特許第6703295号(P6703295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6703295水溶媒系液晶配向剤、液晶配向膜及び位相差材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703295
(24)【登録日】2020年5月12日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】水溶媒系液晶配向剤、液晶配向膜及び位相差材
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20200525BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20200525BHJP
   C08F 222/16 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   G02F1/1337 520
   G02F1/13363
   C08F222/16
【請求項の数】7
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2015-108230(P2015-108230)
(22)【出願日】2015年5月28日
(65)【公開番号】特開2016-224151(P2016-224151A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菅野 裕太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】畑中 真
【審査官】 磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/056741(WO,A1)
【文献】 特開2005−326439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
G02F 1/13363
C08F 222/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として、式(1)で表される構造を含む有機基が、スペーサーを介して主鎖に結合した重合体のオニウム塩が水に溶解してなる水溶媒系液晶配向剤。
【化1】

式中、Xメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、ヨウ素、臭素、塩素、フッ素、シアノ基及びニトロ基から選ばれる基で置換されていても良いフェニレン基を表す。
上記スペーサーは、直鎖状アルキレン、分岐アルキレン、環状アルキレン及びフェニレンから選ばれる二価の基であるか、当該二価の基が複数結合してなる基を表す。
上記スペーサーを構成する二価の基同士の結合、及び上記スペーサーと上記式(1)で表される基との結合は、単結合、エステル結合、アミド結合、ウレア結合およびエーテル結合から選ばれる結合である。上記二価の基が複数となる場合は、二価の基同士は同一でも異なっていてもよく、上記結合が複数となる場合は、結合同士は同一でも異なっていてもよい。
【請求項2】
前記(A)成分の重合体がアクリル共重合体である、請求項1に記載の水溶媒系液晶配向剤。
【請求項3】
前記(A)成分の重合体が熱架橋性基を有し、さらに(B)成分として水溶性の架橋剤を含有する、請求項1又は請求項2に記載の水溶媒系液晶配向剤。
【請求項4】
さらに、(C)成分として架橋触媒をさらに含有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の水溶媒系液晶配向剤。
【請求項5】
さらに、(D)成分として下記式(2)で表されるモノマーをさらに含有する請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の水溶媒系液晶配向剤。
【化2】

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C8ハロシクロアルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6ハロアルケニル、C3〜C8シクロアルケニル、C3〜C8ハロシクロアルケニル、C2〜C6アルキニル、C2〜C6ハロアルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、(C1〜C6アルキル)カルボニル、(C1〜C6ハロアルキル)カルボニル、(C1〜C6アルコキシ)カルボニル、(C1〜C6ハロアルコキシ)カルボニル、(C1〜C6アルキルアミノ)カルボニル、(C1〜C6ハロアルキル)アミノカルボニル、ジ(C1〜C6アルキル)アミノカルボニル、シアノ及びニトロから選ばれる置換基を表し、Rは下記式(3)
【化3】

(式(3)中、破線は結合手を表し、Rは炭素数1〜30のアルキレン基、フェニレンまたは二価の炭素環若しくは複素環であり、このアルキレン基、フェニレンまたは二価の炭素環若しくは複素環中の1つ若しくは複数の水素原子は、フッ素原子又は有機基で置き換えられていてもよい。また、R中の−CHCH−が−CH=CH−に置き換えられていてもよく、R中の−CH−は、フェニレンまたは二価の炭素環若しくは複素環に置き換えられていてもよく、さらに、次に挙げるいずれかの基が互いに隣り合わない場合において、これらの基に置き換えられていてもよい;−O−、−NHCO−、−CONH−、−COO−、−OCO−、−NH−、−NHCONH−、−CO−。Rは水素原子又はメチル基である。)で表される基を表し、nは0または1を表す。)
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の水溶媒系液晶配向剤を用いて得られることを特徴とする液晶配向膜。
【請求項7】
請求項6に記載の液晶配向膜を用いて得られる位相差材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶媒系液晶配向剤、液晶配向膜及び位相差材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年液晶ディスプレイのセル内に位相差材を導入することで低コスト化、軽量化が検討されており、このような位相差材としては重合性液晶溶液を塗布し配向させた後に、光硬化させた材料が一般に用いられている。この位相差材の製造工程において、重合性液晶を配向させるためには、下層膜として、ラビング処理または偏光UV照射の後、配向性を有するところの材料である液晶配向膜が必要がある。そして、位相差材では、液晶が所望の配向状態となるように有機材料からなる有機膜が液晶配向膜として使用されている。
【0003】
すなわち、液晶配向膜は、位相差材の構成部材であって、基板上で重合性液晶と接する面に形成され、液晶を一定の方向に配向させるという役割を担っている。一般に、液晶配向膜は、ポリイミド(前駆体)やアクリル系のポリマーなどの樹脂と、所望によりその他の添加剤が溶媒に溶解した溶液を基板に塗布し、焼成した後に、ラビング処理や光配向処理を施すことで、得ることが出来る。
その際、基板として、従来はガラス基板が主に用いられてきたが、近年では、運搬や保存上の要請から、ガラス基板に代わってフィルム基板の利用が増えてきている。しかし、液晶配向剤は通常、有機溶媒に溶解した溶液であるため、塗布した際に、フィルム基板などが有機溶剤に耐性がない場合、液晶配向膜の形成過程でフィルム基板が溶解し、それにより、例えば、位相差材に必要な透明性が失われるといった懸念がある。そのため、フィルム基板上に液晶配向膜を形成したい場合、用いられる溶剤や基板が制限されるといった問題があった。
【0004】
この点に関して、ポリアミック酸などの水溶液を基板に塗布、焼成して、液晶配向膜を形成するという方法も考えられるが、この場合、ポリアミック酸を脱水閉環してポリイミドを形成するために、高温での焼成が必要となり、やはり、フィルム基板には適さない。また、テトラカルボン酸のジエステルとジアミンとを、水を含むアルコール溶媒に溶解させた液晶配向剤が知られており、この液晶配向剤は、溶液中で反応させてポリイミド前駆体を含む塗布液を調製した上で、基板上に塗布して用いられる(特許文献1)。しかし、この方法でも、基板上でポリイミドを形成させるために、200℃以上の高温での焼成が必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−115019
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、低温での焼成により液晶配向膜を形成することが出来る水溶媒系液晶配向剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、光配向性部位を有する繰り返し単位とカルボキシル基を有する繰り返し単位とを有する重合体のオニウム塩が水に溶解してなる水溶媒系液晶配向剤を選択することにより、低温での焼成により、基材の種類を問わずに優れた配向性を有する液晶配向膜を形成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は下記1.〜8.に関する。
1.(A)成分として、光配向性部位を有する繰り返し単位とカルボキシル基を有する繰り返し単位とを有する重合体のオニウム塩が水に溶解してなる水溶媒系液晶配向剤。
【0009】
2.前記光配向性基が下記式(1)で表される構造を含む有機基である、上記1に記載の水溶媒系液晶配向剤。
【化1】

(式中、Xは任意の置換基で置換されていても良いフェニレン基を表す。)
3.前記(A)成分の重合体がアクリル共重合体である、上記1又は2に記載の水溶媒系液晶配向剤。
4.前記(A)成分の重合体が熱架橋性基を有し、さらに(B)成分として水溶性の架橋剤を含有する、上記1乃至3のいずれかに記載の水溶媒系液晶配向剤。
5.さらに、(C)成分として架橋触媒をさらに含有する、上記1乃至4のいずれかに記載の水溶媒系液晶配向剤。
【0010】
6.さらに、(D)成分として下記式(2)で表されるモノマーをさらに含有する上記1乃至5のいずれかに記載の水溶媒系液晶配向剤。
【化2】

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C8ハロシクロアルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6ハロアルケニル、C3〜C8シクロアルケニル、C3〜C8ハロシクロアルケニル、C2〜C6アルキニル、C2〜C6ハロアルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、(C1〜C6アルキル)カルボニル、(C1〜C6ハロアルキル)カルボニル、(C1〜C6アルコキシ)カルボニル、(C1〜C6ハロアルコキシ)カルボニル、(C1〜C6アルキルアミノ)カルボニル、(C1〜C6ハロアルキル)アミノカルボニル、ジ(C1〜C6アルキル)アミノカルボニル、シアノ及びニトロから選ばれる置換基を表し、Rは下記式(3)
【化3】

