特許第6703025号(P6703025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703025
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】リン化合物を含むポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20200525BHJP
   C08G 18/18 20060101ALI20200525BHJP
   C08G 18/22 20060101ALI20200525BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20200525BHJP
【FI】
   C08G18/00 L
   C08G18/18
   C08G18/00 H
   C08G18/22
   C08G101:00
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-37423(P2018-37423)
(22)【出願日】2018年3月2日
(62)【分割の表示】特願2015-523493(P2015-523493)の分割
【原出願日】2013年7月16日
(65)【公開番号】特開2018-111826(P2018-111826A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2018年3月8日
(31)【優先権主張番号】12178308.8
(32)【優先日】2012年7月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】オテロ マルチネツ,イラン
(72)【発明者】
【氏名】ハディク,ウド
(72)【発明者】
【氏名】マイアー,アンドレ
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/101700(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00
C08G 18/18
C08G 18/22
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリイソシアネート、
(b)イソシアネートに対して反応性の基を有するポリマー化合物、
(c)イソシアネートに対して反応性の基(複数可)と一緒に、1個または複数の第三級脂肪族アミノ基を有する組み込み可能なアミン触媒を含む触媒であって、少なくとも1個の第三級アミノ基は、メチル部分およびエチル部分から相互に独立に選択される2つの部分を有し、かつまた別の有機部分を有する触媒、
(d)リン酸エステル、および/またはポリホスフェートであって、成分(a)〜(f)の全質量に対する成分(d)の割合は、3質量%未満であるリン酸エステル、および/またはポリホスフェート、
(e)水を含む発泡剤、ならびに任意選択で
(f)連鎖延長剤および/または架橋剤、ならびに
(g)助剤および/または添加剤
を混合して反応混合物を得、反応混合物の反応を完了させてポリウレタンフォームを得ることによって得ることができるポリウレタンフォームであって、
リン酸エステルは、分子内に少なくとも2個のリン酸基を含み、これらは多官能性部分を介した結合を有し、該多官能性部分は、直鎖状または分岐状でよく、及び窒素、酸素、フッ素、塩素、および臭素からなる群から選択される1個もしくは複数の原子を含み、
リホスフェートは、一般式
−[P(O)(OR‘)−O]
を有し、式中、nは、2〜10000の整数であり、R‘は、アルカリ金属カチオンまたはアンモニウムカチオンである、ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
触媒(c)として組み込み可能なアミン触媒に加えて、単独で有機金属触媒が存在することを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
リン酸エステルが、イソシアネート基に対して反応性の基を含む、請求項1又は2に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】
水それ自体が、発泡剤(e)として使用される、請求項1〜3の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項5】
成分(d)が、分子中に少なくとも2個のリン酸基を有する化合物を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項6】
100〜850g/Lの平均密度を有するポリウレタンフォームである、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項7】
成形されたポリウレタンフォームである、請求項6に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項8】
成形されたポリウレタンフォームの平均密度が、150〜500g/Lである、請求項7に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項9】
自動車の内装パーツである、請求項1から8のいずれか一項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項10】
自動車の内装パーツが、ステアリングホイール、ダッシュボード、内装ドア外装材、ヘッドレスト、またはコントロールボタンである、請求項9に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項11】
さらなる難燃剤を含まない、請求項1から10のいずれか一項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項12】
成分(d)が、2,2−ビス(クロロメチル)トリメチレンビス(ビス(2−クロロエチル)ホスフェート)を含むことを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項13】
a)ポリイソシアネート、
b)イソシアネートに対して反応性の基を有するポリマー化合物、
c)イソシアネートに対して反応性の基(複数可)と一緒に、1個または複数の第三級脂肪族アミノ基を有する組み込み可能なアミン触媒を含む触媒であって、少なくとも1個の第三級アミノ基は、メチル部分およびエチル部分から相互に独立に選択される2つの部分を有し、かつまた別の有機部分を有する触媒、
