特許第6703864号(P6703864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6703864
(24)【登録日】2020年5月13日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】難消化性澱粉含有そば及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20200525BHJP
   A23L 33/21 20160101ALI20200525BHJP
【FI】
   A23L7/109 F
   A23L33/21
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-42988(P2016-42988)
(22)【出願日】2016年3月7日
(65)【公開番号】特開2017-158436(P2017-158436A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村田 安興
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 健
(72)【発明者】
【氏名】中野 亮史
【審査官】 茅根 文子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−313804(JP,A)
【文献】 特開2004−243311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難消化性澱粉と、
タンパク質含量が4〜8重量%で且つ食物繊維含量が1〜2重量%であるそば粉と、を含有することを特徴とする難消化性澱粉含有そばであって、
前記難消化性澱粉が、80重量%以上の食物繊維を含有するリン酸架橋澱粉または/及びリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉であることを特徴とする難消化性澱粉含有そば。
【請求項2】
前記難消化性澱粉の主原料粉中の配合量が5〜35重量%であり、前記そば粉の主原料粉中の配合量が30〜50重量%であることを特徴とする請求項1記載の難消化性澱粉含有そば。
【請求項3】
前記そば粉が、タンパク質含量が5〜7重量%で且つ食物繊維含量が1.3〜1.7重量%であることを特徴とする請求項1または2記載の難消化性澱粉含有そば。
【請求項4】
消化性澱粉と、
タンパク質含量が4〜8重量%で且つ食物繊維含量が1〜2重量%であるそば粉と、を含む主原料粉を、
練り水と共に混練し麺生地を作製し、
作製した麺生地を常法により製麺することを特徴とする難消化性澱粉含有そばの製造方法であって、
前記難消化性澱粉が、80重量%以上の食物繊維を含有するリン酸架橋澱粉または/及びリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉であることを特徴とする難消化性澱粉含有そばの製造方法
【請求項5】
前記難消化性澱粉の主原料粉中の配合量が5〜35重量%であり、前記そば粉の主原料粉中の配合量が30〜50重量%であることを特徴とする請求項4記載の難消化性澱粉含有そばの製造方法。
【請求項6】
前記そば粉が、タンパク質含量が5〜7重量%で且つ食物繊維含量が1.3〜1.7重量%であることを特徴とする請求項または記載の難消化性澱粉含有そばの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難消化性澱粉含有そば及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向が高まり、低カロリーの食品だけでなく、栄養学的な面で食物繊維を多く摂取できる食品が多く提案されている。
【0003】
麺類においても食物繊維を含有する麺が提案されており、食物繊維の種類としては、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、低分子のセルロース、キトサン、サイリウム種皮及び難消化性澱粉(レジスタントスターチ)などが挙げられる。
【0004】
この内、難消化性澱粉は、アミラーゼ消化に対して耐性のある澱粉であり、ハイアミロース澱粉、老化澱粉、湿熱処理澱粉及び強い架橋処理を施したものやエーテル置換したものなどの化学的に改変された加工澱粉などがあり、食物繊維を含有する麺類にも使用されている(例えば特許文献1及び2)。
【0005】
特許文献1は、難消化性澱粉を食物繊維成分として使用した技術であり、穀粉と、60重量%以上のレジスタントスターチを含むレジスタントスターチ含有澱粉とを含有することを特徴とする麺類について記載されている。また、レジスタントスターチとして、ハイアミロースコーンスターチ及びその誘導体の湿熱処理澱粉が記載されている。
【0006】
