(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ケースは、前記端面又はその延長面と交わる外側面を有し、前記第1突出部は、前記外側面よりも該ケースの内方に配されている請求項1又は2に記載の電子機器筐体。
前記ケースは、前記第1突出部から該ケースの内方に突出して前記外表面と係合する第2突出部をさらに有する請求項2又は請求項2に従属する請求項3に記載の電子機器筐体。
請求項1乃至9のいずれかに記載の電子機器筐体に、前記電子機器部品として、固定接点を有する固定片と、可動接点を有し、この可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点から離隔するように前記可動片を作動させる熱応動素子を収容したことを特徴とするブレーカー。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態による電子機器筐体、電子機器筐体の製造方法及びそれを備えたブレーカーについて図面を参照して説明する。
図1乃至
図3は、本実施形態に係る電子機器筐体を備えたブレーカーの構成を示している。ブレーカー1は、固定接点21を有する固定片2と端子が形成されている端子片3と、先端部に可動接点41を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6と、固定片2、端子片3と、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6を収容するケース7と、ケース7に装着されるカバー片8等によって構成されている。
【0020】
固定片2は、例えば、銅等を主成分とする金属板(この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅等の金属板)をプレス加工することにより形成され、ケース7にインサート成形により埋め込まれている。固定片2の一端には外部回路と電気的に接続される端子22が形成され、他端側には、PTCサーミスター6を支持する支持部23が形成されている。PTCサーミスター6は、固定片2の支持部23に3箇所形成された凸状の突起(ダボ)24の上に載置されて、突起24に支持される。
【0021】
固定接点21は、銀、ニッケル、ニッケル−銀合金の他、銅−銀合金、金−銀合金等の導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により可動接点41に対向する位置に形成され、ケース7の内部に形成されている開口73aの一部から露出されている。端子22はケース7の端縁から外側に突き出されている。支持部23は、ケース7の内部に形成されている開口73dから露出されている。
【0022】
本発明の説明においては、特に断りのない限り、固定片2において、固定接点21が形成されている側の面(すなわち
図1において上側の面)を表(おもて)面、その反対側の面を裏(うら)面として説明している。他の部品、例えば、可動片4及び熱応動素子5等についても同様である。
【0023】
端子片3は、固定片2と同様に、銅等を主成分とする金属板をプレス加工することにより形成され、ケース7にインサート成形により埋め込まれている。端子片3の一端には外部回路と電気的に接続される端子32が形成され、他端側には、可動片4と電気的に接続される接続部33が形成されている。端子32はケース7の端縁から外側に突き出されている。接続部33は、ケース7の内部に設けられた開口73bから露出し、可動片4と電気的に接続される。
【0024】
可動片4は、板状の金属材料をプレス加工することにより、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。可動片4の材料としては、固定片2と同等の銅等を主成分とするものが好ましい。この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅等の導電性弾性材料を用いてもよい。
【0025】
可動片4の先端部には、可動接点41が形成されている。可動接点41は、固定接点21と同等の材料によって形成され、溶接の他、クラッド、かしめ(crimping)等の手法によって可動片4の先端部に接合されている。
【0026】
