(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明の一実施形態について、
図1〜
図4等を用いて説明する。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は加熱機構(温度調整部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管210が配設されている。反応管210は、内部反応管(インナチューブ)204と、インナチューブ204を同心円状に取り囲む外部反応管(アウタチューブ)203と、を備えた2重管構成を有している。インナチューブ204およびアウタチューブ203は、それぞれ、例えば石英(SiO
2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。インナチューブ204の筒中空部には、処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。
【0011】
インナチューブ204およびアウタチューブ203は、それぞれ、マニホールド209によって下方から支持されている。マニホールド209は、ステンレス(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209内壁の上端部には、SUS等の金属材料により構成され、マニホールド209の径方向内側に向けて延出した環状のフランジ部209aが設けられている。インナチューブ204の下端は、フランジ部209aの上面に当接している。アウタチューブ203の下端は、マニホールド209の上端に当接している。アウタチューブ203とマニホールド209との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209の下端開口は、処理炉202の炉口として構成されており、後述するボートエレベータ115によりボート217が上昇した際に、蓋体としての円盤状のシールキャップ219によって気密に封止される。マニホールド209とシールキャップ219との間には、シール部材としてのOリング220bが設けられている。
【0012】
インナチューブ204の天井部はフラット形状に形成されており、アウタチューブ203の天井部はドーム形状に形成されている。インナチューブ204の天井部をドーム形状とすると、処理室201内へ供給したガスが、複数枚のウエハ200間に流れずに、インナチューブ204の天井部におけるドーム部分の内部空間に流れ込みやすくなる。インナチューブ204の天井部をフラット形状とすることで、処理室201内へ供給したガスを、複数枚のウエハ200間へ効率よく流すことが可能となる。インナチューブ204の天井部と後述するボート217の天板とのクリアランス(空間)を小さくすることで、例えば、ウエハ200の配列間隔(ピッチ)と同程度の大きさとすることで、ウエハ200間へ効率よくガスを流すことが可能となる。
【0013】
図2に示すように、インナチューブ204の側壁には、第1ノズルとしてのノズル249aおよび第3ノズルとしてのノズル249cを収容するノズル収容室204aと、第2ノズルとしてのノズル249bを収容するノズル収容室204bと、が形成されている。ノズル収容室204a,204bは、それぞれ、インナチューブ204の側壁からインナチューブ204の径方向外向きに突出し、垂直方向に沿って延在するチャンネル形状に形成されている。ノズル収容室204a,204bの内壁は、処理室201の内壁の一部を構成している。ノズル収容室204aとノズル収容室204bとは、インナチューブ204の内壁に沿って、すなわち、処理室201内に収容されたウエハ200の外周に沿って、互いに所定距離離れた位置にそれぞれ配置されている。具体的には、ノズル収容室204a,204bは、ウエハ200の中心とノズル収容室204aの中心とを結ぶ直線と、ウエハ200の中心とノズル収容室204bの中心とを結ぶ直線と、が作る中心角(ノズル収容室204a,204bの各中心を両端とする弧に対する中心角)が例えば30〜150°の範囲内の角度となるような位置にそれぞれ配置されている。ノズル収容室204a内に収容されたノズル249aと、ノズル収容室204b内に収容されたノズル249bとは、所定距離離れた位置にそれぞれ配置されている。ノズル収容室204a内に収容されたノズル249a,249cは、近接した位置にそれぞれ配置されている。
【0014】
ノズル249a〜249cは、ノズル収容室204a,204bの下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向けて立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a〜249cは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。
図7(a)に示すように、ノズル249a〜249cの側面には、第1〜第3ガス噴出孔としてのガス噴出孔250a〜250cがそれぞれ設けられている。ガス噴出孔250a〜250cは、処理室201内に収容された複数枚のウエハ200の一枚一枚に対応するように、少なくとも複数枚のウエハ200の数と同数が、ノズル249a〜249cの下部から上部にわたる全域に設けられている。ボート217が例えば120枚のウエハ200を保持する場合、ノズル249a〜249cの各垂直部の側面には、それぞれ、ガス噴出孔250a〜250cが少なくとも120個ずつ設けられる。
図1に示すように、ガス噴出孔249a〜249cを、それぞれ、ウエハ配列領域だけでなく、ウエハ配列領域よりも下側にも設けることも可能である。ガス噴出孔250a〜250cは、例えば、それぞれが処理室201の中心を向くように開口しており、ウエハ200の中心に向けてガスを供給することが可能なように構成されている。また、ガス噴出孔250a〜250cは、例えば、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。これらの構成により、各ウエハ200の中心付近へのガスの供給を促すことが可能となり、後述する成膜処理のウエハ面内均一性を向上させることが可能となる。また、各ウエハ200に対して供給するガスの流量や流速を、ウエハ200間で均一化させることが容易となり、後述する成膜処理のウエハ間均一性を向上させることが可能となる。
