(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<油脂組成物>
本発明は、全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種類又はそれ以上のXXX型トリグリセリドを65〜99質量%と、前記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換した1種以上のX2Y型トリグリセリドを35〜1質量%とを含有する油脂組成物であって、前記炭素数xは8〜20から選択される整数であり、前記炭素数yは、それぞれ独立して、x+2〜x+12から選択される整数でありかつy≦22である条件から選ばれる、油脂組成物に関する。上記2種類のトリグリセリドを上記質量%にて含む当該油脂組成物は、乳化剤、賦形剤等の添加剤を含めることなく粉末状の油脂組成物となる。以下、本発明の油脂組成物を詳細に説明する。
【0010】
<XXX型トリグリセリド>
本発明の油脂組成物は、全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、その含有量が65〜99質量%である、単一種又は複数種、好ましくは単一種(1種類)のXXX型トリグリセリドを含む。当該XXX型トリグリセリドは、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するトリグリセリドであり、各脂肪酸残基Xは互いに同一である。ここで、当該炭素数xは8〜20から選択される整数であり、好ましくは10〜18から選択される整数、より好ましくは10〜16から選択される整数、更に好ましくは10〜12から選択される整数である。
脂肪酸残基Xは、飽和あるいは不飽和の脂肪酸残基であってもよい。具体的な脂肪酸残基Xとしては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びアラキジン酸等の残基が挙げられるがこれに限定するものではない。脂肪酸としてより好ましくは、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸であり、さらに好ましくは、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸及びパルミチン酸であり、殊更好ましくは、カプリン酸及びラウリン酸である。
XXX型トリグリセリドは、油脂組成物中の全トリグリセリドを100質量%とした場合、65〜99質量%含まれる。XXX型トリグリセリドの含有量として好ましくは、75〜99質量%であり、より好ましくは80〜99質量%であり、更に好ましくは83〜98質量%であり、特に好ましくは85〜98質量%であり、殊更好ましくは90〜98質量%である。
【0011】
<X2Y型トリグリセリド>
本発明の油脂組成物は、上記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換したX2Y型トリグリセリドを1種以上含む。ここで、1つのX2Y型トリグリセリドに含まれる各脂肪酸残基Xは互いに同一であり、かつXXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xとも同一である。当該1つのX2Y型トリグリセリドに含まれる脂肪酸残基Yの炭素数yはx+2〜x+12でありかつy≦22である条件から選ばれる整数である。炭素数yは、好ましくはy=x+2〜x+10を満たし、より好ましくはy=x+4〜x+8を満たす条件から選ばれる整数である。また、炭素数yの上限値は、好ましくはy≦20であり、より好ましくはy≦18である。本発明の油脂組成物は複数、例えば、2種類〜5種類、好ましくは3〜4種類のX2Y型トリグリセリドを含んでいてもよく、その場合の各X2Y型トリグリセリドの定義は上述の通りである。各X2Y型トリグリセリドの脂肪酸残基Yの炭素数yは、上述の範囲内から、各X2Y型トリグリセリドごとにそれぞれ独立して選択される。例えば、後述する実施例11のように、本発明の油脂組成物を、トリカプリンとパーム核ステアリン極度硬化油とをエステル交換して製造する場合は、xは共通してx=10であるが、yはそれぞれy=12、14、16及び18である4種類のX2Y型トリグリセリドを含む。
脂肪酸残基Yは、飽和あるいは不飽和の脂肪酸残基であってもよい。具体的な脂肪酸残基Yとしては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸及びベヘン酸等の残基が挙げられるがこれに限定するものではない。脂肪酸としてより好ましくは、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸及びベヘン酸であり、さらに好ましくは、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸である。このX2Y型トリグリセリドの脂肪酸残基Yは、1位〜3位の何れに配置していてもよい。
X2Y型トリグリセリドは、油脂組成物中の全トリグリセリドを100質量%とした場合、35〜1質量%含まれる。X2Y型トリグリセリドの含有量としては、例えば、25〜1質量%であり、好ましくは20〜1質量%であり、より好ましくは17〜1質量%であり、更に好ましくは15〜2質量%であり、殊更好ましくは10〜2質量%である。本発明の油脂組成物に複数のX2Y型トリグリセリドが含まれる場合、上記X2Y型トリグリセリドの量は、含まれるX2Y型トリグリセリドの合計量である。
【0012】
<その他のトリグリセリド>
本発明の油脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、上記XXX型トリグリセリド及びX2Y型トリグリセリド以外の、その他のトリグリセリドを含んでいてもよい。その他のトリグリセリドは、複数の種類のトリグリセリドであってもよく、合成油脂であっても天然油脂であってもよい。合成油脂としては、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル等が挙げられる。天然油脂としては、例えば、ココアバター、ヒマワリ油、菜種油、大豆油、綿実油等が挙げられる。本発明の油脂組成物中の全トリグリセリドを100質量%とした場合、その他のトリグリセリドは、1質量%以上、例えば、5〜30質量%程度含まれていても問題はない。その他のトリグリセリドの含有量は、例えば、0〜30質量%、好ましくは0〜18質量%、より好ましくは0〜15質量%、更に好ましくは0〜8質量%である。
【0013】
<その他の成分>
本発明の油脂組成物は、上記トリグリセリドの他、任意に乳化剤、香料、脱脂粉乳、全脂粉乳、ココアパウダー、砂糖、デキストリン等のその他の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、油脂組成物の全質量を100質量%とした場合、0〜70質量%、好ましくは0〜65質量%、より好ましくは0〜30質量%である。その他成分は、その90質量%以上が、平均粒径が1000μm以下である紛体であることが好ましく、平均粒径が500μm以下の紛体であることがより好ましい。なお、ここでいう平均粒径は、レーザー回折散乱法(ISO133201及びISO9276-1)によって測定した値である。
但し、本発明の好ましい油脂組成物は、実質的に油脂のみからなることが好ましい。ここで油脂とは、実質的にトリグリセリドのみからなるものである。また、「実質的に」とは、油脂組成物中に含まれる油脂以外の成分または油脂中に含まれるトリグリセリド以外の成分が、油脂組成物または油脂を100質量%とした場合、例えば、0〜15質量%、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%であることを意味する。
【0014】
<粉末油脂組成物>
本発明の粉末油脂組成物は、上記油脂組成物中に含まれるトリグリセリドを融解して溶融状態の上記油脂組成物を得、この油脂組成物を冷却することにより、噴霧やミル等の粉砕機による機械粉砕等特別の加工手段を採らなくても、粉末状の油脂組成物(粉末油脂組成物)を得ることができる。より具体的には、上記XXX型トリグリセリドと上記X2Y型トリグリセリドを含有する油脂組成物を、任意に加熱・融解し、溶融状態の油脂組成物を得、その後冷却して溶融状態の油脂組成物よりも体積が増加した空隙を有する固形物を形成する。得られた該固形物を篩にかける等により外部より軽く衝撃加えて粉砕する(ほぐす)ことで容易に粉末油脂組成物を得ることができる。
理論にはとらわれないが、このように粉末油脂組成物を簡単な工程で製造できるのは、鎖長の長さがそろったXXX型トリグリセリドのみの場合、油脂結晶が非常に密にパッキングして連続化し、密な状態を保持したまま結晶化するところ、一つの脂肪酸の鎖長が長いX2Y型トリグリセリドが少量存在することにより、該X2Y型トリグリセリドが溶融状態から冷却結晶化するときにXXX型トリグリセリドからなる油脂結晶中に混入して、XXX型トリグリセリドが連続化して結晶成長することを分断し、結果として、非常に疎な状態(体積が増えて空隙ができた状態)で結晶化した固形物になるためと思われる。得られた固形物は、非常に疎な状態で結晶化した粉末油脂組成物の凝集体の形態を有し、軽い衝撃によっても脆くくずれ、容易に粉末状を呈するようになる。
【0015】
<粉末油脂組成物の特性>
本発明の粉末油脂組成物は、常温(20℃)で粉末状の固体である。
本発明の粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度は、例えば実質的に油脂のみからなる場合、0.1〜0.6g/cm
3、好ましくは0.15〜0.5g/cm
3であり、より好ましくは0.2〜0.4g/cm
3である。ここで「ゆるめ嵩密度」とは、粉体を自然落下させた状態の充填密度である。ゆるめ嵩密度(g/cm
3)の測定は、例えば、内径15mm×25mLのメスシリンダーに、当該メスシリンダーの上部開口端から2cm程度上方から粉末油脂組成物の適量を落下させて疎充填し、充填された質量(g)の測定と容量(mL)の読み取りを行い、mL当たりの当該粉末油脂組成物の質量(g)を算出することで求めることができる。また、ゆるめ嵩密度は、(株)蔵持科学器械製作所のカサ比重測定器を使用し、JIS K-6720(又はISO 1060-1及び2)に基づいて測定したカサ比重から算出することもできる。具体的には、試料120mLを、受器(内径40mm×高さ85mmの100mL円柱形容器)の上部開口部から38mmの高さの位置から、該受器に落とす。受器から盛り上がった試料はすり落とし、受器の内容積(100mL)分の試料の質量(Ag)を秤量し、以下の式からゆるめ嵩密度を求めることができる。
ゆるめ嵩密度(g/mL)=A(g)/100(mL)
測定は3回行ってその平均値を取ることが好ましい。
【0016】
また、本発明の粉末油脂組成物は、通常、板状結晶または球状結晶の形態を有し、好ましくは、板状結晶の形態を有し、例えば、50〜400μm、好ましくは50〜300μm、より好ましくは50〜250μm、殊更好ましくは、100〜200μmの平均粒径(有効径)を有する。ここで、当該平均粒径(有効径)は、粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製 Microtrac MT3300ExII)でレーザー回折散乱法(ISO133201、ISO9276-1)に基づいて求めることができる。有効径とは、測定対象となる結晶の実測回折パターンが、球形と仮定して得られる理論的回折パターンに適合する場合の、当該球形の粒径を意味する。このように、レーザー回折散乱法の場合、球形と仮定して得られる理論的回折パターンと、実測回折パターンを適合させて有効径を算出しているので、測定対象が板状結晶であっても球状結晶であっても同じ原理で測定することができる。ここで、球状とは、アスペクト比が1.0以上1.1未満であることを指し、板状とは、アスペクト比が1.1以上であることを指す。なお、アスペクト比とは、粒子図形に対して、面積が最小となるように外接する長方形で囲み、その長方形の長辺の長さと短辺の長さの比と定義される。
【0017】
<粉末油脂組成物の製造方法>
本発明の粉末油脂組成物は、以下の工程、
(a)全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するXXX型トリグリセリドを65〜99質量%と、前記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換したX2Y型トリグリセリドを35〜1質量%とを含有する油脂組成物であって、前記炭素数xは8〜20から選択される整数であり、前記炭素数yは、それぞれ独立して、x+2〜x+12から選択される整数でありかつy≦22である、油脂組成物を調製する工程、
(b)前記油脂組成物を加熱し、前記油脂組成物中に含まれるトリグリセリドを融解して溶融状態の前記油脂組成物を得る任意の工程、
(d)溶融状態の前記油脂組成物を冷却して粉末油脂組成物を得る工程、
を含む方法によって製造することができる。
また、上記工程(b)と(d)の間に、工程(c)として粉末生成を促進するための任意工程、例えば(c1)シーディング工程、(c2)テンパリング工程、及び/又は(c3)予備冷却工程を含んでいてもよい。さらに上記工程(d)で得られる粉末油脂組成物は、工程(d)の冷却後に得られる固形物を粉砕して粉末状の油脂組成物を得る工程(e)によって得られるものであってもよい。以下、上記工程(a)〜(e)について説明する。
【0018】
(a)油脂組成物の調製工程I
工程(a)で調製される油脂組成物は、上述したとおりのXXX型トリグリセリド(1種類又はそれ以上)とX2Y型トリグリセリド(1種類又はそれ以上)とを、上述した質量%で含有するものである。具体的には、例えば、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するXXX型トリグリセリド(1種類又はそれ以上)と、1位〜3位に炭素数yの脂肪酸残基Yを有するYYY型トリグリセリド(1種類又はそれ以上)とを別々に入手し、XXX型トリグリセリド/YYY型トリグリセリドの質量比で90/10〜99/1にて混合して反応基質を得(ここで、前記炭素数xは8〜20から選択される整数であり、前記炭素数yはx+2〜x+12から選択される整数でありかつy≦22である)、前記反応基質を加熱し、触媒の存在下でエステル交換反応する工程を経て得られる。
【0019】
<反応基質>
まず、XXX型トリグリセリド(1種類又はそれ以上)とYYY型トリグリセリド(1種類又はそれ以上)とを混合して反応基質を得る。ここでXXX型トリグリセリドの詳細は、上述した通りである。
YYY型トリグリセリドは、1位〜3位に炭素数yの脂肪酸残基Yを有するトリグリセリドである。ここで、当該炭素数y及び脂肪酸残基Yは、上述した通りである。
【0020】
上記XXX型トリグリセリド及び上記YYY型トリグリセリドは、脂肪酸または脂肪酸誘導体とグリセリンを用いた直接合成によっても得ることができる。XXX型トリグリセリドを例にとると、XXX型トリグリセリドを直接合成する方法としては、(i)炭素数Xの脂肪酸とグリセリンとを直接エステル化する方法(直接エステル合成)、(ii)炭素数xである脂肪酸Xのカルボキシル基がアルコキシル基と結合した脂肪酸アルキル(例えば、脂肪酸メチル及び脂肪酸エチル)とグリセリンとを塩基性または酸性触媒条件下にて反応させる方法(脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成)、(iii)炭素数xである脂肪酸Xのカルボキシル基の水酸基がハロゲンに置換された脂肪酸ハロゲン化物(例えば、脂肪酸クロリド及び脂肪酸ブロミド)とグリセリンとを塩基性触媒下にて反応させる方法(酸ハライド合成)が挙げられる。