(式(3)中、破線は結合手を表し、Rは炭素数1〜30のアルキレン基、フェニレンまたは二価の炭素環若しくは複素環であり、このアルキレン基、フェニレンまたは二価の炭素環若しくは複素環中の1つ若しくは複数の水素原子は、フッ素原子又は有機基で置き換えられていてもよい。また、R中の−CHCH−が−CH=CH−に置き換えられていてもよく、R中の−CH−は、フェニレンまたは二価の炭素環若しくは複素環に置き換えられていてもよく、さらに、次に挙げるいずれかの基が互いに隣り合わない場合において、これらの基に置き換えられていてもよい;−O−、−NHCO−、−CONH−、−COO−、−OCO−、−NH−、−NHCONH−、−CO−。Rは水素原子又はメチル基である。)で表される基を表し、nは0または1を表す。)
【0011】
7.上記1乃至6のいずれかに記載の水溶媒系液晶配向剤を用いて得られることを特徴とする液晶配向膜。
8.上記7に記載の液晶配向膜を用いて得られる位相差材。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低温での焼成によっても、樹脂フィルム上でも高感度で重合性液晶を配向させることができる液晶配向膜を形成することができる水溶媒系液晶配向剤と、それから得られる液晶配向膜、及び位相差材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<水溶媒系液晶配向剤>
本発明の水溶媒系液晶配向剤は、(A)成分として光配向性部位とカルボキシル基を有する重合体のオニウム塩が水に溶解してなる。また、本発明の水溶媒系液晶配向剤は、(A)成分に加えて、(B)成分として架橋剤を含有することができる。さらに、本発明の水溶媒系液晶配向剤は、(A)成分、(B)成分に加えて、(C)成分として架橋触媒をさらに含有することができる。また、(D)成分としてカルボキシル基と、光配向性部位と、1つ以上の重合性基とを有するモノマーをさらに含有することができる。また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の添加剤を含有することができる。
以下、各成分の詳細を説明する。
【0014】
<(A)成分>
本発明の水溶媒系液晶配向剤に含有される(A)成分は、光配向性部位とカルボキシル基を有する重合体のオニウム塩である。以下、光配向性部位とカルボキシル基を有する重合体を(A)成分前駆体と呼ぶ。
【0015】
<(A)成分前駆体>
本発明において、光配向性部位とは、光二量化または光異性化する構造部位を言う。
(A)成分前駆体である重合体が光配向性部位として有することのできる光二量化する構造部位とは、光照射により二量体を形成する部位であり、その具体例としては、シンナモイル部位、カルコン部位、クマリン部位、アントラセン部位等が挙げられる。これらのうち可視光領域での透明性の高さ、光二量化反応性の高さからシンナモイル部位が好ましい。
【0016】
(A)成分前駆体である重合体が光配向性部位として有することのできる光異性化する構造部位とは、光照射によりシス体とトランス体とに変わる構造部位を指し、その具体例としてはアゾベンゼン部位、スチルベン部位等からなる部位が挙げられる。これらのうち反応性の高さからアゾベンゼン部位が好ましい。
【0017】
また、(A)成分前駆体である重合体はアクリル共重合体であることが好ましい。
【0018】
(A)成分前駆体である重合体において、カルボキシル基は直接結合又は連結基を介して光配向性部位とつながっていてもよく、光配向性部位を有する側鎖とは別の側鎖に存在していてもよい。
【0019】
(A)成分前駆体である重合体において、カルボキシル基が直接結合又は連結基を介して光配向性部位とつながっている場合、そのような連結基としては、直鎖状アルキレン、分岐アルキレン、環状アルキレン及びフェニレンから選ばれる二価の基であるか、又は当該二価の基が複数結合してなる基である。この場合、連結基を構成する二価の基同士の結合、及び連結基と熱反応性部位との結合としては、単結合、エステル結合、アミド結合、ウレア結合またはエーテル結合が挙げられる。上記二価の基が複数となる場合は、二価の基同士は同一でも異なっていてもよく、上記結合が複数となる場合は、結合同士は同一でも異なっていてもよい。
【0020】
そのようなカルボキシル基が直接結合又は連結基を介して光配向性部位とつながっている光配向性基としては、例えば、下記式(1)で表される構造を含む有機基が好ましい。
【化4】

(式中、Xは任意の置換基で置換されていても良いフェニレン基を表す。)
【0021】
前記任意の置換基としては特に限定されないが、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基等のアルキル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;ヨウ素、臭素、塩素、フッ素等のハロゲン原子;シアノ基;ニトロ基等が挙げられる。
【0022】
(A)成分前駆体としては、上記式(1)で表される構造を含む有機基が、スペーサーを介して主鎖に結合した重合体が好ましい。スペーサーとしては、直鎖状アルキレン、分岐アルキレン、環状アルキレン及びフェニレンから選ばれる二価の基であるか、当該二価の基が複数結合してなる基を表す。この場合、スペーサーを構成する二価の基同士の結合、及びスペーサーと上記式(1)で表される基との結合としては、単結合、エステル結合、アミド結合、ウレア結合またはエーテル結合が挙げられる。上記二価の基が複数となる場合は、二価の基同士は同一でも異なっていてもよく、上記結合が複数となる場合は、結合同士は同一でも異なっていてもよい。
【0023】
本発明において、アクリル共重合体とは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等の不飽和二重結合を有するモノマーを重合して得られる共重合体をいう。
光配向性基を有するアクリル重合体(以下、特定共重合体ともいう)は、斯かる構造を有するアクリル共重合体であればよく、アクリル共重合体を構成する高分子の主鎖の骨格及び側鎖の種類などについて特に限定されない。
【0024】
(A)成分前駆体であるアクリル共重合体は、重量平均分子量が1,000乃至200,000であることが好ましく、2,000乃至150,000であることがより好ましく、3,000乃至100,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が200,000を超えて過大なものであると、溶剤に対する溶解性が低下しハンドリング性が低下する場合があり、重量平均分子量が1,000未満で過小なものであると、熱硬化時に硬化不足になり溶剤耐性及び耐熱性が低下する場合がある。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準試料としてポリスチレンを用いて得られる値である。以下、本明細書においても同様とする。
【0025】
(A)成分前駆体である光配向性基を有するアクリル共重合体の合成方法としては、光配向性基を有するモノマー、例えば、上記式(1)で表される光配向性基を有するモノマーを重合する方法が簡便である。
【0026】
上記式(1)で表される光配向性基を有するモノマーとしては、例えば、下記式M1−1〜M1−7およびM1−17〜M1−21から選ばれるモノマーが挙げられる。
【化5】

【0027】
【化6】


(式中、M1は水素原子又はメチル基であり、s1はメチレン基の数を表し、2乃至9の自然数である。)
【0028】
このようなモノマーM1の具体例としては、例えば、4−(6−メタクリルオキシヘキシル−1−オキシ)けい皮酸、4−(6−アクリルオキシヘキシル−1−オキシ)けい皮酸、4−(3−メタクリルオキシプロピル−1−オキシ)けい皮酸、4−(4−(3−メタクリルオキシプロピル−1−オキシ)シンナモイルオキシ)安息香酸などが挙げられる。
【0029】
また、本発明の(A)成分前駆体において、カルボキシル基が光配向性部位を有する側鎖とは別の側鎖に存在する場合、そのようなアクリル重合体の合成方法としては、光配向性基を有するモノマーと、カルボキシル基を有するモノマーとを共重合する方法が簡便である。
【0030】
カルボキシル基を(A)成分の重合体に含有させる場合の含有量は、(A)成分前駆体である重合体における繰り返し単位1単位あたり、0.1乃至0.9個であることが好ましく、液晶配向膜の配向性と水溶性とのバランスの観点から、0.2乃至0.8個であることがさらに好ましい。
【0031】
カルボキシル基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、モノ−(2−(アクリロイルオキシ)エチル)フタレート、モノ−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)フタレート、N−(カルボキシフェニル)マレイミド、N−(カルボキシフェニル)メタクリルアミド、及びN−(カルボキシフェニル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0032】
また、カルボキシル基を有するモノマーとしては、下記式M2−1〜M2−9からなる群から選ばれる式で表されるモノマーを用いることもできる。
【化7】
【0033】
【化8】