d)リン酸エステル、および/またはポリホスフェートであって、成分(a)〜(f)の全質量に対する成分(d)の割合は、3質量%未満であるリン酸エステル、および/またはポリホスフェート、
e)水を含む発泡剤、ならびに任意選択で
f)連鎖延長剤および/または架橋剤、ならびに
g)助剤および/または添加剤
を混合して反応混合物を得、反応混合物の反応を完了させてポリウレタンフォームを得ることによってポリウレタンフォームを製造する方法であって、
リン酸エステルは、分子内に少なくとも2個のリン酸基を含み、これらは多官能性部分を介した結合を有し、該多官能性部分は、直鎖状または分岐状でよく、及び窒素、酸素、フッ素、塩素、および臭素からなる群から選択される1個もしくは複数の原子を含み、
リホスフェートは、一般式
−[P(O)(OR‘)−O]
を有し、式中、nは、2〜10000の整数であり、R‘は、アルカリ金属カチオンまたはアンモニウムカチオンである、方法。
【請求項14】
触媒(c)として組み込み可能なアミン触媒に加えて、単独で有機金属触媒が存在することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
自動車内装において、請求項1から12のいずれか一項に記載のポリウレタンフォームを使用する方法。
【請求項16】
(a)ポリイソシアネート、
(b)イソシアネートに対して反応性の基を有するポリマー化合物、
(c)イソシアネートに対して反応性の基(複数可)と一緒に、1個または複数の第三級脂肪族アミノ基を有する組み込み可能なアミン触媒を含む触媒であって、少なくとも1個の第三級アミノ基は、メチル部分およびエチル部分から相互に独立に選択される2つの部分を有し、かつまた別の有機部分を有する触媒、
(d)リン酸エステル、ポリホスフェート、および/またはホスホン酸エステルであって、成分(a)〜(f)の全質量に対する成分(d)の割合は、3質量%未満であるリン酸エステル、ポリホスフェート、および/またはホスホン酸エステル、
(e)水を含む発泡剤、ならびに任意選択で
(f)連鎖延長剤および/または架橋剤、ならびに
(g)助剤および/または添加剤
を混合して反応混合物を得、反応混合物の反応を完了させてポリウレタンフォームを得ることによって得ることができるポリウレタンフォームであって、
リン酸エステルは、分子内に少なくとも2個のリン酸基を含み、これらは多官能性部分を介した結合を有し、該多官能性部分は、直鎖状または分岐状でよく、及び窒素、酸素、フッ素、塩素、および臭素からなる群から選択される1個もしくは複数の原子を含み、
リホスフェートは、一般式
−[P(O)(OR‘)−O]
を有し、式中、nは、2〜10000の整数であり、R‘は、アルカリ金属カチオンまたはアンモニウムカチオンであり、
ホスホン酸エステルは、一般式
(R)(R−O)−P=O
を有し、式中、部分Rは、相互に独立に、窒素、酸素、フッ素、塩素、および臭素からなる群から選択される1個もしくは複数の原子を含む有機部分であり、部分Rは、水素、または1〜10個の炭素原子を有する芳香族、脂肪族、もしくは脂環式部分である、ポリウレタンフォーム。
【請求項17】
触媒(c)として組み込み可能なアミン触媒に加えて、単独で有機金属触媒が存在することを特徴とする請求項16に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項18】
成分(d)がホスホン酸エステルを含むことを特徴とする請求項16又は17に記載のポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)ポリイソシアネート、(b)イソシアネートに対して反応性の基を有するポリマー化合物、(c)組み込み可能なアミン触媒を含む触媒、(d)リン酸エステル、ポリホスフェート、ホスホン酸エステル、および/または亜リン酸エステル、(e)水を含む発泡剤、ならびに任意選択で(f)連鎖延長剤および/または架橋剤、ならびに(h)助剤および/または添加剤を混合して反応混合物を得、反応混合物の反応を完了させてポリウレタンを得ることによって得ることができるポリウレタンフォームであって、
リン酸エステルは、一般式、
(R−O)−P=O
を有し、式中、遊離部分Rは、相互に独立に、1個もしくは複数のフェニル基、1個もしくは複数のリン酸基、またはこれらのエステル、ならびに/または窒素、酸素、フッ素、塩素、および臭素からなる群から選択される1個もしくは複数の原子を含む有機部分であり、
ポリホスフェートは、一般式
−[P(O)(OR‘)−O]
を有し、式中、nは、整数2〜10000であり、R‘は、アルカリ金属カチオンまたはアンモニウムカチオンであり、
ホスホン酸エステルは、一般式
(R)(R−O)−P=O
を有し、式中、部分Rは、相互に独立に、窒素、酸素、フッ素、塩素、および臭素からなる群から選択される1個もしくは複数の原子を含む有機部分であり、部分Rは、水素、または1〜10個の炭素原子を有する芳香族、脂肪族、もしくは脂環式部分であり、さらなるヘテロ原子を含むことができ、
亜リン酸エステルは、一般式
(R−O)−P
を有し、式中、部分Rは、相互に独立に、窒素、酸素、フッ素、塩素、および臭素からなる群から選択される1個もしくは複数の原子を含む有機部分である、ポリウレタンフォームに関する。本発明はさらに、これらのポリウレタンフォームを製造する方法、および自動車内装におけるこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンの特徴は、多種多様の潜在的用途である。これらの材料は、特に、自動車の構築において、例えば、スポイラー、屋根の構成部品、またはスプリングの構成部品として自動車の外部シェルにおいて、およびまたルーフ外装材、カーペットのためのフォームバッキング、ドア外装材、ステアリングホイール、コントロールボタン、および座席クッション材料として自動車の内部外装材において使用されることが多い。自動車セクター、特に、自動車内装において使用されるポリウレタンは、機械的性質に対する、およびまた耐老化性に対する厳しい要求基準によって制約される。重要な特性、例えば、消音、クッション特性、または制動特性を、自動車の耐用年数に亘り、例えば、事故の機械的衝撃の事象において保持しなくてはならない。
【0003】
