特許第6703463号(P6703463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703463
(24)【登録日】2020年5月12日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】調整方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20200525BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   H01L21/78 C
   B24B49/12
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-178859(P2016-178859)
(22)【出願日】2016年9月13日
(65)【公開番号】特開2018-46110(P2018-46110A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(72)【発明者】
【氏名】宮田 諭
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−084412(JP,U)
【文献】 特開平11−167068(JP,A)
【文献】 特開2009−088881(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/081746(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0269650(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 49/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースを保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持されたワークピースを撮像して撮像画像を形成する撮像手段と、該撮像手段により形成された撮像画像を表示する表示手段と、を備える装置において、該撮像手段の向きを調整する調整方法であって、
ワークピースを該保持テーブルで保持するとともに、ワークピースに設定され所定の方向に伸長するマークの伸長方向と該装置が有する座標系の第1方向とを一致させる保持ステップと、
該保持ステップを実施した後、該保持テーブルに保持されたワークピースの該マークを撮像して撮像画像を形成する撮像画像形成ステップと、
該撮像画像形成ステップで形成した該撮像画像を、該第1方向を示すための目印が表示される該表示手段で表示する表示ステップと、
該撮像手段の向きを変更して、該表示手段に表示された該撮像画像内の該マークの伸長方向を該目印の示す方向に一致させる向き調整ステップと、を備え、
該向き調整ステップでは、該目印の示す方向と該撮像画像内の該マークの伸長方向とのなす角度が減少すると、該装置が所定の通知を行うことを特徴とする調整方法。
【請求項2】
ワークピースを保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持されたワークピースを撮像して撮像画像を形成する撮像手段と、該撮像手段により形成された撮像画像を表示する表示手段と、制御手段と、を備え、
該表示手段には、装置が有する座標系の第1方向を示すための目印が表示され、
該制御手段は、
該撮像手段によって形成された撮像画像を画像処理して、ワークピースに設定され所定の方向に伸長するマークを該撮像画像内で検出する検出部と、
該検出部で検出した該マークの伸長方向と該目印の示す方向とのなす角度を算出する角度算出部と、
該角度算出部により算出される角度が減少すると所定の通知を行う通知部と、を有することを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像ユニットの向きを調整する際に用いられる調整方法、及びこの調整方法に適した装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハやパッケージ基板に代表される板状のワークピースを加工する際には、例えば、環状の切削ブレードを備える切削装置等の加工装置が使用される。高速に回転させた切削ブレードをワークピースに対して切り込ませながら、切削ブレードとワークピースとを相対的に移動させることで、この移動の経路に沿ってワークピースを加工できる。
【0003】
上述の加工装置や、ワークピースの検査に使用される検査装置には、ワークピースを撮像して画像(撮像画像)を形成するための撮像ユニット(撮像手段)が設けられている。この撮像ユニットの下方には、顕微鏡(対物レンズ)が連結されている。加工装置や検査装置等は、撮像ユニットでワークピースを撮像して得られる画像に基づいて、例えば、加工予定ライン(ストリート)の位置を認識する。
