【文献】
X. Lu et al.,A Novel Process for Making Spherical Powders of High Nb Containing TiAl Alloys ,Key Engineering Materials,2012年,Vol.520,p.111-119
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の各構成要件について説明する。
【0012】
(1)本発明のTiAl金属間化合物粉末の製造方法は、TiAl金属間化合物の切削片を、熱プラズマ炎に通過させて球状化処理するものである。
従来、TiAl金属間化合物粉末は、「TiAl金属間化合物を主成分とする合金を溶解し、前記溶解で得られる液滴を急冷凝固させて金属粉末を得る」手法によって製造されてきた。そして、この従来の手法について、具合的に提案されていた手法は、「プラズマ回転電極法」や「ガスアトマイズ法」であった(特許文献1)。
プラズマ回転電極法によれば、まず、TiAl金属間化合物の母材(インゴット)が出発材料として準備される。そして、この母材を回転電極として、この回転する電極の先端部に、直接、プラズマを照射することで、母材の先端部が溶融したTiAl金属間化合物の成分組成を有する液滴が飛散する。そして、この飛散した液滴が凝固して、TiAl金属間化合物粉末が得られることとなる。
また、ガスアトマイズ法によれば、TiAl金属間化合物の成分組成を有した溶湯が出発材料として準備される。そして、この溶湯の細流にガスの高圧ジェットを当てることで飛散した液滴が凝固して、TiAl金属間化合物粉末が得られることとなる。
【0013】
プラズマ回転電極法の場合、予めインゴットを円柱状の電極として準備する必要があり、製造工程の増加からコスト高となる。また、プラズマ回転電極法の場合、粒径が100μm以下といった微細な粉末を製造するとなると、それは容易ではない。
そして、ガスアトマイズ法の場合、アルゴン等の不活性ガス(冷却ガス)を吹き付けながら、溶湯を液滴化し、凝固させるため、内部にガスを巻き込み、凝固後の粉末内部に多くの気孔が形成されやすい。
【0014】
これに対して、本発明の場合、まず、上記の出発材料を、TiAl金属間化合物の「切削片」とする。つまり、切削片であれば、始めから、目的とするTiAl金属間化合物粉末に見合った大きさ(体積)に調整しやすいので、ガスアトマイズ法のように、溶融状態で“高圧ガスを吹き付けて”所定の粉末の大きさに分断する必要がなく、TiAl金属間化合物粉末の内部に気孔が形成される要因を取り除くことができる。また、切削片を用いることで、TiAl金属間化合物粉末の粒度調整も容易である。切削片の大きさは、適宜、粉砕や分級等を行うことで、調整することができる。この場合、後述する球状化処理の際の処理能力等を勘定して、例えば、500μm以下の大きさ(長さ)に調整することが好適である。好ましくは400μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。また、好ましくは30μm以上、より好ましくは40μm以上、さらに好ましくは50μm以上である。
【0015】
そして、TiAl金属間化合物は延性に乏しい材料であるので、この材料を切削したときに生じる切削片は、長く繋がらずに、粒状に分断された形状になりやすい。よって、このことからも、上述した粒度調整が容易である。
加えて、上記の切削片であれば、大きな素材を直接粉砕するために、素材の水素脆化と粉砕とを組合せて得た「粉砕片」のように、初期(出発材料)の水素含有量が上昇することがないので、TiAl金属間化合物粉末中の水素含有量の低減化にも有利である。そして、このことによって、水素含有量が0.1質量%未満のTiAl金属間化合物粉末を容易に得ることができる。
【0016】