自動車において一般に存在する条件は極端なものであり、ポリウレタンの老化を促進する。マイナス10℃以下、およびまた60℃超、ならびに日射の存在下でそれどころか100℃超の領域の温度に達する。相対湿度は、100%までであり得る。これは、コンパクトポリウレタンと比較したときに相当に増加した表面積を有するポリウレタンフォームに特にあてはまる。
【0004】
別の要求基準は、温度および湿度の前記極限条件に加えて、自動車内装において使用されるポリウレタンによってもたらされる揮発性化合物の排出の最小化である。これらは大部分が揮発性アミン触媒の使用に由来する。排出を低減させるために、前記揮発性アミン触媒は、完全にまたはある程度、組み込み可能な触媒によって置き換えられている。これらの化合物はポリウレタン反応を触媒するが、同時にまたイソシアネート基に対して反応性の基を有し、したがって、触媒はポリウレタン中に確実に組み込まれる。しかし、前記組み込み可能な触媒は、特に、熱老化または湿性の熱老化後、すなわち、自動車内装においてしばしば起こり得るタイプの極限条件下で、結果として生じたポリウレタンの機械的性質を概ね損なう。
【0005】
ポリウレタンにおける難燃剤の使用は、公知である。WO2009065826は、インテグラルポリウレタンフォームを製造するための、とりわけ、ステアリングホイールとして使用するためのアルキルホスフェートの使用を記載している。WO2009065826は、リン酸エステルと組み合わせた組み込み可能な触媒の使用については記載していない。
【0006】
EP2374843はさらに、ポリウレタンでできているケーブルシースにおける耐老化性を改善させることにおけるリン酸エステルの使用について記載している。亜鉛化合物およびホウ素化合物は、この文献において、活性物質として特定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2009065826
【特許文献2】EP2374843
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
老化後の全体的機械的性質の実質的な障害を伴わずに、組み込み可能な触媒を含むポリウレタンフォームの老化特性を改善し、特に、熱老化特性および湿性の熱老化特性を改善することは本発明の1つの目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
目的は、(a)ポリイソシアネート、(b)イソシアネートに対して反応性の基を有するポリマー化合物、(c)組み込み可能なアミン触媒を含む触媒、(d)リン酸エステル、ポリホスフェート、ホスホン酸エステル、および/または亜リン酸エステル、ならびに任意選択で(e)水を含む発泡剤、(f)連鎖延長剤および/または架橋剤、ならびに(h)助剤および/または添加剤を混合して反応混合物を得、反応混合物の反応を完了させてポリウレタンを得ることによって得ることができるポリウレタンフォームであって、
リン酸エステルは、一般式
(R−O)−P=O
を有し、式中、3つの部分Rは、相互に独立に、1個もしくは複数のフェニル基、1個もしくは複数のリン酸基、またはこれらのエステル、ならびに/または窒素、酸素、フッ素、塩素、および臭素からなる群から選択される1個もしくは複数の原子を含む有機部分であり、
ポリホスフェートは、一般式
−[P(O)(OR‘)−O]
を有し、式中、nは、2〜10000の整数であり、R‘は、アルカリ金属カチオンまたはアンモニウムカチオンであり、
ホスホン酸エステルは、一般式
(R)(R−O)−P=O
を有し、式中、部分Rは、相互に独立に、窒素、酸素、フッ素、塩素、および臭素からなる群から選択される1個もしくは複数の原子を含む有機部分であり、部分Rは、水素、または1〜10個の炭素原子を有する芳香族、脂肪族、もしくは脂環式部分であり、
亜リン酸エステルは、一般式
(R−O)−P
を有し、式中、部分Rは、相互に独立に、窒素、酸素、フッ素、塩素、および臭素からなる群から選択される1個もしくは複数の原子を含む有機部分である、ポリウレタンフォームによって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリウレタンは、ポリウレタンフォーム、特に好ましくは成形されたポリウレタンフォームが関与する。特に、本発明のポリウレタンは、インテグラルフォーム、特に、形成工程の結果として、コアより高い密度を有する周辺ゾーンを有するDIN7726によるものが関与する。
【0011】
本発明のポリウレタンフォームの平均密度は、好ましくは100〜800g/L、特に好ましくは150〜500g/L、特に、200〜400g/Lである。前記フォームが表皮を有する場合、密度はここで、全フォーム成形体に亘って、すなわち、コアおよび周辺ゾーンに亘って平均した密度が関与する。
【0012】
本発明のインテグラルポリウレタンフォームを製造するために使用される有機および/または修飾ポリイソシアネート(a)は、主に従来技術からの脂肪族、脂環式、および芳香族の二官能性または多官能性イソシアネート(構成物a−1)、ならびにまたその任意の所望の混合物を含む。例は、メタンジフェニル4,4’−ジイソシアネート、メタンジフェニル2,4’−ジイソシアネート、モノマーのメタンジフェニルジイソシアネートの混合物、およびより多くの数の環を有するメタンジフェニルジイソシアネートの相同体(ポリマーMDI)、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリレン2,4−または2,6−ジイソシアネート(TDI)、および記述したイソシアネートの混合物である。
【0013】
4,4’−MDIを使用することが好ましい。好ましくは使用される4,4’−MDIは、0〜20質量%の2,4’−MDIおよび約20質量%までの少量のアロファネート−またはウレトンイミン−修飾ポリイソシアネートを含むことができる。少量のポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(ポリマーMDI)を使用することもまた可能である。前記高官能性ポリイソシアネートの総量は、使用されるイソシアネートの5質量%を超えるべきではない。
【0014】
ポリイソシアネート成分(a)は好ましくは、ポリイソシアネートプレポリマーの形態で使用される。プレポリマーを得るために、前記ポリイソシアネートプレポリマーは、例えば、30〜100℃、好ましくは約80℃の温度で、上記のポリイソシアネート(a−1)とポリオール(a−2)との反応によって得ることができる。本発明のプレポリマーは好ましくは、例えば、アジピン酸、またはポリエーテルから出発して、例えば、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドから出発して、ウレトンイミン−修飾MDIおよびポリエステルをベースとする市販のポリオールと一緒に4,4’−MDIを使用することによって製造される。