【0004】
加工や検査の対象となるワークピースの種類等を変更する場合等には、併せて、撮像ユニットに連結されている顕微鏡を交換することがある。一方で、顕微鏡を交換する際に撮像ユニットの向きがずれると、モニター(表示手段)に映し出される画像も傾いてしまう。その場合には、例えば、モニターに映る画像を確認しながら撮像ユニットを回転させて、撮像ユニットの向きを調整していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−84412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、装置が備える構成要素の配置次第では、モニターに映る画像を確認しながら撮像ユニットを回転させることができない場合もある。その場合には、撮像ユニットの回転とモニターの確認とを交互に繰り返さなくてはならないので、調整作業の効率が悪かった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、撮像ユニット(撮像手段)の向きを効率良く調整できる調整方法、及びこの調整方法に適した装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、ワークピースを保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持されたワークピースを撮像して撮像画像を形成する撮像手段と、該撮像手段により形成された撮像画像を表示する表示手段と、を備える装置において、該撮像手段の向きを調整する調整方法であって、ワークピースを該保持テーブルで保持するとともに、ワークピースに設定され所定の方向に伸長するマークの伸長方向と該装置が有する座標系の第1方向とを一致させる保持ステップと、該保持ステップを実施した後、該保持テーブルに保持されたワークピースの該マークを撮像して撮像画像を形成する撮像画像形成ステップと、該撮像画像形成ステップで形成した該撮像画像を、該第1方向を示すための目印が表示される該表示手段で表示する表示ステップと、該撮像手段の向きを変更して、該表示手段に表示された該撮像画像内の該マークの伸長方向を該目印の示す方向に一致させる向き調整ステップと、を備え、該向き調整ステップでは、該目印の示す方向と該撮像画像内の該マークの伸長方向とのなす角度が減少すると、該装置が所定の通知を行う調整方法が提供される。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、ワークピースを保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持されたワークピースを撮像して撮像画像を形成する撮像手段と、該撮像手段により形成された撮像画像を表示する表示手段と、制御手段と、を備え、該表示手段には、装置が有する座標系の第1方向を示すための目印が表示され、該制御手段は、該撮像手段によって形成された撮像画像を画像処理して、ワークピースに設定され所定の方向に伸長するマークを該撮像画像内で検出する検出部と、該検出部で検出した該マークの伸長方向と該目印の示す方向とのなす角度を算出する角度算出部と、該角度算出部により算出される角度が減少すると所定の通知を行う通知部と、を有する装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る調整方法では、表示手段に表示された目印の示す方向と撮像画像内のワークピースが有するマークの伸長方向とのなす角度が減少すると、装置が所定の通知を行うので、この通知に合わせて撮像手段の向きを変更することで、必ずしも表示手段を確認することなく撮像手段の向きを調整できる。つまり、撮像手段の向きを変更する際に表示手段を確認しなくて良いので、撮像手段の向きを効率良く調整できる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る装置は、ワークピースに設定されるマークを撮像画像内で検出する検出部と、検出部で検出したマークの伸長方向と表示手段に表示された目印の示す方向とのなす角度を算出する角度算出部と、角度算出部で算出される角度が減少すると所定の通知を行う通知部と、を有するので、本発明の一態様に係る調整方法を適切に遂行できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】加工装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
図2】カメラの構成例を模式的に示す分解斜視図である。
