特許第6703397号(P6703397)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703397
(24)【登録日】2020年5月12日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】照明システム
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/00 20200101AFI20200525BHJP
【FI】
   H05B37/02 G
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-245995(P2015-245995)
(22)【出願日】2015年12月17日
(65)【公開番号】特開2017-111994(P2017-111994A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雅浩
【審査官】 野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−254145(JP,A)
【文献】 特開2014−157316(JP,A)
【文献】 特開2008−146024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00、47/00
G03B 21/00、33/00
H04N 5/222−5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体が含まれる瞳検出用映像を撮影する瞳検出用カメラと、前記瞳検出用カメラで撮影された瞳検出用映像の顔領域から瞳位置を検出する瞳検出装置と、前記瞳検出装置で検出された瞳位置がマスクされた瞳マスク画像を生成する瞳マスク画像生成装置と、前記瞳マスク画像生成装置が生成した瞳マスク画像を前記被写体に投射するプロジェクタとを備える照明システムであって、
前記瞳マスク画像生成装置は、
前記瞳検出装置から前記顔領域のサイズが入力され、入力された前記顔領域のサイズと予め設定された標準顔のサイズとの比に応じて、マスクのサイズを算出する瞳マスクサイズ算出手段と、
前記瞳検出装置から瞳位置が入力され、入力された前記瞳位置を基準として、前記瞳マスクサイズ算出手段で算出されたサイズの瞳マスクが描かれた前記瞳マスク画像を、生成する瞳マスク画像生成手段と、
を備え
前記瞳検出用カメラは、前記プロジェクタと光軸が一致するように設置することを特徴とする照明システム。
【請求項2】
前記瞳マスク画像生成装置は、
前記瞳マスク画像生成手段が生成した瞳マスク画像において、前記瞳マスクの濃淡を設定する瞳マスク濃淡設定手段、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の照明システム。
【請求項3】
前記瞳マスク画像生成装置は、
前記瞳マスク画像生成手段が生成した瞳マスク画像において、前記瞳マスクのぼかしを設定する瞳マスクぼかし設定手段、
をさらに備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の照明システム。
【請求項4】
前記瞳マスク画像生成装置は、
前記瞳マスク画像生成手段が生成した瞳マスク画像において、前記瞳マスクの位置及びサイズを予め設定する瞳マスク位置・サイズ設定手段、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、眩しさを軽減しつつ被写体を照明する照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放送中継を行う際、被写体となるリポータに照明を当てることが多い。急を要する放送中継(例えば、災害現場からの緊急リポート)では、プロジェクタが、小型で持ち運びが便利なため、照明装置として代用されることがある。この場合、プロジェクタからの強い光が被写体の眼に当たるので、被写体が眩しさを感じてしまい、被写体の表情が不自然になってしまう。