(式中、M1は水素原子又はメチル基であり、s1はメチレン基の数を表し、2乃至9の自然数である。)
【0034】
光反応性部位を有するモノマーとしては、例えば、4−(6−メタクリルオキシヘキシル−1−オキシ)シンナムアミド、4−(6−アクリルオキシヘキシル−1−オキシ)シンナムアミド、4−(3−メタクリルオキシプロピル−1−オキシ)シンナムアミド、4−(6−メタクリルオキシヘキシル−1−オキシ)シンナムアミド、4−(6−メタクリルオキシヘキシル−1−オキシ)−N−(4−シアノフェニル)シンナムアミド、及び4−(6−メタクリルオキシヘキシル−1−オキシ)−N−ビスヒドロキシエチルシンナムアミドのアミド基を有するモノマー、下記式M1−8〜M1−16およびM1−21からなる群から選ばれる式で表されるモノマーなどが挙げられる。
【化9】
【0035】
【化10】

(式中、M1は水素原子又はメチル基であり、s1はメチレン基の数を表し、2乃至9の自然数である。)
【0036】
光反応性部位を有するモノマーとしては、上記M1−1〜M1−7及びM1−17〜M1−20から選ばれるモノマーを用いることも出来る。
【0037】
また、本発明の液晶配向剤に熱架橋システムを導入する場合、(A)成分前駆体である重合体は、熱架橋性基を有するモノマーと共重合させてもよい。そのようなモノマーとしては、自己架橋性基及び架橋性基を有するモノマー、ヒドロキシ基、アミド基及びアミノ基から選ばれる置換基を有するモノマーなどが挙げられる。
【0038】
自己架橋性基及び架橋性基を有するモノマーとしては、例えば、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基で置換された(メタ)アクリルアミド化合物;3−トリメトキシシリルプロピルアクリレート、3−トリエトキシシリルプロピルアクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレート等のトリアルコキシシリル基を有するモノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基を有するモノマー;1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,7−オクタジエンモノエポキサイド等のビニル基を有するモノマー;メタクリル酸2−(0−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ)エチル、メタクリル酸2−(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ)エチル等のブロック化イソシアナート基を有するモノマー等が挙げられる。なお、(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミドとメタクリルアミドの双方を意味する。
【0039】
ヒドロキシ基、アミド基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、カプロラクトン2−(アクリロイルオキシ)エチルエステル、カプロラクトン2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルメタクリレート、5−アクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン、及び5−メタクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン等のヒドロキシ基を有するモノマー;ヒドロキシスチレン、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)マレイミド、及びN−(ヒドロキシフェニル)マレイミド等のフェノール性ヒドロキシ基を有するモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基を有するモノマー;アミノエチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピルアクリレート、アミノプロピルメタクリレート等のアミノ基を有するモノマー等が挙げられる。
【0040】
さらに、ヒドラジド系架橋剤を併用してヒドラジド架橋を形成する目的で、ダイアセトンアクリルアミド(DAAM)、アリルアセトアセテート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート等のケト基含有モノマーを10重量%未満の割合で(好ましくは0.5重量%〜5重量%)共重合してもよい。
【0041】
また、本発明においては、特定共重合体を得る際に、光配向性基を有するモノマー、自己架橋性基を有するモノマー又は架橋性基を有するモノマー、ヒドロキシ基、アミド基及びアミノ基から選ばれる置換基を有するモノマー並びにケト基含有モノマーの他に、これらのモノマーと共重合可能なその他モノマーを併用することができる。
【0042】
当該その他モノマーの具体例としては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物、ビニル化合物、液晶性を発現する置換基を有するモノマー、前記自己架橋性基及び架橋性基を有するモノマー、前記ヒドロキシ基、アミド基及びアミノ基から選ばれる置換基を有するモノマー等が挙げられる。
以下、前記モノマーの具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
当該その他モノマーの一例である前記アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルアクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルアクリレート、8−エチル−8−トリシクロデシルアクリレート等が挙げられる。
【0044】
当該その他モノマーの一例である前記メタクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、γ−ブチロラクトンメタクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルメタクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、8−エチル−8−トリシクロデシルメタクリレート等が挙げられる。
【0045】
当該その他モノマーの一例である前記(メタ)アクリルアミド化合物としては、例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
当該その他モノマーの一例である前記ビニル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ビニルナフタレン、ビニルカルバゾール、アリルグリシジルエーテル、及び3−エテニル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン等が挙げられる。
【0046】
当該その他モノマーの一例である前記スチレン化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、及びブロモスチレン等が挙げられる。
【0047】
当該その他モノマーの一例である前記マレイミド化合物としては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、及びN−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0048】
また、当該その他モノマーの一例である液晶性を発現する置換基を有するモノマーとして、下記式M2−10〜M2−16からなる群から選ばれる式で表されるモノマーを用いることもできる。
【化11】