XXX型トリグリセリド及びYYY型トリグリセリドは前述の(i)〜(iii)のいずれの方法によっても製造できるが、製造の容易さの観点から、(i)直接エステル合成又は(ii)脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成が好ましく、(i)直接エステル合成がより好ましい。
【0021】
XXX型トリグリセリドまたはYYY型トリグリセリドを(i)直接エステル合成によって製造するには、製造効率の観点から、グリセリン1モルに対して脂肪酸Xまたは脂肪酸Yを3〜5モルを用いることが好ましく、3〜4モルを用いることがより好ましい。
XXX型トリグリセリドまたはYYY型トリグリセリドの(i)直接エステル合成における反応温度は、エステル化反応によって生ずる生成水が系外に除去できる温度であればよく、例えば、120℃〜300℃が好ましく、150℃〜270℃がより好ましく、180℃〜250℃がさらに好ましい。反応を180〜250℃で行うことで、特に効率的にXXX型トリグリセリドまたはYYY型トリグリセリドを製造することができる。
【0022】
XXX型トリグリセリドまたはYYY型トリグリセリドの(i)直接エステル合成においては、エステル化反応を促進する触媒を用いても良い。触媒としては酸触媒、及びアルカリ土類金属のアルコキシド等が挙げられる。触媒の使用量は、反応原料の総質量に対して0.001〜1質量%程度であることが好ましい。
XXX型トリグリセリドまたはYYY型トリグリセリドの(i)直接エステル合成においては、反応後、水洗、アルカリ脱酸及び/又は減圧脱酸、及び吸着処理等の公知の精製処理を行うことで、触媒や原料未反応物を除去することができる。更に、脱色・脱臭処理を施すことで、得られた反応物をさらに精製することができる。
【0023】
これらXXX型トリグリセリド及びYYY型トリグリセリドは、XXX型トリグリセリド/YYY型トリグリセリドの質量比で90/10〜99/1、好ましくは93/7〜99/1、より好ましくは95/5〜99/1にて混合する。特に、脂肪酸残基Xが炭素数10かつ脂肪酸残基Yが炭素数14〜18の場合、XXX型トリグリセリド/YYY型トリグリセリドの質量比は95/5〜99/1であることが好ましく、また、脂肪酸残基Xが炭素数12かつ脂肪酸残基Yが炭素数16〜18の場合、XXX型トリグリセリド/YYY型トリグリセリドの質量比は95/5〜99/1であることが好ましい。
【0024】
<その他のトリグリセリド>
反応基質の原料となるトリグリセリドとしては、上記XXX型トリグリセリドやYYY型トリグリセリドの他、本発明の効果を損なわない限り、各種トリグリセリドを含めてもよい。その他のトリグリセリドとしては、例えば、上記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つが脂肪酸残基Yに置換したX2Y型トリグリセリド、上記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの2つが脂肪酸残基Yに置換したXY2型トリグリセリド等を挙げることができる。
上記その他のトリグリセリドの量は、例えば、XXX型トリグリセリド及びYYY型トリグリセリドの合計質量を100質量%とした場合、0〜15質量%、好ましくは0〜7質量%、より好ましくは0〜4質量%である。
また、上記XXX型トリグリセリドやYYY型トリグリセリドの代わりに、天然由来のトリグリセリド組成物を使用してもよい。天然由来のトリグリセリド組成物としては、例えば、パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、ナタネ油、ヤシ油、大豆油、ヒマワリ油、サフラワー油、パームステアリン等を挙げることができる。これらの天然由来のトリグリセリド組成物は、さらに水素添加等により改質した硬化油、部分硬化油、極度硬化油であってもよい。
上記天然由来のトリグリセリド組成物の量は、これら天然由来のトリグリセリド組成物に含まれる必要なXXX型トリグリセリド又はYYY型トリグリセリドの量に依存するが、例えば、XXX型トリグリセリドのXがカプリン酸で、YYY型トリグリセリドの由来としてパーム核ステアリン極度硬化油を使用する場合、当該パーム核ステアリン極度硬化油に含まれる1位〜3位にY残基を有するトリグリセリドが上述したYYY型トリグリセリドとして必要な量、即ちXXX型トリグリセリド/YYY型トリグリセリドの質量比で90/10〜99/1、好ましくは93/7〜99/1、より好ましくは95/5〜98/2を満たす量で含まれることが適当である。
【0025】
<その他の成分>
反応基質を構成する原料としては、上記トリグリセリドの他、任意に部分グリセリド、抗酸化剤、乳化剤、水などの溶媒等のその他の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、得られる反応基質の質量を100質量%とした場合、0〜5質量%、好ましくは0〜2質量%、より好ましくは0〜1質量%である。
【0026】
混合は、均質な反応基質が得られる限り公知のいかなる混合方法を用いてもよいが、例えば、パドルミキサー、アジホモミキサー、ディスパーミキサー等で行うことができる。
当該混合は、必要に応じて加熱下で混合してもよい。加熱は、後述の工程(b)における加熱温度と同程度であることが好ましく、例えば、50〜120℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは70〜90℃、さらに好ましくは80℃で行われる。なお、触媒として酵素を添加する場合、酵素添加前に水は極力存在しないことが好ましい。酵素添加前の水の量は、原料全体の質量に対し、例えば10質量%以下、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜3質量%、更に好ましくは0.01〜2質量%であることが適当である。この混合は、例えば5〜60分、好ましくは10〜50分、より好ましくは20〜40分継続してもよい。
【0027】
<エステル交換反応>
上記反応基質(XXX型トリグリセリドとYYY型トリグリセリドとを含有する混合物)を加熱し、触媒の存在下でエステル交換反応してエステル交換反応物(XXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドとを含有する油脂組成物)を得る。
エステル交換反応は、特に限定なく、通常用いられるエステル交換反応を使用することができる。
ここで加熱は、例えば、50〜120℃、好ましくは60〜100℃、より好ましくは70〜90℃、さらに好ましくは80℃で行われる。
触媒としては、酵素、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属アルコキシド等を使用することができる。酵素としては、固定化酵素及び粉末酵素を使用できるが、酵素活性及び取扱い容易性の面から、粉末酵素であることが好ましい。
粉末酵素は、酵素含有水性液体をスプレードライ、フリーズドライ、溶剤沈澱後の乾燥などの方法で乾燥、粉末化したものであり、特に限定するものではないが、例えば、アルカリゲネス エスピー(Alcaligenes sp.)由来のリパーゼ(名糖産業株式会社、商品名リパーゼQLM)が挙げられる。
固定化酵素としては、酵素をシリカ、セライト、珪藻土、パーライト、ポリビニールアルコール、陰イオン交換樹脂、フェノール吸着樹脂、疎水性担体、陽イオン交換樹脂、キレート樹脂等の担体に固定化したものを用いることができる。
【0028】
触媒として使用できるアルカリ金属アルコキシド及びアルカリ土類金属アルコキシドにおいて、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等を好ましくは使用できる。アルカリ土類金属としては、マグネシウム及びカルシウムを好ましくは使用できる。アルコキシドとしては、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、n−ブトキシド、t−ブトキシド等を挙げることができ、好ましくはメトキシド及びエトキシドである。好ましいアルカリ金属アルコキシド及びアルカリ土類金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド等を挙げることができ、より好ましくはナトリウムメトキシドである。
これらの触媒は、1種又は2種以上を混合して使用してもよいが、酵素系の触媒とアルコキシド系の触媒は同時に使用しない方が好ましい。
触媒の量は、エステル交換反応が十分に進行する量であればよいが、原料であるトリグリセリドの合計質量に対し、例えば、0.01〜20質量%、好ましくは、0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.2〜1質量%加えられる。上記触媒の他、任意の助触媒を使用してもよい。
エステル交換反応は、例えば、常圧下もしくは減圧下、上述した加熱温度で、例えば0.5〜50時間、好ましくは1〜40時間、より好ましくは5〜30時間、更に好ましくは10〜20時間、任意に攪拌しながら行われる。また、この反応工程では、例えば、上記所定量の触媒を1度に投入してもよいが、所定量の触媒を2〜30回、好ましくは3〜20回、より好ましくは5〜15回に分けて投入してもよい。触媒を投入する時期は、上記工程(a)直後の他、第1回触媒投入から1〜2時間おきに投入してもよい。
【0029】
(a)油脂組成物の調製工程II
本発明の工程(a)で調製される油脂組成物の製造方法としては、さらに以下に示すようなXXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドを同時かつ直接合成する方法を挙げることができる。すなわち、本調製工程IIは、XXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドを得るために、XXX型トリグリセリドとYYY型トリグリセリドとを別々に合成してエステル交換するということはせず、双方のトリグリセリドを製造するための原料(脂肪酸または脂肪酸誘導体とグリセリン)を、例えば単一の反応容器に投入し、同時かつ直接合成するものであり、その製造方法は、次のいずれかの方法が挙げられる。
(iv)炭素数Xである脂肪酸X及び炭素鎖yの脂肪酸Yとグリセリンとを直接エステル化する方法(直接エステル合成)、(v)炭素数xである脂肪酸X及び炭素鎖yである脂肪酸Yのカルボキシル基がアルコキシル基と結合した脂肪酸アルキル(例えば、脂肪酸メチル及び脂肪酸エチル)とグリセリンとを塩基性または酸性触媒条件下にて反応させる方法(脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成)、(vi)炭素数xである脂肪酸X及び炭素鎖yである脂肪酸Yのカルボキシル基の水酸基がハロゲンに置換された脂肪酸ハロゲン化物(例えば、脂肪酸クロリド及び脂肪酸ブロミド)とグリセリンとを塩基性触媒下にて反応させる方法(酸ハライド合成)が挙げられる。
本発明の油脂組成物は前述の方法のいずれによっても製造できるが、製造の容易さの観点から、(iv)直接エステル合成もしくは(v)脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成が好ましく、(iv)直接エステル合成がより好ましい。
【0030】
本発明の油脂組成物の(iv)直接エステル合成においては、全トリグリセリド中におけるXXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドが所望の質量%になる範囲であれば製造方法は限定されるものではないが、所望のトリグリセリドを確実に系内で生成させるため、2段階の反応を行うことが好ましい。すなわち、1段階目に、グリセリンと炭素数yである脂肪酸Yを含む炭素数xの脂肪酸Xを反応させた後、2段階目に炭素鎖xである脂肪酸Xを加え反応をさせXXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドを所定量含む油脂組成物とする方法が好ましい。
2段階反応を行う際の1段階目の反応においては、全グリセリド中におけるX2Y型トリグリセリドが所望の質量%になる範囲に調整した脂肪酸Yと脂肪酸Xの総モル量が、グリセリン1モルに対して、0.5〜2.8モル量であることが好ましく、0.8〜2.57モル量であることがより好ましく、1.1〜2.2モルであることが最も好ましい。これにより、脂肪酸Yを余すことなくグリセリンと確実にエステル化でき、最終的に系内でより確実にX2Y型グリセリドを生成させることができる。
本発明の油脂組成物の直接エステル合成における反応温度は、エステル化反応によって生ずる生成水が系外に除去できる温度であればよく、120℃〜300℃が好ましく、150℃〜270℃がより好ましく、180℃〜250℃がさらに好ましい。特に反応を180〜250℃で行うことで、効率的にX2Y型トリグリセリドを製造することができる。
【0031】
本発明の油脂組成物の(iv)直接エステル合成においては、エステル化反応を促進する触媒を用いても良い。触媒としては酸触媒、及びアルカリ土類金属のアルコキシド等が挙げられる。触媒の使用量は、反応原料の総質量に対して0.001〜1質量%程度であることが好ましい。
本発明の油脂組成物の(iv)直接エステル合成においては、反応後、水洗、アルカリ脱酸及び/又は減圧脱酸、及び吸着処理等の公知の精製処理を行うことで、触媒や原料未反応物を除去することができる。更に、脱色・脱臭処理を施すことで、得られた反応物をさらに精製することができる。
【0032】
(a)油脂組成物の調製工程III
油脂組成物は、さらに65〜99質量%の範囲外にあるXXX型トリグリセリド及び/または35〜1質量%の範囲外にあるX2Y型トリグリセリドを含む油脂組成物を調製した後、XXX型トリグリセリド又はX2Y型トリグリセリドを更に添加することによって65〜99質量%のXXX型トリグリセリドと35〜1質量%のX2Y型トリグリセリドとを含む油脂組成物を得てもよい(希釈による油脂組成物の調製)。例えば、50〜70質量%のXXX型トリグリセリドと50〜30質量%のX2Y型トリグリセリドとを含む油脂組成物を得た後、所望量のXXX型トリグリセリドを添加して65〜99質量%のXXX型トリグリセリドと35〜1質量%のX2Y型トリグリセリドとを含む油脂組成物を得てもよい。
さらに、上記調整工程IIIには、上記調製工程I又はIIによって、65〜99質量%の範囲内にあるXXX型トリグリセリド及び/又は35〜1質量%の範囲内にあるX2Y型トリグリセリドを含む油脂組成物を一旦調製した後、XXX型トリグリセリド又はX2Y型トリグリセリドを更に添加することによって、XXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドの質量%をより好ましい範囲内へ調節することも含まれる(希釈による一層好適な油脂組成物の調製)。
【0033】
(b)溶融状態の前記油脂組成物を得る工程