【0003】
従来より、眩しさを軽減しつつ被写体を照明する発明が提案されている(特許文献1,2参照)。例えば、特許文献1には、被写体に眩しさを感じさせない前眼部観察装置が記載されている。また、例えば、特許文献2には、被写体に適合した強度の照明を照射して適正な顔画像を取得できる顔認証装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−000548号公報
【特許文献2】特開2007−004612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発明は、被写体の顔を固定する必要があるので、放送中継には適用が困難である。また、特許文献2に記載の発明は、被写体の顔をアップで撮影した顔拡大画像が必要になるため、全ての放送中継で利用できるわけでない。
【0006】
そこで、本願発明は、放送中継の際、被写体の眩しさを低減できる照明システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題に鑑みて、本願発明に係る照明システムは、被写体が含まれる瞳検出用映像を撮影する瞳検出用カメラと、瞳検出用カメラで撮影された瞳検出用映像の顔領域から瞳位置を検出する瞳検出装置と、瞳検出装置で検出された瞳位置がマスクされた瞳マスク画像を生成する瞳マスク画像生成装置と、瞳マスク画像生成装置が生成した瞳マスク画像を前記被写体に投射するプロジェクタとを備える照明システムであって、瞳マスク画像生成装置は、瞳マスクサイズ算出手段と、瞳マスク画像生成手段と、を備え、瞳検出用カメラは、プロジェクタと光軸が一致するように設置する構成とした。
【0008】
かかる構成によれば、瞳マスク画像生成装置は、瞳マスクサイズ算出手段によって、瞳検出装置から顔領域のサイズが入力され、入力された顔領域のサイズと予め設定された標準顔のサイズとの比に応じて、瞳マスクのサイズを算出する。そして、瞳マスク画像生成装置は、瞳マスク画像生成手段によって、瞳検出装置から瞳位置が入力され、入力された瞳位置を基準として、瞳マスクサイズ算出手段で算出されたサイズの瞳マスクが描かれた瞳マスク画像を、生成する。
【0009】
このように、瞳マスク画像は、被写体の瞳がマスク(例えば、黒色で塗りつぶし)されている。従って、プロジェクタは、この瞳マスク画像で瞳マスクが描かれた箇所、つまり、被写体の瞳に強い光を投射しないことになる。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
本願発明に係る照明システムは、プロジェクタが被写体の瞳に強い光を投射しないので、被写体の眩しさを低減することができる。また、本願発明に係る照明システムは、プロジェクタが小型で持ち運びが便利なため、急を要する放送中継にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本願発明の第1実施形態に係る照明システムの概略図である。
図2図1の瞳検出用映像の説明図である。
図3図1の瞳マスク画像の説明図である。
図4図1の照明システムの構成を示すブロック図である。
図5】瞳マスクのサイズの算出を説明する説明図である。
図6】(a)は瞳マスクと瞳との位置関係を示す模式図であり、(b)瞳マスクの濃淡の設定を説明する説明図である。
図7】(a)は瞳マスクと瞳との位置関係を示す模式図であり、(b)瞳マスクのぼかしの設定を説明する説明図である。
図8】瞳マスクの位置の設定を説明する説明図である。
図9図4の照明システムの動作を示すフローチャートである。
図10】本願発明の第2実施形態に係る照明システムの概略図である。