なお、上記の切削片の大きさについては、後述する球状化処理で熱プラズマ炎を利用することを勘定すれば、切削片が大きい方が、TiAl金属間化合物の主要成分であるAlの過剰な揮発量を少なくできる点で有利である。これは、切削片を熱プラズマ炎に通したときに、低融点のAl成分が蒸発しやすく、小さな切削片がこの影響を受けやすいからだと考えられる。そこで、切削片の大きさ(長さ)を、好ましくは70μm以上、より好ましくは80μm以上、さらに好ましくは90μm以上とすることで、球状化処理中の切削片からのAlの過剰な揮発を抑制することができる。これによって出発材料からの成分変動を抑制することができる。また、製造されたTiAl金属間化合物粉末の個々の間で生じ得るAl濃度の差も抑制することができる。
【0017】
そして、本発明の場合、上記の切削片に、これを熱プラズマ炎に通過させる「球状化処理」を行うことで、TiAl金属間化合物粉末を得ることができる。球状化処理とは、小片化された金属等の出発材料を高温の熱プラズマ炎に通すことで、その熱プラズマ炎の領域を通過中の小片が溶融すると共に表面張力によって球状化され、その球状化された小片(液滴)が熱プラズマ炎の領域を出た以降に凝固して回収されることで、真球度が高い粉末(例えば、二次投影像を画像解析した面積円形度が0.9以上の粉末)の作製が可能な手法である。そして、得られたTiAl金属間化合物粉末においては、二次投影像における面積円形度が、全体の90%以上の個数において、0.9以上のものである。好ましくは0.95以上のものである。上記の「全体の90%以上の個数」については、概ね10000個のTiAl金属間化合物粉末の面積円形度を測定することができる。測定したTiAl金属間化合物粉末の個数が10000個以上になると、その全体としての面積円形度の含有比率の数値は安定する。このような球状化処理は、例えば、
図3の熱プラズマ処理装置によって行うことが可能である(
図3の熱プラズマ処理装置の構造については、実施例で説明する)。
なお、上記の二次投影像における面積円形度は、二次投影像における円相当径が1μm以上のTiAl金属間化合物粉末について測定することができる。
【0018】
上記の球状化処理であれば、TiAl金属間化合物が、ガスが取り込まれやすい液滴の状態のときに(つまり、熱プラズマ炎を通過中のときに)、その周囲に存在するガス量が少ないので、液滴が多量のガスと接する機会が少なく、TiAl金属間化合物粉末の内部に気孔が形成される要因を低減することができる。そして、液滴の状態のときに、その周囲に存在するガス量が少ないということは、液滴と反応し得る反応物量も少ないということである。よって、このことによって、凝固後の粉末の清浄度も高く維持できるので、上記の球状化処理は、活性な金属であるTiAl金属間化合物の処理にとってこそ、好適な手法である。そして、以上のことによって、例えば、粒子径が100μm以下にまで及ぶような、微細なTiAl金属間化合物粉末を、低コストで製造することができる。
【0019】
このとき、動作中の熱プラズマ炎の電力は10kW以上とすることが好ましい。熱プラズマ炎の電力を高くすることで、球状化を促進させやすくなる。好ましくは12kW以上である。
一方で、動作中の熱プラズマ炎の電力の上限については、格段の制限はない。ただし、例えば、250kW以下とすることができる。また、200kW以下や150kW以下、100kW以下とすることができる。さらに、50kW以下や40kW以下、30kW以下とすることができる。そして、熱プラズマ炎の電力を低くすることで、TiAl金属間化合物の主要成分であるAlの過剰な揮発量を少なくすることができる。好ましくは20kW以下、より好ましくは17kW以下、さらに好ましくは14kW以下である。これによって出発材料からの成分変動を抑制することができる。また、製造されたTiAl金属間化合物粉末の個々の間で生じ得るAl濃度の差も抑制することができる。
【0020】
また、熱プラズマ炎を「高周波(RF)プラズマ炎」とすることが好ましい。熱プラズマ炎をRFプラズマ炎とすることで、5000〜10000K程度の高温部を形成することが可能である。そして、このことによって、熱プラズマ炎を通過する切削片が高温に曝されて、その表面や内部が瞬時に溶融され、表面張力により球状化するので、凝固後のTiAl金属間化合物粉末の真球度の向上や、内部の気孔の更なる低減に好適である。