上記(d)工程の前に、上記工程(a)で得られた油脂組成物は、調製された時点で溶融状態にある場合、加熱せずにそのまま冷却されるが、得られた時点で溶融状態にない場合は、任意に加熱され、該油脂組成物中に含まれるトリグリセリドを融解して溶融状態の油脂組成物を得る。
ここで、油脂組成物の加熱は、上記油脂組成物中に含まれるトリグリセリドの融点以上の温度、特にXXX型トリグリセリド及びX2Y型トリグリセリドを融解できる温度、例えば、70〜200℃、好ましくは、75〜150℃、より好ましくは80〜100℃であることが適当である。また、加熱は、例えば、0.5〜3時間、好ましくは、0.5〜2時間、より好ましくは0.5〜1時間継続することが適当である。
【0034】
(d)溶融状態の油脂組成物を冷却して粉末油脂組成物を得る工程
上記工程(a)又は(b)で得られた溶融状態の油脂組成物は、さらに冷却されて粉末油脂組成物を形成する。
ここで、「溶融状態の油脂組成物を冷却」とは、溶融状態の油脂組成物を、当該油脂組成物の融点より低い温度に保つことを意味する。「油脂組成物の融点より低い温度」とは、例えば、当該融点より1〜30℃低い温度、好ましくは当該融点より1〜20℃低い温度、より好ましくは当該融点より1〜15℃低い温度である。溶融状態にある油脂組成物の冷却は、例えばxが8〜10のときは最終温度が、好ましくは10〜30℃、より好ましくは15〜25℃、更に好ましくは18〜22℃の温度になるように冷却することによって行われる。冷却における最終温度は、例えばxが11又は12のときは、好ましくは30〜40℃、より好ましくは32〜38℃、更に好ましくは33〜37℃であり、xが13又は14のときは、好ましくは40〜50℃、より好ましくは42〜48℃、更に好ましくは44〜47℃であり、xが15又は16のときは、好ましくは50〜60℃、より好ましくは52〜58℃、更に好ましくは54〜57℃であり、xが17又は18のときは、好ましくは60〜70℃、より好ましくは62〜68℃、更に好ましくは64〜67℃であり、xが19又は20のときは、好ましくは70〜80℃、より好ましくは72〜78℃、更に好ましくは74〜77℃である。上記最終温度において、例えば、好ましくは2時間以上、より好ましくは4時間以上、更に好ましくは6時間〜2日間静置することが適当である。場合によっては、例えばXXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの炭素数xが8〜12の場合など、比較的粉体化に時間を要するものは、特に以下の(c)工程を使用しない場合、例えば2〜8日間、具体的には3〜7日間、より具体的には約6日間静置しなければならない場合もある。
【0035】
(c)粉末生成促進工程
さらに、上記工程(a)又は(b)と(d)との間に、(c)粉末生成を促進するための任意工程として、工程(d)で使用する溶融状態の油脂組成物に対し、シーディング法(c1)、テンパリング法(c2)及び/又は(c3)予備冷却法による処理を行ってもよい。これらの任意工程(c1)〜(c3)は、いずれか単独で行ってもよいし、複数の工程を組み合わせて行ってもよい。ここで、工程(a)又は(b)と工程(d)との間とは、工程(a)又は(b)中、工程(a)又は(b)の後であって工程(d)の前、工程(d)中を含む意味である。
シーディング法(c1)及びテンパリング法(c2)は、本発明の粉末油脂組成物の製造において、溶融状態にある油脂組成物をより確実に粉末状とするために、最終温度まで冷却する前に、溶融状態にある油脂組成物を処置する粉末生成促進方法である。
ここで、シーディング法とは、粉末の核(種)となる成分を溶融状態にある油脂組成物の冷却時に少量添加して、粉末化を促進する方法である。具体的には、例えば、工程(b)で得られた溶融状態にある油脂組成物に、当該油脂組成物中のXXX型トリグリセリドと炭素数が同じXXX型トリグリセリドを好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含む油脂粉末を核(種)となる成分として準備する。この核となる油脂粉末を、溶融状態にある油脂組成物の冷却時、当該油脂組成物の温度が、例えば、最終冷却温度±0〜+10℃、好ましくは+5〜+10℃の温度に到達した時点で、当該溶融状態にある油脂組成物100質量部に対して0.1〜1質量部、好ましくは0.2〜0.8質量部添加することにより、油脂組成物の粉末化を促進する方法である。
テンパリング法とは、溶融状態にある油脂組成物の冷却において、最終冷却温度で静置する前に一度、工程(d)の冷却温度よりも低い温度、例えば5〜20℃低い温度、好ましくは7〜15℃低い温度、より好ましくは10℃程度低い温度に、好ましくは10〜120分間、より好ましくは30〜90分間程度冷却することにより、油脂組成物の粉末化を促進する方法である。
(c3)予備冷却法とは、前記工程(a)又は(b)で得られた溶融状態の油脂組成物を、工程(d)にて冷却する前に、工程(a)又は(b)の溶融状態の温度よりも低く、工程(d)の冷却温度よりも高い温度で一旦予備冷却する方法である。工程(d)の冷却温度より高い温度とは、例えば、工程(d)の冷却温度よりも2〜40℃高い温度、好ましくは3〜30℃高い温度、より好ましくは4〜30℃高い温度、さらに好ましくは5〜10℃程度高い温度であり得る。前記予備冷却する温度を低く設定すればするほど、工程(d)の冷却温度における本冷却時間を短くすることができる。すなわち、予備冷却法とは、シーディング法やテンパリング法と異なり、冷却温度を段階的に下げるだけで油脂組成物の粉末化を促進できる方法であり、工業的に製造する場合に利点が大きい。
【0036】
(e)固形物を粉砕して粉末油脂組成物を得る工程
上記工程(d)の冷却によって粉末油脂組成物を得る工程は、より具体的には、工程(d)の冷却によって得られる固形物を粉砕して粉末油脂組成物を得る工程(e)によって行われてもよい。
詳細に説明すると、まず、上記XXX型トリグリセリドと上記X2Y型トリグリセリドを含有する油脂組成物を融解して溶融状態の油脂組成物を得、その後冷却して溶融状態の油脂組成物よりも体積が増加した空隙を有する固形物を形成する。空隙を有する固形物となった油脂組成物は、軽い衝撃を加えることで粉砕でき、固形物が容易に崩壊して粉末状となる。
ここで、軽い衝撃を加える手段は特に特定されないが、振る、篩に掛ける等により、軽く振動(衝撃)を与えて粉砕する(ほぐす)方法が、簡便で好ましい。
【0037】
<粉末油脂組成物の用途>
本発明の粉末油脂組成物は、粉末油脂を原料とする各種分野で利用できる。特に、ケーキミックス、コーヒークリーム、ショートニング、チョコレート等の食品分野で利用することができる。
【0038】
<油脂組成物を含む食品>
本発明の油脂組成物は、各種食品に含めることができる。油脂組成物が添加される食品原料としては、上述したようなケーキミックスのようなケーキ類、コーヒークリーム、ショートニング、チョコレート、パン類、水産練り製品、焼き菓子、クリーム等を挙げることができる。
本発明の油脂組成物を食品に含めることにより、例えば、チョコレートではエアイン様の軽い食感や口溶けの良さを付与することができる。特に食品がチョコレートの場合、チョコレートに冷涼感を与え、嗜好性が高く、従来のチョコレートでは満足できなかった人々の需要に応えることができる。
さらに、本発明の油脂組成物を含む食品は、粉末状食品であってもよい。粉末状食品としては、例えば、粉末チョコレート、粉末ドレッシング、ケーキミックス、パンミックス等を挙げることができる。本発明の油脂組成物を粉末状食品に含めることにより、例えば、粉末チョコレートでは、油っぽさを感じにくく食べやすくて、しかもおいしい粉末チョコレートを提供することができる。特に粉末状食品が粉末チョコレートの場合、独特の冷涼感を与え、嗜好性の高い粉末チョコレートを提供できる。
【0039】
また、上記食品は、いわゆる「ケトン食」であってもよい。「ケトン食」とは、高脂肪かつ低糖質の食事であり、糖質を制限した食事を必要な患者、例えば、小児のてんかんを治療するための食事として利用される食事である。本発明の油脂組成物を含むケトン食は、おいしさや食べやすさの点で改良されたものとなり得る。
以下、代表的な食品として、チョコレート及び粉末チョコレートについて説明する。以下、特に断らない限り、「チョコレート」は通常のチョコレートと粉末チョコレートとを含む意味とする。また、「油脂組成物」は、上述した本発明の油脂組成物や粉末油脂組成物を意味する。
【0040】
<チョコレート>
本発明において「チョコレート」とは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約(S46.3.29公正取引委員会告示第16号、変更 H2.6.22同告示第18号)」(全国チョコレート業公正取引協議会)乃至法規上の規定により限定されるものに限らず、カカオマス、ココアパウダー、食用油脂(ココアバター、植物油脂など)、糖類(砂糖、乳糖、麦芽糖、果糖など)を主原料とし、必要に応じて、乳製品、香料、乳化剤等を加え、チョコレートの製造工程(混合工程、微粒化工程、精錬工程、冷却工程など)を経て製造されるものであれば特に限定されない。例えば、本発明の「チョコレート」としては、ダークチョコレート、ブラックチョコレート、ミルクチョコレートの他に、カカオマスを使用しない、ホワイトチョコレート、カラーチョコレートも含まれる。
本発明によって得られる「チョコレート」は、好ましくはエアイン様チョコレート(含気様チョコレート)である。本発明における「エアイン様チョコレート」とは、チョコレート自体に空気を抱き込ませることなく、冷却固化するだけで製造されているにも関わらず、いわゆる含気チョコレートに類似する、軽い食感や口溶けの良さを有するチョコレートを意味する。
【0041】
<粉末チョコレート>
本発明における「粉末チョコレート」とは、上述の「チョコレート」を粉末状にしたすべての物を指す幅広い概念である。なお、「粉末チョコレート」における「粉末」とは、平均粒径が、例えば100μm以下であるものをいう。平均粒径が50μm以下であることがより好ましく、平均粒径が30μm以下であることがさらに好ましい。なお、ここでいう平均粒径は、レーザー回折散乱法(ISO133201及びISO9276-1)によって測定した値である。
【0042】
本発明のチョコレート及び粉末チョコレートには、風味物質、脂質、タンパク質、糖質、並びにその他の成分が含まれ得る。以下、それぞれの成分について説明する。
<チョコレートに含まれ得る風味物質>
本発明で言う「風味物質」としては、粉末化できるようなものであれば、特に制限なく用いることができる。例えば、ココアパウダー、抹茶パウダー、バニラパウダー、ストロベリーパウダー、バナナパウダー、マンゴーパウダー、コーヒーパウダー、粉乳(全脂、脱脂、調整等)、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、カレーパウダー等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。特に、本発明においては、ココアパウダー、抹茶パウダー、粉乳からなる群から選ばれる風味物質を少なくとも1つを用いることが好ましい。
チョコレート中の風味物質の含有量は、例えば、本発明の油脂組成物を含む最終的に得られるチョコレートの全質量を100質量%とした場合、3〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましく、7〜30質量%であることがさらに好ましい。
【0043】
<チョコレートに含まれる脂質>
本発明のチョコレートは、上記油脂組成物のほか、任意に他の脂質を含むことができる。当該脂質としては、特に食用油脂が好ましい。このような食用油脂としては、例えば、食用油、マーガリン、ファットスプレッド、及びショートニングなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を併用することができる。これら食用油脂は粉末状に加工されていることが好ましい。前記食用油脂の原料としては、例えば、ヤシ油、パーム核油、パーム油、パーム分別油(パームオレイン、パームスーパーオレイン等)、シア脂、シア分別油、サル脂、サル分別油、イリッペ脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、乳脂、ココアバター等やこれらの混合油、加工油脂等を使用することができる。
チョコレート中の他の脂質の含有量は、例えば、油脂組成物100質量%に対して、0〜100質量%であることが好ましく、0〜75質量%であることがより好ましく、0〜50質量%であることがさらに好ましい。また、他の脂質として乳脂又はココアバターを含む場合は、チョコレート中の全脂質の合計含有量に対して、乳脂又はココアバターを1〜50質量%含むことが好ましく、2〜45質量%含むことがより好ましく、3〜40質量%含むことがさらに好ましい。
【0044】
なお、本発明おいて、後述するケトン比、ケトン指数を計算する場合は、上述した配合する脂質以外に、原料に由来する脂質も計算に含まれる。例えば、一般的に、カカオマス中の油脂(ココアバター)含量は55質量%であり、ココアパウダー中の油脂(ココアバター)含量は11質量%であり、全脂粉乳中の油脂(乳脂)含量は25質量%であり、これに相当する脂質がチョコレートに含まれることになる。また、抹茶パウダーを粉末チョコレートに配合する場合、抹茶パウダーに含まれる脂質含量が約5.3質量%であるため、これに相当する脂質がチョコレートに含まれることになる。さらに、粉乳をチョコレートに配合する場合、粉乳に含まれる脂質含量が約26.2質量%であるため、これに相当する脂質がチョコレートに含まれることになる。
チョコレート中の全脂質の合計含有量は、本発明の油脂組成物を含む最終的に得られるチョコレートの全質量を100質量%とした場合、例えば、30〜99質量%であることが好ましく、40〜95質量%であることがより好ましく、55〜90質量%であることがさらに好ましい。
【0045】
<チョコレートに含まれるタンパク質>
本発明で言う「タンパク質」としては、8アミノ酸よりも大きなペプチドを含有するものであれば特に制限されない。例えば、コーングルテン、小麦グルテン、大豆タンパク質、小麦タンパク質、乳タンパク質、乳清タンパク質、食肉又は魚肉から得られる動物性タンパク質(コラーゲンを含む)、卵白、卵黄等が挙げられる。これらタンパク質は粉末状に加工されていることが好ましい。特に、ケトン食として利用する場合は、ヒトの必須アミノ酸、つまり、リジン、ロイシン、メチオニン、システインを含むことが好ましい。
なお、本発明において、後述するケトン比、ケトン指数を計算する場合、配合するタンパク質以外に、原料に由来するタンパク質も計算に含まれる。例えば、ココアパウダーをチョコレートに配合する場合、ココアパウダーに含まれるタンパク質含量が約20質量%であるため、これに相当するタンパク質がチョコレートに含まれることになる。また、抹茶パウダーをチョコレートに配合する場合、抹茶パウダーに含まれるタンパク質含量が約30.6質量%であるため、これに相当するタンパク質がチョコレートに含まれることになる。さらに、粉乳をチョコレートに配合する場合、粉乳に含まれるタンパク質含量が約25.5質量%であるため、これに相当するタンパク質がチョコレートに含まれることになる。