(式中、M1は水素原子又はメチル基であり、s1はメチレン基の数を表し、2乃至9の自然数である。)
【0049】
前記自己架橋性基及び架橋性基を有するモノマー、前記ヒドロキシ基、アミド基及びアミノ基から選ばれる置換基を有するモノマーは前記の通りである。
【0050】
特定共重合体を得るために用いる各モノマーの使用量は、全モノマーの合計量に基づいて、光配向性基を有するモノマーが10乃至90モル%、自己架橋性基、基A及び架橋性基から選ばれる置換基(これらをまとめて特定架橋性基1とも称する。これは、光配向性基の末端の置換基も含む。)を有するモノマーが10乃至90モル%であることが好ましい。特定架橋性基1を有するモノマーの含有量が10モル%よりも少ないと、充分な熱硬化性を付与し難く、高感度かつ良好な液晶配向性を維持し難い。
また、特定共重合体を得る際に特定官能基1を有さないモノマーを併用する場合、その使用量は、全モノマーの合計量に基づいて、90モル%以下であることが好ましい。
【0051】
本発明に用いる特定共重合体を得る方法は特に限定されないが、例えば、特定官能基1を有するモノマーと所望により特定官能基1を有さないモノマーと重合開始剤等とを共存させた溶剤中において、50乃至110℃の温度下で重合反応により得られる。その際、用いられる溶剤は、特定官能基1を有するモノマー、所望により用いられる特定官能基1を有さないモノマー及び重合開始剤等を溶解するものであれば特に限定されない。
【0052】
溶剤の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、n−ペンタノール、2-メチル−1-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、3−メチル−2−ペンタノン、2−ペンタノン、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、シクロペンチルメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0053】
前記方法により得られる(A)成分前駆体である特定共重合体は、本発明の目的に用いる場合、すなわち、水中でアミンと反応させるために単離することが好ましい。その際は、前記重合反応で得られた(A)成分前駆体を含む反応溶液を、攪拌下のジエチルエーテルや水等に投入して再沈殿させ、生成した沈殿物を濾過・洗浄した後に、常圧又は減圧下で、常温乾燥又は加熱乾燥し、(A)成分前駆体の粉体とすることができる。前記操作により、(A)成分前駆体と共存する重合開始剤及び未反応のモノマーを除去することができ、その結果、精製した(A)成分前駆体の粉体が得られる。一度の操作で充分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解させ、上記の操作を繰り返し行えば良い。
【0054】
本発明においては、(A)成分前駆体は粉体形態としてから、水中でアミ等と反応させて塩形成させるのが好ましい。
また、本発明においては、(A)成分前駆体である重合体は、複数種の(A)成分前駆体である重合体の混合物であってもよい。
【0055】
<(A)成分>
本発明で用いられる(A)成分の重合体は、上記(A)成分前駆体である重合体をアミンと反応させてオニウム塩を形成したものである。
【0056】
本発明で(A)成分前駆体である重合体から(A)成分を調製するのに使用できるアミン化合物は、第一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−ノナデシルアミン、n−エイコシルアミン等の脂肪族アミン;シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;ベンジルアミン、フェネチルアミン等のアラルキルアミン;アニリン、p−n−ブチルアニリン、p−tert−ブチルアニリン、p−n−オクチルアニリン、p−n−デシルアニリン、p−n−ドデシルアニリン、p−n−テトラデシルアニリンなどのアニリン類、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミンなどのナフチルアミン類、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセンなどのアミノアントラセン類、1−アミノアントラキノンなどのアミノアントラキノン類、4−アミノビフェニル、2−アミノビフェニルなどのアミノビフェニル類、2−アミノフルオレン、1−アミノ−9−フルオレノン、4−アミノ−9−フルオレノンなどのアミノフルオレン類、5−アミノインダンなどのアミノインダン類、5−アミノイソキノリンなどのアミノイソキノリン類、9−アミノフェナントレンなどのアミノフェナントレン類等の芳香族アミンが挙げられる。更に、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,2−エチレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,3−プロピレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,4−ブチレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,5−ペンタメチレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,6−ヘキサメチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N−(3−ヒドロキシプロピル)アミン、N−(2−メトキシエチル)アミン、N−(2−エトキシエチル)アミン等のアミン化合物が挙げられる。
【0057】
第二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、エチルメチルアミン、メチル−n−プロピルアミン、メチル−n−ブチルアミン、メチル−n−ペンチルアミン、メチル−n−オクチルアミン、メチル−n−デシルアミン、メチル−n−ドデシルアミン、メチル−n−テトラデシルアミン、メチル−n−ヘキサデシルアミン、メチル−n−オクタデシルアミン、エチルイソプロピルアミン、エチル−n−ブチルアミン、エチル−n−ペンチルアミン、エチル−n−オクチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−n−ドデシルアミン、ジ−n−ヘキサデシルアミン、ジ−n−オクタデシルアミン等の脂肪族アミン;ジシクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;ジベンジルアミン等のアラルキルアミン;ジフェニルアミン等の芳香族アミン;フタルイミド、ピロール、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾール等の窒素含有複素環式化合物が挙げられる。更に、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、ビス(3−ヒドロキシプロピル)アミン、ビス(2−エトキシエチル)アミン、ビス(2−プロポキシエチル)アミン等が挙げられる。
【0058】
第三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ドデシルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチル−n−ブチルアミン、ジメチル−n−ヘキシルアミン、ジメチル−n−オクチルアミン、ジメチル−n−デシルアミン、ジエチル−n−デシルアミン、ジメチル−n−ドデシルアミン、ジメチル−n−テトラデシルアミン、ジメチル−n−ヘキサデシルアミン、ジメチル−n−オクタデシルアミン、ジメチル−n−エイコシルアミン等の脂肪族アミン;ピリジン、ピラジン、ピリミジン、キノリン、1−メチルイミダゾール、4,4’−ビピリジル、4−メチル−4,4’−ビピリジル等の窒素含有複素環式化合物が挙げられる。
【0059】
この中でも、沸点が液晶配向膜の焼成温度以下の比較的低いものが好ましい。
【0060】
これらの反応で使用できるアミン化合物の使用量は、(A)成分前駆体である重合体のカルボキシル基1モルに対して0.1〜20モル当量、好ましくは0.5〜10モル当量、より好ましくは1〜5モル当量であればよい。
【0061】
(A)成分前駆体である重合体とアミン化合物との反応は、水又は有機溶媒中で行なうことができる。使用する溶媒は、本反応の進行を著しく阻害しないものであって、(A)成分前駆体である重合体とアミン化合物を溶解可能なものが好ましい。
【0062】
中でも、(A)成分を調製したあと、液晶配向剤として直接用いることができるという点から、溶媒としては水が好ましい。一方、(A)成分を単離したい場合は、(A)成分前駆体である重合体とアミン化合物を溶解可能であるが(A)成分を溶解しない溶媒を用いれば、(A)成分の単離が容易となり、好適である。
【0063】
このような溶媒としては、水;イソプロパノール等のアルコール類;酢酸等の有機酸類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン類;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化物;n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド類が使用できる。これらの溶媒は1種を用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0064】
また、使用量は、(A)成分前駆体である重合体の質量に対して0.2〜1,000倍質量、好ましくは1〜500倍質量、より好ましくは5〜100倍質量、最も好ましくは5〜50倍質量の溶媒を使用することが好ましい。
【0065】
<(B)成分>
本発明の水溶媒系液晶配向剤には、(B)成分として架橋剤を含有させることができる。(B)成分としては、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミド基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基Aと反応する架橋剤であって、水溶性のものが挙げられる。
【0066】
(B)成分である架橋剤としては、メチロール化合物、イソシアナート化合物、フェノプラスト化合物、N−アルコキシメチルアクリルアミドの重合体、及びヒドラジド系架橋剤等が挙げられる。
【0067】
上述したメチロール化合物の具体例としては、アルコキシメチル化グリコールウリル、アルコキシメチル化ベンゾグアナミンおよびアルコキシメチル化メラミン等の化合物が挙げられる。
【0068】
アルコキシメチル化グリコールウリルの具体例としては、例えば、1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(メトキシメチル)尿素、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリノン、および1,3−ビス(メトキシメチル)−4,5−ジメトキシ−2−イミダゾリノン等が挙げられる。市販品として、三井サイテック(株)製グリコールウリル化合物(商品名:、パウダーリンク(登録商標)1174)等の化合物、メチル化尿素樹脂(商品名:UFR(登録商標)65)、ブチル化尿素樹脂(商品名:UFR(登録商標)300、U−VAN10S60、U−VAN10R、U−VAN11HV)、大日本インキ化学工業(株)製尿素/ホルムアルデヒド系樹脂(高縮合型、商品名:ベッカミン(登録商標)J−300S、同P−955、同N)等が挙げられる。
【0069】
アルコキシメチル化メラミンの具体例としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン等が挙げられる。市販品として、三井サイテック(株)製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:サイメル(登録商標)300、同301、同303、同350)、ブトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:マイコート(登録商標)506、同508)、三和ケミカル製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:ニカラック(登録商標)MW−30、同MW−22、同MW−11、同MS−001、同MX−002、同MX−730、同MX−750、同MX−035)等が挙げられる。
【0070】
また、このようなアミノ基の水素原子がメチロール基またはアルコキシメチル基で置換されたメラミン化合物、尿素化合物及びグリコールウリル化合物を縮合させて得られる化合物であってもよい。例えば、米国特許第6323310号に記載されているメラミン化合物から製造される高分子量の化合物が挙げられる。前記メラミン化合物の市販品としては、商品名:サイメル(登録商標)303(三井サイテック(株)製)等が挙げられる。
【0071】
ヒドラジド系架橋剤としては、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、ナフタル酸ジヒドラジド、アセトンジカルボン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、トリメリット酸ジヒドラジド、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸ジヒドラジド、ピロメリット酸ジヒドラジド、アコニット酸ジヒドラジドなどのジヒドラジド化合物が好ましく挙げられる。中でも、特に好ましくは、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドである。
【0072】
これらの架橋剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0073】
(A)成分と(B)成分の配合比は、質量比で20:80乃至100:0が好ましい。(B)成分の含有量が過大の場合は液晶配向性および保存安定性が低下することがある。
【0074】
<(C)成分>)
本発明の水溶媒系液晶配向剤は、上記(A)成分及び(B)成分に加え、ポリマーの熱硬化反応を促進させることを目的として、(C)成分として架橋触媒を含んでいてもよい。架橋触媒としては、酸や、加熱処理時の温度(例えば、80〜250℃程度)で熱分解して酸を発生する熱酸発生剤を用いることが好ましい。
【0075】
酸の具体例としては、塩酸またはその塩;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、メシチレンスルホン酸、p−キシレン−2−スルホン酸、m−キシレン−2−スルホン酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロ(2−エトキシエタン)スルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタン−1−スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸基含有化合物、その水和物または塩等が挙げられる。
【0076】
熱酸発生剤の具体例としては、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩、p−トルエンスルホン酸モルホニウム塩等が挙げられる。
【0077】
本発明の熱硬化性樹脂組成物中における(C)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、得られる硬化膜の熱硬化性、並びに組成物の保存安定性などを考慮すると、(A)成分のポリマーおよび(B)成分の架橋剤の合計100質量部に対し、0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜15質量部がより好ましく、0.5〜10質量部がより一層好ましい。
【0078】
<(D)成分>
本発明の位相差材形成用樹脂組成物は、(D)成分として、下記式(2)で表されるモノマーのオニウム塩を含有する。
【化12】

