(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0014】
(ケーブルを適用する車両の説明)
図1は、本実施の形態に係るケーブルを用いた車両の構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、車両100には、電動式の制動装置として、電動パーキングブレーキ(以下、EPBという)101が備えられている。
【0016】
EPB101は、EPB用電気モータ101aと、EPB制御部101bと、を備えている。
【0017】
EPB用電気モータ101aは、車両100の車輪102に搭載されている車輪側装置である。EPB制御部101bは、車両100の車体側装置であるECU(電子制御ユニット)103に搭載されている。なお、EPB制御部101bは、ECU103以外のコントロールユニットに搭載されていてもよく、専用のハードウェアユニットに搭載されていてもよい。
【0018】
図示していないが、EPB用電気モータ101aには、ブレーキパッドが取り付けられたピストンが設けられており、当該ピストンをEPB用電気モータ101aの回転駆動により移動させることで、ブレーキパッドを車輪102の車輪のディスクロータに押し付け、制動力を発生させるように構成されている。EPB用電気モータ101aには、EPB用電気モータ101aに駆動電流を供給するための電源線として1対の第1電線2が接続されている。
【0019】
EPB制御部101bは、車両100の停止後に、パーキングブレーキ作動スイッチ101cがオフ状態からオン状態に操作されたとき、所定時間(例えば1秒間)にわたってEPB用電気モータ101aに駆動電流を出力することにより、ブレーキパッドを車輪102のディスクロータに押し付けた状態とし、車輪102に制動力を発生させるように構成されている。また、EPB制御部101bは、パーキングブレーキ作動スイッチ101cがオン状態からオフ状態に操作されたとき、あるいは、アクセルペダルが踏込操作されたときに、EPB用電気モータ101aに駆動電流を出力し、ブレーキパッドを車輪のディスクロータから離間させて、車輪102への制動力を解除するように構成される。つまり、EPB101の作動状態は、パーキングブレーキ作動スイッチ101cがオンされてから、パーキングブレーキ作動スイッチ101cがオフされるかアクセルペダルが踏み込まれるまで維持されるように構成されている。なお、パーキングブレーキ作動スイッチ101cは、レバー式又はペダル式のスイッチであってもよい。
【0020】
また、車両100には、ABS装置104が搭載されている。ABS装置104は、ABSセンサ104aと、ABS制御部104bと、を備えている。
【0021】
ABSセンサ104aは、走行中の車輪102の回転速度を検出する回転速度検出センサであり、車輪102に搭載されている。ABS制御部104bは、急停止時に車輪102がロックされないように、ABSセンサ104aの出力に基づいて制動装置を制御し、車輪102の制動力を制御するものであり、ECU103に搭載されている。ABSセンサ104aには、信号線として1対の第2電線3が接続されている。
【0022】
第1電線2と第2電線3とを一括してシース7(
図2参照)で被覆したものが、本実施の形態に係るケーブル1である。車輪102側から延出されたケーブル1は、車体105に設けられた中継ボックス106内にて電線群107に接続され、電線群107を介してECU103やバッテリ(不図示)に接続されている。
【0023】
図1では、図の簡略化のために1つの車輪102のみを示しているが、EPB用電気モータ101a、およびABSセンサ104aは、車両100の各車輪102に搭載されていてもよく、例えば、車両100の前輪のみ、あるいは後輪のみに搭載されていてもよい。
【0024】
(ケーブル1の説明)
図2(a)は、本実施の形態に係るケーブル1の横断面図、
図2(b)は第1電線と第2電線の撚り方向および不織布テープ6の巻方向を説明する図である。
【0025】
図2(a),
