特許第6703508号(P6703508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703508
(24)【登録日】2020年5月12日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20200525BHJP
   H05H 1/46 20060101ALN20200525BHJP
【FI】
   H01L21/302 101G
   H01L21/302 101D
   !H05H1/46 C
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-179665(P2017-179665)
(22)【出願日】2017年9月20日
(65)【公開番号】特開2019-57547(P2019-57547A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2019年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山田 一也
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】安井 尚輝
(72)【発明者】
【氏名】池田 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】森 功
【審査官】 鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/204860(WO,A1)
【文献】 特開2008−027816(JP,A)
【文献】 特開2016−162795(JP,A)
【文献】 特開2016−225376(JP,A)
【文献】 特開2005−071872(JP,A)
【文献】 特開2011−017076(JP,A)
【文献】 特開2007−067037(JP,A)
【文献】 特開2004−022822(JP,A)
【文献】 特開平04−271122(JP,A)
【文献】 特開平09−260352(JP,A)
【文献】 特開2002−141340(JP,A)
【文献】 特開2016−032096(JP,A)
【文献】 特表2011−529273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/205
H01L 21/31
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源と、前記試料を静電吸着させるための第1の電極と第2の電極を具備し前記試料が載置される試料台と、前記第1の電極に第1の高周波電力を供給する第1の高周波電源と、前記第2の電極に第2の高周波電力を供給する第2の高周波電源と、前記第1の高周波電力の位相と前記第2の高周波電力の位相の差である位相差を制御する制御装置とを備えるプラズマ処理装置において、
前記第1の高周波電力を前記第1の電極に供給する第1の伝送路と前記第2の高周波電力を前記第2の電極に供給する第2の伝送路の間に配置された電極間回路部をさらに備え、
前記電極間回路部の一方の接続部が前記試料台と前記第1の高周波電源の整合器との間に接続され、
前記電極間回路部の他方の接続部が前記試料台と前記第2の高周波電源の整合器との間に接続され、
前記制御装置は、前記第1の電極に印加された高周波電圧のピーク・トウ・ピーク電圧と前記第2の電極に印加された高周波電圧のピーク・トウ・ピーク電圧の差である電圧差が所定の値となるように前記位相差を制御することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記電極間回路部はインダクタンスを有することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記一方の接続部と前記試料台との間における前記第1の高周波電力の位相および前記他方の接続部と前記試料台との間における前記第2の高周波電力の位相をモニタすモニタ部と、をさらに備え、