熱プラズマを発生させるときの「動作ガス」は、反応性が低いアルゴン等の不活性ガスを用いることが好ましい。不活性ガスとは、混合ガスではなく、不純物を除き不活性ガスからなるものを言う。動作ガスには水素を用いることも可能である。但し、この場合、凝固後のTiAl金属間化合物粉末中の水素含有量が上昇する場合がある。そして、水素含有量が規制されたTiAl金属間化合物粉末を得たい場合、凝固後のTiAl金属間化合物粉末を減圧雰囲気中や真空中で加熱する等の、脱水素処理を要する。よって、上記の動作ガスは、不活性ガスであることが好ましい。このことによって、TiAl金属間化合物粉末の水素含有量を、例えば、0.002質量%以下や、0.001質量%以下にまで低減することもできる。
これらの動作ガスは、切削片を熱プラズマ炎の領域に供給するために使用するキャリアガスとしても利用することができる。
【0021】
(2)本発明のTiAl金属間化合物粉末は、その断面における気孔率が0〜0.4面積%である。
TiAl金属間化合物の粉末を用いて、これを各種の粉末冶金法や積層造形法によって成形するときに、粉末内部の気孔を予め低減しておけば、成形品内部の気孔も低減できるので、成形品の強度を向上させるのに効果的である。具体的には、粉末の断面積に占める気孔部分の面積の比率(つまり、粉末の断面における気孔率)が「0〜0.4面積%」のTiAl金属間化合物粉末である。好ましくは0.3面積%以下である。より好ましくは0.2面積%以下である。更に好ましくは0.1面積%以下である。そして、これらの気孔率は、上述した本発明のTiAl金属間化合物粉末の製造方法によって達成することが可能である。
【0022】
なお、上記の気孔率を測定するTiAl金属間化合物粉末の断面は、その粉末の中心位置で分割した断面(つまり、直径が粒子径である断面)とすることが理想的である。しかし、このような断面を、個々の粉末で正確に露出させることは現実的でない。本発明においては、一般的な顕微鏡観察用試料の作製要領に従って、まず、TiAl金属間化合物粉末の集合を、その複数の粉末がランダムな状態で並び、ある程度の厚さが確保できるようにして樹脂に埋め込む。次に、この複数の粉末が埋め込まれた樹脂の一面を研磨する。そして、この研磨面に露出した複数の粉末の断面における気孔率を測定すればよい。
【0023】
図1および
図2は、それぞれ、本発明例および比較例のTiAl金属間化合物粉末の断面の一例を示す光学顕微鏡写真(倍率100倍)である。これらの顕微鏡写真において、白色の円形状のものがTiAl金属間化合物粉末の断面である。そして、その白色の円形状のものの内部に黒色で確認されるものが気孔である。なお、上記の白色の円形状のものの一方で、黒色の円形状のものは,研磨中に樹脂からTiAl金属間化合物粉末が脱落した跡である。そして、この顕微鏡写真に、画像処理を行うこと等によって、TiAl金属間化合物粉末の断面の気孔率を求めることができる。求める気孔率は、断面に気孔が確認されないTiAl金属間化合物粉末も含めて、概ね500個のTiAl金属間化合物粉末の気孔率を測定し、その全体としての気孔率(平均の気孔率)とすることができる。気孔率を測定したTiAl金属間化合物粉末の個数が500個以上になると、その全体としての気孔率の数値は安定する。
【0024】
本発明に関するTiAl金属間化合物の成分組成は、例えば、質量%で、Al:10〜80%、残部Tiの基本的な成分組成とすることができる(不純物を含む)。そして、この成分組成に、粉末がTiAl金属間化合物の形態を維持している範囲で、更に、Nb:20.0%以下、Cr:20.0%以下のうちの1種または2種の元素種を含むことができる。そして、これら元素種の合計が20.0%以下であることが好ましい。
