(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703079
(24)【登録日】2020年5月11日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】成膜装置、成膜方法及びそれを用いられる有機EL表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20200525BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20200525BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20200525BHJP
C23C 14/04 20060101ALI20200525BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20200525BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20200525BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20200525BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20200525BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20200525BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/68 R
H01L21/68 A
C23C14/04 A
C23C14/50 F
H01L27/32
H05B33/10
H05B33/14 A
G09F9/30 365
G09F9/00 338
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-200152(P2018-200152)
(22)【出願日】2018年10月24日
(65)【公開番号】特開2019-102802(P2019-102802A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2019年1月28日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0161894
(32)【優先日】2017年11月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 博
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 一史
【審査官】
宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−120740(JP,A)
【文献】
特開2017−155338(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2017−0061230(KR,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2014−0130576(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 14/04
C23C 14/50
G09F 9/00
G09F 9/30
H01L 21/677
H01L 21/683
H01L 27/32
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクを介して基板に成膜を行うための成膜装置であって、
基板の周縁部を支持するための支持部を含む基板保持ユニットと、
前記支持部の上方に設けられ、前記基板を吸着するための静電チャックとを含み、
前記支持部は、前記基板の一端側の周縁部を支持するように設置される第1支持部材と、前記第1支持部材と対向する位置で前記基板の他端側の周縁部を支持するように設置される第2支持部材とを含み、
前記第1支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さが、前記第2支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さよりも高く、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材は弾性体部を含み、前記第1支持部材の弾性体部は前記第2支持部材の弾性体部より弾性係数が大きい成膜装置。
【請求項2】
マスクを介して基板に成膜を行うための成膜装置であって、
基板の周縁部を支持するための支持部を含む基板保持ユニットと、
前記支持部の上方に設けられ、前記基板を吸着するための静電チャックとを含み、
前記支持部は、前記基板の一端側の周縁部を支持するように設置される第1支持部材と、前記第1支持部材と対向する位置で前記基板の他端側の周縁部を支持するように設置される第2支持部材とを含み、
前記第1支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さが、前記第2支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さよりも高く、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材は弾性体部を含み、前記第1支持部材の弾性体部は前記第2支持部材の弾性体部より長さが長い成膜装置。