前記制御装置は、前記モニタ部によりモニタされた前記第1の高周波電力の位相と前記モニタ部によりモニタされた前記第2の高周波電力の位相と前記所定の値前記位相差を制御することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記制御装置は、前記位相差が前記電圧差と前記位相差の相関関係に基づいて求められた前記所定の値に対応する位相差となるように前記位相差を制御することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源と、前記試料を静電吸着させるための第1の電極と第2の電極を具備し前記試料が載置される試料台と、前記第1の電極に第1の高周波電力を供給する第1の高周波電源と、前記第2の電極に第2の高周波電力を供給する第2の高周波電源と、前記第1の高周波電力の位相と前記第2の高周波電力の位相の差である位相差を制御する制御装置と、前記第1の高周波電力を前記第1の電極に供給する第1の伝送路と前記第2の高周波電力を前記第2の電極に供給する第2の伝送路の間に配置された電極間回路部とを備え、前記電極間回路部の一方の接続部が前記試料台と前記第1の高周波電源の整合器との間に接続され、前記電極間回路部の他方の接続部が前記試料台と前記第2の高周波電源の整合器との間に接続されたプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法において、
前記第1の電極に印加された高周波電圧のピーク・トウ・ピーク電圧と前記第2の電極に印加された高周波電圧のピーク・トウ・ピーク電圧の差である電圧差が所定の値となるように前記位相差を制御することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載のプラズマ処理方法において、
前記一方の接続部と前記試料台との間における前記第1の高周波電力の位相および前記他方の接続部と前記試料台との間における前記第2の高周波電力の位相をモニタするモニタ部によりモニタされた前記第1の高周波電力の位相と、前記モニタ部によりモニタされた前記第2の高周波電力の位相と、前記所定の値と、前記位相差を制御することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項7】
請求項5に記載のプラズマ処理方法において、
前記位相差が前記電圧差と前記位相差の相関関係に基づいて求められた前記所定の値に対応する位相差となるように前記位相差を制御することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項8】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記第1の高周波電力の周波数は、前記第2の高周波電力の周波数と同じであることを特徴とするプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器内部の処理室とその内側に配置されて半導体ウェハ等の基板状の試料がその上面上に載置される試料台とを備えたプラズマ処理装置を用いて、処理室内にプラズマを形成しつつ試料台の内部に配置された電極に高周波電力を供給して試料の処理を実施するプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
処理室内に発生させたプラズマで半導体素子等の試料を加工するプラズマエッチング装置において、例えば特許文献1及び2に記載されているように、同心円状に形成された複数の基板電極を用いて、プラズマを発生させた状態で基板電極に高周波バイアス電力を印加することにより微細パターンを高精度にエッチング処理を施す方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−67037号公報
【特許文献2】特開2004−22822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、同心円状に2分割された電極である試料台を用いて試料を加工するプラズマ処理装置において、電極である試料台の中心側の試料台ブロックと外周側の試料台ブロックとに2つの高周波バイアス電源から印加するRFバイアス電力をそれぞれ独立して制御することが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、同心円状に中心側の内側ステージと外周側の外側ステージとに2分割された電極台を用いて試料を加工するプラズマ処理装置において、電極台の内側ステージと外側ステージとに2つの高周波バイアス電源から供給されるそれぞれの高周波電力の位相を同一にして印加する構成が記載されている。それぞれの高周波電力の位相を同一にして印加することで、内側ステージと外側ステージとの各々の電力に差をつけることで、電極台に試料に印加される高周波電力のピーク・トウ・ピーク電圧(以下、VPPと称する)を内側ステージと外側ステージとで差をつけることができる。
【0006】
しかしながら、2つの高周波バイアス電源からの電力を試料に印加させると以下のような2つの課題がある。
【0007】