【0015】
図2に示すように、ノズル249a〜249cには、ガス供給管232a〜232cがそれぞれ接続されている。ガス供給管232a〜232cには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a〜241cおよび開閉弁であるバルブ243a〜243cがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a〜232cのバルブ243a〜243cよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232d〜232fがそれぞれ接続されている。ガス供給管232d〜232fには、ガス流の上流側から順に、MFC241d〜241fおよびバルブ243d〜243fがそれぞれ設けられている。
【0016】
ガス供給管232a,232bからは、原料(原料ガス)として、例えば、形成しようとする膜を構成する主元素としてのシリコン(Si)およびハロゲン元素を含むハロシラン原料ガスが、MFC241a,241b、バルブ243a,243b、ノズル249a,249bを介して処理室201内へそれぞれ供給される。
【0017】
原料ガスとは、気体状態の原料、例えば、常温常圧下で液体状態である原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態である原料等のことである。ハロシラン原料とは、ハロゲン基を有するシラン原料のことである。ハロゲン基には、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン元素が含まれる。ハロシラン原料ガスとしては、例えば、SiおよびClを含む原料ガス、すなわち、クロロシラン原料ガスを用いることができる。クロロシラン原料ガスは、Siソースとして作用する。クロロシラン原料ガスとしては、例えば、ヘキサクロロジシラン(Si
2Cl
6、略称:HCDS)ガスを用いることができる。
【0018】
ガス供給管232cからは、第1反応体(第1反応ガス)として、例えば、酸素(O)含有ガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給される。O含有ガスは、酸化源(酸化剤、酸化ガス)、すなわち、Oソースとして作用する。O含有ガスとしては、例えば、酸素(O
2)ガスを用いることができる。
【0019】
ガス供給管232aからは、第2反応体(第2反応ガス)として、例えば、水素(H)含有ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。H含有ガスは、それ単体では酸化作用は得られないが、後述する成膜処理において、特定の条件下でO含有ガスと反応することで原子状酸素(atomic oxygen、O)等の酸化種を生成し、酸化処理の効率を向上させるように作用する。H含有ガスとしては、例えば、水素(H
2)ガスを用いることができる。
【0020】
ガス供給管232d〜232fからは、不活性ガスとして、例えば、窒素(N
2)ガスが、それぞれMFC241d〜241f、バルブ243d〜243f、ガス供給管232a〜232c、ノズル249a〜249cを介して処理室201内へ供給される。N
2ガスは、パージガス、キャリアガスとして作用する。
【0021】
主に、ガス供給管232a,232b、MFC241a,241b、バルブ243a,243bにより、第1供給系(原料供給系)が構成される。主に、ガス供給管232a,232c、MFC241a,241c、バルブ243a,243cにより、第2供給系(反応体供給系)が構成される。主に、ガス供給管232d〜232f、MFC241d〜241f、バルブ243d〜243fにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0022】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a〜243fやMFC241a〜241f等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a〜232fのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a〜232f内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a〜243fの開閉動作やMFC241a〜241fによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a〜232f等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0023】
インナチューブ204の側面には、例えばスリット状の貫通孔として構成された排気口(排気スリット)204c,204dが、それぞれ垂直方向に細長く開設されている。排気口204c,204dは、正面視において例えば矩形であり、インナチューブ204の側壁の下部から上部にわたってそれぞれ設けられている。処理室201内と、インナチューブ204とアウタチューブ203との間の円環状の空間である排気空間205とは、排気口204c,204dを介して連通している。排気口204c,204dのそれぞれは、平面視において、ガス噴出孔250a,250bと、処理室201内に収容されたウエハ200の中心を挟んで非対向となる位置に配置されている。具体的には、ガス噴出孔250a,250bを結ぶ線分を線分Aとしたとき、排気口204c,204dは、平面視において、それぞれが、線分Aの垂直二等分線である直線B上に配置されている。なお、直線Bはウエハ200の中心を通ることとなる。ガス噴出孔250a,250bを結ぶ線分Aと、排気口204c,204dを通る直線Bと、は互いに直交しており、また、ガス噴出孔250a,250bは、直線Bを基準として線対称となる位置にそれぞれ配置されている。
【0024】