【請求項3】
マスクを介して基板に成膜を行うための成膜装置であって、
基板の周縁部を支持するための支持部を含む基板保持ユニットと、
前記支持部の上方に設けられ、前記基板を吸着するための静電チャックとを含み、
前記支持部は、前記基板の第1方向における位置で前記基板の一端側の周縁部を支持するように設置される第1支持部材と、前記第1支持部材と対向する位置で前記基板の他端側の周縁部を支持するように設置される第2支持部材とを含み、
前記第1支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さが、前記第2支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さよりも高く、
前記支持部は、前記第1方向と交差する前記基板の第2方向における位置で前記基板の一端側の周縁部を支持するように設置される第3支持部材と、前記第3支持部材と対向する位置で前記基板の他端側の周縁部を支持するように設置される第4支持部材とをさらに含み、
前記第3支持部材及び前記第4支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さは、前記第2支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さより高く、前記第1支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さよりも低く、
前記第3支持部材及び前記第4支持部材は弾性体部を含み、前記第3支持部材及び前記第4支持部材の弾性体部は、前記第2支持部材の弾性体部より弾性係数が大きく、前記第1支持部材の弾性体部より弾性係数が小さい成膜装置。
【請求項4】
マスクを介して基板に成膜を行うための成膜装置であって、
基板の周縁部を支持するための支持部を含む基板保持ユニットと、
前記支持部の上方に設けられ、前記基板を吸着するための静電チャックとを含み、
前記支持部は、前記基板の第1方向における位置で前記基板の一端側の周縁部を支持するように設置される第1支持部材と、前記第1支持部材と対向する位置で前記基板の他端側の周縁部を支持するように設置される第2支持部材とを含み、
前記第1支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さが、前記第2支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さよりも高く、
前記支持部は、前記第1方向と交差する前記基板の第2方向における位置で前記基板の一端側の周縁部を支持するように設置される第3支持部材と、前記第3支持部材と対向する位置で前記基板の他端側の周縁部を支持するように設置される第4支持部材とをさらに含み、
前記第3支持部材及び前記第4支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さは、前記第2支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さより高く、前記第1支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さよりも低く、
前記第3支持部材及び前記第4支持部材は弾性体部を含み、前記第3支持部材及び前記第4支持部材の弾性体部は、前記第2支持部材の弾性体部より長さが長く、前記第1支持部材の弾性体部より長さが短い成膜装置。
【請求項5】
前記第1支持部材は前記基板の第1方向に沿って配置される複数の支持部材を含み、前記第2支持部材は複数の前記第1支持部材と対向するように前記第1方向に沿って配置される複数の支持部材を含む請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記基板の第1方向は前記基板の長辺方向と平行である請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記第1支持部材及び前記第2支持部材は弾性体部を含み、前記第1支持部材の弾性体部は前記第2支持部材の弾性体部より弾性係数が大きい請求項3に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記第1支持部材及び前記第2支持部材は弾性体部を含み、前記第1支持部材の弾性体部は前記第2支持部材の弾性体部より長さが長い請求項4のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記支持部は、前記基板の第1方向と交差する前記基板の第2方向における位置で前記基板の一端側の周縁部を支持するように設置される第3支持部材と、前記第3支持部材と対向する位置で前記基板の他端側の周縁部を支持するように設置される第4支持部材とをさらに含み、
前記第3支持部材及び前記第4支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さは、前記第2支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さより高く、前記第1支持
部材によって支持される前記基板の周縁部の高さよりも低い請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記第3支持部材は前記第2方向に沿って配置される複数の支持部材を含み、前記第4支持部材は複数の前記第3支持部材と対向するように前記第2方向に沿って配置される複数の支持部材を含む請求項3、請求項4、請求項9のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項11】