図3】カメラの構成例を模式的に示す側面図である。
図4】撮像画像形成ステップ、表示ステップ、及び向き調整ステップを説明するための図である。
図5図5(A)は、向き調整ステップが開始される第1タイミングでのモニターを模式的に示す正面図であり、図5(B)は、第1タイミングの後の第2タイミングでのモニターを模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る加工装置の構成例を模式的に示す斜視図である。なお、本実施形態では、ワークピース(被加工物)を切削する加工装置(切削装置)を例示するが、本発明に係る装置は、例えば、ワークピースをレーザービームで加工するレーザー加工装置や、ワークピースを検査する検査装置等でも良い。
【0014】
図1に示すように、加工装置(装置、切削装置)2は、各構造を支持する基台4を備えている。基台4の上方には、カバー6が取り付けられている。カバー6の内側には、空間が形成されており、ワークピース(被加工物)11を加工するための加工ユニット(切削ユニット)8等が収容される。
【0015】
ワークピース11は、例えば、シリコン等の半導体材料でなる円形のウェーハであり、その表面側は、中央のデバイス領域と、デバイス領域を囲む外周余剰領域とに分けられている。デバイス領域は、格子状に配列された分割予定ライン(ストリート)でさらに複数の領域に区画されており、各領域には、IC、LSI等のデバイスが形成されている。
【0016】
ワークピース11の裏面側には、ワークピース11よりも径の大きい円形のダイシングテープ13が貼付されている。ダイシングテープ13の外周部分は、環状のフレーム15に固定されている。すなわち、ワークピース11は、ダイシングテープ13を介してフレーム15に支持されている。
【0017】
なお、本実施形態では、シリコン等の半導体材料でなる円形のウェーハをワークピース11としているが、ワークピース11の材質、形状、構造等に制限はない。例えば、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる基板をワークピース11として用いることもできる。デバイスの種類、数量、配置等にも制限はない。
【0018】
加工ユニット8は、回転軸となるスピンドル(不図示)を備えている。スピンドルの一端側には、環状の切削ブレード10が装着されている。スピンドルの他端側には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、切削ブレード10は、この回転駆動源から伝達される力によって回転する。
【0019】
加工ユニット8の横には、ワークピース11を撮像するためのカメラ12が設けられている。加工ユニット8及びカメラ12は、ともに移動機構(不図示)に支持されており、前後方向(Y軸方向、割り出し送り方向)及び鉛直方向(Z軸方向)に移動する。
【0020】
加工ユニット8及びカメラ12の下方には、ワークピース11を保持するためのチャックテーブル(保持テーブル)14が設けられている。チャックテーブル14の周囲には、ワークピース11を支持する環状のフレーム15を四方から固定するための4個のクランプ16が配置されている。
【0021】
チャックテーブル14及びクランプ16は、チャックテーブル移動機構(不図示)に支持されており、左右方向(X軸方向、加工送り方向)に移動する。また、チャックテーブル14の下方には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、チャックテーブル14及びクランプ16は、この回転駆動源によって鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。
【0022】
チャックテーブル14の上面は、ワークピース11等を吸引、保持する保持面になっている。この保持面は、チャックテーブル14に形成された吸引路(不図示)等を通じて吸引源(不図示)に接続されている。
【0023】
基台4の前方の角部には、鉛直方向に移動するカセットエレベーター18が設けられている。カセットエレベーター18の上面には、複数のワークピース11を収容できるカセット(不図示)が載せられる。カセットエレベーター18は、ワークピース11を適切に搬出、搬入できるように、カセットの高さ(鉛直方向の位置)を調整する。
【0024】
カバー6の前面6aには、ユーザーインターフェースとなるタッチパネル式のモニター(表示手段)20が設けられている。このモニター20の横には、スピーカー22が配置されている。また、カバー6の上面6bには、表示灯24が設けられている。加工ユニット8、カメラ12、チャックテーブル14、カセットエレベーター18、モニター20、スピーカー22、表示灯24等の構成要素は、制御ユニット(制御手段)26(図4参照)に接続される。なお、制御ユニット26の具体的な機能等については後述する。