可動片4の先端部には、端子片3の接続部33と電気的に接続される接続部42が形成されている。端子片3の接続部33と可動片4の接続部42とは、例えば、溶接によって固着されている。
【0027】
可動片4は、可動接点41と接続部42との間に、弾性部43を有している。弾性部43は、接続部42から可動接点41の側に延出されている。接続部42において端子片3の接続部33と固着されることにより可動片4が固定され、弾性部43が弾性変形することにより、その先端に形成されている可動接点41が固定接点21の側に押圧されて接触し、固定片2と可動片4とが通電可能となる。可動片4と端子片3とは、電気的に接続されているので、固定片2と端子片3とが通電可能となる。
【0028】
可動片4は、弾性部43において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収納することができる限り特に限定はなく、動作温度及び復帰温度における弾性力、接点の押圧力等を考慮して適宜設定すればよい。また、弾性部43の裏面には、熱応動素子5に対向して一対の突起(接触部)44a,44bが形成されている。突起44a,44bと熱応動素子5とは接触して、突起44a,44bを介して熱応動素子5の変形が弾性部43に伝達される(
図1、
図2及び
図3参照)。
【0029】
熱応動素子5は円弧状に湾曲した初期形状をなし、熱膨張率の異なる薄板材を積層することにより形成される。過熱により動作温度に達すると、熱応動素子5の湾曲形状は、スナップモーションを伴って逆反りし、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。所期の温度で熱応動素子5の逆反り動作により可動片4の弾性部43が押し上げられ、かつ弾性部43の弾性力により元に戻る限り、熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形が望ましく、小型でありながら弾性部43を効率的に押し上げるために正方形に近い長方形であることが望ましい。なお、熱応動素子5の材料としては、例えば、高膨脹側に銅−ニッケル−マンガン合金又はニッケル−クロム−鉄合金、低膨脹側に鉄−ニッケル合金をはじめとする、洋白、黄銅、ステンレス鋼等各種の合金からなる熱膨張率の異なる2種類の材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。
【0030】
PTCサーミスター6は、固定片2と熱応動素子5との間に配設されている。すなわち、PTCサーミスター6を挟んで、固定片2は熱応動素子5の直下に位置している。熱応動素子5の逆反り動作により固定片2と可動片4との通電が遮断されたとき、PTCサーミスター6に流れる電流が増大する。PTCサーミスター6は、温度上昇と共に抵抗値が増大して電流を制限する正特性サーミスターであれば、動作電流、動作電圧、動作温度、復帰温度等の必要に応じて種類を選択でき、その材料及び形状はこれらの諸特性を損なわない限り特に限定されるものではない。本実施形態では、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム又はチタン酸カルシウムを含むセラミック焼結体が用いられる。セラミック焼結体の他、ポリマーにカーボン等の導電性粒子を含有させたいわゆるポリマーPTCを用いてもよい。
【0031】
ケース7を構成する材料は、荷重たわみ温度が120℃以上、320℃以下、かつ、融点と荷重たわみ温度の差が15℃以上である熱可塑性樹脂組成物により成形されている。熱可塑性樹脂組成物に用いられる樹脂としては、難燃性のポリアミド、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の熱可塑性樹脂が好ましい。ここで、電子機器筐体が高温に曝される用途に用いられる等、耐熱性が必要とされる場合は、熱可塑性樹脂組成物の荷重たわみ温度が200℃以上であることが好ましく、ケースの第1突出部を変形させてカバー片を固定する工程において、カバー片の変色を抑制することができる観点では、荷重たわみ温度は300℃以下であることが好ましい。また、ケース全体の変形を抑制しつつ、第1突出部のみを変形させることが容易となる点で、融点と荷重たわみ温度の差は50℃以上であることが好ましい。一方、電子機器筐体が鉛フリーのリフローハンダ工程に供される場合のように、特に高い耐熱性が必要とされる場合は、融点と荷重たわみ温度がともに300℃以上であることが好ましい。