Nbについて、好ましくは0.1%以上、より好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは2.0%以上、よりさらに好ましくは3.0%以上、特に好ましくは4.0%以上である。また、Nbについて、好ましくは16.0%以下、より好ましくは13.0%以下、さらに好ましくは10.0%以下、よりさらに好ましくは6.0%以下である。
そして、Crについて、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上、よりさらに好ましくは1.5%以上、特に好ましくは2.0%以上である。また、Crについて、好ましくは16.0%以下、より好ましくは13.0%以下、さらに好ましくは10.0%以下、よりさらに好ましくは6.0%以下、特に好ましくは3.0%以下である。
【0025】
そして、上記のNbやCrの他には、V、Ta、Mn、B、Si、C、W、Yのうちの1種または2種以上の元素種を、不純物として含んでもよく、または、粉末がTiAl金属間化合物の形態を維持している範囲で、それぞれ20.0%以下含むこともできる。好ましくは、それぞれ0.1%以上とすることができる。また、好ましくは、これら元素種の合計が20.0%以下であるか、または、0.1%以上である。
以上の成分組成は、TiAl金属間化合物粉末を0.1g以上採取して、これを測定して得ることができる。
【0026】
本発明のTiAl金属間化合物粉末は、例えば、粒子径を、体積基準の累積粒度分布の50%粒子径(D50)で1〜250μmとすることができる。さらに、このD50による粒子径を150μm以下とすることができる。そして、D50による粒子径が100μm以下や、50μm以下にまで及ぶような、微細なTiAl金属間化合物粉末とすることもできる。なお、このD50による粒子径の下限については、TiAl金属間化合物粉末の流動性を確保する点で、5μmとすることもできる。そして、この下限について、10μmとすることもできる。本発明のTiAl金属間化合物粉末は、各種の粉末冶金法や積層造形法によって成形品を作製するのに用いる原料粉末として、好適である。
【実施例1】
【0027】
図3は、RF熱プラズマ処理装置の一例を示す構造図である。このRF熱プラズマ処理装置は、直径50mmの円筒形のプラズマ発生空間を有している。そして、熱プラズマ発生部は、誘導結合型RFプラズマトーチで構成されている。この構成は、冷却壁1で仕切られたプラズマ発生空間2を有し、その外側に設けた高周波コイル3と、高周波コイル3の軸方向の一方から動作ガスを供給する動作ガス供給部4とを有する。RF熱プラズマ炎は、供給部4から動作ガスを供給し、高周波コイル3に電圧をかけることで発生させる。
また、この熱プラズマ処理装置は、高周波コイル3の内側に発生させた熱プラズマ炎5中に、キャリアガスとともに、出発材料である小片を供給する粉末供給ノズル6と、熱プラズマ炎5の下流側に設けたチャンバー7と、チャンバー7からの排気を行う排気装置8とを具備している。
【0028】
このRF熱プラズマ処理装置を用いて、TiAl金属間化合物の切削片に、球状化処理を実施して、TiAl金属間化合物粉末を作製した(粒子径:約45〜150μm)。各粉末のD50の測定は、マイクロトラック・ベル社製レーザ回折散乱式粒子分布測定装置「MT3300」を用いて、約3gのTiAl金属間化合物粉末について行った。また、作製したTiAl金属間化合物粉末のうち、全体の90%以上の個数において、二次投影像における面積円形度が0.95以上であった。このとき、二次投影像における面積円形度の測定は、マルバーンインスツルメンツ社製粒子画像分析装置「モフォロギG3」を用いて、20000個のTiAl金属間化合物粉末について行った。
切削片は、表2に示す成分組成のインゴットを出発材料として、これを切削することで準備した。切削片は針状であり、その長さは、粉砕および分級を行うことによって、45〜200μm前後に調整した。球状化処理時のプラズマ動作条件は、表1の通りとした。なお、チャンバー7内の圧力は、大気圧に対し−0.02MPaの負圧とした。