【0015】
ポリオール(a−2)は当業者に公知であり、例として、「Kunststoffhandbuch、Band 7、Polyurethane」[Plastics handbook、第7巻、Polyurethanes]、Carl Hanser Verlag、第3版、1993年、第3.1章に記載されている。ポリオール(a−2)として、b)に記載されており、かつイソシアネートに対して反応性の水素原子を有する高分子量化合物を使用することがここで好ましい。ポリエステルをポリオール(a−2)として使用することが特に好ましい。
【0016】
従来の連鎖延長剤または架橋剤を、イソシアネートプレポリマーの製造の間に記述したポリオールに任意選択で加える。これらの物質は、下記のc)で記載する。モノエチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールを連鎖延長剤として使用することが特に好ましい。
【0017】
イソシアネート基に対して反応性の少なくとも2個の水素原子を有する相対的高分子量化合物b)は、例として、ポリエーテロールまたはポリエステロールでよい。
【0018】
ポリエーテロールは、公知の工程によって、例えば、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属アルコラートを触媒として使用し、かつ2〜3個の反応性水素原子を含む少なくとも1個のスターター分子を添加したアニオン重合によって、あるいはルイス酸、例えば、五塩化アンチモンまたはフッ化ホウ素エーテラート、アルキレン部分において2〜4個の炭素原子を有する1つまたは複数のアルキレンオキシドを使用したカチオン重合によって製造される。適切なアルキレンオキシドの例は、テトラヒドロフラン、プロピレン1,3−オキシド、ブチレン1,2−または2,3−オキシド、および好ましくはエチレンオキシドおよびプロピレン1,2−オキシドである。使用することができる他の触媒は、DMC触媒として公知の多金属シアニド化合物である。アルキレンオキシドは、単独で、交互に継続して、または混合物の形態で使用することができる。プロピレン1,2−オキシドおよびエチレンオキシドの混合物の使用が好ましく、10〜50%の量のエチレンオキシドは、エチレンオキシドエンドブロック(「EOキャップ」)として使用され、その結果、結果として生じたポリオールは、70%超の第一級OH末端基を有する。
【0019】
使用することができるスターター分子は、水または二価もしくは三価アルコール、例えば、エチレングリコール、1,2−または1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセロール、またはトリメチロールプロパンである。
【0020】
ポリエーテルポリオール、好ましくはポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオールの官能性は好ましくは、2〜3であり、一方、これらのモル質量は、1000〜8000g/mol、好ましくは2000〜6000g/molである。
【0021】
ポリエステルポリオールは、例として、2〜12個の炭素原子を有する有機ジカルボン酸、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸から、および多価アルコール、好ましくは2〜12個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するジオールから製造することができる。使用することができるジカルボン酸の例は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸である。ジカルボン酸はここで、個々にまたは互いの混合物の形態で使用することができる。遊離ジカルボン酸の代わりに対応するジカルボン酸誘導体を使用することがまた可能であり、例は、1〜4個の炭素原子を有するアルコールのジカルボキシルエステル、またはジカルボン酸無水物である。例えば、20〜35質量部:35〜50質量部:20〜32質量部の定量的割合の、コハク酸、グルタル酸、およびアジピン酸のジカルボン酸混合物、特に、アジピン酸を使用することが好ましい。二価および多価アルコール、特に、ジオールの例は、エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2−および1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、グリセロール、およびトリメチロールプロパンである。エタンジオール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、および1,6−ヘキサンジオールを使用することが好ましい。使用することができる他の化合物は、ラクトン、例えば、□−カプロラクトン、またはヒドロキシカルボン酸、例えば、□−ヒドロキシカプロン酸に由来する、ポリエステルポリオールである。
【0022】
ポリエステルポリオールを製造するために、有機、例えば、芳香族および好ましくは脂肪族のポリカルボン酸および/またはその誘導体、ならびに多価アルコールは、触媒を伴わずに、または好ましくはエステル化触媒の存在下で、有利に不活性ガス、例えば、窒素、一酸化炭素、ヘリウム、アルゴンの雰囲気中で、とりわけ、150〜250℃、好ましくは180〜220℃の温度での溶融物中で、任意選択で減圧にて、所望の酸価に達するまで重縮合することができ、これは好ましくは10未満、特に好ましくは2未満である。好ましい一実施形態において、エステル化混合物は、酸価が80〜30、好ましくは40〜30であるまで、上記の温度で、大気圧で、次いで500mbar、好ましくは50〜150mbar未満の圧力で重縮合される。使用することができるエステル化触媒の例は、金属、金属酸化物、または金属塩の形態の、鉄触媒、カドミウム触媒、コバルト触媒、鉛触媒、亜鉛触媒、アンチモン触媒、マグネシウム触媒、チタン触媒、およびスズ触媒である。しかし、重縮合反応はまた、共沸蒸留による縮合水を除去するための賦形剤および/または添加溶剤、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、またはクロロベンゼンの存在下で、液相中で行うことができる。ポリエステルポリオールを製造するために、有機ポリカルボン酸および/またはその誘導体、ならびに多価アルコールは、1:1〜1.8、好ましくは1:1.05〜1.2のモル比で有利に重縮合される。
