へ噴霧として噴射される。尿素水は、混合ステーション335内で空気と混合され得るアンモニア前駆体として作用することができる。弁340は、排気流中でアンモニアに変換される正確な量の尿素水を計量するために使用される。1つ以上の実施形態では、フィルタ325上のSCRの下流は選択触媒還元触媒345である。NOおよびNO
2を含む排気ガスは、SCR中でN
2に還元される。
【0118】
本発明の排気処理システム400の別の実施形態を、
図10に概略的に示す。
図10から分かるように、排気は、(未燃炭化水素、一酸化炭素およびNO
xを含む)ガス状汚染物質を含み、粒子状物質は、エンジン405から排気ガス導管410を通って卑金属触媒415へ搬送される。卑金属触媒415では、未燃ガス状かつ非揮発性の炭化水素(すなわちVOF)および一酸化炭素が大幅に燃焼されて二酸化炭素および水を形成する。特に、卑金属触媒を使用したかなりの割合のVOFの除去は、粒子状物質がシステム内の下流に位置する煤フィルタ430上に過度に多量に堆積すること(すなわち、目詰まり)を防止するために役立つ。燃料は大量に噴射され、卑金属触媒上で燃焼して熱を生成し、高硫黄燃料でも同様に作用する。これは非常に重要かつ予期しない発見であり、強く重視される。卑金属触媒415上で必要かつ望ましい温度上昇のための追加の炭化水素は、エンジンのシリンダへの後噴射を介して、または卑金属触媒415の前の燃料注入装置を介して注入されてもよい。白金族金属(PGM)酸化触媒(すなわちAMOX、DOC、HC酸化触媒など) 425は、卑金属触媒415の下流および煤フィルタ430の上流に配置され、特に卑金属触媒415の前に注入される場合に、窒素酸化物、一酸化炭素、炭化水素およびNH
3を同様に酸化することができる。必要に応じて、尿素注入装置(図示せず)を、エンジン405と卑金属触媒415との間に含んでもよい。卑金属触媒415は、硫黄の少ない環境で硫黄を豊富に含む燃料を燃焼させるために、白金族金属酸化触媒425の前に配置される。1つ以上の実施形態では、酸化触媒は白金を使用するが、白金族金属酸化触媒の製造に伴うコストを低減し、かつ硫黄が豊富な環境の場合にSO
2酸化を最小限にするために、少量の白金のみを使用する。1つ以上の実施形態では、使用される白金の量は、0.5から20g/ft
3の範囲であり、1から20、1から15、1から10、2から20、2から15、2から10、3から20、3から15、3から10、4から20、4から15、4から10、5から20、5から15、および5から10g/ft
3の範囲を含む。さらに、実質的には、NO
2は卑金属触媒内に生成されない。例えば、卑金属触媒に入るNO
2の量は、卑金属触媒415を出ていく量と実質的に同一であるか、またはそれよりも少ない。
【0119】
1つ以上の実施形態では、排気処理システム400は、卑金属触媒415の下流に配置された触媒化煤フィルタ(CSF)430を含む。排気ガスは、排気ガス導管420を介して卑金属触媒415から白金族金属酸化触媒425へ流れ、排気ガス導管427を介してPGM酸化触媒425から煤フィルタ430の下流へ流れる。特定の実施形態では、触媒化煤フィルタ430は、長手方向に延びる壁によって境界付けられた複数の長手方向に延びる流路を有してもよい。流路は、開口入口端および閉鎖出口端を有する入口流路と、閉鎖入口端および開口出口端を有する出口流路とを含んでもよい。触媒化煤フィルタ430は、壁上に触媒組成物を含み、フィルタを出ていくNO対NO
2の比を最適化するのに有効である。
【0120】
排気流は触媒化煤フィルタ430に搬送され、触媒化煤フィルタ430は、コーティングされていてもされていなくてもよい。煤フィルタ430を通過すると、粒子状物質はろ過され、ガス中のNO対NO
2の比は一定である。煤画分およびVOFを含む粒子状物質はまた、煤フィルタ430によって(80%を超えて)大幅に除去される。煤フィルタ430に堆積した粒子状物質はフィルタの再生によって酸化され、粒子状物質の煤画分が酸化する温度は、煤フィルタに堆積した触媒組成物の存在によって低下する。
【0121】
図10に示すように、例えばアンモニアなどの任意の還元剤は、注入装置437およびノズル(図示せず)を介して、煤フィルタ430の下流の排気ガス流導管435へ噴霧として噴射される。尿素水は、混合ステーション440内で空気と混合され得るアンモニア前駆体として作用することができる。弁445は、排気流中でアンモニアに変換される、正確な量の尿素水を計量するために使用される。1つ以上の実施形態では、煤フィルタ430の下流は選択触媒還元触媒450である。NOおよびNO