チョコレート中の全タンパク質の合計含有量は、本発明の油脂組成物を含む最終的に得られるチョコレートの全質量を100質量%とした場合、例えば、0〜40質量%であることが好ましく、0〜35質量%であることがより好ましく、0〜25質量%であることがさらに好ましい。
【0046】
<チョコレートに含まれる糖質>
本発明で言う「糖質」としては、特に制限されないが、例えば、グルコース、デキストリン、ラクトース、スクロース(砂糖)、ガラクトース、リボース、トレハロース、でんぷん、加工でんぷん、水飴、乳糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、還元澱粉糖化物、液糖、酵素転化水飴、異性化液糖、ショ糖結合水飴、還元糖ポリデキストロース、オリゴ糖、ソルビトール、還元乳糖、キシロース、キシリトース、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、ラフィノース等が挙げられる。これら糖質は粉末状に加工されていることが好ましい。本発明においては、チョコレート様の風味・食感を持たせるため、スクロース(砂糖)を用いることが好ましく、さらにその粉状物である、粉糖を用いることが好ましい。
なお、本発明において、後述するケトン比、ケトン指数を計算する場合、配合する糖質以外に、原料に由来する糖質も計算に含まれる。例えば、ココアパウダーを粉末チョコレートに配合する場合、ココアパウダーに含まれる糖質含量が約44.5質量%であるため、これに相当する糖質がチョコレートに含まれることになる。また、抹茶パウダーをチョコレートに配合する場合、抹茶パウダーに含まれる糖質含量が約38.5質量%であるため、これに相当する糖質がチョコレートに含まれることになる。さらに、粉乳をチョコレートに配合する場合、粉乳に含まれる糖質含量が約39.3質量%であるため、これに相当する糖質がチョコレートに含まれることになる。
チョコレートに含まれる全糖類の合計含量は、例えば、本発明の油脂組成物を含む最終的に得られるチョコレートの全質量を100質量%とした場合、好ましくは20〜60質量%であり、より好ましくは25〜55質量%であり、さらに好ましくは30〜50質量%である。特にケトン食タイプのチョコレート中の糖質の含有量は、例えば、1〜30質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることがさらに好ましい。
【0047】
<チョコレートに含まれるその他の成分>
本発明のチョコレートには、上記チョコレート原料以外に、一般にチョコレートの製造において使用される原料を任意に含むことができる。例えば、酸化防止剤、保存料、pH調整剤、着色料、甘味料、香料、乳化剤、香辛料、果実・野菜等の食品素材等を使用することができる。これらその他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができる。特に本発明において、タンパク質と糖質の合計に対する脂質の割合(質量比)が2.0以上であるチョコレートを製造する場合は、糖質の使用量を制限し、かつ風味を良くするため、特に甘味料及び/又は香料を用いることが好ましい。
【0048】
<油脂組成物の含有量>
まず、本発明の食品中の油脂組成物の含有量は、対象とする食品の種類によって異なるが、例えば、最終的に得られる食品100質量%に対し、例えば、0.1〜99質量%、好ましくは、1〜90質量%、より好ましくは、5〜85質量%、さらに好ましくは、10〜80質量%である。
例えば、本発明の食品がチョコレートである場合は、上記油脂組成物の質量とココアバターの質量の比が40:60〜99:1でチョコレートに含有される。より好ましくは、上記油脂組成物の質量とココアバターの質量の比が45:55〜97:3であり、さらに好ましくは、50:50〜95:5である。また、本発明の粉末油脂組成物は、チョコレート中の含有量が10質量%〜60質量%となるように含有させることが好ましい。また、前記含有量が、最終的に得られるチョコレート100質量%に対し、12〜55質量%であることが好ましく、15〜50質量%であることがさらに好ましい。
例えば、上記粉末油脂組成物の質量とココアバターの質量の比が40:60である場合(つまり、粉末油脂組成物に対するココアバターの割合が高い場合)は、チョコレートが固化した後、しばらくしてからエアイン様の軽い食感と口溶けの良さを有するようになるのに対して、上記粉末油脂組成物の質量とココアバターの質量の割合が99:1である場合(粉末油脂組成物に対するココアバターの割合が低い場合)は、チョコレートが固化したらすぐにエアイン様の軽い食感と口溶けの良さを有するようになる。このように粉末油脂組成物に対するココアバター割合によってエアイン様になるまでの時間が異なるので、上記のような質量比とすることが好ましい。
また、例えば、本発明の食品が粉末チョコレートである場合は、上記油脂組成物は、最終的に得られる粉末チョコレート100質量%に対する含有量が、30〜96質量%となるように含有させることが好ましい。また、前記含有量が、40〜90質量%となるようにすることが好ましく、50〜80質量%となるようにすることがさらに好ましい。粉末チョコレートの良好な風味を出すためには、前述した風味物質等を少なくとも4質量%含むことが適当であるため、本発明の粉末油脂組成物の含有量の上限は96質量%とすることが好ましい。また、本発明の粉末油脂組成物を30質量%以上であれば良好な粉末チョコレートを得ることができる。
また、本発明において、タンパク質と糖質の合計に対する脂質の割合(質量比)が2.0以上である場合は、ケトン食として利用できることになるが、この場合は、本発明の油脂組成物を、前記脂質の50質量%以上となるように含有させることが好ましい。上記油脂組成物が前記脂質の50質量%以上であれば、油っぽさを感じることもなく、食べやすくて、しかもおいしいという効果を得ることができる。より好ましくは前記脂質の60質量%以上、さらに好ましくは前記脂質の70質量%以上となるように含有させる方がよい。
【0049】
<粉末チョコレートにおける脂質、タンパク質、糖質の配合比率>
本発明における「粉末チョコレート」は、最終製品において、30〜99質量%の脂質、0〜40質量%のタンパク質、1〜30質量%の糖質であることが好ましく、40〜95質量%の脂質、0〜35質量%のタンパク質、5〜25質量%の糖質であることがより好ましく、55〜950質量%の脂質、0〜25質量%のタンパク質、5〜20質量%の糖質であることがさらに好ましい。なお、これらの質量%は、最終製品である粉末チョコレートを100質量%(乾燥質量)とした場合の数値である。
【0050】
<粉末チョコレートのエネルギー>
本発明の「粉末チョコレート」は、必要なエネルギーを簡便かつ大量に摂取できるように、比較的高いエネルギーを有することが好ましい。具体的には、粉末チョコレート100g当たり500〜850キロカロリーのエネルギーを有する。好ましくは、粉末チョコレート100g当たり600〜800キロカロリーを有する。さらに好ましくは、粉末チョコレート100g当たり700〜800キロカロリーを有する。
【0051】
<粉末チョコレートのケトン比>
本発明の「粉末チョコレート」は、ケトン食として利用できるように、タンパク質(以下「P」ともいう。)と糖質(以下「C」ともいう。)の合計に対する脂質(以下「F」ともいう。)の割合(質量比)(つまり、F/(P+C)、これを以下、ここでは「ケトン比」という。)が2.0以上であることが好ましい。具体的には、ケトン比が2.0〜6.0である。好ましくは、ケトン比が3.0〜5.5である。さらに好ましくは、ケトン比が4.0〜5.0である。一般に、ケトン比が高いほど効果があるが、ケトン食を長く続けることを考慮すれば2.0以上で始めることが効果的である。もし高い効果を望む場合は、ケトン比が3.0以上であることがより好ましく、4.0以上であることがさらに好ましい。一方、ケトン比が6.0以下であれば食べにくくなることもないので好ましい。
【0052】
<粉末チョコレートのケトン指数>
ところで、脂質が多く、炭水化物(糖質)が少ない場合に、ケトン体はエネルギーとして消費される。そこで、脂質を向ケトン物質(K)といい、逆に、炭水化物(糖質)を反ケトン物質(AK)ということがある(丸山博ほか著、「ケトン食の本」、第一出版株式会社、2010年、4頁)。そして、脂質(脂肪)は90質量%のKと10質量%のAKを含んでおり、タンパク質は46質量%のKと58質量%のAKを含んでいる(同文献)。
したがって、以下の式によって計算される、向ケトン物質(K)に対する反ケトン物質(AK)の割合(質量比)(これを以下、ここでは「ケトン指数」という。)によって、ケトン食としての有効性を示すこともある(同文献)。
K/AK=(0.9F+0.46P)/(C+0.1F+0.58P)
なお、この式のことを「Woodyattの式」という。
本発明においては、ケトン指数が1.0〜4.0であり、より好ましくは、2.0〜3.5であり、さらに好ましくは、2.5〜3.5であることが好ましい。なお、一般的には、ケトン指数が高いほど効果があるが、ケトン食を長く続けることを考慮すれば1.0以上で始めることが効果的である。また、ケトン指数が2.0よりも大きい場合に体内にケトン体が生成されるといわれているので(同文献)、2.0以上がより好ましく、2.5以上がさらに好ましい。一方、ケトン指数が4.0以下であれば食べにくくなることもないので好ましい。
【0053】
<粉末油脂組成物を含む食品の製造方法>
本発明は、また、上記粉末油脂組成物を含む食品の製造方法に関する。
具体的には、上述した
(d)溶融状態の前記油脂組成物を冷却して粉末油脂組成物を得る工程、又は
(e)固形物を粉砕して粉末油脂組成物を得る工程
の後に得られた粉末油脂組成物を食品原料に添加する工程、即ち、
(f)得られた粉末油脂組成物を食品原料に添加して前記粉末油脂組成物を含有する食品を得る工程、
を含めることができる。
【0054】
上記(f)工程において、添加方法は特に制限されないが、例えば、チョコレートの場合、混合工程時に添加される。この際、混合しやすさの観点から、一旦、粉末状の油脂組成物を一旦溶かしてから加えるが、粉末状のまま加えることもある。一旦溶かす場合は、融点以上に加温し完全に溶解したものを用いる。食品中に粉末油脂組成物が十分に均一になる時間、混合することが好ましい。チョコレート(粉末以外)の場合は、ココアバター、砂糖などの食品原料がある程度必要となる。一方、粉末チョコレートの場合は、風味物質や香料などの食品原料が必要となる。特に、ケトン食を意図する場合は、脂質の量を多くしなければならず、逆に糖質の量は少なくしなくてはならないから、甘味料などを用いることもある。食品原料の添加量は、粉末油脂組成物の添加量に応じて最適な値となるように当業者であれば容易に調整することができる。
【0055】
以下、チョコレート及び粉末チョコレートを例にとって説明する。
<チョコレート(粉末以外)の製造方法>
本発明の粉末油脂組成物を含有するチョコレートは、従来公知の方法により製造することができる。本発明のチョコレートは、例えば、油脂、カカオ成分、糖類、乳製品、乳化剤等を原料として、チョコレート中の最終的な油脂含量が25〜65質量%となるように、上記粉末油脂組成物を加えて、混合工程、微粒化工程(リファイニング)、精練工程(コンチング)、冷却工程等を経て製造することができる。特に、本発明のチョコレートは、ノンテンパーで冷却固化させるので、テンパリング処理は不要である。なお、通常のチョコレートは、テンパリング処理を行うことが好ましい。
【0056】
<粉末チョコレートの製造方法>
本発明の粉末油脂組成物を含有する粉末チョコレートは、従前の方法と異なり、上述したチョコレート原料(粉末油脂組成物、風味物質、脂質、糖質、タンパク質又はその他の成分等)を単に混ぜ合わせることで簡便に製造することができる。これは、本発明により、これまでにない油脂100%であって融点の低い粉末油脂組成物が得られたことによる。ここで、粉末油脂組成物の「融点が低い」とは、23〜45℃、より好ましくは25〜35℃、さらに好ましくは27〜30℃を意味する。これにより、粉末チョコレートをはじめ、様々な食品が簡便に製造できるようになる。その中で、例えば、脂質の多いケトジェニックな食品(ケトン食)も簡便に製造できるようになる。なお、後述するように、既存の油脂100%の粉末油脂は一般に融点が高く、このような粉末油脂を用いて、粉末チョコレートを製造することはできない。例えば、本発明の粉末油脂組成物に、ココアパウダーなどの風味物質、砂糖などの糖質、さらに必要に応じて、香料、甘味料を添加して、均一となるように混ぜ合わせることにより製造できる。前記混ぜ合わせに当たっては、スパチュラ等を用いて手で簡単に行うこともできるが、例えば、大量生産する場合は、上記チョコレート原料をVブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、流動層ミキサーなどの機械を用いて混ぜ合わせることもできる。
【0057】
<ケトン食療法>
「ケトン食療法」は、カロリーを減少させることなく、飢餓状態を模倣するように開発されたものであり、ヒトにおけるてんかん(癲癇)を治療するためによく用いられてきた。ケトン食療法がてんかんの治療に有効であるメカニズムはいまだに定かではないが、現象としてはかなり古く(紀元前5世紀)から知られている。例えば、ある学説では、糖質及びタンパク質を制限すると、インシュリンのシグナル伝達が減少し、その結果、脂肪酸の利用が促進され、ケトン体の生産が誘導されると考えられている。これにより、血中ケトン体の濃度が高まり、ケトン症状態を長期にわたり維持することができる。これがケトン食療法の特徴である。
【0058】
ケトン食療法では、大量の脂質を摂取するので、十分なカロリーが得られるが、インシュリンのシグナル伝達は低いので、これにより一種の飢餓状態が形成される。また、インシュリンのシグナル伝達が低いことによって、非脂肪細胞組織におけるリポタンパク質リパーゼの活性が高まり、遊離の脂肪酸の摂取、及び、筋肉や肝臓組織における脂肪酸の酸化が刺激される。肝臓における脂肪酸の酸化によって、高レベルのアセチルCoAが生じ、これがケトン体の生成に利用される。肝臓ではケトン体を代謝する酵素がないため、ケトン体は血中に放出され、抹消組織の細胞で利用されることになる。さらに、血中ケトン体濃度が高まると、グルコースの利用が減少し、低いインシュリンシグナル伝達の状態が持続される。
【0059】
このような「ケトン食療法」によって、ある種の疾患の治療が可能となる。例えば、突発性てんかんにおける発作、体重の減少、脅迫障害、分離不安などの精神的問題、疲労や衰弱などの筋肉代謝、インスリン分泌又は欠乏障害による2型糖尿病などの治療が、その候補に挙げられる。最近、ケトン体が糖質に代わって脳の活動のエネルギー源となることが見出され、ある種の神経変性疾患、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病などの治療にも有効である可能性が出てきた。また、癌細胞がエネルギー源として糖質を大量に利用していることから、糖質を制限した食事を行い、専らケトン体をエネルギー源として利用することで、ケトン体を有効利用できない癌細胞を兵糧攻めにするような癌の治療方法も考案されている。
【0060】
したがって、本発明の「チョコレート」及び「粉末チョコレート」などの(粉末状)食品は、てんかん患者における発作の頻度を改善し、発作の重篤度を緩和する上で有効なケトン食となり得る。特に、先天性の代謝異常を有さない、てんかん患者に有効であると考えられる。成長遅延、代謝性アシドーシス、免疫機能の低下、腎臓の問題及び便秘等の望ましくない副作用を引き起こす可能性も低いと考えられる。