同じく特許文献2は、難消化性澱粉を食物繊維成分として使用した技術であり、澱粉を高度に架橋した難消化性澱粉を麺原料粉に対して10〜30重量%添加し、難消化性成分を含有することを特徴とする麺類について記載されている。また、難消化性澱粉として、高度に架橋された膨潤度が0.4〜0.8mlの架橋澱粉が記載されている。
【0007】
これらの難消化性澱粉を麺に使用した場合、製麺性や食感、臭い等で他の食物繊維素材より優れているが、糊化しづらい性質のため、ざらつきや粉っぽさを強く感じるといった課題があった。特にそばの場合は、中華麺やうどんなどの麺と比べてより一層ざらつきや粉っぽさを感じるといった課題があった。これらの問題を解決するために、特許文献1及び特許文献2では、エステル化澱粉、エーテル化澱粉などの加工澱粉を配合する技術が記載されている。しかしながら、そばの場合、ざらつきや粉っぽさを低減するためには、そば粉の量を少なくするか、難消化性澱粉の配合量を少なくするか、またはエステル化澱粉、エーテル化澱粉等の加工澱粉を大量に配合する必要があり、麺中の食物繊維含量が少なくなるだけでなく、そばの風味が著しく悪くなるといった課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−313804号公報
【特許文献2】特開2006−129790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、風味がよく、ざらつきや粉っぽさの少ない難消化性澱粉含有そば及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、そばが他の麺に比べざらつきや粉っぽさを強く感じる原因について鋭意研究した結果、そば粉に含まれるタンパク質や食物繊維が難消化性澱粉のもつ、ざらつきや粉っぽさを増長させる要因であることを突き止め、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、60重量%以上の食物繊維を含有する難消化性澱粉と、タンパク質含量が4〜8重量%で且つ食物繊維含量が1〜2重量%であるそば粉と、を含有することを特徴とする難消化性澱粉含有そば、及び60重量%以上の食物繊維を含有する難消化性澱粉と、タンパク質含量が4〜8重量%で且つ食物繊維含量が1〜2重量%であるそば粉と、を含む主原料粉を、練り水とともに混練し麺生地を作製し、作製した麺生地を常法により製麺することを特徴とする難消化性澱粉含有そばの製造方法である。
【0012】
また、本発明においては、難消化性澱粉の主原料粉中の配合量が5〜35重量%であり、そば粉の主原料粉中の配合量が30〜50重量%であることが好ましい。
【0013】
また、本発明における難消化性澱粉は、80重量%以上の食物繊維を含量するリン酸架橋澱粉または/及びリン酸モノエステルリン酸架橋澱粉であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、風味がよく、ざらつきや粉っぽさの少ない難消化性澱粉含有そば及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0016】
1.主原料粉配合
本発明に係る主原料粉としては、そば粉、難消化性澱粉は必須であるが、これら以外として、小麦粉(デュラム粉を含む)、大麦粉、ライムギ粉、米粉等の穀粉及び馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ等の各種澱粉を単独で使用してもまたは混合して使用してもよい。前記澱粉として、生澱粉、α化澱粉並びに難消化性を示さないアセチル化澱粉、エーテル化澱粉及び低架橋澱粉等の加工澱粉等を使用することもできる。
【0017】
・そば粉
本発明に係る主原料粉であるそば粉としては、タンパク質含量が4〜8重量%且つ食物繊維含量が1〜2重量%のそば粉を用いる。タンパク質含量が8重量%、食物繊維含量が2重量%よりも高くなると、そばの風味は良いものになるが、難消化性澱粉のざらつきや粉っぽさが目立つようになる。逆にタンパク質含量が4重量%、食物繊維含量が1重量%よりも低くなると難消化性澱粉のざらつきや粉っぽさは目立たないが、そば独特の風味が感じなくなり、食感も餅っぽくなる。より好ましくは、タンパク質含量が5.0〜7.0重量%且つ食物繊維含量が1.3〜1.7重量%のそば粉である。
【0018】
通常、そばの製造に用いられるそば粉は、タンパク質と灰分含量の違いにより、低い順に特等粉(花粉)、1等粉、2等粉、3等粉等に大きく分類されている。3等粉に近づくほど、タンパク質を多く含有し、3等粉は、甘皮部・胚芽部を多く含み、そば殻も多く含む。本発明においては、そば粉のタンパク質含量及び食物繊維含量を調整するにあたり、これらの粉を組み合わせてそば粉を調整すればよいが、3等粉は特に難消化性澱粉のざらつきや粉っぽさを増長させるため、好ましくは特等粉〜2等粉までで調整することが好ましい。また、そばらしい色調や見た目にするため、調整したそば粉に粉砕したそば殻を添加して最終のそば粉としてもよい。その場合においてもそば粉のタンパク質含量が4〜8重量%且つ食物繊維含量が1〜2重量%の範囲となるように調整すればよい。