複数の前記第3支持部材及び複数の前記第4支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さは、前記第2方向に沿って段階的に変わるように設置される請求項10に記載の成膜装置。
【請求項12】
複数の前記第3支持部材及び複数の前記第4支持部材は、複数の前記第3支持部材及び複数の前記第4支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さが同じであるように設置される請求項10に記載の成膜装置。
【請求項13】
前記第3支持部材及び前記第4支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さは前記第1支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さと同じである請求項10に記載の成膜装置。
【請求項14】
金属製のマスクを支持するために前記基板保持ユニットの下方に設けられるマスク台と、
前記静電チャックの上方に設けられ、前記マスクに磁力を作用させて前記基板と前記マスクを密着させるためのマグネットとをさらに含む
請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項15】
マスクを介して基板上に蒸着材料を成膜するための成膜方法であって、
請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の成膜装置内に前記基板を搬入して基板保持ユニットの支持部に前記基板を置く工程と、
静電チャックにて、前記基板保持ユニットの前記支持部上に置かれた前記基板の上面を吸着する工程と、
前記マスクを介して前記基板に蒸着材料を堆積させる成膜工程と
を含む成膜方法。
【請求項16】
請求項15に記載の成膜方法を用いて有機EL表示装置を製造する有機EL表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成膜装置に関するものであり、特に、静電チャックに基板を平らに付着させるための基板支持部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、フラットパネル表示装置として有機EL表示装置が脚光を浴びている。有機EL表示装置は自発光ディスプレイであり、応答速度、視野角、薄型化などの特性が液晶パネルディスプレイより優れており、モニタ、テレビ、スマートフォンに代表される各種携帯端末などで既存の液晶パネルディスプレイに対する代替が加速している。また、自動車用ディスプレイ等にも、その応用分野を広げている。
【0003】
有機EL表示装置の素子は2つの向かい合う電極(カソード電極、アノード電極)の間に発光を起こす有機物層が形成された基本構造を持つ。有機EL表示装置素子の有機物層及び電極層は、成膜装置の真空チャンバーの下部に設けられた蒸着源を加熱することで蒸発された蒸着材料を画素パターンが形成されたマスクを通じて真空チャンバー上部に置かれた基板(の下面)に蒸着させることで形成される。
【0004】
このような上向蒸着方式の成膜装置の真空チャンバー内において、基板は基板ホルダによって保持されるが、基板(の下面)に形成された有機物層/電極層に損傷を与えないように基板の下面の周縁を基板ホルダの支持部によって支持する。この場合、基板のサイズが大きくなるにつれて、基板ホルダの支持部によって支持されない基板の中央部が基板の自重によって撓み、蒸着精度を落とす要因となっている。
【0005】
基板の自重による撓みを低減するための方法として、静電チャックを使う技術が検討されている。すなわち、基板の上部に静電チャックを設けて、基板ホルダの支持部によって支持された基板の上面を静電チャックで吸着させることで、基板の中央部が静電チャックの静電引力によって引っ張られるようになり、基板の撓みを低減することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の基板ホルダにおいては、基板ホルダの支持部上に置かれた基板は自重によって基板の中央部が撓み、基板の周縁部が基板の中央部より高さが高い状態で支持されるので、平板形状の静電チャックを基板に向かって下降させると、基板ホルダの支持部によって支持された基板の周縁部がほぼ同時に静電チャックから静電引力を受けて静電チャックに吸着され、基板の中央部は一番遅く静電引力を受けるようになる。
【0007】
すなわち、基板の静電チャックへの吸着が基板の周縁部から基板の中央部に向かって進むので、静電チャックと基板が充分に近くなっても基板が平らに静電チャックに吸着されるのではなく、基板の中央部に基板と静電チャックとの隙間が残ってしまう。また、基板の下面の周縁部が基板ホルダの支持部によって一番強い支持力で支持されて、静電引力が一番強く作用するので、一番遅く静電チャックの静電引力を受けるようになる基板の中央部の撓みを基板の周縁部に向かって充分に伸ばせることができず、しわが残るようになる。
【0008】
