特許第6702974号(P6702974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6702974光学活性カルボニル化合物を合成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6702974
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】光学活性カルボニル化合物を合成する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/62 20060101AFI20200525BHJP
   C07C 47/21 20060101ALI20200525BHJP
   C07B 53/00 20060101ALI20200525BHJP
   C07C 35/12 20060101ALI20200525BHJP
   C07C 35/17 20060101ALI20200525BHJP
   C07C 29/17 20060101ALI20200525BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20200525BHJP
【FI】
   C07C45/62
   C07C47/21
   C07B53/00 B
   C07C35/12
   C07C35/17
   C07C29/17
   !C07B61/00 300
【請求項の数】11
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2017-532651(P2017-532651)
(86)(22)【出願日】2015年12月18日
(65)【公表番号】特表2017-537965(P2017-537965A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】EP2015080392
(87)【国際公開番号】WO2016097242
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年12月18日
(31)【優先権主張番号】14199410.3
(32)【優先日】2014年12月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェルヴィース,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】パチェロ,ロッコ
(72)【発明者】
【氏名】ハイドリヒ,グンナー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェグナー,ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】テッベン,ゲルト−ディーター
(72)【発明者】
【氏名】ハウブナー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】バイ,オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】レンツ,シュテファニー
(72)【発明者】
【氏名】ゼーベル,ゲオルク
【審査官】 高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/108672(WO,A1)
【文献】 特表2008−515843(JP,A)
【文献】 特表2010−525008(JP,A)
【文献】 特開昭54−014911(JP,A)
【文献】 米国特許第04115417(US,A)
【文献】 特表2008−521763(JP,A)
【文献】 Jaekel, Christoph; Paciello, Rocco,The asymmetric hydrogenation of enones - access to a new L-menthol synthesis,Asymmetric Catalysis on Industrial Scale (2nd Edition),2010年,187-205
【文献】 Mashima, K. et al.,Journal of Organometallic Chemistry ,1992年,428(1-2),213-22
【文献】 Ohshima, T. et al.,Chemistry - A European Journal ,2008年,14(7),2060-2066
【文献】 Journal of Molecular Catalysis,1982年,16(1),51-9
【文献】 Collis, Maree P. et al.,Carbonylhydridotris(triphenylphosphine)rhodium(I),e-EROS Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis ,2007年,1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 45/62
C07B 53/00
C07C 29/17
C07C 35/12
C07C 35/17
C07C 47/21
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応混合物に可溶であり、触媒的に活性な遷移金属としてのロジウム及びキラルな二座ビスホスフィンリガンドを有する少なくとも1種の光学活性遷移金属触媒の存在下における、プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の水素を用いる不斉水素化により、光学活性カルボニル化合物を調製する方法であって、
プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の水素化中の反応混合物が、一般式(I):
【化1】
(式中、
R1、R2は、同一であるか又は異なり、非置換の又はC1〜C6-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C6〜C10-アリール、C1〜C6-アルコキシ及びアミノから選択される1個以上の置換基を有するC6〜C10-アリールであり、
Zは、CHR3R4基であり、
R3は、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシ-C1〜C4-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル又はC6〜C10-アリールであり、ここで、C3〜C6-シクロアルキル中の1個若しくは2個の隣接していないCH2基は酸素原子により置き換えられていてもよく、
R4は、非置換の又はP(=O)R4aR4b、C1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-アルコキシ-C1〜C4-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル若しくはC6〜C10-アリール基を有するC1〜C4-アルキルであり、ここで、C3〜C6-シクロアルキル中の1個若しくは2個の隣接していないCH2基は、酸素原子により置き換えられていてもよく、ここで、C3〜C6-シクロアルキル及びC6〜C10-アリールは、非置換であるか又はC1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシ及びアミノから選択される1個以上の置換基を有しており、
又は、
R3、R4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C4〜C8-シクロアルキルであり、C4〜C8-シクロアルキル中の1個若しくは2個の隣接していないCH2基は、酸素原子により置き換えられていてもよく、ここで、C4〜C8-シクロアルキルは、非置換であるか又はC1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシ及びA-P(=O)R4aR4bから選択される1個以上の置換基を有しており、
ここで、Aは、化学結合又はC1〜C4-アルキレンであり、
R4a、R4bは、同一であるか又は異なり、非置換の又はC1〜C6-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C6〜C10-アリール、C1〜C6-アルコキシ及びアミノから選択される1個以上の置換基を有するフェニルである)
の少なくとも1種の化合物を追加で含み、
プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物が、一般式(IIa)及び(IIb)の化合物
【化2】
(式中、
R5、R6は、各場合に、非分岐C1〜C25-アルキル基、非分岐C2〜C25-アルケニル基、非分岐C4〜C25-アルカジエニル基、分岐C3〜C25-アルキル基、分岐C3〜C25-アルケニル基、分岐C5〜C25-アルカジエニル基、1、2、3若しくは4個のC1〜C4-アルキル基により置換されたC3〜C25-シクロアルキル基又はC3〜C24-シクロアルキル基である)
から選択され、
キラルな二座ビスホスフィンリガンドが、一般式(IX)、(X)又は(XI):
【化3】
(式中、
R11、R12は、各場合に互いに独立に、非分岐又は分岐のC1〜C6-アルキルであるか、又は、
R11及びR12は、一緒になってC3〜C7-アルカンジイル基、C3〜C7-アルケンジイル基、C5〜C7-シクロアルカンジイル基又はC5〜C7-シクロアルケンジイル基であり、ここで、4個の上記の基は、非置換であるか又はC1〜C4-アルキルから選択される1個以上の同一であるか若しくは異なる置換基を有しており、
R13、R14は、各場合に、互いに独立に、水素であるか又は直鎖若しくは分岐C1〜C4-アルキルであり、
R15、R16、R17、R18はフェニルである)
の化合物である、方法。
【請求項2】
式(I)中の可変基R1、R2、Zが、以下の意味を有する、請求項1に記載の方法:
R1、R2は、同一であるか又は異なり、非置換の又はメチル及びメトキシから選択される1、2若しくは3個の置換基を有するフェニルであり、
Zは、CHR3R4基であり、
R3はC1〜C4-アルキルであり、
R4は、非置換の又はP(=O)R4aR4b基を有するC1〜C4-アルキルであり、
又は、
R3、R4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1個若しくは2個のCH2基が1個若しくは2個の酸素原子により置き換えられていてもよいC4〜C8-シクロアルキルであり、C4〜C8-シクロアルキルは、非置換であるか又はA-P(=O)R4aR4b基を有しているか及び/又は1、2、3若しくは4個のメチル基を置換基として有し、
ここで、Aは、化学結合、CH2又はCH(CH3)であり;
R4a、R4bは、同一であるか又は異なり、非置換の又はメチル及びメトキシから選択される1、2若しくは3個の置換基を有するフェニルである。
【請求項3】
R1、R2は非置換のフェニルであり、
R3はメチルであり、
R4は、CH(CH3)-P(=O)R4aR4b基であり、ここで、R4a及びR4bは各場合に非置換のフェニルである、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式(I)の化合物が、ロジウム1モル当たり0.001モルから1モルの量で使用される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
式(IIa-1)のゲラニアール又は式(IIb-1)のネラール
【化4】
の不斉水素化により、
式(IV)の光学活性シトロネラール
【化5】
(式中、*は不斉中心を表す)
を調製する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ネラールの不斉水素化によりD-シトロネラールを製造する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
キラルな二座ビスホスフィンリガンドが、一般式(IX)の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
キラルな二座ビスホスフィンリガンドが、式(IXa)又は式(IXb)の化合物:
【化6】
(式中、Phはフェニルである)
のいずれかである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
キラルな二座ビスホスフィンリガンドが、式(IXc)又は式(IXd)の化合物:
【化7】
(式中、Phはフェニルである)
のいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
以下の特徴a〜g:
a)5から200バールの水素圧における不斉水素化の実施、
b)方法の連続した実施、
c)アキラルロジウム化合物のキラルな二座ビスホスフィンリガンドとの反応による水素化の前又はその最中における触媒のその場における生成、
d)一酸化炭素及び水素を含むガス混合物を用いる水素化前の触媒の前処理、
e)反応混合物に追加で加えられた一酸化炭素の存在下における不斉水素化の実施、
f)50から3000ppmの範囲内の一酸化炭素含有率を有する水素を用いる不斉水素化の実施、
g)ガス再循環反応器中における不斉水素化の実施、
h)反応させるべきα,β-不飽和カルボニル化合物及び水素が、2成分ノズルを使用してガス再循環反応器中に導入される、ガス再循環反応器中における不斉水素化の実施
の少なくとも1つ又は全てを有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