図1に示すように、アウタチューブ203の下部には、排気空間205を介して処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が接続されている。排気管231には、排気空間205内、すなわち、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。排気口204c,204d、排気空間205、真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0025】
マニホールド209の下端開口は、Oリング220bを介してシールキャップ219により気密に封止される。シールキャップ219は、SUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の下方には、ボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管210の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217により支持されたウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0026】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25〜200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
【0027】
アウタチューブ203とインナチューブ204との間には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、アウタチューブ203の内壁に沿って設けられている。
【0028】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0029】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する成膜処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する成膜処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0030】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a〜241f、バルブ243a〜243f、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0031】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a〜241fによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a〜243fの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0032】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0033】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200上にシリコン酸化膜(SiO膜)を形成するシーケンス例について、
図4を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0034】
図4に示す成膜シーケンスでは、
第1ノズルとしてのノズル249aと、ノズル249aとは離れた位置に配置された第2ノズルとしてのノズル249bと、を介して、処理室201内のウエハ200に対して原料としてのHCDSガスを供給し、平面視において、ノズル249aのガス噴出孔250aおよびノズル249bのガス噴出孔250bと非対向となる位置に配置される複数の排気口204c,204dより排気するステップ1と、
第3ノズルとしてのノズル249cを介して処理室201内のウエハ200に対して反応体としてのO
2ガスを供給し、複数の排気口204c,204dより排気するステップ2と、
を非同時に行うサイクルを所定回数(1回以上)行うことで、ウエハ200上に、SiおよびOを含む膜としてSiO膜を形成する。
【0035】
なお、上述のステップ2は、ウエハ200に対して、反応体としてのO
2ガスと、反応体としてのH
2ガスと、を同時に供給する期間を含んでいる。H
2ガスの供給はノズル249aより行う。
【0036】
本明細書では、
図4に示す成膜シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。後述する変形例や他の実施形態における成膜シーケンスについても同様の表記を用いる。
【0037】
(HCDS→O
2+H
2)×n ⇒ SiO
【0038】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0039】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)される。その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0040】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって処理室201内が真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。また、処理室201内のウエハ200が所望の温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0041】
(成膜ステップ)
その後、次のステップ1,2を順次実行する。
【0042】
[ステップ1]
このステップでは、処理室201内のウエハ200に対して、HCDSガスを、離れた位置に配置されたノズル249a,249bより同時に供給する。
【0043】
具体的には、バルブ243a,243bを開き、ガス供給管232a,232b内へHCDSガスを流す。HCDSガスは、MFC241a,241bにより流量調整され、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給される。ノズル249a,249bのガス噴出孔250a,250bより処理室201内へ供給されたHCDSガスは、それぞれ、