本発明は、基板を静電チャックにより平らな形状で吸着できる成膜装置、成膜方法及びこのような成膜方法を用いて電子デバイスを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様による成膜装置は、基板の周縁部を支持するための支持部を含む基板保持ユニットと、前記支持部の上方に設けられ、前記基板を吸着するための静電チャックとを含み、前記支持部は、前記基板の一端側の周縁部を支持するように設置される第1支持部材と、前記第1支持部材と対向する位置で前記基板の他端側の周縁部を支持するように設置される第2支持部材とを含み、前記第1支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さ
が前記第2支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さ
よりも高く、前記第1支持部材及び前記第2支持部材は弾性体部を含み、前記第1支持部材の弾性体部
は前記第2支持部材の弾性体部より弾性係数が大きい。
本発明の第2態様による成膜装置は、基板の周縁部を支持するための支持部を含む基板保持ユニットと、前記支持部の上方に設けられ、前記基板を吸着するための静電チャックとを含み、前記支持部は、前記基板の一端側の周縁部を支持するように設置される第1支持部材と、前記第1支持部材と対向する位置で前記基板の他端側の周縁部を支持するように設置される第2支持部材とを含み、前記第1支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さが、前記第2支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さよりも高く、前記第1支持部材及び前記第2支持部材は弾性体部を含み、前記第1支持部材の弾性体部は前記第2支持部材の弾性体部より長さが長い。
本発明の第3態様による成膜装置は、基板の周縁部を支持するための支持部を含む基板保持ユニットと、前記支持部の上方に設けられ、前記基板を吸着するための静電チャックとを含み、前記支持部は、前記基板の第1方向における位置で前記基板の一端側の周縁部を支持するように設置される第1支持部材と、前記第1支持部材と対向する位置で前記基板の他端側の周縁部を支持するように設置される第2支持部材とを含み、前記第1支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さが、前記第2支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さよりも高く、前記支持部は、前記第1方向と交差する前記基板の第2方向における位置で前記基板の一端側の周縁部を支持するように設置される第3支持部材と、前記第3支持部材と対向する位置で前記基板の他端側の周縁部を支持するように設置される第4支持部材とをさらに含み、前記第3支持部材及び前記第4支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さは、前記第2支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さより高く、前記第1支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さよりも低く、前記第3支持部材及び前記第4支持部材は弾性体部を含み、前記第3支持部材及び前記第4支持部材の弾性体部は、前記第2支持部材の弾性体部より弾性係数が大きく、前記第1支持部材の弾性体部より弾性係数が小さい。
本発明の第4態様による成膜装置は、基板の周縁部を支持するための支持部を含む基板保持ユニットと、前記支持部の上方に設けられ、前記基板を吸着するための静電チャックとを含み、前記支持部は、前記基板の第1方向における位置で前記基板の一端側の周縁部を支持するように設置される第1支持部材と、前記第1支持部材と対向する位置で前記基板の他端側の周縁部を支持するように設置される第2支持部材とを含み、前記第1支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さが、前記第2支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さよりも高く、前記支持部は、前記第1方向と交差する前記基板の第2方向における位置で前記基板の一端側の周縁部を支持するように設置される第3支持部材と、前記第3支持部材と対向する位置で前記基板の他端側の周縁部を支持するように設置される第4支持部材とをさらに含み、前記第3支持部材及び前記第4支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さは、前記第2支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さより高く、前記第1支持部材によって支持される前記基板の周縁部の高さよりも低く、前記第3支持部材及び前記第4支持部材は弾性体部を含み、前記第3支持部材及び前記第4支持部材の弾性体部は、前記第2支持部材の弾性体部より長さが長く、前記第1支持部材の弾性体部より長さが短い。
【0010】
本発明の第
5態様による成膜方法は、本発明の第1態様
〜第4態様のいずれか一態様による成膜装置内に前記基板を搬入して基板保持ユニットの支持部に前記基板を置く工程と、静電チャックにて、前記基板保持ユニットの前記支持部上に置かれた前記基板の上面を
吸着する工程と、前記マスクを介して前記基板に蒸着材料を堆積させる成膜工程とを含む。
【0011】
本発明の第
6態様による有機EL表示装置の製造方法は、本発明の第