【0019】
本発明におけるそば粉については、主原料粉中の割合として30〜50重量%とすることが好ましい。30重量%よりも少なくなるとそばの風味に欠けるため好ましくない。また、50重量%を超えるとロールを用いた機械製麺において製麺性を持たせるためにグルテン等のつなぎ素材を多く配合する必要があり、風味が悪くなる。
【0020】
・難消化性澱粉
本発明に係る主原料粉である難消化性澱粉は、食物繊維含量が60重量%以上のものを用いる。難消化性澱粉としては、高アミロースデンプンの湿熱処理澱粉、リン酸架橋澱粉及びリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉が挙げられる。澱粉の原料種としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉及び米粉澱粉などが挙げられる。
特に好ましくは、食物繊維含量が80重量%以上のリン酸架橋澱粉または/及びリン酸モノエステルリン酸架橋澱粉であり、食物繊維含量が80重量%以上のものを用いることで、難消化性澱粉の添加量が抑えられるため、食感、風味の面でも好ましい。
【0021】
日本人の食事摂取基準(2015年度版)において、一日の食物繊維摂取目標量は、18歳以上の男性においては年齢層別に19〜20g、18歳以上の女性においては年齢層別に17〜18gとなっている。また、平成26年国民・健康栄養調査報告においては、一日当たりの成人男性の食物繊維の平均摂取量は15.1gであり、成人女性は、14.4gであることから、一日の食物繊維摂取目標に対して3〜5g程度不足していると考えられる。従って不足分を補うべく、そば1食あたりの難消化性澱粉由来の食物繊維量が3g以上となるように難消化性澱粉を配合することが好ましい。
【0022】
また、難消化性澱粉由来の食物繊維を7g取ると排便量や排便回数が増える等の便通改善効果があるとの報告がある(中山ら,日本臨床栄養学会誌,24(1),1−6(2002))。従って、これらの効果を期待するには、そば1食あたりの難消化性澱粉由来の食物繊維量が7g以上となるように配合することが好ましい。
【0023】
1食分のそばの量は、特に限定しないが、生麺時において、おおよそ60〜180g程度であるため、目的とする1食分の食物繊維添加量に合わせて、難消化性澱粉を配合すればよい。難消化性澱粉の配合量が増加するほど食物繊維含量が増加するため好ましいが、ざらつき、粉っぽさが増加していくだけでなく、製麺性が低下するため、グルテン等のつなぎ剤を多く配合する必要があり、風味も悪くなる。そのため、好ましい配合量としては、主原料粉中の割合として35重量%以下である。また、難消化性澱粉の配合量が少なくなると1食あたりの喫食量も増えるため、好ましい配合量は、主原料粉中の割合として5重量%以上である。より好ましい難消化性澱粉の配合量としては、主原料粉中の割合として10〜20重量%である。
【0024】
・そば粉、難消化性澱粉以外の主原料粉
本発明に係るそば粉、難消化性澱粉以外の主原料粉の配合は、特に限定はしないが、製麺性や食感、風味の点で、主に小麦粉が好ましく、必要により、生澱粉、α化澱粉及び難消化性澱粉以外の加工澱粉等を加えてもよい。
【0025】
2.副原料配合
本発明にかかる副原料は、特に限定はなく、そばの製造に一般に使用されている食塩やリン酸塩類、アルカリ剤、各種増粘剤、グルテンや卵白等の麺質改良剤、食用油脂、色素及び保存料等を添加することができる。これらは、主原料粉と一緒に添加しても、練り水に溶かすか懸濁させて添加してもよい。ロールによる機械製麺をする場合には、そば粉や難消化性澱粉の量に応じてグルテンを添加することが好ましく、好ましくは、主原料粉に対して0.5〜6重量%添加することが好ましい。また、栄養面を強化するために、ビタミンやミネラル等の他の栄養素も添加することができる。
3.製麺工程
前記原料を混練することによって麺生地(ドウ)を製造する。より具体的には、そば粉、難消化性澱粉及び小麦粉等の主原料粉に、グルテン、卵白などの麺質改良剤等の副原料粉を加え粉体混合した後、さらに水に食塩、リン酸塩類及びアルカリ剤等の副原料を溶解させた練り水を加え、ミキサーを用いて各原料が均一に混ざるように良く混捏してドウを製造する。このとき、真空ミキサーなどにより減圧下でミキシングを行ってもよい。
【0026】
次いで作製したドウから麺線を作製する。作製方法としては、常法に従って行えばよく、エクストルーダ等を用いてドウを押し出して麺線を作製する方法や、ドウを複合等により麺帯化した後、ロールにより複数回圧延し、所定の麺帯厚とし、切刃と呼ばれる切出しロール又は包丁切りにより麺帯を切出し、麺線を作製する方法が挙げられる。ロールを用いて製麺する場合、エクストルーダを用いて麺帯を作製した後、圧延、切出しを行ってもよく、また、複数の麺帯を合わせて多層構造を持つ麺帯を作製した後、圧延、切出しを行ってもよい。複数の麺帯を合わせて多層構造とする場合には、外層の難消化性澱粉の配合を少なく、内層の難消化性澱粉の配合量を多くすることで、調理時や加工時の難消化性澱粉由来の食物繊維の流出が抑えられるだけでなく、そば特有の喉越しが得られやすい。