まず、特許文献2に記載されているように、2つの高周波バイアス電源の出力を電極台の内側ステージと外側ステージとに供給し、試料に印加されるVPPを中心側と外周側で差をつけようとすると、各々の高周波バイアス電源からの出力の位相が同一の場合、2つの高周波バイアス電源の出力差を大きくする必要があり、一方の高周波バイアス電源に定格出力の大きな高周波バイアス電源が必要となる問題が生じる。
【0008】
また、2つの高周波バイアス電源の出力を外部からの位相制御装置によって同一にしようとした場合でも、各々のバイアス電源内部での位相の回り方に機差があると、電極台の内側ステージと外側ステージとに実際に印加される高周波電力が同一位相にならないという問題が生じる。
【0009】
また、特許文献1に開示の構成では、各々の分割された中心側の試料台ブロックと外周側の試料台ブロックとの電極間に電流が流れ電圧差の起因となる電極間回路が不足していることにより、電極間でVPPに十分な差をつけることができないという問題が生じる。
【0010】
本発明は、上述した従来技術の課題を解決して、試料の処理の均一性を向上させることができ、コストを抑えたプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために、本発明では、試料がプラズマ処理される処理室と、プ
ラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源と、電気的に分割された第1の
領域と第2の領域を有し試料が載置される試料台と、第1の領域に第1の高周波電力を供
給する第1の高周波電源と、第2の領域に第2の高周波電力を供給する第2の高周波電源
と、第1の高周波電力の位相と第2の高周波電力の位相の差である位相差を制御する制御
装置とを備えるプラズマ処理装置において、第1の高周波電源から第1の高周波電力を第1の領域に供給する第1の伝送路と第2の高周波電源から第2の高周波電力を第2の領域に供給する第2の伝送路の間に配置された電極間回路部をさらに備え、電極間回路部の一方の接続部が試料台と第1の高周波電源の整合器との間に接続され、電極間回路部の他方の接続部が試料台と第2の高周波電源の整合器との間に接続され、制御装置は、第1の領域に印加された高周波電圧のピーク・トウ・ピーク電圧と第2の領域に印加された高周波電圧のピーク・トウ・ピーク電圧の差である電圧差が所定の値となるように位相差を制御するように構成した。
【0012】
また、上記した課題を解決するために、本発明では、試料がプラズマ処理される処理室
と、プラズマを生成するための高周波電力を供給する高周波電源と、電気的に分割された
第1の領域と第2の領域を有し試料が載置される試料台と、第1の領域に第1の高周波電
力を供給する第1の高周波電源と、第2の領域に第2の高周波電力を供給する第2の高周
波電源と、第1の高周波電力の位相と第2の高周波電力の位相の差である位相差を制御す
る制御装置と、第1の高周波電源から第1の高周波電力を第1の領域に供給する第1の伝送路と第2の高周波電源から第2の高周波電力を第2の領域に供給する第2の伝送路の間に配置された電極間回路部とを備え、電極間回路部の一方の接続部が試料台と第1の高周波電源の整合器との間に接続され、電極間回路部の他方の接続部が試料台と第2の高周波電源の整合器との間に接続されたプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法において、第1の領域に印加された高周波電圧のピーク・トウ・ピーク電圧と第2の領域に印加された高周波電圧のピーク・トウ・ピーク電圧の差である電圧差が所定の値となるように前記位相差を制御するようにした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、比較的小さい定格出力の高周波バイアス電源を用いてウェハの中心部から外周部でのエッチングレートの均一性を改善することができるようになり、プラズマ処理装置の装置コストを抑えることが出来るようになった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1に係るプラズマ処理装置の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。
図2】本発明の実施例1に係るプラズマ処理装置の高周波バイアス電力印加回路構成の詳細を示すブロック図である。
図3】本発明の実施例1に係る高周波バイアス電力印加回路の位相調整器の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施例1における高周波バイアス電力印加回路に基づいて、回路シミュレータにより求めたウェハに印加される高周波バイアス電力の位相差とウェハの面内に発生するVppの差の関係を示すグラフである。