【0023】
結果として生じたポリエステルポリオールは好ましくは、2〜4、特に、2〜3の官能性、および450〜3000g/mol、好ましくは1000〜3000g/molの数平均モル質量を有する。
【0024】
イソシアネートに対して反応性の少なくとも2個の水素原子を有する相対的高分子量の他の適切な化合物b)は、ポリマー−修飾ポリオール、好ましくはポリマー−修飾ポリエステロールまたはポリエーテロール、特に好ましくはグラフトポリエーテロールまたはグラフトポリエステロール、特に、グラフトポリエーテロールである。これらは、5〜60質量%、好ましくは10〜55質量%、特に好ましくは30〜55質量%、特に、40〜50質量%の含量の好ましくは熱可塑性のポリマーを通常有するポリマーポリオールとして公知のものである。前記ポリマーポリエステロールは、例として、WO05/098763およびEP−A−250351に記載されており、通常、グラフトベースの役割を果たすポリエステロール中の適切なオレフィンモノマー、例えば、スチレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、および/またはアクリルアミドのフリーラジカル重合によって製造される。側鎖は一般に、伸長しているポリマー鎖からポリエステロールまたはポリエーテロールへのフリーラジカルの移動によって製造される。ポリマーポリオールは、グラフトコポリマーと一緒に、主に、未変化のポリエステロール、およびそれぞれ、ポリエーテロールに分散しているオレフィンのホモポリマーを含む。
【0025】
好ましい一実施形態において、使用されるモノマーは、アクリロニトリル、スチレン、アクリロニトリルおよびスチレンを含み、スチレンのもっぱらの使用が特に好ましい。モノマーは、任意選択でさらなるモノマー、マクロマー、モデレーターの存在下で、および連続相としてポリエステロールまたはポリエーテロール中のフリーラジカル開始剤、大部分がアゾ化合物またはペルオキシド化合物の使用を伴って重合される。この工程は、例として、DE111394、US3304273、US3383351、US3523093、DE1152536、およびDE1152537に記載されている。
【0026】
フリーラジカル重合反応の間に、マクロマーは、コポリマー鎖中に相伴って組み込まれる。これによって、ポリエステルブロック、およびそれぞれポリエーテルブロックを有し、かつポリアクリロニトリル−スチレンブロックを有するブロックコポリマーが得られ、これらは連続相と分散相との間の境界における相溶化剤として作用し、ポリマーポリエステロール粒子の凝集を抑制する。マクロマーの割合は通常、ポリマーポリオールを製造するために使用されるモノマーの全質量に対して1〜20質量%である。
【0027】
相対的高分子量の化合物b)がポリマーポリオールを含む場合、これは好ましくは、さらなるポリオール、例えば、ポリエーテロール、ポリエステロール、またはポリエーテロールおよびポリエステロールの混合物と一緒に存在する。ポリマーポリオールの割合は、成分(b)の全質量に対して5質量%超であることが特に好ましい。例として、ポリマーポリオールからなる量は、成分(b)の全質量に対して7〜90質量%、または11〜80質量%でよい。ポリマーポリオールは、ポリマーポリエステロールまたはポリマーポリエーテロールが関与することが特に好ましい。
【0028】
触媒c)は、ポリオール(b)、任意選択で連鎖延長剤および架橋剤(d)、ならびにまた化学的発泡剤(e)と、有機の任意選択で修飾したポリイソシアネート(a)との反応を大いに加速する。触媒(c)はここで、組み込み可能なアミン触媒を含む。これらは、イソシアネートに対して反応性であり、かつ好ましくはOH、NH、またはNH基である、少なくとも1個、好ましくは1〜8個、特に好ましくは1〜2個の基を有する。組み込み可能なアミン触媒は、低排出ポリウレタンフォームを製造するために大部分は使用され、これらは特に、自動車の内装セクターにおいて使用される。これらの触媒は公知であり、例として、EP1888664に記載されている。これらの材料は、イソシアネートに対して反応性の基(複数可)と一緒に1個または複数の第三級アミノ基を好ましくは有する化合物を含む。組み込み可能な触媒の第三級アミノ基は、好ましくは部分毎に1〜10個の炭素原子を有する、特に好ましくは部分毎に1〜6個の炭素原子を有する、少なくとも2つの脂肪族炭化水素部分を有することが好ましい。第三級アミノ基が、メチル部分およびエチル部分から相互に独立に選択される2つの部分を有し、かつまた別の有機部分を有することが特に好ましい。使用することができる組み込み可能な触媒の例は、ビスジメチルアミノプロピルウレア、ビス(N,N−ジメチルアミノエトキシエチル)カルバメート、ジメチルアミノプロピルウレア、N,N,N−トリメチル−N−ヒドロキシエチルビス(アミノプロピルエーテル)、N,N,N−トリメチル−N−ヒドロキシエチルビス(アミノエチルエーテル)、ジエチルエタノールアミン、ビス(N,N−ジメチル−3−アミノプロピル)アミン、ジメチルアミノプロピルアミン、3−ジメチルアミノプロピル−N,N−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン、ジメチル−2−(2−アミノエトキシエタノール)、および(1,3−ビス(ジメチルアミノ)プロパン−2−オール)、N,N−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)−N−イソプロパノールアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)−2−ヒドロキシエチルアミン、N,N,N−トリメチル−N−(3−アミノプロピル)ビス(アミノエチル)エーテル、3−ジメチルアミノイソプロピルジイソプロパノールアミン、およびこれらの混合物である。
【0029】