2を含む排気ガスは、SCR中でN
2に還元される。
【0122】
図10の排気処理システムはいくつかの利点を有する。第1に、卑金属触媒415がエンジン405の直下流に位置することによって、エンジン405に可能な限り近接して配置することが可能になり、冷間始動HCおよびCOの排出物のための急速加熱、および能動的な(O
2ベースの)および/または受動的な(NO
2ベースの)フィルタ再生のための最大入口温度を保証する。白金族金属酸化触媒425はまた、HCおよびCO両方のガス状汚染物質の変換を促進するが、卑金属触媒415の存在により、従来の/標準的な酸化触媒と比較して白金族金属の量が低減された酸化触媒を提供することが可能である。1つ以上の実施形態では、使用される白金族金属の量は、0.5から20g/ft
3の範囲であり、1から20、1から15、1から10、2から20、2から15、2から10、3から20、3から15、3から10、4から20、4から15、4から10、5から20、5から15、および5から10g/ft
3の範囲を含む。白金族金属酸化触媒425の上流に位置する卑金属触媒415の配置はまた、高硫黄の環境において酸化触媒が効率的に作用することを可能にするが、これは、例えば、卑金属触媒によって生じた熱が、下流の白金族金属触媒を脱硫酸化することを意味している。
【0123】
本発明の排気処理システム500の別の実施形態を、
図11に概略的に示す。
図11から分かるように、排気は、(未燃炭化水素、一酸化炭素およびNO
xを含む)ガス状汚染物質を含み、粒子状物質は、エンジン505から排気ガス導管510を通って卑金属触媒515へ搬送される。卑金属触媒515では、未燃ガス状かつ非揮発性の炭化水素(すなわちVOF)および一酸化炭素が大幅に燃焼されて二酸化炭素および水を形成する。卑金属触媒515およびディーゼル酸化触媒525を使用したかなりの割合のVOFの除去は、粒子状物質がシステム内の下流に位置する煤フィルタ525上に過度に多量に堆積すること(すなわち、目詰まり)を防止するために役立つ。さらに、実質的には、NO
2は卑金属触媒内に生成されない。例えば、卑金属触媒505に入るNO
2の量は、卑金属触媒505を出ていく量と実質的に同一であるか、またはそれよりも少ない。
【0124】
1つ以上の実施形態では、排気処理システム500は煤フィルタ530を含み、これは、例えば卑金属触媒515の下流およびディーゼル酸化触媒525に配置されたアンモニアなどの還元剤による、NO
xの選択触媒還元に有効な材料(本明細書ではフィルタ上のSCR)でコーティングされる。白金族金属(PGM)酸化触媒(すなわちAMOX、DOC、HC酸化触媒など) 525は、卑金属触媒515の下流および煤フィルタ530の上流に配置され、特に卑金属触媒515の前に注入される場合に、窒素酸化物、一酸化炭素、炭化水素およびNH
3を同様に酸化することができる。排気ガスは、排気ガス導管520を介して卑金属触媒515から白金族金属酸化触媒525へ流れ、排気ガス導管527を介してPGM酸化触媒525からフィルタ530の下流SCRへ流れる。卑金属触媒515は、硫黄の豊富な環境で燃料を燃焼させるために、白金族金属酸化触媒525の前に配置される。1つ以上の実施形態では、酸化触媒は白金を使用するが、PGM酸化触媒の製造に伴うコストを低減するために、少量の白金のみを使用する。1つ以上の実施形態では、使用される白金の量は、0.5から20g/ft
3の範囲であり、1から20、1から15、1から10、2から20、2から15、2から10、3から20、3から15、3から10、4から20、4から15、4から10、5から20、5から15、および5から10g/ft
3の範囲を含む。さらに、実質的には、NO
2は卑金属触媒内に生成されない。例えば、卑金属触媒に入るNO
2の量は、卑金属触媒515を出ていく量と実質的に同一であるか、またはそれよりも少ない。
【0125】
特定の実施形態では、フィルタ530上のSCRは、複数の長手方向に延びる流路を有し、この流路は、前記流路を境界付けし、かつ画定する、長手方向に延びる壁によって形成される。流路は、開口入口端および開口出口端を有する入口流路を含む。ウォールフロー型モノリスは、少なくとも1.3g/in
3(より具体的には1.6から2.4g/in