【0025】
次に、カメラ12の詳細について説明する。図2は、カメラ12の構成例を模式的に示す分解斜視図であり、図3は、カメラ12の構成例を模式的に示す側面図である。図2及び図3に示すように、カメラ12は、チャックテーブル14に保持されるワークピース11を拡大した像を形成するための顕微鏡32を備えている。
【0026】
顕微鏡32は、例えば、四角柱状の筐体34を含む。筐体34の下面には、下向きに突出する円筒状の鏡筒36が設けられている。この鏡筒36には、例えば、対物レンズが収容される。一方で、筐体34の上面側には、円形の開口32aが設けられている。また、開口32aの周囲には、複数のねじ穴32bが配置されている。
【0027】
顕微鏡32の開口32aには、連結部材38が取り付けられる。連結部材38は、円盤状のフランジ部40と、フランジ部40から下向きに突出する円筒状のボス部42とで構成されている。ボス部42を開口32aに挿入することで、連結部材38を顕微鏡32に取り付けることができる。
【0028】
連結部材38には、フランジ部40及びボス部42を鉛直方向に貫通する円形の貫通穴38aが設けられている。また、貫通穴38aの周囲には、フランジ部40を鉛直方向に貫通する複数の貫通穴38bが設けられている。この貫通穴38bは、顕微鏡32のねじ穴32bに対応する位置に配置される。
【0029】
開口32aにボス部42を挿入した上で、貫通穴38bを通じてねじ穴32bにねじ44を締め込めば、連結部材38を顕微鏡32に固定できる。なお、フランジ部40の外周面には、内側の貫通穴38aに達する複数のねじ穴(不図示)が設けられている。このねじ穴には、ねじ46が締め込まれる。
【0030】
連結部材38には、ワークピース11を撮像するための撮像ユニット(撮像手段)48が接続される。撮像ユニット48は、例えば、四角柱状の筐体50を含む。筐体50の下面には、下向きに突出する円筒状の連結部52が設けられている。連結部52を連結部材38の貫通穴38aに挿入した上で、ねじ46を締め込めば、撮像ユニット48を連結部材38に固定できる。
【0031】
筐体50には、顕微鏡32によって結像される像を撮像して画像(撮像画像)を形成するための撮像素子が収容されている。撮像素子は、例えば、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等であり、撮像によって形成した画像を外部に出力する。モニター20は、配線54等を介して撮像素子に接続されており、撮像素子から出力される画像を表示する。なお、このモニター20には、例えば、X軸方向を示すための目印L1(図4等参照)が表示される。
【0032】
次に、本実施形態に係る調整方法について説明する。本実施形態に係る調整方法では、まず、ワークピース11をチャックテーブル14で保持する保持ステップを行う。この保持ステップでは、例えば、ワークピース11の裏面に貼付されたダイシングテープ13をチャックテーブル14の保持面に接触させて、吸引源の負圧を作用させる。併せて、環状のフレーム15をクランプ16で固定する。これにより、ワークピース11は、表面側が上方に露出した状態でチャックテーブル14に保持される。
【0033】
ワークピース11をチャックテーブル14で保持した後には、例えば、チャックテーブル14を回転させて、ワークピース11に設定された所定の分割予定ラインの伸長方向と、加工装置2が有する座標系のX軸方向とを一致させる。チャックテーブル14の回転は、例えば、θ合わせ等と呼ばれる方法で行われる。
【0034】
θ合わせでは、まず、ワークピース11の複数の領域をカメラ12で撮像し、形成される画像を用いて、例えば、所定の分割予定ラインの両端の2点を指定する。加工装置2の制御ユニット26は、指定された2点のX座標が同じになるようにチャックテーブルの回転量を計算した上で、この回転量に基づきチャックテーブル14を回転させる。なお、所定の分割予定ラインの伸長方向がX軸方向に一致するように、作業者がモニター20を見ながらチャックテーブル14を手動で回転させても良い。
【0035】
なお、本実施形態では、所定の分割予定ラインの伸長方向をX軸方向に一致させているが、任意のマーク(分割予定ライン以外のマークも含む)の伸長方向を加工装置2の任意の方向(第1方向)に一致させても良い。例えば、所定の分割予定ラインの伸長方向をY軸方向に一致させることもできる。この場合には、Y軸方向を示すための目印をモニター20に表示すると良い。
【0036】