(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C8ハロシクロアルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6ハロアルケニル、C3〜C8シクロアルケニル、C3〜C8ハロシクロアルケニル、C2〜C6アルキニル、C2〜C6ハロアルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、(C1〜C6アルキル)カルボニル、(C1〜C6ハロアルキル)カルボニル、(C1〜C6アルコキシ)カルボニル、(C1〜C6ハロアルコキシ)カルボニル、(C1〜C6アルキルアミノ)カルボニル、(C1〜C6ハロアルキル)アミノカルボニル、ジ(C1〜C6アルキル)アミノカルボニル、シアノ及びニトロから選ばれる置換基を表し、Rは下記式(3)
【化13】

(式(3)中、破線は結合手を表し、Rは炭素数1〜30のアルキレン基、フェニレンまたは二価の炭素環若しくは複素環であり、このアルキレン基、フェニレンまたは二価の炭素環若しくは複素環中の1つ若しくは複数の水素原子は、フッ素原子又は有機基で置き換えられていてもよい。また、R中の−CHCH−が−CH=CH−に置き換えられていてもよく、R中の−CH−は、フェニレンまたは二価の炭素環若しくは複素環に置き換えられていてもよく、さらに、次に挙げるいずれかの基が互いに隣り合わない場合において、これらの基に置き換えられていてもよい;−O−、−NHCO−、−CONH−、−COO−、−OCO−、−NH−、−NHCONH−、−CO−。Rは水素原子又はメチル基である。)で表される基を表し、nは0または1を表す。)
【0079】
本明細書におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。尚、本明細書中「ハロ」の表記もこれらのハロゲン原子を表す。
【0080】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表し、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0081】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルキルの表記は、炭素原子に結合した水素原子が、ハロゲン原子によって任意に置換された、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表し、このとき、2個以上のハロゲン原子によって置換されている場合、それらのハロゲン原子は互いに同一でも、または互いに相異なっていてもよい。例えばフルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、ジフルオロメチル基、クロロフルオロメチル基、ジクロロメチル基、ブロモフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、ジクロロフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、ブロモクロロフルオロメチル基、ジブロモフルオロメチル基、2-フルオロエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2-クロロ-2-フルオロエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2-ブロモ-2-フルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエチル基、2-ブロモ-2-クロロ-2-フルオロエチル基、2-ブロモ-2,2-ジクロロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエチル基、2-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、1,2-ジクロロ-1,2,2-トリフルオロエチル基、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、2-フルオロプロピル基、2-クロロプロピル基、2-ブロモプロピル基、2-クロロ-2-フルオロプロピル基、2,3-ジクロロプロピル基、2-ブロモ-3-フルオロプロピル基、3-ブロモ-2-クロロプロピル基、2,3-ジブロモプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-ブロモ-3,3-ジフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基、ヘプタフルオロプロピル基、2,3-ジクロロ-1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2-フルオロ-1-メチルエチル基、2-クロロ-1-メチルエチル基、2-ブロモ-1-メチルエチル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブチル基、ノナフルオロブチル基、4-クロロ-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブチル基、2-フルオロ-2-メチルプロピル基、2-クロロ-1,1-ジメチルエチル基、2-ブロモ-1,1-ジメチルエチル基、5-クロロ-2,2,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0082】
本明細書におけるCa〜Cbシクロアルキルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる環状の炭化水素基を表し、3員環から6員環までの単環又は複合環構造を形成することが出来る。また、各々の環は指定の炭素原子数の範囲でアルキル基によって任意に置換されていてもよい。例えばシクロプロピル基、1-メチルシクロプロピル基、2-メチルシクロプロピル基、2,2-ジメチルシクロプロピル基、2,2,3,3-テトラメチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、2-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2-メチルシクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0083】
本明細書におけるCa〜Cbハロシクロアルキルの表記は、炭素原子に結合した水素原子が、ハロゲン原子によって任意に置換された、炭素原子数がa〜b個よりなる環状の炭化水素基を表し、3員環から6員環までの単環又は複合環構造を形成することが出来る。また、各々の環は指定の炭素原子数の範囲でアルキル基によって任意に置換されていてもよく、ハロゲン原子による置換は環構造部分であっても、側鎖部分であっても、或いはそれらの両方であってもよく、さらに、2個以上のハロゲン原子によって置換されている場合、それらのハロゲン原子は互いに同一でも、または互いに相異なっていてもよい。例えば2,2-ジフルオロシクロプロピル基、2,2-ジクロロシクロプロピル基、2,2-ジブロモシクロプロピル基、2,2-ジフルオロ-1-メチルシクロプロピル基、2,2-ジクロロ-1-メチルシクロプロピル基、2,2-ジブロモ-1-メチルシクロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロシクロブチル基、2-(トリフルオロメチル)シクロヘキシル基、3-(トリフルオロメチル)シクロヘキシル基、4-(トリフルオロメチル)シクロヘキシル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0084】
本明細書におけるCa〜Cbアルケニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状で、且つ分子内に1個又は2個以上の二重結合を有する不飽和炭化水素基を表し、例えばビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチルエテニル基、2-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、2-ペンテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、2-ヘキセニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、2,4-ジメチル-2,6-ヘプタジエニル基、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0085】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルケニルの表記は、炭素原子に結合した水素原子が、ハロゲン原子によって任意に置換された、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状で、且つ分子内に1個又は2個以上の二重結合を有する不飽和炭化水素基を表す。このとき、2個以上のハロゲン原子によって置換されている場合、それらのハロゲン原子は互いに同一でも、または互いに相異なっていてもよい。例えば2,2-ジクロロビニル基、2-フルオロ-2-プロペニル基、2-クロロ-2-プロペニル基、3-クロロ-2-プロペニル基、2-ブロモ-2-プロペニル基、3-ブロモ-2-プロペニル基、3,3-ジフルオロ-2-プロペニル基、2,3-ジクロロ-2-プロペニル基、3,3-ジクロロ-2-プロペニル基、2,3-ジブロモ-2-プロペニル基、2,3,3-トリフルオロ-2-プロペニル基、2,3,3-トリクロロ-2-プロペニル基、1-(トリフルオロメチル)エテニル基、3-クロロ-2-ブテニル基、3-ブロモ-2-ブテニル基、4,4-ジフルオロ-3-ブテニル基、3,4,4-トリフルオロ-3-ブテニル基、3-クロロ-4,4,4-トリフルオロ-2-ブテニル基、3-ブロモ-2-メチル-2-プロペニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0086】