図11図10の照明システムの構成を示すブロック図である。
図12図11の照明システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願発明の各実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、同一手段には同一符号を付し、説明を省略した。
【0013】
(第1実施形態)
[照明システムの概略]
図1を参照し、本願発明の第1実施形態に係る照明システム1の概略について説明する。
図1のように、災害現場からの緊急リポート等の放送中継を行う際、リポータ等の被写体9を照明することがある。このとき、照明光が強すぎると、被写体9が眩しさを感じてしまい、被写体9の表情が不自然になる場合がある。また、小型で持ち運びが便利なプロジェクタ6が、放送中継用の照明装置として代用される場合がある。
【0014】
そこで、照明システム1は、放送中継の際、被写体9の瞳に強い光を投射しないものであり、図1のように、瞳検出用カメラ2と、ノートPC3と、プロジェクタ6とを備えるものである。
なお、図1には、被写体9を撮影する撮影カメラ7を図示した。この撮影カメラ7は、一般的な放送用カメラのため、詳細な説明を省略する。
【0015】
瞳検出用カメラ2は、図2のように、被写体9が含まれる瞳検出用映像Aを撮影するものである。例えば、瞳検出用カメラ2は、720画素×480画素の解像度を有する。また、瞳検出用カメラ2は、後記するプロジェクタ6と光軸が一致するように設置する。本実施形態では、瞳検出用カメラ2は、プロジェクタ6の上部に取り付けることとした。
【0016】
ノートPC3は、瞳マスク画像表示手段30を備えると共に、瞳検出装置4及び瞳マスク画像生成装置5として機能する一般的なパーソナルコンピュータである。このノートPC3は、図示を省略したケーブルで瞳検出用カメラ2及びプロジェクタ6に接続されていることとする。
瞳マスク画像表示手段30は、瞳マスク画像Bを表示する一般的なディスプレイである。
【0017】
瞳検出装置4は、瞳検出用カメラ2より入力された瞳検出用映像Aの顔領域から瞳位置を検出するものである。
瞳マスク画像生成装置5は、図3のように、瞳検出装置4で検出された瞳位置がマスクされた瞳マスク画像Bを生成するものである。
なお、瞳検出装置4及び瞳マスク画像生成装置5の詳細は、後記する。
【0018】
プロジェクタ6は、ノートPC3(瞳マスク画像生成装置5)から入力された瞳マスク画像Bを被写体9に投射するものである。具体的には、プロジェクタ6は、瞳マスク画像Bで瞳マスクMが描かれた部分から、その瞳マスクMの濃淡に応じて、光を投射しないか又は弱い光を投射する。また、プロジェクタ6は、瞳マスク画像Bで瞳マスクMが描かれていない背景部分から、その背景部分の輝度に応じて強い光を投射する。
このように、照明システム1は、被写体9の瞳に強い光が入射しないので、被写体9の眩しさを軽減できる。
【0019】
[瞳検出装置の構成]
図4を参照し、瞳検出装置4の構成について説明する(適宜図1参照)。
図4のように、瞳検出装置4は、顔領域検出手段41と、瞳位置検出手段43とを備える。
【0020】
顔領域検出手段41は、瞳検出用カメラ2より入力された瞳検出用映像Aから、被写体9の顔領域を検出するものである。本実施形態では、顔領域検出手段41は、既知の顔領域検出手法(例えば、“OpenCV”、URL:http://opencv.jp/)を用いて、瞳検出用映像Aを構成するフレーム画像毎に、矩形状の顔領域を検出する。そして、顔領域検出手段41は、瞳検出用映像Aのフレーム画像毎に検出された顔領域の検出情報(例えば、顔領域の左上座標及びサイズ)を、瞳位置検出手段43に出力する。
【0021】