ポリウレタンを製造するために、組み込み可能なアミン触媒と一緒に従来の触媒を使用することもまた可能である。例として、アミジン、例えば、2,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、第三級アミン、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、N−メチル−、N−エチル−、およびN−シクロヘキシルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルジアミノエチルエーテル、ビス(ジメチルアミノプロピル)尿素、ジメチルピペラジン、1,2−ジメチルイミダゾール、1−アザビシクロ[3.3.0]オクタン、好ましくは、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、およびアルカノールアミン化合物、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチル−およびN−エチルジエタノールアミン、およびジメチルエタノールアミンについて言及し得る。有機金属化合物、好ましくは、有機スズ化合物、例えば、有機カルボン酸のスズ(II)塩、例えば、酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、エチルヘキサン酸スズ(II)、およびラウリン酸スズ(II)、ならびに有機カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、およびジオクチルスズジアセテート、およびまたビスマスカルボキシレート、例えば、ビスマス(III)ネオデカノエート、ビスマス2−エチルヘキサノエート、およびビスマスオクタノエート、またはこれらの混合物を使用することがまた可能である。有機金属化合物は、単独で、または好ましくは強力に塩基性のアミンと組み合わせて使用することができる。成分(b)についてエステルが関与する場合、もっぱらアミン触媒を使用することが好ましい。特に好ましい実施形態において、使用される触媒(c)は、もっぱら組み込み可能な触媒を含む。
【0030】
成分(d)は、リン酸エステル、ポリホスフェート、ホスホン酸エステル、および/または亜リン酸エステルを含む。これらのモル質量は好ましくは、少なくとも350g/molである。同様に好ましいのは、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、および/または亜リン酸エステルであり、これらは、イソシアネートに対して反応性であり、例としてOH基である少なくとも1個の基を有する。
【0031】
ここで使用されるリン酸エステルは、一般式
(R−O)−P=O
を有するリン酸のエステルを含み、式中、遊離部分Rは、相互に独立に、1個もしくは複数のフェニル基、1個もしくは複数のフェニル基、1個もしくは複数のリン酸基、またはこれらのエステル、ならびに/または窒素、酸素、フッ素、塩素、および臭素からなる群から選択される1個もしくは複数の原子を含む有機部分である。部分Rはここでそれぞれ好ましくは、相互に独立に、1〜20個、特に好ましくは2〜10個、特に、2〜5個の炭素原子を含み、好ましくは分岐を有する。前記部分は好ましくは、脂肪族である。例えば、OH末端基の形態の、塩素原子または酸素原子を有する部分が好ましい。部分Rの例は、好ましくは2〜10個の繰り返し単位を有する、塩化エチレン、塩化プロピレン、塩化ブチレン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、およびポリエチルアルキレンオキシドである。
【0032】
本発明のリン酸エステルは、分子内に少なくとも2個、好ましくは2〜50個、特に好ましくは2〜20個のリン酸基を含むことが好ましく、これらは多官能性部分を介した、特に、二官能性部分−R“−を介した結合を有する。R“はここで、1〜20個、好ましくは2〜10個、特に、2〜5個の炭素原子を有する有機部分であり、これらは、直鎖状または分岐状、好ましくは分岐状でよく、窒素、酸素、フッ素、塩素、および臭素からなる群から選択される1個もしくは複数の原子を任意選択で含む。これらの本発明によるリン酸エステルは、例として、2,2−ビス(クロロメチル)トリメチレンビス(ビス(2−クロロエチル)ホスフェート)、トリス(2−ブトキシエチル)ホスフェート、トリス(1,3−ジクロロ−2−イソプロピル)ホスフェート、トリス(2−クロロイソプロピル)ホスフェート、およびエチレンオキシド架橋を有するオリゴマーのアルキルホスフェート、例えば、ICL Industrial ProductsからのFyrol(登録商標)PNXを含む。
【0033】
本発明のポリホスフェートは、一般式
−[P(O)(OR‘)−O]
の化合物であり、式中、nは、2〜10000の整数であり、R‘は、アルカリ金属カチオンまたはアンモニウムカチオンである。任意の所望の構造は、末端基、好ましくは一般式の構造としての役割を果たすことができ、
−O−P(O)(OR‘
式中、R‘は上記で定義されている通りである。例として、ポリリン酸アンモニウムは、ポリホスフェートとして使用することができる。
【0034】
本発明のホスホン酸エステルは、一般式
(R)(R−O)−P=O
を有する化合物であり、式中、部分Rは、相互に独立に、窒素、酸素、フッ素、塩素、および臭素からなる群から選択される1個もしくは複数の原子を含み、かつ好ましくは分岐を有する有機部分であり、部分Rは、水素、または1〜10個、好ましくは1〜5個、特に、1〜3個の炭素原子を有する芳香族、脂肪族、もしくは脂環式部分であり、これらは任意選択でまた、ヘテロ原子を含む。
【0035】
部分Rはここでそれぞれ好ましくは、相互に独立に、1〜20個、特に好ましくは2〜10個、特に、2〜5個の炭素原子を含む。例えば、OH末端基の形態の、塩素原子または酸素原子を含む部分が好ましい。部分Rの例は、好ましくは2〜10個の繰り返し単位を有する、塩化エチレン、塩化プロピレン、塩化ブチレン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、およびポリエチルアルキレンオキシドである。本発明のホスホン酸エステルの一例は、ジ(ジエチレングリコール)メチルホスホネートである。
【0036】
使用される亜リン酸エステルは、一般式
(R−O)−P
の化合物を含み、式中、部分Rは、相互に独立に、窒素、酸素、フッ素、塩素、および臭素からなる群から選択される1個もしくは複数の原子を含む有機部分である。例えば、OH末端基の形態の、塩素原子または酸素原子を含む部分が好ましい。部分Rはここでそれぞれ好ましくは相互に独立に、1〜20個、特に好ましくは2〜10個、特に、2〜5個の炭素原子を含む。例えば、OH末端基の形態の、塩素原子または酸素原子を含む部分が好ましい。特に、ホスフィットは、OH末端基を含む。部分Rの例は、好ましくは2〜10個の繰り返し単位を有する、塩化エチレン、塩化プロピレン、塩化ブチレン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、およびポリエチルアルキレンオキシドである。例として、トリス(ジプロピレングリコール)ホスフィットは、亜リン酸エステルとして使用される。