また、BMIが25を超える成人その他の肥満の人、特に、メタボリック症候群又はインスリン抵抗性に苦しむ肥満人用の体重調節、体重管理計画に適用される食事の1要素としても有効に利用できる。さらに、老人性認知症やアルツハイマー型認知症に苦しむ患者や、ある種の癌に苦しむ患者に向けた治療用の食品としても有効であろうし、これらの疾患を予防するためにも効果を発揮することが期待される。
【実施例】
【0061】
次に本発明を参考例及び実施例により詳細に説明する。
[分析方法]
・トリグリセリド組成
ガスクロマトグラフィー分析条件
DB1-ht(0.32mm×0.1μm×5m)Agilent Technologies社(123-1131)
注入量 :1.0μL
注入口 :370℃
検出器 :370℃
スプリット比 :50/1 35.1kPa コンスタントプレッシャー
カラムCT :200℃(0min hold)〜(15℃/min)〜370℃(4min hold)
【0062】
・ゆるめ嵩密度
実施例等で得られた粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度(g/cm
3)は、内径15mm×25mLのメスシリンダーに、当該メスシリンダーの上部開口端から2cm程度上方から粉末油脂組成物を落下させて疎充填し、充填された質量(g)の測定と容量(mL)の読み取りを行い、mL当たりの当該粉末油脂組成物の質量(g)を算出することで求めた。
・結晶(顕微鏡写真)
3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE-8800(株式会社キーエンス製)にて得られた油脂組成物の結晶の撮影を行った。得られた顕微鏡写真を
図4(実施例11)及び
図5(比較例1)に示す。
・平均粒径
粒度分布測定装置(日機装株式会社製 Microtrac MT3300ExII)でレーザー回折散乱法(ISO133201,ISO9276-1)に基づいて測定した。
【0063】
(製造例1):XXX型トリグリセリド(トリカプリン)の合成方法
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた3000mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)288.9g(3.14mol)とカプリン酸{Palmac99−10(アシッドケム社製)}1911.2g(11.1mol;グリセリン1モルに対して3.5モル)とを仕込んだ。窒素気流下、180℃で2時間反応をさせた後、250℃に昇温し10時間反応させた。過剰のカプリン酸を170℃、400Pa(3Torr)の減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物(トリカプリン)を1505g得た。
(製造例2):XXX型トリグリセリド(トリラウリン)の合成方法
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた3000mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)288.9g(3.14mol)とラウリン酸{Palmac98−12(アシッドケム社製)}2023.0g(10.1mol;グリセリン1モルに対して3.2モル)とを仕込んだ。窒素気流下、180℃で2時間反応をさせた後、250℃に昇温し12時間反応させた。過剰のラウリン酸を200℃、400Pa(3Torr)の減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物(トリラウリン)を1607g得た。
(製造例3)X2Y型(XXX:X2Y=97:3)トリグリセリドの合成方法
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.9g(0.488mol)と、ステアリン酸{Palmac98−18(アシッドケム社製)}7.7g(0.027mol)とカプリン酸{Palmac99−10(アシッドケム社製)}168.1g(0.976mol)を仕込んだ(グリセリン1モルに対して、ステアリン酸とカプリン酸の総モル数;2.1モル)。ガスクロマトグラフィーによって遊離のステアリン酸が認められなくなるまで、窒素気流下、230℃の温度で5時間反応させた。次いで、カプリン酸114.9g(0.667mol)を加え250℃の温度で、さらに10時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、667Pa(5Torr)の減圧下にて留去した後、脱色、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状のトリグリセリド混合物(XXX型トリグリセリド:X2Y型トリグリセリド(質量比)=97:3)を182gで得た。
【0064】
(実施例1):x=10、y=18、調製工程I、(c2)テンパリング法
1位〜3位にカプリン酸残基(炭素数10)を有するトリグリセリド(XXX型、トリカプリン、日清オイリオグループ(株)製)97gに1位〜3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(YYY型、トリステアリン、東京化成工業(株)製)3gを混合し、アルカリゲネス エスピー(Alcaligenes sp.)由来の粉末酵素であるリパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で12時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た(XXX型:93.7質量%、X2Y型:5.0質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、10℃恒温槽にて1時間冷却した後、20℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径141μm)を得た。
(実施例2):x=10、y=18、調製工程I、(c2)テンパリング法
1位〜3位にカプリン酸残基(炭素数10)を有するトリグリセリド(XXX型、トリカプリン、日清オイリオグループ(株)製)98gに1位〜3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(YYY型、トリステアリン、(東京化成工業(株)製)2gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で12時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た(XXX型:95.8質量%、X2Y型:2.6質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、10℃恒温槽にて1時間冷却した後、20℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径193μm)。
【0065】
(実施例3):x=10、y=16、調製工程I、(c2)テンパリング法
1位〜3位にカプリン酸残基(炭素数10)を有するトリグリセリド(XXX型、トリカプリン、日清オイリオグループ(株)製)98gに1位〜3位にパルミチン酸残基(炭素数16)を有するトリグリセリド(YYY型、トリパルミチン、東京化成工業(株)製)2gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で12時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た(XXX型:95.1質量%、X2Y型:4.0質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、10℃恒温槽にて1時間冷却した後、20℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径166μm)。
(実施例4):x=10、y=14、調製工程I、(c2)テンパリング法
1位〜3位にカプリン酸残基(炭素数10)を有するトリグリセリド(XXX型、トリカプリン、日清オイリオグループ(株)製)96gに1位〜3位にミリスチン酸残基(炭素数14)を有するトリグリセリド(YYY型、トリミリスチン、東京化成工業(株)製)4gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で12時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た(XXX型:91.4質量%、X2Y型:7.6質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、10℃恒温槽にて1時間冷却した後、20℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.4g/cm
3、平均粒径165μm)。
【0066】
(実施例5):x=12、y=18、調製工程I
1位〜3位にラウリン酸残基(炭素数12)を有するトリグリセリド(XXX型、トリラウリン、日清オイリオグループ(株)製)97gに1位〜3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(YYY型、トリステアリン、東京化成工業(株)製)3gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で12時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た(XXX型:93.4質量%、X2Y型:5.3質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、35℃恒温槽にて24時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.4g/cm
3、平均粒径218μm)。
【0067】
(実施例6):x=12、y=16、調製工程I
1位〜3位にラウリン酸残基(炭素数12)を有するトリグリセリド(XXX型、トリラウリン、日清オイリオグループ(株)製)96gに1位〜3位にパルミチン酸残基(炭素数16)を有するトリグリセリド(YYY型、トリパルミチン、東京化成工業(株)製)4gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で12時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た(XXX型:90.4質量%、X2Y型:8.8質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、35℃恒温槽にて24時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.4g/cm
3、平均粒径192μm)。
(実施例7):x=14、y=18、調製工程I
1位〜3位にミリスチン酸残基(炭素数14)を有するトリグリセリド(XXX型、トリミリスチン、東京化成工業(株)製)97gに1位〜3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(YYY型、トリステアリン、東京化成工業(株)製)3gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で12時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た(XXX型:92.6質量%、X2Y型:6.1質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、47℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.4g/cm
3、平均粒径159μm)。
【0068】
(実施例8):x=14、y=22、調製工程I
1位〜3位にミリスチン酸残基(炭素数14)を有するトリグリセリド(XXX型、トリミリスチン、東京化成工業(株)製)99gに1位〜3位にベヘニン酸残基(炭素数22)を有するトリグリセリド(YYY型、トリベヘニン、東京化成工業(株)製)1gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で12時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た(XXX型:97.7質量%、X2Y型:1.4質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、44℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.4g/cm
3、平均粒径203μm)。
(実施例9):x=16、y=18、調製工程I
1位〜3位にパルミチン酸残基(炭素数16)を有するトリグリセリド(XXX型、トリパルミチン、東京化成工業(株)製)99gに1位〜3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(YYY型、トリステアリン、東京化成工業(株)製)1gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で12時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た(XXX型:89.4質量%、X2Y型:6.2質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、55℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.4g/cm
3、平均粒径336μm)。
【0069】
(実施例10):x=16、y=22、調製工程I
1位〜3位にパルミチン酸残基(炭素数16)を有するトリグリセリド(XXX型、トリパルミチン、東京化成工業(株)製)99gに1位〜3位にベヘニン酸残基(炭素数22)を有するトリグリセリド(YYY型、トリベヘニン、東京化成工業(株)製)1gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で12時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た(XXX型:88.0質量%、X2Y型:6.5質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、55℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.4g/cm
3、平均粒径281μm)。
【0070】
(実施例11):x=10、y=12〜18、調製工程I、(c2)テンパリング法