瞳位置検出手段43は、瞳検出用カメラ2より入力された瞳検出用映像Aから、被写体9の瞳位置を検出するものである。本実施形態では、瞳位置検出手段43は、顔領域の検出情報を参照して、瞳検出用映像Aの各フレーム画像に顔領域を設定する。そして、瞳位置検出手段43は、既知の瞳位置検出手法を用いて、各フレーム画像に設定された顔領域から瞳位置(フレーム画像内での瞳の2次元座標)を検出する。その後、瞳位置検出手段43は、検出した瞳位置と、顔領域の検出情報(サイズ)とを瞳マスク画像生成装置5に出力する。
【0022】
なお、瞳検出装置4は、例えば、特開2010−015463号公報に記載の発明を用いて実現できるため、これ以上の説明を省略する。
【0023】
[瞳マスク画像生成装置の構成]
続いて、瞳マスク画像生成装置5の構成について説明する(適宜図1参照)。
図4のように、瞳マスク画像生成装置5は、瞳マスクサイズ算出手段51と、瞳マスク画像生成手段53と、瞳マスク濃淡設定手段55と、瞳マスクぼかし設定手段57と、瞳マスク位置・サイズ設定手段59とを備える。
【0024】
<瞳マスクのサイズの算出>
瞳マスクサイズ算出手段51は、瞳検出装置4から入力された顔領域の検出情報に含まれるサイズと、予め設定された標準顔のサイズとの比に応じて、瞳マスクMのサイズを算出するものである。本実施形態では、瞳マスクサイズ算出手段51は、瞳検出用映像Aのフレーム画像毎に瞳マスクMのサイズを算出する。ここで、瞳マスクサイズ算出手段51は、瞳マスクMが円形なので、小さな顔に対しては小さな半径、大きな顔に対しては大きな半径で、瞳マスクMのサイズを算出する。
【0025】
図5のように、瞳マスクサイズ算出手段51は、被写体9の左眼90について、下記の式(1)によって瞳マスクMのサイズ(円の半径)Rを算出する。そして、瞳マスクサイズ算出手段51は、算出した瞳マスクMのサイズRを瞳マスク画像生成手段53に出力する。
R=(R0×Fsize/Fsize0) …式(1)
【0026】
この式(1)では、R0が瞳マスクMのサイズの初期設定値であり、Fsizeが検出情報に含まれる顔領域のサイズであり、Fsize0が顔領域のサイズの初期設定値である。
この初期設定値R0,Fsize0は、照明システム1のユーザが任意に設定可能である。ここで、瞳マスクMが被写体9の瞳より大きいと、視聴者に違和感を与えるので、瞳マスクMが被写体9の瞳より小さくなるように初期設定値R0,Fsize0を設定することが好ましい。
【0027】
なお、本実施形態では、左右の眼90に対応した左右の瞳マスクMのサイズが等しいこととする。
また、瞳マスクサイズ算出手段51は、被写体9の右眼90から瞳マスクMのサイズRを算出してもよい。
【0028】
<瞳マスク画像の生成>
瞳マスク画像生成手段53は、瞳検出装置4から入力された瞳位置を基準として、瞳マスクサイズ算出手段51で算出されたサイズの瞳マスクMが描かれた瞳マスク画像Bを、生成するものである。本実施形態では、瞳マスク画像生成手段53は、瞳検出用映像Aのフレーム画像毎に、前記した瞳位置を中心として半径Rの円を黒色で塗りつぶした瞳マスク画像Bを生成する。そして、瞳マスク画像生成手段53は、生成した瞳マスク画像Bを瞳マスク画像表示手段30に出力する。
【0029】
ここで、瞳マスクMが被写体9の瞳から外れた場合、視聴者に違和感を与えてしまう。また、中継現場の明るさや被写体9の瞳の色に合わせて、瞳マスクMの濃淡やぼかしを調整すると、より自然な放送中継が可能となる。そこで、瞳マスク画像生成装置5は、瞳マスク画像表示手段30に表示された瞳マスク画像Bや被写体9を参照しながら、ユーザが瞳マスクMの位置、サイズ、濃淡及びぼかしを設定できることとした。
【0030】
<瞳マスクの濃淡設定>
図6のように、瞳マスク濃淡設定手段55は、瞳マスク画像生成手段53が生成した瞳マスク画像Bにおいて、瞳マスクMの濃淡を設定するものである。本実施形態では、瞳マスク濃淡設定手段55は、図示を省略したマウス、キーボード等の入力手段を用いて、ユーザが瞳マスクMの濃度を設定することとした。