光学活性メントールを調製する方法であって、
i)式(IIa-1)のゲラニアール又は式(IIb-1)のネラールから、請求項5に記載の不斉水素化により光学活性シトロネラールを調製するステップ、
ii)このように調製された光学活性シトロネラールをルイス酸の存在下で環化させて光学活性イソプレゴールを得るステップ;及び、
iii)このように調製された光学活性イソプレゴールを水素化して、光学活性メントールを得るステップ
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応混合物に可溶な少なくとも1種の光学活性遷移金属触媒の存在下におけるプロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の水素を用いる不斉水素化により光学活性カルボニル化合物を調製する方法に関する。特に、本発明は、対応するプロキラルα,β-不飽和アルデヒド又はケトンの不斉水素化により光学活性アルデヒド又はケトン、特にシトロネラールを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの光学活性アルデヒド及びケトンは、比較的高度に精製された価値のあるキラル物質の合成及び活性成分における価値のある中間体であり、又はそれ自体すでに価値のある芳香剤及び芳香物質である。
【0003】
EP-A0000315は、反応系に溶解したロジウム及びキラルホスフィンで構成される触媒錯体の存在下におけるゲラニアール又はネラールの水素化による光学活性シトロネラールを調製する方法に関する。
【0004】
J. Mol. Cat., 1982年、16巻、51〜59頁で、T. -P. Dangらは、α,β-不飽和アルデヒドを均一触媒により水素化する方法、及び光学活性シトロネラールを調製するこの方法の適用を記載している。そこで使用された触媒は、ロジウムカルボニル化合物とキラルジホスフィンとの錯体化合物であった。
【0005】
Helv. Chim. Acta、2001年、84巻、230〜242頁、脚注4で、Chapuisらも、Rh4(CO)12と(R,R)-キラホス(2R,3R)-2,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンの触媒の存在下において光学活性シトロネラールを生ずるゲラニアール又はネラールの不斉水素化に言及している。
【0006】
可溶性触媒により触媒される(均一触媒による)反応を実施するときの1つの問題は、しばしば、使用される触媒錯体又は触媒的に活性な金属又はそれらから形成される遷移金属錯体化合物の不適切な安定性に存する。しばしば、そのような触媒又は触媒前駆体の高い価格を背景として、錯体遷移金属触媒を用いる均一触媒による反応は、経済的様式の工業的規模で、特定の場合に適用することができるだけである。
【0007】
JP-A52078812は、トリアリールホスフィン、第三級アミンの化学量論量及び一酸化炭素の存在におけるヒドロホルミル化条件下における均一なRh触媒上のクロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド又はα-メチルシンナムアルデヒドなどのα,β-不飽和アルデヒドを水素化する方法を記載している。
【0008】
WO2006/040096には、反応混合物に可溶であり、少なくとも1種の一酸化炭素リガンドを有する光学活性遷移金属触媒の存在下において、水素によるα,β-不飽和カルボニル化合物の不斉水素化により光学活性カルボニル化合物を調製する方法であって、触媒は一酸化炭素及び水素を含むガス混合物で前処理され、及び/又は不斉水素化は、反応混合物中に追加導入された一酸化炭素の存在下で実施されることを特徴とする方法が記載されている。
【0009】
WO2008/132057には、WO2006/040096で開示された方法に基づくα,β-不飽和カルボニル化合物の不斉水素化による光学活性カルボニル化合物の調製方法が同様に記載されている。それに加えて、水素化中に反応混合物中の一酸化炭素濃度をよりよく制御するために、この方法は、触媒前駆体の前処理が、20から90体積%の一酸化炭素、10から80体積%の水素及び0から5体積%のさらなるガスを含み、ここで指定された体積分率が合計で100体積%になるガス混合物を用いて、5から100バールの圧力下で実施され、過剰の一酸化炭素は、このようにして得られた触媒から不斉水素化で使用する前に分離されて、不斉水素化は一酸化炭素含有率が100から1200ppmの水素の存在下で実施されるという手段を含む。
【0010】
特に、最後に挙げたα,β-不飽和カルボニル化合物の不斉水素化方法の場合には、使用される触媒錯体又は触媒的に活性な金属又はそれらから形成される遷移金属錯体化合物の安定性及び/又は実用寿命を従来の方法と比較して相当に改善することが可能であった。中程度の及び変動する触媒活性が理由で、前記方法は、特にそれらが工業的規模で実施されるならば、それらの反応率速度に関して改善が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
高い反応率速度を高い生成物選択性を以て達成するために、改良された触媒活性と同時に高いエナンチオマー選択性とにより特徴づけられるα,β-不飽和アルデヒド又はケトンを均一触媒により不斉水素化するための改良された方法を提供することが本発明の目的であった。さらに、触媒系は、高い安定性、したがって光学活性形で使用されるべき触媒的に活性な遷移金属錯体化合物の延長された実用寿命により特徴づけられるべきである。この方法は、結果として工業的規模に適用するために特定の程度適当であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の均一触媒による不斉水素化のために使用される触媒的に活性な遷移金属としてロジウムを含む光学活性遷移金属触媒の触媒活性は、下で定義される一般式(I)のホスフィン化合物を添加することにより、それらの安定性及び選択性に顕著に有害な影響を与えることなく、顕著に増大させることができることが見いだされた。
【0013】
本発明は、それ故、反応混合物に可溶であり、触媒的に活性な遷移金属としてのロジウム及びキラルな二座ビスホスフィンリガンドを有する少なくとも1種の光学活性遷移金属触媒の存在下における、プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の水素を用いる不斉水素化により光学活性カルボニル化合物を調製する方法であって、プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の水素化中の反応混合物は、一般式(I):
【0014】
【化1】
(式中、
R1、R2は、同一であるか又は異なり、非置換の又はC1〜C6-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C6〜C10-アリール、C1〜C6-アルコキシ及びアミノから選択される1個以上の、例えば1、2、3、4若しくは5個の置換基を有するC6〜C10アリールであり、
Zは、CHR3R4であるか又は非置換の若しくはC1〜C6-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C6〜C10-アリール、C1〜C6-アルコキシ及びアミノから選択される1個以上の、例えば1、2、3、4若しくは5個の置換基を有するアリール基であり、
R3は、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシ-C1〜C4-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル又はC6〜C10-アリールであり、ここで、C3〜C6-シクロアルキル中の1個若しくは2個の隣接していないCH2基は1個若しくは2個の酸素原子により置き換えられていてもよく、
R4は、非置換の又はP(=O)R4aR4b、C1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-アルコキシ-C1〜C4-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル又はC6〜C10-アリール基を有するC1〜C4-アルキルであり、ここで、C3〜C6-シクロアルキル中の1個若しくは2個の隣接していないCH2基は、酸素原子により置き換えられていてもよく、ここで、C3〜C6-シクロアルキル及びC6〜C10-アリールは、非置換であるか又はC1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシ及びアミノから選択される1個以上の、例えば1、2、3、4若しくは5個の置換基を有しており、
又は、
R3、R4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C4〜C8-シクロアルキルであり、C3〜C6-シクロアルキル中の1個若しくは2個の隣接していないCH2基は、1個若しくは2個の酸素原子により置き換えられていてもよく、ここで、C3〜C6-シクロアルキルは、非置換であるか又はC1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシ及びA-P(=O)R4aR4bから選択される1個以上の、例えば1、2、3、4若しくは5個の置換基を有しており、
ここで、Aは、化学結合又はC1〜C4-アルキレンであり、
R4a、R4bは、同一であるか又は異なり、非置換の又はC1〜C6-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C6〜C10-アリール、C1〜C6-アルコキシ及びアミノから選択される1個以上の置換基を有するフェニルである)
の少なくとも1種の化合物を追加で含む、方法に関する。
【0015】
特に、本発明は、光学活性アルデヒド又はケトン、特にシトロネラールを、対応するプロキラルα,β-不飽和アルデヒド又はケトンの不斉水素化により調製する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による方法は、カルボニル基に対してα,βの位置にあるエチレン性二重結合を有する対応するカルボニル化合物を、不斉に、即ちエナンチオ選択的に水素化することにより、光学活性カルボニル化合物、例えば、アルデヒド、ケトン、エステル、ラクトン又はラクタムなどを調製するために適当である。本発明により、カルボニル基に対してα,βの位置にあるエチレン性二重結合は、反応混合物に可溶で、触媒的に活性な遷移金属としてのロジウム及び一般式(I)のホスフィン化合物を含む光学活性遷移金属触媒の存在下で、水素化されて、炭素-炭素単結合を生じ、この水素化でβ位に新しく生じた四面体の炭素原子は、4個の異なる置換基を有して、非ラセミ形態で得られる。したがって、本発明の関係では、不斉水素化という用語は、水素化生成物の2つのエナンチオマーの形態が等量で得られない水素化の意味と理解されるべきである。
【0017】
上及び下の式で与えられる可変基の定義では、それぞれの置換基の代表として一般的な総称が使用される。Cn〜Cm-の意味は、特定の置換基又は置換基部分中における炭素原子のそれぞれの可能な数を表す。
【0018】
本発明の関係で、「アルキル」という表現は、1から4個、6、12又は25個の炭素原子を有する非分岐又は分岐アルキル基を含む。これらは、例えば、C1〜C6-アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、2-ヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1-エチル-2-メチルプロピルなどを含む。好ましくは、「アルキル」は、非分岐又は分岐C1〜C6-アルキル基である。
【0019】
本発明の関係で、「シクロアルキル」という表現は、3から6個、12又は25個の炭素環員を有する環状の飽和した炭化水素基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルなどのC3〜C8-シクロアルキル、又はC7〜C12-ビシクロアルキルを含む。
【0020】
本発明の関係で、「アルコキシ」という表現は、酸素を介して結合した1から6個の炭素原子を有するアルキル基、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ、ブトキシ、1-メチルプロポキシ、2-メチルプロポキシ、1,1-ジメチルエトキシ、ペントキシ、1-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、3-メチルブトキシ、1,1-ジメチルプロポキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、2,2-ジメチルプロポキシ、1-エチルプロポキシ、ヘキソキシ、1-メチルペントキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、4-メチルペントキシ、1,1-ジメチルブトキシ、1,2-ジメチルブトキシ、1,3-ジメチルブトキシ、2,2-ジメチルブトキシ、2,3-ジメチルブトキシ、3,3-ジメチルブトキシ、1-エチルブトキシ、2-エチルブトキシ、1,1,2-トリメチル-プロポキシ、1,2,2-トリメチルプロポキシ、1-エチル-1-メチルプロポキシ又は1-エチル-2-メチルプロポキシなどのC1〜C6-アルコキシである。好ましくは、「アルコキシ」は、C1〜C4-アルコキシである。
【0021】
