【実施例】
【0030】
<実験1>そば粉の検討
そば粉の検討のため、特等粉、1番粉、2番粉、3番粉、そば殻粉を用意し、それぞれのタンパク質量、食物繊維量を分析した。尚、タンパク質量の分析は、食品表示基準別添(栄養素等の分析方法等)に記載されているケルダール法、食物繊維量の分析は、同じく、食品表示基準別添(栄養素等の分析方法等)に記載されているプロスキー法(酵素−重量法)で分析した。分析結果を下記表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
また、特等粉、1番粉、2番粉、3番粉、そば殻粉を下記表2のように配合し、そば粉1〜12を作製した。配合、タンパク質含量、食物繊維含量を下記表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
(実施例1−1)
準強力粉600g、表2のそば粉2(タンパク質含量4.3重量%、食物繊維含量1.0重量%)を300g、難消化性澱粉(タピオカリン酸架橋澱粉(食物繊維量85重量%))100gを混合した主原料粉に卵白粉5g、グルテン30gを粉体混合し、食塩10g、リン酸塩0.6g、重合リン酸塩0.9g、トコフェロール製剤0.4gを水360gに溶解した練水を加え、ミキサーにて15分間混捏し、麺生地(ドウ)を作製した。
【0035】
作製したドウを複合して麺帯を作製し、ロール圧延にて1.2mmまで麺帯を圧延した後、18番角のロール切刃にて麺帯を切断し、麺線とした後、約40cmとなるように麺線をカットし、1食120gの難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0036】
(実施例1−2)
そば粉を表2のそば粉4(タンパク質含量5.2重量%、食物繊維含量1.3重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0037】
(実施例1−3)
そば粉を表2のそば粉5(タンパク質含量6.1重量%、食物繊維含量1.6重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0038】
(実施例1−4)
そば粉を表2のそば粉6(タンパク質含量6.0重量%、食物繊維含量1.9重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0039】
(実施例1−5)
そば粉を表2のそば粉7(タンパク質含量7.1重量%、食物繊維含量1.9重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0040】
(実施例1−6)
そば粉を表2のそば粉8(タンパク質含量6.8重量%、食物繊維含量1.9重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0041】
(実施例1−7)
そば粉を表2のそば粉9(タンパク質含量6.8重量%、食物繊維含量1.9重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0042】
(実施例1−8)
そば粉を表2のそば粉10(タンパク質含量7.7重量%、食物繊維含量2.0重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0043】
(比較例1−1)
そば粉を表2のそば粉1(タンパク質含量3.9重量%、食物繊維含量0.7重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0044】
(比較例1−2)
そば粉を表2のそば粉3(タンパク質含量8.1重量%、食物繊維含量1.9重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0045】
(比較例1−3)
そば粉を表2のそば粉11(タンパク質含量8.5重量%、食物繊維含量2.2重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0046】
(比較例1−4)
そば粉を表2のそば粉12(タンパク質含量11.6重量%、食物繊維含量3.5重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0047】
実験1で作製した難消化性澱粉含有そばサンプルについて評価を行った。評価は、調理後の麺の風味、調理後の麺のざらつき、粉っぽさについて行った。また、評価方法は、ベテランのパネラー5人によって4段階で行った。調理については、難消化性澱粉含有そばサンプルを沸騰水中で3分間茹でた後、ざるに入れ、湯切りをし、水洗いをした後、水を切りし、軽く熱水で温めた後、湯を切り、予め用意したつゆを入れた容器にそばを入れて行い、喫食サンプルとした。