本明細書におけるCa〜Cbシクロアルケニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる環状の、且つ1個又は2個以上の二重結合を有する不飽和炭化水素基を表し、3員環から6員環までの単環又は複合環構造を形成することが出来る。また、各々の環は指定の炭素原子数の範囲でアルキル基によって任意に置換されていてもよく、さらに、二重結合はendo-又はexo-のどちらの形式であってもよい。例えば2-シクロペンテン-1-イル基、3-シクロペンテン-1-イル基、2-シクロヘキセン-1-イル基、3-シクロヘキセン-1-イル基、ビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2-イル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0087】
本明細書におけるCa〜Cbハロシクロアルケニルの表記は、炭素原子に結合した水素原子が、ハロゲン原子によって任意に置換された、炭素原子数がa〜b個よりなる環状の、且つ1個又は2個以上の二重結合を有する不飽和炭化水素基を表し、3員環から6員環までの単環又は複合環構造を形成することが出来る。また、各々の環は指定の炭素原子数の範囲でアルキル基によって任意に置換されていてもよく、さらに、二重結合はendo-又はexo-のどちらの形式であってもよい。また、ハロゲン原子による置換は環構造部分であっても、側鎖部分であっても、或いはそれらの両方であってもよく、2個以上のハロゲン原子によって置換されている場合、それらのハロゲン原子は互いに同一でも、または互いに相異なっていても良い。例えば2-クロロビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2-イル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0088】
本明細書におけるCa〜Cbアルキニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状で、且つ分子内に1個又は2個以上の三重結合を有する不飽和炭化水素基を表し、例えばエチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、2-ペンチニル基、1-メチル-2-ブチニル基、1,1-ジメチル-2-プロピニル基、2-ヘキシニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0089】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルキニルの表記は、炭素原子に結合した水素原子が、ハロゲン原子によって任意に置換された、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状で、且つ分子内に1個又は2個以上の三重結合を有する不飽和炭化水素基を表す。このとき、2個以上のハロゲン原子によって置換されている場合、それらのハロゲン原子は互いに同一でも、または互いに相異なっていても良い。例えば2-クロロエチニル基、2-ブロモエチニル基、2-ヨードエチニル基、3-クロロ-2-プロピニル基、3-ブロモ-2-プロピニル基、3-ヨード-2-プロピニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0090】
本明細書におけるCa〜Cbアルコキシの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-O-基を表し、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、i-プロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、i-ブチルオキシ基、s-ブチルオキシ基、t-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0091】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルコキシの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-O-基を表し、例えばジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、クロロジフルオロメトキシ基、ブロモジフルオロメトキシ基、2-フルオロエトキシ基、2-クロロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、1,1,2,2,-テトラフルオロエトキシ基、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ基、2-ブロモ-1,1,2-トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、2,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,2-トリクロロ-1,1-ジフルオロエトキシ基、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルオキシ基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルオキシ基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エトキシ基、ヘプタフルオロプロピルオキシ基、2-ブロモ-1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルオキシ基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0092】
本明細書における(Ca〜Cbアルキル)カルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-C(O)-基を表し、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、2-メチルブタノイル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0093】
本明細書における(Ca〜Cbハロアルキル)カルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-C(O)-基を表し、例えばフルオロアセチル基、クロロアセチル基、ジフルオロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、クロロジフルオロアセチル基、ブロモジフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ペンタフルオロプロピオニル基、ヘプタフルオロブタノイル基、3-クロロ-2,2-ジメチルプロパノイル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0094】
本明細書における(Ca〜Cbアルコキシ)カルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-O-C(O)-基を表し、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、 n-プロピルオキシカルボニル基、i-プロピルオキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、i-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0095】
本明細書における(Ca〜Cbハロアルコキシ)カルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-O-C(O)-基を表し、例えば2-クロロエトキシカルボニル基、2,2-ジフルオロエトキシカルボニル基、2,2,2-トリフルオロエトキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0096】
本明細書における(Ca〜Cbアルキルアミノ)カルボニルの表記は、水素原子の一方が炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル基によって置換されたカルバモイル基を表し、例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、n-プロピルカルバモイル基、i-プロピルカルバモイル基、n-ブチルカルバモイル基、i-ブチルカルバモイル基、s-ブチルカルバモイル基、t-ブチルカルバモイル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0097】
本明細書における(Ca〜Cbハロアルキルアミノ)カルボニルの表記は、水素原子の一方が炭素原子数a〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル基によって置換されたカルバモイル基を表し、例えば2-フルオロエチルカルバモイル基、2-クロロエチルカルバモイル基、2,2-ジフルオロエチルカルバモイル基、2,2,2-トリフルオロエチルカルバモイル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0098】
本明細書におけるジ(Ca〜Cbアルキル)アミノカルボニルの表記は、水素原子が両方とも、それぞれ同一でも又は互いに相異なっていてもよい炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル基によって置換されたカルバモイル基を表し、例えばN,N-ジメチルカルバモイル基、N-エチル-N-メチルカルバモイル基、N,N-ジエチルカルバモイル基、N,N-ジ-n-プロピルカルバモイル基、N,N-ジ-n-ブチルカルバモイル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0099】
式(1)で表される桂皮酸又は安息香酸誘導体の置換基R、R、R及びRとしては、中でも、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、シアノ及びニトロから選ばれる置換基であることが好ましい。
【0100】
また、Rとしては上記好ましいR、R、R及びRの定義の中で水素原子以外の置換基であることが、配向感度の点から好ましく、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、シアノ及びニトロから選ばれる置換基がさらに好ましい。
【0101】
また、R、R、R、R及びRのいずれか1又は2の置換基が上記式(3)で表される基であることも好ましく、その際、Rが式(3)で表される基であることが好ましい。