【0027】
3.その他工程
作製した麺線を所定の長さに切断し、難消化性澱粉含有そばとする。また、該そばをそのまま打ち粉をつけて生そばとしてもよく、また、該そばを茹でた茹でそば、蒸した蒸そば、これらを冷凍した冷凍そばとすることもできる。さらには、麺線状態で乾燥し、所定の長さに切断した乾麺そばや、麺線状態で蒸煮し、所定の長さに切断後、フライまたは熱風乾燥により乾燥して即席そばとすることもできる。麺中の難消化性澱粉由来の食物繊維の残存性、調理時の簡便性、保存性、風味や食感を考えると熱風乾燥した即席ノンフライそばが好ましい。
【0028】
以上のように難消化性澱粉を含有した難消化性澱粉含有そばにおいて、タンパク質含量が4〜8重量%で且つ食物繊維含量が1〜2重量%であるそば粉を使用することで、風味がよくざらつきや粉っぽさの少ない難消化性澱粉含有そば及びその製造方法を提供することができる。
【0029】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0030】
<実験1>そば粉の検討
そば粉の検討のため、特等粉、1番粉、2番粉、3番粉、そば殻粉を用意し、それぞれのタンパク質量、食物繊維量を分析した。尚、タンパク質量の分析は、食品表示基準別添(栄養素等の分析方法等)に記載されているケルダール法、食物繊維量の分析は、同じく、食品表示基準別添(栄養素等の分析方法等)に記載されているプロスキー法(酵素−重量法)で分析した。分析結果を下記表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
また、特等粉、1番粉、2番粉、3番粉、そば殻粉を下記表2のように配合し、そば粉1〜12を作製した。配合、タンパク質含量、食物繊維含量を下記表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
(実施例1−1)
準強力粉600g、表2のそば粉2(タンパク質含量4.3重量%、食物繊維含量1.0重量%)を300g、難消化性澱粉(タピオカリン酸架橋澱粉(食物繊維量85重量%))100gを混合した主原料粉に卵白粉5g、グルテン30gを粉体混合し、食塩10g、リン酸塩0.6g、重合リン酸塩0.9g、トコフェロール製剤0.4gを水360gに溶解した練水を加え、ミキサーにて15分間混捏し、麺生地(ドウ)を作製した。
【0035】
作製したドウを複合して麺帯を作製し、ロール圧延にて1.2mmまで麺帯を圧延した後、18番角のロール切刃にて麺帯を切断し、麺線とした後、約40cmとなるように麺線をカットし、1食120gの難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0036】
(実施例1−2)
そば粉を表2のそば粉4(タンパク質含量5.2重量%、食物繊維含量1.3重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0037】
(実施例1−3)
そば粉を表2のそば粉5(タンパク質含量6.1重量%、食物繊維含量1.6重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0038】
(実施例1−4)
そば粉を表2のそば粉6(タンパク質含量6.0重量%、食物繊維含量1.9重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0039】
(実施例1−5)
そば粉を表2のそば粉7(タンパク質含量7.1重量%、食物繊維含量1.9重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0040】
(実施例1−6)
そば粉を表2のそば粉8(タンパク質含量6.8重量%、食物繊維含量1.9重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0041】
(実施例1−7)
そば粉を表2のそば粉9(タンパク質含量6.8重量%、食物繊維含量1.9重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0042】
(実施例1−8)
そば粉を表2のそば粉10(タンパク質含量7.7重量%、食物繊維含量2.0重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0043】
(比較例1−1)
そば粉を表2のそば粉1(タンパク質含量3.9重量%、食物繊維含量0.7重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0044】
(比較例1−2)
そば粉を表2のそば粉3(タンパク質含量8.1重量%、食物繊維含量1.9重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0045】