3)の濃度で壁に浸透するSCR触媒組成物を含む。ウォールフロー型モノリスは、少なくとも50%の壁多孔率を有し、その平均細孔径は少なくとも5ミクロンである。1つ以上の実施形態では、SCR触媒組成物は、壁が50から70%の壁多孔率を有し、その平均細孔径が5から30ミクロンとなるように、ウォールフロー型モノリスの壁に浸透する。いくつかの実施例では、フィルタ上にコーティングされるSCR触媒は、白金族金属を含む。その他の実施形態では、フィルタ上にコーティングされるSCR触媒は、白金族金属を実質的に含まない。
【0126】
排気流は、フィルタ530上のSCRに搬送される。フィルタ530上のSCRを通過すると、NO
x成分は、アンモニアを用いたNOxの選択触媒還元によって窒素に変換される。
【0127】
NO
xの除去の所望のレベルに応じて、追加のSCR触媒550をフィルタ530上のSCRの下流に配置することができる。例えば、追加のSCR触媒550は、フィルタ530上のSCRの下流の、モノリス型でハニカムフロースルー型の基材またはセラミック発泡体基材に配置されてもよい。これらの実施形態では、コーティングされたSCR煤フィルタ530の使用は、NO
xの還元目標を満たすために必要な触媒の総体積の低減を依然として達成する。
【0128】
煤画分およびVOFを含む粒子状物質はまた、フィルタ530上のSCRによって(80%を超えて)大幅に除去される。フィルタ530上のSCRに堆積した粒子状物質はフィルタの再生によって燃焼され、このプロセスはまた、SCR触媒組成物の存在によって助長される。粒子状物質の煤画分が燃焼する温度は、煤フィルタに位置する触媒組成物の存在によって低下する。
【0129】
図11に示すように、例えばアンモニアなどの任意の還元剤は、注入装置537およびノズル(図示せず)を介して、フィルタ530上のSCRの下流の排気ガス流導管535へ噴霧として噴射される。尿素水は、混合ステーション545内で空気と混合され得るアンモニア前駆体として作用することができる。弁540は、排気流中でアンモニアに変換される正確な量の尿素水を計量するために使用される。
【0130】
図8から
図11のシステムについて、1つ以上の実施形態では、任意のスリップ酸化触媒を煤フィルタおよびSCR触媒の下流に含むことができる。1つ以上の実施形態では、スリップ酸化触媒は、任意のスリップしたアンモニアをシステムから除去するために、煤フィルタおよびSCR触媒の下流で提供されるアンモニア酸化触媒である。特定の実施形態では、AMOX触媒は、白金、パラジウム、ロジウム、またはそれらの組み合わせなどの白金族金属を含んでもよい。
【0131】
このようなAMOX触媒は、SCR触媒を含む排気ガス処理システムにおいて有用である。本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,516,497号明細書に記載されているように、その全体内容は参照により本明細書に組み込まれるが、酸素、窒素酸化物およびアンモニアを含むガス流を第1および第2の触媒を介して順次通過させることができ、第1の触媒は窒素酸化物の還元に好ましく、第2の触媒は、余分なアンモニアの酸化または他の分解に好ましい。米国特許第5,516,497号明細書に説明されているように、第1の触媒はゼオライトを含むSCR触媒であってもよく、第2の触媒はゼオライトを含むAMOX触媒であってもよい。
【0132】
AMOXおよび/またはSCR触媒組成物を、フロースルー型フィルタまたはウォールフロー型フィルタ上にコーティングしてもよい。ウォールフロー型基材を利用する場合、得られるシステムは、ガス状汚染物質とともに粒子状物質を除去することが可能になる。ウォールフロー型基材は、コージライト、アルミニウムチタネートまたはシリコンカーバイドなどの一般に当該技術分野で知られる材料から形成することができる。触媒組成物のウォールフロー型基材上の充填量は、多孔率および壁厚などの基材の特性に依存し、一般に、フロースルー型基材上の充填量よりも低いことが分かる。
【0133】
選択触媒還元触媒
システム内で使用される適切なSCR触媒組成物は、一般に低排気温度に伴う低負荷の条件下であっても、適切なNO
xレベルが処理されるようにNO
x成分の還元を有効に触媒することができる。1つ以上の実施形態では、触媒物品は、システムに添加される還元剤の量に応じて、少なくとも50%のNO
x成分をN
2に変換することが可能である。さらに、システム内で使用されるSCR触媒組成物はまた、理想的には、粒子状物質の煤画分が燃焼する温度を低下させることによって、フィルタの再生に役立つことが可能である。組成物についての別の望ましい特性は、NH