熱可塑性樹脂組成物の融点や荷重たわみ温度は、用いる樹脂の種類及び充填剤の種類と量によって適宜調整することができる。その他、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、核剤、滑剤、離型剤等、用途に応じ必要とされる特性を付与するために、熱可塑性樹脂組成物に通常用いられる添加剤を添加してもよい。なお、荷重たわみ温度が高い熱可塑性樹脂組成物を使用する際は、レーザー光を吸収する着色剤(カーボンブラック等)を添加し、後述する第4工程において、第1突出部にもレーザー光が当たるように照射すれば、レーザー光による第1突出部の加熱が促進されるため、カバー片を変色させない程度の加熱条件でも第1突出部を変形させやすくなるため好ましい。上述した樹脂と同等以上の特性が得られるのであれば、樹脂以外の材料を適用してもよい。
【0032】
ケース7には、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等を収容するための収容凹部73が形成されている。収容凹部73は、可動片4を収容するための開口73a,73b、可動片4及び熱応動素子5を収容するための開口73c、並びに、PTCサーミスター6を収容するための開口73d等を有している。なお、ケース7に組み込まれた可動片4及び熱応動素子5端縁は、収容凹部73の内部に形成されている枠によってそれぞれ当接され、熱応動素子5の逆反り時に案内される。
【0033】
カバー片8は、上述した銅等を主成分とする金属板又はステンレス鋼等の金属板をプレス加工することにより形成されている。カバー片8は、矩形状の平板状に形成され、外表面81と、端縁82とを有する。外表面81は、カバー片8の表面側に形成されている。端縁82は、カバー片8の周縁に形成されている。カバー片8は、
図2及び
図3に示すように、可動片4の表面と適宜当接し、可動片4の動きを規制すると共に、筐体としてのケース7の剛性・強度を高めつつブレーカー1の小型化に貢献する。
【0034】
図1に示すように、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等を収容したケース7の開口73a、73b、73c等を塞ぐように、カバー片8が、ケース7に装着される。
【0035】
図2は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の動作を示している。通常の充電又は放電状態においては、熱応動素子5は初期形状を維持し(逆反り前であり)、固定接点21と可動接点41は接触し、可動片4の弾性部43等を通じてブレーカー1の両端子22、32間は導通している。可動片4の弾性部43と熱応動素子5とは接触しており、可動片4、熱応動素子5、PTCサーミスター6及び固定片2は、回路として導通している。しかし、PTCサーミスター6の抵抗は、可動片4の抵抗に比べて圧倒的に大きいため、PTCサーミスター6を流れる電流は、固定接点21及び可動接点41を流れる量に比して実質的に無視することができる程度である。
【0036】
図3は、過充電状態又は異常時等におけるブレーカー1の動作を示している。過充電又は異常により高温状態となると、動作温度に達した熱応動素子5は逆反りし、可動片4の弾性部43が押し上げられて固定接点21と可動接点41とが離隔する。このとき、固定接点21と可動接点41の間を流れていた電流は遮断され、僅かな漏れ電流が熱応動素子5及びPTCサーミスター6を通して流れることとなる。PTCサーミスター6は、このような漏れ電流の流れる限り発熱を続け、熱応動素子5を逆反り状態に維持させつつ抵抗値を激増させるので、電流は固定接点21と可動接点41の間の経路を流れず、上述の僅かな漏れ電流のみが存在する(自己保持回路を構成する)。この漏れ電流は安全装置の他の機能に充てることができる。
【0037】
過充電状態を解除し、又は異常状態を解消すると、PTCサーミスター6の発熱も収まり、熱応動素子5は復帰温度に戻り、元の初期形状に復元する。そして、可動片4の弾性部43の弾性力によって可動接点41と固定接点21とは再び接触し、回路は遮断状態を解かれ、
図2に示す導通状態に復帰する。
【0038】
図4は、ケース7を示している。また、