図2(b)に示すように、ケーブル1は、複数の電線(本実施の形態においては、一対の第1電線2及び対撚線4)が撚り合わされてなる集合体5と、集合体5の周囲に螺旋状に巻き付けられており、ポリエステル、ポリプロピレン、アラミド繊維、ナイロン、アクリル繊維、またはガラス繊維から形成されている不織布テープ6と、不織布テープ6の外周に被覆されているウレタン系樹脂からなる押出成形体であるシース7と、を備えている。
【0026】
本実施の形態では、第1電線2は、車両100の車輪102に搭載されたEPB101用の電気モータ101aに駆動電流を供給するための電源線からなる。また、対撚線4を構成する第2電線3は、車輪102に搭載されたABSセンサ104a用の信号線からなる。
【0027】
第1電線2は、銅や銅合金等の良導電性の素線を撚り合わせた第1導体21の周囲に、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる第1絶縁体22を被覆して構成される。
【0028】
第1導体21に用いる素線としては、直径0.05mm以上0.30mm以下のものを用いることができる。直径0.05mm未満の素線を用いた場合は十分な機械的強度が得られず屈曲耐久性が低下するおそれがあり、直径0.30mmより大きい素線を用いた場合ケーブル1の可撓性が低下するおそれがある。
【0029】
第1電線2の第1導体21の外径、および絶縁体22の厚さは、要求される駆動電流の大きさに応じて適宜設定すればよい。本実施の形態では、第1電線2がEPB101用電気モータ101aに駆動電流を供給するための電源線であることを考慮し、第1導体21の外径を1.5mm以上3.0mm以下に設定すると共に、第1電線2の外径を2.0mm以上4.0mm以下に設定した。
【0030】
第2電線3は、銅や銅合金等の良導電性の素線を撚り合わせた第2導体31の周囲に、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる第2絶縁体32を被覆して構成される。第2導体31に用いる素線としては、第1導体21と同様に、直径0.05mm以上0.30mm以下のものを用いることができる。
【0031】
第2電線3の外径は、第1電線2の外径よりも小さい。本実施の形態では、1対(2本)の第2電線3を撚り合わせた対撚線4と1対の第1電線2とを撚り合わせるため、ケーブル1の外径を円形状に近づけるという観点から、第2電線3として、第1電線2の外径の半分程度のものを用いることが望ましいといえる。具体的には、第2電線3としては、外径1.0mm以上1.8mm以下、第2導体31の外径が0.4mm以上1.0mm以下のものを用いることができる。
【0032】
対撚線4の撚りピッチP1は、第2電線3の外径を考慮し、第2電線3に不要な負荷がかからない程度に設定するとよい。ここでは、対撚線4の撚りピッチP1を約30mmとしたが、対撚線4の撚りピッチP1はこれに限定されるものではない。なお、対撚線4の撚りピッチP1とは、任意の第2電線3が対撚線4の周方向において同じ位置となる対撚線4の長手方向に沿った間隔である。
【0033】
集合体5は、1対の第1電線2と対撚線4とを撚り合わせて構成される。本実施の形態では、1対の第1電線2同士を接触させるとともに、1対の第2電線3同士を接触させ、さらに1対の第1電線2と第2電線3とを接触させて、集合体5を構成した。このとき、1対の第1電線2の間である谷間には、第2電線3の少なくとも一部が配置される。
【0034】
さらに、本実施の形態では、1対の第1電線2及び対撚線4と不織布テープ6との間に、ケーブル1の長手方向に延びる糸状(繊維状)の複数の介在を配置し(図示せず)、第1電線2と対撚線4と共に撚り合わせることにより、集合体5を構成した。このため、複数の介在の撚り方向及び撚りピッチは、集合体5の撚り方向及び撚りピッチと同じになる。複数の介在は1対の第1電線2及び対撚線4と不織布テープ6との間の隙間を埋めるように配置され、集合体5の外周に不織布テープ6を巻き付けた際の断面形状がより円形状に近づくようにしている。
【0035】
なお、複数の介在の一部は、1対の第1電線2の間である谷間や1対の第2電線3の間である谷間にも配置されてもよい。
【0036】