3が大気中に放出されないように、任意の過剰NH
3によってN
2およびH
2OとなるO
2の反応を触媒する能力を有していることである。
【0134】
SCR触媒組成物は、多くの場合ディーゼル排気ガス組成物に存在する硫黄成分への曝露時の分解に耐え、かつ、必要な再生温度に沿って許容可能な水熱安定性を有するべきである。
【0135】
適切なSCR触媒組成物は、米国特許第5,300,472号明細書(‘472特許)、米国特許第4,961,917号明細書(‘917特許)および米国特許第5,516,497号明細書(‘497特許)に記載されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。‘472特許に開示の組成物は、二酸化チタンに加えて、タングステン、ケイ素、ボロン、アルミニウム、リン、ジルコニウム、バリウム、イットリウム、ランタンまたはセリウムのうち少なくとも1つの酸化物、およびバナジウム、ニオブ、モリブデン、鉄または銅のうち少なくとも1つの酸化物を含む。‘917特許に開示の組成物は、ゼオライトと促進剤の合計重量の約0.1から30重量パーセントの量でゼオライトに存在する、鉄および銅の一方または両方の促進剤を含み、特定の例では、約1から5重量パーセントである。NH
3によるNO
xのN
2への還元を触媒する能力に加えて、開示された組成物はまた、特により高い促進剤濃度を有する組成物について、過剰NH
3のO
2による酸化を促進することができる。
【0136】
還元剤注入装置
還元剤注入システムは、NO
x還元剤を排気流中へ噴射するために煤フィルタの下流およびSCR触媒の上流に必要に応じて提供される。米国特許第4,963,332号明細書に開示されるように、触媒コンバータの上流および下流のNO
xを検出することができ、パルス状の注入弁を上流および下流の信号によって制御することができる。代替の構成において、米国特許第5,522,218号明細書に開示のシステムでは、還元剤注入装置のパルス幅が、排気ガス温度の分布図、およびエンジンrpm、伝達ギヤおよびエンジン速度などのエンジン運転条件から制御される。また、米国特許第6,415,602号明細書の還元剤パルス計量システムの考察について参照され、その考察は参照によって本願に組み込まれる。
【0137】
追加の態様は、NO
xおよび粒子状物質を含むディーゼルエンジンからの排気流を処理する方法に関する。1つ以上の実施形態では、方法は、1つ以上の実施形態の卑金属触媒を介して排気流を流すことを含む。
【0138】
本発明を以下の実施例を参照して説明する。本発明のいくつかの例示的実施形態を説明する前に、本発明は、以下の説明に記載される構造または工程ステップの詳細に限定されないということが理解されるものとする。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実践可能または実行可能であるものとする。
【実施例】
【0139】
実施例1−比較
標準的なディーゼル酸化触媒を、1平方インチ当たり400個のセルおよび4ミルの壁厚の12”×6”の円筒形状基材を用いて調製した。基材を、20gPt/ft
3を有するウォッシュコートでコーティングした。触媒の体積は11.1リットルであった。
【0140】
実施例2
卑金属触媒を、1平方インチ当たり300個のセルおよび5ミルの壁厚の2×10.5”×4.5”の円筒形状基材を用いて調製した。基材を、0gPt/ft
3を有するウォッシュコート、および3g/in
3の総ウォッシュコート充填量でコーティングした。ウォッシュコートは、タングステン(WO
3、9−10重量%)/チタニアの酸化物上にバナジウム(V
2O
5、2.5重量%)を含む。触媒の体積は12.77リットルであった。
【0141】
燃料の燃焼結果を、
図7、
図8、および表1に示す。
図7は、実施例1の比較触媒の燃料燃焼実験の結果を含む棒グラフを示している。燃料は、実際の条件下で、異なる触媒入口温度、および異なる排気質量流量で噴射された。燃料流量を、450℃の出口温度に達するように調整した。完全に酸化されていない燃料の量を触媒の下流で測定した。
図12では、空間速度ごとに、第1列は触媒前の温度に対応し、第2列は触媒中の温度に対応し、第3列は触媒後の温度に対応し、最前(第4)列は全炭化水素(HC)スリップに対応している。
【0142】