図5は、完成したブレーカー1の構成を示している。ケース7は、カバー片8が載置される端面72と、可動片4及び熱応動素子5を収容するための収容凹部73と、カバー片8の端縁82が嵌合される第1突出部74とを有する。
【0039】
端面72は、カバー片8の裏面に対応する形状に形成されている。例えば、本実施形態の端面72は、カバー片8の裏面の形状である平面に対応するように、平面状に形成されている。
【0040】
収容凹部73は、端面72から陥没し、可動片4及び熱応動素子5が収容される空間を形成する。
【0041】
第1突出部74は、端面72から突出して形成されている。本実施形態では、第1突出部74は、端面72から垂直に起立する。第1突出部74は、カバー片8の端縁82と嵌合し、かしめによってカバー片8を端面72上に固定する。
【0042】
図5に示されるように、カバー片8は、ケース7の端面72に直接的に載置されるので、ブレーカー1の厚さが抑制され、ブレーカー1の小型化を図ることが可能となり、電気機器等への実装上の自由度が高められる。また、カバー片8は、端面72から突出する第1突出部74と嵌合され、かしめられる。これにより、カバー片8と第1突出部74とが強固に接合され、ケース7とカバー片8とによって十分な剛性・強度が得られる。
【0043】
カバー片8がケース7に装着されると、外表面81の大部分は、ケース7から露出する。これにより、特に熱応動素子5と平面視で重複するブレーカー1の中央領域で、ブレーカー1の低背化を図ることができる。そして、第1突出部74は、外表面81より突出して形成されている。これにより、何らかの事情により、導体がブレーカー1の上方に接近し、短絡の危険が生ずる場合であっても、カバー片8の外表面81と固定片2の端子22及び端子片3の32との間に位置する第1突出部74が壁となって導体をブロックする。このため、外表面81より突出する第1突出部74によって、カバー片8と固定片2及び/又は端子片3との短絡が効果的に抑制される。
【0044】
ケース7は、端面72又は端面72の延長面と交わる2対の外側面75を有する。各外側面75は、平面状に形成され、ケース7の長手方向又は短手方向に対向して配置されている。固定片2及び端子片3は、ケース7の長手方向に対向して配された外側面75から突出し、ケース7から露出する。
【0045】
各外側面75は、ブレーカー1を電気機器に実装する際の位置決めに用いられる。ブレーカー1の小型化が進展する場合、平面状の外側面75は、位置決め手段として好適である。本実施形態では、端面72は、第1突出部74の外側領域まで延出され、外側面75と直交している。従って、第1突出部74は、外側面75よりもケース7の内方に配されている。端面72が第1突出部74の内側領域のみに形成されている形態であってもよい。この場合、第1突出部74の外側面とケース7の外側面75とが、同一平面上に設けられてもよい。
【0046】
上述のごとくカバー片8と第1突出部74とのかしめを伴う構成にあっては、第1突出部74内に応力が生じ、第1突出部74が僅かながら外方に肥大する。このため、電気機器に実装する際の位置決め手段として第1突出部74が含まれる構成のブレーカーにあっては、第1突出部74が外側面75よりもケース7の外方に肥大すると、ブレーカーの位置決め精度に影響を及ぼすおそれがある。
【0047】
しかしながら、本実施形態では、第1突出部74は、外側面75よりもケース7の内方に配されているので、ブレーカー1の位置決め手段として外側面75を適用する場合、第1突出部74の肥大の影響を受けることなくブレーカー1を正確に位置決めすることが可能となる。
【0048】
図5に示されるように、ケース7は、第1突出部74から平面視でケース7の内方に突出する第2突出部76をさらに有する。第2突出部76によって、第1突出部74ひいてはケース7の剛性・強度が高められる。第2突出部76は、外表面81の周縁部と係合する。端面72、第1突出部74及び第2突出部76によって、カバー片8の端縁82を囲むように断面がU字状の嵌合部が形成され、カバー片8が嵌合される。これにより、ケース7とカバー片8との接合強度がより一層高められる。
【0049】
第1突出部74の先端部74aは、第2突出部76よりも端面72から上方に離れて突出している。このような第1突出部74によって、カバー片8と固定片2及び/又は端子片3との短絡がより一層効果的に抑制される。