(比較例1−3)
そば粉を表2のそば粉11(タンパク質含量8.5重量%、食物繊維含量2.2重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0046】
(比較例1−4)
そば粉を表2のそば粉12(タンパク質含量11.6重量%、食物繊維含量3.5重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0047】
実験1で作製した難消化性澱粉含有そばサンプルについて評価を行った。評価は、調理後の麺の風味、調理後の麺のざらつき、粉っぽさについて行った。また、評価方法は、ベテランのパネラー5人によって4段階で行った。調理については、難消化性澱粉含有そばサンプルを沸騰水中で3分間茹でた後、ざるに入れ、湯切りをし、水洗いをした後、水を切りし、軽く熱水で温めた後、湯を切り、予め用意したつゆを入れた容器にそばを入れて行い、喫食サンプルとした。
【0048】
調理後のそばの風味については、評価◎が非常に良好、評価○は、良好、評価△は、弱い、評価×は、著しく弱いとした。
【0049】
調理後のざらつき、粉っぽさについては、評価◎がざらつき、粉っぽさをほとんど感じず非常に良好、評価○は、ざらつき、粉っぽさが少なく良好、評価△は、ざらつき、粉っぽさが目立つ、評価×は、著しくざらつき、粉っぽいとした。
【0050】
実験1の評価結果について表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
比較例1−1で示すように、特等粉、1番粉のみでタンパク質含量を3.9重量%、食物繊維含量を0.7重量%に調整したそば粉では、難消化性澱粉由来のざらつき、粉っぽさは抑えられるが、風味にかけ、食感も澱粉質で餅っぽいような食感となった。
【0053】
逆に、比較例1−3、1−4で示すようにタンパク質含量を8.0重量%よりも高く且つ、食物繊維含量2.0重量%よりも高く調整したそば粉は、そばの風味は良好であるが、難消化性澱粉由来のざらつき、粉っぽさが目立つ結果となった。
【0054】
それに対し、実施例1−1〜実施例1−8で示すようにそば粉のタンパク質含量を4.0〜8.0重量%且つ食物繊維含量が1.0〜2.0重量%に調整したそば粉を使用することで、難消化性澱粉由来のざらつき、粉っぽさが抑えられ、風味のよいそばを提供することが出来ることがわかる。
【0055】
また、そば殻を用いた実施例1−4、実施例1−7や3番粉を使用した実施例1−5では、そば殻や3番粉を配合していないそば粉に対して、難消化性澱粉由来のざらつきを感じる結果となった。そば殻は食物繊維を多く含み、3番粉もそば殻を含むことからして、そば由来の食物繊維が難消化性澱粉由来のざらつきを増長する因子であることが推測される。
【0056】
比較例1−2で示すようにタンパク質含量が8.0重量%よりも高く、食物繊維含量が2.0重量%以下の場合、難消化性澱粉由来のざらつきは目立たないが、糊化が不十分なような粉っぽさが目立つようになった。上記の結果から、そば由来のタンパク質含量が難消化性澱粉の粉っぽさを増長する因子であることが推測される。
【0057】
<実験2>難消化性澱粉の種類の検討及び配合量の検討
(実施例2−1)
主原料粉を準強力粉560g、表2のそば粉5(タンパク質含量6.1重量%、食物繊維含量1.6重量%)を300g、難消化性澱粉をハイアミロースコーンスターチの湿熱処理澱粉140g(食物繊維60重量%)、副原料のグルテンを36gとする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0058】
(実施例2−2)
主原料粉を準強力粉594g、表2のそば粉5(タンパク質含量6.1重量%、食物繊維含量1.6重量%)を300g、難消化性澱粉をリン酸モノエステル化リン酸架橋タピオカ澱粉106g(食物繊維80重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0059】
(実施例2−3)
主原料粉を準強力粉600g、表2のそば粉5(タンパク質含量6.1重量%、食物繊維含量1.6重量%)を300g、難消化性澱粉をリン酸モノエステル化リン酸架橋小麦粉澱粉100g(食物繊維85重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0060】
(実施例2−4)
主原料粉を準強力粉650g、表2のそば粉5(タンパク質含量6.1重量%、食物繊維含量1.6重量%)を300g、難消化性澱粉をリン酸架橋タピオカ澱粉50g(食物繊維85重量%)、副原料のグルテンを20gとする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0061】
(実施例2−5)