本発明の関係で、「アルケニル」という表現は、2から4個、6、12又は25個の炭素原子を有する非分岐又は分岐炭化水素基を含み、それらは少なくとも1個の二重結合、例えば1、2、3若しくは4個の二重結合を含む。これらは、例えば、C2〜C6-アルケニル、例えば、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-メチル-エテニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、3-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-2-プロペニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-2-プロペニル、1-エチル-1プロペニル、1-エチル-2-プロペニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-メチル-1-ペンテニル、2-メチル-1-ペンテニル、3-メチル-1-ペンテニル、4-メチル-1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、1-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-3ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-メチル-4-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、4-メチル-4-ペンテニル、1,1-ジメチル-2-ブテニル、1,1-ジメチル-3-ブテニル、1,2-ジメチル-1-ブテニル、1,2-ジメチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-3-ブテニル、1,3-ジメチル-1-ブテニル、1,3-ジメチル-2-ブテニル、1,3-ジメチル-3-ブテニル、2,2-ジメチル-3-ブテニル、2,3-ジメチル-1-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-3-ブテニル、3,3-ジメチル-1-ブテニル、3,3-ジメチル-2-ブテニル、1-エチル-1-ブテニル、1-エチル-2-ブテニル、1-エチル-3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、2-エチル-2-ブテニル、2-エチル-3-ブテニル、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-メチル-2-プロペニル、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル及び1-エチル-2-メチル-2-プロペニルなどを含む。好ましくは、「アルケニル」は、各場合に1から3個の二重結合を有する非分岐C2〜C12-アルケニル基又は分岐C3〜C12-アルケニル基、特に好ましくは、各場合に1個の二重結合を有する非分岐C2〜C6-アルケニル基又は分岐C3〜C6-アルケニル基である。
【0022】
本発明の関係で、「アルキレン」という表現は、2から25個の炭素原子を有する二価の炭化水素基を指す。二価の炭化水素基は、非分岐又は分岐であることができる。これらは、例えば、C2〜C16-アルキレン基、例えば、1,4-ブチレン、1,5-ペンチレン、2-メチル-1,4-ブチレン、1,6-ヘキシレン、2-メチル-1,5-ペンチレン、3-メチル-1,5-ペンチレン、1,7-ヘプチレン、2-メチル-1,6-ヘキシレン、3-メチル-1,6-ヘキシレン、2-エチル-1,5-ペンチレン、3-エチル-1,5-ペンチレン、2,3-ジメチル-1,5-ペンチレン、2,4-ジメチル-1,5-ペンチレン、1,8-オクチレン、2-メチル-1,7-ヘプチレン、3-メチル-1,7-ヘプチレン、4-メチル-1,7-ヘプチレン、2-エチル-1,6-ヘキシレン、3-エチル-1,6-ヘキシレン、2,3-ジメチル-1,6-ヘキシレン、2,4-ジメチル-1,6-ヘキシレン、1,9-ノニレン、2-メチル-1,8-オクチレン、3-メチル-1,8-オクチレン、4-メチル-1,8-オクチレン、2-エチル-1,7-ヘプチレン、3-エチル-1,7-ヘプチレン、1,10-デシレン、2-メチル-1,9-ノニレン、3-メチル-1,9-ノニレン、4-メチル-1,9-ノニレン、5-メチル-1,9-ノニレン、1,11-ウンデシレン、2-メチル-1,10-デシレン、3-メチル-1,10-デシレン、5-メチル-1,10-デシレン、1,12-ドデシレン、1,13-トリデシレン、1,14-テトラデシレン、1,15-ペンタデシレン、1,16-ヘキサデシレンなどを含む。好ましくは、「アルキレン」は、非分岐C2〜C12-アルキレン基又は分岐C3〜C12-アルキレン基、特に非分岐C2〜C6-アルキレン基又は分岐C3〜C6-アルキレン基である。
【0023】
一分岐又は多分岐の又は置換されたアルキレン基では、分岐点における炭素原子又はそれぞれの分岐点における炭素原子又は置換基を有する炭素原子は、互いに独立に、R又はS配置又は等しいか若しくは異なった比率で両方の配置を有することができる。
【0024】
本発明の関係で、「アルケニレン」という表現は、非分岐でも又は分岐であってもよい2から25個の炭素原子を有する二価の炭化水素基を指し、ここで、主鎖は、1個以上の二重結合、例えば1、2若しくは3個の二重結合を有する。これらは、例えば、C2〜C18-アルケニレン基、例えば、エチレン、プロピレン、1-、2-ブチレン、1-、2-ペンチレン、1-、2-、3-ヘキシレン、1,3-ヘキサジエニレン、1,4-ヘキサジエニレン、1-、2-、3-ヘプチレン、1,3-ヘプタジエニレン、1,4-ヘプチジエニレン、2,4-ヘプタジエニレン、1-、2-、3-オクテニレン、1,3-オクタジエニレン、1,4-オクタジエニレン、2,4-オクタジエニレン、1-、2-、3-ノネニレン、1-、2-、3-、4-、5-デセニレン、1-、2-、3-、4-、5-ウンデセニレン、2-、3-、4-、5-、6-ドデセニレン、2,4-ドデカジエニレン、2,5-ドデカジエニレン、2,6-ドデカジエニレン、3-、4-、5-、6-トリデセニレン、2,5-トリデカジエニレン、4,7-トリデカジエニレン、5,8-トリデカジエニレン、4-、5-、6-、7-テトラデセニレン、2,5-テトラデカジエニレン、4,7-テトラデカジエニレン、5,8-テトラデカジエニレン、4-、5-、6-、7-ペンタデセニレン、2,5-ペンタデカジエニレン、4,7-ペンタデカジエニレン、5,8-ペンタデカジエニレン、1,4,7-ペンタデカトリエニレン、4,7,11-ペンタデカトリエニレン、4,6,8-ペンタデカトリエニレン、4-、5-、6-、7-、8-ヘキサデセニレン、2,5-ヘキサデカジエニレン、4,7-ヘキサデカジエニレン、5,8-ヘキサデカジエニレン、2,5,8-ヘキサデカトリエニレン、4,8,11-ヘキサデカトリエニレン、5,7,9-ヘキサデカトリエニレン、5-、6-、7-、8-ヘプタデセニレン、2,5-ヘプタデカジエニレン、4,7-ヘプタデカジエニレン、5,8-ヘプタデカジエニレン、5-、6-、7-、8-、9-オクタデセニレン、2,5-オクタデカジエニレン、4,7-オクタデカジエニレン、5,8-オクタデカジエニレンなどを含む。好ましくは、「アルケニレン」は、各場合に1個若しくは2個の二重結合を有する非分岐C3〜C12-アルケニレン基又は分岐C4〜C12-アルケニレン基、特に1個の二重結合を有する非分岐C3〜C8-アルケニレン基である。
【0025】
アルケニレン基中の二重結合は、E配置で、またZ配置で、又は両方の配置の混合物として互いに独立に存在することができる。
【0026】
本発明の関係で、「ハロゲン」という表現は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素、好ましくはフッ素、塩素又は臭素を含む。
【0027】
本発明の関係で、「アリール」という表現は、6から14個の炭素環員を含む単核から三核の芳香族環系を含む。これらは、例えば、C6〜C10-アリール、例えば、フェニル又はナフチルなどを含む。
【0028】
本発明の関係で、「ヘタリール」という表現は、1個以上の、例えば1、2、3、4、5又は6個の炭素原子が、窒素、酸素及び/又はイオウ原子により置換されている6から14個の炭素環員を含む単核から三核の芳香族環系を含む。これらは、例えば、C3〜C9-ヘタリール基、例えば、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル、5-ピラゾリル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、1,2,4-オキサジアゾール-3-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル、1,2,4-チアジアゾール-3-イル、1,2,4-チアジアゾール-5-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、1,3,4-トリアゾール-2-イル、2-ピリジニル、3-ピリジニル、4-ピリジニル、3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、2-ピラジニル、1,3,5-トリアジン-2-イル、1,2,4-トリアジン-3-イル、2-インドリル、3-インドリル、4-インドリル、5-インドリル、6-インドリル、7-インドリルなどを含む。好ましくは、「ヘタリール」はC5〜C6-ヘタリールである。
【0029】
本発明の関係で、「アラルキル」という表現は、非分岐又は分岐C1〜C6-アルキル基を通して結合した6から10個の炭素環員を含む単核〜二核芳香族環系を含む。これらは、例えば、フェニルメチル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピルなどのC7〜C12-アラルキルを含む。
【0030】
本発明の関係で、「アラルキル」は、1個以上の、例えば1、2若しくは3個の、非分岐又は分岐C1〜C6-アルキル基で置換されている6から10個の炭素環員を含む単核〜二核芳香族環系を含む。これらは、例えば、C7〜C12-アルキルアリール、例えば、1-メチルフェニル、2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、1-エチルフェニル、2-エチルフェニル、3-エチルフェニル、1-プロピルフェニル、2-プロピルフェニル、3-プロピルフェニル、1-イソプロピルフェニル、2-イソプロピルフェニル、3-イソプロピルフェニル、1-ブチルフェニル、2-ブチルフェニル、3-ブチルフェニル、1-イソブチルフェニル、2-イソブチルフェニル、3-イソ-ブチルフェニル、1-sec-ブチルフェニル、2-sec-ブチルフェニル、3-sec-ブチルフェニル、1-tert-ブチルフェニル、2-tert-ブチルフェニル、3-tert-ブチルフェニル、1-(1-ペンテニル)フェニル、2-(1-ペンテニル)フェニル、3-(1-ペンテニル)フェニル、1-(2-ペンテニル)フェニル、2-(2-ペンテニル)フェニル、3-(2-ペンテニル)フェニル、1-(3-ペンテニル)フェニル、2-(3-ペンテニル)フェニル、3-(3-ペンテニル)フェニル、1-(1-(2-メチルブチル))フェニル、2-(1-(2-メチルブチル))フェニル、3-(1-(2-メチルブチル))フェニル、1-(2-(2-メチルブチル))フェニル、2-(2-(2-メチルブチル))フェニル、3-(2-(2-メチルブチル))フェニル、1-(3-(2-メチルブチル))フェニル、2-(3-(2-メチルブチル))フェニル、3-(3-(2-メチルブチル))フェニル、1-(4-(2-メチルブチル))フェニル、2-(4-(2-メチルブチル))フェニル、3-(4-(2-メチルブチル))フェニル、1-(1-(2,2-ジメチルプロピル))フェニル、2-(1-(2,2-ジメチルプロピル))フェニル、3-(1-(2,2-ジメチルプロピル))フェニル、1-(1-ヘキセニル)フェニル、2-(1-ヘキセニル)フェニル、3-(1-ヘキセニル)フェニル、1-(2-ヘキセニル)フェニル、2-(2-ヘキセニル)フェニル、3-(2-ヘキセニル)フェニル、1-(3-ヘキセニル)フェニル、2-(3-ヘキセニル)フェニル、3-(3-ヘキセニル)フェニル、1-(1-(2-メチルペンテニル))フェニル、2-(1-(2-メチルペンテニル))フェニル、3-(1-(2-メチルペンテニル))フェニル、1-(2-(2-メチル-ペンテニル))フェニル、2-(2-(2-メチルペンテニル))フェニル、3-(2-(2-メチルペンテニル))フェニル、1-(3-(2-メチルペンテニル))フェニル、2-(3-(2-メチルペンテニル))フェニル、3-(3-(2-メチルペンテニル))フェニル、1-(4-(2-メチルペンテニル))フェニル、2-(4-(2-メチルペンテニル))フェニル、3-(4-(2-メチル-ペンテニル))フェニル、1-(5-(2-メチルペンテニル))フェニル、2-(5-(2-メチルペンテニル))フェニル、3-(5-(2-メチルペンテニル))フェニル、1-(1-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、2-(1-(2,2-ジメチル-ブテニル))フェニル、3-(1-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、1-(3-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、2-(3-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、3-(3-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、1-(4-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、2-(4-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、3-(4-(2,2-ジメチルブテニル))フェニルなどを含む。