介在としては、ポリプロピレンヤーンや、スフ糸(レーヨンステープルファイバー)、アラミド繊維、ナイロン繊維、あるいは繊維系プラスチック等の繊維状体や、紙もしくは綿糸を用いることができる。また、
図2の横断面視において、介在の断面積は、第1電線2の断面積及び第2電線3の断面積よりも小さいとよい。
【0037】
なお、EPB101では、基本的に車両の停止後に電気モータ101aに駆動電流を供給する。これに対して、ABSセンサ104aは車両の走行時に使用されるものであり、通常の使用時において第1電線2に駆動電流が供給されているときにABSセンサ104aが使用されることは少ない。そこで、本実施の形態では、対撚線4の周囲に設けられるシールド導体を省略している。シールド導体を省略することで、シールド導体を設けた場合と比較してケーブル1の外径を小さくすることができ、また部品点数を削減してコストを抑制することも可能になる。
【0038】
なお、ここでは第1電線2がEPB用電気モータ101aに駆動電流を供給する場合を説明しているが、第1電線2は、例えば、車輪102に設けられた電気機械式ブレーキ(以下、EMBという)の電気モータに駆動電流を供給するために用いられてもよい。この場合、車両100の走行中にも第1電線2に電流が流れることになるため、ノイズによるABS装置104の誤動作を抑制するために、対撚線4の周囲にシールド導体を設けることが望ましいといえる。
【0039】
また、ここでは第2電線3がABSセンサ104a用の信号線である場合を説明しているが、第2電線3は、車輪102に設けられる他のセンサ、例えば温度センサやタイヤの空気圧を検出する空気圧センサ等に用いられる信号線であってもよいし、車両100の制振装置の制御に用いられるダンパ線であってもよく、さらにはEMB制御用の信号線(CANケーブル等)であってもよい。第1電線2がEPB用電気モータ101aに駆動電流を供給するものである場合であっても、第2電線3が車両100の停車中に使用される場合には、ノイズによる誤動作を抑制するために、対撚線4の周囲にシールド導体を設けることが望ましいといえる。
【0040】
集合体5全体の外径は、例えば、5mm〜9mm程度である。集合体5の撚りピッチP2は、集合体5の外径を考慮し、第1電線2と対撚線4に不要な負荷がかからない程度に設定するとよい。ここでは、集合体5の撚りピッチP2を約60mmとしたが、集合体5の撚りピッチP2はこれに限定されるものではない。なお、集合体5の撚りピッチP2とは、任意の第1電線2または対撚線4が集合体5の周方向において同じ位置となる集合体5の長手方向に沿った間隔である。
【0041】
集合体5の周囲には、不織布テープ6が螺旋状に巻き付けられており、本実施の形態において、不織布テープ6は、集合体5を構成する全ての電線(1対の第1電線2及び対撚線4)に接触している。不織布テープ6は、集合体5とシース7との間に介在し、屈曲時に集合体5(電線2,3)とシース7間の摩擦を低減する役割を果たす。すなわち、不織布テープ6を設けることで、従来のようにタルク粉体等の潤滑剤を用いることなく、電線2,3とシース7間の摩擦を低減し、屈曲時に電線2,3にかかるストレスを低減して、屈曲耐久性を向上させることが可能になる。
【0042】
不織布テープ6としては、第1電線2の第1絶縁体22、および第2電線3の第2絶縁体32に対して、滑りやすいもの(摩擦係数が小さいもの)を用いることが望ましい。より具体的には、不織布テープ6としては、不織布テープ6と絶縁体22,32間の摩擦係数(静摩擦係数)が、不織布テープ6を設けなかった際におけるシース7と絶縁体22,32間の摩擦係数(静摩擦係数)よりも小さいものを用いるとよい。
【0043】
不織布テープ6は、その幅方向(テープ部材3の長手方向および厚さ方向と垂直な方向)の一部が重なり合うように、螺旋状に集合体9に巻き付けられる。不織布テープ6が重なり合う幅は、例えば、不織布テープ6の幅の1/4以上1/2以下である。なお、本実施の形態において、不織布テープ6が重なり合う部分は、接着剤等により接着されていない。
【0044】
不織布テープ6の幅は、不織布テープ6を巻き付けた際に不織布テープ6に皺が寄らない程度の幅とすればよく、集合体9全体の外径が小さくなるほど幅の狭いテープ部材3を用いることが望ましい。具体的には、集合体9の外径が5mm以上9mm以下である場合、不織布テープ6の幅は、20mm以上50mm以下程度とすればよい。