【0102】
式(2)で表されるモノマーから(D)成分であるオニウム塩を調製する際の条件は、前記(A)成分前駆体である重合体をアミンと反応させて(A)成分のオニウム塩を調製する際の条件に準じる。
【0103】
(D)成分である化合物を添加させる際は、式(2)で表されるモノマーから(D)成分であるオニウム塩を調製した水溶液と、前記(A)成分の水溶液を混合しても良いし、前記(A)成分前駆体である重合体と式(2)で表されるモノマーとを水中で混合し、アミンを添加してオニウム塩を調製してもよい。
【0104】
このような(D)成分の化合物としては、前記M1−1〜M1−7、M1−17〜M1−21、M2−1〜M2−9から選ばれるモノマーが挙げられる。
【0105】
本発明の水溶媒系液晶配向剤における(D)成分の含有量は、(A)成分の樹脂と、(B)成分の架橋剤との合計量100質量部に対して、好ましくは0質量部乃至40質量部であり、更に好ましくは0質量部乃至30質量部である。(D)成分の含有量が40質量部より多い場合、硬化膜の耐溶剤性が低下する場合がある。
【0106】
<溶剤>
本発明の水溶媒系液晶配向剤は、主として水に溶解した溶液状態で用いられるが、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の溶剤を含有していてもよい。その際に使用する溶剤は、(A)成分及び(B)成分、所望により、(C)成分、(D)成分及び/又は、後述するその他添加剤を溶解でき、かつ、水に溶解するものであればよく、その種類及び構造などは特に限定されるものでない。
【0107】
<その他添加剤>
さらに、本発明の水溶媒系液晶配向剤は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、密着向上剤、シランカップリング剤、界面活性剤、レオロジー調整剤、顔料、染料、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤等を含有することができる。これらの添加剤は、その添加剤としての効果を奏するものであって、なおかつ水溶性であればその構造等は限定されない。
【0108】
<水溶媒系液晶配向剤の調製>
本発明の水溶媒系液晶配向剤は、(A)成分である樹脂と、(B)成分である架橋剤を含有する。本発明の位相差材形成用樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分に加えて、さらに、(C)成分として架橋触媒を含有することができ、(D)成分として式(2)で表されるモノマーをも含有することができる。そして、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の添加剤を含有することができる。
【0109】
(A)成分と(B)成分の配合比は、質量比で20:80乃至100:0が好ましい。(B)成分の含有量が過大の場合は液晶配向性が低下し易い。
【0110】
本発明の水溶媒系液晶配向剤の好ましい例は、以下のとおりである。
[1]:(A)成分が水に溶解してなる水溶媒系液晶配向剤。
【0111】
[2]:(A)成分と、(A)成分100質量部に基づいて10質量部乃至100質量部の(B)成分とが水に溶解してなる水溶媒系液晶配向剤。
【0112】
[3]:(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対し、0.01〜20質量部の(C)成分が水に溶解してなる水溶媒系液晶配向剤。
【0113】
[4]:(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、10質量部乃至50質量部の(D)成分が水に溶解してなる水溶媒系液晶配向剤。
【0114】
本発明の水溶媒系液晶配向剤を溶液として用いる場合の配合割合、調製方法等を以下に詳述する。
本発明の水溶媒系液晶配向剤における固形分の割合は、各成分が均一に溶剤に溶解している限り、特に限定されるものではないが、1質量%乃至80質量%であり、好ましくは2質量%乃至60質量%であり、より好ましくは3質量%乃至40質量%である。ここで、固形分とは、水溶媒系液晶配向剤の全成分から溶剤を除いたものをいう。
【0115】
本発明の水溶媒系液晶配向剤の調製方法は、特に限定されない。調製方法としては、例えば、溶剤に溶解した(A)成分の溶液に、所望により(B)成分、さらには(C)成分、(D)成分等を所定の割合で混合し、さらにアミンを添加した上で、均一な溶液とする方法、或いは、この調製方法の適当な段階において、必要に応じてその他添加剤をさらに添加して混合する方法が挙げられる。
【0116】
本発明の水溶媒系液晶配向剤の調製においては、溶剤中の重合反応によって得られる特定共重合体の溶液をそのまま使用することができる。この場合、例えば、(A)成分の溶液に前記と同様に(B)成分、(C)成分、(D)成分等を入れて均一な溶液とする。この際に、濃度調整を目的としてさらに溶剤を追加投入してもよい。このとき、(A)成分の生成過程で用いられる溶剤と、水溶媒系液晶配向剤の濃度調整に用いられる溶剤とは同一であってもよく、また異なってもよい。
【0117】
また、調製された水溶媒系液晶配向剤の溶液は、孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて濾過した後、使用することが好ましい。
【0118】
<硬化膜、液晶配向膜および位相差材>
本発明の水溶媒系液晶配向剤の溶液を基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、金属、例えば、アルミニウム、モリブデン、クロムなどが被覆された基板、ガラス基板、石英基板、ITO基板等)やフィルム(例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリルフィルム等の樹脂フィルム)等の上に、バーコート、回転塗布、流し塗布、ロール塗布、スリット塗布、スリットに続いた回転塗布、インクジェット塗布、印刷などによって塗布して塗膜を形成し、その後、ホットプレートまたはオーブン等で加熱乾燥することにより、硬化膜を形成することができる。
【0119】
加熱乾燥の条件としては、中和しているアミン、溶媒である水が揮発することが重要であり、また、架橋剤を含む場合は、架橋剤による架橋反応が進行すればよく、例えば、温度60℃乃至230℃、時間0.4分間乃至60分間の範囲の中から適宜選択された加熱温度および加熱時間が採用される。加熱温度および加熱時間は、好ましくは70℃乃至230℃、0.5分間乃至10分間である。
【0120】
本発明の水溶媒系液晶配向剤を用いて形成される硬化膜の膜厚は、例えば、0.05μm乃至5μmであり、使用する基板の段差や光学的、電気的性質を考慮し適宜選択することができる。
【0121】
このようにして形成された硬化膜は、偏光UV照射を行うことで液晶配向膜、すなわち、液晶等の液晶性を有する化合物を配向させる部材として機能させることができる。
【0122】
偏光UVの照射方法としては、通常150nm乃至450nmの波長の紫外光〜可視光が用いられ、室温または加熱した状態で垂直または斜め方向から直線偏光を照射することによって行われる。
【0123】
本発明の水溶媒系液晶配向剤から形成された液晶配向膜は耐溶剤性および耐熱性を有しているため、この液晶配向膜上に、重合性液晶溶液からなる位相差材料を塗布した後、液晶の相転移温度まで加熱することで位相差材料を液晶状態とし、液晶配向膜上で配向させる。そして、配向状態となった位相差材料をそのまま硬化させ、光学異方性を有する層として位相差材を形成することができる。
【0124】
位相差材料としては、例えば、重合性基を有する液晶モノマーおよびそれを含有する組成物等が用いられる。そして、液晶配向膜を形成する基板がフィルムである場合には、本実施の形態の位相差材を有するフィルムは、位相差フィルムとして有用である。このような位相差材を形成する位相差材料は、液晶状態となって、液晶配向膜上で、水平配向、コレステリック配向、垂直配向、ハイブリッド配向等の配向状態をとるものがあり、それぞれ必要とされる位相差に応じて使い分けることが出来る。
【0125】
また、3Dディスプレイに用いられるパターン化位相差材を製造する場合には、本実施形態の水溶媒系液晶配向剤から上記した方法で形成された硬化膜に、ラインアンドスペースパターンのマスクを介して所定の基準から、例えば、+45度の向きで偏光UV露光し、次いで、マスクを外してから−45度の向きで偏光UVを露光し、液晶の配向制御方向の異なる2種類の液晶配向領域が形成された液晶配向膜を得る。その後、重合性液晶溶液からなる位相差材料を塗布した後、液晶の相転移温度まで加熱することで位相差材料を液晶状態とし、液晶配向膜上で配向させる。そして、配向状態となった位相差材料をそのまま硬化させ、位相差特性の異なる2種類の位相差領域がそれぞれ複数、規則的に配置された、パターン化位相差材を得ることができる。
【0126】
また、上記のようにして形成された、本発明の液晶配向膜を有する2枚の基板を用い、スペーサを介して両基板上の液晶配向膜が互いに向かい合うように張り合わせた後、それらの基板の間に液晶を注入して、液晶が配向した液晶表示素子とすることもできる。
そのため、本発明の水溶媒系液晶配向剤は、各種位相差材(位相差フィルム)や液晶表示素子等の製造に好適に用いることができる。
【実施例】
【0127】
以下、例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。
【0128】
[実施例等で用いる組成成分とその略称]
以下の実施例および比較例で用いられる各組成成分は、次のとおりである。
<成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D):原料>
M6CA:4−(6−メタクリルオキシヘキシル−1−オキシ)けい皮酸
CIN1:4−(6−メタクリルオキシヘキシル−1−オキシ)けい皮酸メチルエステル
DAAM:ダイアセトンアクリルアミド
MMA:メタクリル酸メチル
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
DEGMA:ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート
IBMA:イソボニルメタクリレート
FA−513M:ジシクロペンタニルメタクリレ−ト.
DCPMA:ジシクロペンタニルメタクリレ−ト
NIPAM:イソプロピルアクリルアミド
AAm:アクリルアミド
M1:
【化14】