【0048】
調理後のそばの風味については、評価◎が非常に良好、評価○は、良好、評価△は、弱い、評価×は、著しく弱いとした。
【0049】
調理後のざらつき、粉っぽさについては、評価◎がざらつき、粉っぽさをほとんど感じず非常に良好、評価○は、ざらつき、粉っぽさが少なく良好、評価△は、ざらつき、粉っぽさが目立つ、評価×は、著しくざらつき、粉っぽいとした。
【0050】
実験1の評価結果について表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
比較例1−1で示すように、特等粉、1番粉のみでタンパク質含量を3.9重量%、食物繊維含量を0.7重量%に調整したそば粉では、難消化性澱粉由来のざらつき、粉っぽさは抑えられるが、風味にかけ、食感も澱粉質で餅っぽいような食感となった。
【0053】
逆に、比較例1−3、1−4で示すようにタンパク質含量を8.0重量%よりも高く且つ、食物繊維含量2.0重量%よりも高く調整したそば粉は、そばの風味は良好であるが、難消化性澱粉由来のざらつき、粉っぽさが目立つ結果となった。
【0054】
それに対し、実施例1−1〜実施例1−8で示すようにそば粉のタンパク質含量を4.0〜8.0重量%且つ食物繊維含量が1.0〜2.0重量%に調整したそば粉を使用することで、難消化性澱粉由来のざらつき、粉っぽさが抑えられ、風味のよいそばを提供することが出来ることがわかる。
【0055】
また、そば殻を用いた実施例1−4、実施例1−7や3番粉を使用した実施例1−5では、そば殻や3番粉を配合していないそば粉に対して、難消化性澱粉由来のざらつきを感じる結果となった。そば殻は食物繊維を多く含み、3番粉もそば殻を含むことからして、そば由来の食物繊維が難消化性澱粉由来のざらつきを増長する因子であることが推測される。
【0056】
比較例1−2で示すようにタンパク質含量が8.0重量%よりも高く、食物繊維含量が2.0重量%以下の場合、難消化性澱粉由来のざらつきは目立たないが、糊化が不十分なような粉っぽさが目立つようになった。上記の結果から、そば由来のタンパク質含量が難消化性澱粉の粉っぽさを増長する因子であることが推測される。
【0057】
<実験2>難消化性澱粉の種類の検討及び配合量の検討
(実施例2−1)
主原料粉を準強力粉560g、表2のそば粉5(タンパク質含量6.1重量%、食物繊維含量1.6重量%)を300g、難消化性澱粉をハイアミロースコーンスターチの湿熱処理澱粉140g(食物繊維60重量%)、副原料のグルテンを36gとする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0058】
(実施例2−2)
主原料粉を準強力粉594g、表2のそば粉5(タンパク質含量6.1重量%、食物繊維含量1.6重量%)を300g、難消化性澱粉をリン酸モノエステル化リン酸架橋タピオカ澱粉106g(食物繊維80重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0059】
(実施例2−3)
主原料粉を準強力粉600g、表2のそば粉5(タンパク質含量6.1重量%、食物繊維含量1.6重量%)を300g、難消化性澱粉をリン酸モノエステル化リン酸架橋小麦粉澱粉100g(食物繊維85重量%)とする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0060】
(実施例2−4)
主原料粉を準強力粉650g、表2のそば粉5(タンパク質含量6.1重量%、食物繊維含量1.6重量%)を300g、難消化性澱粉をリン酸架橋タピオカ澱粉50g(食物繊維85重量%)、副原料のグルテンを20gとする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0061】
(実施例2−5)
主原料粉を準強力粉500g、表2のそば粉5(タンパク質含量6.1重量%、食物繊維含量1.6重量%)を300g、難消化性澱粉をリン酸架橋タピオカ澱粉200g(食物繊維85重量%)、副原料のグルテンを40gとする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した。
【0062】
(実施例2−6)