【0045】
不織布テープ6の巻きピッチ、すなわち不織布テープ6が周方向の同じ位置となる長手方向に沿った間隔(例えば幅方向の一端部同士の間隔)は、不織布テープ6の幅および重なり幅により調整することが可能である。なお、不織布テープ6の幅を大きくし、巻きピッチを大きくしていくと、不織布テープ6を縦添えした状態に近くなり、ケーブル1の柔軟性が失われて曲げにくくなる。そのため、不織布テープ6の巻きピッチは、50mm以下とすることが望ましい。
【0046】
不織布テープ6の周囲には、ウレタン系樹脂からなるシース7が不織布テープ6と接触して設けられる。シース7は、押し出し成形により形成される押出成形体である。本実施の形態では、第1電線2がEPB用電気モータ101aに駆動電流を供給するものであり、第1電線2に駆動電流が流れる時間が比較的短いためシールド導体を省略しているが、第1電線5の用途等に応じて、不織布テープ6とシース7との間、あるいはシース7の外周にシールド導体を設けてもよい。
【0047】
さて、本実施の形態に係るケーブル1では、不織布テープ6は、ポリエステル、ポリプロピレン、アラミド繊維、ナイロン、アクリル繊維、またはガラス繊維からなる不織布で構成されている。
【0048】
不織布テープ6を、ポリエステル、ポリプロピレン、アラミド繊維、ナイロン、アクリル繊維、またはガラス繊維から構成することにより、不織布テープ6が吸湿しにくくなり、シース7を被覆する際の熱により不織布テープ6から水分が蒸発しシース7が発泡してしまうことを抑制可能になる。
【0049】
また、本実施の形態では、不織布テープ6のフラジール法による通気性は、30cm
3/cm
2・sec以上である。これは、通気性が30cm
3/cm
2・sec未満と低いと、不織布テープ6で囲まれている空間内(集合体5が収容されている空間内)に水蒸気を含んだ空気が溜まりやすくなり、シース7を被覆する際の熱により溜まった空気が不織布テープ6の空隙や不織布テープ6が重なり合っている部分から排出され、シース7に発泡が生じるおそれがあるためである。なお、フラジール法による通気性の測定は、JIS L1913に準拠した方法により行うことができる。
【0050】
また、不織布テープ6の通気性は、200cm
3/cm
2・sec以下とすることが望ましい。これは、通気性が200cm
3/cm
2・secを超えて大きくなると、シース7を被覆する際にシース7の一部が不織布テープ6を透過して電線2側に到達してしまい、第1電線2及び/又は第2電線3とシース7とが融着して端末処理時の作業性が低下するおそれがあるためである。
【0051】
つまり、不織布テープ6は、通気性が30cm
3/cm
2・sec以上200cm
3/cm
2・sec以下であるとよい。不織布テープ6に囲まれている空間内に溜まった空気によるシース7の発泡や電線2とシース7との融着をより抑制するために、不織布テープ6は、通気性が40cm
3/cm
2・sec以上100cm
3/cm
2・sec以下であることがより好ましい。
【0052】
また、不織布テープ6の厚さは、0.03mm以上0.10mm以下とすることが望ましい。これは、不織布テープ6の厚さが0.03mm未満であると、シース7を被覆する際にシース7の一部が不織布テープ6を透過して第1電線2及び/又は第2電線3側に到達してしまい、端末処理時の作業性が低下するおそれがある。また、不織布テープ6の厚さが0.10mmを超えると、不織布テープ6の剛性が高くなりケーブル1の可撓性が低下するおそれがあり、また通気性も低下してしまうおそれがあるためである。
【0053】
本実施の形態では、通気性67cm
3/cm
2・sec、厚さ0.07mmのポリエステルからなる不織布テープ6を用いた。
【0054】
(対撚線4と集合体5の撚り方向、不織布テープ6の巻き付け方向)
本実施の形態に係るケーブル1では、集合体5の撚り方向と不織布テープ6の巻き付け方向とが反対方向となっている。さらに、本実施の形態では、対撚線4の撚り方向と集合体5の撚り方向とが反対方向となっている。つまり、ケーブル1では、対撚線4の撚り方向と不織布テープ6の巻き付け方向とは同じ方向となり、集合体5の撚り方向のみが反対方向となっている。