【0029】
【表1】
【0030】
一方で、上記のインゴットを溶解し、この溶解した溶湯に噴射ガスおよび冷却ガスをArとするガスアトマイズ法を実施して、TiAl金属間化合物のガスアトマイズ粉末を作製した。そして、このガスアトマイズ粉末を、粒子径:約45〜150μmとなるよう分級して、TiAl金属間化合物粉末とした(D50による粒子径は表2に示す)。この分級後のTiAl金属間化合物粉末のうち、二次投影像における面積円形度が0.95未満である粉末の個数は、全体の20%を超えていた。このとき、二次投影像における面積円形度の測定は、上記と同様の装置を用いて、20000個のTiAl金属間化合物粉末について行った。
【0031】
そして、以上の球状化処理およびガスアトマイズ法で作製したTiAl金属間化合物粉末のそれぞれについて、上述した要領に従って、その断面に観察される気孔率を測定した。また、成分組成も分析した。成分組成の分析は、それぞれの元素種の分析手法に応じて、TiAl金属間化合物粉末を0.1g以上採取して行った。金属元素については、0.25gのTiAl金属間化合物粉末に対して、Al、Nb、Crの含有量をICP発光分光法によって分析した。ガス元素については、0.3gのTiAl金属間化合物粉末に対して、酸素含有量は不活性ガス溶解−赤外線吸収法によって、水素含有量は不活性ガス溶解−熱伝導度法によって分析した(切削片についても同様である)。それらの結果を、出発材料(または、切削片)の成分組成およびD50の粒子径と共に、表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
表2の結果より、ガスアトマイズ法で作製したTiAl金属間化合物の粉末4の気孔率は、2.2面積%であった。これに対して、球状化処理で作製した本発明例のTiAl金属間化合物の粉末1〜3の気孔率は、0.4面積%以下に低く抑えられていた。
そして、本発明例の粉末1〜3の成分組成を評価すれば、球状化処理のときの最大出力が低い粉末2、3の成分組成(Al含有量)は、出発材料の成分組成からの変動が小さかった。また、球状化処理のときの動作ガスに水素を使用しなかった粉末3は、水素含有量が低かった。
【実施例2】
【0034】
図3のRF熱プラズマ処理装置を用いて、TiAl金属間化合物の切削片に表3の動作条件11、12で球状化処理を実施して、TiAl金属間化合物粉末を作製した。切削片は針状であり、その長さは表3の通りに調整した。この切削片の外観を、
図4の走査型電子顕微鏡写真(倍率100倍)に示す。なお、球状化処理時のプラズマ動作条件は、動作ガスをArガス:86L/min(nor)とし、キャリアガスをArガス:4L/min(nor)とした。チャンバー内の圧力は、大気圧に対し−0.02MPaの負圧とした。
また、この一方で、実施例1とは別の、TiAl金属間化合物のガスアトマイズ粉末も準備した。このガスアトマイズ粉末は、粒子径が約45〜150μmになるよう分級されたものである。
【0035】
【表3】
【0036】
以上の球状化処理およびガスアトマイズ法で作製したTiAl金属間化合物粉末の、D50による粒子径、および、二次投影像における面積円形度を測定した。測定は、D50による粒子径は実施例1と同様の要領に従い、面積円形度は10000個のTiAl金属間化合物粉末について測定した。そして、面積円形度について、測定の結果、球状化処理で作製したTiAl金属間化合物粉末は、いずれの動作条件によっても、その個々の粉末のうち、全体の90%以上の個数で面積円形度が0.95以上であった。それぞれのTiAl金属間化合物粉末の外観形状を、
図4の走査型電子顕微鏡写真(倍率100倍)に示す。
なお、ガスアトマイズ法で作製したTiAl金属間化合物粉末は、その個々の粉末のうち、面積円形度が0.95未満である粉末の個数が全体の20%を超えていた。
【0037】