図2に一点鎖線の矢印で示すようにウエハ200の中心へ向かって流れ、ウエハ200の中心近傍で衝突して減速した後、ウエハ200の面内に拡散(分散)し、排気口204c,204dのそれぞれに向かって流れる。このとき、ウエハ200の面内全域にわたりHCDSガスが供給される。その後、HCDSガスは、排気口204c,204dを介して排気空間205内へ流れ、排気管231より排気される。このときバルブ243d〜243fを開き、ガス供給管232d〜232f内へN
2ガスを流すようにしてもよい。この場合、N
2ガスは、MFC241d〜241fにより流量調整され、ノズル249a〜249cを介して処理室201内へ供給され、排気口204c,204d、排気空間205を介して排気管231より排気される。
【0044】
ウエハ200に対してHCDSガスを供給することで、ウエハ200の表面上に、Clを含むSi含有層(第1層)が形成される。Clを含むSi含有層は、ウエハ200の表面に、HCDSが物理吸着したり、HCDSの一部が分解した物質が化学吸着したり、HCDSが熱分解したりすること等により形成される。すなわち、Clを含むSi含有層は、HCDSやHCDSの一部が分解した物質の吸着層(物理吸着層や化学吸着層)であってもよく、Clを含むSi層であってもよい。以下、Clを含むSi含有層を、単にSi含有層とも称する。
【0045】
ウエハ200上にSi含有層を形成した後、バルブ243a,243bを閉じ、処理室201内へのHCDSガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243d〜243fを開き、処理室201内へN
2ガスを供給する。N
2ガスはパージガスとして作用する。
【0046】
[ステップ2]
ステップ1が終了した後、処理室201内のウエハ200に対して、O
2ガスおよびH
2ガスを、近接した位置に配置されたノズル249c,249aより同時に供給する。
【0047】
具体的には、バルブ243c,243aを開き、ガス供給管232c,232a内へO
2ガス、H
2ガスをそれぞれ流す。O
2ガス、H
2ガスは、それぞれ、MFC241c,241aにより流量調整され、ノズル249c,249aを介して処理室201内へ供給される。ノズル249c,249aのガス噴出孔250c,250aより処理室201内へそれぞれ供給されたO
2ガス、H
2ガスは、それぞれウエハ200の中心に向かって流れ、その過程において処理室201内で混合されて反応し、ウエハ200の面内に拡散し、その後、排気口204c,204d、排気空間205を介して排気管231より排気される。このとき、ウエハ200に対してO
2ガスおよびH
2ガスが同時かつ一緒に供給される。バルブ243d〜243fの開閉制御は、ステップ1におけるバルブ243d〜243fの開閉制御と同様とする。
【0048】
処理室201内へO
2ガスおよびH
2ガスを同時かつ一緒に供給することで、これらのガスは、加熱された減圧雰囲気下においてノンプラズマで熱的に活性化(励起)されて反応し、それにより、原子状酸素(O)等の酸素を含む水分(H
2O)非含有の酸化種が生成される。そして、主にこの酸化種により、ステップ1でウエハ200上に形成されたSi含有層に対して酸化処理が行われる。この酸化種の持つエネルギーは、Si含有層中に含まれるSi−Cl結合等の結合エネルギーよりも高いため、この酸化種のエネルギーをSi含有層に与えることで、Si含有層中に含まれるSi−Cl結合等は切り離される。Siとの結合が切り離されたCl等は層中から除去され、Cl
2、HCl等として排出される。また、Cl等との結合が切られることで余ったSiの結合手は、酸化種に含まれるOと結びつき、Si−O結合が形成される。このようにして、Si含有層は、SiおよびOを含み、Cl等の不純物の含有量が少ない層、すなわち、高純度なSiO層(第2層)へと変化させられる(改質される)。この酸化処理によれば、O
2ガスを単独で供給する場合やH
2Oガス(水蒸気)を単独で供給する場合に比べ、酸化力を大幅に向上させることができる。すなわち、減圧雰囲気下においてO
2ガスにH
2ガスを添加することで、O
2ガス単独供給の場合やH
2Oガス単独供給の場合に比べ、大幅な酸化力向上効果が得られるようになる。
【0049】
Si含有層をSiO層へと変化させた後、バルブ243c,243aを閉じ、処理室201内へのO
2ガスおよびH
2ガスの供給をそれぞれ停止する。そして、ステップ1と同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。
【0050】
[所定回数実施]
ステップ1,2を非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを1回以上(n回)行うことにより、ウエハ200上に、所望膜厚のSiO膜を形成することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成されるSiO層の厚さを所望の膜厚よりも小さくし、SiO層を積層することで形成されるSiO膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すのが好ましい。
【0051】
ステップ1における処理条件としては、
HCDSガス供給流量(ガス供給管毎):5〜2000sccm、好ましくは50〜1000sccm
HCDSガス供給時間:1〜120秒、好ましくは1〜60秒
N
2ガス供給流量(ガス供給管毎):0〜10000sccm
処理温度:250〜800℃、好ましくは400〜700℃
処理圧力:1〜2666Pa、好ましくは67〜1333Pa
が例示される。
【0052】
ステップ2における処理条件としては、
O
2ガス供給流量:100〜10000sccm
H
2ガス供給流量:100〜10000sccm
O
2ガスおよびH
2ガス供給時間:1〜120秒、好ましくは1〜60秒
処理圧力:13.3〜1333Pa、好ましくは13.3〜399Pa
が例示される。他の処理条件は、ステップ1における処理条件と同様とする。
【0053】
原料ガスとしては、HCDSガスの他、モノクロロシラン(SiH