【0055】
なお、ここでいう撚り方向とは、ケーブル1を先端側(
図2Bの左側、不織布テープ6の重なりが上となる側)から見たときに、電線2,3が基端側から先端側にかけて回転している方向をいう。ここでは、対撚線4の撚り方向が右回り(時計回り)となり、集合体5の撚り方向が左回り(反時計回り)となる。なお、対撚線4の撚り方向とは、2本の第2電線3を撚り合わせる方向であり、集合体5の撚り方向とは、2本の第1電線2と対撚線4とを撚り合わせる方向である。
【0056】
また、不織布テープ6の巻き付け方向とは、ケーブル1を先端側(
図2Bの左側、不織布テープ6の重なりが上となる側)から見た時に、不織布テープ6が基端側から先端側にかけて回転している方向をいう。ここでは、不織布テープ6の巻き付け方向は右回り(時計回り)となる。
図2Aでは、先端側から見たときの断面図を示しており、対撚線4の撚り方向を破線矢印A、集合体5の撚り方向を破線矢印B、不織布テープ6の巻き付け方向を破線矢印Cで表している。
【0057】
一般に、電線を撚り合わせたり、螺旋状にテープを巻き付けたりすると、その撚り方向、巻き付け方向に応じて曲がり癖が付与されてしまい、ケーブル全体が自然に湾曲してしまう。本実施の形態では、対撚線4の撚り方向と集合体5の撚り方向とを異ならせ、かつ、集合体5の撚り方向と不織布テープ6の巻き付け方向とを異ならせているため、対撚線4の曲がり癖と集合体5の曲がり癖とが逆方向となって互いに相殺され、かつ、集合体5の曲がり癖と不織布テープ6を巻き付けることによる曲がり癖とが逆方向となって互いに相殺されることになり、曲がり癖を抑制した直線状のケーブル1を容易に実現できる。その結果、ケーブル1の長手方向における屈曲特性のばらつきを抑制することが可能になる。
【0058】
また、対撚線4の撚り方向と集合体5の撚り方向とを異ならせることで、集合体5を撚り合わせる際の対撚線4の撚りピッチP1の変化を抑えながら集合体5を形成することが可能になる。
【0059】
ただし、対撚線4の撚りピッチP1が大きいと、集合体5を撚り合わせる際に対撚線4の撚りが緩んでしまうおそれがある。そのため、対撚線4の撚りピッチP1は、少なくとも、集合体5の撚りピッチP2よりも小さくすることが望ましい。すなわち、対撚線4の撚り方向と集合体5の撚り方向とが異なる場合には、対撚線4の撚りピッチP1を集合体5の撚りピッチP2よりも小さくすることで、対撚線4の撚りが崩れにくくなり、集合体5の断面形状を安定させることが可能になる。
【0060】
本実施の形態では、不織布テープ6を巻き付けることによる曲がり癖により、集合体5の曲がり癖を矯正しているため、紙テープ6の巻きピッチP3を、ケーブル1の可撓性を維持しつつも曲がり癖を付与できる程度に小さくする必要がある。そのため、不織布テープ6の巻きピッチP3は、少なくとも集合体5の撚りピッチP2よりも小さくすることが望ましい。本実施の形態では、対撚線4の撚りピッチP1を約30mm、集合体5の撚りピッチP2を約60mmとしており、不織布テープ6の巻きピッチP3を約30mmとしている。
【0061】
なお、本実施の形態では、不織布テープ6の巻きピッチP3と対撚線4の撚りピッチP1とを同じにしたが、不織布テープ6の巻きピッチP3は、対撚線4の撚りピッチP1以上にすればよい。このようにすることで、シース7を被覆する際の樹脂圧により、対撚線4を構成する一対の第2電線3の間に不織布テープ6やシース7の一部が入り込んでしまうことを低減でき、対撚線4と接触している部分における不織布テープ6の歪みを低減することが可能となる。これにより、ケーブル1の断面形状を円形状に成形しやくなる。また、対撚線4の屈曲耐久性の低下を低減できるという効果を奏する。
【0062】
同様に、集合体5の撚り方向と不織布テープ6の巻き付け方向とを反対方向にすることで、不織布テープ6を巻き付ける際に、集合体5の撚りピッチP2が変化しにくくなり、集合体5の撚りピッチP2を安定させることが可能になる。
【0063】