【0031】
本発明による方法の好ましい実施形態においては、式(I)中のZがCHR3R4基である式(I)の化合物が使用される。これらの中で、一般式(I)のこれらの化合物が好ましく、その中で可変基R1、R2、R3、R4は、互いに独立に、しかし特に一緒に以下の意味を有する:
R1、R2は、同一であるか又は異なり、非置換の又はメチル及びメトキシから選択される1、2又は3個の置換基を有するフェニルであり、ここで、R1及びR2は、各場合に特に非置換のフェニルであり、
R3は、C1〜C4-アルキル、特にメチルであり、
R4は、非置換の又はP(=O)R4aR4b基を有するC1〜C4-アルキルであり、R4は特にメチル若しくはエチルであるか、若しくはCH2-P(=O)R4aR4b若しくはCH(CH3)-P(=O)R4aR4b基であり、
又は、
R3、R4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1個若しくは2個のCH2基が1個若しくは2個の隣接していない酸素原子により置き換えられていてもよい、C3〜C8-シクロアルキルであり、ここで、C3〜C6-シクロアルキルは、非置換であるか又はA-P(=O)R4aR4b基を有しており、及び/又は置換基として1、2、3若しくは4個のメチル基を有しており、R3及びR4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、特にシクロペンチル、オキソラン-3-イル、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル又はシクロヘキシルであり、又はR3及びR4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、2位にP(=O)R4aR4b基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-イルであることができ、
ここで、
Aは、化学結合、CH2又はCH(CH3)であり;
R4a、R4bは、同一であるか又は異なり、C6〜C10-アリールであり、特に非置換の又はメチル及びメトキシから選択される1、2若しくは3個の置換基を有するフェニルであり、ここで、R4a及びR4bは、特に非置換の又はメチル及びメトキシから選択される1、2若しくは3個の置換基を有するフェニルであり、特に好ましくはR4a及びR4bは各場合に非置換のフェニルである。
【0032】
本発明による方法の特に好ましい実施形態において、式(I)中のZがCHR3R4基であり、可変基R1、R2、R3、R4が、互いに独立にしかし特に一緒に以下の意味を有する式(I)の化合物が使用される:
R1、R2は、同一であるか又は異なり、非置換の又はメチル及びメトキシから選択される1、2若しくは3個の置換基を有するフェニルであり、ここで、R1及びR2は、各場合に特に非置換のフェニルであり、
R3は、C1〜C4-アルキル、特にメチルであり、
R4は、P(=O)R4aR4b基を有するC1〜C4-アルキルであり、特に1個の基はCH2-P(=O)R4aR4b又はCH(CH3)-P(=O)R4aR4bであり、
ここで、
R4a、R4bは、同一であるか又は異なり、非置換の又はメチル及びメトキシから選択される1、2若しくは3個の置換基を有するフェニルであり、ここで、特に好ましくは、R4a及びR4bは、各場合に非置換のフェニルである。
【0033】
本発明による方法のこの特に好ましい実施形態においては、特に、
R1、R2が非置換のフェニルであり、
R3がメチルであり、
R4が、CH(CH3)-P(=O)R4aR4b基であり、そこでR4a及びR4bが各場合に非置換のフェニルである、
式(I)の化合物が使用される。
【0034】
ここで、化合物は、(2-(ジフェニルホスホリル)-1-メチルプロピル)ジフェニルホスファンであり、その(R,R)-エナンチオマー(=(R,R)-キラホスモノオキシド)及びその(S,S)-エナンチオマー(=(S,S)-キラホスモノオキシド)、並びにそのラセミ体(化合物(I-1))を含む。
【0035】
一般式(I)中で基R3とR4が異なる意味を有するか又は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、二環式及び/又は置換されたシクロアルキル基であれば、基R3及びR4を有する炭素原子は、(R)又は(S)配置を有することができる。一般式(I)のこれらの化合物は、純粋な(R)若しくは純粋な(S)立体異性体として又はそれらの混合物として存在することができる。通常、これらの場合には、純粋な(R)及び(S)立体異性体が使用されるであろうが、任意の立体異性体混合物も本発明の方法で使用するために適当である。
【0036】
ここで及び以下において、純粋な立体異性体は、所望の立体異性体に関して、少なくとも80%ee、特に少なくとも90%ee及び特に少なくとも95%eeのエナンチオマー過剰(ee)を有するキラル物質を意味すると理解される。
【0037】
本発明による方法の別の実施形態では、式(I)中のZが、非置換の又は、C1〜C6-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C6〜C10-アリール、C1〜C6-アルコキシ及びアミノから選択される1個以上の、例えば1、2、3、4若しくは5個の置換基を有するアリールである式(I)の化合物が使用される。これらの中で、可変基R1、R2、Zが、互いに独立に、しかし特に一緒に、以下の意味を有する一般式(I)のこれらの化合物が好ましい:
Zは、非置換の又はメチル及びメトキシから選択される1、2若しくは3個の置換基を有するフェニルであり、
R1、R2は、同一であるか又は異なり、非置換の又はメチル及びメトキシから選択される1、2若しくは3個の置換基を有するフェニルであり、ここで、R1及びR2は、各場合に特に非置換のフェニルである。
【0038】
一般式(I)の特に好ましい化合物は、例えば:
(R,R)-エナンチオマー(=(R,R)-キラホスモノオキシド)及び(S,S)-エナンチオマー(=(S,S)-キラホスモノオキシド)、及びラセミ体を含む(2-(ジフェニルホスホリル)-1-メチルプロピル)ジフェニルホスファン(化合物(I-1))、
シクロペンチルジフェニルホスフィン(化合物(I-2)、
2-ブチルジフェニルホスフィン(化合物(I-3)、
シクロヘキシルジフェニルホスフィン(化合物(I-4)、
イソプロピルジフェニルホスフィン(化合物(I-5)、
(4S,5S)及び(4R,5R)エナンチオマー並びにそのラセミ体を含む[5-(ジフェニルホスファニルメチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]メチルジフェニルホスファンモノオキシド(化合物(I-6)、
(4S,5S)及び(4R,5R)エナンチオマー並びにそのラセミ体を含む[5-(1-ジフェニルホスファニルエチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]エチルジフェニルホスファンモノオキシド(化合物(I-7)、
(1S,2S)及び(1R,2R)エナンチオマー並びにそのラセミ体を含む[2-ジフェニルホスファニルシクロヘキシル]ジフェニルホスファンモノオキシド(化合物(I-8)、
(3S,4S)及び(3R,4R)エナンチオマー並びにそのラセミ体を含む[4-ジフェニルホスファニルテトラヒドロフラン-3-イル]ジフェニルホスファンモノオキシド(化合物(I-9)、
(1S,2R,3R,4R)、(1R,2S,3R,4R)、(1S,2R,3S,4S)、(1R,2S,3S,4S)異性体、並びにそのエナンチオマー及びジアステレオマー混合物を含む[2-ジフェニルホスファニル-3-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エニル]ジフェニルホスファンモノオキシド(化合物(I-10)、
(3S,4S)及び(3R,4R)エナンチオマー並びにそのラセミ体を含む[1-ベンジル-4-ジフェニルホスファニルピロリジン-3-イル]ジフェニルホスファンモノオキシド(化合物(I-11)、
(1S,3S)及び(1R,3R)エナンチオマー並びにそのラセミ体を含む[3-ジフェニルホスファニル-1-メチルブチル]ジフェニルホスファンモノオキシド(化合物(I-12)、
及びそれらの混合物である。
【0039】
トリフェニルホスフィン(化合物(I-13))及びそれと上記の式(I)の化合物の1個以上、例えば化合物(I-1)から(I-12)の1つとの混合物も同様に適当である。
【0040】
式(I)の化合物は、本発明による方法において、通常、ロジウム1モル当たり0.01から1モル、好ましくは0.02から0.8モル、特に好ましくは0.03から0.7モルの量で、特に0.05から0.6モルの量で使用される。
【0041】
本発明による方法における適当な供給材料は、一般的に2位に二重結合を有する全てのタイプのプロキラルカルボニル化合物である。好ましくは、プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物は、プロキラルα,β-不飽和ケトン又は特にプロキラルα,β-不飽和アルデヒドである。
【0042】
したがって、本発明による方法は、好ましくは、プロキラルα,β-不飽和アルデヒド又はケトンの不斉水素化による光学活性アルデヒド又はケトンの調製に適する。本発明による方法は、プロキラルα,β-不飽和アルデヒドの不斉水素化による光学活性アルデヒドの調製に特に好ましく適する。
【0043】
本発明による方法の好ましい実施形態において、プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物は、一般式(II)
【0044】
【化2】
(式中、
R5、R6は、互いに異なり、各場合に、飽和であるか又は1個以上の、例えば1、2、3、4若しくは5個の、好ましくは非共役エチレン性二重結合を有し、非置換であるか又はOR8、NR9aR9b、ハロゲン、C6〜C10-アリール及びC3〜C9-ヘタリールから選択される1個以上の、例えば1、2、3若しくは4個の、同一であるか若しくは異なる置換基を有する、1から25個の炭素原子を有する非分岐、分岐又は環状の炭化水素基であり、
R7は、水素であるか、又は飽和であるか若しくは1個以上の、例えば1、2、3、4若しくは5個の、好ましくは非共役エチレン性二重結合を有し、非置換であるか若しくはOR8、NR9aR9b、ハロゲン、C6〜C10-アリール及びC3〜C9-ヘタリールから選択される1個以上の、例えば1、2、3若しくは4個の同一であるか若しくは異なる置換基を有する1から25個の炭素原子を有する非分岐、分岐又は環状の炭化水素基であり、
又は、
R7は、基R5若しくはR6の1つと一緒になって、1、2、3若しくは4個の隣接していないCH2基はO若しくはN-R9cによって置き換えられていてもよい、3〜25員のアルキレン基であってもよく、ここで、アルキレン基は飽和であるか又は1個以上の、例えば1、2、3、4若しくは5個の、好ましくは非共役エチレン性二重結合を有しており、ここで、アルキレン基は非置換であるか又はOR8、NR9aR9b、ハロゲン、C1〜C4-アルキル、C6〜C10-アリール及びC3〜C9-ヘタリールから選択される1個以上の、例えば1、2、3若しくは4個の同一であるか若しくは異なる置換基を有しており、ここで、2個の置換基が一緒になって2〜10員のアルキレン基であることができ、ここで、2〜10員のアルキレン基は、飽和であるか又は1個以上の、例えば1、2、3若しくは4個の、非共役エチレン性二重結合を有しており、ここで、2〜10員のアルキレン基は、非置換であるか又はOR8、NR9aR9b、ハロゲン、C6〜C10-アリール及びC3〜C9-ヘタリールから選択される1個以上の、例えば1、2、3若しくは4個の、同一であるか若しくは異なる置換基を有しており、
ここで、
R8は、水素、C1〜C6-アルキル、C6〜C10-アリール、C7〜C12-アラルキル若しくはC7〜C12-アルキルアリールであり、
R9a、R9bは、各場合に互いに独立に、水素、C1〜C6-アルキル、C6〜C10-アリール、C7〜C12-アラルキル若しくはC7〜C12-アルキルアリールであるか、又は、
R9a及びR9bは、一緒になって、N又はOによって割り込まれていてもよい2から5個の炭素原子を有するアルキレン鎖であってもよく、
R9cは、水素、C1〜C6-アルキル、C6〜C10-アリール、C7〜C12-アラルキル又はC7〜C12-アルキルアリールである)
の化合物から選択される。
【0045】
基R5、R6及びR7の定義で特定された1から25個の炭素原子を有する非分岐、分岐又は環状の炭化水素基は、通常、非分岐C1〜C25-アルキル基、非分岐C2〜C25-アルケニル基、非分岐C4〜C25-アルカジエニル基、分岐C3〜C25-アルキル基、分岐C3〜C25-アルケニル基、分岐C5〜C25-アルカジエニル基、さらに上で定義された1個以上の、例えば1、2、3若しくは4個のC1〜C4-アルキル基により置換されたC3〜C25-シクロアルキル基又はC3〜C24-シクロアルキル基である。環状炭化水素基は、1個以上の、例えば1、2、3、4、5若しくは6個のC1〜C4-アルキル基を場合により有するフェニル環を有する環状炭化水素基を含み、ここで、フェニル環が、式(II)中のエチレン性不飽和二重結合若しくはカルボニル基に直接結合していても又はC1〜C6-アルキレン基を通して結合していても両方共含む。