1位〜3位にカプリン酸残基(炭素数10)を有するトリグリセリド(XXX型、トリカプリン、日清オイリオグループ(株)製)95gにパーム核ステアリン極度硬化油(YYY型トリグリセリドを85質量%含有、日清オイリオグループ(株)製)5gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で12時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た(XXX型:89.0質量%、X2Y型:9.8質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、10℃恒温槽にて1時間冷却した後、20℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径152μm)。
(実施例12):x=10、y=16〜22、調製工程I、(c2)テンパリング法
1位〜3位にカプリン酸残基(炭素数10)を有するトリグリセリド(XXX型、トリカプリン、日清オイリオグループ(株)製)97gに菜種極度硬化油(YYY型トリグリセリドを100質量%含有、横関油脂工業(株)製)3gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で12時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た(XXX型:94.0質量%、X2Y型:4.6質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、10℃恒温槽にて1時間冷却した後、20℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径181μm)。
【0071】
(実施例13):x=10、y=16〜22、調製工程I、(c2)テンパリング法
1位〜3位にカプリン酸残基(炭素数10)を有するトリグリセリド(XXX型、トリカプリン、日清オイリオグループ(株)製)97gにハイエルシン菜種極度硬化油(YYY型トリグリセリドを100質量%含有、横関油脂工業(株)製)3gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で12時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た(XXX型:93.9質量%、X2Y型:4.9質量%)。得られた反応物を80℃にて 0.5 時間維持して完全に融解し、10℃恒温槽にて1時間冷却した後、20℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径177μm)。
(実施例14):x=10、y=12〜18、調製工程I、(c2)テンパリング法
1位〜3位にカプリン酸残基(炭素数10)を有するトリグリセリド(XXX型、トリカプリン、日清オイリオグループ(株)製)475gにパーム核ステアリン極度硬化油(YYY型トリグリセリドを85質量%含有、日清オイリオグループ(株)製)25gを混合し、触媒ナトリウムメトキシドを原料油脂に対して0.2質量%添加した後、減圧下(300Pa)、100℃で0.5時間攪拌し反応させた。飽和クエン酸水溶液にて中和、水洗により触媒を除去した後、常法に従い脱色脱臭し、反応物400gを得た(XXX型:88.3質量%、X2Y型:10.4質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、10℃恒温槽にて1時間冷却した後、20℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径139μm)。
【0072】
(実施例15):x=10、y=18、調製工程II、(c2)テンパリング法
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.9g(0.488mol)と、ステアリン酸(Palmac98−18(アシッドケム社製))7.7g(0.027mol)とカプリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))168.1g(0.976mol)を仕込み、ガスクロマトグラフィによって遊離のステアリン酸が認められなくなるまで、窒素気流下、230℃の温度にて5時間反応を行った。次いで、カプリン酸114.9g(0.667mol)を加え、250℃の温度で、さらに10時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、667Pa(5Torr)の減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を182g得た(XXX型:93.6質量%、X2Y型:5.2質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、10℃恒温槽にて1時間冷却した後、20℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径180μm)。
(実施例16):x=10、y=12〜18、調製工程I、(c1)シーディング法
1位〜3位にカプリン酸残基(炭素数10)を有するトリグリセリド(XXX型、トリカプリン、日清オイリオグループ(株)製)475gにパーム核ステアリン極度硬化油(YYY型トリグリセリドを85質量%含有、日清オイリオグループ(株)製)25gを混合し、触媒ナトリウムメトキシドを原料油脂に対して0.2質量%添加した後、減圧下、100℃で0.5時間攪拌し反応させた。飽和クエン酸水溶液にて中和、水洗により触媒を除去した後、脱色脱臭し、反応物400gを得た(XXX型:88.3質量%、X2Y型:10.4質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、27℃恒温槽にて品温が27℃になるまで冷却した後、上記トリカプリン(日清オイリオグループ(株)製)を液体窒素で冷却固化させ、凍結粉砕機(アズワン株式会社製)で粉砕した油脂粉末を原料油脂に対して0.5質量%添加し、20℃恒温槽にて6時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径137μm)。
【0073】
(実施例17):x=10、y=12〜18、調製工程I、(c1)シーディング法
1位〜3位にカプリン酸残基(炭素数10)を有するトリグリセリド(XXX型、トリカプリン、日清オイリオグループ(株)製)475gにパーム核ステアリン極度硬化油(YYY型トリグリセリドを85質量%含有、日清オイリオグループ(株)製)25gを混合し、触媒ナトリウムメトキシドを原料油脂に対して0.2質量%添加した後、減圧下、100℃で0.5時間攪拌し反応させた。飽和クエン酸水溶液にて中和、水洗により触媒を除去した後、脱色脱臭し、反応物400gを得た(XXX型:88.3質量%、X2Y型:10.4質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、27℃恒温槽にて品温が27℃になるまで冷却した後、実施例16で得られた粉末状の結晶組成物を原料油脂に対して0.5質量%添加し、20℃恒温槽にて6時間静置静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径160μm)。
(実施例18):x=10、y=12〜18、調製工程I、(c1)シーディング法
1位〜3位にカプリン酸残基(炭素数10)を有するトリグリセリド(XXX型、トリカプリン、日清オイリオグループ(株)製)95gにパーム核ステアリン極度硬化油(YYY型トリグリセリドを85質量%含有、日清オイリオグループ(株)製)5gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で24時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た。(XXX型:89.0質量%、X2Y型:9.8質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、27℃恒温槽にて品温が27℃になるまで冷却した後、上記トリカプリン(日清オイリオグループ(株)製)を液体窒素で冷却固化させ、凍結粉砕機(アズワン株式会社製)で粉砕した油脂粉末を原料油脂に対して0.5質量%添加し、20℃恒温槽にて6時間静置静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径148μm)。
【0074】
(実施例19):x=10、y=12〜18、調製工程I、(c1)シーディング法
1位〜3位にカプリン酸残基(炭素数10)を有するトリグリセリド(XXX型、トリカプリン、日清オイリオグループ(株)製)95gにパーム核ステアリン極度硬化油(YYY型トリグリセリドを85質量%含有、日清オイリオグループ(株)製)5gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で12時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た(XXX型:89.0質量%、X2Y型:9.8質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、27℃恒温槽にて品温が27℃になるまで冷却した後、上記、実施例18で得られた粉末状の結晶組成物を原料油脂に対して0.5質量%添加し、20℃恒温槽にて6時間静置静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径153μm)。
(実施例20):x=10、y=12〜18、調製工程III、(c2)テンパリング法
トリカプリン(日清オイリオグループ(株)製)80gにパーム核ステアリン極度硬化油(YYY型トリグリセリドを85質量%含有、日清オイリオグループ(株)製)20gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で12時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た(XXX型:57.8質量%、X2Y型:39.6質量%)。得られた反応物50gとトリカプリン(日清オイリオグループ(株)製)150gを混合し、原料油脂とした(XXX型:90.4質量%、X2Y型:8.4質量%)。原料油脂を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、10℃恒温槽にて1時間冷却した後、20℃恒温槽にて12時間静置したところ、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで、粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径211μm)。
【0075】
(実施例21):x=10、y=12〜18、調製工程III、(c1)シーディング法
トリカプリン(日清オイリオグループ(株)製)80gにパーム核ステアリン極度硬化油(YYY型トリグリセリドを85質量%含有、日清オイリオグループ(株)製)20gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で12時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た(XXX型:57.8質量%、X2Y型:39.6質量%)。得られた反応物50gとトリカプリン(日清オイリオグループ(株)製)150gを混合し、原料油脂とした(XXX型:90.4質量%、X2Y型:8.4質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、27℃恒温槽にて品温が27℃になるまで冷却した後、トリカプリン(日清オイリオグループ(株)製)を液体窒素で冷却固化させ、凍結粉砕機(アズワン株式会社製)で粉砕した油脂粉末を原料油脂に対して0.5質量%添加し、20℃恒温槽にて6時間静置したところ、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径199μm)。
【0076】
(実施例22):x=12、y=18、調製工程I、(c2)テンパリング法
1位〜3位にラウリン酸残基(炭素数12)を有するトリグリセリド(XXX型、トリラウリン、日清オイリオグループ(株)製)96gに1位〜3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(YYY型、トリステアリン、東京化成工業(株)製)4gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で12時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た(XXX型:91.0質量%、X2Y型:7.3質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、28℃恒温槽にて0.5時間冷却した後、35℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径238μm)。
【0077】
(実施例23):x=12、y=18、調製工程I、(c2)テンパリング法
1位〜3位にラウリン酸残基(炭素数12)を有するトリグリセリド(XXX型、トリラウリン、日清オイリオグループ(株)製)96gに1位〜3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(YYY型、トリステアリン、東京化成工業(株)製)4gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で12時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た(XXX型:91.0質量%、X2Y型:7.3質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、28℃恒温槽にて1時間冷却した後、35℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径178μm)。
【0078】
(実施例24):x=12、y=18、調製工程I、(c1)シーディング法
1位〜3位にラウリン酸残基(炭素数12)を有するトリグリセリド(XXX型、トリラウリン、日清オイリオグループ(株)製)96gに1位〜3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(YYY型、トリステアリン、東京化成工業(株)製)4gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で12時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た(XXX型:91.0質量%、X2Y型:7.3質量%)。得られた反応物を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、39℃恒温槽にて品温が39℃になるまで冷却した後、実施例22で得られた油脂粉末を原料油脂に対して0.5質量%添加し、35℃恒温槽にて6時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径157μm)。
【0079】
(実施例25):x=12、y=18、調製工程I、(c1)シーディング法