【0050】
第1突出部74は、カバー片8の全周に亘って継ぎ目なく連続的に形成されている。そして、第1突出部74の端面72からの突出し量は、カバー片8の全周に亘って均一に形成されていることが望ましい。これにより、ケース7とカバー片8との接合強度がより一層高められる。また、ケース7とカバー片8との密閉性が高められ、ブレーカー1の外部から内部の収容凹部73等への水蒸気等の侵入が効果的に抑制されうる。
【0051】
さらに、本実施形態では、第2突出部76は、カバー片8の全周に亘って継ぎ目なく連続的に形成されている。これにより、ケース7とカバー片8との接合強度がより一層高められる。また、ケース7とカバー片8との密閉性が高められ、ブレーカー1の外部から内部の収容凹部73等への水蒸気等の侵入が効果的に抑制されうる。
【0052】
カバー片8は、可動片4よりも弾性率が大きい材料によって構成されることが望ましい。このような形態は、例えば、可動片4が銅等を主成分とする金属板によって構成され、カバー片8がステンレス鋼等の金属板によって構成されることにより、容易に実現されうる。これにより、ブレーカー1の小型化を図りつつ、ケース7が効果的に補強されうる。
【0053】
以下、ブレーカー1の製造方法について説明する。ブレーカー1の製造方法は、第1工程乃至第4工程を含む。
【0054】
第1工程では、
図1に示されるように、予め固定片2及び端子片3がインサート成形されているケース7の収容凹部73に、PTCサーミスター6、熱応動素子5及び可動片4が順次収容される。そして、可動片4が端子片3に溶接によって接合される。
【0055】
図6は、第2工程乃至第4工程を示している。
図6(a)に示されるように、第2工程では、ケース7の端面72にカバー片8が装着される。これにより、カバー片8の端縁82が第1突出部74と嵌合される。
【0056】
図6(b)に示されるように、第3工程では、押圧手段100が第1突出部74に載置され、押圧手段100によって第1突出部74が端面72の側に力Fで押圧される。押圧手段100は、例えば、ガラス板等のレーザー光を透過する材料によって構成されている。押圧手段100によって押圧する領域は、第1突出部74の全周が望ましいが、第1突出部74の一部であってもよい。
【0057】
図6(c)に示されるように、第4工程では、第1突出部74及びカバー片8が加熱される。この第4工程では、上記第3工程での力Fは維持される。本実施形態では、第1突出部74及びカバー片8にレーザー光Lが照射されることにより、第1突出部74及びカバー片8が加熱される。加熱の手法は、レーザー光Lの照射に限定されない。例えば、熱風の吹き付けによる加熱、赤外線の照射による加熱、又は押圧手段100等からの伝熱による加熱等であってもよい。また、カバー片8に高電圧を印加してそのジュール熱を用いてカバー片8が加熱されてもよい。加熱する領域は、第1突出部74の全周及びその近傍のカバー片8が望ましいが、第1突出部74の一部及びその近傍のカバー片8であってもよい。
【0058】
第4工程では、レーザー光Lを投射するレーザー投射装置(図示せず)が用いられる。レーザー光Lの照射によって第1突出部74のうち金属からなるカバー片8と当接する内側部分で温度上昇が促進され、第1突出部74の内側部分の樹脂が外側部分の樹脂よりも先に溶融する。このとき、押圧手段100によって第1突出部74が力Fで押圧されているので、溶融した樹脂が内方に移動してカバー片8に乗り上げ、第2突出部76が形成される。そして、端面72、第1突出部74及び第2突出部76は、カバー片8の端縁82及びその近傍領域を囲んで密着する。第1突出部74からの第2突出部76の突出し量は、カバー片8の全周に亘って均一であることが望ましい。このような第2突出部76は、カバー片8の全周に亘って第1突出部74の内側部分の樹脂が均一に溶融するように、第1突出部74及びカバー片8を加熱することにより実現される。例えば、第2突出部76をカバー片8の全周に亘って継ぎ目なく連続的かつ均一に形成するためには、レーザー光Lは、第1突出部74及びカバー片8の照射領域に、走査させることなく、同時に照射することが望ましい。
【0059】