さらに、集合体5の撚り方向と不織布テープ6の巻き付け方向とを反対方向にすることで、シース7を被覆する際の樹脂圧により、不織布テープ6やシース7の一部が、第1電線2同士の間、または第1電線2と対撚線4との間に入り込んでしまうことが抑制される。つまり、不織布テープ6の周囲にシース7を被覆する前後において、不織布テープに囲まれている空間の断面積の変化(縮小)が抑制される。これにより、不織布テープ6に囲まれている空間内に溜まった空気が不織布テープ6の空隙や不織布テープ6が重なり合っている部分から排出されるのをより低減でき、シース7に発泡が生じるおそれをより低減することが可能である。また、不織布テープ6の断面形状の歪みを抑制することが可能になる。その結果、ケーブル1の端末処理の際に、不織布テープ6やシース7を除去するストリップ作業を容易に行うことが可能になる。上述のように、ケーブル1では曲がり癖が抑制されているため、シース7を除去するストリップ作業がより容易である。
【0064】
さらにまた、集合体5の撚り方向と不織布テープ6の巻き付け方向とを反対方向とすることで、集合体5が座屈し易い方向と不織布テープ6が座屈し易い方向とを異ならせることができ、例えばケーブル1を捩じれと曲げが同時に加わったような場合であっても、座屈しにくいケーブル1を実現できる。
【0065】
(ケーブル1を用いたワイヤハーネスの説明)
図3は、本実施の形態に係るワイヤハーネスの概略構成図である。
【0066】
図3に示すように、ワイヤハーネス10は、本実施の形態に係るケーブル1と、第1電線2と第2電線3の端部のうち、少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタと、を備えて構成される。
【0067】
図3では、図示左側が車輪102側の端部を示し、図示右側が車体105側(中継ボックス106側)の端部を示している。以下の説明では、ワイヤハーネス10の車輪102側の端部を「一端部」、車体105側(中継ボックス106側)の端部を「他端部」という。
【0068】
1対の第1電線2の一端部には、EPB用電気モータ101aとの接続のための車輪側電源コネクタ11aが取り付けられ、1対の第1電線2の他端部には、中継ボックス106内における電線群107との接続のための車体側電源コネクタ11bが取り付けられている。
【0069】
1対の第2電線3(対撚線4)の一端部には、樹脂モールドにより形成された樹脂成形体である筐体を有するABSセンサ104aが取り付けられ、1対の第2電線3(対撚線4)の他端部には、中継ボックス106内における電線群107との接続のための車体側ABS用コネクタ12が取り付けられている。
【0070】
なお、ここでは、第1電線2と第2電線3(対撚線4)に個別にコネクタを設ける場合を説明したが、両電線2,3を一括して接続する専用のコネクタを備えるようにしても構わない。
【0071】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るケーブル1では、不織布テープ6は、ポリエステル、ポリプロピレン、アラミド繊維、ナイロン、アクリル繊維、またはガラス繊維からなり、その通気性が30cm
3/cm
2・sec以上である。
【0072】
不織布テープ6として、ポリエステル、ポリプロピレン、アラミド繊維、ナイロン、アクリル繊維、またはガラス繊維からなるものを用いることで、不織布テープ6が吸湿しにくくなり、不織布テープ6が吸湿した水分によりシース7にボイドが発生してしまうことを抑制可能になる。
【0073】
また、不織布テープ6の通気性を30cm
3/cm
2・sec以上とすることで、不織布テープ6に囲まれている空間内に溜まった空気によりシース7にボイドが発生してしまうことを抑制可能になる。
【0074】
本実施の形態に係るケーブル1では、さらに、集合体5(一対の第1電線2及び対撚線4)の撚り方向と不織布テープ6の巻き付け方向とが反対方向である。これにより、不織布テープ6に囲まれている空間の断面積の変化(縮小)が抑制される。これにより、不織布テープ6に囲まれている空間内に溜まった空気が不織布テープ6の空隙や不織布テープ6が重なり合っている部分から排出されるのをより低減でき、シース7に発泡が生じるおそれをより低減することが可能である。