1位〜3位にラウリン酸残基(炭素数12)を有するトリグリセリド(XXX型、トリラウリン、日清オイリオグループ(株)製)97gに1位〜3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(YYY型、トリステアリン、東京化成工業(株)製)3gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で12時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物A99.5gを得た(XXX型:93.2質量%、X2Y型:5.3質量%)。反応物Aとトリカプリン(日清オイリオグループ(株)製)を70:30にて混合した後、80℃にて0.5時間維持し完全に融解し、39℃恒温槽にて品温が39℃になるまで冷却した後、実施例22で得られた油脂粉末を原料油脂に対して0.5質量%添加し、34℃恒温槽にて6時間静置し体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで、粉末状の結晶組成物を得た(XXX型:66.1質量%、X2Y:3.6質量%)(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径293μm)。
【0080】
(実施例26)x=10、y=18、調製工程III、(c2)テンパリング法
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.1g(0.479mol)と、ステアリン酸(Palmac98−18(アシッドケム社製))25.9g(0.091mol)とカプリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))266.0g(1.544mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を245g得た(XXX型:80.6質量%、X2Y型:17.3質量%)。得られた反応物60gとトリカプリン(日清オイリオグループ株式会社製)140gを混合し原料油脂とした(XXX型:94.0質量%、X2Y型:5.2質量%)。原料油脂を15℃恒温槽にて0.2時間冷却した後、20℃恒温槽にて75時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径133μm)。
【0081】
(実施例27)x=10、y=18、調製工程III
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.1g(0.479mol)と、ステアリン酸(Palmac98−18(アシッドケム社製))25.9g(0.091mol)とカプリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))266.0g(1.544mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を245g得た(XXX型:80.6質量%、X2Y型:17.3質量%)。得られた反応物60gとトリカプリン(日清オイリオグループ株式会社製)140gを混合し原料油脂とした(XXX型:94.0質量%、X2Y型:5.2質量%)。原料油脂を60℃恒温槽にて品温が60℃になるまで調温した後、20℃恒温槽にて140時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径101μm)。
【0082】
(実施例28)x=10、y=18、調製工程III、(c3)予備冷却法
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.1g(0.479mol)と、ステアリン酸(Palmac98−18(アシッドケム社製))25.9g(0.091mol)とカプリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))266.0g(1.544mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を245g得た(XXX型:80.6質量%、X2Y型:17.3質量%)。得られた反応物60gとトリカプリン(日清オイリオグループ株式会社製)140gを混合し原料油脂とした(XXX型:94.0質量%、X2Y型:5.2質量%)。原料油脂を40℃恒温槽にて品温が40℃になるまで調温した後、20℃恒温槽にて60時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径122μm)。
【0083】
(実施例29)x=10、y=18、調製工程III、(c3)予備冷却法
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.1g(0.479mol)と、ステアリン酸(Palmac98−18(アシッドケム社製))25.9g(0.091mol)とカプリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))266.0g(1.544mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を245g得た(XXX型:80.6質量%、X2Y型:17.3質量%)。得られた反応物60gとトリカプリン(日清オイリオグループ株式会社製)140gを混合し原料油脂とした(XXX型:94.0質量%、X2Y型:5.2質量%)。原料油脂を27℃恒温槽にて品温が27℃になるまで調温した後、20℃恒温槽にて24時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径102μm)。
【0084】
(実施例30)x=10、y=18、調製工程III、(c1)シーディング法
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.1g(0.479mol)と、ステアリン酸(Palmac98−18(アシッドケム社製))25.9g(0.091mol)とカプリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))266.0g(1.544mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を245g得た(XXX型:80.6質量%、X2Y型:17.3質量%)。得られた反応物18.5gとトリカプリン(日清オイリオグループ株式会社製)181.5gを混合し原料油脂とした(XXX型:97.7質量%、X2Y型:1.6質量%)。原料油脂を27℃恒温槽にて品温が27℃になるまで冷却した後、上記トリカプリン(日清オイリオグループ(株)製)を液体窒素で冷却固化させ、凍結粉砕機(アズワン株式会社製)で粉砕した油脂粉末を原料油脂に対して0.1質量%添加し、26℃恒温槽にて6時間静置静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.2g/cm
3、平均粒径89μm)
【0085】
(実施例31)x=10、y=18、調製工程III、(c1)シーディング法
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.1g(0.479mol)と、ステアリン酸(Palmac98−18(アシッドケム社製))25.9g(0.091mol)とカプリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))266.0g(1.544mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を245g得た(XXX型:80.6質量%、X2Y型:17.3質量%)。得られた反応物28gとトリカプリン(日清オイリオグループ株式会社製)172gを混合し原料油脂とした(XXX型:96.8質量%、X2Y型:2.4質量%)。原料油脂を27℃恒温槽にて品温が27℃になるまで冷却した後、上記トリカプリン(日清オイリオグループ(株)製)を液体窒素で冷却固化させ、凍結粉砕機(アズワン株式会社製)で粉砕した油脂粉末を原料油脂に対して0.1質量%添加し、23℃恒温槽にて6時間静置静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径97μm)
【0086】
(実施例32)x=10、y=18、調製工程III、(c1)シーディング法
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.1g(0.479mol)と、ステアリン酸(Palmac98−18(アシッドケム社製))25.9g(0.091mol)とカプリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))266.0g(1.544mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を245g得た(XXX型:80.6質量%、X2Y型:17.3質量%)。得られた反応物112gとトリカプリン(日清オイリオグループ株式会社製)88gを混合し原料油脂とした(XXX型:89.1質量%、X2Y型:9.7質量%)。原料油脂を27℃恒温槽にて品温が27℃になるまで冷却した後、上記トリカプリン(日清オイリオグループ(株)製)を液体窒素で冷却固化させ、凍結粉砕機(アズワン株式会社製)で粉砕した油脂粉末を原料油脂に対して0.1質量%添加し、19℃恒温槽にて6時間静置静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径167μm)
【0087】
(実施例33)x=10、y=18、調製工程III、(c1)シーディング法
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.1g(0.479mol)と、ステアリン酸(Palmac98−18(アシッドケム社製))25.9g(0.091mol)とカプリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))266.0g(1.544mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を245g得た(XXX型:80.6質量%、X2Y型:17.3質量%)。得られた反応物60gとトリカプリン(日清オイリオグループ株式会社製)140gを混合し原料油脂とした(XXX型:94.0質量%、X2Y型:5.2質量%)。原料油脂を27℃恒温槽にて品温が27℃になるまで冷却した後、実施例29で得られた粉末状の結晶組成物を原料油脂に対して0.1質量%添加し、16℃恒温槽にて6時間静置静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径185μm)
【0088】
(実施例34)x=10、y=14、調製工程III、(c1)シーディング法
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.4g(0.482mol)と、ミリスチン酸(Palmac98−14(アシッドケム社製))25.6g(0.112mol)とカプリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))265.6g(1.541mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を186g得た(XXX型:80.6質量%、X2Y型:17.0質量%)。得られた反応物80gとトリカプリン(日清オイリオグループ株式会社製)120gを混合し原料油脂とした(XXX型:91.9質量%、X2Y型:6.8質量%)。原料油脂を27℃恒温槽にて品温が27℃になるまで冷却した後、上記トリカプリン(日清オイリオグループ(株)製)を液体窒素で冷却固化させ、凍結粉砕機(アズワン株式会社製)で粉砕した油脂粉末を原料油脂に対して0.1質量%添加し、20℃恒温槽にて6時間静置静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.2g/cm
3、平均粒径75μm)
【0089】
(実施例35)x=10、y=14、調製工程III、(c1)シーディング法
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.4g(0.482mol)と、ミリスチン酸(Palmac98−14(アシッドケム社製))25.6g(0.112mol)とカプリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))265.6g(1.541mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を186g得た(XXX型:80.6質量%、X2Y型:17.0質量%)。得られた反応物80gとトリカプリン(日清オイリオグループ株式会社製)120gを混合し原料油脂とした(XXX型:91.9質量%、X2Y型:6.8質量%)。原料油脂を27℃恒温槽にて品温が27℃になるまで冷却した後、実施例34で得られた粉末状の結晶組成物を原料油脂に対して0.1質量%添加し、14℃恒温槽にて6時間静置静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径174μm)
【0090】
(実施例36)x=10、y=14、調製工程III、(c1)シーディング法
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.4g(0.482mol)と、ミリスチン酸(Palmac98−14(アシッドケム社製))25.6g(0.112mol)とカプリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))265.6g(1.541mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を186g得た(XXX型:80.6質量%、X2Y型:17.0質量%)。得られた反応物146gとトリカプリン(日清オイリオグループ株式会社製)54gを混合し原料油脂とした(XXX型:86.1質量%、X2Y型:12.4質量%)。原料油脂を27℃恒温槽にて品温が27℃になるまで冷却した後、上記トリカプリン(日清オイリオグループ(株)製)を液体窒素で冷却固化させ、凍結粉砕機(アズワン株式会社製)で粉砕した油脂粉末を原料油脂に対して0.1質量%添加し、20℃恒温槽にて6時間静置静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.4g/cm
3、平均粒径199μm)
【0091】
(実施例37)x=10、y=14、調製工程III、(c1)シーディング法
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.4g(0.482mol)と、ミリスチン酸(Palmac98−14(アシッドケム社製))25.6g(0.112mol)とカプリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))265.6g(1.541mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を186g得た(XXX型:80.6質量%、X2Y型:17.0質量%)。得られた反応物59gとトリカプリン(日清オイリオグループ株式会社製)141gを混合し原料油脂とした(XXX型:93.8質量%、X2Y型:5.0質量%)。原料油脂を27℃恒温槽にて品温が27℃になるまで冷却した後、上記トリカプリン(日清オイリオグループ(株)製)を液体窒素で冷却固化させ、凍結粉砕機(アズワン株式会社製)で粉砕した油脂粉末を原料油脂に対して0.1質量%添加し、23℃恒温槽にて6時間静置静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径109μm)