なお、レーザー光Lを第1突出部74に直接照射して、第1突出部74全体を均一に加熱することで樹脂を溶融させようとする場合、レーザー光Lに対する樹脂の透過率や吸収率によって、加熱されやすさが変わるため、それを考慮した樹脂の選択が必要となるが、本実施形態では上述の通り、第1突出部74は、カバー片8からの伝熱によって加熱されるため、レーザー光Lの透過率や吸収率によらず、先に述べた融点と荷重たわみ温度を満たす樹脂を幅広く適用することができる。
【0060】
また、第1突出部74全体を加熱する場合、溶融した樹脂がカバー片8に乗り上げて第2突出部76を形成する際、同様に第1突出部74の外側にも樹脂がはみ出すように変形し、第1突出部74が外側面75よりもケース7の外側に肥大してしまうと、ブレーカーの位置決め精度に影響を及ぼすおそれがあるが、本実施形態では、第1突出部74の内側部分の樹脂が外側部分の樹脂よりも先に溶融するため、第1突出部74の外側部分の変形を抑えつつ、第2突出部76を形成することができる。但し、本実施形態はレーザー光Lをカバー片8に加え第1突出部74全体にも照射する態様を排除するものではない。
【0061】
第1突出部74からケース7の内方に第2突出部76を形成するにあたっては、レーザー光Lの照射領域は、少なくとも第1突出部74及びカバー片8のいずれかであればよい。また、第2突出部76の第1突出部74からの突出し量は、レーザー光Lの照射強度及び照射時間等により調整することができる。
【0062】
図6(b)及び(c)に示されるように、第4工程での第2突出部76の突出しに伴い、第1突出部74の端面72からの突出し量は小さくなる。従って、第3工程以前の第1突出部74の端面72からの突出し量は、第4工程での第2突出部76の突出しを考慮して定められるべきである。そして、第3工程の前後において、第1突出部74の端面72からの突出し量は、カバー片8の全周に亘って均一であることが望ましい。なお、第3工程は、第4工程と同時又は第4工程の開始後、第4工程と並行して実施されてもよい。
【0063】
第2突出部76は、第2工程でケース7の端面72にカバー片8が装着される前に、第1突出部74に予め形成されていてもよい。例えば、ケース7の成形する際に、第2突出部76が第1突出部74に形成されていてもよい。この場合、第3工程及び第4工程は、省略されてもよい。本実施形態では、第3工程及び第4工程を経ることにより、第2突出部76の突出し量は十分に確保され、ケース7とカバー片8との接合強度及び密閉性が高められる。
【0064】
図7は、ブレーカー1の変形例であるブレーカー1Aを示している。ブレーカー1Aは、ケース7に第3突出部77をさらに有する点で、ブレーカー1とは異なる。ブレーカー1Aのうち、以下で説明されていない部分については、上述したブレーカー1の構成が適宜採用されうる。
【0065】
第3突出部77は、第1突出部74から平面視でケース7の外方、すなわち、第2突出部76とは反対側に突出する。第3突出部77によって、第1突出部74の剛性・強度がより一層高められる。第3突出部77は、カバー片8の全周に亘って継ぎ目なく連続的かつ均一に形成されることが望ましい。
【0066】
図7に示される第3突出部77は、上記第4工程でのレーザー光Lの照射強度及び照射時間等を調整することにより形成されうる。
【0067】
本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも、固定接点21と、可動接点41を有し、この可動接点41を固定接点21に押圧して接触させる可動片4と、温度変化に伴って変形することにより可動接点41が固定接点21から離隔するように可動片4を作動させる熱応動素子5と、固定接点21、可動片4及び熱応動素子5を収容するケース7と、ケース7に装着されるカバー片8とを備えたブレーカー1等において、ケース7は、カバー片8が載置されている端面72と、端面72から陥没し可動片4及び熱応動素子5が収容される空間を形成する収容凹部73と、端面72から突出してカバー片8が嵌合される第1突出部74とを有していればよい。
【0068】
また、可動片4をバイメタル又はトリメタル等の積層金属によって形成することにより、可動片4と熱応動素子5を一体的に形成する構成であってもよい。この場合、ブレーカーの構成が簡素化されて、小型化を図ることができる。
【0069】
また、カバー片8の形状は、矩形に限られず、円形又は楕円等の曲線を含む形状であってもよい。この場合、第1突出部74等の形状も、カバー片8に対応して変更される。さらに、カバー片8が、端縁82の一部において第1突出部74と接合される形態であってもよい。この場合、第2突出部76等が部分的に形成される。