【0046】
アルケニル基は、不飽和結合1個をもつ鎖式又は分岐脂肪族炭化水素基を意味すると理解される。アルカジエニル基は、不飽和結合2個をもつ鎖式又は分岐脂肪族炭化水素基を意味すると理解される。基R7の定義で特定された3〜25員の飽和アルキレン基は、通常、上で定義された非分岐又は分岐C3〜C25-アルキレン基である。
【0047】
基R7の定義で特定された1個以上の、例えば1、2、3若しくは4個の非共役エチレン性二重結合を有する3〜25員のアルキレン基は、通常、上で定義された非分岐又は分岐C3〜C25-アルケニレン基である。
【0048】
好ましくは、基R5、R6の1つは、メチル若しくはエチル、特にメチルであり、他の基は、飽和した又は1個以上の、例えば1、2、3、4若しくは5個の、好ましくは非共役エチレン性二重結合を有し、非置換の若しくはOR8、NR9aR9b、ハロゲン、C6〜C10-アリール及びC3〜C9-ヘタリールから選択される1個以上の、例えば1、2、3若しくは4個の、同一であるか若しくは異なる置換基を有する、3から25個の炭素原子を有する、非分岐、分岐又は環状の炭化水素基である。
【0049】
特に、基R5、R6の1つは、メチル若しくはエチル、特にメチルであり、他の基は、飽和した、又は1個以上の、例えば1、2若しくは3個の、好ましくは非共役エチレン性二重結合を有する、3から25個の炭素原子を有する非分岐、分岐若しくは環状の炭化水素基である。
【0050】
R7は特に水素である。
【0051】
本発明による方法の非常に好ましい実施形態において、プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物は、一般式(IIa)及び(IIb):
【0052】
【化3】
(式中、
R5、R6は、各場合に、2から25個、特に3から20個の炭素原子を有する非分岐若しくは分岐飽和した、又は1、2、3、4若しくは5個の非共役エチレン性二重結合を有する炭化水素基である)
の化合物から選択される。
【0053】
したがって、本発明による方法を使用して、一般式(II)、(IIa)及び(IIb)のプロキラルα,β-不飽和アルデヒド又はケトンの不斉水素化を経由して、基R5及びR6を有する炭素原子が水素化により生じた不斉中心を構成している、式(III)の対応する光学活性形のα,β-飽和アルデヒド又はケトンを調製することができる。
【0054】
【化4】
式(III)において、R5、R6及びR7は、式(II)について特定された意味、特に式(IIa)及び(IIb)について特定された意味を有する。
【0055】
式(IIa)又は(IIb)のα,β-不飽和アルデヒドの本発明による不斉の、即ちエナンチオ選択的水素化は、利用しやすい対応するα,β-飽和アルデヒドを与える。式(IIa)及び(IIb)の化合物は、互いに対してE/Z二重結合異性体とみなされる。原理的に、対応する光学活性アルデヒドは、式(IIa)及び(IIb)の両方の二重結合異性体から出発して到達し得る。触媒のエナンチオマーの形態の選択に依存して、即ち、触媒の(+)又は(-)エナンチオマーの選択又は使用されるキラルリガンドの(+)又は(-)エナンチオマーの選択に依存して、好ましくは、光学活性アルデヒドのエナンチオマーの1つが、本発明による様式で使用されたE又はZ二重結合異性体から得られる。同じことが上記の基質及び生成物のクラスについても当てはまる。原理的には、2種の二重結合異性体の混合物を、本発明による様式で反応させることも可能である。これは、所望の目標の化合物の2種のエナンチオマーの混合物を生ずる。
【0056】
本発明による方法を使用して調製することができる光学活性アルデヒド又はケトンの例は、以下の化合物を含む:
【0057】
【化5】
【0058】
本発明による方法は、式(IV)の光学活性シトロネラールの調製に、特に好ましく適する:
【0059】
【化6】
(式中、*は、式(IIa-1)のゲラニアール又は式(IIb-1)のネラールの不斉水素化による不斉中心を表す)。
【0060】
【化7】
【0061】
ゲラニアール及びネラールの混合物は、本発明による様式で反応させることもできて、その場合、上で記載したように、2種のエナンチオマーがその中に等量で存在しなければ、D-又はL-シトロネラールの光学活性の混合物が得られる。
【0062】
本発明の方法の関係で、ネラール又はゲラニアールの不斉水素化によるD-シトロネラールの本発明による調製は特に好ましい。
【0063】
本発明による調製方法は、反応混合物に可溶な、ロジウムを触媒的に活性な遷移金属として含む光学活性遷移金属触媒の存在下で実施される。
【0064】
このタイプの触媒は、例えば、反応混合物に可溶な少なくとも1種の適当なロジウム化合物の、少なくとも1個のリン及び/又はヒ素原子を有する光学活性リガンドとの反応により得ることができる。
【0065】
適当なロジウム化合物は、例えば、ロジウム(0)、ロジウム(I)、ロジウム(II)及びロジウム(III)塩などの特に選択された反応媒体に可溶なもの、例えば、塩化ロジウム(III)、臭化ロジウム(III)、硝酸ロジウム(III)、硫酸ロジウム(III)、酸化ロジウム(II)又は酸化ロジウム(III)、酢酸ロジウム(II)又は酢酸ロジウム(III)、カルボン酸ロジウム(II)又はカルボン酸ロジウム(III)、Rh(acac)3、[Rh(cod)Cl]2、[Rh(cod)2]BF4、Rh2(OAc)4、ビス(エチレン)ロジウム(I)acac、Rh(CO)2acac、[Rh(cod)OH]2、[Rh(cod)OMe]2、Rh4(CO)12又はRh6(CO)16などであり、ここで、「acac」はアセチルアセトネートリガンドであり、「cod」はシクロオクタジエンリガンドであり、及び「OAc」は酢酸リガンドである。
【0066】
好ましくは、使用されるロジウム化合物は、Rh(OAc)3、[Rh(cod)Cl]2、Rh(CO)2アセチルアセトネート、[Rh(cod)OH]2、[Rh(cod)OMe]2、Rh4(CO)12又はRh6(CO)16、Rh2(OAc)4及びビス(エチレン)ロジウム(I)アセチルアセトネートである。特に、使用されるロジウム化合物は、Rh(CO)2acac、Rh2(OAc)4及びビス(エチレン)ロジウム(I)アセチルアセトネートである。
【0067】
特定の及びさらなる適当なロジウム化合物又はロジウム錯体が知られており、文献に適切に記載されているか、又は当業者により既知の化合物と同様にして調製することができる。
【0068】
特定されたロジウム化合物又はロジウム錯体は、本発明に従って、通常、水素化すべき基質の量に対する比で、約0.001から約1モル%、好ましくは約0.002から約0.5モル%、特に約0.005から約0.2モル%の量で(存在する遷移金属原子に基づいて)使用される。
【0069】
連続した条件下で実施される反応の場合には、本発明による均一触媒の前駆体として使用される遷移金属化合物の量の水素化されるべき基質の量に対する比は、約100ppmから10000ppmの範囲、特に約200ppmから5000ppmの範囲内の触媒濃度が観察されるように選択されるのが有利である。
【0070】
本発明により、特定のロジウム化合物及びロジウム錯体を、光学活性の、好ましくは本質的にエナンチオマーとして純粋であり(即ち、少なくとも90%ee、特に少なくとも95%ee又は少なくとも98%ee又は少なくとも99%eeのエナンチオマー過剰を有する)、2個のリン原子を有するさらなる化合物と接触させる。キラルリガンドと称されるべきこの化合物が、使用される遷移金属化合物と共に、本発明に従って使用されるべき遷移金属触媒を、反応混合物中で又は水素化の上流の予備形成段階で形成する。
【0071】
本発明により、2個のリン原子を有し、使用される遷移金属とキレート錯体を形成する、本明細書でこの後、二座ビスホスフィンリガンドと称される、これらのキラルリガンドが使用される。
【0072】
本発明の文脈で適当なキラル二座ビスホスフィンリガンドは、例えば:I. Ojima(編)、Catalytic Asymmetric Synthesis、Wiley-VCh、第2版、2000年又はE. N. Jacobsen、A. Pfaltz、H. Yamamoto(編)、Comprehensive Asymmetric Catalysis、2000年、Springer又はW. Tang、X. Zhang、Chem. Rev. 2003年、103巻、3029〜3069頁に記載されているこれらの化合物である。
【0073】
例として、以下の化合物を、本発明により好ましく使用されるキラルリガンド(1)〜(90)として、それらのエナンチオマーとともに、リストに挙げることができる:
【0074】
【化8】
【0075】
式(1)〜(90)で、「Ph」は、フェニル、「Cy」はシクロヘキシル、「Xyl」はキシリル、「Tol」はp-トリル及び「Bn」はベンジルを意味すると理解されるべきである。
【0076】
本発明により特に好ましいリガンドは、構造的式(1)〜(14)、さらに(37)、(38)、(41)、(43)、(49)、(50)、(51)、(52)、(65)、(66)、(67)、(68)、(69)、(71)、(72)、(73)、(74)、(75)、(83)、(84)、(85)、(86)、(87)のものである。
【0077】
特に好ましいキラル、二座ビスホスフィンリガンドは、一般式(IX)、(X)又は(XI)のものである:
【0078】
【化9】
(式中、
R11、R12は、各場合に、互いに独立に、飽和した又は1個以上の、一般的に1から約4個の、非共役エチレン性二重結合を有していてよく、非置換の若しくはOR19、NR20R21、ハロゲン、C6〜C10-アリール及びC3〜C9-ヘタリールから選択される1個以上の、一般的に1から4個の同一であるか若しくは異なる置換基を有する、1から20個の炭素原子を有する非分岐、分岐若しくは環状の炭化水素基であり、又は、
R11及びR12は、一緒になって、1、2、3若しくは4個の隣接していないCH2基はO若しくはN-R9cにより置き換えられていてもよい、2〜10員のアルキレン基若しくは3〜10員のシクロアルキレン基であってもよく、ここで、アルキレン基及びシクロアルキレン基は飽和であるか又は1個若しくは2個の非共役エチレン性二重結合を有しており、アルキレン基及びシクロアルキレン基は、非置換であるか又はC1〜C4-アルキルから選択される1個以上の同一であるか若しくは異なる置換基を有しており、
R13、R14は、各場合に、互いに独立に、水素又は直鎖又は分岐C1〜C4-アルキルであり、
R15、R16、R17、R18は、同一であるか又は異なり、非置換の又はC1〜C6-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C6〜C10-アリール、C1〜C6-アルコキシ及びアミノから選択される1個以上の置換基を有するC6〜C10-アリールであり、
R19、R20、R21は、各場合に、互いに独立に、水素、C1〜C4-アルキル、C6〜C10-アリール、C7〜C12-アラルキル又はC7〜C12-アルキルアリールであり、ここで、
R20、R21は、一緒になって、N又はOによって割り込まれていてもよい2から5個の炭素原子を有するアルキレン鎖であってもよい)。
【0079】
式(IX)、(X)及び(XI)に関して、可変基は、特に以下の意味を有する:
R11、R12は、各場合に、互いに独立に、非分岐、分岐又はC1〜C4-アルキル基であり、又は、
R11及びR12は、一緒であるか又はC3〜C7-アルカンジイル基、C3〜C7-アルケンジイル基、C5〜C7-シクロアルカンジイル基又はC5〜C7-シクロアルケンジイル基であり、ここで、4個の上記の基は、非置換であるか又はC1〜C4-アルキルから選択される1個以上の同一であるか若しくは異なる置換基を有しており、
R13、R14は、各場合に、互いに独立に、水素であるか又は直鎖若しくは分岐C1〜C4-アルキルであり、
R15、R16、R17、R18はフェニルである。
【0080】
本発明による方法の関係で特に好ましいキラルの二座ビスホスフィンリガンドは、一般式(IX)のもの、特に本明細書で今後「キラホス」と称される式(1)の化合物又は式(IXa)若しくは(IXb)の化合物である。
【0081】
【化10】
【0082】
「ノルホス」と称される式(5)の化合物及び/又は式(IXc)若しくは(IXd)の化合物も適当である。
【0083】
【化11】
式(IXa)〜(IXd)で、Phはフェニルである。
【0084】
本発明により、選択されたキラルリガンドは、各場合に、それらの2種のエナンチオマーの形態で使用される。キラルリガンドは、典型的には、少なくとも80%ee、特に少なくとも90%ee及び特に少なくとも95%eeのエナンチオマー過剰(ee)を有する。
【0085】
2個のリン原子を有するキラルリガンドを使用する場合、これらは、使用される遷移金属化合物の1モル当たり約0.9から約10モル、好ましくは約1から約4モルの量で有利に使用される。
【0086】
好ましくは、反応混合物に可溶な光学活性ロジウム触媒は、水素化前又はその最中に、その場でアキラルロジウム化合物の、キラルの二座ビスホスフィンリガンドとの反応により生成する。
【0087】
この関係で、「その場で」という表現は、触媒が水素化開始の直前又は開始時に生成されることを意味する。好ましくは、触媒は水素化前に生成される。
【0088】
本発明による方法の好ましい実施形態において、触媒は、水素化前に一酸化炭素及び水素を含むガス混合物で前処理され、及び/又は不斉水素化は、反応混合物中に追加導入された一酸化炭素の存在下で実施される。
【0089】