【0092】
(実施例38)x=10、y=14、調製工程III、(c1)シーディング法
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.4g(0.482mol)と、ミリスチン酸(Palmac98−14(アシッドケム社製))25.6g(0.112mol)とカプリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))265.6g(1.541mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を186g得た(XXX型:80.6質量%、X2Y型:17.0質量%)。得られた反応物14gとトリカプリン(日清オイリオグループ株式会社製)186gを混合し原料油脂とした(XXX型:97.7質量%、X2Y型:1.2質量%)。原料油脂を27℃恒温槽にて品温が27℃になるまで冷却した後、上記トリカプリン(日清オイリオグループ(株)製)を液体窒素で冷却固化させ、凍結粉砕機(アズワン株式会社製)で粉砕した油脂粉末を原料油脂に対して0.1質量%添加し、26℃恒温槽にて6時間静置静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.2g/cm
3、平均粒径87μm)
【0093】
(比較例1)
1位〜3位にカプリン酸残基(炭素数10)を有するトリグリセリド(XXX型、トリカプリン、日清オイリオグループ(株)製)100gを80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、10℃恒温槽にて1時間冷却した後、20℃恒温槽にて12時間静置したところ、完全に固化し、粉末状の結晶組成物には至らなかった。
(比較例2)
1位〜3位にカプリン酸残基(炭素数10)を有するトリグリセリド(XXX型、トリカプリン、日清オイリオグループ(株)製)100gを80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、20℃恒温槽にて12時間静置したところ、完全に固化し、粉末状の結晶組成物には至らなかった。
(比較例3)
1位〜3位にカプリン酸残基(炭素数10)を有するトリグリセリド(XXX型、トリカプリン、日清オイリオグループ(株)製)97gにトリステアリン(東京化成工業(株)製)3gを混合した。混合した油脂を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、10℃恒温槽にて1時間冷却した後、20℃恒温槽にて12時間静置したところ、完全に固化し、粉末状の結晶組成物には至らなかった。
(比較例4)
トリカプリン(日清オイリオグループ(株)製)80gにパーム核ステアリン極度硬化油(YYY型トリグリセリドを85質量%含有、日清オイリオグループ(株)製)20gを混合し、リパーゼQLM(名糖産業(株)製)を原料油脂に対して1質量%添加し、80℃で24時間撹拌反応させた。70℃程度で減圧濾過(ADVANTEC製FILTER PAPER使用)により粉末酵素を除去し、反応物99.5gを得た(XXX型:57.8質量%、X2Y型:39.6質量%)。得られた反応物を10℃恒温槽にて1時間冷却した後、20℃恒温槽にて24時間静置したところ、完全には固化せず、粉末状の結晶組成物には至らなかった。
【0094】
上記実施例及び比較例の結果を表1にまとめる。
【表1】
【0095】
[食品の実施例]
次に、食品に関する実施例および比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。また。以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。
【0096】
<原料油脂>
粉末油脂組成物A(融点約28℃):
〔x=10、y=18、テンパリング法〕
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.1g(0.479mol)と、ステアリン酸(Palmac98−18(アシッドケム社製))25.9g(0.091mol)とカプリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))266.0g(1.544mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を245g得た(XXX型:80.6質量%、X2Y型:17.3質量%)。得られた反応物60gとトリカプリン(日清オイリオグループ株式会社製)140gを混合し原料油脂とした(XXX型:94.0質量%、X2Y型:5.2質量%)。原料油脂を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、10℃恒温槽にて1時間冷却した後、20℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことで粉末状の結晶組成物を得た(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm
3、平均粒径116μm)。このようにして製造した粉末油脂組成物Aを以下の実施例で用いた。
【0097】
<その他の原材料>
下記実施例においては、市販されている、ココアバター(大東カカオ株式会社製)、ココアパウダー(ココアパウダーDF500:大東カカオ株式会社製)、粉糖(MGP粉糖:株式会社徳倉製)、チョコレート香料(チョコレートコートンIL36882:小川香料株式会社製)、甘味料A(ミラスィーNK:DSP五協フード&ケミカル株式会社製)、甘味料B(スクラロース:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)、抹茶パウダー(京都抹茶パウダー(若草):株式会社クオカプランニング製)、抹茶香料(マッチャコートンIL36883:小川香料株式会社製)、粉乳(全脂粉乳:よつば乳業株式会社製)、レシチン(日清オイリオグループ株式会社製)、バニラフレーバー(Givaudan社製)、カカオマス(大東カカオ株式会社製)、砂糖(株式会社徳倉製)を用いた。
【0098】
[実施例39〜40及び比較例5]
<チョコレートの製造>
下記表2の配合に従って、実施例39〜40及び比較例5のチョコレートを、常法に従って、混合処理、微粒化(リファイニング)処理、精錬(コンチング)処理を経て、冷却固化することにより製造した。より詳細には、原料(カカオマス、ココアバター等)をミキサー(万能混合撹拌機8XDML:DALTON社製)で60℃に加熱しながら均質になるように約5分間混合し、チョコレート生地を得た。得られたチョコレート生地をロールリファイナー(SDY型油圧式3本ロールミル:BUHLER社製)で磨り潰し、平均粒度が20μm程度になるまで微粒化した。リファイングしたチョコレート生地を、前記ミキサーにより20分以上かけて練り込み、液化後、油分を調整し、チョコレート原液とした。チョコレート原液を30℃に調温し、型に流し込み成形した後、チョコレート原液を10〜20℃で冷却固化した。実施例39は、粉末油脂組成物Aの質量とココアバターの質量の比が50:50であり、実施例40は、粉末油脂組成物Aの質量とココアバターの質量の比が95:5となるように調製した。また、比較例5は、粉末油脂組成物を使用せず、通常のココアバターを用いて製造したものである。なお、カカオマス中には、55質量%のココアバターが含まれている。また、ココアパウダー中には、11質量%のココアバターが含まれている。そのため、実施例39におけるココアバターの含有量は、2.0+360.0×0.55=200.0(g)となる。実施例40におけるココアバターの含有量は、181.8×0.11=約20.0(g)となる。
【0099】
【表2】
【0100】
<チョコレートの評価>
上記で製造した、実施例39〜40及び比較例5のチョコレートについて、以下の評価方法に従って評価した。
【0101】
<チョコレートの評価方法>
(1)食感の評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した。
○:エアイン様の軽い食感を感じる
△:エアイン様の軽い食感をやや感じる
×:エアイン様の軽い食感を感じない
(2)口溶けの評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した
○:なめらかな口溶けの良さと冷涼感を感じる
△:軽い食感となめらかな口溶けの良さと冷涼感にやや欠ける
×:軽い食感となめらかな口溶けの良さと冷涼感を感じない
【0102】
表2の結果から明らかであるように、本発明の粉末油脂組成物を用いて製造したチョコレート(実施例39〜40)は、エアイン様の軽い食感となめらかな口溶けの良さを有し、いわゆる含気チョコレートのように感じられ、嗜好性の高いチョコレートになることがわかった。一方、本発明の粉末油脂組成物を用いずに製造したチョコレート(比較例5)は、エアイン様の軽い食感となめらかな口溶けを有していなかった。また、本発明の粉末油脂組成物を用いて製造したチョコレート(実施例39〜40)は、独特の冷涼感があり、嗜好性の高いチョコレートとなった。一方、本発明の粉末油脂組成物を用いずに製造したチョコレートは、このような冷涼感を感じなかった。
本発明においては、従前の含気チョコレートの製造方法のように、専門装置を用いる必要がなく、本発明の粉末油脂組成物を配合し、単に冷却固化するだけで、エアイン様のチョコレートを得ることができた。このことは、これまでの含気チョコレートの製造工程を大幅に簡略化する可能性があり、産業上の利用可能性は極めて大である。
【0103】
[実施例41]
<粉末チョコレート(プレーン)の製造>
下記表3の配合に従って、実施例41の粉末チョコレート(プレーン)を製造した。より具体的には、容器に入れた上記粉末油脂組成物Aに、ココアパウダー、粉糖、チョコレート香料、甘味料A及びBを添加し、スパチュラで混ぜ合わせて、粉末チョコレート(プレーン)を調製した。なお、下記ココアパウダー中には、11質量%の脂質、20質量%のタンパク質、44.5質量%の糖質が含まれている。
【0104】
【表3】
【0105】
<粉末チョコレートの評価>
上記のように製造した、実施例41の粉末チョコレート(プレーン)について、以下の評価方法に従って官能評価した。
【0106】
<粉末チョコレートの評価方法>
(1)油っぽさの評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した。
○:油っぽくない
△:少し油っぽい
×:油っぽい
(2)食べやすさの評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した。
○:食べやすい
△:やや食べにくい
×:食べにくい
(3)おいしさの評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した。
○:良好な風味と口溶けがありおいしい
△:風味や口溶けに欠けるが、まあまあおいしい
×:風味や口溶けが乏しく、おいしくない
(4)冷涼感の評価方法
以下の基準に従って、熟練した5名のパネラーにより、総合的に評価した。
○:口の中で冷涼感が感じられる。
△:口の中で冷涼感がやや感じられる。
×:口の中で冷涼感が感じられない。
【0107】
表3の結果から明らかであるように、本発明の粉末油脂組成物を用いて製造した粉末チョコレート(実施例41)は、タンパク質と糖質の合計に対する脂質の割合(質量比)が4以上と極めて高いにも関わらず、油っぽくなく食べやすくて、しかも良好なチョコレートの風味や口溶けが感じられ、おいしいと評価できるものであった。また、独特の冷涼感を有するものであり、大変嗜好性の高いものであった。さらに、このような粉末チョコレートは、単に原料を混ぜ合わせるだけで製造できるので、誰でも安価に製造でき、産業的利用可能性は極めて大きい。また、通常の粉末チョコレートと比べて引けをとらないおいしさなので(むしろ冷涼感があって嗜好性が高いので)、従前の粉末チョコレートの代替だけでなく、例えば、ケトン食として利用しても、飽きが来ず、長期間継続して利用することができる。
【0108】
[実施例42]
<粉末チョコレート(抹茶)の製造>
下記表4の配合に従って、実施例42の粉末チョコレート(抹茶)を製造した。より具体的には、容器に入れた上記粉末油脂組成物Aに、抹茶パウダー、粉乳、粉糖、抹茶香料、甘味料A及びBを添加し、スパチュラで混ぜ合わせて、粉末チョコレート(抹茶)を調製した。なお、抹茶パウダー中には、5.3質量%の脂質、30.6質量%のタンパク質が含まれている。そして、粉乳中には、26.2質量%の脂質、25.5質量%のタンパク質、39.3質量%の糖質が含まれている。また、脂質含量、タンパク質含量及び糖質含量の値は小数点第2位を四捨五入した。
【0109】
【表4】
【0110】
<粉末チョコレートの評価>
上記のように製造した、実施例42の粉末チョコレート(抹茶)について、上記の実施例41の評価方法に従って官能評価した。
【0111】
表4の結果から明らかであるように、本発明の粉末油脂組成物Aを用いて製造した粉末チョコレート(実施例42)は、タンパク質と糖質の合計に対する脂質の割合(質量比)が4以上と極めて高いにも関わらず、油っぽくなく食べやすくて、しかも良好な抹茶風味や口溶けがあり、おいしいと評価できるものであった。特に、抹茶の素材の風味が強く感じられたので、様々な食品に抹茶の風味をプラスし、味のコンビネーションをもたせる食品として幅広く利用できる。さらに、独特の冷涼感を有するものとなるので、夏用の粉末チョコレートとする等、需要者の新たなニーズを掘り出す可能性がある。
【0112】
[比較例6]
<粉末チョコレート(プレーン)の製造>
下記表5の配合に従って、比較例6の粉末チョコレート(プレーン)を製造した。より具体的には、実施例41における粉末油脂組成物Aに代えて、油脂粉末(スプレーファットPM:理研ビタミン株式会社製、融点:67.8℃)を入れた容器に、ココアパウダー、粉糖、チョコレート香料、甘味料A及びBを添加し、スパチュラで混ぜ合わせて、粉末チョコレート(プレーン)を調製した。なお、ココアパウダー中には、11質量%の脂質、20質量%のタンパク質、44.5質量%の糖質が含まれている。
【0113】
【表5】
【0114】
<粉末チョコレートの評価>
上記のように製造した、比較例6の粉末チョコレート(プレーン)について、上記の実施例41の評価方法に従って官能評価した。
【0115】
上記粉末油脂組成物Aに代えて、上記油脂粉末を用いて製造した場合は、口の中でざらつき感があり、しかも油っぽさが強く感じられ、食べづらく、おいしくなかった。結論として、比較例6は、およそ粉末チョコレートといえるものではなかった。また、上記粉末油脂組成物Aを用いた場合と異なり、上記油脂粉末を用いた場合は、独特の冷涼感もなかった。