3Cl、略称:MCS)ガス、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2、略称:DCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl
3、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl
4、略称:STC)ガス、オクタクロロトリシラン(Si
3Cl
8、略称:OCTS)ガス等のクロロシラン原料ガスを用いることができる。
【0054】
第1反応ガスとしては、O
2ガスの他、亜酸化窒素(N
2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO
2)ガス、オゾン(O
3)ガス、H
2Oガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO
2)ガス等のO含有ガスを用いることができる。
【0055】
第2反応ガスとしては、H
2ガスの他、重水素(D
2)ガス等のH含有ガスを用いることができる。
【0056】
不活性ガスとしては、N
2ガスの他、例えば、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。
【0057】
(アフターパージ〜大気圧復帰)
成膜ステップが終了した後、ガス供給管232d〜232fのそれぞれからN
2ガスを処理室201内へ供給し、排気口204c,204d、排気空間205を介して排気管231より排気する。N
2ガスはパージガスとして作用する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0058】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態で、マニホールド209の下端から反応管210の外部に搬出(ボートアンロード)される。処理済のウエハ200は、反応管210の外部に搬出された後、ボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。
【0059】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0060】
(a)複数の排気口204c,204dのそれぞれを、平面視において、ガス噴出孔250a,250bと、処理室201内に収容されたウエハ200の中心を挟んで非対向となる位置に配置することにより、ウエハ200上に形成されるSiO膜のウエハ面内膜厚分布(以下、単に面内膜厚分布とも称する)の制御性を高めることが可能となる。
【0061】
というのも、
図8(a)に示すように、インナチューブに排気口を1つ設け、この排気口を、平面視において、第1ガス噴出孔と、処理室内に収容されたウエハの中心を挟んで対向する位置に配置した場合、第1、第2ガス噴出孔より処理室内へ供給されたHCDSガスは、図中に一点鎖線の矢印で示すように流れる。すなわち、第1ガス噴出孔より供給されたHCDSガスは、ウエハの中心を経由して排気口に向かって殆ど減速することなく直線的に流れ、排気口を介して処理室外へ排出される。また、第2ガス噴出孔より供給されたHCDSガスは、ウエハの中心へ到達することなく排気口に向かって向きを変え、排気口を介して処理室外へ排出される。すなわち、排気口を
図8(a)のように配置した場合、第1、第2ガス噴出孔から同時に供給したHCDSガスをウエハの中心近傍で衝突、減速させ、ウエハの面内へ分散させることは困難となる。この場合、ウエハ上に形成されるSiO膜の面内膜厚分布は、ウエハの表面の周縁部(外周部)で最も厚く、中央部に近づくにつれて徐々に薄くなる分布(以下、中央凹分布とも称する)となり、さらに、その度合いが強くなる場合がある。この傾向は、インナチューブに排気口を複数設けた場合であっても、複数の排気口のうち少なくともいずれかの排気口を第1、第2ガス噴出孔のいずれかと対向する位置に配置した場合には、同様となる。
【0062】
これに対し、
図8(b)に示すように、インナチューブに排気口を2つ設け、これら2つの排気口のそれぞれを、平面視において、第1、第2ガス噴出孔と、処理室内に収容されたウエハの中心を挟んで非対向となる位置に配置した場合、第1、第2ガス噴出孔より処理室内へ供給されたHCDSガスは、図中に一点鎖線の矢印で示すように流れる。すなわち、第1、第2ガス噴出孔より供給されたHCDSガスは、ウエハの中心に向かって流れ、ウエハの中心近傍で衝突して減速し、ウエハの面内に分散して2つの排気口のそれぞれに向かって流れる。排気口を
図8(b)のように配置した場合、ウエハ上に形成されるSiO膜の中央凹分布の度合を緩和させることが可能となる。そして、SiO膜の面内膜厚分布を、ウエハ200の表面の中央部から周縁部にわたって膜厚変化の少ない平坦な膜厚分布(以下、フラット分布とも称する)としたり、さらには、ウエハの表面の周縁部で最も薄く、中央部に近づくにつれて徐々に厚くなる分布(以下、中央凸分布とも称する)としたりすることが可能となる。すなわち、ウエハ上に形成されるSiO膜の面内膜厚分布を広範囲に制御することが可能となり、面内膜厚均一性を向上させることも可能となる。
【0063】
(b)本実施形態のように、複数の排気口204c,204dのそれぞれを、平面視において、ガス噴出孔250aとガス噴出孔250bとを結ぶ線分Aの垂直二等分線である直線B上に配置する場合には、ウエハ200上に形成されるSiO膜の面内膜厚分布の制御性をさらに高めることが可能となる。というのも、排気口204c,204dをこのように配置した場合、ガス噴出孔250a,250bから同時に供給したHCDSガスを、ウエハの中心近傍で衝突、減速させるだけでなく、ウエハ200の中心で衝突したHCDSガスを、直線Bを軸として略線対称に拡散(分散)させることが可能となる。これにより、ウエハ200上に形成されるSiO膜の面内膜厚均一性をさらに向上させることが可能となる。
【0064】
(c)上述の効果は、HCDSガス以外の上述の原料ガスを用いる場合や、O
2ガス以外の上述のO含有ガスを用いる場合や、H
2ガス以外の上述のH含有ガスを用いる場合や、N
2ガス以外の上述の不活性ガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。