このことは、反応混合物に可溶な、即ち使用される均一なロジウム触媒が、不斉水素化前に一酸化炭素及び水素を含むガス混合物で前処理されるか(即ち、いわゆる予備形成が実施される)、又は不斉水素化が、反応混合物中に追加導入された一酸化炭素の存在下で実施されるか、又は予備形成が実施されてから不斉水素化が反応混合物中に追加導入された一酸化炭素の存在下で実施されるかのいずれかであることを意味する。
【0090】
好ましくは、この好ましい実施形態で、触媒は、一酸化炭素及び水素を含むガス混合物で前処理されて、不斉水素化は、反応混合物中に追加導入された一酸化炭素の存在下で実施される。
【0091】
反応混合物に可溶な及びこの好ましい実施形態で使用されるロジウム触媒は、それ故、少なくとも、触媒作用サイクルを通過した1形態で又は実際の触媒作用サイクルの上流の予備形成物で、少なくとも1個のCOリガンドを有することができて、少なくとも1個のCOリガンドを有するこの触媒の形態が、実際の触媒的に活性な触媒形態であるかどうかはこの場合重要ではない。COリガンドを場合により有する触媒の形態を安定化するために、水素化中に反応混合物中に一酸化炭素を追加導入することは有利であると思われる。
【0092】
この好ましい実施形態では、触媒前駆体の特定の前処理が、20から90体積%の一酸化炭素、10から80体積%の水素及び0から5体積%のさらなるガスを含むガス混合物を用いて実施され、ここで、特定の体積分率は合計で100体積%、圧力は5から100バールである。それに加えて、過剰の一酸化炭素は、不斉水素化で使用する前に、生じた触媒から分離除去される。
【0093】
過剰の一酸化炭素という用語は、生じた反応混合物中に、気体状の又は溶解した形態で存在して、遷移金属触媒又はその前駆体に結合していない一酸化炭素を意味すると理解されるべきである。したがって、触媒に結合していない過剰の一酸化炭素は、少なくとも大部分、即ち、どのような残存量の溶解した一酸化炭素もそれ自体、後続の水素化を著しく妨げない程度に除去される。これは、通常、予備形成のために使用された一酸化炭素の約90%、好ましくは約95%以上が分離除去されれば保証される。好ましくは、過剰の一酸化炭素は、予備形成により得られた触媒から完全に除去される。
【0094】
生じた触媒又は触媒を含む反応混合物からの過剰一酸化炭素の分離除去は、種々の方法で行うことができる。好ましくは、予備形成により得られた触媒又は触媒を含む反応混合物は、約5バール(絶対)までの圧力に、好ましくは、特に予備形成を5から10バールの範囲の圧力で実施した場合には、5バール未満の圧力(絶対)に、好ましくは約1バールから約5バールの範囲の圧力に、好ましくは1から5バール未満、特に好ましくは1から3バールの範囲の圧力に、非常に特に好ましくは約1から約2バールの範囲の圧力に、特に好ましくは大気圧に減圧されて、これは、気体状の、結合していない一酸化炭素が予備形成の生成物から離脱することを意味する。
【0095】
予備形成された触媒の上記の減圧は、例えば、それ自体当業者に知られている高圧分離器を使用して行うことができる。液体が連続相であるこのタイプの分離器は、例えば:Perry's Chemical Engineers' Handbook、1997年、第7版、McGraw-Hill、14.95頁及び14.96頁に記載されており;可能な落下飛沫同伴の防止は14.87から14.90頁に記載されている。予備形成された触媒の減圧は、所望の1バールから約5バールの範囲の圧力に達するまで1段階又は2段階で行うことができて、その間に温度は通常10から40℃に低下する。
【0096】
あるいは、過剰一酸化炭素の分離除去は、ガス、有利には反応条件下で不活性なガスを用いて、触媒又は触媒を含む反応混合物のいわゆるストリッピングにより達成することができる。本明細書では、ストリッピングという用語は、例えば、W. R. A. Vauck, H. A. Muller, grundoperationen chemischer Verfahrenstechnik [Basic operations of chemical processing technology], Deutscher Verlag fur Grundstoffchemie Leipzig, Stuttgart、第10版、1984年、800頁に記載されているように、当業者により、触媒又は触媒を含む反応混合物中へのガスの導入を意味すると理解される。例としてここで挙げることができる適当な不活性ガスは、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、窒素及び/又はCO2、好ましくは水素、窒素、アルゴンである。
【0097】
好ましくは、次に不斉水素化が、一酸化炭素含有率が50から3000ppmの範囲内、特に100から2000ppmの範囲内、特に200から1000ppmの範囲内及び非常に特に400から800ppmの範囲内である水素を用いて実施される。
【0098】
ロジウム触媒の予備形成が実施される場合には、通常選択された遷移金属化合物及び選択されたキラルリガンド、及び所望であれば、不斉水素化されるべき基質も、適当な溶媒又は反応条件下で不活性な溶解媒体、例えば、エーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オクタデカノール、ビフェニルエーテル、テキサノール、Marlotherm、Oxo Oil 9N(オクテン異性体のヒドロホルミル化生成物、BASF Aktiengesellschaft)、シトロネラールなどに溶解される。反応されるべき基質、生成物又は反応中に生成した任意の高沸点副生物は、溶解媒体としても役立ち得る。水素及び一酸化炭素を含むガス混合物は、生じる溶液中に、有利には、適当な加圧された反応器又はオートクレーブ中で、通常約5から約350バール、好ましくは約20から約200バール、特に好ましくは約50から約100バールの圧力で噴射される。好ましくは、予備形成のためには、
約30から99体積%の水素、
約1から70体積%の一酸化炭素、及び
約0から5体積%のさらなるガス
を含むガス混合物が使用され、
ここで、体積%のデータは合計で100体積%でなければならない。
【0099】
予備形成のためには、
約40から80体積%の水素、
約20から60体積%の一酸化炭素、及び
約0から5体積%のさらなるガス
を含むガス混合物を使用することが特に好ましく、
ここで、体積%のデータは合計で100体積%でなければならない。
【0100】
予備形成のために特に好ましいガス混合物は、いわゆる合成ガスであり、それは通常、水素及び痕跡量のさらなるガスに加えて約35から55体積%の一酸化炭素からなる。
【0101】
触媒の予備形成は、通常、約25℃から約100℃の温度で、好ましくは約40℃から約80℃で実施される。予備形成が不斉水素化されるべき基質の存在下で実施される場合には、温度は、水素化されるべき二重結合の問題になる程度の異性化を生じないように選択されることが有利である。予備形成は、通常、約1時間から約24時間後、しばしば約1から約12時間後に停止される。
【0102】
実施されるべき任意選択の予備形成に続いて、選択された基質の不斉水素化が、本発明に従って実施される。先行する予備形成に続いて、選択された基質は、一般的には、追加の一酸化炭素の導入があってもなくても首尾良く実施することができる。予備形成が実施されない場合には、本発明による不斉水素化は、反応系中に導入された一酸化炭素の存在下又は一酸化炭素の導入なしのいずれかで実施することができる。有利には、記載されたように予備形成が実施されて、不斉水素化中に追加の一酸化炭素が反応混合物に添加される。
【0103】
一酸化炭素が反応系中に導入される場合には、導入は種々の方法で実施することができる。したがって、例えば、一酸化炭素を、不斉水素化のために使用される水素と混合するか、又は気体状の形態で反応溶液中に直接計量導入することができる。さらなる選択肢は、例えば、ギ酸塩又はオキサリル化合物などの一酸化炭素を容易に放出する化合物を反応混合物に添加することに存する。
【0104】
一酸化炭素は、好ましくは、不斉水素化に使用される水素と混合される。
【0105】
本発明による不斉水素化は、約2から約200バール、特に約10から約100バールの圧力で、特に約60から約100バールで、一般的には約0℃から約100℃、好ましくは約0℃から約30℃の温度で、特に約10℃から約30℃で有利に実施される。
【0106】
本発明による不斉水素化を実施するために使用されるべき溶媒の選択は、それほど重要ではない。どのような場合にも、本発明による利点は種々の溶媒でも生ずる。適当な溶媒は、例えば、本発明により予備形成を実施するために挙げたものである。特定の利点を以て、不斉水素化は、場合により予め実施された予備形成と同じ溶媒中で実施される。
【0107】
本発明による不斉水素化を実施するために適当な反応容器は、原理的にはここで特定した条件、特に圧力及び温度で反応を可能にする全てのものであり、例えば、オートクレーブ、管状反応器、バブルカラムなどが水素化反応のために適当である。
【0108】
本発明による方法の水素化が、高沸点の、一般的に粘稠な溶媒を使用して、例えば、触媒の前処理の過程における使用(例えば特定の溶媒、オクタデカノール、ビフェニルエーテル、テキサノール、Marlotherm(登録商標)、Oxo Oil 9N)との関連で上に記載されたように実施される場合、又は水素化が、溶媒の追加の使用なしで、しかし副生物として低い程度で生じた高沸点成分の蓄積があって(例えば、出発原料及び/又は生成物の反応及びその後の二次反応により形成されたダイマー又はトリマーなど)実施される場合には、十分なガス導入及びガス相及び凝縮した相を完全に徹底して混合することが有利であると思われる。これは、例えば、本発明による方法の水素化ステップを、ガス循環反応器中で実施することにより達成される。ガス循環反応器は、それ自体当業者に知られており、例えばP. Trambouze, J. -P. Euzen, Chemical Reactors、 Technip編、2004年、280〜283頁及びP. Zehner, R. Benfer, Chem. Eng. Sci. 1996年, 51巻, 1735〜1744頁、及び例えばEP1140349にも記載されている。原理的には、反応を、溶媒としての生成物中で、例えば出発原料がネラール又はゲラニアールである場合にはシトロネラール中で実施することも可能である。
【0109】
上で特定されたようなガス循環反応器を使用する場合に、使用されるべきガス又はガス混合物(一酸化炭素を含む水素)を、反応器中に導入される出発原料と平行して導入すること及び/又は反応混合物若しくは触媒を単一のノズル若しくは2原料ノズルによりガス循環反応器中に循環させることは、特に有利であることが証明された。ここで、2原料ノズルは、反応器中に導入されるべき液体及びガスが、圧力下で2つの別れた同心円状の管を通ってノズル口に達し、そこでそれらが互いに組み合わされるという事実のために注目される。
【0110】
本発明による方法は、第三級アミンの添加があってもなくても上首尾に実施することができる。好ましくは、本発明による方法は、追加の第三級アミンの添加の不在でも即ちなくても又は触媒量の追加の第三級アミンの存在だけでも実施される。ここで使用されるアミンの量は、使用される金属の量に基づいて0.5〜500モル当量の間であってもよいが、好ましくは使用される金属の量に基づいて1から100モル当量である。第三級アミンの選択は非常に重要なことではない。例えば、トリエチルアミンなどの短鎖アルキルアミンと同様に、例えばトリドデシルアミンなどの長鎖アルキルアミンを使用することも可能である。好ましい実施形態に関連して、本発明による水素化方法は、使用される遷移金属の量に基づいて約2から30モル当量、好ましくは約5から20モル当量及び特に好ましくは5から15モル当量の量の第三級アミン、好ましくはトリドデシルアミンの存在下で実施される。
【0111】
反応は、目標化合物が、反応混合物中に所望の収率及び所望の光学活性で、即ち所望のエナンチオマー過剰(ee)で、当業者によって日常的実験により、例えばクロマトグラフィーの方法により確証され得るように存在するときに、有利に停止される。通常、水素化は、約1から約150時間後、しばしば約2から約24時間後に停止される。
【0112】
本発明による方法により、光学活性カルボニル化合物、特に光学活性アルデヒドを、高い収率及びエナンチオマー過剰で提供することが可能である。通常、所望の不斉水素化された化合物は、少なくとも80%eeのエナンチオマー過剰、しばしば約85から約99%eeのエナンチオマー過剰で得られる。この関係で、最大の達成可能なエナンチオマー過剰は、特に水素化されるべき二重結合の異性体純度に関して、使用される基質の純度に依存し得ることが注目されるべきである。
【0113】
その結果として、適当な出発物質は、特に、E/Z二重結合異性体に関して少なくとも約90:10、好ましくは少なくとも約95:5の異性体比を有するものである。
【0114】
使用される均一触媒は、予備形成により及び/又は反応系中に追加導入される一酸化炭素により安定化することができて、その結果として、一方で、触媒の実用寿命がかなり延長されて、他方では、均一触媒の再使用が容易になる。
【0115】
したがって、例えば、生じた反応生成物は、反応混合物から、それ自体当業者に知られた方法により、例えば蒸留などにより除去することができて、後に残された触媒は、さらなる反応の過程で、場合により繰り返される予備形成の後で使用することができる。
【0116】
したがって、本発明による方法は、不連続的又は半連続的並びに連続的のいずれでも操業することができて、工業的規模における反応に特に適する。
【0117】