図13は、実施例2の触媒の燃料燃焼実験の棒グラフを示している。燃料は、実際の条件下で、異なる触媒入口温度、および異なる排気質量流量で噴射された。燃料流量を、450℃の出口温度に達するように調整した。完全に酸化されていない燃料の量を触媒の下流で測定した。
図13では、空間速度ごとの第1列は触媒前の温度に対応し、第2列は触媒中の温度に対応し、第3列は触媒後の温度に対応し、正面(第4)列は全炭化水素(HC)スリップに対応している。
【0143】
図12および
図13のグラフを比較した場合、実施例2の卑金属触媒が、触媒上で燃料を燃焼させることによって発熱を生じさせ、したがって、粒子フィルタの再生に好ましい温度をもたらすことが明らかである。実施例1の触媒と比較すると、その性能は同じレベルである。この実験において450℃の目標温度に達し、完全に酸化されていない燃料の量はわずかに多いにすぎなかった。ライトオフ温度も同様に許容可能である。観察した性能は、実施例2の触媒の燃料燃焼特性を煤変換のために使用するのに適している。
【0144】
【表1】
【0145】
本明細書で引用した公報、特許出願および特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が個々にかつ具体的に参照により組み込まれるように示され、かつその全体が本明細書に記載されている場合と同程度まで、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0146】
「a」および「an」ならびに「the」という用語、および類似の指示語が、本明細書で論じた材料および方法を説明する文脈において(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)使用されているが、これらは、本明細書中に別段の定めがない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含するものと解釈される。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書中に別段の定めがない限り、範囲内の各別個の値を個別に参照する簡単な方法として役立つことを意図しているに過ぎず、各別個の値は、本明細書において個別に列挙されているかのように明細書に組み込まれる。別段の定めがない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、本明細書に記載の全ての方法を適切な本明細書中に順序で行うことができる。本明細書に提供されるあらゆる例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、材料および方法をさらに明らかにするためのものに過ぎず、別段の主張がない限り、範囲を限定するものではない。明細書中のいかなる言語も、開示された材料および方法の実施に不可欠であると主張されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0147】
本明細書を通じて、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」または「実施形態」に対する参照は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、材料または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味している。したがって、本明細書を通じて様々な箇所に見られる「1つ以上の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「一実施形態では」または「実施形態では」などの表現は、必ずしも本発明の同一の実施形態を参照するものではない。さらに、特定の特徴、構造、材料または特性を、1つ以上の実施形態において任意の適切な態様で組み合わせてもよい。
【0148】
特定の実施形態を参照して本発明を本明細書において説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理および用途の例示にすぎないということが理解されるものとする。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の方法および装置に対して様々な変更および変形を行うことができることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内にある変更および変形を含むものとする。