5態様による成膜方法を用いて有機EL表示装置を製造する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板の下面の周縁部を支持するための基板保持ユニットの支持部材が互い異なる支持力を持つように設置されることで、支持部材によって支持される基板の周縁部の高さをそれぞれ異ならせ、基板保持ユニットの支持部材によって支持された基板が静電チャックに吸着される時、基板の対向する二辺の中で、支持力が大きな(周縁部の高さが高くなる)支持部材によって支持される辺側から支持力が弱い(周縁部の高さが低くなる)支持部材によって支持される他の辺側に向かって基板のしわを伸ばせることができるようになり、これによって、基板の中央部でも基板と静電チャックが間隙なく密着されるようになり、全体的に基板が静電チャックに平らにしわなく密着されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は有機EL表示装置の製造ラインの一部の模式図である。
【
図3】
図3は本発明の一実施形態による成膜装置に使われる基板保持ユニットの支持部を示す模式図である。
【
図4】
図4は本発明の他の実施形態による成膜装置に使われる基板保持ユニットの支持部を示す模式図である。
【
図5】
図5は本発明の他の実施形態による基板保持ユニットの支持部の構成を示す模式図である。
【
図6】
図6は有機EL表示装置の構造を現わす模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲はそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な記載がないかぎりは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
本発明は、基板の表面に真空蒸着によってパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に望ましく適用することができる。基板の材料としては、硝子、高分子材料のフィルム、金属などの任意の材料を選択することができるし、また、蒸着材料としても、有機材料、金属性材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択することができる。本発明の技術は、具体的には、有機電子デバイス(例えば、有機EL表示装置、薄膜太陽電池)、光学部材などの製造装置に適用可能である。その中でも、有機EL表示装置の製造装置に
おいては、蒸着材料を蒸発させて有機EL表示素子を形成しているので、本発明の望ましい適用例の一つである。
【0017】
図1は、電子デバイスの製造ラインの構成の一部を模式的に示す上面図である。
図1の製造ラインは、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。スマートフォン用の表示パネルの場合、例えば約1800mm×約1500mmのサイズの基板に有機ELの成膜を行った後、該基板をダイシングして複数の小サイズのパネルに作製される。
【0018】
電子デバイスの製造ラインは、一般に、
図1に示すように、複数の成膜室11、12と、搬送室13とを有する。搬送室13内には、基板10を保持し搬送する搬送ロボット14が設けられている。搬送ロボット14は、例えば、多関節アームに、基板を保持するロボットハンドが取り付けられた構造を有するロボットであり、各成膜室への基板10の搬入/搬出を行う。
各成膜室11、12にはそれぞれ成膜装置(蒸着装置とも呼ぶ)が設けられている。搬送ロボット14との基板10の受け渡し、基板10とマスクの相対位置の調整(アライメント)、マスク上への基板10の固定、成膜(蒸着)などの一連の成膜プロセスは、成膜装置によって自動で行われる。
【0019】
以下、成膜室の成膜装置の構成について説明する。
【0021】
図2は成膜装置2の構成を概略的に示す断面図である。以下の説明においては、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を用いる。成膜時に基板が水平面(XY平面)と平行に固定されると想定したとき、基板の短辺に平行な方向をX方向、長辺に平行な方向をY方向とする。またZ軸周りの回転角をθで表示する。
【0022】
成膜装置2は、成膜工程が行われる空間を定義する真空チャンバー20を具備する。真空チャンバー20の内部は真空雰囲気、或いは、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気で維持される。
【0023】
成膜装置2の真空チャンバー20内の上部には、基板を保持する基板保持ユニット21、マスクが置かれるマスク台22、基板を静電引力によって吸着させる静電チャック23、金属製のマスクに磁力を作用させるためのマグネット24などが設けられ、成膜装置の真空チャンバー20内の下部には、蒸着材料が収納される蒸着源25などが設けられる。
【0024】
基板保持ユニット21は、搬送室13の搬送ロボット14から基板10を受け取り、保持及び搬送する。基板保持ユニット21は基板ホルダとも呼ぶ。基板保持ユニット21は、基板の下面の周縁部を支持する支持部211,212を含む。支持部上には、基板の損傷を防止するためにフッ素コーティングされたパッド(不図示)が設けられる。本発明の支持部は、後述するように、基板が静電チャックに全体的に平らに吸着されることができるように支持力が異なる複数の支持部材を含む。
【0025】
基板保持ユニット21の下にはフレーム状のマスク台22が設置され、マスク台22には基板10上に形成される薄膜パターンに対応する開口パターンを有するマスク221が置かれる。特に、スマホ用の有機EL素子を製造するのに使われるマスクは、微細な開口パターンが形成された金属製のマスクであり、FMM(Fine Metal Mask