本発明による方法の特に好ましい実施形態に関係して、それぞれの二重結合異性体の約5モル%まで、好ましくは約2モル%までを含むネラール又はゲラニアールが、光学活性シトロネラールに変換される。触媒を形成するために、反応混合物に可溶なロジウム化合物、特にRh(OAc)3、[Rh(cod)Cl]2、Rh(CO)2acac、[Rh(cod)OH]2、[Rh(cod)OMe]2、Rh4(CO)12、Rh2(OAc)4、ビス(エチレン)ロジウム(I)アセチルアセトネート又はRh6(CO)16、及びキラルリガンドとして(R,R)-キラホス又は(S,S)-キラホス((2R,3R)-(+)-2,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン又は(2S,3S)-(-)-2,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン)を、約1:1から約1:4のモル比で使用することが好ましく、ここで、ネラール又はゲラニアールの水素化中の反応混合物は、それに加えて、上記の化合物(I-1)〜(I-12)の1種から、及び(R,R)-キラホスモノオキシド、(S,S)-キラホスモノオキシド、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、シクロペンチルジフェニルホスフィン、2-ブチルジフェニルホスフィン又はイソプロピルジフェニルホスフィンから特に選択される少なくとも1種の一般式(I)の化合物を含み、その場合、式(I)の化合物は、好ましくはロジウム1モル当たり0.03から0.6モルの量で特に使用される。
【0118】
本発明による方法の特に好ましい実施形態においては、約5モル%まで、好ましくは約2モル%までのゲラニアールを含むネラールを、反応混合物に可溶なロジウム化合物、例えば、Rh(OAc)3、[Rh(cod)Cl]2、Rh(CO)2acac、[Rh(cod)OH]2、[Rh(cod)OMe]2、Rh4(CO)12、Rh2(OAc)4、ビス(エチレン)ロジウム(I)アセチルアセトネート又はRh6(CO)16及び(R,R)-キラホスなどの存在下で反応させてD-シトロネラールを得、ここで水素化中の反応混合物は、それに加えて、特に上記の化合物(I-1)〜(I-12)の1種から、特に(R,R)-キラホスモノオキシド、(S,S)-キラホスモノオキシド、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、シクロペンチルジフェニルホスフィン、2-ブチルジフェニルホスフィン又はイソプロピルジフェニルホスフィンから選択される一般式(I)の少なくとも1種の化合物を含み、その場合式(I)の化合物は、特にロジウム1モル当たり0.03から0.6モルの量で使用される。本発明による方法のさらに別の同様に特に好ましい実施形態では、約5モル%まで、好ましくは約2モル%までのゲラニアールを含むネラールを、反応混合物に可溶なロジウム化合物、例えば、Rh(OAc)3、[Rh(cod)Cl]2、Rh(CO)2acac、[Rh(cod)OH]2、[Rh(cod)OMe]2、Rh4(CO)12、Rh2(OAc)4、ビス(エチレン)ロジウム(I)アセチルアセトネート又はRh6(CO)16及び(S,S)-キラホスなどの存在下で反応させてL-シトロネラールを得、ここで、水素化中の反応混合物は、それに加えて、特に上記の化合物(I-1)〜(I-12)の1種から、特に(R,R)-キラホスモノオキシド、(S,S)-キラホスモノオキシド、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、シクロペンチルジフェニルホスフィン、2-ブチルジフェニルホスフィン又はイソプロピルジフェニルホスフィンから選択される一般式(I)の少なくとも1種の化合物を含み、その場合式(I)の化合物は、特にロジウム1モル当たり0.03から0.6モルの量で使用される。好ましくは、触媒は、上記の条件下で予備形成されて、次に不斉水素化が、特に50から3000ppmの一酸化炭素を含む水素の存在下で実施される。好ましい実施形態の過程では、溶媒の添加は有利には不要であり、決められた変換が、反応させるべき基質又は生成物中で、場合により溶解媒体としての高沸点副生物中で実施される。本発明により安定化された均一触媒を再使用又は再循環する連続反応手順が特に好ましい。
【0119】
原理的には、(R,R)-キラホスを、(R,R)-ノルホス((2R,3R)-2,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-4-エン)で、又は(S,S)-キラホスを、(S,S)-ノルホス((2S,3S)-2,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-4-エン)で置き換えることは可能である。
【0120】
本発明のさらなる態様は、本発明による方法により調製された光学活性シトロネラールを使用する光学活性メントールを調製する方法に関する。光学活性シトロネラールに続く光学活性メントールの調製は知られている。ここで非常に重要なステップは、光学活性シトロネラールの例えばEP-A1225163に記載された光学活性イソプレゴールへの環化である。
【0121】
光学活性メントールを調製する方法は以下のステップを含む:
i)本発明による方法による、式(IIa-1)のゲラニアール又は式(IIb-1)のネラールの不斉水素化により光学活性シトロネラールを調製するステップ、
ii)このように調製された光学活性シトロネラールをルイス酸の存在下で環化させて、光学活性イソプレゴールを得るステップ、及び
iii)このようにして調製された光学活性イソプレゴールを水素化して、光学活性メントールを得るステップ。
【0122】
式(XIII)のL-メントールの調製について図式的形態で下に示すように、本発明に従って調製された光学活性シトロネラールは、適当な酸、特にルイス酸の存在下で環化されて式(XII)のL-イソプレゴールを生じ、次にL-メントールに水素化され得る。
【0123】
【化12】
したがって、本発明のさらなる態様は、光学活性メントールを調製するための、本発明による方法により調製された光学活性シトロネラールの使用に関する。特に、本発明は、光学活性L-メントールを調製するための、本発明による方法によって調製されたD-シトロネラールの使用に関する。
【0124】
下の例は、少しもそれに悪影響を及ぼさずに本発明を例示するために役立つ。
【0125】
[実施例]
比較例1:一酸化炭素の存在下におけるネラールの不斉水素化
Rh(CO)2acac(43mg、0.17mmol)及び(R,R)-キラホス(105mg、0.24mmol)をテキサノール(28ml、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、Sigma-Aldrich)中に溶解して、100mlの鋼オートクレーブ(V2A鋼、メーカーPremex、磁気駆動ガス分散攪拌機、1000回転/分)中で80バールの合成ガス下(H2/CO=1:1、vol/vol)及び70℃で16時間攪拌した。次に、系を25℃に冷却して、窒素を2時間(8L/時間)溶液に通す。窒素をフラッシュした後、ネラール(16.2g、二重結合異性体の比ネラール/ゲラニアール=98.3:0.4、基質/触媒のモル比=650)をオートクレーブにロックを通して加えた。1000ppmの一酸化炭素を含んだ水素ガスを注入することにより、反応圧力を80バールに調節した。時間/反応率をガスクロマトグラフィーにより決定した。4時間の反応後、39%の反応率及びシトロネラールの39%の収率が達成された。20時間後、シトラールの反応率は>99%及びD-シトロネラールの収率も同様に>99%であり、光学純度は85%eeと決定された。
【0126】
実施例2a-2o:c(Rh)=400ppmにおけるプロモーター(表1)を添加した一酸化炭素の存在下におけるネラールの不斉水素化
Rh(CO)2acac(43mg、0.17mmol)、(R,R)-キラホス(105mg、0.24mmol)及び添加剤(表1を参照されたい)を、テキサノール(28ml、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、Sigma-Aldrich)に溶解して、100mlの鋼オートクレーブ(V2A鋼、メーカーPremex、磁気駆動ガス分散攪拌機、1000回転/分)中80バールの合成ガス下(H2/CO=1:1、vol/vol)及び70℃で16時間攪拌した。次に、系を25℃に冷却して窒素を2時間(8L/時間)溶液に通す。窒素をフラッシュした後、16.2gのネラール(二重結合異性体の比ネラール/ゲラニアール=98.3:0.4;基質/触媒の比=650)をオートクレーブにロックを通して加えた。1000ppmの一酸化炭素を含んだ水素ガスを注入することにより、反応圧力を80バールに調節した。時間/反応率をガスクロマトグラフィーにより決定した。反応率/エナンチオ選択率/添加剤を表1に示す。
【0127】
実施例2p-q:c(Rh)=700ppmにおけるプロモーター(表1)を添加した一酸化炭素の存在下におけるネラールの不斉水素化
Rh(CO)2acac(75mg、0.29mmol)、(R,R)-キラホス(186mg、0.44mmol)及び添加剤(表1を参照されたい)をテキサノール(28ml、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、Sigma-Aldrich)に溶解して100ml鋼オートクレーブ(V2A鋼、メーカーPremex、磁気駆動ガス分散攪拌機、1000回転/分)中80バールの合成ガス下(H2/CO=1:1、vol/vol)及び70℃で16時間攪拌した。次に、系を25℃に冷却して窒素を2時間(8L/時間)溶液に通す。窒素をフラッシュした後、16.2gのネラール(二重結合異性体の比ネラール/ゲラニアール=98.3:0.4;基質/触媒の比=365)をオートクレーブにロックを通して加えた。1000ppmの一酸化炭素を含んだ水素ガスを注入することにより、反応圧力を80バールに調節した。時間/反応率をガスクロマトグラフィーにより決定した。反応率/エナンチオ選択率/添加剤を表1に示す。
【0128】
比較例、2r-s:c(Rh)=400ppmにおける二座リガンドなしで(表1)プロモーターを添加した一酸化炭素の存在下におけるネラールの不斉水素化
Rh(CO)2acac(43mg、0.17mmol)及びホスフィンリガンド(0.17mmol、表1を参照されたい)を、テキサノール(28ml、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、Sigma-Aldrich)に溶解して、100ml鋼オートクレーブ(V2A鋼、メーカーPremex、磁気駆動ガス分散攪拌機、1000回転/分)中80バールの合成ガス下(H2/CO=1:1、vol/vol)及び70℃で16時間攪拌した。次に、系を25℃に冷却して窒素を2時間(8L/時間)溶液に通す。窒素をフラッシュした後、16.2gのネラール(二重結合異性体の比ネラール/ゲラニアール=98.3:0.4;基質/触媒の比=650)をオートクレーブにロックを通して加えた。1000ppmの一酸化炭素を含んだ水素ガスを注入することにより、反応圧力を80バールに調節した。時間/反応率をガスクロマトグラフィーにより決定した。反応率及びエナンチオ選択率を表1に示す。
【0129】
比較例2t
反応は、実施例2bで記載した手順に従って実施して、溶媒のテキサノールを同量のD-シトロネラール(88%ee)で置き換えて、(R,R)-キラホスモノオキシドを添加剤として反応混合物に添加しなかった。反応率及びエナンチオ選択率を表1に示す。
【0130】
実施例2u:
反応は、実施例2bに記載した手順に従って実施し、溶媒のテキサノールを同量のD-シトロネラール(88%ee)で置き換えた。反応率及びエナンチオ選択率を表1に示す。
【0131】
比較例2v
反応は、実施例2bに記載した手順に従って実施し、(R,R)-キラホスを同量の(R,R)-ノルホスで置き換えて、(R,R)-キラホスモノオキシドを添加剤として反応混合物に添加しなかった。反応率及びエナンチオ選択率を表1に示す。
【0132】
実施例2w:
反応は、実施例2bに記載した手順に従って実施し、(R,R)-キラホスを同量の(R,R)-ノルホスで置き換えた。反応率及びエナンチオ選択率を表1に示す。
【0133】
実施例2x:
反応は、実施例2bに記載した手順に従って実施し、一酸化炭素を含有する水素の代わりに純粋な水素を使用した。反応率及びエナンチオ選択率を表1に示す。
【0134】
比較例2y
反応は、実施例2aに記載した手順に従って実施し、1.05mmolのトリドデシルアミンを添加剤として反応混合物に加えた。反応率及びエナンチオ選択率を表1に示す。
【0135】
実施例2z:
反応は、実施例2yに記載した手順に従って実施し、添加剤としてトリドデシルアミンに加えて、(R,R)-キラホスモノオキシドを反応混合物に加えた。反応率及びエナンチオ選択率を表1に示す。
【0136】
[実施例3]
過酸化水素を用いる(R,R)-キラホスの酸化による(R,R)-キラホスモノオキシド(CPMO)の調製