【0065】
(4)変形例
本実施形態は、以下の変形例のように変更することができる。また、これらの変形例は任意に組み合わせることができる。
【0066】
(変形例1)
図6(a)に示すように、インナチューブ204の側壁に4つの排気口204c’〜204f’を設けてもよい。この場合、4つの排気口204c’〜204f’を、平面視において、ガス噴出孔250a,250bを結ぶ線分Aの垂直二等分線である直線Bを基準として線対称に配置する。すなわち、排気口204c’,204d’を結ぶ線分C’と、直線Bとを互いに直交させ、また、排気口204c’,204d’を、直線Bを基準として線対称となる位置にそれぞれ配置する。また、排気口204e’,204f’を結ぶ線分D’と、直線Bとを互いに直交させ、また、排気口204e’,204f’を、直線Bを基準として線対称となる位置にそれぞれ配置する。
【0067】
また、
図6(b)に示すように、インナチューブ204の側壁に3つの排気口204c”〜204e”を設けてもよい。この場合、3つの排気口204c”〜204e”のうち少なくとも1つ(ここでは排気口204e”)を、平面視において、ガス噴出孔250a,250bを結ぶ線分Aの垂直二等分線である直線B上に配置し、3つの排気口204c”〜204e”のうち前記少なくとも1つ以外(ここでは排気口204c”,204d”)を直線Bを基準として線対称に配置する。すなわち、排気口204e”を直線B上に配置し、また、排気口204c”,204d”を結ぶ線分C”と、直線Bとを互いに直交させ、さらに、排気口204c”,204d”を直線Bを基準として線対称となる位置にそれぞれ配置する。
【0068】
これらの場合であっても、
図4に示す上述の成膜シーケンスを実施した際に、
図1、
図2に示す基板処理装置を用いた場合と同様の効果が得られる。また、インナチューブ204に設ける排気口の数を増やすことで、ウエハ200の中心で衝突したHCDSガスを、ウエハ200の面内へより均一に拡散(分散)させることができ、ウエハ200上に形成されるSiO膜の面内膜厚均一性をさらに向上させることが可能となる。
【0069】
(変形例2)
図5に示すように、インナチューブ204の天井面に、排気口204c,204dとは異なる排気口として、開口204tを設けるようにしてもよい。
【0070】
この場合であっても、
図4に示す上述の成膜シーケンスを実施した際に、
図1、
図2に示す基板処理装置を用いた場合と同様の効果が得られる`。また、インナチューブ204の上部に開口204tを設けることで、ステップ1,2を行う際に、処理室201の上部におけるガス置換の効率を高めたり、処理室201の上部における圧力上昇を抑制したりすることが可能となる。これにより、処理室201内における各種ガスの濃度分布(ウエハ積載方向における分布)を適正化させることが可能となり、これにより、ウエハ間膜厚均一性を向上させることが可能となる。
【0071】
なお、インナチューブ204の上部とボート217の上端における天板との隙間(クリアランス)を適正に調整したり、開口204tの口径を適正に調整したりすることにより、ウエハ間膜厚分布を微調整することが可能となる。
【0072】
(変形例3)
図1〜
図4、
図7(a)を用いて説明した実施形態では、ノズル249a,249bのガス噴出孔250a,250bの構成(配置、ピッチ、孔数)を互いに同一とする例について示したが、本実施形態はこのような態様に限定されない。すなわち、ノズル249a,249bのガス噴出孔250a,250bの構成(配置、ピッチ、孔数)は、互いに異ならせてもよい。
【0073】
例えば、
図7(b)に示すように、ノズル249aにおいては、下部から上部にわたる全域にガス噴出孔250aを設置し、ノズル249bにおいては、上部にのみガス噴出孔250bを設置し、それ以外の部分にはガス噴出孔250bを非設置としてもよい。また例えば、
図7(c)に示すように、ノズル249aにおいては、下部から上部にわたる全域にガス噴出孔250aを設置し、ノズル249bにおいては、下部にのみガス噴出孔250bを設置し、それ以外の部分にはガス噴出孔250bを非設置とする(全長を短くし、その側面の全域にガス噴出孔250bを設置する)ようにしてもよい。また例えば、
図7(d)に示すように、ノズル249aにおいては、上部にはガス噴出孔250を非設置とし(全長も短くする)、それ以外の部分の全域にガス噴出孔250aを設置し、ノズル249bにおいては、上部にのみガス噴出孔250bを設置し、それ以外の部分にはガス噴出孔250bを非設置としてもよい。また例えば、
図7(e)に示すように、ノズル249a,249bにおいては、下部から上部にわたる全域にガス噴出孔250a,250bをそれぞれ設置し、かつ、ノズル249a,249bのそれぞれの天井部に、垂直方向に向かって開口するガス噴出孔(天井孔)251a,251bをそれぞれ設置してもよい。この場合、ガス噴出孔251aの開口面積(直径)を、ガス噴出孔250aの開口面積(直径)よりも大きくするのが好ましく、ガス噴出孔251bの開口面積(直径)を、ガス噴出孔250bの開口面積(直径)よりも大きくするのが好ましい。例えば、ガス噴出孔251aの直径を、ガス噴出孔250aの直径の2倍以上8倍以下の大きさとするのが好ましく、ガス噴出孔251bの直径を、ガス噴出孔250bの直径の2倍以上8倍以下の大きさとするのが好ましい。なお、ノズル249a,249bのうち一方のノズルの天井部に天井孔を非設置とするようにしてもよい。
【0074】
これらの場合であっても、
図4に示す上述の成膜シーケンスを実施した際に、
図1、
図2に示す基板処理装置を用いた場合と同様の効果が得られる。また、ステップ1を行う際に、処理室201内におけるHCDSガスの濃度分布(ウエハ積載方向における分布)を微調整して適正化させることが可能となり、これにより、ウエハ間膜厚均一性を向上させることが可能となる。
【0075】
というのも、処理室内へ供給されたHCDSガスは、加熱されることでA×Si+B×SiCl
2+C×SiCl
4に熱分解する(ここでA,B,Cはそれぞれ任意数であり、分解生成物の総量に対する割合を示す)。これら分解生成物のうち、SiO膜の形成に寄与する成分は主にSiCl