【0031】
図6(b)のように、瞳マスク濃淡設定手段55において、瞳マスクMの濃度を最低に設定すると、瞳マスク画像Bでは瞳マスクMが黒色で描かれる。この場合、プロジェクタ6が瞳マスクMの部分に光を一切投射しないので、放送中継では、図6(a)のように被写体9の瞳が暗くなる。
【0032】
また、瞳マスク濃淡設定手段55において、瞳マスクMの濃度を高く設定すると(図6(b)の破線参照)、瞳マスク画像Bでは瞳マスクMが灰色で描かれる。この場合、プロジェクタ6が瞳マスクMの部分に弱い光を投射するので、放送中継では、図6(a)のよりも被写体9の瞳が明るくなる(図6不図示)。
このように、瞳マスク濃淡設定手段55は、中継現場の明るさや瞳の色に合わせて瞳マスクMの濃淡を設定できるので、より自然な放送中継が可能となる。
【0033】
なお、図6では、被写体9の左眼90に対応した瞳マスクMの濃淡を設定する例を図示したが、被写体9の右眼90に対応した瞳マスクMの濃淡も同様に設定できる。
また、図6では、瞳マスクMと左眼90との水平方向の位置関係を図示したが、瞳マスクMの濃淡は垂直方向も設定できる。
【0034】
<瞳マスクのぼかし設定>
図7のように、瞳マスクぼかし設定手段57は、瞳マスク画像生成手段53が生成した瞳マスク画像Bにおいて、瞳マスクMのぼかしを設定するものである。本実施形態では、瞳マスクぼかし設定手段57は、ユーザが入力手段を用いて、瞳マスクMのぼかしを設定することとした。
【0035】
瞳マスクぼかし設定手段57は、図7(a)のように、瞳マスクMをぼかす領域を設定できる。このぼかす領域は、瞳マスクMの外周から中心に向けた径rの環状領域であり、図7(a)でドットが付された領域である。
【0036】
また、瞳マスクぼかし設定手段57は、瞳マスクMの外周における濃度を設定できる。つまり、瞳マスクMの外周における濃度を低くする程、瞳マスクMの外周と中心の濃淡差が大きくなる。なお、瞳マスクMの中心における濃度は、瞳マスク濃淡設定手段55で設定されたものとなる。
【0037】
図7(b)のように、瞳マスクぼかし設定手段57は、ぼかす領域及び瞳マスクMの外周における濃度を組み合わせて、眼90の中心位置を基準として、ガウス分布のグラフを上下反転させた強度分布で瞳マスクMをぼかすことができる。
このように、瞳マスクぼかし設定手段57は、中継現場の明るさや瞳の色に合わせて瞳マスクMのぼかしを設定できるので、より自然な放送中継が可能となる。
【0038】
なお、図7では、左眼90に対応した瞳マスクMのぼかしを設定する例を図示したが、被写体9の右眼90に対応した瞳マスクMのぼかしも同様に設定できる。
また、図7では、瞳マスクMと左眼90との水平方向の位置関係を図示したが、瞳マスクMのぼかしは垂直方向も設定できる。
【0039】
<瞳マスクの位置・サイズ設定>
図8のように、瞳マスク位置・サイズ設定手段59は、瞳マスク画像生成手段53が生成した瞳マスク画像Bにおいて、瞳マスクM(M,M)の位置及びサイズを設定するものである。本実施形態では、瞳マスク位置・サイズ設定手段59は、ユーザが入力手段を用いて、瞳マスクMの位置及びサイズを設定することとした。
なお、図8では、図面を見やすくするため、瞳マスクMを破線で図示した。
【0040】
瞳マスク位置・サイズ設定手段59は、図8のように、右眼90に対応した瞳マスクMの位置として、瞳マスクMの中心座標(x,y)を設定できる。また、瞳マスク位置・サイズ設定手段59は、左眼90に対応した瞳マスクMの位置として、瞳マスクMの中心座標(x,y)を設定できる。
さらに、瞳マスク位置・サイズ設定手段59は、瞳マスクM,Mのサイズ(円の半径)Rをそれぞれ設定できる(図5参照)。
【0041】