図5】本発明の実施例2に係るプラズマ処理装置の高周波バイアス電力印加回路の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、比較的安価な構成で試料の処理の均一性を向上させることができるようにしたプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関するものである。
【0016】
本発明では、試料を載置する試料台を構成する内側電極と外側電極とにそれぞれ高周波電力を印加する高周波電力印加回路間に電極間回路を設け、さらに内側電極と外側電極とにそれぞれ印加される高周波電力の位相差を制御することが出来るように構成した。
【0017】
これにより、定格出力の大きな高周波電源を用いなくても内側電極と外側電極とに印加する高周波電力の位相差を制御することで内側電極と外側電極とのVPPの差を制御できるようにした。
【0018】
その結果、本発明では、試料台に載置されたウェハの面内のVPP分布を制御することを可能にし、より小さい定格出力の高周波バイアス電源を用いてウェハの中心部から外周部でのエッチングレートの均一性を改善することができるようにした。
【0019】
以下に、本発明の実施例を、図を用いて説明する。
【実施例1】
【0020】
本発明の第1の形態を、図1乃至3を用いて説明する。
図1は、本実施例に係るプラズマ処理装置の例として、ECR(Electron Cyclotron Resonance:電子サイクロトロン共鳴)方式のマイクロ波プラズマエッチング装置(以下、エッチング装置と記載する)100の縦断面の概略の構成を示す図である。
【0021】
本実施例に係るエッチング装置100は、真空容器101、プラズマ生成用高周波電源である電磁波発生用電源103、導波管104、磁場発生コイル105、試料載置用電極107、高周波バイアス電力印加回路部120、及び全体を制御する制御部150を備えている。
【0022】
真空容器101の上部には誘電体窓108が設置されて、内部を密封することにより処理室102を形成している。処理室102には試料であるウェハ10のエッチング処理に用いるエッチングガスを流すためのガス供給装置(図示省略)が接続される。また、真空容器101には排気用開閉バルブ109を介し真空排気装置(図示省略)が接続されている。
【0023】
処理室102内は排気用開閉バルブ109を開とし、真空排気装置を駆動することで減圧され真空状態となる。エッチングガスは、図示していないガス供給装置から処理室102内に導入され、図示していない真空排気装置によって排気される。
【0024】
試料台である試料載置用電極107は、処理室102の内部で、誘電体窓108に対向して真空容器101の下部に設けられている。
【0025】
プラズマ生成用高周波電源である電磁波発生用電源103で発振された電磁波は、導波管104へ伝送される。導波管104は、電磁波を真空容器101の上部に形成した開口部106から真空容器101の内部に伝送する。真空容器101の内部に伝送された電磁波は、誘電体窓108を透過して処理室102の内部に供給される。尚、本実施例の効果は、電磁波の周波数に特に限定されないが、本実施例では2.45GHzのマイクロ波を使用する。
【0026】
磁場発生コイル105は、真空容器101の処理室102の上部で誘電体窓108の近傍に、開口部106から伝送された電磁波に対してECR条件が成立するような強度の磁場を形成する。
【0027】
電磁波発生用電源103より発振された電磁波は、磁場発生コイル105により誘電体窓108の近傍に形成されたECR条件を満たすような強度の磁場との相互作用により、処理室102内に高密度プラズマを生成する。この生成した高密度プラズマにより、試料載置用電極107上に配置された試料であるウェハ10にエッチング処理が施される。
【0028】
試料載置用電極107、磁場発生コイル105、排気用開閉バルブ109及び試料載置用電極107に載置されたウェハ10は、処理室102の中心軸上に対して同軸に配置されているため、エッチングガスの流れやプラズマにより生成されたラジカル及びイオン、更にはエッチングにより生成された反応生成物は、ウェハ10に対し同軸に導入、排気される。この同軸配置はエッチングレート、エッチング形状のウェハ面内均一性を軸対称に近づけ、ウェハ処理均一性を向上させる効果がある。
【0029】
試料載置用電極107には、誘電体膜(図示省略)の内部で中心側に配置された膜状の電極である中心側電極114と、その外周側に配置されリング状に形成された膜状の電極である外周側電極115とを有している。これら高周波電力が印加された中心側電極114と外周側電極115とは、試料載置用電極107に載置されたウェハ10と電気的に接続される。