2である。発明者等の鋭意研究によれば、ウエハ配列領域の中央部では、熱分解によるSiCl
2の生成量が比較的多くなり、SiO膜の形成レートが高くなる傾向があることが分かっている。一方で、ウエハ配列領域の上部や下部では、熱分解によるSiCl
2の生成量が比較的少なくなり、SiO膜の形成レートが低くなる傾向があることも分かっている。
図9(a)は、処理室内へ供給されたHCDSガスの温度を示す図である。
図9(a)の横軸はHCDSガスの温度[℃]を示しており、縦軸はウエハの収容位置(120が上部、0が下部)を示している。
図9(a)に示すように、処理室内へ供給されたHCDSガスの温度は、ウエハ配列領域の下部では300℃程度であるのに対し、上部では700℃程度となることが分かる。
図9(b)は、HCDSガスの熱分解特性を示す図である。
図9(b)の横軸はHCDSガスの温度[℃]を示しており、縦軸はHCDSの熱分解によるSiCl
2の生成量[a.u.]を示している。
図9(b)によれば、SiCl
2の生成量は、HCDSガスの温度が350℃未満の範囲では少なく、400〜500℃の範囲で極大となり、それを超えて例えば600℃程度となると再び少なくなることが分かる。なお、HCDSガスの温度が800℃に達すると、2Si
2Cl
6→Si+3SiCl
3という熱分解反応が進行し、SiCl
2は殆ど生成されなくなる。これらの結果から、ウエハ配列領域の中央部では、SiO膜の形成に寄与するSiCl
2の生成量が多くなり、ウエハ配列領域の上部や下部では、SiO膜の形成に寄与するSiCl
2の生成量が少なくなることが分かる。この場合、ウエハ上に形成されるSiO膜のウエハ間膜厚分布は、ウエハ配列領域の中央部で最も厚く、ウエハ配列領域の下部や上部で薄くなる分布(弓形状分布)となる場合がある。
【0076】
このような課題に対し、
図7(b)〜
図7(e)のいずれかに示すノズル249a,249bを用いることは非常に有効である。
図7(b)〜
図7(e)のいずれかに示すノズル249a,249bを用いることにより、ウエハ配列領域の上部や下部へHCDSガスを供給(補充)し、SiO膜の形成に寄与するSiCl
2の生成を促進させることが可能となる。これにより、ウエハ200上に形成されるSiO膜のウエハ間膜厚均一性を向上させ、上述の弓形状分布の度合いを緩和させることが可能となる。
【0077】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。但し、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0078】
例えば、上述の実施形態では、ノズル収容室204a,204bを異なる大きさ、形状、容積とする例について説明したが、これらを同一の大きさ、形状、容積とするようにしてもよい。ノズル収容室204a,204bの大きさ、形状、容積を同一とすることにより、ノズル249a,249bから供給されるHCDSガスの供給環境、供給条件を揃えることが可能となり、SiO膜の面内膜厚均一性をより向上させることが可能となる。
【0079】
また例えば、反応体として、アンモニア(NH
3)ガス等の窒素(N)含有ガス、プロピレン(C
3H
6)ガス等の炭素(C)含有ガス、トリエチルアミン((C
2H
5)
3N、略称:TEA)ガス等のNおよびCを含むガス、トリクロロボラン(BCl
3)ガス等の硼素(B)含有ガス等を用い、以下に示す成膜シーケンスにより、基板上に、シリコン酸窒化膜(SiON膜)、シリコン窒化膜(SiN膜)、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)、シリコン硼炭窒化膜(SiBCN膜)、シリコン硼窒化膜(SiBN膜)等を形成するようにしてもよい。これらの場合においても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。これらの反応体を供給する際の処理手順、処理条件は、例えば、上述の実施形態において反応体を供給する際のそれらと同様とすることができる。
【0080】
(HCDS→NH
3→O
2)×n ⇒ SiON
(HCDS→NH
3)×n ⇒ SiN
(HCDS→TEA)×n ⇒ SiCN
(HCDS→C
3H
6→NH
3)×n ⇒ SiCN
(HCDS→TEA→O
2)×n ⇒ SiOCN
(HCDS→C
3H
6→NH
3→O
2)×n ⇒ SiOCN
(HCDS→C
3H
6→BCl
3→NH
3)×n ⇒ SiBCN
(HCDS→BCl
3→NH
3)×n ⇒ SiBN
【0081】
また例えば、原料として、チタニウムテトラクロライド(TiCl
4)ガスやトリメチルアルミニウム(Al(CH
3)
3、略称:TMA)ガス等を用い、以下に示す成膜シーケンスにより、基板上に、チタン窒化膜(TiN膜)、チタン酸窒化膜(TiON膜)、チタンアルミニウム炭窒化膜(TiAlCN膜)、チタンアルミニウム炭化膜(TiAlC膜)、チタン炭窒化膜(TiCN膜)、チタン酸化膜(TiO膜)等を形成するようにしてもよい。これらの場合においても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。これらの原料や反応体を供給する際の処理手順、処理条件は、上述の実施形態において原料や反応体を供給する際のそれらと同様とすることができる。
【0082】
(TiCl
4→H
2O)×n ⇒ TiO
(TiCl
4→NH
3)×n ⇒ TiN
(TiCl
4→NH
3→O
2)×n ⇒ TiON
(TiCl
4→C
3H
6→NH
3)×n ⇒ TiCN
(TiCl
4→TMA)×n ⇒ TiAlC
(TiCl
4→TMA→NH
3)×n ⇒ TiAlCN
【0083】
基板処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、基板処理の内容に応じて、適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、処理を迅速に開始できるようになる。
【0084】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0085】