【0037】
特に好ましい成分(d)は、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、および/または亜リン酸エステル、およびより好ましくは分子中に少なくとも2個のリン酸基を含む化合物である。例は、2,2−ビス(クロロメチル)トリメチレンビス(ビス(2−クロロエチル)ホスフェート)、ポリリン酸アンモニウム、およびエチレンオキシド架橋を有するポリアルキルホスフェートである。トリス(1,3−ジクロロ−2−イソプロピル)ホスフェート、トリス(2−クロロイソプロピル)ホスフェート、トリス(2−ブトキシエチル)ホスフェート、エチレンオキシド架橋を有するオリゴマーのアルキルホスフェート、およびジ(ジエチレングリコール)メチルホスホネートがさらに好ましい。2,2−ビス(クロロメチル)トリメチレンビス(ビス(2−クロロエチル)ホスフェート)、ジ(ジエチレングリコール)メチルホスホネート、トリス(1,3−ジクロロ−2−イソプロピル)ホスフェート、エチレンオキシド架橋を有するオリゴマーのアルキルホスフェート、およびポリリン酸アンモニウムが非常に特に好ましい。特に、2,2−ビス(クロロメチル)トリメチレンビス(ビス(2−クロロエチル)ホスフェート)およびエチレンオキシド架橋を有するオリゴマーのアルキルホスフェートが好ましい。これらの化合物は、商業的に利用可能である。
【0038】
成分(a)〜(f)の全質量に対する成分(d)の割合はここで、いずれの場合にも、成分(a)〜(f)の総質量に基づいて、好ましくは3質量%未満、特に好ましくは0.05〜2質量%、より好ましくは0.1〜1.5質量%、特に、0.15〜1.0質量%である。いずれの場合にも、成分(a)〜(f)の総質量に基づいて、0.1〜0.4%のさらに好ましい割合、または0.15〜0.3%の特に好ましい割合の成分(d)は、熱老化を改善するのに十分である。本発明のポリウレタンフォームが、5%未満の、より好ましくは、2%未満の、さらにより好ましくは、1%未満の、特に、0%の、ポリウレタンフォームにおいて難燃剤として通常使用される他の物質を含むことが特に好ましい。
【0039】
発泡剤(e)がまた、ポリウレタンフォームの製造の間に存在する。前記発泡剤(e)は、水を含む。使用することができる発泡剤(e)は、水のみでなく、化学的および/または物理的効果を有する周知の化合物を含む。化学的発泡剤は、ガス状生成物を形成するためにイソシアネートとの反応を使用する化合物であり、一例は、水またはギ酸である。物理的発泡剤は、ポリウレタン製造のために出発材料に乳化または溶解されており、かつポリウレタン形成の条件下で気化する化合物である。例として、これらは、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、および他の化合物、例えば、過フッ素化アルカン、例えば、ペルフルオロヘキサン、クロロフルオロカーボン、ならびにエーテル、エステル、ケトン、アセタール、およびこれらの混合物、例えば、4〜8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素、またはフルオロカーボン、例えば、Solvay Fluorides LLCからのSolkane(登録商標)365mfcが関与する。好ましい一実施形態は、発泡剤として、前記発泡剤および水の少なくとも1つ、特に、単独の発泡剤として水を含む混合物を使用する。
【0040】
好ましい一実施形態において、水の含量は、成分(a)〜(g)の全質量に対して0.1〜2質量%、好ましくは0.2〜1.5質量%、特に好ましくは0.3〜1.2質量%、特に、0.4〜1質量%である。
【0041】
使用される連鎖延長剤および/または架橋剤(f)は、好ましくは500g/mol未満、特に好ましくは60〜400g/molのモル質量を有する物質を含み、連鎖延長剤は、イソシアネートに対して反応性の2個の水素原子を有し、架橋剤は、イソシアネートに対して反応性の3個の水素原子を有する。これらは、個々に、または好ましくは混合物の形態で使用することができる。400未満、特に好ましくは60〜300、特に60〜150の分子量を有するジオールおよび/またはトリオールを使用することが好ましい。使用することができる連鎖延長剤および架橋剤の例は、2〜14個、好ましくは2〜10個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式、および/または芳香脂肪族のジオール、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−、1,3−、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、および好ましくは1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、およびビス(2−ヒドロキシエチル)ヒドロキノン、トリオール、例えば、1,2,4−または1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサン、グリセロール、トリメチロールプロパン、ならびにエチレンオキシドをベースとする、および/またはプロピレン1,2−オキシドをベースとする、およびスターター分子として上記のジオールおよび/またはトリオールをベースとする低分子量のヒドロキシル化ポリアルキレンオキシドである。使用される連鎖延長剤(c)は特に好ましくは、モノエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセロール、またはこれらの混合物、特に、モノエチレングリコール、またはモノエチレングリコールを含む混合物を含む。
【0042】
連鎖延長剤、架橋剤、またはこれらの混合物が使用される限りにおいて、これらの有利に使用される量は、成分(b)および(c)の質量に対して、1〜60質量%、好ましくは1.5〜50質量%、特に、2〜40質量%である。
【0043】
助剤および/または添加剤(g)はまた、ポリウレタンフォームを製造するために任意選択で反応混合物に加えることができる。例として、界面活性剤物質、フォーム安定剤、セル調整剤、離型剤、ゴム加硫補助剤、充填剤、染料、色素、加水分解安定剤、匂い吸収物質、ならびに静真菌性および/または静菌性物質について言及し得る。これらは公知であり、ポリウレタンフォームの製造の間に通常使用される。