このように、瞳マスク位置・サイズ設定手段59は、万一、瞳マスク画像Bの瞳マスクMの位置がずれたり、そのサイズが被写体9の瞳に合わない場合でも、瞳マスクMの位置やサイズを設定できるので、視聴者が違和感を覚えることが少なくなる。
【0042】
なお、瞳マスク画像生成装置5は、瞳マスクMの位置、サイズ、濃淡又はぼかしの何れか1以上を設定した場合、その設定が反映された瞳マスク画像Bをプロジェクタ6に出力する。この場合、瞳マスク画像生成装置5は、ユーザが設定を解除するまで、以後の瞳マスク画像Bにも同様の設定を施すこととしてもよい。
一方、瞳マスク画像生成装置5は、瞳マスクMの位置、サイズ、濃淡及びぼかしの何れも設定されなかった場合、瞳マスク画像生成手段53が生成した瞳マスク画像Bをそのままプロジェクタ6に出力する。
【0043】
[照明システムの動作]
図9を参照し、図1の照明システム1の動作について説明する(適宜図4参照)。
図9のように、照明システム1は、瞳検出用カメラ2によって、被写体9が含まれる瞳検出用映像Aを撮影する(ステップS1)。
【0044】
照明システム1は、瞳検出装置4の顔領域検出手段41によって、瞳検出用映像Aから、被写体9の顔領域を検出する(ステップS2)。
照明システム1は、瞳検出装置4の瞳位置検出手段43によって、瞳検出用映像Aの顔領域から、被写体9の瞳位置を検出する(ステップS3)。
【0045】
照明システム1は、瞳マスク画像生成装置5の瞳マスクサイズ算出手段51によって、顔領域の検出情報に含まれるサイズと、標準顔のサイズとの比に応じて、瞳マスクMのサイズを算出する(ステップS4)。
照明システム1は、瞳マスク画像生成装置5の瞳マスク画像生成手段53によって、ステップS3で検出された瞳位置を基準として、ステップS4で算出されたサイズの瞳マスクMが描かれた瞳マスク画像Bを生成する(ステップS5)。
【0046】
照明システム1は、瞳マスク画像Bに各種設定を行う。
照明システム1は、瞳マスク画像生成装置5の瞳マスク濃淡設定手段55によって、ステップS5で生成したマスク画像Bにおいて、瞳マスクMの濃淡を設定する。
照明システム1は、瞳マスク画像生成装置5の瞳マスクぼかし設定手段57によって、ステップS5で生成した瞳マスク画像Bにおいて、瞳マスクMのぼかしを設定する。
照明システム1は、瞳マスク画像生成装置5の瞳マスク位置・サイズ設定手段59によって、ステップS5で生成した瞳マスク画像Bにおいて、瞳マスクMの位置及びサイズを設定する(ステップS6)。
【0047】
照明システム1は、プロジェクタ6によって、瞳マスク画像Bを被写体9に投射する(ステップS7)。
【0048】
[作用・効果]
本願発明の第1実施形態に係る照明システム1は、放送中継の際、プロジェクタ6が被写体9の瞳に強い光を投射せず、被写体9の眩しさを低減できるので、被写体9の表情が自然になると共に被写体9が原稿を読み易くなるので、自然な放送中継が可能となる。さらに、照明システム1は、ノートPC3やプロジェクタ6が小型で持ち運びが便利なため、急を要する放送中継にも適用可能である。
【0049】
さらに、照明システム1は、瞳検出用映像Aの各フレーム画像から瞳マスク画像Bを逐次生成するので、被写体9の眼90に瞳マスクMが追従することになり、より自然な放送中継が可能となる。
さらに、照明システム1は、被写体9が瞬きしている間の瞳検出用映像Aから瞳位置を検出しないので、瞼を閉じた被写体9に瞳マスクMが投射される事態を防止し、より自然な放送中継が可能となる。
【0050】
さらに、照明システム1は、中継現場の明るさや被写体9の瞳の色に合わせて、瞳マスクMの濃淡やぼかしを設定できるので、より自然な放送中継が可能となる。
さらに、照明システム1は、万一、瞳マスクMが被写体9の瞳から外れたり、瞳マスクMのサイズが被写体9の瞳に合わない場合でも、適宜瞳マスクMの位置やサイズを設定できるので、視聴者が違和感を覚えることが少なくなる。
【0051】