M2:
【化15】


M3:
【化16】

MAA:メタクリル酸
M6BA:4−(2−メタクリルオキシヘキシル−1−オキシ)安息香酸
AIBN:α、α’−アゾビスイソブチロニトリル
TEA:トリエチルアミン
DIPA:ジイソプロピルアミン
【0129】
<成分(B):架橋剤>
ADH:アジピン酸ジヒドラジド
HMM:下記の構造式で表されるメラミン架橋剤[サイメル(CYMEL)(登録商標)303(三井サイテック(株)製)]
【化17】

【0130】
<成分(C):硬化触媒>
PTSA:p−トルエンスルホン酸一水和物
【0131】
<成分(D):添加剤>
M6CA−TEA:M6CAトリエチルアミン塩
【0132】
<溶剤>
重合例では溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)、シクロヘキサノン(CHN)を用い、実施例の各位相差材形成用樹脂組成物は溶剤として超純水(DIW)を用いた。
【0133】
<重合体の分子量の測定>
重合例におけるアクリル共重合体の分子量は、(株)Shodex社製常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC−101)、Shodex社製カラム(KD―803、KD−805)を用い以下のようにして測定した。
なお、下記の数平均分子量(以下、Mnと称す。)及び重量平均分子量(以下、Mwと称す。)は、ポリスチレン換算値にて表した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・HO)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o―リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10mL/L)
流速:1.0mL/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量 約900,000、150,000、100,000、30,000)、及び、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(分子量 約12,000、4,000、1,000)。
【0134】
<重合例1>
M6CA 4.66g、DAAM 0.27g、重合触媒としてAIBN 0.07gをPM 31.5g CHN 13.5gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度10質量%)を得た。得られたアクリル共重合体溶液をジエチルエーテルにて再沈殿を行い、アクリル共重合体の固形PA1を得た。得られたPA1のMnは13,200、Mwは33,500であった。
【0135】
<重合例2>
M6CA 3.27g、DAAM 1.66g、重合触媒としてAIBN 0.07gをPM 31.5g CHN 13.5gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度10質量%)を得た。得られたアクリル共重合体溶液をジエチルエーテルにて再沈殿を行い、アクリル共重合体の固形PA2を得た。得られたPA2のMnは13,400、Mwは33,800であった。
【0136】
<重合例3>
M6CA 4.77g、MMA 0.16g、重合触媒としてAIBN 0.07gをPM 31.5g CHN 13.5gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度10質量%)を得た。得られたアクリル共重合体溶液をジエチルエーテルにて再沈殿を行い、アクリル共重合体の固形PA3を得た。得られたPA3のMnは14,500、Mwは33,400であった。
【0137】
<重合例4>
M6CA 4.72g、HEMA 0.21g、重合触媒としてAIBN 0.07gをPM 31.5g CHN 13.5gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度10質量%)を得た。得られたアクリル共重合体溶液をジエチルエーテルにて再沈殿を行い、アクリル共重合体の固形PA4を得た。得られたPA4のMnは14,200、Mwは33,000であった。
【0138】
<重合例5>
M6CA 4.74g、HEA 0.18g、重合触媒としてAIBN 0.07gをPM 31.5g CHN 13.5gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度10質量%)を得た。得られたアクリル共重合体溶液をジエチルエーテルにて再沈殿を行い、アクリル共重合体の固形PA5を得た。得られたPA5のMnは8,500、Mwは21,000であった。
【0139】
<重合例6>
M6CA 4.63g、DEGMA 0.30g、重合触媒としてAIBN 0.07gをPM 31.5g CHN 13.5gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度10質量%)を得た。得られたアクリル共重合体溶液をジエチルエーテルにて再沈殿を行い、アクリル共重合体の固形PA6を得た。得られたPA6のMnは7,200、Mwは16,500であった。
【0140】
<重合例7>
M6CA 4.59g、IBMA 0.34g、重合触媒としてAIBN 0.07gをPM 31.5g CHN 13.5gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度10質量%)を得た。得られたアクリル共重合体溶液をジエチルエーテルにて再沈殿を行い、アクリル共重合体の固形PA7を得た。得られたPA7のMnは14,700、Mwは35,500であった。
【0141】
<重合例8>
M6CA 4.59g、DCPMA 0.34g、重合触媒としてAIBN 0.07gをPM 31.5g CHN 13.5gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度10質量%)を得た。得られたアクリル共重合体溶液をジエチルエーテルにて再沈殿を行い、アクリル共重合体の固形PA8を得た。得られたPA8のMnは14,200、Mwは37800であった。
【0142】
<重合例9>
M6CA 4.59g、NIPAM 0.18g、重合触媒としてAIBN 0.07gをPM 31.5g CHN 13.5gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度10質量%)を得た。得られたアクリル共重合体溶液をジエチルエーテルにて再沈殿を行い、アクリル共重合体の固形PA9を得た。得られたPA9のMnは7,500、Mwは17,300であった。
【0143】
<重合例10>
M6CA 4.82g、AAm 0.11g、重合触媒としてAIBN 0.07gをPM 31.5g CHN 13.5gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度10質量%)を得た。得られたアクリル共重合体溶液をジエチルエーテルにて再沈殿を行い、アクリル共重合体の固形PA10を得た。得られたPA10のMnは9,300、Mwは20,000であった。
【0144】
<重合例11>
M6CA 4.34g、M1 0.59g、重合触媒としてAIBN 0.07gをPM 31.5g CHN 13.5gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度10質量%)を得た。得られたアクリル共重合体溶液をジエチルエーテルにて再沈殿を行い、アクリル共重合体の固形PA11を得た。得られたPA11のMnは7,800、Mwは18,900であった。
【0145】
<重合例12>
M6CA 4.25g、M2 0.68g、重合触媒としてAIBN 0.07gをPM 31.5g CHN 13.5gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度10質量%)を得た。得られたアクリル共重合体溶液をジエチルエーテルにて再沈殿を行い、アクリル共重合体の固形PA12を得た。得られたPA12のMnは8,100、Mwは20,100であった。
【0146】
<重合例13>
M6CA 4.27g、M3 0.66g、重合触媒としてAIBN 0.07gをPM 31.5g CHN 13.5gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度10質量%)を得た。得られたアクリル共重合体溶液をジエチルエーテルにて再沈殿を行い、アクリル共重合体の固形PA13を得た。得られたPA13のMnは14,000、Mwは37,800であった。
【0147】
<重合例14>
M6CA 4.80g、MAA 0.12g、重合触媒としてAIBN 0.07gをPM 31.5g CHN 13.5gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度10質量%)を得た。得られたアクリル共重合体溶液をジエチルエーテルにて再沈殿を行い、アクリル共重合体の固形PA14を得た。得られたPA14のMnは16,100、Mwは38,000であった。
【0148】
<重合例15>
M6CA 4.47g、M6BA 0.46g、重合触媒としてAIBN 0.07gをPM 31.5g CHN 13.5gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度10質量%)を得た。得られたアクリル共重合体溶液をジエチルエーテルにて再沈殿を行い、アクリル共重合体の固形PA15を得た。得られたPA15のMnは13,800、Mwは32,400であった
【0149】
<重合例16>
CIN1 1.08g、M6BA 3.84g、重合触媒としてAIBN 0.07gをPM 31.5g CHN 13.5gに溶解し、80℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度10質量%)を得た。得られたアクリル共重合体溶液をジエチルエーテルにて再沈殿を行い、アクリル共重合体の固形PA15を得た。得られたPA16のMnは14,200、Mwは33,500であった
【0150】
<重合体の水溶性化>
重合例により得られたアクリル共重合体の固形PA1〜PA16に関し、カルボキシル基と等mol量のTEAを添加し、20wt%の水溶液とした。なお、カルボキシル基と等モル量の計算は、アクリル共重合体の重合時に用いたカルボキシル基を有するモノマーのモル量に基づいて計算した。それぞれのアクリル共重合体のトリエチルアミン塩をPA1−TEA〜PA16−TEAとする。
また、同様にDIPAにて中和を行ったアクリル共重合体のジイソプロピルアミン塩をPA1−DIPAとする。
【0151】
<実施例1乃至25>
表1に示す組成にて実施例1乃至25の各位相差材形成用樹脂組成物を調製した。次に、各位相差材形成用樹脂組成物を用いて膜を形成し、得られた膜それぞれについて、配向性の評価を行った。
【表1】
【0152】
[配向性の評価]
実施例の各位相差材形成用樹脂組成物を無アルカリガラス上にスピンコーターを用いて2000rpmで30秒間回転塗布した後、温度100℃で60秒間、ホットプレート上で加熱乾燥を行い硬化膜を形成した。この硬化膜に313nmの直線偏光を10mJ/cmの露光量で垂直に照射した。
条件1)
露光後の基板上にメルク株式会社製の水平配向用重合性液晶溶液RMS03−013Cを、スピンコーターを用いて塗布し、次いで、60℃で60秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚1.0μmの塗膜を形成した。このフィルムを300mJ/cmで露光し、位相差材を作製した。
条件2)
直線偏光を照射した膜を、温度100℃で5分間、ホットプレート上で加熱乾燥を行った。加熱乾燥後の基板上に露光後の基板上にメルク株式会社製の水平配向用重合性液晶溶液RMS03−013Cを、スピンコーターを用いて塗布し、次いで、60℃で60秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚1.0μmの塗膜を形成した。このフィルムを300mJ/cm2で露光し、位相差材を作製した。
作製した基板上の位相差材を一対の偏光板で挟み込み、位相差材における位相差特性の発現状況を観察し、位相差が欠陥なく発現しているものを○、位相差が発現していないものを×として記載した。
【0153】
[評価の結果]
以上の評価を行った結果を表2に示す。
【表2】

【0154】
実施例1乃至25は、10mJ/cmと低い露光量で位相差材を形成することが可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明の位相差材形成用樹脂組成物は、液晶表示素子の液晶配向膜や、液晶表示素子の内部や外部に設けられる光学異方性フィルムを形成するための配向材として非常に有用であり、特に3Dディスプレイのパターン化位相差材の形成材料として好適である。さらに、薄膜トランジスタ(TFT)型液晶表示素子や有機EL素子などの各種ディスプレイにおける保護膜、平坦膜及び絶縁膜などの硬化膜を形成する材料、特にTFT型液晶表示素子の層間絶縁膜、カラーフィルタの保護膜又は有機EL素子の絶縁膜などを形成する材料としても好適である。