上述の実施形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の実施形態では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の実施形態や変形例と同様なシーケンス、処理条件にて成膜を行うことができ、上述の実施形態や変形例と同様の効果が得られる。
【0086】
また、上述の各種実施形態は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の実施形態の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0087】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0088】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
基板に対して主元素を含む膜を形成する処理が行われる処理室と、
前記処理室内の基板に対して前記主元素を含む原料を供給する第1ノズルと、
前記第1ノズルとは離れた位置に設置され、前記処理室内の基板に対して前記原料を供給する第2ノズルと、
前記処理室内の基板に対して反応体を供給する第3ノズルと、
前記処理室内の雰囲気を排気する複数の排気口と、
を有し、
前記複数の排気口のそれぞれは、平面視において、前記第1ノズルの第1ガス噴出孔および前記第2ノズルの第2ガス噴出孔と、非対向となる位置に設置される基板処理装置が提供される。
【0089】
(付記2)
付記1に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記複数の排気口は、平面視において、
それぞれが前記第1ガス噴出孔と前記第2ガス噴出孔とを結ぶ線分の垂直二等分線上に配置されるか、
それぞれが前記垂直二等分線を基準として線対称に配置されるか、
少なくとも1つが前記垂直二等分線上に配置され、前記少なくとも1つ以外が前記垂直二等分線を基準として線対称に配置される。
【0090】
(付記3)
付記1または2に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
外部反応管と、
外部反応管内に設けられ前記処理室を形成する内部反応管と、
を更に有し、
前記複数の排気口は、前記内部反応管の側面に設けられる。
【0091】
(付記4)
付記3に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記内部反応管の天井面には、前記複数の排気口とは異なる排気口が設けられる。
【0092】
(付記5)
付記1〜4のいずれかに記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記第1ノズルの前記第1ガス噴出孔の構成と、前記第2ノズルの前記第2ガス噴出孔の構成と、が同一である。
【0093】
(付記6)
付記1〜4のいずれかに記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記第1ノズルの前記第1ガス噴出孔の構成と、前記第2ノズルの前記第2ガス噴出孔の構成と、が異なる。
【0094】
(付記7)
付記6に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記第1ガス噴出孔は、前記第1ノズルの上部または下部だけに設置され、それ以外の部分には非設置とされるか、もしくは、前記第2ガス噴出孔は、前記第2ノズルの上部または下部だけに設置され、それ以外の部分には非設置とされる。
【0095】
(付記8)
付記1〜7のいずれかに記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記原料を供給する原料供給系と、
前記反応体を供給する反応体供給系と、
前記処理室内の雰囲気を前記複数の排気口より排気する排気系と、
前記第1ノズルと前記第2ノズルとを介して前記処理室内の基板に対して前記原料を供給し、前記複数の排気口より排気する処理と、前記第3ノズルを介して前記処理室内の前記基板に対して前記反応体を供給し、前記複数の排気口より排気する処理と、を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、前記主元素を含む膜を形成する処理を行わせるように、前記原料供給系、前記反応体供給系、および前記排気系を制御するよう構成される制御部と、
をさらに有する。
【0096】
(付記9)
本発明の他の態様によれば、
基板処理装置の処理室内において、
第1ノズルと、前記第1ノズルとは離れた位置に設置された第2ノズルと、を介して、前記処理室内の基板に対して、形成しようとする膜を構成する主元素を含む原料を供給し、平面視において、前記第1ノズルの第1ガス噴出孔および前記第2ノズルの第2ガス噴出孔と、非対向となる位置に設置される複数の排気口より排気する工程と、
第3ノズルを介して前記処理室内の前記基板に対して反応体を供給し、前記複数の排気口より排気する工程と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、前記主元素を含む膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
【0097】
(付記10)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板処理装置の処理室内において、
第1ノズルと、前記第1ノズルとは離れた位置に設置された第2ノズルと、を介して、前記処理室内の基板に対して、形成しようとする膜を構成する主元素を含む原料を供給し、平面視において、前記第1ノズルの第1ガス噴出孔および前記第2ノズルの第2ガス噴出孔と、非対向となる位置に設置される複数の排気口より排気する手順と、
第3ノズルを介して前記処理室内の前記基板に対して反応体を供給し、前記複数の排気口より排気する手順と、
を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上に、前記主元素を含む膜を形成する手順をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。