(第2実施形態)
[照明システムの概略]
図10を参照し、本願発明の第2実施形態に係る照明システム1Bの概略について、第1実施形態と異なる点を説明する(適宜図1参照)。
照明システム1Bは、撮影カメラ7Bで撮影した収録映像を瞳検出用映像Aとして用いる点と、中継現場の明るさに合わせて瞳マスクM(図3)の濃淡を設定する点が、第1実施形態と異なる。
図10のように、照明システム1Bは、ノートPC3Bと、プロジェクタ6と、撮影カメラ7Bと、照度センサ8とを備えるものである。
【0052】
ノートPC3Bは、瞳検出装置4B及び瞳マスク画像生成装置5Bとして機能する一般的なパーソナルコンピュータである。このノートPC3Bは、図示を省略したケーブルでプロジェクタ6、撮影カメラ7B及び照度センサ8に接続されていることとする。
【0053】
瞳検出装置4Bは、撮影カメラ7Bより入力された瞳検出用映像(収録映像)Aの顔領域から瞳位置を検出する点が、第1実施形態と異なる。
瞳マスク画像生成装置5Bは、照度センサ8が検出した照度に合わせて瞳マスクMの濃淡を設定する点と、撮影カメラ7Bのズーム(焦点距離)に応じて、瞳マスクMのサイズを設定する点とが、第1実施形態と異なる。
【0054】
撮影カメラ7Bは、収録映像Aを撮影する一般的な放送用カメラである。この撮影カメラ7Bは、ズーム可能である。また、撮影カメラ7Bは、収録映像Aと、収録映像Aを構成するフレーム画像毎に、そのフレーム画像を撮影したときの焦点距離とをノートPC3Bに出力する。
【0055】
ここで、撮影カメラ7Bは、プロジェクタ6の光軸と一致するように設置する。例えば、撮影カメラ7B及びプロジェクタ6は、それぞれの光軸が一致するように固定可能なフレーム(不図示)に搭載してもよい。本実施形態では、撮影カメラ7Bは、パン及びチルトを行わず、収録映像Aに被写体9の顔が映るように撮影を行うこととする。
他の点、撮影カメラ7Bは、第1実施形態と同様のため、これ以上の説明を省略する。
【0056】
照度センサ8は、中継現場の照度を検出可能な一般的な光センサである。この照度センサ8は、撮影カメラ7Bの撮影方向、つまり、被写体9周辺の照度を検出できるように設置するとよい。本実施形態では、照度センサ8は、プロジェクタ6の側面に取り付けることとした。
【0057】
[瞳検出装置の構成]
図11を参照し、瞳検出装置4Bの構成について、第1実施形態と異なる点を説明する(適宜図10参照)。
図11のように、瞳検出装置4Bは、顔領域検出手段41Bと、瞳位置検出手段43とを備える。この瞳検出装置4Bは、撮影カメラ7Bから入力された焦点距離を瞳マスク画像生成装置5Bに出力する。
【0058】
顔領域検出手段41Bは、撮影カメラ7Bより入力された収録映像Aから、被写体9の顔領域を検出するものである。ここで、顔領域検出手段41Bは、第1実施形態と同様の手法を用いて、収録映像Aから顔領域を検出する。
他の点、顔領域検出手段41Bは、第1実施形態と同様のため、これ以上の説明を省略する。
【0059】
[瞳マスク画像生成装置の構成]
続いて、瞳マスク画像生成装置5Bの構成について、第1実施形態と異なる点を説明する(適宜図10参照)。
図11のように、瞳マスク画像生成装置5Bは、瞳マスクサイズ算出手段51Bと、瞳マスク画像生成手段53と、瞳マスク濃淡設定手段55Bと、瞳マスクぼかし設定手段57と、瞳マスク位置・サイズ設定手段59とを備える。
【0060】
瞳マスクサイズ算出手段51Bは、第1実施形態と同様、式(1)で瞳マスクMのサイズを算出する。そして、瞳マスクサイズ算出手段51Bは、算出した瞳マスクMのサイズを、撮影カメラ7Bから入力された焦点距離に応じて補正するものである。例えば、瞳マスクサイズ算出手段51Bは、焦点距離が短くなる程、瞳マスクMを大きくし、焦点距離が長くなる程、瞳マスクMを小さくする。
【0061】