また、例えば、ワークピース11に切削ブレード10を切り込ませて形成した溝をマークとして利用することもできる。なお、チャックテーブル14に保持された状態でワークピース11に形成される溝の伸長方向は、通常、加工送り方向であるX軸方向に一致する。よって、溝の伸長方向をX軸方向に一致させたい場合には、改めてチャックテーブル14を回転させる必要はない。
【0037】
保持ステップの後には、チャックテーブル14に保持されたワークピース11の所定の分割予定ラインをカメラ12で撮像して画像を形成する撮像画像形成ステップを行う。図4は、撮像画像形成ステップ等を説明するための図である。撮像画像形成ステップでは、例えば、カメラ12の位置を所定の分割予定ライン上に合わせて、この分割予定ラインをカメラ12で撮像する。これにより、所定の分割予定ラインが映った画像を形成できる。
【0038】
撮像画像形成ステップの後には、形成された画像をモニター20で表示する表示ステップを行う。上述のように、モニター20には、配線54等を介して撮像ユニット48の撮像素子が接続されている。よって、撮像ユニット48で形成された画像は、モニター20に表示される。本実施形態では、所定の分割予定ラインをカメラ12で撮像して画像を形成するので、図4に示すように、モニター20には、対象の分割予定ラインL2を含む画像が表示される。
【0039】
なお、このモニター20には、X軸方向(加工装置2の任意の方向(第1方向))を示すための目印L1が併せて表示される。この目印L1は、例えば、制御ユニット26により、画像の横方向と平行に設定される。ただし、目印L1の態様に制限はない。
【0040】
上述した保持ステップでは、ワークピース11に設定された所定の分割予定ラインの伸長方向と、加工装置2が有する座標系のX軸方向とを一致させている。よって、分割予定ラインL2の伸長方向は、X軸方向に一致する。図4に示すように、画像の横方向に相当する目印L1と、X軸方向に相当する分割予定ラインL2の伸長方向とが一致しないのは、撮像ユニット48の向きにずれがあるためである。
【0041】
目印L1と分割予定ラインL2の伸長方向とが一致しない場合には、撮像ユニット48の向きを変更して、目印L1と分割予定ラインL2の伸長方向とを一致させる向き調整ステップを行う。具体的には、例えば、ねじ46を緩めた状態で、撮像ユニット48を連結具38(顕微鏡32)に対して回転させる。なお、この向き調整ステップの間には、上述した撮像画像形成ステップ及び表示ステップを、例えば、1秒当たり数回〜30回程の頻度で繰り返し行い、モニター20に表示される画像を更新し続けることが望ましい。
【0042】
図5(A)は、向き調整ステップが開始される第1タイミングでのモニター20を模式的に示す正面図である。例えば、第1タイミングで図5(A)に示すような画像Aが得られた後には、画像A中の分割予定ラインL2を、制御ユニット26内の画像処理部(検出部)26aで検出する。具体的には、画像Aに対してエッジ検出処理等の画像処理を施し、画像A中で分割予定ラインL2の位置を特定する。
【0043】
画像A中の分割予定ラインL2を検出した後には、目印L1と分割予定ラインL2の伸長方向とのなす角度θ1を、制御ユニット26内の演算部(角度算出部)26bで算出する。本実施形態では、画像Aの横方向に合わせて目印L1が設定されているので、演算部26bは、画像Aの横方向に対して分割予定ラインL2のなす角度θ1を算出する。算出された角度θ1は、制御ユニット26内の記憶部26cに記憶される。
【0044】
図5(B)は、第1タイミングの後の第2タイミングでのモニター20を模式的に示す正面図である。第1タイミングの後の第2タイミングで図5(B)に示すような画像Bが得られた後には、同様の手順で画像B中の分割予定ラインL2を検出し、目印L1と分割予定ラインL2の伸長方向とのなす角度θ2を算出する。
【0045】
すなわち、画像処理部26aによって、画像B中の分割予定ラインL2の位置を特定する。分割予定ラインL2を検出した後には、演算部26bによって、目印L1と分割予定ラインL2の伸長方向とのなす角度θ2を算出する。算出された角度θ2は、制御ユニット26内の記憶部26cに記憶される。
【0046】
その後、演算部26bは、角度θ1と角度θ2との大小を比較する。そして、制御ユニット26内の通知部26dは、演算部26bでの比較の結果に応じた通知を行う。例えば、通知部26dは、角度θ1よりも角度θ2が小さい場合、つまり、目印L1と分割予定ラインL2の伸長方向とのなす角度が減少した場合に、スピーカー22から音を発生させる。
【0047】
これにより、撮像ユニット48の向きを調整する作業者は、モニター20を見なくても撮像ユニット48の向きが適切な方向に近づいているか否かを確認できる。よって、撮像ユニット48の向きを効率良く調整できる。なお、このような音による聴覚的な通知を行う場合には、例えば、角度θ2がゼロに近づくにつれて(つまり、撮像ユニット48の向きが適切な方向に近づくにつれて)大きな音を発生させると良い。