)とも呼ぶ。
【0026】
基板保持ユニット21の支持部211,212の上方には基板を静電引力によって吸着して固定させるための静電チャック23が設けられる。静電チャックは、セラミックス材質のマトリックス内に金属電極などの電気回路が埋め込まれた構造を持ち、金属電極にプラス(+)及びマイナス(−)電圧が印加されると、セラミックスマトリックスを通じて基板に分極電荷が誘導され、これら間の静電気的な引力によって基板が静電チャック23に吸着固定される。静電チャックは埋め込まれた電気回路の構造によって複数のモジュールに区画されることができる。
【0027】
静電チャック23の上部には、金属製のマスク221に磁力を作用させてマスクの撓みを防止し、マスク221と基板10を密着させるためのマグネット24が設けられる。マグネット24は永久磁石または電磁石からなることができ、複数のモジュールに区画されることができる。
【0028】
図2には図示されていないが、静電チャック23とマグネット24との間には基板を冷却するための冷却板が設けられる。冷却板はマグネット24と一体に形成されることもできる。
【0029】
蒸着源25は、基板に成膜される蒸着材料が収納されるるつぼ(不図示)、るつぼを加熱するためのヒータ(不図示)、蒸着源からの蒸発レートが一定になるまで蒸着材料が基板に飛散することを阻むシャッタ(不図示)などを含む。蒸着源25は、点(point)蒸着源、線形(linear)蒸着源、リボルバ蒸着源などの用途によって多様な構成を持つことができる。
【0030】
図2に図示されていないが、成膜装置2は基板に蒸着された膜の厚さを測定するための膜厚モニタ(不図示)及び膜厚算出ユニット(不図示)を含む。
【0031】
成膜装置2の真空チャンバー20の外部上面には、基板保持ユニット21、静電チャック23、マグネット24などを鉛直方向(Z方向)に移動させるための駆動機構、及び基板とマスクのアラインメントのために水平面に平行に(X方向、Y方向、θ方向に)静電チャック23や基板保持ユニット21などを移動させるための駆動機構などが設けられる。また、マスクと基板のアラインメントのために真空チャンバー20の天井に設けられた窓を通じて基板及びマスクに形成されたアラインメントマークを撮影するアラインメント用カメラ(不図示)も設けられる。
【0032】
以下、本発明の成膜装置による成膜プロセスを説明する。
【0033】
搬送室13の搬送ロボット14によって基板が真空チャンバー20内に搬入されて基板保持ユニット21に置かれる。続いて、基板保持ユニット21に置かれた基板10とマスク台22に置かれているマスク221との相対的位置の測定及び調整を行うアラインメント工程が行われる。アラインメント工程が完了すると、基板保持ユニット21が駆動機構によって降りて基板10をマスク221上に置き、その後マグネット24が降りて基板10とマスク221を密着させる。このようなアラインメント工程、基板をマスク上に置くための下降工程、マグネットによる基板とマスクの密着工程などにおいて、基板は基板保持ユニット21の支持部211,212と静電チャック23によって固定される。
【0034】
この状態で、蒸着源25のシャッタが開かれて蒸着源25のるつぼから蒸発された蒸着材料がマスクの微細パターン開口を通して基板に蒸着される。
【0035】
基板に蒸着された蒸着材料の膜厚が所定の厚さに到達すると、蒸着源25のシャッタが閉じ、その後、搬送ロボット14が基板を真空チャンバー20から搬送室13に搬出する。
【0037】
以下、
図3を参照して基板保持ユニット21の構成、特に、静電チャックとともに基板を保持する支持部211,212の構成を説明する。
【0038】
基板保持ユニット21は、支持部211,212によって基板10の周縁部を保持して搬送する。
図3に図示した本発明の実施形態において、支持部211,212は基板の対向する二つの辺(例えば、二つの長辺)側の周縁部を支持するように設けられる。
【0039】
すなわち、基板保持ユニット21の支持部211,212は基板の対向する二つの辺中いずれかの一つの辺(第1辺)に沿って設けられる複数の第1支持部材211ともう一つの辺(第2辺)に沿って設けられる複数の第2支持部材212を含む。例えば、複数の第1支持部材211は基板の長辺方向(Y方向、第1方向)に沿って設けられ、複数の第2支持部材は212複数の第1支持部材211と対向する位置で基板の一端側あるいは他端側の周縁部を支持するように基板の長辺方向(Y方向、第1方向)に設置される。
図3には第1支持部材211及び第2支持部材212がそれぞれ複数の支持部材からなる構成を図示したが、本発明はこれに限定されず、第1支持部材211及び/または第2支持部材212はそれぞれ第1方向に長く延びる一つの支持部材で構成されてもよい。また、
図3には、第1支持部材211及び第2支持部材212が基板の長辺に沿って設けられることと示されたが、本発明はこれに限定されず、第1支持部材211及び第2支持部材212が基板の対向する短辺に沿って設けられてもよい。
【0040】
基板の下面の一端側の周縁部と他端側の周縁部をそれぞれ支持する支持部211、212は、その基板支持面が基板保持ユニット21に対して鉛直方向(Z方向)に移動可能に設置される。このために、支持部は弾性部材を含むことができる。
【0041】
例えば、
図3(a)に図示したように、支持部の複数の支持部材211、212それぞれは、基板支持面部30と弾性体部31を含む。基板支持面部30は基板の下面の周縁部を支持し、弾性体部31は基板支持面部30を弾性的に変位可能に支持する。
【0042】