【0044】
本発明はまた、反応混合物を得るために成分(a)〜(d)および任意選択で(e)〜(g)を混合し、次いで、ポリウレタンを得るためにその反応を完了させることによって、本発明のポリウレタンフォームを製造する方法を提供する。材料は好ましくは、ポリイソシアネート(a)のNCO基と、成分(b)、(c)、および(d)の全反応性水素原子の当量比が、1:0.8〜1:1.25、好ましくは1:0.9〜1:1.15であるような量で互いに混合する。
【0045】
本発明によって好ましいインテグラルポリウレタンフォームは好ましくは、密閉した有利には温度制御したモールドにおいて低圧力または高圧力技術の助けによってワンショット工程によって製造される。モールドは通常、金属、例えば、アルミニウムまたはスチールからなる。これらの手順は、例として、Piechota und Rohr、「Integralschaumstoff」[Integral foam]、Carl−Hanser−Verlag、Munich、Vienna、1975年によって、または「Kunststoff−handbuch」[Plastics handbook]、第7巻、Polyurethane、[Polyurethanes]、第3版、1993年、第7章において記載されている。
【0046】
この目的のために、出発成分を好ましくは、15〜90℃、特に好ましくは25〜55℃の温度で混合し、反応混合物を、任意選択で高圧下にて、密閉モールド中に導入する。混合は、撹拌機もしくは混合スクリューによって機械的に、または高圧下でいわゆる、向流注入工程として公知のものにおいて行うことができる。成形温度は有利に、20〜160℃、好ましくは30〜120℃、特に好ましくは30〜60℃である。本発明の目的のために、反応混合物という用語は、イソシアネート基に対して90%未満の反応変換で成分(a)〜(g)の混合物についてここで使用される。
【0047】
モールド中に導入される反応混合物の量は、インテグラルフォームでできたこのように得られた成形体の密度が、好ましくは0.08〜0.75g/cm、特に好ましくは0.15〜0.75g/cm、特に、0.25〜0.70g/cmであるようなものである。本発明のインテグラルポリウレタンフォームを製造するために使用される圧縮レベルは、1.1〜8.5、好ましくは2.1〜7.0の範囲である。
【0048】
本発明のポリウレタンフォームは好ましくは、自動車内装において使用される。自動車の内装コンポーネント、例えば、ステアリングホイール、ダッシュボード、ドア外装材、ヘッドレスト、またはコントロールボタンが、ここで関与することが好ましい。本発明のポリウレタンフォームはここで、特に、140℃での7日に亘る熱老化、または120℃および100%の相対湿度でのオートクレーブ中の5時間の3サイクルに亘る湿性の熱老化に対して優れた老化性能を示す。特定の改善はここで、最大引張ひずみにおける引張強度において見られる。熱老化および湿性の熱老化の決定はここで、DIN EN ISO2440に従って行った。
【実施例】
【0049】
実施例を下記で使用して、本発明を例示する。
【0050】
出発材料:
ポリオールA:84%のプロピレンオキシド含量および14%のエチレンオキシド含量を有する、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドをベースとする、35mg KOH/gのOH数および官能性2.7を有するポリエーテロール
ポリオールB:担体ポリオールとしてポリオールAにおいて45%の固体含量を有するグラフトポリオール(スチレン−アクリロニトリル)
MEG:モノエチレングリコール
Isopur SA−21050:ISL−Chemieからのブラックペースト
Polycat15:Air Productsからの触媒
Jeffcat ZF−10:Huntsmanからの触媒
リン化合物
P1:トリス(1,3−ジクロロ−2−イソプロピル)ホスフェート
P2:エチレンオキシド架橋を有するオリゴマーのアルキルホスフェート
P3:ジ(ジエチレングリコール)メチルホスホネート
P4:ClariantからのExolit(登録商標)AP422−ポリリン酸アンモニウム
P5:イソプロピル化トリアリールホスフェート
P6:トリス(ジプロピレングリコール)ホスフィット
P7:トリス(2−ブトキシエチル)ホスフェート
P8:トリス(2−クロロイソプロピル)ホスフェート、TCPP
P9:トリブチルホスフェート(比較)
P10:トリブチルホスフィット(比較)
P11:トリスノニルフェニルホスフィット、TNPP(比較)
P12:Disflamoll(登録商標)TOF−トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(比較)、Lanxessからの脂肪族ホスフェート
イソシアネート:27.8のNCO含量を有するカルボジイミド−修飾4,4’−MDI
【0051】
混合物Aを、下記の成分をブレンドすることによって調製した。
【0052】
79.9部のポリオールA
4.8部のポリオールB
8.1部のMEG
5.0部のIsopur SA−21050
0.6部の水
0.8部のPolycat15
0.8部のJeffcat ZF−10
0.25〜2部のリン化合物(表を参照されたい)
【0053】
混合物Aおよびイソシアネート成分を、102のイソシアネートインデックスで互いに混合し、密閉モールドに充填し、このように380g/Lの平均密度を有する成形体を得た。
【0054】
機械的性質について測定した値を決定するための手順は、下記の標準によった。
【0055】
【表1】
【0056】
熱老化および湿性の熱老化はここで、DIN EN ISO2440に従って行った。
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
最後に、ステアリングホイールは、混合物Aから、およびイソシアネートから出発して、混合物Aの全質量に対してそれぞれ0.5質量部のリン化合物P1、P2およびP3を使用して、ならびにまた、参照として、リン化合物を使用しないで製造し、ステアリングホイールを140℃で7日間老化させた。ここでリン化合物を有さないステアリングホイールにおけるポリウレタンは脆弱であり、部分的に崩れ、一方、本発明によって製造されたステアリングホイールのポリウレタンは、視覚的に変化がない。