(R,R)-キラホス(230g、0.54モル)を5Lのジャケット付き攪拌容器中で攪拌しながら25℃でトルエン(3500mL)に溶解して、過酸化水素(水中15%の強度、9g、0.26モル)を、注射ポンプにより8時間かけて連続的に加える。温度を25℃に保つ(発熱による温度上昇は極く小さい)。反応混合物をさらに終夜攪拌して25℃でさらに10時間攪拌する。取り出した反応混合物を、ロータリーエバポレーターを使用して150mbar及び75℃で900ml(透明で黄色を帯びた溶液)に濃縮する。濃縮された溶液の100mlを75℃/5mbarで完全に濃縮して、グローブボックス中で10*10cmシリカゲルカラムを使用して精製する。未反応のキラホスを分離除去するために、最初にトルエン(1500mL)、次にメタノール(600mL)を用いて溶離を実施する、GCによる分画の制御(カラム:30m/0.32mm HP-5;注入口:280℃、検出器:FID、320℃、プログラム:100℃→20℃/分→300℃)。CPMO:CPDO=76:24の混合物(31P-NMRに基づく)3.1gが得られる。31P-NMR(C6D6、500MHz):33.5ppm(CPDO)、33.0ppm(d、30Hz)、-8.1ppm(d、30Hz)
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
本発明の実施形態として例えば以下を挙げることができる。
[実施形態1]
反応混合物に可溶であり、触媒的に活性な遷移金属としてのロジウム及びキラルな二座ビスホスフィンリガンドを有する少なくとも1種の光学活性遷移金属触媒の存在下における、プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の水素を用いる不斉水素化により、光学活性カルボニル化合物を調製する方法であって、
プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物の水素化中の反応混合物が、一般式(I):
【化13】
(式中、
R1、R2は、同一であるか又は異なり、非置換の又はC1〜C6-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C6〜C10-アリール、C1〜C6-アルコキシ及びアミノから選択される1個以上の置換基を有するC6〜C10-アリールであり、
Zは、CHR3R4基であるか又は非置換の若しくはC1〜C6-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C6〜C10-アリール、C1〜C6-アルコキシ及びアミノから選択される1個以上の置換基を有するアリール基であり、
R3は、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシ-C1〜C4-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル又はC6〜C10-アリールであり、ここで、C3〜C6-シクロアルキル中の1個若しくは2個の隣接していないCH2基は酸素原子により置き換えられていてもよく、
R4は、非置換の又はP(=O)R4aR4b、C1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-アルコキシ-C1〜C4-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル若しくはC6〜C10-アリール基を有するC1〜C4-アルキルであり、ここで、C3〜C6-シクロアルキル中の1個若しくは2個の隣接していないCH2基は、酸素原子により置き換えられていてもよく、ここで、C3〜C6-シクロアルキル及びC6〜C10-アリールは、非置換であるか又はC1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシ及びアミノから選択される1個以上の置換基を有しており、
又は、
R3、R4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、C4〜C8-シクロアルキルであり、C3〜C6-シクロアルキル中の1個若しくは2個の隣接していないCH2基は、酸素原子により置き換えられていてもよく、ここで、C3〜C6-シクロアルキルは、非置換であるか又はC1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシ及びA-P(=O)R4aR4bから選択される1個以上の置換基を有しており、
ここで、Aは、化学結合又はC1〜C4-アルキレンであり、
R4a、R4bは、同一であるか又は異なり、非置換の又はC1〜C6-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C6〜C10-アリール、C1〜C6-アルコキシ及びアミノから選択される1個以上の置換基を有するフェニルである)
の少なくとも1種の化合物を追加で含む、方法。
[実施形態2]
式(I)中のZがCHR3R4基である、実施形態1に記載の方法。
[実施形態3]
式(I)中の可変基R1、R2、Zが、以下の意味を有する、実施形態2に記載の方法:
R1、R2は、同一であるか又は異なり、非置換の又はメチル及びメトキシから選択される1、2若しくは3個の置換基を有するフェニルであり、
Zは、CHR3R4基であり、
R3はC1〜C4-アルキルであり、
R4は、非置換の又はP(=O)R4aR4b基を有するC1〜C4-アルキルであり、
又は、
R3、R4は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1個若しくは2個のCH2基が1個若しくは2個の酸素原子により置き換えられていてもよいC3〜C8-シクロアルキルであり、C3〜C6-シクロアルキルは、非置換であるか又はA-P(=O)R4aR4b基を有しているか及び/又は1、2、3若しくは4個のメチル基を置換基として有し、
ここで、Aは、化学結合、CH2又はCH(CH3)であり;
R4a、R4bは、同一であるか又は異なり、非置換の又はメチル及びメトキシから選択される1、2若しくは3個の置換基を有するC6〜C10-アリールである。
[実施形態4]
R1、R2は非置換のフェニルであり、
R3はメチルであり、
R4は、CH(CH3)-P(=O)R4aR4b基であり、ここで、R4a及びR4bは各場合に非置換のフェニルである、
実施形態2に記載の方法。
[実施形態5]
式(I)の化合物が、ロジウム1モル当たり0.001モルから1モルの量で使用される、実施形態1〜4のいずれかに記載の方法。
[実施形態6]
プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物が、プロキラルα,β-不飽和ケトン又はプロキラルα,β-不飽和アルデヒドである、実施形態1〜5のいずれかに記載の方法。
[実施形態7]
プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物が一般式(II):
【化14】
(式中、
R5、R6は、互いに異なり、各場合に、飽和であるか又は1個以上の非共役エチレン性二重結合を有しており、非置換であるか又はOR8、NR9aR9b、ハロゲン、C6〜C10-アリール及びC3〜C9-ヘタリールから選択される1個以上の同一であるか若しくは異なる置換基を有する、1から25個の炭素原子を有する非分岐、分岐又は環状の炭化水素基であり、
R7は、水素であるか、又は飽和であるか若しくは1個以上の非共役エチレン性二重結合を有しており、非置換であるか又はOR8、NR9aR9b、ハロゲン、C6〜C10-アリール及びC3〜C9-ヘタリールから選択される1個以上の同一であるか若しくは異なる置換基を有する、1から25個の炭素原子を有する非分岐、分岐又は環状の炭化水素基であり;
又は、
R7は、基R5又はR6の1つと一緒になって、1、2、3若しくは4個の隣接していないCH2基は、O若しくはN-R9cにより置き換えられていてもよい、3〜25員のアルキレン基であってもよく、ここで、アルキレン基は、飽和であるか又は1個以上の非共役エチレン性二重結合を有しており、ここで、アルキレン基は非置換であるか又はOR8、NR9aR9b、ハロゲン、C1〜C4-アルキル、C6〜C10-アリール及びC3〜C9-ヘタリールから選択される1個以上の同一であるか若しくは異なる置換基を有しており、ここで、さらに2個の置換基が一緒になって2〜10員のアルキレン基であることができ、ここで、2〜10員のアルキレン基は、飽和であるか又は1個以上の非共役エチレン性二重結合を有しており、ここで、2〜10員のアルキレン基は、非置換であるか又はOR8、NR9aR9b、ハロゲン、C6〜C10-アリール及びC3〜C9-ヘタリールから選択される1個以上の同一であるか若しくは異なる置換基を有しており、
ここで、
R8は、水素、C1〜C6-アルキル、C6〜C10-アリール、C7〜C12-アラルキル又はC7〜C12-アルキルアリールであり、
R9a、R9bは、各場合に互いに独立に、水素、C1〜C6-アルキル、C6〜C10-アリール、C7〜C12-アラルキル又はC7〜C12-アルキルアリールであるか、又は、
R9a及びR9bは、一緒になって、N又はOによって割り込まれていてもよい2から5個の炭素原子を有するアルキレン鎖であってもよく;
R9cは、水素、C1〜C6-アルキル、C6〜C10-アリール、C7〜C12-アラルキル又はC7〜C12-アルキルアリールである)
の化合物から選択される、実施形態1〜6のいずれかに記載の方法。
[実施形態8]
プロキラルα,β-不飽和カルボニル化合物が、一般式(IIa)及び(IIb)の化合物
【化15】
(式中、
R5、R6は、各場合に、飽和であるか又は1、2、3、4若しくは5個の非共役エチレン性二重結合を有する、2から25個の炭素原子を有する非分岐又は分岐炭化水素基である)
から選択される、実施形態1〜7のいずれかに記載の方法。
[実施形態9]
式(IIa-1)のゲラニアール又は式(IIb-1)のネラール
【化16】
の不斉水素化により、
式(IV)の光学活性シトロネラール
【化17】
(式中、*は不斉中心を表す)
を調製する、実施形態8に記載の方法。
[実施形態10]
ネラールの不斉水素化によりD-シトロネラールを製造する、実施形態9に記載の方法。
[実施形態11]
キラルな二座ビスホスフィンリガンドが、一般式(IX)、(X)又は(XI):
【化18】
(式中、
R11、R12は、各場合に互いに独立に、飽和であるか又は1個以上の、一般的に1から約4個の非共役エチレン性二重結合を有していてもよく、非置換であるか又はOR19、NR20R21、ハロゲン、C6〜C10-アリール及びC3〜C9-ヘタリールから選択される1個以上の、一般的に1から4個の、同一であるか若しくは異なる置換基を有する、1から20個の炭素原子を有する非分岐、分岐又は環状の炭化水素基であるか、又は、
R11及びR12は、一緒になって、1、2、3若しくは4個の隣接していないCH2基は、O又はN-R9cによって置き換えられていてもよい2〜10員のアルキレン基又は3〜10員のシクロアルキレン基であってもよく、ここで、アルキレン基及びシクロアルキレン基は、飽和であるか又は1個若しくは2個の非共役エチレン性二重結合を有しており、ここで、アルキレン基及びシクロアルキレン基は、非置換であるか又はC1〜C4-アルキルから選択される1個以上の同一であるか若しくは異なる置換基を有しており、
R13、R14は、各場合に互いに独立に、水素であるか又は直鎖若しくは分岐C1〜C4-アルキルであり、
R15、R16、R17、R18は、同一であるか又は異なり、非置換の又はC1〜C6-アルキル、C3〜C6-シクロアルキル、C6〜C10-アリール、C1〜C6-アルコキシ及びアミノから選択される1個以上の置換基を有するC6〜C10-アリールであり;
R19、R20、R21は、各場合に互いに独立に、水素、C1〜C4-アルキル、C6〜C10-アリール、C7〜C12-アラルキル又はC7〜C12-アルキルアリールであり、ここで、
R20、R21は、一緒になって、N又はOによって割り込まれていてもよい2から5個の炭素原子を有するアルキレン鎖であってもよい)
の化合物である、実施形態1〜10のいずれかに記載の方法。
[実施形態12]
キラルな二座ビスホスフィンリガンドが、一般式(IX)の化合物である、実施形態11に記載の方法。
[実施形態13]
キラルな二座ビスホスフィンリガンドが、式(IXa)又は式(IXb)の化合物:
【化19】
(式中、Phはフェニルである)
のいずれかである、実施形態12に記載の方法。
[実施形態14]
キラルな二座ビスホスフィンリガンドが、式(IXc)又は式(IXd)の化合物:
【化20】
(式中、Phはフェニルである)
のいずれかである、実施形態12に記載の方法。
[実施形態15]
以下の特徴a〜g:
a)5から200バールの水素圧、特に10から100バールの水素圧における不斉水素化の実施、b)方法の連続した実施、
c)アキラルロジウム化合物のキラルな二座ビスホスフィンリガンドとの反応による水素化の前又はその最中における触媒のその場における生成、
d)一酸化炭素及び水素を含むガス混合物を用いる水素化前の触媒の前処理、
e)反応混合物に追加で加えられた一酸化炭素の存在下における不斉水素化の実施、
f)50から3000ppmの範囲内、特に100から2000ppmの範囲内、特に200から1000ppmの範囲内及び非常に特に400から800ppmの範囲内の一酸化炭素含有率を有する水素を用いる不斉水素化の実施、
g)ガス再循環反応器中における不斉水素化の実施、
h)反応させるべきα,β-不飽和カルボニル化合物及び水素が、2成分ノズルを使用してガス再循環反応器中に導入される、ガス再循環反応器中における不斉水素化の実施
の少なくとも1つ又は全てを有する、実施形態1〜14のいずれかに記載の方法。
[実施形態16]
光学活性メントールを調製する方法であって、
i)式(IIa-1)のゲラニアール又は式(IIb-1)のネラールから、実施形態9に記載の不斉水素化により光学活性シトロネラールを調製するステップ、
ii)このように調製された光学活性シトロネラールをルイス酸の存在下で環化させて光学活性イソプレゴールを得るステップ;及び、
iii)このように調製された光学活性イソプレゴールを水素化して、光学活性メントールを得るステップ
を含む方法。