主原料粉を準強力粉500g、表2のそば粉5(タンパク質含量6.1重量%、食物繊維含量1.6重量%)を300g、難消化性澱粉をリン酸架橋タピオカ澱粉200g(食物繊維85重量%)、副原料のグルテンを40gとする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0062】
(実施例2−6)
主原料粉を準強力粉350g、表2のそば粉5(タンパク質含量6.1重量%、食物繊維含量1.6重量%)を300g、難消化性澱粉をリン酸架橋タピオカ澱粉350g(食物繊維85重量%)、副原料のグルテンを60gとする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した(。
【0063】
実施例2−1〜実施例2−6及び実施例1−3のサンプルを実験1と同様の方法で評価した。評価結果を表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
実施例2−1〜実施例2−3及び実施例1−3で示すように、異なる種類の難消化性澱粉を用いて、主原料粉中の難消化性澱粉由来の食物繊維含量が同じとなるように配合した試験区では、難消化性澱粉の種類に関わらず、食物繊維含量が60重量%以上の難消化性澱粉であれば、ざらつき、粉っぽさの少ないことがわかる。また、難消化性澱粉の含有量の高い、リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉の方が、難消化性澱粉の配合量を少なくでき、食感の面でもハイアミロースコーンスターチの湿熱処理澱粉と比べ、歯切れがよい食感であった。
【0066】
実施例2−4〜実施例2−6及び実施例1−3で示すように、主原料粉の重量中の難消化性澱粉の割合が多くなるほど、ざらつき、粉っぽさが増加し、また、ロールによる機械製麺するために添加するグルテン量が増加し、風味が悪くなる。1食分を何グラムのそばにするかにより、難消化性澱粉の配合量は変わるが、少なくとも主原料粉の重量中の難消化性澱粉の割合は35重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下が好ましいことがわかる。
【0067】
<実験3>その他の麺
(実施例3−1)即席ノンフライ麺
実施例1−3の方法で製造した麺線を切断することなく、飽和蒸気(蒸気流量300kg/h)で2分30秒間蒸煮した後、味付け液(食塩0.5%w/v、アラビアガム1.0%w/v)に5秒浸漬し、約40cmにカット後、140g(生麺120g相当)を1食分の熱風乾燥用リテーナに入れ、90℃で30分乾燥し、即席ノンフライ麺サンプルを作製した。
【0068】
(実施例3−2)乾麺
実施例1−3の方法で製造した麺線を1.5m程度で切断し、棒に掛けた後、30℃湿度80%の環境下で4時間程度乾燥し、乾燥した麺を約30cmとなるように切断し、棒状の乾麺サンプルを作製した。
【0069】
(実施例3−3)即席フライ麺
実施例3−1の方法で製造したカット麺140gをフライ乾燥用リテーナに入れ、150℃で2分30秒間フライ乾燥し、フライ麺サンプルを製造した。
【0070】
(実施例3−4)冷凍麺
実施例1−3の方法で製造したカット麺120gを茹でバケットに入れ、2分30秒茹でた後、水洗冷却を1分30秒行い、水切りした後、冷凍用のリテーナに入れ、−30℃のエアブラスト式冷凍庫で30分間冷凍し、冷凍麺サンプルを作製した。
【0071】
それぞれのサンプルを調理し、実験1の評価方法と同様に評価を行った。即席ノンフライ麺の調理については、500mlの沸騰した湯を入れた鍋で3分間茹で調理し、予め用意した容器に濃縮液体つゆを入れ、そこにゆで汁ごと麺を入れて行い、喫食サンプルとした。乾麺サンプルの調理については、乾麺85g(生麺120g相当)を沸騰水中で3分間茹でた後、ざるに入れ、湯切りをし、水洗いをした後、水を切りし、軽く熱水で温めた後、水を切り、予め用意したつゆを入れた容器にそばを入れて行い、喫食サンプルとした。即席フライ麺の調理については、容器に即席フライ麺サンプルを入れ、粉末スープを入れた後、沸騰水450mlを入れ3分間保持し、喫食サンプルとした。冷凍麺の調理については、沸騰水中で3分間茹で調理した後、湯きりし、予め用意したつゆを入れた容器にそばを入れて行い、喫食サンプルとした。
【0072】
実験3の評価結果を表5に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
実施例3−1〜3−4で示すように生麺以外の形態でもざらつき、粉っぽさが少なく、風味の良い難消化性澱粉含有そばを製造できることがわかる。風味、食感の面で即席ノンフライ麺がよいことがわかる。また、乾麺や冷凍麺では、加工時または調理時に麺を茹でた後、湯きりや水洗い等を行うため、麺から難消化性澱粉由来の食物繊維が流出し、喫食時に添加量した難消化性由来の食物繊維量よりも少ない量となるが、即席ノンフライ麺では、麺表面が糊化されているため、難消化性澱粉由来の食物繊維の流出が少なく、また、茹で湯ごとスープとして使用できるため、他の麺に比べ、難消化性澱粉由来の食物繊維を多く摂取できる。