支持部材が弾性体部31を含むように構成することで、基板支持面部30によって支持された基板が静電チャックから加圧力を受ける際、弾性体部31が弾性変位(例えば、圧縮変位または引張変位)するため、静電チャック23からの加圧力を吸収して、基板が破損されることを防止することができる。また、各支持部材が製造誤差によって基板支持面部30の高さが同じではなくても全体的な支持部の機能に及ぶ影響を弾性体部31の弾性変位によって低減することができる。
【0043】
<基板保持ユニットの支持部の基板支持力>
【0044】
本発明の基板保持ユニット21の支持部は、複数の支持部材211、212が基板を支持する支持力が支持部材によって異なるように設定されることができる。すなわち、基板保持ユニット21の支持部は、基板の対向する二つの辺の中いずれかの一つの辺である第1辺側を支持する第1支持部材211が基板を支持する支持力と、他の一つの辺である第2辺側を支持する第2支持部材212が基板を支持する支持力が互いに異なるように設置される。例えば、第1支持部材211が基板を支持する支持力は、第2支持部材212が基板を支持する支持力より大きくなるように設定される。ここで、支持部材による基板の
支持力は、支持部材によって支持されているときの基板の高さであるとも言える。すなわち、上記のように支持力が設定されることは、第1支持部材211によって支持される基板の周縁部の高さが、第2支持部材212によって支持される基板の周縁部の高さと異なるように設定されることであり、より具体的には、第1支持部材211によって支持される基板の周縁部の高さが第2支持部材212によって支持される基板の周縁部の高さよりも高くなるように設定されることであると言える。
【0045】
このため、
図4に図示したように、第1支持部材211の弾性体部31の弾性係数を第2支持部材212の弾性体部31の弾性係数より大きくするか、第1支持部材211の弾性体部31の長さを第2支持部材212の弾性体部31の長さより長くする。第1支持部材211の弾性体部31の長さが長ければ第1支持部材211の弾性体部31が静電チャック23からの加圧力によって弾性変位(引張変位または圧縮変位)する距離が第2支持部材212の弾性体部31が弾性変位する距離より長くなるので、結果的に第1支持部材211が基板を支持する支持力は、第2支持部材212が基板を支持する支持力より大きくなることができる。
【0046】
このように第1支持部材211の支持力を第2支持部材212の支持力より大きくすることで、基板中央部の撓みを支持力が小さな第2支持部材212側の方に伸ばせることができるので、基板が全体的に静電チャック23に平らに吸着されることができるようになる。
【0047】
本発明では第1支持部材211の支持力が第2支持部材212の支持力より大きくなる限り、弾性体部の弾性係数と長さは様々な他の組み合わせができる。
【0048】
例えば、
図4に図示したように、第1支持部材211の弾性体部31が第2支持部材212の弾性体部31より弾性係数も大きく、長さも長くすることができ、第1支持部材211の弾性体部31の弾性係数と第2支持部材212の弾性体部31の弾性係数とは同じであるが、第1支持部材211の弾性体部31の長さが第2支持部材212の弾性体部31の長さより長くすることもできる。また、
図4(c)に示したとおり、第1支持部材211と第2支持部材212の弾性体部の長さが同一であるが、その弾性係数を互いに異なるようにすることで、支持力の差を付与することもある。例えば、第1支持部材211の弾性体部31の長さが第2支持部材212の弾性体部31の長さと同一であるが、第1支持部材211の弾性体部31の弾性係数が第2支持部材212の弾性係数より大きくすることもできる。
【0049】
また、第1支持部材211の弾性体部の弾性係数が第2支持部材212の弾性体部の弾性係数より小さくても、第1支持部材211の弾性体部31の長さが第2支持部材212の弾性体部の長さより十分に長ければ、結果的に第1支持部材211の支持力が第2支持部材212の支持力より大きくなることができる。
【0050】
本発明の基板保持ユニット21の支持部は、
図5に図示したように、基板の第1辺側の周縁部を支持するように配置される複数の第1支持部材211、第1辺と対向する第2辺側の基板周縁部を支持するように配置される複数の第2支持部材212以外に、第1辺と第2辺とを繋ぐ第3辺側及び第4辺側の基板周縁部を支持するように配置される複数の第3支持部材213及び複数の第4支持部材214を含むことができる。
【0051】
第3支持部材213及び第4支持部材214も基板支持面部30と弾性体部31を含む。この際、第3支持部材213及び第4支持部材214の弾性体部31の弾性係数及び長さは、第3支持部材213及び第4支持部材214が基板の第3辺側の周縁部及び第4辺側の周縁部を支持する支持力が、第1支持部材211の支持力より小さくなるように設定
するのが望ましい。より望ましくは、第3支持部材213及び第4支持部材214による支持力が第2支持部材212による支持力より高くなるように弾性係数及び/または長さを設定する。これにより、第3支持部材及び第4支持部材によって支持される基板の周縁部の高さは、第2支持部材によって支持される基板の周縁部の高さより高く、第1支持部材によって支持される基板の周縁部の高さよりも低くなる。このように、支持部材の支持力を調節することで、基板10が静電チャック23に吸着される時、第1辺(例えば、対向する二つの長辺の中である一長辺)側の基板周縁部から基板の中央部を経て第2辺(例えば、対向する二つの長辺の中で他の一つの長辺)側を向かって吸着が順次に進むことができ、基板が平らに静電チャックに吸着されることができるようになる。