【0075】
また、不織布テープ6の巻きピッチP3は、対撚線4の撚りピッチP1以上にされている。このようにすることで、シース7を被覆する際の樹脂圧により、対撚線4を構成する一対の第2電線3の間に不織布テープ6やシース7の一部が入り込んでしまうことを低減でき、不織布テープに囲まれている空間の断面積の変化(縮小)がさらに抑制される。
【0076】
(変形例)
(1)上記実施の形態では、集合体5が一対(2本)の第1電線2及び対撚線4から構成されるものとしたが、集合体5は、対撚線4を備えていなくともよく、略同一外径の第1電線2を2本又は3本以上撚り合わせたものであってもよい。
(2)対撚線4の外周に対撚線4を一体化して被覆する内部シースが設けられていてもよい。この場合、集合体5は、一対の第1電線2及び内部シースに被覆された対撚線4を撚り合わせることにより構成される。
(3)上記実施の形態では、対撚線4の撚り方向と集合体5の撚り方向とが反対方向となっているものとしたが、対撚線4の撚り方向と集合体5の撚り方向とは、同じ方向であってもよい。このようにすることで、ケーブル1に捩れが加わった際、集合体5の撚りが開く(緩む)場合には、対撚線4の撚りも開くとともに、集合体5の撚りが閉じる(張る)場合には、対撚線4の撚りも閉じるようになる。これにより、ケーブル1の捩れに伴い第1電線2と対撚線4とに相互に印加される負荷を低減でき、捩れに対する耐久性を向上させることが可能である。
(4)上記実施の形態では、シース7を1層からなるものとしたが、シース7は、2層以上からなってもよい。その場合、最外層を、樹脂に難燃剤が添加されて形成される難燃層とすることも可能である。
【0077】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0078】
[1]複数の電線(2,3)が撚り合わされてなる集合体(5)と、前記集合体(5)の周囲に螺旋状に巻き付けられているテープ部材と、前記テープ部材の外周に被覆されているウレタン系樹脂からなる押出成形体であるシース(7)と、を備え、前記テープ部材は、ポリエステル、ポリプロピレン、アラミド繊維、ナイロン、アクリル繊維、またはガラス繊維から形成されており、フラジール法による通気性が30cm
3/cm
2・sec以上である不織布テープ(6)であり、前記集合体(5)の撚り方向と前記不織布テープ(6)の巻き付け方向とが反対方向であるケーブル(1)。
【0079】
[2]前記集合体(5)は、一対の第1電線(2)と、前記第1電線(2)よりも外径が小さい一対の第2電線(3)を撚り合わせた対撚線(4)と、が撚り合わされて構成されており、前記対撚線(4)の撚り方向は、前記集合体(5)の撚り方向と反対方向であり、前記不織布テープ(6)の巻き付け方向と同じ方向である、[1]に記載のケーブル(1)。
【0080】
[3]前記集合体(5)は、一対の第1電線(2)と、前記第1電線(2)よりも外径が小さい一対の第2電線(3)を撚り合わせた対撚線(4)と、が撚り合わされて構成されており、前記対撚線(4)の撚り方向は、前記集合体(5)の撚り方向と同じ方向であり、前記不織布テープ(6)の巻き付け方向と反対方向である、[1]に記載のケーブル(1)。
【0081】
[4]前記不織布テープ(6)のフラジール法による通気性が、200cm
3/cm
2・sec以下である、[1]乃至[3]の何れか1項に記載のケーブル(1)。
【0082】
[5]前記不織布テープ(6)のフラジール法による通気性が、40cm
3/cm
2・sec以上100cm
3/cm
2・sec以下である、[4]に記載のケーブル。
【0083】
[6]前記集合体(5)の外径が5mm以上9mm以下であり、前記不織布テープ(6)の幅が20mm以上50mm以下である、[1]乃至[5]の何れか1項に記載のケーブル(1)。
【0084】
[7][1]乃至[6]の何れか1項に記載のケーブル(1)と、前記電線の端部に取り付けられたコネクタ(11a,11b)と、を備えた、ワイヤハーネス(10)。
【0085】
1…ケーブル
2…第1電線
3…第2電線
4…対撚線
5…集合体
6…紙テープ
7…シース