【0030】
中心側電極114は、高周波バイアス電力印加回路部120の第一の高周波バイアス電源121が、第一のマッチング回路122を介して接続されている。第一のマッチング回路122を介して第一の高周波バイアス電源121から中心側電極114に高周波電力を印加することにより、試料載置用電極107に載置されたウェハ10の中心部へイオンを引き込むための電界が形成される。
【0031】
外周側電極115には、高周波バイアス電力印加回路部120の第二の高周波バイアス電源123が、第二のマッチング回路124を介して接続されている。第二のマッチング回路124を介して第二の高周波バイアス電源123から外周側電極115に高周波電力を印加することにより、試料載置用電極107に載置されたウェハ10の外周部へイオンを引き込むための電界が形成される。
【0032】
また、高周波電力が印加された中心側電極114と外周側電極115との間は、電極間回路130で接続されている。この電極間回路130により、中心側電極114と外周側電極115との間に電流が流れ、中心側電極114と外周側電極115との間に電位差が発生する。本実施例では、この電極間回路130として、コイルを用い、高周波電力に対してインダクタンスを形成するようにした。
【0033】
本実施例では、このように、電極間回路130を設けることにより内側電極と外側電極との間に流れる電流を規定し、内側電極と外側電極とにそれぞれ印加される高周波電力の位相差を制御することでVPP差を制御できるように構成した。
【0034】
なお、本実施例の効果は、第一の高周波バイアス電源121及び第二の高周波バイアス電源123から出力される高周波バイアス電力の周波数に特に限定されないが、本実施例では400kHzの高周波電力を使用する。
【0035】
図2を用いて、本実施例の試料載置用電極107に接続される高周波バイアス電力印加回路部120の回路構成について、より詳細に説明する。
【0036】
中心側電極114と第一のマッチング回路122の間には第一の直流カット用フィルタ回路125が接続され、この第一の直流カット用フィルタ回路125と中心側電極114の間には、第一の高周波カットフィルタ1251を介して第一の直流電源1252が接続されている。第一の直流カット用フィルタ回路125は第一の高周波バイアス電源121および第一のマッチング回路122に直流電圧が印加され破損しないように設けられる。第一の高周波カットフィルタ1251は、バイアス電力である高周波電力が第一の直流電源1252に印加され破損しないように設けられる。
【0037】
同様に、外周側電極115と第二のマッチング回路124の間には第二の直流カット用フィルタ回路126が接続され、この第二の直流カット用フィルタ回路126と外周側電極115の間には、第二の高周波カットフィルタ1261を介して第二の直流電源1262が接続される。第二の直流カット用フィルタ回路126は第二の高周波バイアス電源123および第二のマッチング回路124に直流電圧が印加され破損しないように設けられる。第二の高周波カットフィルタ1261は、バイアス電力である高周波電力が第二の直流電源1262に印加され破損しないように設けられる。 この中心側電極114と外周側電極115とに、それぞれ第一の直流電源1252と第二の直流電源1262から極性の異なる直流電圧を印加することで、中心側電極114を覆う誘電体膜及び外周側電極115を覆う誘電体膜で誘電分極を発生させる。このように誘電分極を発生させることにより、中心側電極114を覆う誘電体膜内及び外周側電極115を覆う誘電体膜の上面に載置したウェハ10は、中心側電極114を覆う誘電体膜内及び外周側電極115を覆う誘電体膜の上面に静電気力によって吸着され(静電吸着)、試料載置用電極107上にウェハ10が保持される。
【0038】
第一のマッチング回路122と第一の直流カット用フィルタ回路125の間と、第二のマッチング回路124と第二の直流カット用フィルタ回路126の間とは、電極間回路130で接続されている。
【0039】
さらに、第一の高周波バイアス電源121および第二の高周波バイアス電源123には、位相調整器128が接続される。
【0040】
次に、本実施例においてウェハ10の中心側および外周側に印加される高周波電力のVPPを制御する方法について図3を用いて説明する。
【0041】