【0053】
次に、本実施形態の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
【0054】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図6(a)は有機EL表示装置60の全体図、
図6(b)は1画素の断面構造を表している。
【0055】
図6(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例にかかる有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組み合わせにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組み合わせで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0056】
図6(b)は、
図6(a)のA−B線における部分断面模式図である。画素62は、基板63上に、第1電極(陽極)64と、正孔輸送層65と、発光層66R、66G、66Bのいずれかと、電子輸送層67と、第2電極(陰極)68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R、66G、66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。発光層66R、66G、66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と第2電極68は、複数の発光素子62R、62G、62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極64と第2電極68とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層70が設けられている。
【0057】
図6(b)では正孔輸送層65や電子輸送層67が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を含む複数の層で形成されてもよい。また、第1電極64と正孔輸送層65との間には第1電極64から正孔輸送層65への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、第2電極68と電子輸送層67の間にも電子注入層が形成されことができる。
【0058】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0059】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および第1電極64が形成された基板63を準備する。
【0060】
第1電極64が形成された基板63の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0061】
絶縁層69がパターニングされた基板63を第1の有機材料成膜装置に搬入し、基板保持ユニット及び静電チャックにて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の第1電極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0062】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板63を第2の有機材料成膜装置に搬入し、基板保持ユニット及び静電チャックにて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板63の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。
【0063】
発光層66Rの成膜と同様に、第3の有機材料成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の有機材料成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
【0064】
電子輸送層67まで形成された基板を金属性蒸着材料成膜装置で移動させて第2電極68を成膜する。
【0065】
本発明によれば、有機EL表示素子の製造のために、多様な有機材料及び金属性材料を基板上に蒸着する場合において、基板を支持する基板保持ユニットの支持部211、212、213、214の支持部材が異なる支持力を持つので、基板保持ユニットの支持部によって支持された基板が静電チャックに吸着される際、基板がより平らに吸着され、蒸着工程全般的にその精度を向上させることができる。
【0066】
その後プラズマCVD装置に移動して保護層70を成膜して、有機EL表示装置60が完成する。
【0067】
絶縁層69がパターニングされた基板63を成膜装置に搬入してから保護層70の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0068】
上記実施例は本発明の一例を示し、本発明は上記実施例の構成に限定されず、また、その技術思想の範囲内で適切に変形されてよい。
【符号の説明】
【0069】
21:基板保持ユニット
22:マスク台
23:静電チャック
24:マグネット
30:基板支持面部
31:弾性体部
211:第1支持部材
212:第2支持部材
213:第3支持部材
214:第4支持部材