【0048】
一方で、角度θ2がゼロから離れる場合には(つまり、撮像ユニット48の向きが適切な方向から離れる場合には)、音を小さくしても良い。このように、角度θ2に合わせて音の大きさを変更することで、作業者は、撮像ユニット48の向きと適切な方向との関係を容易に把握できるようになる。
【0049】
また、音による通知を行う場合には、角度θ2がゼロに近づくにつれて高い音(又は低い音)を発生させても良い。一方で、角度θ2がゼロから離れる場合には(つまり、撮像ユニット48の向きが適切な方向から離れる場合には)、角度θ2がゼロに近づく場合とは反対の方向に音の周波数を変化させても良い。角度θ2に合わせて音の高さ(周波数)を変更することで、作業者は、撮像ユニット48の向きと適切な方向との関係を容易に把握できるようになる。
【0050】
なお、通知部26dによる通知は、必ずしも音によらなくて良い。例えば、作業者がモニター20や表示灯24を確認できる状況では、これらを利用する視覚的な通知を行っても良い。具体的には、例えば、モニター20に角度θ2の値を表示する、モニター20に角度θ2の大きさを示すグラフを表示する、モニター20の画面の色の濃淡や明暗等を変更する、モニター20の画面の透過処理の透明度を変更する、表示灯24を発光させる(光量を変更する)、表示灯24を点滅させる(点滅の周期を変更する)、等の方法が選択される。
【0051】
この場合には、撮像ユニット48の向きと適切な方向との関係をより明確な方法で確認できるので、目印L1と分割予定ラインL2の伸長方向との一致を目で見て確認する場合に比べて、作業者の負荷が減り、また、撮像ユニット48の向きを高い精度で調整し易くなる。
【0052】
なお、作業者がモニター20や表示灯24を確認できない状況では、携帯電話やスマートフォンのモニター等を利用して視覚的な通知を行っても良い。この場合、通知部26dは、作業者の持つ携帯電話やスマートフォンに対して、モニターの表示を変更するように指示を出す。これにより、加工装置2のモニター20や表示灯24を確認できない状況でも、作業者は、撮像ユニット48の向きが適切な方向に近づいているか否かを視覚的に確認できる。
【0053】
更に、携帯電話やスマートフォンの振動機能等を利用して触覚的な通知を行うこともできる。この場合、通知部26dは、作業者の携帯電話やスマートフォンに対して、振動の状態を変更するように指示を出す。具体的には、例えば、振動を発生させる、振動の強度を変更する、振動の周期を変更する、等の方法を選択できる。
【0054】
また、上述した複数の方法を組み合わせた通知を行っても良い。この場合には、1つの方法を用いて通知を行う場合等に比べて、撮像ユニット48の向きを高い精度で調整し易くなる。
【0055】
以上のように、本実施形態に係る調整方法では、モニター(表示手段)20に表示された目印L1の示す方向と画像(撮像画像)内のワークピース11が有する分割予定ラインL2(マーク)の伸長方向とのなす角度が減少すると、加工装置2が所定の通知を行うので、この通知に合わせて撮像ユニット(撮像手段)48の向きを変更することで、必ずしもモニター20を確認することなく撮像ユニット48の向きを調整できる。つまり、撮像ユニット48の向きを変更する際にモニター20を確認しなくて良いので、撮像ユニットの向きを効率良く調整できる。
【0056】
また、本実施形態に係る加工装置(装置、切削装置)2は、ワークピース11に設定される分割予定ラインL2を画像内で検出する画像処理部(検出部)26aと、画像処理部26aで検出した分割予定ラインL2の伸長方向とモニター20に表示された目印L1の示す方向とのなす角度を算出する演算部(角度算出部)26bと、演算部26bで算出される角度が減少すると所定の通知を行う通知部26dと、を有するので、本実施形態に係る調整方法を適切に遂行できる。
【0057】
上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0058】
2 加工装置(装置、切削装置)
4 基台
6 カバー
6a 前面
6b 上面
8 加工ユニット(切削ユニット)
10 切削ブレード
12 カメラ
14 チャックテーブル(保持テーブル)
16 クランプ
18 カセットエレベーター
20 モニター(表示手段)
22 スピーカー
24 表示灯
26 制御ユニット(制御手段)
26a 画像処理部(検出部)
26b 演算部(角度算出部)
26c 記憶部
26d 通知部
11 ワークピース(被加工物)
13 ダイシングテープ
15 フレーム
A,B 画像
L1 目印
L2 分割予定ライン
図1
図2
図3
図4
図5