以上のTiAl金属間化合物粉末のそれぞれについて、上述した要領に従って、その断面に観察される気孔率を測定した。また、成分組成も分析した。成分組成の分析は、実施例1と同様の要領に従った(切削片についても同様である)。それらの結果を、切削片の成分組成およびD50の粒子径と共に、表4に示す。
【0038】
【表4】
【0039】
表4の結果より、球状化処理で作製した本発明例のTiAl金属間化合物粉末の気孔率は、0.4面積%以下に低く抑えられていた。そして、本発明例の粉末11、12の成分組成を評価すれば、処理される切削片が大きかった粉末12のAl含有量は、切削片の成分組成からの変動が小さかった。
【0040】
そして、製造されたTiAl金属間化合物粉末の個々の間で生じ得るAl濃度の差についても、処理される切削片が大きかった粉末12の濃度差が抑えられていた。
図5は、TiAl金属間化合物の粉末11、12の断面のAl濃度を、切削片のそれも合わせて、EPMAで分析したときの元素マッピング図(倍率100倍)である。この分析には、日本電子株式会社製電子線マイクロアナライザー「JXA−8900R」を用いた。なお、切削片の結果で、実際の大きさよりも小さく表示されている切削片は、その長さ方向が分析面(紙面側)を向いているものである。
この白黒で表示された元素マッピング図(実際には、図中に示した“色分けによる”Al成分の濃度指標に従って、カラーで表示されている。)において、切削片の色調と比べて、概ね色調の薄い粉末が、Al濃度の低い粉末(つまり、球状化処理中にAl成分が揮発した粉末)である。そして、このようなAl濃度の低い粉末が、粒径の小さいものに多く確認されることがわかる。
【実施例3】
【0041】
図3のRF熱プラズマ処理装置を用いて、TiAl金属間化合物の切削片に表5の動作条件21、22で球状化処理を実施して、TiAl金属間化合物粉末を作製した。切削片は針状であり、その長さは表5の通りに調整した。この切削片の外観を、
図6の走査型電子顕微鏡写真(倍率100倍)に示す。なお、球状化処理時のプラズマ動作条件は、動作ガスをArガス:86L/min(nor)とし、キャリアガスをArガス:4L/min(nor)とした。チャンバー内の圧力は、大気圧に対し−0.02MPaの負圧とした。
【0042】
【表5】
【0043】
以上の球状化処理で作製したTiAl金属間化合物粉末の、D50による粒子径、および、二次投影像における面積円形度を測定した。測定は、D50による粒子径は実施例1と同様の要領に従い、面積円形度は10000個のTiAl金属間化合物粉末について測定した。そして、面積円形度について、測定の結果、球状化処理で作製したTiAl金属間化合物粉末は、いずれの動作条件によっても、その個々の粉末のうち、全体の90%以上の個数で面積円形度が0.95以上であった。それぞれのTiAl金属間化合物粉末の外観形状を、
図6の走査型電子顕微鏡写真(倍率100倍)に示す。
図6より、球状化処理のときの最大出力が高かった粉末は、真球度が高いことがわかる。
【0044】
以上のTiAl金属間化合物粉末のそれぞれについて、上述した要領に従って、その断面に観察される気孔率を測定した。また、成分組成も分析した。成分組成の分析は、実施例1と同様の要領に従った(切削片についても同様である)。それらの結果を、切削片の成分組成およびD50の粒子径と共に、表6に示す。
【0045】
【表6】
【0046】
表6の結果より、球状化処理で作製した本発明例のTiAl金属間化合物粉末の気孔率は、0.4面積%以下に低く抑えられていた。そして、本発明例の粉末21、22の成分組成を評価すれば、球状化処理のときの最大出力が低かった粉末22のAl含有量は、切削片の成分組成からの変動が小さく、かつ、Alの揮発も抑えられていた。
【0047】
そして、製造されたTiAl金属間化合物粉末の個々の間で生じ得るAl濃度の差についても、球状化処理のときの最大出力が低かった粉末22の濃度差が抑えられていた。
図7は、TiAl金属間化合物の粉末21、22の断面のAl濃度を、切削片のそれも合わせて、
図5と同様のEPMAで分析したときの元素マッピング図(倍率100倍)である。