主原料粉を準強力粉350g、表2のそば粉5(タンパク質含量6.1重量%、食物繊維含量1.6重量%)を300g、難消化性澱粉をリン酸架橋タピオカ澱粉350g(食物繊維85重量%)、副原料のグルテンを60gとする以外は、実施例1−1の方法に従って難消化性澱粉含有そばサンプルを作製した(。
【0063】
実施例2−1〜実施例2−6及び実施例1−3のサンプルを実験1と同様の方法で評価した。評価結果を表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
実施例2−1〜実施例2−3及び実施例1−3で示すように、異なる種類の難消化性澱粉を用いて、主原料粉中の難消化性澱粉由来の食物繊維含量が同じとなるように配合した試験区では、難消化性澱粉の種類に関わらず、食物繊維含量が60重量%以上の難消化性澱粉であれば、ざらつき、粉っぽさの少ないことがわかる。また、難消化性澱粉の含有量の高い、リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉の方が、難消化性澱粉の配合量を少なくでき、食感の面でもハイアミロースコーンスターチの湿熱処理澱粉と比べ、歯切れがよい食感であった。
【0066】
実施例2−4〜実施例2−6及び実施例1−3で示すように、主原料粉の重量中の難消化性澱粉の割合が多くなるほど、ざらつき、粉っぽさが増加し、また、ロールによる機械製麺するために添加するグルテン量が増加し、風味が悪くなる。1食分を何グラムのそばにするかにより、難消化性澱粉の配合量は変わるが、少なくとも主原料粉の重量中の難消化性澱粉の割合は35重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下が好ましいことがわかる。
【0067】
<実験3>その他の麺
(実施例3−1)即席ノンフライ麺
実施例1−3の方法で製造した麺線を切断することなく、飽和蒸気(蒸気流量300kg/h)で2分30秒間蒸煮した後、味付け液(食塩0.5%w/v、アラビアガム1.0%w/v)に5秒浸漬し、約40cmにカット後、140g(生麺120g相当)を1食分の熱風乾燥用リテーナに入れ、90℃で30分乾燥し、即席ノンフライ麺サンプルを作製した。
【0068】
(実施例3−2)乾麺
実施例1−3の方法で製造した麺線を1.5m程度で切断し、棒に掛けた後、30℃湿度80%の環境下で4時間程度乾燥し、乾燥した麺を約30cmとなるように切断し、棒状の乾麺サンプルを作製した。
【0069】
(実施例3−3)即席フライ麺
実施例3−1の方法で製造したカット麺140gをフライ乾燥用リテーナに入れ、150℃で2分30秒間フライ乾燥し、フライ麺サンプルを製造した。
【0070】
(実施例3−4)冷凍麺
実施例1−3の方法で製造したカット麺120gを茹でバケットに入れ、2分30秒茹でた後、水洗冷却を1分30秒行い、水切りした後、冷凍用のリテーナに入れ、−30℃のエアブラスト式冷凍庫で30分間冷凍し、冷凍麺サンプルを作製した。
【0071】
それぞれのサンプルを調理し、実験1の評価方法と同様に評価を行った。即席ノンフライ麺の調理については、500mlの沸騰した湯を入れた鍋で3分間茹で調理し、予め用意した容器に濃縮液体つゆを入れ、そこにゆで汁ごと麺を入れて行い、喫食サンプルとした。乾麺サンプルの調理については、乾麺85g(生麺120g相当)を沸騰水中で3分間茹でた後、ざるに入れ、湯切りをし、水洗いをした後、水を切りし、軽く熱水で温めた後、水を切り、予め用意したつゆを入れた容器にそばを入れて行い、喫食サンプルとした。即席フライ麺の調理については、容器に即席フライ麺サンプルを入れ、粉末スープを入れた後、沸騰水450mlを入れ3分間保持し、喫食サンプルとした。冷凍麺の調理については、沸騰水中で3分間茹で調理した後、湯きりし、予め用意したつゆを入れた容器にそばを入れて行い、喫食サンプルとした。
【0072】
実験3の評価結果を表5に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
実施例3−1〜3−4で示すように生麺以外の形態でもざらつき、粉っぽさが少なく、風味の良い難消化性澱粉含有そばを製造できることがわかる。風味、食感の面で即席ノンフライ麺がよいことがわかる。また、乾麺や冷凍麺では、加工時または調理時に麺を茹でた後、湯きりや水洗い等を行うため、麺から難消化性澱粉由来の食物繊維が流出し、喫食時に添加量した難消化性由来の食物繊維量よりも少ない量となるが、即席ノンフライ麺では、麺表面が糊化されているため、難消化性澱粉由来の食物繊維の流出が少なく、また、茹で湯ごとスープとして使用できるため、他の麺に比べ、難消化性澱粉由来の食物繊維を多く摂取できる。