【0070】
本実施形態では、PTCサーミスター6による自己保持回路を有しているが、このような構成を省いた形態であっても適用可能であり、ケース7の剛性・強度を損なうことなくブレーカー1等のさらなる小型化を図ることができる。
【0071】
カバー片8を構成する材料は、金属に限られない。例えば、ケース7を構成する樹脂よりもレーザー光の吸収率が低い又は融点の高い熱可塑性樹脂によってカバー片8が構成されていてもよい。
【0072】
また、固定片2、端子片3、可動片4、熱応動素子5、PTCサーミスター6、ケース7及びカバー片8等の形状も、
図1等に示したものに限られず、適宜変更可能である。
【0073】
また、本発明は、特開2014−235913号公報の各図に示されるような、可動片4がカバー片8に接合されている形態にも適用可能である。この場合、端子片3は不要となり、カバー片8の外表面81に端子が形成されていてもよい。
【0074】
また、本発明のブレーカー1は、2次電池パック、電気機器用の安全回路等にも広く適用することができる。
図8は2次電池パック500を示す。2次電池パック500は、2次電池501と、2次電池501の出力端回路中に設けたブレーカー1とを備える。
図9は電気機器用の安全回路502を示す。安全回路502は2次電池501の出力回路中に直列にブレーカー1を備えている。ブレーカー1を備えた2次電池パック500又は安全回路502によれば、良好な電流遮断動作を確保することができる2次電池パック500又は安全回路502を製造することができる。
【0075】
図10は、本発明のブレーカー1のケース7及びカバー片8と同等の構成を有する樹脂成形体600の一実施形態を示している。樹脂成形体600のうち、以下で説明されていない部分については、上述したブレーカー1の構成が適宜採用され、同等の作用効果が得られる。
【0076】
樹脂成形体600は、内部に空間70を有するケース7Bと、ケース7Bに装着されるカバー片8Bとを備える。
【0077】
ケース7Bは、熱可塑性樹脂によって構成される。カバー片8Bは、金属によって構成されることが望ましい。
図6に示される工程と同等の工程でケース7Bとカバー片8Bとが接合される場合、ケース7Bを構成する樹脂よりもレーザー光の吸収率が低い又は融点の高い熱可塑性樹脂によってカバー片8Bが構成されていてもよい。
【0078】
ケース7A及び7Bは、熱可塑性樹脂に限られことなく熱硬化性樹脂によって形成されていてもよい。この場合、第4工程で、第1突出部74がガラス点移転の近傍まで加熱されて軟化していれば、熱可塑性樹脂と同様の接合強度及び密閉性が得られる。熱可塑性樹脂においては、実施例に示されるものに限定されず、レーザー光Lの波数、照射強度、透過率、吸収率等に応じて、所要のケース7とカバー片8との接合強度等、筐体の使用状況に応じて、荷重たわみ温度や融点等、実施例の制約を緩和することも可能である 。
【0079】
樹脂成形体600は、ブレーカー1の筐体の他、例えば、コネクタ、リレー又はスイッチ等の各種部品の筐体にも適用可能である。また、樹脂成形体600のケース7Bは、内部に空間70が設けられている形態に限られず、カバー片8が設置された筐体の完成時に空間70が設けられていない形態にも適用可能である。また、カバー片8Bは平面状の形態に限られない。
【0080】
また、ケース7に収容される電子機器部品の形態は、上記ブレーカーの他にも、平面状でケースの収容凹部に塗布又は印刷等が成されたもの、予めケースの一部として成形、埋設、接着又は嵌合等により備えられたもの等、様々なものが考えられる。電子機器部品が収容される時点は、カバー片8がケース7に設置される前に限らず、筐体の完成と同時または完成後に事後的に行うことも可能である。
【0081】
ケース7の態様は、上記のようにケース7の全周に亘ってカバー片8を嵌合するものに限られず、ケース7の外側面75の一部において第1突出部74が設けられない区間がある形態も可能である。また、ケース7の開口73a,73b,73cの全てを密封することは必須ではない。ケース7の上面の一部若しくは全部、底面の一部若しくは全部又は側面の一部が開口となっている形態も取り得る。
【0082】