図3は、図2に示した位相調整器128による位相制御を示す図である。当該位相調整器128には、基準クロック1281(例えば400kHzの矩形波)が制御部150から入力される。位相調整器128の内部の第1の位相信号発生部1282からは、この基準クロック1281と同期して、基準クロック1281と位相差のない信号1284が出力され、第一の高周波バイアス電源121に入力される。
【0042】
一方、位相調整器128の内部の第2の位相信号発生部1283からは、基準クロック1281と同期して、基準クロック1281に対して位相差がθRFある信号1285が出力され、第二の高周波バイアス電源123に入力される。
【0043】
第一の高周波バイアス電源121および第二の高周波バイアス電源123は、位相調整器128から入力された信号をもとに、中心側電極114および外周側電極115に出力する電力を発振するため、各々の出力の間にはθRFの位相差が生じる。
【0044】
本実施例の回路では、第一の高周波バイアス電源121に接続された中心側電極114により、ウェハ10の中心側に印加される電圧VINは、式(数1)で示す形で表される。
【0045】
【数1】
【0046】
また、第二の高周波バイアス電源123に接続された外周側電極115により、ウェハ10の外周側に印加される電圧VOUTは、式(数2)に示す形で表される。
【0047】
【数2】
【0048】
INおよびVOUTのそれぞれにθRFがcosの中に含まれており、また各々のcos項のθαの符号が逆となっている。ここで、一般にθαの値は0ではないため、中心側のVPP(=2VIN)と外周側のVPP(=2VOUT)との間には差が生じる。
【0049】
回路シミュレータによって、試料載置用電極107に搭載したウェハ10の中心側と外周側との間のVPPの差を求めたグラフを、図4に示す。図4のグラフ400には、第一の高周波バイアス電源121と第二の高周波バイアス電源123の出力電圧の差が0Vのときのデータ410、50Vのときのデータ420、90Vのときのデータ430を示している。
【0050】
図4に示した結果から、第一の高周波バイアス電源121と第二の高周波バイアス電源123の出力電圧の差が0Vのときのデータ410が、他のデータ420及び430と比べて、位相差の変化に対するVPPの変化量が大きいことがわかる。また、第一の高周波バイアス電源121と第二の高周波バイアス電源123の出力電圧の差が0Vのときのデータ410において、位相差が0度の場合に比べ、位相差が135度の方がVPPの差が大きくなっている。また電極間回路130の定数(本実施例の場合は、電極間回路130を構成するコイルのインダクタンス)は固定でなくともよく、定数が変更になった場合、ウェハに印加されるVpp差の分布が図4に示した結果と異なるようになる。
【0051】
この結果から、図2及び図3に示したような、本実施例における高周波バイアス電力印加回路部120の構成においては、制御部150により、第一の高周波バイアス電源121と第二の高周波バイアス電源123の出力電力の差と、位相差とを適切な値に設定することにより、位相差をつけない場合と比較し、ウェハ10の中心側と外周側との間のVPP差の調整幅を大きくできることがわかる。
【0052】
本実施例によれば、高周波電力印加回路間に電極間回路を形成した状態において、第一の高周波バイアス電源121と第二の高周波バイアス電源123の位相差を制御し、試料を載置する試料台を構成する内側電極と外側電極とに位相差のある高周波電力を印加することにより、内側電極と外側電極とにそれぞれ印加されるVPPの差を制御することが出来るようになった。
【0053】
これにより、定格出力の大きな高周波電源を用いなくても、内側電極と外側電極とに印加する高周波電力の出力差及び位相差を確実に制御して内側電極と外側電極とのVPPの差を確実に制御できるようになった。
【0054】
その結果、本実施例によれば、試料台に載置されたウェハの面内のVPP分布を制御することを可能にし、定格出力が比較的小さい複数の高周波バイアス電源を用いてウェハの中心部から外周部でのエッチングレートの均一性を改善することができるようになった。
【0055】
これにより、ウェハの中心部から外周部に亘るエッチングレートの均一性を改善することができるようになり、かつ、比較的小さい定格出力の高周波バイアス電源を用いることでプラズマ処理装置の装置コストを抑えることが出来るようになった。
【実施例2】
【0056】
本発明の第2の実施例を、図5を用いて説明する。
本実施例は、実施例1における図1に示したエッチング装置100における高周波バイアス電力印加回路部120を、図5に示したような高周波バイアス電力印加回路部500に置き換えたものである。高周波バイアス電力印加回路部500以外は、実施例1と同じ構成であるので、図示及び繰り返しの説明を省略する。