このように、マスクサイズ算出手段51Bは、撮影カメラ7Bのズームに応じて瞳マスクMのサイズを補正するので、撮影カメラ7Bのカメラワークに合わせて瞳マスクMのサイズを手動設定する必要がなく、利便性が向上する。
他の点、マスクサイズ算出手段51Bは、第1実施形態と同様のため、これ以上の説明を省略する。
【0062】
瞳マスク濃淡設定手段55Bは、瞳マスク画像生成手段53が生成した瞳マスク画像Bにおいて、瞳マスクMの濃淡を設定するものである。本実施形態では、瞳マスク濃淡設定手段55Bは、照度センサ8から入力された照度に応じて、瞳マスクMの濃淡を設定することとした。例えば、瞳マスク濃淡設定手段55Bは、照度センサ8から入力された照度が低くなる程、瞳マスクMを淡くし、その照度が高くなる程、瞳マスクMを濃くする。
【0063】
このように、瞳マスク濃淡設定手段55Bは、中継現場の明るさに合わせて瞳マスクMの濃淡を設定できるので、利便性が向上する。
他の点、瞳マスク濃淡設定手段55Bは、第1実施形態と同様のため、これ以上の説明を省略する。
【0064】
[照明システムの動作]
図12を参照し、図10の照明システム1Bの動作について、第1実施形態と異なる点を説明する(適宜図11参照)。
図12のように、照明システム1Bは、撮影カメラ7Bによって、被写体9が含まれる収録映像Aを撮影する(ステップS1B)。
照明システム1Bは、瞳検出装置4Bの顔領域検出手段41Bによって、収録映像Aから、被写体9の顔領域を検出する(ステップS2B)。
照明システム1Bは、瞳マスク画像生成装置5Bの瞳マスクサイズ算出手段51Bによって、瞳マスクMのサイズを算出し、撮影カメラ7Bのズームに応じて、瞳マスクMのサイズを補正する(ステップS4B)。
【0065】
照明システム1Bは、瞳マスク画像Bに各種設定を行う。
照明システム1Bは、瞳マスク画像生成装置5Bの瞳マスク濃淡設定手段55Bによって、照度センサ8から入力された照度に応じて、瞳マスクMの濃淡を設定する(ステップS6B)。
この他、ステップS6Bでは、第1実施形態と同様、瞳マスクMのぼかし、位置及びサイズを設定する。
【0066】
[作用・効果]
本願発明の第2実施形態に係る照明システム1Bは、第1実施形態と同様、被写体9の眩しさを低減できるので、自然な放送中継が可能となると共に、急を要する放送中継にも適用可能である。
さらに、照明システム1Bは、撮影カメラ7Bのズームに応じて瞳マスクMのサイズを補正すると共に、中継現場の明るさに合わせて瞳マスクMの濃淡を設定できるので、利便性が向上する。
【0067】
(変形例)
以上、本願発明の実施形態を詳述してきたが、本願発明は前記した実施形態に限られるものではなく、本願発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
前記したように、被写体が瞼を閉じた場合、瞳マスクが投射されず、被写体の瞳位置に光が照射された状態になる。従って、瞼を開けた瞬間、被写体が眩しさを感じることがある。そこで、照明システムは、被写体の瞬き時間を予め設定しておき、被写体の瞳位置を検出できない時間が瞬き時間以上続いた場合、元の瞳位置に瞳マスクMを投射してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1,1B 照明システム
2 瞳検出用カメラ
3,3B ノートPC
4,4B 瞳検出装置
5,5B 瞳マスク画像生成装置
6 プロジェクタ
7,7B 撮影カメラ
8 照度センサ
30 瞳マスク画像表示手段
41,41B 顔領域検出手段
43 瞳位置検出手段
51,51B 瞳マスクサイズ算出手段
53 瞳マスク画像生成手段
55,55B 瞳マスク濃淡設定手段
57 瞳マスクぼかし設定手段
59 瞳マスク位置・サイズ設定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12