以下に、複数種類の樹脂材料を用いて、
図11に示すケース7を試作すると共に、試作したケース7にステンレス鋼製のカバー片8を嵌合させ、レーザー光を照射して第1突出部74を変形させ、カバー片8の固定状態を観察したので、その結果を示す。
【実施例1】
【0083】
樹脂組成物1:融点355℃の液晶ポリマーに、長さ70μm、太さ10μmのガラス繊維を10質量%、タルクを30質量%添加し溶融混練した樹脂組成物(融点355℃、荷重たわみ温度235℃、融点と荷重たわみ温度の差120℃)
【実施例2】
【0084】
樹脂組成物2:融点355℃の液晶ポリマーに、長さ70μm、太さ10μmのガラス繊維を40質量%添加し溶融混練した樹脂組成物(融点355℃、荷重たわみ温度250℃、融点と荷重たわみ温度の差105℃)
【実施例3】
【0085】
樹脂組成物3:融点355℃の液晶ポリマーに長さ3mm、太さ10μmのガラス繊維を40質量%添加し溶融混練した樹脂組成物(融点355℃、荷重たわみ温度280℃、融点と荷重たわみ温度の差70℃)
【実施例4】
【0086】
樹脂組成物4:融点350℃の液晶ポリマーに長さ70μm、太さ10μmのガラス繊維を40質量%添加し溶融混練した樹脂組成物(融点350℃、荷重たわみ温度310℃、融点と荷重たわみ温度の差40℃)
【0087】
樹脂組成物5:融点350℃の液晶ポリマーに長さ3mm、太さ10μmのガラス繊維を35質量%添加し溶融混練した樹脂組成物(融点350℃、荷重たわみ温度340℃、融点と荷重たわみ温度の差10℃)
【0088】
図11は、上記各樹脂組成物を射出成形して得られたケース7及びカバー片8の形状及び各部の寸法を示す。このケース7は、縦5.4mm×横3.2mm×高さ0.8mmで、底面の厚さ0.2mm、側壁の厚さ0.3mmで、天面が開口となる略直方体状の箱体であって、側壁の頂上部の全周に亘って、高さ0.25mm、厚さ0.1mmの矩形の第1突出部74が形成されている。このケース7の第1突出部74の内周側に、縦5.0mm×横2.8mm×厚さ0.07mmのステンレス鋼製のカバー片8を嵌合させ、浜松ホトニクス株式会社製LD−HEATER L10060を用いて、カバー片8から第1突出部74にかけて、出力35Wにて1秒間レーザー光を照射して加熱し、ケース7の第1突出部74を変形させてカバー片8を固定した後、さらにエポキシ樹脂で包埋し、長手方向の略中心部で切断し、第1突出部74の変形状態及びそれによるカバー片8の固定状態を観察した。その結果を
図12から
図17に示す。
【0089】
図12から
図15に示すように、実施例1〜4における樹脂組成物1〜4に関しては、融点と荷重たわみ温度の差が大きいほど、第1突出部74の変形が大きく、カバー片8が十分固定されていることが確認された。一方、
図16に示すように、比較例1における樹脂組成物5のように融点と荷重たわみ温度の差が小さい場合、第1突出部74が十分変形しておらず、カバー片8が固定されていない。ここで、比較例1における樹脂組成物5に関しては、出力を40Wに上げて1秒間レーザー光を照射しており、
図17の右側に示すように、カバー片8が熱で変色するほどの条件で加熱したにもかかわらず、カバー片8が固定されていなかった。なお、
図17の左側は、比較のために、出力35Wにて1秒間レーザー光を照射したときのカバー片8を示す。
【0090】
なお、融点350℃の液晶ポリマーに長さ70μm、太さ10μmのガラス繊維を40質量%、カーボンブラックを1質量%添加し溶融混練した樹脂組成物6(融点350℃、荷重たわみ温度310℃、融点と荷重たわみ温度の差40℃)を射出成形して得られたケース7用いて、カバー片8及び第1突出部74に出力30Wにて1秒間レーザー光を照射し、上記と同様にカバー片8の固定状態を観察した結果を実施例5として
図18に示す。無着色の樹脂組成物4(
図15)と比較して、融点と荷重たわみ温度は同じであるにもかかわらず、第1突出部74の変形が大きく、カバー片8がより強固に接合されていることが確認された。レーザー光を吸収する着色剤により、実施例4の第1突出部74の変形が実施例2(
図13)のそれと同程度に変わるまで、かしめ状態を大幅に改善することができる。この実施例5に見られるように、かしめの対象となる樹脂組成物のレーザー光の吸収しやすさを調整することにより、融点、荷重たわみ温度等の温度特性の条件は緩和することが可能である。