【0057】
図5に示した本実施例に係る高周波バイアス電力印加回路部500は、中心側電極114と外周側電極115との間の位相差を測定して、二つのバイアス電源から出力される高周波電力の位相差を自動で調整できるようにしたものである。
【0058】
図5に示した本実施例に係る高周波バイアス電力印加回路部500においては、第一の高周波バイアス電源501と第一のマッチング回路502の間、及び第二の高周波バイアス電源503と第二のマッチング回路504との間に、位相調整器505を接続する構成とした。
【0059】
さらに、第一のマッチング回路502と中心側電極114とを繋ぐライン5021と、第二のマッチング回路504と外周側電極115とを繋ぐライン5041の間に、位相差測定器506を接続した。また、第一のマッチング回路502及び第二のマッチング回路504と位相差測定器506の間に、第一のマッチング回路502からの出力と第二のマッチング回路504からの出力とを結ぶ電極間回路510を設けた。
【0060】
次に、図5に示したような構成において、実施例1において図1を用いて説明した真空容器101の内部の試料載置用電極107に試料であるウェハ10を載置した状態で真空容器101の内部にプラズマを発生させ、試料載置用電極107の中心側電極114と外周側電極115とに、それぞれ第一の高周波バイアス電源501と第二の高周波バイアス電源503とから、高周波バイアス電力を印加する。
【0061】
この状態で、位相差測定器506により、中心側電極114に印加された高周波電力と外周側電極115に印加された高周波電力の位相差を測定する。この位相差測定器506で測定した位相差の信号を位相調整器505に入力する。
【0062】
位相調整器505において、位相差測定器506から入力した位相差の信号と、位相差信号設定部507から入力した位相差信号の設定値:θRFとを比較して、両方の位相差信号の差がゼロになるように、実施例1で図3を用いて説明したように、第一の高周波バイアス電源501から出力された高周波電力の位相と第二の高周波バイアス電源503から出力された高周波電力の位相を調整する。
【0063】
このように、本実施例によれば、エッチング処理中に検出された位相差測定器506で測定した中心側電極114に印加された高周波電力と外周側電極115に印加された高周波電力との位相差の情報と、位相差信号設定部507に予め設定した位相差信号の設定値:θRFとの差に基づいて、位相調整器505で第一の高周波バイアス電源501から出力された高周波電力の位相と第二の高周波バイアス電源503から出力された高周波電力の位相との差を調整することができる。
【0064】
これにより、ウェハ10をエッチング処理中に、中心側電極114に印加された高周波電力と外周側電極115に印加された高周波電力の位相差を、位相差信号設定部507で設定した値に維持することが出来る。
【0065】
その結果、本実施例によれば、試料載置用電極に載置されたウェハをエッチング処理中に、ウェハの面内のVPP分布を制御することが可能になり、定格出力が比較的大きい高周波バイアス電源を必要とせず、定格出力が比較的小さい複数の高周波バイアス電源を用いてウェハの中心部から外周部でのエッチングレートの均一性を改善することができるようになった。
【0066】
これにより、ウェハの中心部から外周部に亘るエッチングレートの均一性を改善することができるようになり、かつ、比較的小さい定格出力の高周波バイアス電源を用いることでプラズマ処理装置の装置コストを抑えることが出来るようになった。
【0067】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
100・・・エッチング装置
101・・・真空容器
102・・・処理室
103・・・電磁波発生用電源
104・・・導波管
105・・・磁場発生コイル
107・・・試料載置用電極
108・・・誘電体窓
114・・・中心側電極
115・・・外周側電極
120,500・・・高周波バイアス電力印加回路部
121,501・・・第一の高周波バイアス電源
122,502・・・第一のマッチング回路
123,503・・・第二の高周波バイアス電源
124,504・・・第二のマッチング回路
125・・・第一の直流カット用フィルタ回路
1251・・・第一の高周波カットフィルタ
1252・・・第一の直流電源
126・・・第二の直流カット用フィルタ回路
1261・・・第二の高周波カットフィルタ
1262・・・第二の直流電源
128,505・・・位相調整器
130,510・・・電極間回路
506・・・位相差測定器
507・・・位相差信号設定部
図1
図2
図3
図4
図5